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本文/N 情勢分析 GCC諸国の経済 ヴェルツ

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石油を超えた石油: GCC諸国のエネルギー生産価値連鎖の拡大 ドバイの超高層ビルは世界のメディアの注目 を引きつけている。GCC(湾岸協力会議)諸国 では新たな経済部門が確かに出現している。し かし,経済多様化の努力にもかかわらず,石油 がいまだに GCC 経済の根幹であることは疑い のない事実である!。非炭化水素部門が炭化水 素部門より力強い成長を見せてはいるものの, 名目 GDP(国内総生産)に占める割合は原油価 格の高騰によってここ数年,低下している。 GCC諸国では,炭化水素部門が GDP の約40%, 国家収入の70∼80%,そして最大で輸出額の 90%をそれぞれ占めている。経済の多様化が進 む国(UAE;アラブ首長国連邦)や原油生産が 減少傾向にある国(バーレーンとオマーン)の 場合,輸出額に占める石油の割合は低いものの, それでも石油は経済の柱となっている。1970年 代の石油ブーム時代と比較すると,石油収入は 現在,非常に洗練された手段で投資されている。 GCC諸国は石油化学事業とアルミニウム,化学 肥料などのエネルギー集約型産業に投資を行う ことによって,石油依存経済からの脱却を目指 している。国際金融協会(IIF)によれば,GCC 諸国の対外資産保有高は約1兆6,000億ドルに 達しており,この額は中国の約1兆3,000億ドル をかなり上回っている。こうした海外投資によ って,石油収入は非石油関連収入へと姿を変え ガルフ・リサーチ・センター GCCエコノミック・プログラム・マネジャー エッカート・ヴェルツ Country GDP (Bn$) Population (mn) Real GDP growth GDP Per Capita($) Inflation (%) CA balance in % of GDP Unemployment (%)(2005) KSA 374.5 24.3 4.8 15.416 3.0 22.2 15.0 UAE 189.6 4.5 8.2 42.275 8.0 22.6 3.0 Kuwait 103.4 3.2 3.5 32.259 2.6 37.8 4.9 Qatar 65.8 0.9 8.0 70.754 12.0 33.8 3.0 Bahrain 16.9 0.8 6.9 22.109 2.9 17.2 17.5 Oman 40.5 2.6 6.0 15.412 3.8 4.1 17.5 GCC 790.7 36.3 −−− −−− −−− −−− −−−

GCC 諸国の経済

経済多様化と石油価値連鎖の拡大

GCC諸国の経済状況(2007年,推定)

SourceData for all indicators except unemployment is from IMF World Economic Outlook DatasetOctober2007.

Unemployment figures for GCC from IIF for other countries from World BankData for Iraq is from World Bank Economic Development and Prospects,2007and MEED November2007.

