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パイプ状シリカの応用に関する研究

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Academic year: 2021

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パイプ状シリカの応用に関する研究

  野見山加寿子*1

 

Template Synthesis of Mesoscopic Tube Silicates

Kazuko Nomiyama  

メソポーラスシリカのテンプレート合成法の一端として,単純な一本鎖型界面活性剤であるアルキルアンモニウム塩と 芳香族化合物との混合分散溶液中で形成される,ファイバ状の会合体を利用してシリカ合成を試みた。界面活性剤のアル キル鎖長やナフタレン系の芳香族化合物の構造を変化させて,数種類の組み合わせからファイバ状のシリカが得られ,透 過型電子顕微鏡観察により中空のパイプ状シリカであることが分かった。テンプレートの組み合せにより,パイプ状シリ カの形態が制御され,CTABとDHNを用いた系では細孔径20nmのパイプ状,CTABとANAを用いた系では細孔径10nmのワームホ ール状シリカが得られた。 

 

1  はじめに 

1990年頃にMCM-41,FSM-16などの細孔径が2〜50nm のメソポーラスシリカが合成されて以来,現在ではシ リカだけでなく,様々な金属酸化物を用いたメソポー ラス多孔体の細孔制御が可能になり,応用範囲の広が りは非常に興味深い。 

メソポーラスシリカの合成方法は,界面活性剤のミ セル構造を鋳型(テンプレート)とし,その周囲にゾル

−ゲル法などでシリカ骨格を形成させて,テンプレー トを抽出や焼成で取り除くというものが主流である。

これまでに当研究室では,分子内にアゾベンゼン基あ るい は ジベ ン ゾイ ル メタ ン 基を 導 入し た 界面 活 性剤 (図1の化合物1あるいは2)を合成し,それらが水中で 形成する会合体をテンプレートとして,細孔径が40nm あるいは10nmのチューブ状のシリカやアルミノシリケ ート等金属酸化物の開発について報告している1)。 

図1  界面活性剤(化合物1,2) 

 

このような界面活性剤を分子設計・合成してテンプ レートとする方法は,得られるシリカの細孔径や形態 を制御する上で,非常に優れた方法であるといえるが,

界面活性剤を入手するまでの時間や製造コストがかか るという短所もある。そのため現在では,シリカ合成 の後,テンプレートを回収して再利用したり,機能性

のテンプレートをのこしたまま保持して使用するとい った試みがなされている。 

チューブ状シリカの製造コスト削減のために,以前 より水中でアルキルアンモニウム塩とナフタレンジオ ール等の芳香族化合物から形成されるファイバ状の会 合体をテンプレートとして用いることを検討してきて

いる2),3)。この方法においては,図2のようにCTAB単独

では球状ミセルしか形成しない低濃度領域でも,疎水 性相互作用によりナフタレンジオール(DHN)が,ミセル 中に取り込まれ,会合形態がロッド状に変化すると考 えている。 

Cn-1TAB

DHN

球状ミセル

ロッド状

図2  CTAB/2,3-DHNの会合構造の模式図   

テンプレートとなる会合体を構成する界面活性剤の アルキル鎖長,あるいは芳香族化合物の種類・添加量 等を変化させることにより,合成されるパイプ状シリ カの細孔径を制御することが可能になると期待される。

そこで,本方法の確立を目指して以下の検討を行った。 

 

2  研究,実験方法  2-1  混合分散液の調製 

界面活性剤として用いた一本鎖型アルキルアンモニ

*1  化学繊維研究所 

(2)

 

ウム塩(Cn-1TAB)は,アルキル鎖長がC14・C16・C18のも のである。これらを水中にて単独では球状ミセルを形 成するとされる,臨界ミセル濃度10-2〜10-4molL-1の範 囲で用いた。また芳香族化合物はこれまでに用いたDHN と,同じく2位,3位に親水性のカルボキシル基,アミ ノ基をもつ2,3-ジヒドロキシナフタレン(DHN)及び3- アミノ-2-ナフトエ酸(ANA)を用い,添加量及び置換基 の変化が合成されるシリカの構造に及ぼす影響につい て検討した。 

図3   

芳香族化合物を界面活性剤と当モルになるよう秤量 し,あらかじめ所望の濃度に調製した界面活性剤溶液 を加えて,室温で1時間撹拌して芳香族化合物を溶解さ せ,30℃の恒温槽で静置した。 

2-2  シリカ溶液の調製 

純水50mlに水酸化ナトリウム(0.72g, 18mmol) を加 えた溶液に,wakogelQ63(0.6g, 10mmol)を加え,30℃

で一晩撹拌して溶解させた。この溶液を純水で10倍に 希釈した後,3N臭化水素酸水溶液でpHを7〜7.5に調整 して,会合体溶液との複合化に用いた。 

2-3  新規テンプレートを用いたシリカ合成 

図4の合成スキームに示すように,数時間から数日間熟 成した会合体溶液を撹拌しながら,シリカ溶液を添加 し浮遊,沈降する複合体について,デカンテーション で1〜3回,遠心分離で3〜5回洗浄した後,水分を残し たまま凍結乾燥機で2日間乾燥した。得られた複合体粉 

