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OECD 化学物質対策の動向(第 25 報)

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(1)

【特集】

OECD 化学物質対策の動向(第 25 報)

-第4、5回OECD化学物質共同評価会議(2013年パリ、ワシントンDC)

Progress on OECD Chemicals Programme (25)

― CoCAM-4 in Paris and CoCAM-5 in Washington DC, 2013

高橋美加、松本真理子、宮地繁樹、菅野誠一郎、菅谷芳雄、長谷川隆一、 小林克己、平田睦子、小野 敦、鎌田栄一、広瀬明彦

1)国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター総合評価研究室、

2)一般財団法人 化学物質評価研究機構安全性評価技術研究所、

3)独立行政法人 労働安全衛生総合研究所、

4)独立行政法人 国立環境研究所環境リスク研究センター

Mika Takahashi1, Mariko Matsumoto1, Shigeki Miyachi2, Seiichiro Kanno3, Yoshio Sugaya4, Ryuichi Hasegawa1, Katsumi Kobayashi1, Mutsuko Hirata-Koizumi1,

Atsushi Ono1, Eiichi Kamata1, and Akihiko Hirose1

1) Division of Risk Assessment, Biological Safety Research Center, National Institute of Health Sciences, Japan, 2) Chemicals Assessment and Research Center, Chemicals Evaluation and Research Institute, Japan, 3) National Institute of Occupational Safety and

Health, Japan, and 4) Research Center for Environmental Risk, National Institute for Environmental Studies, Japan.

要旨:第4回OECD化学物質共同評価会議(CoCAM-4)が2013年4月にフランスのパリで 開催され、日本が担当した2物質の初期評価プロファイル(SIAP)(4,4'-スルホニルジフェノー ル:CAS番号(以下同様)80-09-1、ラウリン酸メチル:111-82-0)および2物質の選択的初期 評価プロファイル(ITAP)(7-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフタレンスルホン酸:87-02-5、2,6-ジ -tert-ブチル-4-エチルフェノール:4130-42-1)について合意が得られた。また、CoCAM-5 が 2013年10月に米国のワシントンDCで開催され、日本が担当した2物質のSIAP(4,4'-メチレ ンビス(2-クロロアニリン):101-14-4、2-プロペン-1-オール:107-18-6)および3物質のITAP

(4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム:130-13-2、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニ ル)-6-ジメチルアミノフタリド:1552-42-7、ジエチルビフェニル:28575-17-9)について合意 が得られた。本稿ではこれらの初期評価文書について紹介する。

キーワード:OECD、SIDS初期評価会議、化学物質共同評価会議

Abstract: The 4th Cooperative Chemicals Assessment Meeting (CoCAM-4) was held in Paris, France. The initial assessment documents of four substances (CAS numbers 80-09-1, 87-02-5, 111-82-0 and 4130-42-1) were submitted by the Japanese Government. SIDS Initial Assessment Profile (SIAP) of two substances (80-09-1 and 111-82-0) and Initial Targeted Assessment Profile (ITAP) of two substances (87-02-5 and 4130-42-1) were agreed at the meeting. Moreover, CoCAM-5 was held in Washington DC, USA. The initial assessment documents of five substances (101-14-4, 107-18-6, 130-13-2, 1552-42-7 and 28575-17-9) were submitted by the Japanese Government. SIAP of two substances (101-14-4 and 107-18-6) and ITAP of three substances (130-13-2, 1552-42-7 and 28575-17-9) were agreed at the meeting. In this report, the documents of these substances are introduced.

Keywords: OECD, SIAM, CoCAM

(2)

1 はじめに

OECD加盟各国では高生産量化学物質点検プログラム(High Production Volume Chemical

(HPV) Programme)に従い、高生産量化学物質の安全性評価を行ってきた(長谷川ら1999、

江馬2006)。第32 回までの初期評価会議(Screening Information Data Set (SIDS) Initial Assessment Meeting:SIAM)で日本政府が担当した化学物質の評価文書については高橋らに よる紹介(2012など)、SIAM 32までの各会議内容については松本らの報告(2012aなど)が ある。

SIAM 29から初期評価結果(SIAP: SIDS Initial Assessment Profile)に加え、選択的初期 評価結果(ITAP: Initial Targeted Assessment Profile)についても論議されている。選択的評 価は環境/ヒト健康影響と関連の強い項目に注目して評価する手法であり(松本ら 2009)、日 本では2010年より「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)における有害 性調査結果を選択的評価文書に編集して提出している。

SIAM という名称は 2011 年の第 32 回で終了し、現在は化学物質共同評価会議(CoCAM:

Cooperative Chemicals Assessment Meeting)である(松本ら2012b)。プログラム名もHPV 点検プログラムから化学物質共同評価プログラム(CCAP: Cooperative Chemicals Assessment

Programme)に変更され、高生産量化学物質以外の物質も取り扱うようになった。第 3 回

CoCAM(CoCAM-3)までの日本政府担当物質の評価文書については高橋ら(2013a, b)が紹 介し、CoCAM-5までの会議内容については松本ら(2013a, b, c, d)が報告している。

