日本透析医会雑誌
長期透析に伴う合併症の克服に関する研究
1血液透析施設における C型肝炎感染事故(含:透析事故)防止体制の
確立に関する研究
9HCV抗体陰性患者の多施設長期追跡調査 14
「透析医療事故の定義と報告制度」及び「透析医療事故の実態」に関する
全国調査について 18
院内感染および事故防止を考えた透析室施設基準の作成に関する研究
―「透析施設(室)の医療機関自己評価票」を用いた透析室の現状について― 44
「透析看護度と適正人員配置基準」に関する研究 66
限られた地域での透析患者のウィルス性肝炎および透析事故新規発生の経年的調査と
症例検討およびスタッフ教育を通した予防対策に関する研究 72 本邦の血液透析施設におけるC型ウイルス肝炎感染の実態調査 74
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別 冊
目 次
A. 背景と研究目的
長期透析患者の合併症対策は,透析患者の長期生 存,社会復帰,QOLの向上において不可欠であり,
また社会的には医療費削減の面からも急務となって いる.しかし従来の方法論を継続する限りにおいて は,標準的な合併症対策の研究・普及には相当の時 間を要し,近年,激しい速度で変化している透析患 者及びその周辺を取り巻く社会情勢には対応できな いおそれがある.
一方,最近では,医療の分野でも情報技術革命に 能動的に取り組み,その長所を生かして,医療現場 と研究者との新たな関係並びに医療の提供側と受け 入れ側との新たな関係を創設することが,時代の要 請とされ,それが結果的に合併症の克服に繋がると 考えている.つまり,長期透析患者の合併症対策は,
各論的な研究にとどまらず,適切な検査の実施と結 果の開示,その結果を利用した早期診断と標準的な 治療方法を提示するサポートシステムの構築,同時
平成 14年度厚生科学研究費補助金(効果的医療技術の確立推進臨床研究)
研究報告書
長期透析に伴う合併症の克服に関する研究
主任研究者 山 親雄 社団法人日本透析医会会長
分担研究者 鈴木 満 医療法人松圓会東クリニック病院名誉理事長 分担研究者 秋澤 忠男 和歌山県立医科大学血液浄化センター教授 分担研究者 鈴木 正司 社会福祉法人信楽園病院副院長
分担研究者 吉田 豊彦 医療法人誠仁会みはま病院理事長 分担研究者 横山 健郎 国立佐倉病院名誉院長
分担研究者 室谷 典義 千葉社会保険病院透析部長
分担研究者 長谷川真二 医療法人松圓会東クリニック我孫子所長 分担研究者 山根 伸吾 医療法人松圓会東クリニック病院研究室長 分担研究者 杉崎 弘章 府中腎クリニック理事長
分担研究者 武田 亘弘 株式会社サンエフ会長 分担研究者 黒田 重臣 国立東静病院院長
分担研究者 大平 整爾 医療法人社団札幌北クリニック院長
研究要旨 長期透析患者の合併症対策として,透析定期検査値が発信する兆候を確実に把握し,検査結 果を透析患者とスタッフに伝達・開示をするため,検査結果値を容易に集積・分析し,かつ蓄積できる MedicalInformationNew Technology(MINT)システムを開発した.今年度は追加機能として経 時的変化に関する自動判定,複数項目検査結果から推測される病状,治療判定機能を追加した.加えて,
検査結果判読による治療支援として容易に対処可能な透析診療マニュアルを作成した.このマニュアル はパソコン仕様の電子ブックであり,容易な検索,印刷が可能となっている.また,EBMの構築,透 析治療の標準化,合併症診断・治療の標準化,患者教育・自己管理のサポートシステムの強化を目指し て,サーバー機能を確立した.
に容易なデータ集積と蓄積,それを利用した解析が 重要となってくる.
このような観点から,透析定期検査項目の検査値 が発信する兆候を確実に拾い,伝達・開示する手法 を開発すると同時に,各透析施設の検査結果値を集 積,蓄積できる MedicalInformation New Tech- nology(MINT)システムを開発することを目的 にした.本年度は昨年度作成配布した MINTシス テムの改善,機能追加とサーバーを利用したデータ ベース構築を目標においた.本システムは将来的に,
結果解析による EBM の構築,透析治療の標準化,
合併症診断・治療の標準化,患者教育・自己管理に 活用できるシステムにバージョンアップすることを 当然視野に入れている.
B. 研究方法
1) MINTソフトの改善
MINTシステム利用操作は主に患者登録,検査 データ入力とデータ蓄積,検査結果判定処理,検査 成績表印刷・配布から成っている.システム使用の 利便性を考慮し,一部改善を行った.改善はセキュ リティ強化,項目選択,患者検索,患者登録機能,
画面サイズ任意変更,検査評価表について行った.
2) MINTソフト機能追加
ⅰ) 動態値による経時的変化判定
慢性維持血液透析患者は定期的に月 2回の検査が 一般的に行われているが,検査値の変化は早期診断 に重要な指標となる.そこで,変化を適確に察知し,
その情報を容易に伝達,開示する方法の検討と変化 幅,意義等その条件について検討した.
ⅱ) フローチャート式複数項目検査判定
透析患者にみられる貧血は内因性エリスロポエチ ンの産生低下,赤血球寿命の短縮,体外循環に伴う 失血,栄養不良が主な原因と考えられている1).貧 血は合併症対策の重要課題の一つであり,早期診断 支援対策が必須である.そこで,貧血判定に関わる 検査項目,基準値等を検討し,貧血判定のフローチャー
ト作成を行った.
3) 透析診療マニュアル
透析患者の合併症は多岐にわたっており,死亡原 因も心不全,脳血管障害,感染症,悪性腫瘍,心筋 梗塞が上位を占めている.そこで MINTソフトに よる検査結果自動判定とその結果出力後の更なる診 療支援として,診断,治療が適切に行えるよう透析 診療マニュアル作成を検討した.マニュアルはパソ コン仕様とし,簡便で容易な検索・参照ができる形 式とした.
4) MINT使用状況調査
初年度の研究成果として平成 14年 2月に配布し た MINTシステムの利用状況について調査をおこ なった.調査内容はインストールの有無,ソフトの 活用,検査評価表,コメント,アドバイスの満足度,
基準値の満足度,使い勝手等である.アンケートは 平成 14年7月に MINTシステム送付先の 1019施 設に依頼し施行した.
5) データベースの構築
血液透析者の多岐にわたる合併症の予防と治療の 研究に関しては,膨大な透析患者検査値の統計的処 理による検査・診断・治療との関連における法則性 の発見が重要となる.加えて各専門分野のエキスパー トの研究協力も必要となる.そこで,理論的根拠を 持った科学的データの収集と正確なデータ・情報を 容易に蓄積,活用できるよう,施設 MINTシステ ムを使用した各施設からデータを集積できる MINT サーバシステムの構築を検討した.
6) 倫理面への配慮
パソコンを利用したデータ交換,検査結果判定で は個人情報の漏洩が最重要課題となる.本システム では,システムへの侵入や情報流出に特段の注意を 払い,データを暗号化するとともに,システム,機 能別,使用者の各パスワードを組み合わせたセキュ リティシステムを採用した.また,情報のやり取り
には,当面暗号化したデータにパスワードを付与し て,フロッピーディスクを利用して行うことで漏洩 対策を施した.