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ているのである。UAE のような小国の場合,非 石油関連収入はすでに石油収入そのものを超え ていると推測されている。経済多様化の第3の 柱が「ドバイモデル」と称されるもので,これ は貿易業,サービス業,観光業に重点を置いた 産業多角化政策であり,他の GCC 諸国が競っ て追随している。そのため,これら産業の過熱 と重複に対する懸念が高まっている。いずれに せよ,GCC 経済はいまだに石油依存型経済であ り,そして世界経済にとっての石油の重要性と 石油収入という意味での GCC 諸国の世界的な 支配力を考慮すれば,これら諸国の動向は今後 も世界の関心を集めることだろう。現在の経済 発展は,石油から「脱却」した産業の多角化と 呼ぶよりよりはむしろ,エネルギー集約型産業, 国際市場におけるオイルダラーの還流そして 「ドバイモデル」に準拠したサービス産業経済の 3本柱に沿った,石油生産価値連鎖の拡大と称 したほうがより妥当だと思われる。 エネルギー集約型産業: 石油化学,アルミニウム,鉄鋼,化学肥料およ び鉱業 GCC諸国は産業の多角化を進めるにあたり, エネルギー集約型産業を当然のごとく選択し た。なぜなら,これら諸国は廉価なエネルギー を保有しているため,他者と競合する上で有利 な立場にあるからである。さらに言えば,石油 化学と化学肥料産業は,石油とガスをエネル ギー供給源として利用しているのみならず,原 材料としても使用しているのである。こうして, これら産業は GCC 諸国の炭化水素生産の価値 連鎖を増強し,域内において雇用先と収益を確 保しているのである。コスト高と,限られたイ ンフラ能力に対する懸念が高まる中,これら産 業の大規模拡張計画が近年,発表されている。 例えば,サウジアラビアの紅海沿岸都市,ラー ビグの石油化学プラント建設プロジェクトは, コストが100%も増加している。こうした状況に もかかわらず,安価な石油とガスによって GCC 諸国はいまだに競争力を維持しており,これら 産業から最後まで撤退することはないだろう。 下流部門産業の拡大は石油生産の価値連鎖を増 強するための考え抜かれた戦略であり,GCC 諸国は原油のみを輸出するのではなく,ガソリ ンなどの石油製品の輸出を増大するものと予想 される。民間部門の産業投資の拡大(例えば, NAMAや Zamil グループなど),海外事業の拡 張,ナフサをベースとする,より高い付加価値 製品の生産を目的とした製油所・石油化学プラ ント統合プロジェクトなどが GCC 諸国の経済 開発推進の柱となっている。事業拡大は海外で も盛んに行われている。例えばサウジアラビア の巨大石油化学企業であるサウジアラビア基礎 産業公社(SABIC)は GE Plastics を116億ドル で,そして英国に拠点を置く Huntsman Petro-chemicalsを7億ドルでそれぞれ買収した。ま た,中国では50億ドル規模の投資案件を検討中 であるが,交渉が滞り,計画が予定通り進んで いないため,SABIC は苛立ちをつのらせてい る。GCC 諸国はいまだ世界では最低コストの原 油・ガス生産国ではあるものの,切迫したガス 供給不足問題と建設コストの高騰がエタンを主 原料とする石油化学産業に影響を及ぼし始めて いる。 アルミニウム精錬事業の場合,全操業コスト の約30%∼40%がエネルギー関連費用であるた め,GCC 諸国が産業多角化を促進する上で,ア ルミ産業を選択したことは当然のことであっ た。既存のアルミニウム精錬会社,アルミニウ ム・バーレーン(Alba)とドバイ・アルミニウム (Dubal)の2社に加え,新たに4件のアルミニウ ム・プロジェクトがカタール,オマーン,アブ ダビおよびサウジアラビアにおいて現在,進捗 中である。これら4プロジェクトは2010年まで に操業が開始される見込みであり,予定通り操 66 中東協力センターニュース 2008・2/3

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業が開始されると,GCC 諸国は世界のアルミニ ウム市場のおよそ10%のシェアを占めることに なると予想されている。サウジアラビアの場合, アルミニウム精錬工場はボーキサイト鉱山と直 接結ばれる形で建設されるため,アルミナの供 給を外国合弁企業やスポット・マーケットに依 存する必要はないのである。広大な国土を有す るサウジアラビアはボーキサイト以外にも次の ような有望な鉱物資源に恵まれている;燐鉱 石,貴金属およびタンタリウム!(Tantalium)な どの他工業金属。一方,急速な成長を遂げてい る建設産業の需要を主に満たすため,GCC 諸国 では鉄鋼産業の巨大プロジェクトも進められて いる。 工業プロジェクトの建設コストが上昇を続け ているため,UAE やカタールのほか,いままで あまり影響を受けてこなかったサウジアラビア やクウェートにおいても,インフレ懸念が高ま っている。2007年9月,サウジアラビア鉱業社 (Maaden)と SABIC は,出資比率70対30の両社 合弁事業 (Jalamid での燐鉱石・化学肥料産業) のコストがわずか6ヵ月前の見積りに比べ, 62%も高くなると発表した"。同様に,総額48億 ドルのアルミニウム精錬プロジェクト,Qatalum (Qatar Steel と Norsk Hydro の合弁事業)も2004

年の計画当初の時点から50%以上のコスト増に 直面している#。世界最大のアルミニウム精錬 工場建設プロジェクトである Emirates Alumi-num(Emal)も,その第1期建設プロジェクト (総額70億ドル)のコストが約40%も増加してい る$。この Emal プロジェクトは,Dubal とアブ ダビの Mubadala 社との合弁事業である。コノコ フィリップスは,アブダビの国際石油投資会社 (International Petroleum Investment Company: IPIC)と共同でフジャイラにおいて建設を計画 していた製油所プロジェクト(能力50万バレル/ 日)から撤退した。同社はまた,エンジニアリ ング・調達・建設のコスト増のため,ヤンブー におけるサウジアラムコとの合弁製油所プロジ ェクト(能力40万バレル/日)についても見直し を迫られている%。 対外投資とオイルダラーの還流 GCC諸国は総額1兆6,000億ドルに上る対外 投資を行っているが,これは経済多様化の重要 な一環であり,非石油関連収入をもたらしてい る。豊富な資金を有する GCC 諸国の各種