本稿ではCoCAM-4および-5で合意に至った日本担当物質の評価文書の概要を紹介する。な

お、OECDガイドラインに則した毒性試験については、そのガイドライン番号を示した。

2 CoCAM-4で合意された日本担当物質の初期評価内容

2013年4月にパリ(フランス)で開催されたCoCAM-4において、我が国は2物質の初期評 価および2物質の選択的初期評価、計4物質について評価文書を提出し、それらの結果は全て 合意された。以下、CAS番号の小さい順に紹介する。

(1)4,4'-スルホニルジフェノール

英名4,4'-Sulfonyldiphenol (CAS番号80-09-1)

1)曝露状況

本物質は白色の結晶性粉末であり、融点は 240.5℃である。本物質は約 330℃で分解し、沸 点は測定できない。本物質はレジ領収書のような感熱紙や食品貯蔵のための缶ライニングやプ ラスチックに使用され、日本では、塩化ビニル系プラスチック、感熱紙用カラー現像剤、難燃 剤、染料固着剤の原料として、あるいは、染色助剤や難燃剤、写真カプラーの原料としても使 用される。本物質には蒸気の吸入や皮膚接触による職業曝露の可能性があり、取扱いの際には 作業者保護の対策が必要である。本物質は消費者製品にも含まれ、本物質が室内粉塵や尿中に 検出された国があることから、消費者曝露が考えられる。本物質の日本における製造/輸入量 の年間総量は3,000~5,000トン(2005~2010年)、米国では2006年に100万~1,000万ポン ド(454-4,540トン)であった。

2)環境影響

媒体別分配割合の予測の結果、本物質が大気・水域・土壌域に等量が連続して放出された場 合は、主に土壌域(83.0%)と水域(16.0%)に分布する。また、本物質は容易に生分解されな いが、魚類の生物濃縮性は低い(BCF:≤ 2.2 [測定値]、16.8 [計算値、BCFBAF ver. 3.01]。

(3)

水生生物に対する急性毒性については、魚類の半数致死濃度(LC50)は100 mg/L以上(96 時間:OECD TG 203)、ミジンコの半数影響濃度(EC50)は100 mg/L(48時間、遊泳阻害:

OECD TG 202)、藻類のEC50(72時間、生長阻害(速度法):OECD TG 201)は65 mg/Lで あった。慢性毒性については、ミジンコの最大無影響濃度(NOEC)は2.7 mg/L(21日間、繁 殖阻害:OECD TG 211)、藻類のNOECは5 mg/L(72時間、生長阻害(速度法):OECD TG 201)であった。

<結論>本物質は環境に有害性(ミジンコ・藻類の急性毒性値が10~100 mg/L)を示す特性を 持つ。また、本物質は易生分解性ではないが、低生物濃縮性である。

3)健康影響

ほ乳類を用いた薬物動態試験の情報は得られなかったが、後に示す28日間反復経口投与試験 において毒性影響が認められたことから、本物質の消化管からの吸収や分布が示唆された。ま た、本物質(親物質および抱合体)は一般のヒト集団における尿検体の81%から最高21.0 ng/mL

(平均0.654 ng/mL)検出された。

複数の試験における経口LD50は、ラットで>2,000 mg/kg bw、>5,000 mg/kg bw、または 2,830 mg/kg bw(共にOECD TG 401)であり、頻尿、流涎、鎮静、呼吸困難、横臥位、腹臥 位、体重増加抑制、全身状態の悪化、眼球突出、被毛の乱れ、湾曲姿勢がみられた。

ウサギの皮膚に対する刺激性や腐食性は認められず(OECD TG 404、431)、ウサギの眼に 対する刺激性も認められなかった(OECD TG 405)。また、マウスを用いた試験において皮膚 感作性は認められなかった(OECD TG 429)。

ラットに0、40、200または1,000 mg/kg bw/dayの本物質を強制経口投与した28日間反復 経口投与毒性試験(OECD TG 407相当)において、1,000 mg/kg bw/dayの雄2例が死亡した。

200 mg/kg bw/day以上の雌と1,000 mg/kg bw/dayの雄で体重増加抑制と摂餌量の低値が認め られた。1,000 mg/kg bw/day の雄雌に貧血影響が認められた。血液生化学検査では、1,000

mg/kg bw/dayの雄雌で総コレステロールの低値、雄でアルカリホスファターゼの高値と乳酸脱

水素酵素の低値、雌で総タンパク質、カルシウム、アルブミンの高値が認められた。尿検査で は、200 mg/kg bw/day以上の雄または雌に、尿タンパク質陽性例の増加、pHの低値、ウロビ リノーゲンの高値が認められた。病理組織学的検査において、1,000 mg/kg bw/dayの雄雌で小 葉中心性肝細胞肥大、胸腺萎縮、大腿骨の海綿骨増加がみられ、1,000 mg/kg bw/dayの雄で副 腎皮質束状帯細胞の肥大が増加し、200 mg/kg bw/day以上の雄雌で盲腸に粘膜過形成および粘 膜上皮の単細胞壊死がみられた。200 mg/kg bw/day以上の雄で腎臓重量の高値が認められた。

14日間の回復期間後、1,000 mg/kg bw/dayで腎臓影響(臓器重量の高値、尿タンパク質)と 大腿骨影響(海綿骨増加)が残り、脾臓では新たに1,000 mg/kg bw/dayの雄雌で髄外造血の増 加が認められた。これらから、反復投与毒性のNOAELは雄雌ともに40 mg/kg bw/dayとされ た。