C. 研究結果
1) MINTソフトの改善
ソフトの利便性を考慮し一部機能改善を行った.
セキュリティ強化では使用者毎に管理者権限を追加 し,プライバシーの保護強化を行った.項目選択で は,患者に配布する評価表記載項目を各施設で自由 に任意設定できるようにした.患者検索は ~から 始まると ~を含むの検索オプションを加え,
より簡便に検索可能とした.患者登録機能では同一 人物確認画面の表示法を一部変更し,これから登録 しようとする患者をマーキングして表示できるよう にした.加えて,患者マスタの削除機能を追加した.
画面サイズは任意に変更できるようにし,経時的検 査結果グラフが数項目で比較閲覧できるように配慮 すると同時に印刷機能を追加した.検査評価表につ いては,経時変化判定結果,複数項目判定結果が追 加されたことにより,従来の項目分類(透析効率関 連・貧血・感染等・骨代謝・糖蛋白脂質・肝胆膵筋・
免疫・内分泌・その他)に付加して再構成した.そ の結果,貧血の項ではヘモグロビン,ヘマトクリッ ト,血小板,フェリチンの変化値とその判定結果お よび貧血フローチャート結果が加わり更に充実した.
糖蛋白脂質の項では HbA1cの変化値が加わり,糖 尿病治療支援が容易となった.また,判定結果参照 として検査値が異常値を示した場合には注意,警戒,
警告に連動し,黄色,ピンク,赤の色別で示され,
それに附随したコメントが付加されていたが,画面 上でもコメントの全文が参照できるようにした.
2) 追加機能
ⅰ) 動態値による経時的変化判定
全ての項目で経時的変化が表およびグラフで参照 できるが,経時的な変化が重要と考えられる項目に ついては,前回との差,前々回との差,3ヶ月前と の差または前回との割合を比較判定し,その変化程
度によってコメント表示を行い,変動情報が容易に 把握できるよう配慮した.現在その判定可能項目と しては,ヘモグロビン,ヘマトクリット,血小板,
フェリチン,IntactPTH,HbA1cである.ヘモ グロビンでは,前回,前々回,3ヶ月前と各々の差 が±1.5g/dLでコメント表示が行われる.ヘマト クリットも同様に前回,前々回,3ヶ月前と各々の 差が±3.0%変動した場合コメント表示が行われる.
血小板は前回割合との比較で-30%でコメント表 示が自動的に行われる.フェリチンは前回,3ヶ月 前との変化差が各々-20ng/mL,-50ng/mLで 表示される.IntactPTHは前回差との比較で 100 pg/mLを超えた場合で,HbA1cは前回差比較で 0.5%を超えた場合,コメント表示されることとし た(資料 1を参照).この数値の根拠は現在のとこ ろないが,注意を要するものであるとの観点から設 定した.今後のデータ蓄積,分析の中で再考したい.
ⅱ)貧血に関するフローチャート式複数項目検査 判定
貧血に関するフローチャートでは,安定期慢性維 持透析の保険診断マニュアル2)に示された貧血関連 項目をコンピュータ上で自動的に処理し,問題点を オリエンテーリングすることを目的としている.貧 血に関するフローチャート式判定は Ht,Htの前回 差,WBC,便潜血,トランスフェリン,TSAT,
フェリチン,UIBC,鉄,LDH,総ビリルビン,
MCV,CRP,TSH,アルミニウム,IntactPTH の値を考慮し作成した.このフローチャートは,4 つの流れより構成した.①貧血および貧血進行の定 義,②急性貧血を起こす原因となる疾患の異常検査 値をデータベースより検索判定,③鉄欠乏の判定,
④その他,貧血の原因となる疾患の異常検査値をデー タベースより検索判定するシステムである.
① 貧血および貧血進行の定義
これまでの生存率の報告より3),Ht27%未満を 慢性維持透析患者の対処を必要とする貧血と定義し,
これ未満で貧血に関するフローチャートが開始され るように設定した.またこれ以上の値でも,直近2
回の Ht値が合計 3% 以上低下している場合には,
貧血が進行していると判断し,貧血に関するフロー チャート判定が開始される.
② 急性貧血を起こす原因となる疾患の異常検査 値より検索判定
急性貧血を起こす原因となる疾患の第一は,消化 管出血である.このため,便潜血データを検索し,
陽性なら消化管検査の検討を勧める.また便潜血検 査をしていないときには検査を促す.また,透析患 者では薬剤の血中濃度の上昇により,時として骨髄 抑制を起こす事があり,白血球,血小板の変化をチェッ クしこれを警告した.
③ 鉄欠乏の判定
rHuEPO(エリスロポエチン)の使用時は,鉄 の状態のチェックが必須であり,鉄欠乏の判定は重 要な点である.鉄欠乏の判定は,いろいろな方法が あるが,貧血に関するフローチャートでは,トラン スフェリン飽和率(または鉄飽和率)とフェリチン の matrixにより判定する方法をとった.それぞれ の matrix基準値は,今後 MINTシステムより得 られたデータの分析によりさらに検討を行うことを 考えている.
④ その他,貧血の原因となる疾患の異常検査値 をデータベースより検索判定
溶血,鉄代謝障害,葉酸・ビタミン B12・B6・カ ルニチンの欠乏,慢性感染,腫瘍,甲状腺ホルモン,
アルミニウム蓄積症,二次性副甲状腺機能亢進症な ど貧血に関与する検査項目の異常値をデータベース より検索判定する.
以上の判定を通して,その結果から考えられる情 報がコメントとして検査評価表に出力される.この 貧血判定に関するコメントは 43種類となった.判 定結果として得られたコメントは 1つのみ印刷され るのではなく,関連するすべてが印刷される.その 貧血判定フローチャート図を資料 2に示す.このシ ステムでは現在,薬歴情報が参照できないが,貧血 に関するフローチャートに加えることによりさらに,
診断支援に役立つと考えられる.
3) 透析診療マニュアル
本マニュアルは医療スタッフの診療支援を目的と して,検査結果から得られた情報に対してすばやく,
かつ容易に対処できるように作成したインターネッ ト感覚で利用できるパソコン仕様の電子ブックであ る.マニュアル内容は,はじめに,検査基準値,資 料,臨床マニュアル,栄養マニュアル,指導マニュ アル,管理マニュアルで構成した4~7).臨床マニュ アルは透析時合併症と疾患編で構成され,透析時合 併症として高血圧,ショック,胸痛,腹痛,頭痛,
筋痙攣,空気誤入,血液リーク,溶血で構成した.