Sov-ereign Wealth Funds(SWFs;政府系投資ファン

ド)は将来の石油生産の減少に備えた,資本ス トックの積み増しという任務も帯びている。石 油価格の高騰によって,GCC 諸国は莫大な経常 黒字を計上しており,国際金融市場で活躍でき る財力を備えることができた。GCC 諸国は今や アジア各国とともに,年間8,000億ドルに上る経 常赤字に苦しむ米国の最も重要な資金供給国と なっている。1970年代,欧米諸国と金融機関は 石油輸出国に対し,世界の経常収支のバランス を保つため,たなぼた式で得た石油収入を市場 に投資するよう懇請したが,その当時の様子が 現在,いろいろな意味において再現されている ように思われる。しかし同時に,高度に多様化 された金融産業の出現(例えば,ヘッジファン ドやデリバティブ市場),ユーロの登場,そして より多様化した地域経済の発展により,現在は 1970年代の状況とは著しく異なるシナリオと選 択肢に満ちているのである。 GCC諸国内において様々な投資機会が創出 されているため,国内投資が従来のオイルダ ラーによる対外投資と競合している,としばし ば指摘され,そのように信じられているようで ある。しかし,より詳細に調査したところ,国 内投資の絶対額はかなり増加しているものの, その相対的な重要性は1980年代および1990年代 と現在を比較すると実際に低下している。最近 の石油収入の急増により,国内および対外投資 の資金は十分に確保されている。対外投資は石 67 中東協力センターニュース 2008・2/3

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油の収入増と比例して拡大しており,今では投 資可能総資金の50%近くを占めている!。 過去数年間,GCC 諸国は国内経済の新たな戦 略的方針を検討する際に重要な要素となる対外 投資に積極的に乗り出している"。米国,英国お よびオランダにおける SABIC の数十億ドルに 上る戦略的投資に加え,サウジアラムコとクウ ェート石油公社(KPC)は,中国と韓国で製油所 と貯蔵施設の建設プロジェクトに投資を行って いるが,これは顧客相手国との長期的関係の強 化と製油所の重質油精製能力の増強を狙ってい るものである。重質油は域内の原油生産量のか なりの部分を占めており,サウジアラビアが余 剰生産能力を有しているのはこの重質油であ る。一方,ドバイは中東・北アフリカ諸国とパ キスタンにおける Emaar 社の不動産投資プロ ジェクトに加え,国内産業をサービス業と観光 業へと多角化していく上で必要となる企業,例 えば P & O と Tussaud Group などの企業買収を 積極果敢に実施している。電気通信分野では,

Saudi Ogerがトルコで,そして UAE のイッティ

サラート社(Etisalat)がパキスタンと西アフリカ

において,それぞれ巨額の投資を行っている。 工業投資で目に付くのは,ドバイ・インターナ ショナル・キャピタル(Dubai International Capi-tal)による英国の技術会社,Doncaster Group とダイムラー・クライスラー社(2%)の買収 である。また,アブダビに本拠を置く Mubadala 社はフェラーリ(5%)と Piaggio Aero(35%) の株式を取得した。カタール投資会社(Qatar In-vestment Company)は フ ラ ン ス の Lagardere (6.1%)に出資する一方,30%の権益を保有し ていた EADS 社については,2006年4月に半分 の7.5%を売却したが,残り7.5%の権益は現在 も保持している。地理的観点から分析すると, 投資先は明らかにアジアに向けられており,こ れは1970年代には見られなかった現象である。 石油輸出国の有価証券投資戦略は,金融市場 の全般的な発展に歩調をあわせ,より洗練され たものになっている。ヘッジファンドは別とし て,より収益性の高い社債や公債,株式投資に 人気が集まっている。これにあわせ,銀行預金 や無担保長期債券の重要性が相対的に低くなっ ている。国際決済銀行(BIS)に報告義務を持つ SourceIMFRussia