また、雄雌ラットに交配前2週間から交配期間を含み、雄では計45日間、雌では分娩後哺育 3日まで(40-46日間)、0、10、60及び300 mg/kg bw/dayを強制経口投与した簡易生殖毒性 試験(OECD TG 421)において、300 mg/kg bw/dayで雄雌に体重増加抑制と摂餌量の低値が 認められた。300 mg/kg bw/dayで雄に肝臓および下垂体の相対重量の低値が認められた。300 mg/kg bw/dayで雄雌に小葉中心性肝細胞肥大、60 mg/kg bw/day以上の雄雌に盲腸の膨満・粘 膜上皮のびまん性過形成がみられた。これらから、反復投与毒性の NOAEL は雄雌ともに 10 mg/kg bw/dayとされた。また、生殖発生毒性に関して、300 mg/kg bw/dayで性周期の延長、

発情休止期の継続を示した雌の増加、着床率の低値、受胎率の低値傾向が認められた。300 mg/kg

bw/dayでは着床率の低値に関連して、総出産児数、出産生児数および哺育4日の生児数に低値

傾向が認められた。これらから、生殖発生毒性のNOAELは60 mg/kg bw/dayとされた。この

(4)

簡易生殖毒性試験に加え、その他、子宮肥大試験やin vitro試験の結果から、本物質にはエス トロゲン受容体を介した内分泌修飾活性があることが示唆された。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471)および哺乳動物細胞を用いる遺伝子突然 変異試験(OECD TG 476)はS9mixの存在/非存在下で陰性、チャイニーズ・ハムスター培養 細胞を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)はS9mixの非存在下で陽性であった。In vivo 小核試験(OECD TG 474)の結果は陰性であった。これらの結果から、本物質はin vivoでの 遺伝毒性はないとされた。

<結論>本物質はヒトの健康に有害性(反復投与毒性、生殖毒性、(内分泌修飾活性))を示す 特性を持つ可能性がある。

(2)7-アミノ-4-ヒドロキシ-2-ナフタレンスルホン酸

英名7-Amino-4-hydroxy-2-naphthalenesulphonic acid (CAS number: 87-02-5)

本物質は化審法既存化学物質の評価結果に基づき選択的初期評価が行われた。評価項目は健康 影響(急性毒性、反復投与毒性、in vitro遺伝毒性)である。参考情報として、評価の行われて いない曝露状況も以下に示す。

1)曝露状況 [参考情報]

本物質は室温で灰白色の粉体である。本物質は日本では化学合成用原料、アゾ染料等の中間 体として使用され、日本での製造または輸入量は10~100トン(2007年度)である。

2)健康影響

後述の 28 日間反復投与毒性試験の最高用量でも死亡がみられなかったことから、経口 LD50

は1,000 mg/kg bw以上と考えられる。また、二次資料からの情報によると、経口LD50はラッ トで11,500 mg/kg bwである。

ラットに0、250、500または1,000 mg/kg bw/dayの本物質を強制経口投与した28日間反復 経口投与毒性試験において、最高用量の1,000 mg/kg bw/dayでも死亡や毒性徴候は認められず、

反復投与毒性のNOAELは雄雌ともに1,000 mg/kg bw/dayとされた。

複数の、細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471、472試験を含む)やチャイニーズ・

ハムスター培養細胞を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)において、陽性結果が得られた ことから、本物質はin vitroで遺伝毒性を示すとされた。

<結論>今回の評価項目に関して、本物質はヒトの健康に有害性(in vitro遺伝毒性)を示す特 性を持つ可能性がある。

(3)ラウリン酸メチル

英名Methyl laurate (CAS番号111-82-0)

1)曝露状況

本物質は無色透明の液体であり、融点は 5.2℃、沸点は 267℃である。本物質は日本では主 に乳化剤・界面活性剤の中間体や塗料添加剤として用いられ、食品添加物としても使用される。

また、本物質は洗剤、乳化剤、湿潤剤、安定剤、滑剤、可塑剤、繊維、および香料の中間体と しても使用され、ガスクロマトグラフィーや生化学的検査における標準物質としても使用され る。本物質には蒸気の吸入による職業曝露の可能性があり、取扱いの際には作業者保護の対策 が必要である。本物質は消費者製品にも含まれることから、消費者曝露が考えられる。本物質 の日本における製造/輸入量の年間総量は2,731トン(2010年)であり、米国では2006年に

(5)

100万ポンド(454トン)から1,000万~5,000万ポンド(4,540-22,680トン)の間であった。

2)環境影響

媒体別分配割合の予測の結果、本物質が大気・土壌域・水域に等量が連続して放出された場 合は主に土壌域(71.8%)と水域(19.9%)に分布する。また、本物質は容易に生分解され、

魚類の生物濃縮性も低い(BCF:381 [計算値、BCFBAF ver. 3.01])。

水生生物に対する急性毒性については、魚類のLC50は> 0.52 mg/L(96時間:OECD TG 203)、

ミジンコのEC50は0.23 mg/L(48時間、遊泳阻害:OECD TG 202)、藻類のEC50(72時間、

生長阻害(速度法):OECD TG 201)は0.017 mg/Lであった。慢性毒性については、ミジン コのNOECは0.081 mg/L(21日間、繁殖阻害:OECD TG 211)、藻類のNOECは0.003 mg/L