その具体的内容は臨床症状,病態,鑑別,検査,治 療,教育とインフォームドコンセントについて判り やすく解説したものである.疾患編はアクセス,透 析アミロイドーシス,骨代謝,循環器,呼吸器,消 化器,血液系,内分泌代謝,感染症,泌尿器,皮膚 疾患,免疫・その他に分類し,更に各分類の中で細 分化した.アクセスはアクセス合併症とアクセス診 断チャートに分かれ,チャートでブラッドアクセス の作成と修正を示した.透析アミロイドーシスでは 透析アミロイドーシス,手根管症候群,骨嚢胞,弾 発指(バネ指),破壊性脊椎関節症に細分化されて いる.骨代謝は腎性骨異栄養症,Ca・P管理フロー,
Ca・P管理表からなっており,管理表ではカルシ ウム・リン・IntactPTHとの関係から炭酸カルシ ウムと活性化ビタミンDの投与について詳しくま とめた.循環器は透析低血圧,不整脈,抗不整脈薬,
弁膜症,虚血性心疾患,心外膜疾患,透析心・心筋 症,閉塞性動脈硬化症に分類し記述した.呼吸器は 現在,結核のみである.消化器は,消化管出血,消 化管出血診断チャート,肝炎・肝硬変,C型肝炎治 療チャートとなっており,C型肝炎治療チャートで はチャート式に治療方法を掲載した.血液系では,
透析患者の貧血,貧血診断チャート,鉄欠乏性貧血,
巨赤芽球性貧血,溶血性貧血,白血球減少症,血小 板異常,多発性骨髄腫について解説した.内分泌代 謝は,糖尿病,低血糖症,痛風・高尿酸血症,高脂 血症,カルニチン欠乏症,甲状腺疾患に細分類し,
感染症では敗血症と結核についてのみ掲載した.泌
尿器としては後天性腎嚢胞,腎癌,病腎診断チャー ト,膀胱癌,前立腺癌について,皮膚疾患は皮膚そ う痒症とそう痒症チャートを記載した.免疫・その 他ではアミロイドーシスについてのみ記載した.こ れらはいつでも対処法等知りたい場合に簡便に利用 でき,診療支援に有用と考える.
栄養マニュアルは栄養指示,指導,含有表,献立 表からなり,栄養指示では簡単なカロリー計算が行 える.栄養指導では透析導入,水分管理,カリウム 管理,リン管理,貧血管理,蛋白管理,尿酸管理,
便秘・下痢,ワーファリン療法について作成した.
含有表には食品成分表,料理成分表があり,食品成 分が閲覧できる.また献立表には 1400~2200kcal 別の献立例が掲載されている.
指導マニュアルには生活,食事,検査に関して色々 な患者向けアドバイスが載っている.透析生活では 感染症・シャント・消化管出血・肺水腫・貧血・合 併症・透析不足・高血圧・薬・歯・旅行・運動など の細部項目にわたって 92種類のアドバイスを載せ た.検査に関してはアドバイスを 44項目,食事に ついては 59項目のアドバイスを記載した.患者へ のアドバイスにと考えている.本マニュアルの文書 化した内容を資料 3に示す.本マニュアルは MINT ソフトと合体させ,更なる利便性をはかる予定であ る.
4) MINT使用状況調査
アンケート回答施設は 236施設であり,回収率は 23.2% であった.アンケート時点で MINTシステ ムをインストールした施設は 75施設,これからイ ンストールすると回答した施設は 66施設であり,
回答施設の 59.7% はインストール済みまたは予定 であった.インストールしない理由として最も多かっ たのが「OSの問題」20施設,「他のシステムがあ るから」が 20施設であった.このソフトが活用で きると考えている施設は 70施設中 37.1%,出来な い 10.0%,どちらともいえない 52.9% であった.
検査成績表の患者向けコメントについては満足,ほ ぼ満足 46%,普通 42%,やや不満 12% であった.
患者向けアドバイスは満足,ほぼ満足 43.1%,普 通 43.1%,やや不満 13.7%,検査基準値は満足,
ほぼ満足 37.3%,普通 56.9,やや不満 5.9% であっ た.
5) データベースの構築
災害時に備えた各施設データの保護,施設移動を 伴う継続的データ提供,EBM 構築のためのデータ 集積を目的にサーバーを利用したデータベースの構 築を行った.施設透析患者マスタから未送信データ の抽出を行い,趣旨に賛同し承諾を得た患者につい て,MINTサーバシステムだけが認識可能なコー ド化と暗号化を施した送信用データフォーマット変 換を行い,パスワードを付与しフロッピーディスク にエクスポートして送付するシステムである.
MINTサーバシステムは送付された施設透析患者 マスタを入力データとして医会透析患者マスタにイ ンポートする事になるが,透析患者の転入出による 施設間での透析患者の複合登録の恐れや,医会未登 録施設に転出し医会のデータベースから外れること も考慮し,全国一元化した IDコードが必須である.
そこでインポートデータは入力用一時ファイルに一 旦記録されてインヴァリッドチェックを受け,複合 登録チェックや転入出検証,同期キーによる期日ま たは期間の論理チェック,各種の検証を終了後,透 析患者唯一の IDコードを機械的に付与する形式と した.
MINTサーバシステムが付与した透析患者唯一 の IDコードは,施設 MINTシステムだけが認識 可能なコード化と暗号化を施した返信用データフォー マット変換を行い,パスワードを付与しフロッピー ディスクにエクスポートして施設に送付するシステ ムとした.送付された透析患者唯一の IDコードを 施設透析患者マスタにインポートすることによって,
MINTサーバーへの患者登録が完了する.
MINTサーバーへの患者登録が完了すると施設 検査結果データの送信が可能となり,施設検査結果 データから未送信データを抽出し,透析患者唯一の IDコードを使用して MINTサーバシステムだけが
認識可能なコード化と暗号化を施した送信用データ フォーマット変換を行い,パスワードを付与しフロッ ピーディスクにエクスポートして送付できる形式で ある.MINTサーバシステムと加入施設 MINTシ ステム間の交信を,患者の同一性・ ID確認に必要 な個人基本情報の同期を取るための交信と,患者に 係るデータの交信との二つに分け,前者の施設透析 患者マスタと医会透析患者マスタとの同期を取るシ ステムを独立モジュールとして製作した.つまり,
医会システムが記録し保管する患者の検査データは,
医会システムにより認証された施設の透析患者だけ のものになるようにした.
D. 考察と結論
MINTシステム開発理念は透析施設の IT化支援,
ソフト化による透析治療の標準化,データベースに よる情報収集と EBM 構築,情報公開とインフォー ムドコンセントを掲げ進めている.MINTシステ ムは,日本透析医会の保険診療マニュアルで定めた 透析定期検査項目の検査結果値を各透析施設が簡単 に集積でき,かつそのデータの蓄積およびそのデー タ判定結果をスタッフ,患者双方が活用できるソフ トである.本ソフトでは検査異常値の場合の信号発 信と,それに附随した患者向け,スタッフ向けコメ ントの出力,そして医師を含むスタッフと患者間の データ共有化システムを組み込んでいる.検査所ま たは検査室から送られる FDに記入された患者デー タをパソコン入力すると,異常値のピックアップと 同時に,異常値データに対するコメントが自動印刷 され,当面の管理,治療に役立つと共に適切な予防 措置により合併症の進行を防止すると考える.
本年度は,MINTシステムの向上を中心に機能 の追加,充実化をはかった.経時的変化の変動差が 重要と考えられる項目については動態基準値を設定 し,変化程度によって注意を促すコメントが出力さ れる.複数項目検査判定は貧血について検討した.
