消防隊出場圏域の設定指標を用いた震災地域危険度の評価
平内 努,山本 佳世子
An Evaluation of the Vulnerability to Earthquake Disaster for Areas Using an Indicator of the Setting for the Sphere of Mobilization of Fire Brigade
Tsutomu HIRAUCHI,Kayoko YAMAMOTO
Abstract: This study aims to make a new vulnerability assessment of the areas affected by earthquakes in 23 special wards in Tokyo, based on the Tokyo Metropolitan Government’s “District-based Assessment of Vulnerability to Disaster” and the actual number of pump units deployed in fire stations. Concretely, we calculated how much area is actually covered by a pump unit by using the indicator for setting pump units’ ideal coverage. Based on the result of the calculation, we made a new assessment of the vulnerability of the 23 special wards in Tokyo. As a result, it was found that the workload is heavier for pump units deployed in the eastern and western parts of the 23 special wards in Tokyo.
Keywords: 地域危険度(Vulnerability to Disaster for Areas),震災(Earthquake Disaster),
消防力(Fire Service Strength),適正配置(Optimum Location),東京 23 区(23 Special Wards in Tokyo )
1. 研究の背景と目的
震災時に危惧される同時多発火災は,市民に甚大 な被害を及ぼす特徴があり,都市型消防を有する地 方自治体は,こうした災害に対応できる適切な消防 力を整備するために,消防力
注 1)の配置優先度を評 価する必要がある.一方,震災に関する危険度評価 については,東京都(2008)が公表している地震に 関する地域危険度(以下,地域危険度とする)があ げられるが,当地域危険度は,消火に当たる消防隊 数の多少等,消防力による影響を考慮したものでは ない.
そこで,本研究では,東京 23 区をテストフィー
ルドとし,前述の地域危険度を参考にして,消防ポ ンプ自動車(以下,ポンプ車とする)
注 2)の配置に 着目し,消防力による影響を考慮した新たな地域危 険度評価を行うことを目的とする.
2. 研究方法
本研究は,これまで,消防力配置に関する先行研 究調査より本研究の位置づけを示した上で,消防制 度の把握,評価の枠組みと方法の提示,研究対象地 域の選定,地理情報システム(以下,GIS とする)
注 3)
を利用したポンプ車 1 台あたりの地域危険度負 担率(以下,地域危険度カバー率とする)の算出方 法の提案を行った(平内・山本,2009a).加えて,
GIS における消防隊の理想的な出場範囲を示す圏域 平内 努:〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘 1-5-1・
電気通信大学大学院情報システム学研究科・ 0424-83-2161
GIS
基図
(MarketPlanner GIS version)
「背景地図(
1/2,500):
株式会社パスコ社製、2008年版」
①各署所データのプロット
●ポイントデータ
・住所データまたは緯度経度データ
●属性データ
・ポンプ車台数データ
※詳細:常用消防ポンプ自動車台数、
化学消防車台数
②各署所ポンプ車平均速度データ に基づくバッファ作成
⇒車両台数データを属性に持つネット
ワーク圏域の作成
※解析用データは道路ネットワーク
データを使用
③ネットワーク圏域間のオーバーレイ
⇒ネットワーク圏域における交差部分を
台数加算するために細分圏域を作成
※ユニオン機能を使用
④ネットワーク圏域および 町丁目界のオーバーレイ
⇒町丁目ごとに細分圏域を切り出す
※ユニオン機能を使用
⑤各町丁目における 平均ポンプ車到着台数の算出
⇒細分圏域の属性データ(ポンプ車台数
および面積データ)を使用し、面積割合を 考慮して算出
※属性間演算機能を使用
<⑥町丁目単位での地域危険度カバー率算出>
⇒町丁目ごとにポンプ車台数1台あたりの地域危険度を算出
地域危険度データ入力
⇒各町丁目の属性データに
地域危険度データを入力 町丁目界地図データ抽出
「株式会社パスコ社製、2008年版」
的指標(以下,ネットワーク圏域とする)の設定方 法の提示,GIS 上での地域危険度カバー率算出のた めの作業方法の提示などを行った(平内・山本,
2009b) .そこで,本報告では,次の研究プロセスと なる,消防力による影響を考慮した地震に関する新 たな地域危険度評価を行う.具体的には,東京都
(2008)の地域危険度,および地理的条件や道路網 による影響と制約を考慮して設定したネットワー ク圏域を用いて,地域危険度カバー率を算出し,算 出結果に基づき評価を行う.