(72時間、生長阻害(速度法):OECD TG 201)であった。

<結論>本物質は環境に有害性(ミジンコ・藻類の急性毒性値が0.01~1.0 mg/L、ミジンコ・

藻類の慢性毒性値が0.1 mg/L未満)を示す特性を持つが、易生分解性・低生物濃縮性である。

3)健康影響

薬物動態試験の情報は得られなかったが、本物質のような中程度の長さの直鎖エステルは、

一般的に消化管から速やかに吸収され、加水分解によりアルコールとカルボン酸になり、脂肪 酸経路を介して酸化されて二酸化炭素になり、尿中に排泄される。

吸入LC50はラットで5 mg/L以上(エアロゾル。OECD TG 436)、経口LD50はラットで20,000

mg/kg bw以上(OECD TG 401)であり、共に最高用量において死亡はみられなかった。

複数の試験(OECD TG 404)において、ウサギの皮膚に対する弱い刺激性が認められたが、

14日以内に回復した。ヒトの皮膚に対しては刺激性を示さなかった。In vitro皮膚刺激性試験 において、ヒト培養細胞に対して刺激性を示さなかった。ウサギの眼に対する刺激性は認めら れなかった。また、モルモットを用いた試験において皮膚感作性は認められなかった(OECD TG 406)。

ラットに交配前2週間および交配期間を含め、雄では計45 日間、雌では分娩後哺育3日ま で(計41~55日間)、0(溶媒:コーン油)、250、500または1,000 mg/kg bw/dayを強制経口 投与した反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG 422)において、最高用量でも毒性 影響は認められず、反復投与毒性と生殖発生毒性のNOAELは共に1,000 mg/kg bw/dayとさ れた。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471、472)はS9mixの存在/非存在下で陰性で あり、チャイニーズ・ハムスター培養細胞を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)およびヒ トリンパ球を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)でも共にS9mixの存在/非存在下で陰性 であった。これらの結果から、本物質はin vitroでの遺伝毒性はないとされた。

<結論>本物質は有害特性が低いので、ヒトの健康への有害性を示さない。

(4)2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール

英名2,6-Di-tert-butyl-4-ethylphenol (CAS番号4130-42-1)

本物質は化審法既存化学物質の評価結果に基づき選択的初期評価が行われた。評価項目は健康 影響(反復投与毒性、in vitro遺伝毒性)である。参考情報として、評価の行われていない曝露 状況も以下に示す。

1)曝露状況 [参考情報]

本物質の融点は44℃、沸点は272℃であり、室温で黄色の固体である。本物質は日本では酸

(6)

化防止剤として使用され、米国ではゴムやプラスチック製品への使用の報告がある。本物質を 含むトリアルキル/アルケニルフェノール類(C=1~4)の日本での製造または輸入量は年間 1,000~10,000トン(2007年)である。本物質の米国での製造または輸入量は年間50万~100 万ポンド(227~454トン、2006年版の報告による。製造/輸入年は不明)である。

2)健康影響

ラットに0、15、60、または250 mg/kg bw/dayの本物質を強制経口投与した28日間反復経 口投与毒性試験において、死亡や毒性徴候、体重・尿検査項目に変化は認められなかった。250

mg/kg bw/dayでは、雄雌に血小板数やフィブリノーゲン量の高値、活性化部分トロンボプラス

チン時間の延長、血清総コレステロール・総タンパク質の高値が認められ、雄ではプロトロン ビン時間の延長、雌ではリン脂質の高値や塩素の低値も認められた。60 mg/kg bw/day以上の 雄雌に肝臓の絶対・相対重量の高値および小葉中心性肝細胞肥大が認められ、60 mg/kg bw/day 以上の雄と250 mg/kg bw/dayの雌に甲状腺の濾胞細胞肥大が認められた。血小板・総コレス テロール以外の影響には回復性が認められた(回復期間:14 日間)。これらから、反復投与毒 性のNOAELは雄雌ともに15 mg/kg bw/dayとされた。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471)はS9mixの存在/非存在下で陰性であった が、チャイニーズ・ハムスター培養細胞を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)は陽性であっ たことから、本物質はin vitroで遺伝毒性を示すとされた。

<結論>今回の評価項目に関して、本物質はヒトの健康に有害性(反復投与毒性、in vitro染色 体異常)を示す特性を持つ可能性がある。

3 CoCAM-5で合意された日本担当物質の初期評価内容

2013年10月に米国(ワシントンDC)で開催されたCoCAM-5において、我が国は2物質 の初期評価(うち1物質は情報の追加)および3物質の選択的初期評価、計5物質について評 価文書を提出し、それらの結果は全て合意された。以下、CAS番号の小さい順に紹介する。

(1)4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)

英名4,4'-Methylenebis(2-chloroaniline) (CAS番号101-14-4)

本物質の遺伝毒性評価・発がん性評価は、既に国際がん研究機関(IARC)、米国有害物質・疾 病登録局(ATSDR)、カナダ保健省が行っている。評価作業の重複を防ぐため、本初期評価文 書では、それらの情報を2次資料として引用している。