慢性維持透析患者のヘマトクリット(Ht)の目標 値は死亡リスクが最も低値の 30~35% が良いとさ れているが8),現行の保険制度下達成率は,透析医
会の調査では 50% 前後である. 透析患者の貧血は 腎性貧血以外に,多彩な原因があり常にチェックが 必要である.特に,rHuEPO(エリスロポエチン)
の使用時は,鉄の状態のチェックが必要であり,ま た,rHuEPOの投与にも拘わらず貧血の進行して いく症例に対しては,腫瘍等含めて全身のチェック が必要である.この点,日本透析医会が作成した
「安定期慢性維持透析の保険診断マニュアル」は,
慢性維持透析患者で特別な合併症を有しない症例に ついて,標準的な検査項目と検査頻度を設定し,慢 性維持透析療法の質の向上と保険の効率的運用に寄 与している.そこで,この検査項目を基礎としてフ ローチャート判定を作成した.この自動判定システ ムでは,貧血判定に関するコメントが43種類組み 込まれ,関連するコメントが出力される.今まで医 師が高度な判断を行っていた部分が,即座に標準的 な判断がなされ参考にできることで,スタッフも早 期に情報を共有できるものと考えられる.フローチャー ト式判定は現段階では貧血のみであるが,骨代謝等 に関しても次年度に作成予定である.
加えて,新たに作成した透析診療マニュアルを活 用することにより,より標準的な診断・治療支援が 行えるようになった.透析診療マニュアルは色々な 透析関連合併症について記載され,医師のみならず,
他のスタッフにとっても大変参考になると思われる.
CDROM版に HTML形式で作成したことで,容 易な検索,簡易な試し計算がその場で行え,非常に 便利になっていると考える.将来的には,このマニュ アルと MINTソフトを一体化させ,結果判定と透 析診療マニュアルのリンクを行う予定である.
サーバーを利用したデータベース構築は,災害時 に備えた各施設データの保護,施設移動を伴う継続 的データ提供,EBM 構築のためのデータ集積にとっ て重要である.この機能が整うことで,災害時に備 えての各施設データ保存や患者が施設移動を行う際 に患者移動先の施設 MINTシステムに過去の継続 した検査値データを提供することが容易となった.
加えて,研究者・研究機関と病院・医師,病院・医 師と他病院・医師,患者と医療関係者の間の自由な
情報交換が可能となる.膨大なデータ提供を容易に したことで,研究者によるデータ分析が可能となり 新たな EBM 構築も行えると考えられる.
Version3は,フローチャート式判定の追加,透 析効率に関する機能を追加し,更に充実させる予定 である.加えて通信情報機器(携帯電話等)等を用 いるオンデマンドの情報提供による患者の自己管理 の強化,医療提供側と受け入れ側の関係強化,生活 習慣改善策の事前発信等ができるソフトにする予定 である.
MINTシステムはパソコン 1台あれば,診療所 や病院内に構築されている ITシステムとは関係な く利用もできるシステムであり,充分利用価値があ るシステムである.本システムによって,患者デー タの蓄積,患者への検査データ情報提供,またスタッ フ側への注意喚起など強力な診療支援ソフトとして 大変有効活用できるものと考えている.
E. 研究報告
1) 山根伸吾,長谷川真二:MINT 検査データ 評 価 お よ び 診 療 支 援 シ ス テ ム . Clinical Engineering,14(1):16,2003
2) 平澤由平,山親雄,鈴木満 他:長期透析 に伴う合併症の克服に関する研究.日本透析医
会雑誌 17(2):282291,2002
3) 山親雄:検査の minimum requirement と包括検査.透析患者の検査値の読み方(監修 黒川清),304306,日本メディカルセンター,
東京,2002
F. 引用文献
1) 飯田喜俊,二瓶宏,秋澤忠男,椿原美治編集:血液浄化 療法.合併症とその治療,貧血,EBM 血液浄化法,pp.
252257,金芳堂,京都,2001
2) 日本透析医会:安定期慢性維持透析の保険診療マニュア ル(日透医誌別冊),1998
3) 前田憲志:わが国の貧血治療の現況と至適目標.透析患 者の合併症とその対策,日本透析医会合併症対策委員会編,
日本透析医会,東京,pp.1124,2000
4) 斎藤明,太田和宏 監修:長期透析の合併症,透析療法 ハンドブック,新生会第一病院編,医学書院,東京,pp.
150174,1987
5) 黒田満彦:慢性腎不全の症状.腎不全ハンドブック,越 川昭三編,メディカルフレンド社,東京,pp.51154,
1984
6) 佐中孜:高齢者透析に共通する医学的特徴と対策.腎不 全治療学,太田和夫監修,江南堂,東京,1997
7) 香川芳子 監修:五訂食品成分表2001,女子栄養大学 出版部,東京,pp.6441,2001
8) 日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況 2001 年12月31日現在.
平成 14 年度厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服緊急対策事業(肝炎分野))
血液透析施設におけるC型肝炎感染事故(含:透析事故)防止体制の 確立に関する研究
主任研究者 山 親 雄 (社)日本透析医会会長
研究要旨 本研究に参加するほとんどの研究者は,平成11年度および平成12年の厚生科学特別事業で ある透析医療機関におけるウィルス性肝炎と透析医療事故防止対策に関与し,それぞれ「透析医療にお ける標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル」と「透析医療事故防止のための標準的透析 操作マニュアル」の策定に関与した.これらのマニュアルは全国の透析施設に配布され,施設の感染と 事故防止マニュアルに反映されたと考えられる.
しかしながら,ウィルス性肝炎の院内感染は,集団発生こそ報道されなくなったが,散発例は存在し,
わが国の透析患者におけるHCV抗体陽転率は高いとする報告もある.また,透析医療事故についても,
経験的には減少しているとは思えない.このことは,マニュアルの内容に問題があるとは思われず,マ ニュアルに従った標準的な透析操作の実行にこそ院内感染や事故を減少させ,克服する鍵があると考え られる.
そこで今回の研究は,従来のマニュアル提示を中心とする防止対策とはまったく視点の異なる防止シ ステムの構築をも目的として研究を開始した.
研究は,1)C型肝炎院内感染の実態調査とマニュアルの遵守についての調査,2)透析医療事故の実 態調査と,マニュアルの遵守についての調査,3)安全(感染防止と事故対策)を考えた透析医療施設基 準の提示,4)安全を考えた適正スタッフ数の提示,5)限られた地域での感染・事故モニター制度の確 立,の5つの研究をスタートさせた.以下にその進捗状況を記す.
1. 透析室におけるC型肝炎院内感染実態調査
1) 愛知県下8施設の透析患者について,凍結保存血清を用いた5年間にわたる追跡調査を実施し,
新規HCV抗体陽転率および感染率を調査した.
2) 日本透析医学会統計調査を用い,透析施設の各種特性(患者数階層別・スタッフ数階層別・施設 規模別など)とHCV抗体陽転率の関係を明らかにする研究を実施中である.
2. 透析医療事故の実態調査
1) 重篤な事故についての全国アンケート調査を実施し,平成12年度調査結果との比較検討を行っ た.
2) 各施設でさまざまである事故の分類と,報告制度について調査した.
3) 事故対策マニュアルの遵守についての調査を実施した.
3. 安全を考えた透析施設基準の策定
1) 透析施設の医療機能評価を実施するため,自己機能評価票を作成した.