NorwayVenezuelaAlgeriaLibyaIranAngolaNigeriaBruneiIraq data not available

**Hong Kong

TaiwanSingaporeSouth Korea

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銀行に預けられている石油輸出国の資産は多く の通貨によって構成されている。ドル建て証券 の占める比率は1990年代半ばの80%近くから 2004年末には60%に減少している。同 比 率 は 2005年には70%まで持ち直したが,その後再び 減少に転じている。ユーロがドルの代替通貨と して選択されており,その値動きはドルと反比 例している。一方,アジア諸国の通貨では特に 日本円が対外資産保有の主要通貨としての地位 を確立できずにいる#。引き続くドル安への懸 念が高まってはいるものの,GCC 諸国はドルか ら完全に離脱したわけではない。これは次の地 域別対外投資先を見れば判るだろう;投資資金 総額の約80%がいまだに欧米の証券市場,つま りドル市場に投資されており,アジアと中東・ 北アフリカ向け投資は伸びてはいるものの,そ れぞれ10%に過ぎないのである。 GCC諸国の対外投資収益は,SWFs に関する 議論からも分かるとおり,勢いを増す保護貿易 主義によってかなりの打撃を受ける恐れがあ る。欧米諸国は,アジアの工業発展国と石油輸 出国の SWFs によって投資される戦略的資金が 潜在的な「非友好国政府」の自由裁量の下に置 かれる可能性があることと,投資先が変わり, 資金が株式やその他の高リスク金融商品に移る ことによって金融市場のバランスが大きく崩れ ることを危惧している。SWFs の多くが透明性 に欠けていることもまた,不安材料となってい る$。保護主義が強まっている傾向は次の2つ の事例が示している;!中国海洋石油総公司 (CNOOC)がシェブロンより高額に て Unocal の買収を提案したにもかかわらず,米国政府は これを拒否し,シェブロンによる買収を認めた。 "ド バ イ・ポ ー ト・ワ ー ル ド(Dubai Port World:DPW)は,英国の船舶輸送会社である P & Oを買収した後,P & O の米国資産を売却 せざるを得なくなった。その一方で,何の問題 もなくスムーズに買収が行われたケースもあ る。例えば,SABIC は GE Plastics を116億ドルで 買収し,また,アブダビ投資庁(Abu Dhabi

In-vestment Authority:ADIA)はシティグループ

(Citigroup)の4.9%の株を取得したのである。 「ドバイモデル」:観光,サービス,不動産 貿易,サービスおよび観光の3事業の開発・ 拡大は,GCC 諸国の新たな産業多角化戦略であ SourceIIF 69 中東協力センターニュース 2008・2/3

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GCC Sovereign Wealth Funds:

Abu Dhabi Investment Authority(ADIA) 250−825 SAMA & Government Institutions(Saudi Arabia) 250 Kuwait Investment Authority 160−250 Qatar Investment Authority 30−50 Dubai International Capital 5−10 GCC Central Banks: UAE 25 Oman 15 Kuwait 10 Qatar 5 Total GCC 750−1,330 Sovereign Wealth Funds other Oil Exporters:

Bank of Russia Reserves & Oil Stabilization Fund(Russia) 260 Norwegian Pension Fund 286

Kazakhstan 15

Azerbaijan 1.6

Brunei 30

Central Banks other Oil Exporters:

Iran 70 Algeria 70 Libya 50 Norway 36 Nigeria 45 Venezuela 45

Total Other Oil Exporters 908.6 石油関連ファンドの推定資産額(US$ billion)2006年

SourceRamin Toloui,“PetrodollarsAsset Pricesand the Global Financial System,”Pimco Capital PerspectivesJanuary2007,4;Brad Setser

Rachel Ziemba,“What Do we know about the Size and Composition of Oil Investment Funds?”RGE MonitorApril2007,5,Norwegian Central Bank