1)曝露状況

本物質は無色の結晶性固体(工業グレードでは微かなアミン臭のある褐色のペレット/フ レーク状)であり、融点は 110℃である。本物質は 277℃で分解し、沸点は測定できない。ポ リウレタンやエポキシ樹脂用の硬化剤として使用され、様々な製品の硬度や柔軟性、衝撃強度 を変化させるために添加され、また、樹脂や接着剤を固定する化学反応時のコーティング剤と しても使用される。日本では防水材、床材、舗装材料の硬化剤として使用される。本物質には 粉塵の吸入や皮膚接触による職業曝露の可能性があり、取扱いの際には作業者保護の対策が必 要である。ポリウレタン樹脂製の消費者製品に含まれることから、消費者曝露の可能性がある。

本物質の製造/輸入量の年間総量は、日本において2010年は2,751トン、2011年は3,013ト ンであり、米国では2006年に50万~100万ポンド(227~454トン)、EUでは1,000~10,000 トンであった。

(7)

2)環境影響

媒体別分配割合の予測の結果、本物質が大気・水域・土壌域に等量が連続して放出された場 合は、主に土壌域(84.7%)と水域(12.0%)に分布する。また、本物質は容易に生分解されな いが、魚類の生物濃縮性は低い(BCF:130-398(50 μg/L)、114-232(5 μg/L)[実測値:OECD TG 305]、121 [計算値、BCFBAFWIN ver. 3.01])。

水生生物に対する急性毒性については、魚類の半数致死濃度(LC50)は0.61-0.66 mg/L(96 時間:OECD TG 203)、ミジンコの半数影響濃度(EC50)は0.25-0.92 mg/L(48時間、遊泳 阻害:OECD TG 202)、藻類のEC50(72時間、生長阻害(速度法):OECD TG 201)は>0.85 mg/L であった。慢性毒性については、ミジンコの最大無影響濃度(NOEC)は 0.0095 mg/L

(21日間、繁殖阻害:OECD TG 211)および0.0375 mg/L(21日間、繁殖阻害:OECD TG 202 part 2-旧ガイドライン名。現行ではTG 211に相当)、藻類のNOECは0.54 mg/L(72時間、

生長阻害(速度法):OECD TG 201)であり、さらに底質添加によるユスリカ毒性試験(27日 間、羽化阻害:OECD TG 218)のEC50は150 mg/kg乾燥底質、NOECは84 mg/kg乾燥底質 であった。

<結論>本物質は環境に有害性(魚類・ミジンコの急性毒性値が1 mg/L未満、慢性毒性値は藻 類では1 mg/L未満、ミジンコでは0.01 mg/L未満)を示す特性を持つ。また、本物質は易生 分解性ではないが、低生物濃縮性である。

3)健康影響

ラットへの腹腔内投与と経口投与における尿中排泄プロファイルが同様であるので、経口経 路での吸収は容易と思われる。皮膚からの吸収は、イヌでは24時間で2.4~10%、ラットでは

72時間で11.5~21.9%と推定された。イヌへの投与後8時間以内に皮膚を洗浄した場合、皮膚

からの吸収は減少した。ラットとイヌにおける経口/経皮投与後の本物質の分布は比較的類似 しており、主に肝臓、そして、腎臓、脂肪、肺、脾臓、膀胱、精巣で検出された。本物質の代 謝にはいくつかの経路(N-アセチル化、N-水酸化、環水酸化)がある。本物質への職業曝露に より、尿中にN-アセチル-4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)およびN,N'-ジアセチル-4,4'-メ チレンビス(2-クロロアニリン)が検出された。ヒト、ラット、イヌにおいて本物質はDNA付加 体を形成し、ヒトとラットではヘモグロビン付加体も認められた。本物質の主な排泄経路はラッ トとイヌでは糞便と尿であった。ラットに強制経口投与した試験では、24時間後までに68.3%

が糞便と尿に速やかに排泄されたものの、その後の排泄は緩慢であった(24時間後~投与3日

で2.07%)。経皮もしくは静脈内投与した試験では多くが糞便中から回収されたことから、吸収

された本物質のほとんどが胆汁中に排泄されると考えられる。また、本物質は職業曝露者の尿 サンプルからも検出された。

ラットの急性経皮毒性試験(OECD TG 402)では、最高用量群でも死亡や毒性徴候は認めら れず、経皮LD50は2,000 mg/kg bw以上とされた。その他の試験(OECD TG 423)では、経 口LD50は雌ラットで2,000 mg/kg bw以上であり、粗毛、深い呼吸、耳介と四肢の一時的な暗 赤色化がみられ、死亡動物の剖検では、肝臓の白色病巣、暗赤色の副腎、胃の暗赤色病巣、空 腸から回腸に暗赤色の内容物が認められた。

単離したウシの眼球に対して腐食性は認められず(OECD TG 437)、ヒトの皮膚に対する刺 激性も認められなかった(OECD TG 439)。高温の溶解した本物質への職業曝露による毒性影 響に関する限定的な情報があるが、その影響が本物質自体によるのか高温のためかは不明であ る。また、動物の局所リンパ節試験(OECD TG 429)において、皮膚感作性は認められなかっ た。