A. 研究目的
1. 透析室におけるC型肝炎院内感染実態調査 最近の前向き調査では,HCV抗体新規陽転率は 年1% 未満へ低下している報告が多い.一方で,全 国規模の調査ではなお年23% 以上のHCV抗体陽 転率があるとされる.この違いは,HCV抗体陽転 率が施設によって大きく異なる可能性も示唆してい る.実態調査を通じてこれを明らかにするとともに,
こうした施設に対して,より重点的かつ効率的な感 染防止対策を提示し,透析におけるC型肝炎の克 服を最終目的とする.
2. 透析医療事故の実態調査
近年の透析患者の高齢化・重症化と,集団的体外 循環治療であるという透析治療の特性から,透析医 療事故は減少していないという印象を持っている.
経時的な調査によりこのことを明らかにするととも に,原因の分析により,先に示したマニュアルの改 訂をはかるなどにより効率的な防止対策を提示し,
透析医療事故の低減を目的とする.
3. 安全を考えた透析施設基準の策定
透析施設において過去に発生したウィルス性肝炎 集団発生や事故の調査報告では,人間によるミスの ほか,施設の構造や機器・システムが問題とされる ケースも少なくない.この研究では,そうした透析 施設のハード部分や運用ソフト部分を標準化し,安 全を考えた透析室のあり方を提示することを目的と する.
4. 安全を考えたスタッフの適正配置に関する研究 スタッフの個人的資質や習熟度以外に,スタッフ の疲労や,人員の不足が感染を含めた事故につなが るとする指摘もある.この研究では,施設の透析患 者の重症度に見合った看護師および臨床工学技士の 適正数を提示することにより,透析医療の安全を図 ることを目的とする.
5. 地域における感染・事故モニター制度の確立 感染・事故防止のマニュアル策定が,安全な透析 に寄与することは当然と思われる.しかし最も重要 な点は,現場でのマニュアルの遵守にある.本研究 は,限られた地域において感染や事故例を収集し,
これを基にスタッフを含めた検討や研修を行うこと により,実際の現場でマニュアルを役立て,感染と 事故防止を図ることを目的としている.
B. 研究方法
1.透析室におけるC型肝炎院内感染実態調査 1) 愛知県下の透析医療機関8施設を対象に,5
年間にわたる調査を実施し,HCV抗体の新規 陽転率とC型肝炎新規感染率を明らかにする.
HCV抗体はPA法(第2世代)により測定し,
seroconversion例については,凍結保存血清 を用いてRT-PCR法によりHCV-RNAを測 定した.
なおこの研究は疫学研究に該当するが,平成 14年7月以前に実施されており,疫学研究に 関する倫理指針の適応は受けないと思われる.
4. 安全を考えたスタッフの適正配置に関する研究
1) 最も中心となる看護師について,透析看護度調査票を開発した.
2) これを用いて7透析施設の透析看護度調査を実施した.
5. 地域における感染・事故モニター制度の確立
1) 愛知県内春日井および小牧地区の市民病院を中心とする7透析施設で,ウィルス性肝炎感染新規 発生届出と,スタッフの研修を目的としたシステムを立ち上げ,初期データを登録中である.
2) 愛知県透析医会研修委員会により,事故届出と定期研修会を準備中である.
ただし凍結保存血清を用いており,今後につい ては指針に準じた倫理的配慮をするよう準備中 である.
2) 日本透析医学会統計調査データを用いて,施 設の特性とHCV抗体陽転率の関係を明らかに する研究を実施中である.
2. 透析医療事故の実態調査
1) 透析医療事故のうち,重篤と考えられる事故 について全国アンケート調査を実施し,平成 12年度調査と比較検討をした.
2) 各施設における事故の分類と事故報告制度に ついてアンケート調査を実施した.
3)「透析医療事故防止のための標準的透析操作 マニュアル」の遵守状況を,アンケート調査した.
3. 安全を考えた透析施設基準の策定
(財)日本医療機能評価機構の自己調査票を参考 に,透析施設に特有な機能を加えた自己調査票を作 成し,パイロット使用の後,これを用いた全国調査 を実施した.
4. 安全を考えたスタッフの適正配置に関する研究 独自に開発した透析看護度調査票を用いて,7施 設を対象にパイロット的に看護度調査を実施した.
5. 地域における感染・事故モニター制度の確立 愛知県春日井・小牧地区の2市民病院と関連する 5透析サテライト施設を対象に,ウィルス性肝炎新 規感染例の報告と,スタッフも参加する定期検討・
研修会組織を立ち上げた.また,愛知県透析医会の 呼びかけで,透析事故報告制度とこれに関する定期 検討・研修会の立ち上げを準備中である.
なお,この研究は疫学研究に該当すると考えられ るが,患者情報については個人の特定ができない
(具体的には必要としない)ものであり,かつ疫学 研究に関する倫理指針を遵守して計画するものであ る.
C. 研究結果
1.透析室におけるC型肝炎院内感染実態調査 実施されたHCV抗体陽転率・C型肝炎新規感染 率の調査では,以下に示す研究成果が得られた.
1) 新規抗体陽転率は,2,892人/年の追跡で5 人であり,0.173% 人/年であった.
2) このうち1人は,追跡開始時の凍結保存血清 でHCV-RNAが陽性であったことから,C型 肝炎新規感染率は,0.131% 人/年であった.
3) 新規感染例のうち3例は,比較的短期間に HCV-RNAが陰性化し,キャリアー化した例 は1/4であった.
4) 各施設とも,5年間の観察期間中に,HCV 抗体陽性者比率は低下した.
2. 透析医療事故の実態調査
アンケート調査から得られた結果の主たるものを 以下に列記する.
1) 平成12年度の調査に比し,重篤な事故は減 少せず553件/年が報告され,これは40.4件/
100万透析にあたる.
2) 最も頻度の高い事故は,自己抜針も含め穿刺 針抜針事故で,166件であった.
3) 透析との関連が不明なものも含め,18例の 死亡事故が報告された.
4) 事故報告の分析では,スタッフ1人当たりの 年間受け持ち透析回数が多い施設で事故頻度は 少なかった.
5) 同じ事故でも,施設によってはインシデント としたりアクシデントとしたり,あるいは事故 として報告しないなど,事故の扱いは施設によっ て様々であった.
しかし,多くの医療機関では,患者に実害を 与えたとするレベル3以上をアクシデントとし ていた.
6) 平成12年のマニュアルで強調されていた事 故防止策は,空気返血については24% の施設 で実施されていたものが7.7% に減少し,ルア ロックの使用施設は40% から95%へ増加して
いた.
3. 安全を考えた透析施設基準の策定
施設調査のうち,安全に関する項目についての分 析結果を以下に示す.
1) 感染防止対策に関する調査項目
いずれの項目についても,「普通」または「よく できている」とする回答が80% 以上を占めたが,
特に診療所より病院,透析ベッド数が多いほど,透 析患者が多いほど,「よくできている」の比率は高 くなっていた.
2) 事故対策に関する調査項目 1)とまったく同様の傾向を示した.
4. 安全を考えたスタッフの適正配置に関する研究 パイロット調査の結果は,施設によって様々であっ た.
5. 地域における感染・事故モニター制度の確立 システムが立ち上がったばかりであり,結果は次 年度以降となる.
D. 考 察
1. 透析室におけるC型肝炎院内感染実態調査 1) HCV抗体陽転率が比較的低値であったこと
と,最近の全国的な集計ではなお高値であるこ とを考え合わせると,限られた施設で陽転率が 高い可能性が推測される.