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り,ドバイが先頭に立っている。国庫収入に占 めるドバイの純石油収入の比率は1990年の33% から今では5%以下まで低下している!。この 事実は経済の多様化が強力に推進されたこと と,原油の生産量が減少していることを物語っ ている。ドバイでは特に観光事業に焦点が当て られており,年間約600万人に上る現在の観光客 数は2010年までに1,000万人に達すると予想さ れている。新規のメガプロジェクトが次々に発 表されているが,2007年5月に明らかにされた, Bawadi地区におけるホテル街建設プロジェク トはその好例である。同ホテル街の長さはラス ベガスのホテル街を凌ぐとのことである"。観 光事業に加え,ドバイは様々なフリーゾーンの 設置と投資インセンティブによって,自国を貿 易と再輸出の拠点にすることを狙っている。こ のような新たな事業の発展は不動産・建設部門 に活況をもたらし,同部門は今やドバイの GDP の20%以上を占める,最も重要な経済分野のひ とつに成長した。また,いまだ未解決の問題は あるものの,ドバイとバーレーンで2006年に制 定された不動産自由保有権法(Freehold laws)に よって,所有権の法的規則がより明確となった。 ドバイの成功を目の当たりにした他の GCC 諸 国はその経済開発手法を自国のモデルとしてこ ぞってこれに追随し始めた。多額の資金をつぎ 込んだ豪華な不動産プロジェクトや Palm など の人工島建設プロジェクトがバーレーンやカ タールで進捗中である。2003年,サウジアラビ アの最高観光委員会(SCT)は観光事業の開発に より新規雇用機会を創出し,2020年までに230万 人を観光分野で雇用するとの幾分,野心過剰と 思われる計画を発表した#。同国はまた,フリー ゾーンをモデルとした経済特区をキング・アブ ドッラー経済都市(King Abdullah Economic City)に開設する予定である。この経済都市はド バイの不動産開発大手,Emaar 社が率いるコン ソーシアムによって建設される。 GCC諸国の不動産・建設部門は引き続き力 強い成長を見せており,その成長の陰りは今の ところドバイでも表面化していない$。急激な 経済成長と移住者を含む人口増により,不動産 物件の需要が増大しているが,供給サイドでは, 建設プロジェクトが遅れているため,不動産価 格が高騰している。鉄鋼やセメントなどの建設 資材の値上がりも高騰の一因になっている。 ドバイは不動産賃貸料の引き上げ率の上限を 2006年に15%,2007年に7%,2008年に5%と それぞれ定めたが,さらに不動産市場の透明性 を高めるため市場の監視機関として「不動産規 制庁(Real Estate Regulatory Agency:RERA)」 を新たに設立した%。但し,ドバイ土地庁(Dubai Land Department)が今までどおり法的責任機関 として不動産関連法の制定などの責務を遂行す る。アブダビもまた同様の法整備を進めており, 住宅ローンの利用が UAE ではかなり増加して いる。アブダビはドバイの後を追い,ラーハ・ ビーチ(Raha Beach)やリーム島(Reem Island), サアディヤート島(Saadiyat Island)などの世界 の注目を引く豪華な不動産開発プロジェクトを 進めており,不動産価格も2007年に急騰してい る。しかし,アブダビは隣国ドバイとは異なり, 家族と文化に狙いを定めた観光開発を目指して おり,ルーブル美術館やグッゲンハイム美術館 の分館,フェラーリのテーマー・パークを併設 した F1レース場の建設など,熟慮を重ねてプ ロジェクトを選択しているように思われる。 UAEの不動産市場は豪華な不動産に対する 海外の富裕層の需要を見込んでいるため,手ご ろな価格の住宅物件を求める地元住民の重要と 合致しないことがしばしばある。対照的にサウ ジアラビアの場合,人口が多いため,もし住宅 ローンの利用が拡大すれば,同国の不動産市場 は裾野がより広い一大ブームを招来するかもし れない。アル・ラジヒ銀行(Al Rajhi Bank)は 2007年5月に住宅ローンの貸付を開始した。一