ラットに交配前2週間および交配期間を含め、雄では計42 日間、雌では分娩後哺育4日ま

(8)

で(最大55日間)、0、0.4、2、10または50 mg/kg bw/dayを強制経口投与した反復投与毒性・

生殖発生毒性併合試験(OECD TG 422)において、死亡例はみられなかった。50 mg/kg bw/day で、雄雌に流涎、妊娠後期の雌に体重減少が認められた。10 mg/kg bw/day以上の雌、50 mg/kg bw/dayの雄で総タンパク質とアルブミンの低値が認められた。10 mg/kg bw/day以上の雌に腎 臓の相対重量の高値、50 mg/kg bw/dayの雄雌に肝臓の絶対/相対重量の高値、雌に脾臓の絶対・

相対重量および甲状腺の相対重量の高値が認められた。50 mg/kg bw/dayの雄雌に、肝細胞の 小葉中心性肥大および小葉中間性脂肪変性がみられた。10 mg/kg bw/day以上で雄の腎臓で好 塩基性尿細管の増加が認められ、脾臓では10 mg/kg bw/day以上の雄および50 mg/kg bw/day の雌にヘモジデリン沈着、50 mg/kg bw/dayの雌に髄外造血が認められた。回復群の50 mg/kg

bw/day群で、雌にメトヘモグロビンの低値および肝臓と腎臓の相対重量の高値、雄に平均赤血

球ヘモグロビン濃度およびヘマトクリットの低値が認められた。これらから、反復投与毒性の NOAELは2 mg/kg bw/dayとされた。また、生殖発生毒性については、50 mg/kg bw/dayで交 尾期間の延長が認められたものの、その他の生殖発生パラメータや生殖器官に毒性影響は認め られなかった。これらから、生殖毒性のNOAELは10 mg/kg bw/day、発生毒性のNOAELは 50 mg/kg bw/day(最高用量)とされた。

情報は限定的ではあるが、慢性試験データをサポートする発がん性試験(ラット、マウスま たはイヌ)がある。18ヶ月間、本物質を混餌投与したところ、ラットとマウスで生存期間の短 縮および体重の減少が認められた。ラットの試験では、50 mg/kg bw/dayの雄雌の肝臓に肥大、

脂肪変性、壊死、線維化、胆管増殖がみられた。9年間、本物質をカプセル投与(約7.6~11.8 mg/kg bw/day)した雌イヌにおいて、同様の変化が認められた。さらに、病理組織学的に結節 性肝過形成および肝臓構造の破壊がみられ、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ の増加も認められたことから、慢性毒性のLOAELは7.6 mg/kg bw/dayとされた。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471)はS9mixの存在下で陽性、チャイニーズ・

ハムスター培養細胞を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)はS9mixの非存在下で陽性で あった。IARC、ATSDRおよびカナダ保健省のその他の情報は以下の通りであった。数種の細 菌を用いたin vitro変異原試験で陽性であったが、酵母を用いた試験では陰性であった。また、

哺乳動物の細胞を用いた遺伝学的試験で、陽性の結果が得られた。in vivo試験では、ラットの リンパ球における姉妹染色分体交換を誘発し、小核試験はラットで陰性、マウスで陽性であっ た。キイロショウジョウバエを用いた試験では変異を誘導し、コメットアッセイではマウスの 肝臓・膀胱・脳にDNA損傷を引き起こした。これらの結果から、本物質はin vitroおよびin vivo で遺伝毒性を示すとされた。

発がん性に関して、IARC は本物質をグループ 1(ヒトに対して発がん性がある)に分類し ている。IARC によると、本物質の経口投与により雌マウスの肝腫瘍発生率が増加し、標準ま たは低たんぱく飼料を与えられた雄雌ラットを用いた一連の試験では肝細胞腫瘍や悪性肺腫瘍、

肺腺がん、乳腺腺がん、ジンバル腺がん、および肝細胞がんが認められた。また、雌イヌへの 経口投与により膀胱および尿道の移行上皮がんが生じ、ラットへの皮下投与により肝細胞がん および悪性肺腫瘍が生じた。

その他、職業曝露の報告として、膀胱細胞診調査がミシガン州やニュージャージー州、台湾 で行われ、本物質に曝露した作業員に膀胱がんが認められた。英国の本物質生産工場の労働者 コホート(男性308名)では、1979~2007年に膀胱がんによる死亡が1 例あった(英国人の 死亡率に基づく推定値は0.18例)が、本物質と膀胱がんリスクとの関連を評価するのに十分な 疫学的研究は認められなかった。別の?本物質生産工場における横断的調査では、本物質に曝 露された曝露者と本物質の尿中濃度の高い労働者ともに、平均血漿8-OHdGレベルの有意な増 加は認められなかったことから、酸化的 DNA 損傷は本物質の発がんプロセスにおいて重要な 役割を果たしていないことが示唆された。

(9)

総合的に、動物試験の結果から、本物質には発がん性があるとされた。

<結論>本物質はヒトの健康に有害性(反復投与毒性[貧血、メトヘモグロビン血症、腎臓・肝 臓・脾臓への影響]、遺伝毒性、発がん性[肝臓・肺・乳腺・ジンバル腺・膀胱・尿道の腫瘍]、

