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平成 22 年度農林水産省委託事業 平成 22 年度農村振興整備状況調査委託事業 都市農家の意向調査 報告書 ( 概要版 ) 平成 23 年 3 月 社団法人 JC 総研

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(1)

平成22年度 農林水産省委託事業

平成22年度農村振興整備状況調査委託事業

都市農家の意向調査

報告書(概要版)

平成23年3月

社団法人 JC総研

(2)

< 目 次 >

1.調査概要 ... 1 1)調査の背景・目的 ... 1 2)調査の内容 ... 1 3)配布・回収の状況 ... 2 3.調査結果 ... 3 1)都市農家の類型化による分析 ... 3 2)都市農家の市街化区域内農地等に関する意向の主な特徴 ... 5 (1) 基本農家類型による主な特徴 ... 5 (2) 農産物年間販売額別による特徴 ... 7 (3) その他の属性による特徴 ... 7 3)今後の都市農地保全の見通し ... 11

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1.調査概要

1)調査の背景・目的

都市農業については、新鮮で安全な農産物の都市住民への供給に加え、身近な農業体験の場の 提供や災害に備えたオープンスペースの確保など、多様な役割を果たしており、食料・農業・農 村基本計画においても、都市農業をこうした役割を果たすものとして位置づけ、その振興を図る こととしている。 また、都市部の農地については、人口減少・高齢化等により市街化の圧力が弱まっている中で、 その保全のあり方に関する検討が求められている。 このため、市街化区域内に農地を所有する農家を対象に、市街化区域内農地の利用や都市農業 施策等に関する意向を全国的に調査し、調査結果の分析・整理を行って、都市農業施策等の円滑 かつ効率的な実施に資することとする。

2)調査の内容

表 1 調査項目・設問一覧 調査項目 設問 ①農地面積や生 産作目等の基 礎的事項 F1.居住地 F2.所有農地面積(市街化区域、生産緑地、納税猶予適用農地、貸し付け農地)、 借受農地 F3.農業従事者数(年間 60 日以上) F4.農作業の中心者の年齢 F5.生産作目(生産作目全て、最も販売金額の多い作目) F6.出荷先別割合 F7.農産物販売金額等 (1) 農産物販売金額等 (2) 手取り割合 (3) 所得の内訳(農業所得、不動産所得、その他) ②市街化区域内 農地の利用意 向 問1.市街化区域内農地の今後 10 年後の利用意向 問2.農地として利用の理由 問3.宅地化が難しい立地条件 問4.農業後継者の有無と見通し 問5.将来の相続発生時の相続税支払いや市街化区域内農地の見通し 問6.市街化区域内農地での農業継続の支障 ③都市農地の保 全に関する税 制面や施策面 での要望 問7.改正を希望する市街化区域内農地に係る税制 (1) 相続税に関する改正希望 (2) 固定資産税に関する改正希望 問8.活用したい農業振興施策 ④都市農地の利 用に関する評 価 問9.承継性、生き甲斐、緑地保全、収益性についての評価(AHP) 問 10.農地継承、宅地継承についての評価(AHP) 問 11.農業収益、転用収益についての評価(AHP) 全般 問 12.都市農地の保全に関する意見・要望(自由回答)