2) 当然のことながら抗体陽転とウィルス性肝炎 の新規発生は異なり,こうした調査では検査方 法の統一,明確な感染の定義などが重要である.
3) 従来の透析施設でのC型肝炎新規発生例で は,多くの患者がキャリアー化するという報告 があったが,本研究ではその比率は1/4であっ た.これは,感染に際して体内に入ったウィル ス量による差とも考えられ,感染経路の解明と あわせた今後の検討が必要である.
4) 透析施設のHCV抗体陽性率は低下してきて いる.これは,かつて輸血による感染を受けた
患者の透析歴が長期化してきており死亡の頻度 が高くなっていることと,新規感染例の減少が 原因かもしれない.
2. 透析医療事故の実態調査
1) 平成12年の調査に比較して重篤な事故は減 らないばかりか,増加する傾向にあることは,
患者の高齢化や長期化,合併症による重症化な どが原因とも考えられる.また前回にはなかっ た新しい事故が見られ,新規技術の導入が事故 報告を増やす一因となったかもしれない.また,
施設での登録制度などが充実したことや,事故 分類が変更されたために,報告が増加した可能 性もある.今後の詳細な分析が必要である.
2) 事故を生じた施設の解析からは,忙しくて,
受け持ち透析回数の多い施設でむしろ事故頻度 は少ないという結果で,前回の調査でも指摘さ れている.経験した事故例が集積され,防止策 が適切であるとも考えられる.反対に,多くの 透析を経験する機会の少ない小規模施設にこそ,
重点的な事故情報および対策を提示する必要が あると考えられる.
3) ルアロック普及率の上昇は,多くはメーカー が対応した回路とダイアライザ接合部分につい てかもしれない.回路と穿刺針が外れる事故は,
減少しているもののかなりの頻度を占める.こ の部分のルアロック使用は穿刺針の変更を伴う ことがあり,施設によってはこれに抵抗がある かもしれない.
4) なお透析終了時に空気返血を用いる施設があ るが,死亡事故でもこれが原因となった例が報 告されており,早急の対応を強く勧告する.
3. 安全を考えた透析施設基準の策定
結果および前項でも述べたが,感染防止や事故防 止策が不十分と考えられる施設は,小規模施設に多 い傾向がある.情報やマンパワーの不足によると推 測されるため,より多くの事故や感染に関する情報 の提供,マニュアルのより具体的な実施方法の提示,
院内マニュアルの見本の提示などが必要と考えられ,
後述する地域内での情報交換会などへの参加が望ま れる.
4. 安全を考えたスタッフの適正配置に関する研究 最終的に施設の患者重症度に見合った安全で適正 なスタッフ数を提示するためには,看護度調査を広 く実施するとともに,これに基づくスタッフ配置が 事故や感染防止に有効かを検証する必要がある.今 後の研究の進展を検討したい.
5. 地域における感染・事故モニター制度の確立 すでに述べてきたように,マニュアルの遵守を含 めて,最も確実で効果的な感染・事故防止対策のひ とつとなる可能性がある.特に愛知県では,過去に もウィルス性肝炎新規発生の前向き調査を実施し,
きわめて低い発生率を報告した経験があり,今後の 研究の進展に期待するところ大である.また,こう したシステム作りを,全国的に展開してゆく計画で ある.
E. 結 論
1. 透析室におけるC型肝炎院内感染実態調査 今回の研究では,透析医療機関のHCV抗体陽転 率は低値であったが,献血リピータに比べればはる かに高率である.より適切な防止対策の提示が必要 である.
2. 透析医療事故の実態調査
報告された重篤な事故件数が増加したことから,
その背景について詳細な分析が必要なことと,より
適切な対策が必要となっている.
3. 安全を考えた透析施設基準の策定
今回の分析は感染と事故に関する項目に限定され たが,施設本来の機能や,透析に関する機能・手順 についての分析と,平成11年度の施設調査との比 較が必要である.
4. 安全を考えたスタッフの適正配置に関する研究 前項とあわせて,職能集団自らが基準を提示する ことは,社会的にも意義深いことであるし,患者に 対する責任でもある.
5. 地域における感染・事故モニター制度の確立 全国的な感染や事故集計もさることながら,限ら れた地域におけるデータの収集と具体的な検討や,
スタッフを含めた研修は感染防止や事故防止の限界 をブレークスルーするかもしれない.特に透析施設 の患者を通じたつながりは,他の医療では見られな い濃厚なものである特徴からも期待される.
F. 論文・学会発表・文献
<学会発表>
1) HCV抗体陰性患者の多施設長期追跡調査.
第47回日本透析医学会学術集会,東京,2002
G. 知的財産権の出願 予定なし.
H. 引用文献
分担研究報告書参照.
A. 研究目的
透析治療は,血液体外循環を伴う観血的治療であ り,日常的には集団で行われ,医療従事者も複数の 患者を受け持ちながら,同時に異なる業務を担当す る機会もあることから,感染やその他の事故が発生 しやすい環境にあるといえる.また,エリスロポエ チンが臨床応用される以前の腎性貧血の治療は唯一 輸血であり,輸血のHCVスクリーニング以前には,
多くの透析患者が輸血によるHCV感染をうけ,今 でも患者群としてのHCV陽性率は高い.これらの ことから,透析施設内の感染事故は多いとされ,特 にわが国の透析施設におけるC型肝炎新規感染率 は,諸外国と比して必ずしも低くないとされてき た1)2)3).もし,従来の報告通りにわが国の透析施
設におけるC型肝炎の新規発生が2~3% 人・年と し,現時点でのHCV抗体陽性率を20% と仮定す ると,毎年3,500~5,300人の透析患者がC型肝炎 に新しく感染することになり,日常臨床の経験から は,非現実的といわざるを得ない.
そこで,今回の研究では,透析施設におけるC 型肝炎新規発生率を明らかにすることを目的とした.
B. 研究対象と研究方法
対象は, 愛知県下 8施設の慢性維持透析患者 1,360人で,追跡調査期間は5年間であった(表1).
全対象患者1,360人のうち,調査開始時にHCV抗 体が陽性であった318人と,複数回の検査ができな かった患者を除く1,042人が,最終的に追跡調査対
HCV抗体陰性患者の多施設長期追跡調査
分担研究者秋葉 隆 東京女子医科大学腎臓病総合医療センター教授 秋澤 忠男 和歌山県立医科大学血液浄化センター教授 鈴木 正司 信楽園病院副院長
篠田 俊雄 社会保険中央総合病院内科部長 鈴木 満 東葛クリニック病院名誉理事長 内藤 秀宗 日本透析医学会理事長
渡邊 有三 春日井市民病院副院長
中井 滋 名古屋大学大幸医療センター在宅療法部助手 宇田眞紀子 日本腎不全看護学会理事長
川崎 忠行 日本臨床工学技士会会長 研究協力者三井 健宏 増子記念病院肝炎研究室室長
研究要旨 慢性維持透析を実施する愛知県下8施設について,透析患者のHCV新規感染率を明らかに するため,1994.1~1999.1の5年間にわたる追跡調査を実施した.
追跡開始時の患者数は1,360人,このうちHCV抗体陽性者318人(陽性率:23.4%)と複数回の検 索が不能であった患者を除く,934人であった.