71 中東協力センターニュース

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方,サウジアラビアで最大の不動産開発会社の 一つで,リヤドに本店を置くダール・アル・ア ルカン不動産開発会社(Dar Al‐Arkan Real Es-tate Development Company)は2007年4月 に Kingdom Installment Company,アラブ・ナショ ナル銀行(Arab National Bank)および世界銀行 グループの民間部門融資機関である国際金融公 社(International Finance Corporation)と共同で, 不動産金融の合弁会社を設立した!。なお,サウ ジアラビアでは不動産担保法(mortgage law)が 2007年に制定される予定であったが,いまだ実 現していない。 ドバイの石油収入は同国経済においてその重 要性を失いつつあるが,経済開発プロジェクト は,サウジアラビアやロシア,イラン,アブダ ビなどの国々から流入する,主として石油が生 み出している投資資金に大きく依存している。 貿易とサービス産業の拠点になるには,自国を 中継地とする経済圏が両端に存在する必要があ り,ドバイはその成功例であるが,容易に真似 のできるものではない。特に同一地域内にある GCC諸国では,次々と現れる似通った不動産プ ロジェクトやサービス産業に見合った需要が十 分にない場合,問題が起きるだろう。ドバイに 続きクウェートとバーレーンが高さ1,001メー トルと1,022メートルの世界で最も高いタワー を建設すると発表したが,こうした非合理的な 活況を呈している時は,さほど悲観的な見方は 生じないようである。しかし,新規プロジェク トが登場すれば,現在の過熱した不動産市場は 今後2年間,冷え切ってしまうだろう,と多く の関係者が予想している。 国内のエネルギー需要 経済の多様化について語るとき,忘れてなら ないのは,金の卵を産むガチョウの話である。 GCC諸国の石油とガスは,エネルギー集約型産 業の発展,オイルダラーの還流そしてサービス 業を志向する「ドバイモデル」戦略を導いた。 国際石油市場における OPEC の役割はさらに 高まり,原油生産能力増強に関するこれら各国 のプロジェクトに重大な関心が向けられてい る"。しかし,それらのプロジェクトは巨額の投 資を必要としており,たとえ投資によって能力 増強が実現したとしても,それは必ずしも石油 の輸出増には結びつかないのである。なぜなら, 国内のエネルギー需要が急速に拡大しているか らである。バーレーン,オマーン,シリアなど 中東の非 OPEC 諸国は生産量の減少に直面し ており,将来の石油増産の希望は湾岸の OPEC 諸国,特にサウジアラビアとイラクの両国に託 されている#。2007年6月,国際エネルギー機関 (IEA)のチーフエコノミスト,Fatih Birol 氏は, 「仮にこの両国が増産できないとなれば,世界の 石油市場は2015年ごろには“壁に突き当たる (hitting a wall)”危機に瀕しているだろう」と指 摘している$。 GCC諸国ではガスと電力の供給不足がより 鮮明になっている。UAE では油田への再圧入が 予定されていたガスの半量が夏季の発電用燃料 に振り向けられ,さらに,多くの発電所が発電 燃料をガスから燃料油へと転換せざるを得なか った。合計150万バレルの重質原油と燃料油が GCC諸国において夏季の発電に使用された% GCC諸国とその他 OPEC 加盟国のエネルギー 需要の急増は国際エネルギー市場に大きな変化 をもたらしている。IEA の報告によれば,2007年 の総需要増(101万バレル/日)の88%が中東と アジア諸国の需要増によるものであった。リー マン・ブラザーズは,「OPEC 諸国の2008年の需 要は37万バレル/日,率にして4.4%増加し,そ のうちサウジアラビアが10万5,000バレル/日, GCC諸国全体では19万5,000バレル/日を占め る」と予測している&。また,石油専門家の中に は,イラン国内の需要が増え続け,国内のエネ ルギー消費がさらに増大すれば,イランの石油 72 中東協力センターニュース 2008・2/3