生殖毒性)を示す特性を持つ可能性がある。

(2)2-プロペン-1-オール

英名2-Propen-1-ol (CAS番号107-18-6)

本物質の評価はSIAM21において既に合意されている(高橋ら2007)。今回、急性吸入毒性に 関する信頼性の高い試験データが追加され、CoCAM-5関連の書面審査で合意された。なお、ヒ ト健康影響の有害性評価に変更はなかった。

1)健康影響

追加データ:ラットにミスト (0.530 mg/L)を 4 時間吸入させた結果、死亡例は認められな かったことから、吸入LC50は0.530 mg/Lより大きい(OECD TG403)。

<結論>本物質はヒトの健康に有害性(急性毒性、反復投与毒性、刺激性、遺伝毒性、発がん 性、生殖発生毒性)を示す特性を持つ可能性がある。

(3)4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム

英名4-Amino-1-naphthalenesulfonic acid, sodium salt (CAS番号130-13-2)

本物質は化審法既存化学物質の評価結果に基づき選択的初期評価が行われた。評価項目は健康 影響(急性毒性、反復投与毒性、in vitro遺伝毒性、発生毒性)である。参考情報として、評価 の行われていない曝露状況も以下に示す。

1)曝露状況 [参考情報]

本物質は室温で茶色の結晶性固体である。本物質はアゾ染料の中間体として使用され、日本 での製造または輸入量は年間1,000トン未満(2010年)である。

2)健康影響

情報の信頼性は低いが、本物質(50 mg/mL)をウサギの耳介静脈内に注入した動態試験に おいて、4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸のクリアランス値はイヌリンより大きく、積極的に 尿細管内へ分泌されることがわかった。

急性毒性試験の情報は得られなかったが、次に示す反復投与毒性試験のための7日間の用量 設定試験において1,000 mg/kg bw/dayで死亡や毒性徴候がみられなかったことから、ラットの 経口LD50は1,000 mg/kg bwより大きいと考えられる。

ラットに0、100、300または1,000 mg/kg bw/dayの本物質を強制経口投与した28日間反復 経口投与毒性試験(OECD TG 407相当)において、最高用量の1,000 mg/kg bw/dayでも死亡 や毒性徴候は認められず、反復投与毒性のNOAELは雄雌ともに1,000 mg/kg bw/dayとされ た。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471、472)およびチャイニーズ・ハムスター培 養細胞を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)は共にS9mixの存在/非存在下で陰性であっ た。これらの結果から、本物質はin vitroでの遺伝毒性はないとされた。

発生毒性に関して、雌ラットに妊娠0~19日の間、0、15、30、100または200 mg/kg bw/day の本物質を強制経口投与したところ、母動物の死亡や一般状態の変化は認められなかったが、

(10)

200 mg/kg bw/day群において、胚吸収数や総胎児損失の発生率が増加した。その他の生殖発生 毒性パラメータに影響は認められなかった。これらから、発生毒性の NOAEL は 100 mg/kg bw/dayとされた。

<結論>今回の評価項目に関して、本物質はヒトの健康に有害性(発生毒性)を示す特性を持 つ可能性がある。

(4)3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド

英 名 3,3-Bis(p-dimethylaminophenyl)-6-dimethylaminophthalide (CAS 番 号 1552-42-7)

本物質は化審法既存化学物質の評価結果に基づき選択的初期評価が行われた。評価項目は健康 影響(急性毒性、反復投与毒性、in vitro遺伝毒性、生殖発生毒性)である。参考情報として、

評価の行われていない曝露状況も以下に示す。

1)曝露状況 [参考情報]

本物質は室温で薄黄緑色の粉体である。本物質は染料の原料として使用され、日本での製造 または輸入量は年間1,000トン未満(2010年)、米国の製造または輸入量は2006年の報告によ ると227トン未満であった。

2)健康影響

ラットの単回経口投与毒性試験(OECD TG 401)において、最高用量の2,000 mg/kg bwで も死亡や毒性徴候は認められず、経口LD50は2,000 mg/kg bwより大きい。

ラットに0、8、30、120または500 mg/kg bw/dayの本物質を強制経口投与した28日間反 復経口投与毒性試験(OECD TG 407相当)において、500 mg/kg bw/dayで雌に肝臓の相対重 量の高値、雄では小葉中心性肝細胞肥大がみられた。同投与群の甲状腺では雄雌に濾胞細胞の びまん性肥大、雌にリンパ球の局所炎症性細胞浸潤がみられ、上皮小体では雄に主細胞の肥大 が認められた(回復期後これらの変化は認められなかった)。これらから、反復投与毒性の NOAELは雄雌ともに120 mg/kg bw/dayとされた。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471)およびチャイニーズ・ハムスター培養細胞 を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)は共にS9mixの存在/非存在下で陰性であった。こ れらの結果から、本物質はin vitroでの遺伝毒性はないとされた。

雄雌ラットに交配前2週間から交配期間を含み、雄では計42日間、雌では分娩後哺育3日ま で(最大45日間)、0、100、300または1,000 mg/kg bw/dayを強制経口投与した簡易生殖毒 性試験(OECD TG 421。但し、病理組織学的検査は生殖器官のみ実施)において、死亡や毒性 徴候は認められず、生殖器官に病理組織学的変化もみられなかった。これらから、生殖発生毒 性のNOAELは1,000 mg/kg bw/day(最高用量)とされた。