その結果,2,892person-yearのうち5人にseroconversionをみたが,1例は観察開始前の凍結保 存血清を用いたHCV-RNA検査で陽性を呈したため,新規感染は4例,新規感染率は0.138% であっ た.
象となった.
HCV抗体はPA法(第2世代)により測定し,
seroconversion例については,凍結保存血清を用 いてRT-PCR法によりHCV RNAを測定した.
新規感染率は人年法により計算した.
HCV新規感染については,表2に示す定義を満 足するものとした.
C. 研究結果
2,892person-yearsの追跡結果を表3に示したが,
5例のseroconversionを見,うち1例は追跡開始 以前の HCV-RNAが陽性であったため,4例が HCV新 規 感 染 と 判 定 さ れ た .PA法 を 用 い た seroconversion率は0.173% 人・年,HCV-RNA で確認されたHCV新規感染率は0.138% 人・年と いうことになる.
HCV抗体が陽転した5例の経過を図1に示した.
症例1は明らかなHCV抗体価の上昇を見たが,凍 結保存血清を用いたHCV-RNAは陽性とならなかっ た.症例4はHCV-RNAが陽転し,その後も長期 にわたって陽性の状態が続いたが,症例2および3 は,一過性にHCV-RNA陽性を呈した後,最終的
には陰性化した.症例5は先に示した追跡開始以前 のHCV-RNA陽性例で,新規感染とはいえない.
ちなみに, 同時に実施された,HBs抗原 (R- PHA法)・HBs抗体 (PHA法)・HBc抗体 (HI 法) を用いた,2,684person-yearsの追跡調査結 果では,HBV新規感染率は0.037% であった(表 4).
また,各施設のHCV抗体陽性率の推移を図2に 示しておく.
D. 考 察
HCV新規感染防止を意識した最近の前向き調査 では,透析施設のHCV抗体陽転率は1% 人年以下 の報告も少なくない4)5).今回のわれわれの調査結 果は,凍結保存血清を用いた後ろ向き調査であるが,
過去の報告に比べて抗体陽転率,新規感染率は低値 であった.陽転率が2 3% の報告と,今回の結果 との差は不明であるが,平成11年の兵庫県のB型 劇症肝炎の集団発生調査報告書にあるように80% を越すHCV抗体陽性施設があることから,ごく限 られた施設では,かなりの頻度でHCV抗体陽転が 見られるか集団感染が生じていることも推測される.
表1 調査対象
調査期間 1994年1月~1999年1月(5年間)
施 設 数 8(愛知県内)
全患者数 1,360名
男 女 比 1.45(804/556) 追跡開始時(ベースライン)
年齢(平均±SD) 57.1±13.3歳 透析期間(平均±SD) 5.3±6.6年
表2 HCV新規感染の定義
◆HCV抗体のseroconversion HCV抗体価が212以上まで上昇
HideoTanaka,HideakiTsukumaandYujiHorietal. JournalofEpidemiology,1998;8(5):292196より
HCV抗体価が212以上まで上昇
HCV抗体価が25~211まで上昇し,かつ
ALTが異常値まで上昇(あるいは2倍以上上昇)
◆HCV抗体のseroconversionに加え,
ベースラインのHCV RNAが陰性であった場合
ちなみに,今回の調査では,感染経路については検 討されていないが,集団感染は認められなかった.
また,陽転率が高かった研究は,比較的以前の調査 であり,平成11年度の厚生科学特別研究事業「透 析医療における感染症の実態把握と予防対策に関す
る研究班(主任研究者 秋葉隆)」による「透析医 療における標準的な透析操作と院内感染予防に関す るマニュアル」等の遵守による予防効果が,最近の 調査結果では反映されているのかもしれない.
今回の調査でseroconversinを見た1例は追跡 表3 HCV新規感染率
totalperson-years 2,892 seroconversion 5 seroconversion率(%) 0.173
(95% C.I.) (0.0210.324) ベースラインの
HCV RNA陽性 1
HCV RNA陰性 4
HCV新規感染率 % 0.138
(95% C.I.) (0.0030.274)
図1 HCV抗体seroconversion例
表4 HBV新規感染率
HBVマーカーHBs抗原(R PHA),HBs抗体(PHA) HBc抗体(HI)
ベースラインのHBVマーカーが陰性であった818名 を追跡
HBs抗体原陽性化and/orHBc抗体seroconversion totalperson-years 2,684
新規感染 1
HBV新規感染率(%) 0.037
(95% C.I.) (0.0000.110)
図2 各施設におけるHCV抗体陽性率の推移
開始以前のHCV-RNAが陽性であったという事実 から,当然のことながらseroconversin=新規感染 でないことに注意しなければならない.こうした疫 学調査での検査法や感染に関する定義が重要となる.
透析患者のC型肝炎新規感染については,その 後ウィルスは長期にわたって存在し,キャリアー化 するという報告がある6).しかし今回の調査では,
キャリアー化した例は1/4であった.感染経路に ついての調査がないため不明であるが,感染したウィ ルス量の差かもしれない.
B型肝炎の新規感染率は,感染能力が高いにもか かわらず, C型肝炎に比し一層低値であった.
HCV陽性透析患者に比べHBV抗原陽性患者のベッ ドが固定され,より感染に注意した透析となってい る施設が多いことに関係するかもしれない.
今回対象となった施設でのHCV抗体陽性率は,
いずれの施設においても5年間で低下している.輸 血が原因と思われるHCV抗体陽性患者は長期透析 となっており,観察中に死亡する例も少なくはない と想像されることと,新規感染が少ないことによる だろう.
E. 結 論
今回の研究結果についてまとめを表5に示した.
われわれの調査では,透析施設におけるHCV新規 感染率は従来の報告に比し低値であったが,献血リ ピータに比べては非常に高く,なお透析医療そのも のがウィルス性肝炎感染に対してハイリスクである とともに,感染防止のための一層の努力が必要であ る.
F. 研究発表
学会発表:第47回日本透析医学会学術集会,東 京,2002
G. 文 献
1) KobayashiM,Tanaka E,OguchiH,et al:Pro- spective follow-up study ofhepatitis C virus infec- tion in patients undergoing maintenance haemo- dialysis:comparison among haemodialysis units.
JGastroenterHepatol.13;604,1998
2) 古庄憲浩,林 純,澤山泰典,他:透析患者における急 性C型肝炎の追跡調査(第73回日本感染症学会抄録集12 5).感染症学会雑誌.73;145,1999
3) 秋葉 隆,佐藤千史:透析医療におけるウィルス肝炎の現 況,治療,予防.(厚生科学研究:新興・再興感染症事業)
C型肝炎の自然経過および介入による影響等の評価を含む 疫学的研究報告書;7279,2002
4) Petrosillo N, Gilli P, Serraino D, et al:Preva- lence of infected patients and understanding have a role in hepatitis C virus transmission in dialy- sis.Am JKidneyDis.37;1004,2001
5) 鶴田良成,渡邊有三,山親雄,他:愛知県の透析施設 におけるB型およびC型肝炎ウィルス感染の現況(第2 報).日本透析医会雑誌 17(3);422429,2002
6) 田中澄子,吉澤浩司,片山惠子,他:透析医療機関にお けるHCV感染に関する調査成績.厚生科学研究:新興・
再興感染症事業)C型肝炎の自然経過および介入による影 響等の評価を含む疫学的研究報告書;8085,2002
表5 まとめ
◆8施設の透析患者における年間のHCV新規感染 率は0.138% であり,国内外で従来報告されてい る値よりも低かった.