図 1 は,GIS 上でのネットワーク圏域の設定およ び町丁目単位での地域危険度カバー率算出手順を 示している.本研究は,図 1 のフローチャートにし たがい研究を進める.
2.1. ネットワーク圏域の設定方法
まず,GIS 基図上に,東京 23 区の各消防署所(以 下,署所とする)のポイントデータおよび属性デー タをプロットする
注 4)(①) .属性データには,ポン プ車台数データが含まれる.次に,道路ネットワー クデータ
注 5)を抽出し,各署所ポンプ車における理 想的時間内平均到着距離データ(以下,到着距離デ ータとする)に基づくバッファを作成する(②).
なお,到着距離データについては,次章で詳述する.
この作業により,各署所のポンプ車台数データが含
まれたネットワーク圏域がポリゴンデータとして 作成される.また,東京 23 区以外の東京消防庁管 轄署所のネットワーク圏域が 23 区内にも及ぶ場合 を考慮するため,23 区に隣接する署所のネットワ ーク圏域も同様に作成する.
2.2. 平均ポンプ車到着台数の算出方法
2.1 節により作成したネットワーク圏域において,
交差する部分におけるポンプ車台数の加算を反映 するために,GIS のユニオン機能を利用して図 2 の 例のように交差する部分を切り出し,細分圏域を作 成する(③).次に,GIS 基図上に町丁目界地図デ ータをポリゴンデータとして抽出し,同じくユニオ ン機能を利用して,図 3 の例のように細分圏域を町 丁目ごとに切り出す(④).そして,切り出した各 町丁目における平均ポンプ車到着台数を,細分圏域 の属性データであるポンプ車台数および面積デー タを基に,GIS の属性間演算機能を利用して算出す る(⑤) .
2.3. 地域危険度カバー率の算出方法
本研究で使用する地域危険度データは,東京都
(2008)の地域危険度における総合危険度を用いて 算出する.地域危険度の測定フローを図 4 に示す.
総合危険度は,建物倒壊危険度および火災危険度を
図 1.地域危険度カバー率算出フローチャート
Y出張所 ポンプ車台数: T
YX消防署 ポンプ車台数: T
XC細分圏域
到着台数: T
X+ T
YY所ネットワーク圏域
【走行限界時間 4.5 分】
A細分圏域 到着台数: T
YB細分圏域 到着台数: T
XX署ネットワーク圏域
【走行限界時間4.5分】
W町丁目
A´細分圏域 到着台数: T
Y面積: a
B´細分圏域 到着台数: T
X面積: b
C´細分圏域 到着台数: T
X+ T
Y面積: c
W町丁目 面積: e
w: W町丁目平均ポンプ車到着台数
w =( T
Ya + T
Xb +( T
X+ T
Y) c + 0d )/ e
空白域(到着台数 が 0 の地域)
到着台数: 0
面積: d
地震に起因する危険性として同等に評価しており,
両危険度の順位の足し算による順位を 5 段階のラ ンクで示している.また,各ランクの存在比率は,
危険量の多いものほど少なくなるようなヒストグ ラムを想定し,標準正規分布の右半分のうち,3×
σまでの範囲を 5 等分した各部分の頻度としてい る.
本研究では,総合危険度順位を使用し,本研究で 使用する地域危険度を(1)式のとおり算出する.
K
w=t+1-S
w(1) K
w:本研究で使用するW町丁目の地域危険度 S
w:W町丁目の総合危険度(順位)
t:対象町丁目件数
(1)式で算出した地域危険度,および 2.2 節によ り算出した平均ポンプ車到着台数を基に,属性間演 算機能を使用して地域危険度カバー率を算出する
(⑥).また,算出結果は,東京都(2008)のラン ク分類手法を用いて,5 段階で評価する.
建物の分類、集計
●建物の種別ごとの棟数
(構造、建築年代、階数など)
地盤の分類
●地盤分類
●液状化
●大規模造成地
建物倒壊の危険性を測定
●建物の種別ごとの棟数
(構造、建築年代、階数など)
●地盤分類
建物倒壊危険度(順位※) 火災危険度(順位※)
総合危険度
(両危険度の順位の足し算による順位を5段階のランクで示す)
※町丁目単位 火災の発生による 延焼の危険性を測定
●出火の危険性
●延焼の危険性