<結論>今回の評価項目に関する限り、本物質はヒトの健康への有害性が低い。

(5)ジエチルビフェニル

英名Diethylbiphenyl (CAS番号28575-17-9)

本物質は化審法既存化学物質の評価結果に基づき選択的初期評価が行われた。評価項目は健康 影響(急性毒性、反復投与毒性、in vitro遺伝毒性)である。参考情報として、評価の行われて いない曝露状況も以下に示す。

(11)

1)曝露状況 [参考情報]

本物質は多数のジエチルビフェニル異性体の混合物である。本物質は淡黄色で透明な液体で あり、溶剤や熱媒体として使用されるが、日本や他国における製造/輸入量は公表されていな い(日本では個別企業の値が推測可能な場合、公表の対象とされない)。

2)健康影響

28日間反復経口投与毒性試験のための用量設定試験では、ラットに最高1,000 mg/kg bw/day を7日間強制経口投与した結果、死亡が認められなかったことから、本物質の経口LD50は1,000 mg/kg bwより大きいと考えられる。

ラットに0(溶媒:コーン油)、15、60または240 mg/kg bw/dayの本物質を強制経口投与し た28日間反復経口投与毒性試験において、死亡や毒性徴候は認められなかった。毒性影響は次

の通り240 mg/kg bw/dayにおいてみられた。雄にプロトロンビン時間・活性化部分トロンボ

プラスチン時間の延長、総コレステロールの高値、雄雌に肝臓の相対重量の高値、雌に肝臓の 絶対重量の高値、雄に腎臓の相対重量の高値が認められた。主な病理組織学的所見として、雄 の肝臓に小葉中心性肝細胞肥大および腎臓に近位尿細管上皮細胞の硝子滴が認められた。この 雄の腎臓での所見はα 2u-グロブリン蓄積によるものであり、雄ラットに特異な変化であること からヒトには外挿できない。これらより、反復投与毒性の NOAEL は雄雌ともに 60 mg/kg bw/dayとされた。

細菌を用いる復帰突然変異試験(OECD TG 471)およびチャイニーズ・ハムスター培養細胞 を用いる染色体異常試験(OECD TG 473)は共にS9mixの存在/非存在下で陰性であった。こ れらの結果から、本物質はin vitroでの遺伝毒性はないとされた。

<結論>今回の評価項目に関する限り、本物質はヒトの健康への有害性が低い。

4 おわりに

CoCAM-4および5における日本担当物質の評価文書の概要を紹介した。各物質の評価文書は

OECDのサイト(http://webnet.oecd.org/hpv/ui/Search.aspx)から入手可能である。

参考文献:

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高橋美加, 松本真理子, 川原和三, 菅野誠一郎, 菅谷芳雄, 広瀬明彦, 鎌田栄一, 江馬眞 (2007):OECD化学物質対策の動向(第12報)-第20回、第21回OECD高生産量化学 物質初期評価会議(2005年パリ、ワシントンDC).化学生物総合管理, 3, 43-55.

高橋美加, 松本真理子, 宮地繁樹, 菅野誠一郎, 菅谷芳雄, 平田睦子, 中嶋徳弥, 小野 敦, 鎌田 栄一, 広瀬明彦 (2012):OECD化学物質対策の動向(第21報)-第32 回OECD高生産 量化学物質初期評価会議(2011年パリ).化学生物総合管理, 8, 116-172.

高橋美加, 松本真理子, 宮地繁樹, 菅野誠一郎, 菅谷芳雄, 平田睦子, 中嶋徳弥, 小野 敦, 鎌田 栄一, 広瀬明彦 (2013a):OECD化学物質対策の動向(第22報)-第1 回OECD化学物 質共同評価会議(2011年パリ).化学生物総合管理, 9, 112-118.

高橋美加, 松本真理子, 宮地繁樹, 菅野誠一郎, 菅谷芳雄, 長谷川隆一, 平田睦子, 小野 敦, 鎌 田栄一, 広瀬明彦 (2013b):OECD化学物質対策の動向(第23 報)-第2回OECD化学 物質共同評価会議(2012年パリ).化学生物総合管理, 9, 241-247.

長谷川隆一, 中館正弘, 黒川雄二 (1999):OECD化学物質対策の動向.J. Toxicol. Sci., 24, app.

(12)

11-19.123

松本真理子, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 広瀬明彦 (2009):OECD 高生産量化学物質点検プログラ ム:第28回初期評価会議概要.化学生物総合管理, 5, 201-209.

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松本真理子, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 広瀬明彦 (2013a):OECD化学物質共同評価プログラム:第 1回化学物質共同評価会議概要.化学生物総合管理, 9, 92-99.

松本真理子, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 長谷川隆一, 広瀬明彦 (2013b):OECD化学物質共同評価プ ログラム:第2回化学物質共同評価会議概要.化学生物総合管理, 9, 100-111.

松本真理子, 宮地繁樹, 菅谷芳雄, 長谷川隆一, 小野 敦, 広瀬明彦 (2013c):OECD化学物質共 同評価プログラム:第3回化学物質共同評価会議概要.化学生物総合管理, 9, 222-231.

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参照

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