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輸出量は急減する,と予想している者もいる。 イランの燃料油に対する補助金額は GCC 諸国 より多いが,政治的に不安定なこれらの国々に とって,こうした補助金制度は社会契約の一環 とみなされている。2007年6月にイラン政府が 導入した,スマートカードによるガソリンの配 給制度はガソリンステーションで発生した暴動 事件の引き金となった!。 環境に悪影響を及ぼすことはさておいて,天 然ガス不足を支えている燃料油は今後その供給 量を減じる可能性がある。ペトロ・ラービグ (Petro Rabigh)などが建設を進めているコン バージョン・リファイナリー(conversion refin-ery;精製設備が高度化された製油所)が操業を 開始すれば,ディーゼル油や残留物のより少な い軽油など,さらに付加価値の高い燃料油が生 産されることになるからである。GCC 諸国の電 力は34%が石油製品,そして58%が天然ガスに よって生産されている"。中東・北アフリカ全 体では,天然ガスによる電力生産量の比率は 64%とさらに高くなり,石油製品は31%,水力 と輸入石炭が5%を生産している#。天然ガス の回収率の向上,構造性天然ガス埋蔵量のさら なる発見,カタールとイランからガスが供給さ れる域内ガス売買計画の推進などが喫緊の課題 となっている。2007年6月,カタールはドルフ ィン・ガスプロジェクトのパイプラインを通 じ,アブダビ向けの天然ガスの供給を開始し, さらにクウェートにも LNG(液化天然ガス)を 輸出すると発表した。また,バーレーンは今後 3年以内にイランからガスを輸入したいとの希 望を表明している$。シャルジャのクレセント 石油(Crescent Oil)/ダナガス(Danagas)とイ ランとのガス価格交渉はほぼ合意に達してお り,パイプライン施設もそのほとんどがすでに 完成している%。一方,天然ガス不足に加え,既 存の発電能力も不足している。発電能力増強の ペースは GDP の成長と電力の需要増に遅れを 取っている。この遅れの要因は,都市の拡張, 急速な工業発展およびエアコンと脱塩水の利用 増である。アラブ石油投資公社(Arab Petroleum Investments Corporation:APICORP)は,2007年 から2011年の期間,中東・北アフリカ地域の発 電能力は年間6%増で拡大され,これに要する 投資額は612億ドルで,そ の う ち GCC 諸 国 が 300億ドル近くを占める,と見積もっている&。 このような状況下,アラブ諸国と湾岸各国は 核エネルギーの開発に強い関心を示している。 GCC諸国の既存計画とは別に,イラン,エジプ ト,マグレブ諸国,ヨルダンおよびイエメンが 自国の核エネルギー開発計画をそれぞれ発表し た。ヨルダンは同国初の原子力発電所を2015年 までに保有する計画を立てている。イエメンに ついては,必要投資額と政治的に不安定な国内 事情を勘案すれば,計画実現の可能性は低く, フィージビリティ・スタディも委託企業の経験 不足と資本金不足によってすでに撤回されてい る。また,この委託企業の選考にあたり身内贔 屓があったとして非難の声も上がっていた' 一方,UAE はフランスと核エネルギー開発協力 協定をすでに締結しており,ドバイは10年以内 に原発を建設するとの青写真を描き,また,ア ブダビは原子炉2基の売買交渉をフランスと進 めている(。原発の操業と核廃棄物貯蔵の安全 性の問題に加え,核燃料の供給確保の問題もあ るが,これについては,ほとんど関心が払われ ていない。原子力発電所の総コストに占める核 燃料の比率はわずかであり,コストのほとんど が建設関連費用である。ウランもまた限られた 資源であり,炭化水素資源より少ないという事 実を忘れてはならない。このためウラン価格は 過去数年間で10倍も高騰しているのである。オ ックスフォード・リサーチ・グループは,「中国 やインド,ロシアなどの新規プロジェクトによ る需要増を計算に入れず,現在の需要をベース として試算したところ,2016年以降,高品質ウ 73 中東協力センターニュース 2008・2/3

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ランの供給量は急激に減少し,2066年ごろまで に核エネルギーは“エネルギーの絶壁(energy cliff)”から転落する可能性がある。ウランを濃 縮するためには,核燃料によって生産されるエ ネルギー以上のエネルギーが必要となるだろ う」と推測している!。この難題は,核燃料の再 処理や高速増殖技術の採用によって解決される 可能性がある。しかし,高速増殖技術は多額の 費用を要するばかりではなく,信頼性にも欠け ていることがすでに証明されている(このため 例えば,フランスとドイツは既存または計画中 の実験プラントを閉鎖している)。さらにもうひ とつの難題がある。それは,プルトニウムの生 産も可能となるため,その拡散と貯蔵上のリス クが増幅されるという問題である。アラブ諸国 が原子力発電所の建設計画を推し進めるのであ れば,核燃料の長期的な供給確保が必要となる だろう。 湾岸諸国は,生産される天然ガスのかなりの 量を油層の圧力を維持するため老朽化油田に再 圧入している。油田に再圧入することによって, ガスを二酸化炭素を含む溶解ガスの状態に戻す ということは,炭化水素燃料が環境に及ぼす悪 影響を潜在的に軽減するということであり,ま た,発電所や海水淡水化プラント,その他の産 業に緊急に必要となっているガスを失うという こ と も 意 味 し て い る の で あ る。ア ブ ダ ビ の Mubadala社の子会社 Masdar 社(アブダビ未来