図4  シリカのテンプレート合成スキーム 

末を300℃まで窒素気流下,その後600℃まで空気気流 下焼成しシリカを得た。 

界面活性剤のアルキル鎖長と芳香族化合物との組合 せ,濃度・mol比を変化させて,上記の方法でチューブ 状シリカの合成を行った。条件について表1に示す。 

 

表1  シリカ合成条件 

界面活性剤 芳香族 化合物

会合体濃度/量 molL-1/mL

シリカ濃度/量 molL-1/mL

モル比 シリカ/会合体 C14TAB DHN

5/10 170/15 50

ANA C16TAB DHN

2/50 10/500 42

ANA C18TAB DHN

5/10 80/15 25

ANA

 

3  結果と考察 

3-1  パイプ状シリカの構造確認 

実験により得られたシリカ構造体について,電子顕 微鏡観察(JEOL JSM-840F)を行った。まず,界面活性剤 としてC14TABあるいはC18TABと,DHNあるいはANAをテン プレートとして得られたシリカのSEM写真を図5および 図6に示す。 

図5  C14TAB/DHN系シリカ 

界面活性剤水溶液 芳香族化合物 シリカ溶液

室温で1時間撹拌後 30℃の恒温槽内で熟成

浮遊物

デカンテーション洗浄 遠心分離で回収

凍結乾燥

焼成(~300℃,N2/~600℃,air)

約10〜20mmolL-1 ワコーゲルQ63 NaOH

pH調整:7〜7.5 1〜10mmolL-1

図6  C18TAB/ANA系シリカ   

図5及び図6から,アルキル鎖長の異なるC14TAB及び C18TABを用いた場合にも,DHNあるいはANAの様な添加 剤を加えることにより,低濃度領域でファイバ状構造

(3)

 

をしたシリカが合成できることが明らかになった。但 し,シリカ溶液濃度が80〜170Mと高いためシリカのみ の凝集構造も多くみられた。そこで,シリカ溶液濃度 を10分の1程度にして,同様の方法で,C16TABとDHNか らなる会合体をテンプレートとしたシリカ合成を行っ た。得られたシリカのSEM写真を図7に示す。 

 

図7  C16TAB/DHN系シリカ   

会合体濃度が1〜2mMの溶液50mLを10mMのシリカ溶液 500mLと反応させて得られるシリカ構造体は,図6のよ うに,ファイバ状の形態をとっていることが分かった。

SEM観察ではシリカ構造体内部に細孔が開いているか ど う か 分 か ら な い た め , 透 過 型 電 子 顕 微 鏡(HITACHI  H-7100)による観察も行った(図8)。 

 

図8  C16TAB/DHN系シリカのTEM写真   

図8より,C16TAB/DHNからなる会合体をテンプレー トとして得られたファイバ状のシリカは,その内部が 中空になっており,内径が約10nm程度であることが分 かった。 

次に同じ濃度条件で,C16TABとANAを用いた系で同様 の検討を行った。SEMを図9にTEM写真を図10に示す。 

電子顕微鏡観察(図9及び図10)により,C16TABとANA

を用いた会合体をテンプレートとして合成されたシリ カは,ワームホール(虫食い穴)形状をしており,その 細孔径は約20nm程度であることが分かった。 

 

図9  C16TAB/ANA系シリカ 

TEM

図10  C16TAB/ANA系シリカのTEM写真 

TEM

 

以上の結果より,界面活性剤水溶液に混合分散する 添加剤の種類を変えることにより,得られるシリカの 構造及び細孔径が変化することが明らかになった。 

したがって,今後もさらに界面活性剤及び芳香族化 合物の種類を変えて,形成される会合体の形状,及び これをテンプレートとして合成されるシリカ構造につ いて検討の必要がある。また,Cn-1TABと芳香族化合物 との混合分散液中の会合体の形状は,温度や濃度に影 響されるだけでなく,熟成時間あるいはシリカ溶液と 複合化する際の撹拌条件により変化する傾向が見られ たため,それらの観点からもシリカの構造・細孔径制 御について検討していかなければならない。 

  4  まとめ 

本研究では,新規パイプ状シリカを合成するために,

界面活性剤と芳香族化合物からなる会合体をテンプレ ートとして利用した。界面活性剤(Cn-1TAB)のアルキル

(4)

 

鎖長や,添加剤としての芳香族化合物DHN及びANAを変 えても,パイプ状シリカが合成できることが明らかに なった。今回C16TABとDHNを用いた場合では,細孔径が 10nmのファイバ状シリカが得られた。また,C16TABと ANAを用いた場合には,ワームホール状シリカが得られ,

細孔径は20nmであった。このことから,テンプレート としての会合体を形成する化学種の組合せにより,パ イプ状シリカの形態や細孔径が制御できることが明ら かになった。 

ここで用いたような,市販で安価な化学種から構成 されるテンプレートを用いたシリカ合成が可能になれ ば,分子設計や合成が必要な両親媒性化合物を用いる 場合と比較して,原料コストが約千分の1から1万分 の1になり,パイプ状シリカが安価に提供できるよう になると考えられる。 

 

5  参考文献 

1)諫山宗敏,野見山加寿子,国武豊喜:特開平11-60212  2)諫山宗敏,野見山加寿子,君塚信夫:特開2003-206245  3)M.Isayama,K.Nomiyama,T.Yamaguchi,N.Kimizuka

:Chem.Lett,Vol.34,p.462(2005) 

参照

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