◆HBV新規感染率(0.037%)よりも高かった.
◆献血者で報告された値(0.005%)よりも非常に高 く,透析施設での院内感染予防対策が重要である.
A.背景と研究目的
透析医療,特に体外循環を伴う血液透析には治療 に伴う数々の事故が知られており,最悪の場合死亡 事故や同時多発事故につながる.こうした危険性か ら,我々は平成12年度厚生科学研究費補助を受け,
平成12年1年間に発生した血液透析に関連する事 故の全国調査を行い,年間21,457件の事故(100 万透析当たり1,760回)が発生し,5名の死亡が疑 われ,100万透析当たり31件の重篤な事故(死亡 につながる,入院,あるいは入院期間の延長を要す
「透析医療事故の定義と報告制度」及び「透析医療事故の実態」に 関する全国調査について
分担研究者:秋澤 忠男 和歌山県立医科大学血液浄化センター教授 篠田 俊雄 社会保険中央総合病院内科部長
内藤 秀宗 日本透析医学会理事長 吉田 豊彦 みはま病院理事長 渡邊 有三 春日井市民病院副院長
中井 滋 名古屋大学大幸医療センター在宅療法部助手 宇田眞紀子 日本腎不全看護学会理事長
川崎 忠行 日本臨床工学技士会会長 研究協力者:栗原 怜 春日部秀和病院副院長
研究要旨 院内感染とともに透析における事故は,医療機関にとって重大なリスクであるし,発生の 背景も,①集団治療であること,②体外循環治療であること,③複数のスタッフが関与すること,④同 時に異なる手技が並行して行われていることなどと,共通である.
分担研究者らは,平成12年度の厚生科学特別研究事業として,「透析医療事故の実態調査と事故対策 マニュアルの策定に関する研究(主任研究者:平澤由平)」を行い,成果として「透析医療事故防止のた めの標準的透析操作マニュアル」を作成し,全国の透析施設に配布した.
本年度の研究は,先回に続く透析医療事故の実態調査と,施設でまちまちとなっている透析事故の定 義と報告制度について調査することと,先に配布したマニュアルの効果を検証することを目的とした.
研究結果については,事故の分類と報告制度については施設によって様々であったが,おおむねレベ ル3以上の事故をアクシデントとして扱う施設頻度が高かった.しかし小規模医療機関では,報告制度 が確立されていない施設もあり,今後,効果的な啓発の必要な問題と考える.
透析医療事故の実態調査に関しては,本年度は重篤な事故に限って調査した.残念ながら,重篤な事 故件数は,平成12年調査の31件/100万透析から40.4件/100万透析へと増加し,死亡事故も,透析と の因果関係が明らかとなっていないものも含め,最大18件を数えた.一方,先述のマニュアルの勧告 に基づき,より安全な透析操作へ変更した報告もあり,たとえば,空気返血を実施する施設は前回の 24%から7.7%へ減少し,ルアロックの普及率は40%から83%へと上昇した.しかしいままでに報 告されなかった新しい事故や,透析患者が高齢化,重症化していることも考えあわせると,従来とは視 点を異にする事故対策の工夫が必要であると思われる.
る,2名以上の患者に同時発症する事故)が発生し ていることを報告した1).また,これら事故原因を 分析し,「透析医療事故防止のための標準的透析操 作マニュアル」2)を策定して我が国の透析医療の安 全性向上をめざした取り組みを行ってきた.
本年度は,この研究を飛躍させるとともに,先に 策定したマニュアルの浸透状況,その効果を予備的 に検討するための研究として,「透析医療事故の定 義と報告制度」と「透析医療事故の実態」に関する 全国調査を行った.とくに前段の「透析医療事故の 定義と報告制度」については,平成12年度の研究 で,透析施設ごとに医療事故の定義と認識に大きな 差違がみられることが明らかになったことから,そ れらの実態と併せ,事故報告制度についての調査の 必要性が痛感され,今回の研究に組み入れることと した.
B.研究方法
日本透析医学会加盟の施設会員3,327施設に資料 1のアンケート用紙を日本透析医会会長山親雄,
日本透析医学会理事長内藤秀宗の連名にて配布した.
1.「透析医療事故の定義と報告制度」
まず,各施設にアクシデントとインシデントの定 義を問い,日常遭遇する23の具体的事例について,
インシデント,アクシデントのいずれで扱うか,あ るいは報告の義務のない事例に当たるのかを調査し た.また,アクシデント,インシデントの各報告制 度について具体的方法,その活用法などの記入を求 めた.
2.「透析医療事故の実態」
平成14年1月1日から12月31日までの1年間 に,各施設で経験した重篤な透析医療事故について の報告を求めた.重篤な透析医療事故の定義は平成 12年度の調査と同じく,1)死亡あるいは生命を脅 かす可能性の高かった事故,2)入院あるいは入院 期間の延長が必要であった事故,3)2名以上の患 者に同時に発症した集団発症事故とした.アンケー
トの内容は,施設の所在地域や設立母体,規模や職 員数,職員の透析医療経験年数,年間透析施行回数,
事故対策実施状況などの施設背景の前回調査項目に 加え,「透析医療事故防止のための標準的透析操作 マニュアル」の浸透・認知状況と,「透析医療事故 防止のための標準的透析操作マニュアル」でとくに 強調した,生理食塩液による返血(空気を用いた返 血)の禁止,血液回路へのルアロック使用,透析終 了後の回路を用いた輸液の禁止,透析中の輸液注入 部位の規定(輸血を除いては透析器静脈側)の各点 についての遵守状況を重点的に調査した.重篤な透 析医療事故については,個別の報告用紙を用い,具 体的内容と原因,原因に関与したスタッフの職種,
転帰,事故を教訓にその後とられた再発防止策など について詳しい回答を求めた.
回収された重篤な事故調査結果は対象施設の区分 ごとに施設当たりの事故回数の総計を年間透析回数 で除して事故頻度を算出すると同時に,透析従事ス タッフの数で事故頻度を除してスタッフ一人当たり の事故頻度も合わせて検討した.また,施設背景因 子と事故頻度との関連については,施設ごとに事故 頻度を算出し,背景因子ごとに事故の発生頻度,な いし職員一人当たりの事故件数を算出し,t検定を 用いて統計的に解析した.
C. 研究結果 1. 回答施設の背景
日本透析医学会施設会員3,327施設にアンケート を配布し,1,556施設より回答を得た(回収率46.7
%).
回答施設の所在地域は,関東・甲信越に31%,
近畿に17%,九州・沖縄に各々15%が分布し,次 いで東海・北陸と続き,北海道・東北,中国・四国 はともに12%であった.施設の経営母体では医療 法人が46%を占め,次いで個人(15%),市町村立
(9%),社団法人(5%)と続いた.病院と診療所別 では,病院が62%を占め,総合病院以外の病院(5 1%),総合病院(41%),大学病院(8%)と続いた.
病院の許可病床数は200499床が38%と最も多く,