エネルギー社:Abu Dhabi Future Energy Com-pany)は,「二酸化炭素回収・貯留(Carbon

Cap-ture and Storage:CCS)とその原油二次回収へ

の適用」という数十億ドルに上るプロジェクト のフィージビリティ・スタディを開始した。同 社は CCS 事業では GCC 初のパイオニア企業で あり,当該 CCS プロジェクトは世界最大の規模 を誇ることになるだろう"。また,再生可能エネ ルギー分野において,Masdar 社は発電能力100 メガワットの集光型太陽熱発電(Concentrated Solar Power:CSP)プラントを2011年までに建 設すると発表した。この発電能力は,従来型の 中規模発電所と同等の500メガワットまで引き 上げられる予定であり,実現すれば UAE の現 行の発電能力(1万4,800メガワット)がさらに 増強されることになる。 もう一つ重要で忘れてならないことは,GCC 諸国はエネルギーをより一層効率的に利用でき る潜在性を多分に秘めている,ということであ る。それは,断熱効果に優れたビルの建設やグ リーン・ビルディング(green building;環境に 配慮した建築)技術の採用,公共交通機関の利 用促進,エネルギーの浪費抑制など,多岐にわ たっている。エネルギー問題は供給面からのみ 論じられるべきではなく,省エネルギーこそが GCC諸国では最も重要なエネルギー資源とな るのである。Masdar 社は,建物の電力供給に要 するエネルギー量は,今後7年間で2倍にな る,と予測している。ドバイはグリーン・ビル ディング・イニシアティブを推進しており,持 続可能建築物に関する法律(sustainable building code)を2008年1月に導入する予定である。この 法律は,米国の「エネルギーと環境設計のリー ダーシップ(Leadership in Energy &

Environmen-tal Design:Leed)基準」をモデルとして作成さ

れている。アブダビの Masdar City は,グリー ン・ビルディング技術の採用や光電池を利用し た冷暖房,汚水の再浄化技術の活用,家庭廃水 の灌漑利用による脱塩水消費量の80%削減など の方策によって,中東で初のゼロ炭素・ゼロ廃 棄物都市になることを目指している。同様に, バーレーンの世界貿易センター(World Trade Center)では必要エネルギーの15%が付設の風 力タービンによって生産される予定であり,ま た,ドバイ国際金融センター(Dubai International Financial Center)の ラ イ ト ハ ウ ス・タ ワ ー (Lighthouse Tower)は太陽と風力エネルギーの 活用による,エネルギー消費量65%削減を計画 74 中東協力センターニュース 2008・2/3

(11)

している2。27年11月,エミレート戦略研究セ ンター(Emirates Center for Strategic Studies)で 開催された会議において,多くの専門家が GCC 諸国による太陽エネルギー利用の可能性にスポ ットライトを当てた。太陽エネルギーの利用に 要するコストはスケールメリットと技術革新に よって削減できる可能性がある一方,炭化水素 や原子力など従来のエネルギー資源のコストは 上昇傾向にある3。 結 論 GCC諸国の経済情勢は1970年代とは様変わ りしている。これら諸国は今や単なる原油の輸 出国ではなく,炭化水素資源生産の価値連鎖を 石油化学産業やエネルギー集約型産業へ広げる ことによって,産業の多角化を着実に推進して いる。同時に,貿易とサービス,そして不動産 部門の開発に焦点を当てたドバイモデルが人気 を博しており,さらに,国際金融市場において オイルダラーが還流し,対外資産の運用による 莫大な利益が生み出されている。石油価格が50 ドル∼60ドル/バレルまで下落すれば,それは GCC諸国経済のリスク要因になるが,需給が逼 迫している現在の石油市場から判断すると,そ うした価格急落の可能性はかなり低いと言え る。その他警戒すべきリスク要因としては,! GCC諸国の SWFs による企業買収に対し,欧米 諸国政府が講じる保護貿易措置,および"深刻 なガス不足と,域内の不動産ブームに水をさす ような変化をもたらす,国内エネルギー需要の 急増などが挙げられる。 (注)

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(この報告は,競輪の補助金を受けて作成された ものです)

76 中東協力センターニュース

参照

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