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3)配布・回収の状況

全体で 4,707 票配布し、3,010 票の回収、そのうち 2,645 票の有効回答を 58 市区町について 得ることができ、有効回答率は 56.2%であった。調査対象市区町別の詳細は、下表のとおり。 表 2 配布・回収状況一覧 (注)配布数の*印について、寒川町はJAさがみの 100 票、長久手町はJAあいち尾東の 213 票、大 山町はJA京都中央の 70 票に含まれており、内訳は不明。 都府県 JA 配布数 市町村 回収数 回収率 有効回答数 有効回答率 茨城県 JA茨城みなみ 150 1 8217 取手市 142 94.7% 120 80.0% 47 2 11227 朝霞市 46 97.9% 40 85.1% 63 3 11228 志木市 50 79.4% 47 74.6% 72 4 11229 和光市 68 94.4% 64 88.9% 117 5 11230 新座市 113 96.6% 76 65.0% 6 13119 板橋区 31 31 7 13120 練馬区 153 150 JA横浜 100 8 14100 横浜市 100 100.0% 99 99.0% JA田奈 30 8 14100 横浜市 28 93.3% 27 90.0% JAセレサ川崎 100 9 14130 川崎市 84 84.0% 84 84.0% 10 14204 鎌倉市 10 9 11 14205 藤沢市 12 12 12 14207 茅ヶ崎市 8 8 13 14213 大和市 10 10 14 14215 海老名市 8 8 15 14216 座間市 5 5 16 14218 綾瀬市 9 9 小計 979 877 799 愛知県 JAあいち尾東 213 17 23230 日進市 4 3 1.4% 三重県 JAくわな 500 18 24205 桑名市 356 71.2% 285 57.0% 小計 713 360 288 JA京都市 200 19 26100 京都市 172 86.0% 155 77.5% 19 26100 京都市 29 28 22 26208 向日市 6 6 23 26209 長岡京市 10 9 JA京都 70 21 26206 亀岡市 36 51.4% 35 50.0% 15 20 26204 宇治市 5 33.3% 5 33.3% 10 - 26207 城陽市 0 0.0% 0 0.0% 10 24 26210 八幡市 6 60.0% 6 60.0% 10 25 26211 京田辺市 10 100.0% 10 100.0% 15 - 26214 木津川市 0 0.0% 0 0.0% 26 27100 大阪市 232 226 27 27231 大阪狭山市 1 1 100 28 29201 奈良市 80 80.0% 68 68.0% 1 29 29202 大和高田市 1 100.0% 1 100.0% 5 30 29203 大和郡山市 2 40.0% 2 40.0% 5 31 29204 天理市 4 80.0% 4 80.0% 40 32 29205 橿原市 30 75.0% 30 75.0% 1 33 29206 桜井市 1 100.0% 1 100.0% 20 34 29207 五條市 16 80.0% 16 80.0% 10 35 29209 生駒市 5 50.0% 5 50.0% 15 36 29210 香芝市 10 66.7% 10 66.7% 1 37 29211 葛城市 1 100.0% 1 100.0% 小計 898 657 619 宮城県 JA仙台 300 38 4100 仙台市 148 49.3% 126 42.0% 神奈川県 JAさがみ * 39 14321 寒川町 4 4 新潟県 JA新潟市 210 40 15100 新潟市 58 27.6% 45 21.4% 石川県 JA金沢市 210 41 17201 金沢市 176 83.8% 79 37.6% 42 21201 岐阜市 131 127 43 21209 羽島市 10 9 44 21213 各務原市 20 18 45 21216 瑞穂市 10 10 46 21302 岐南町 12 12 47 21303 笠松町 1 1 48 21421 北方町 4 4 愛知県 JAあいち尾東 * 49 23304 長久手町 50 42 JA京都中央 * 50 26303 大山崎町 5 5 JA京都やましろ 10 - 26322 久御山町 0 0 51 28201 姫路市 106 94 52 28229 たつの市 5 2 10 53 29344 斑鳩町 4 40.0% 3 30.0% 5 54 29425 王寺町 2 40.0% 2 40.0% 1 55 29441 吉野町 1 100.0% 1 100.0% 広島県 JA広島市 60 56 34100 広島市 19 31.7% 18 30.0% 愛媛県 JA松山市 500 57 38201 松山市 207 41.4% 197 39.4% 福岡県 JA福岡市 210 58 40130 福岡市 143 68.1% 140 66.7% 小計 2,117 1,116 939 4,707 3,010 63.9% 2,645 56.2% 市町村CD 90.5% 大阪府 300 77.7% 75.7% 70 JA京都中央 JA東京あおば 東京都 200 92.0% 62.0% 61.0% 100 340 JA兵庫西 都市圏 JAぎふ 埼玉県 JAあさか野 神奈川県 JAやましろ 京都府 JAさがみ 261 中部圏 首都圏 地 方 圏 72.0% 69.3% 32.6% 28.2% 64.3% 61.4% 奈良県 JAならけん 奈良県 JAならけん JA大阪市 京都府 岐阜県 兵庫県 合計 三 大 都 市 圏 特 定 市 近畿圏

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3.調査結果

1)都市農家の類型化による分析

(1) 基本農家類型 ①都市農業におけるシェア 本調査において農家意向を分析するにあたり、農家を類型化することとした。類型化の視点 として、都市農業の機能を大きく分けて、「農産物供給機能」及び「都市農地の持つ多面的機 能」の2つに着目した。 まず、都市農業の機能の効果が期待できる農家層を絞るために、都市農家の農産物販売額及 び市街化区域内農地におけるシェアを整理した(図 1)。 この結果、農産物販売金額 100 万円以上の農家を対象とすることで、都市農業の農産物販売 金額の9割以上を対象とすることができ、これに加えて市街化区域内農地 3,000 ㎡以上を所有 する農家を対象とすることで、合わせて市街化区域内農地の8割以上を対象とすることができ ることがわかった。そこで、これらを都市農業振興施策対象のボーダーラインとして設定した。 図 1 都市農家の農産物販売額及び市街化区域内農地におけるシェア 注 1)「稲作農家」とは少しでも「水稲・陸稲」を生産している農家(1,493 戸)のこと。販売額のシェ アは販売額最多作目が「水稲・陸稲」の農家の合計販売額(75,998 万円)に占める販売額 100 万円以 上の販売額合計(58,650 万円)の割合。 注 2)「野菜作農家」とは少しでも「露地野菜」または「施設野菜」を生産している農家(1,768 戸)の こと。販売額のシェアは、販売額最多作物が「露地野菜」または「施設野菜」の販売額合計(255,315 万円)に占める販売額 300 万円以上の販売額合計(200,450 万円)の割合。 市街化区域農地 農産 物 販 売 額 (年 間) 3,000㎡ 5,000㎡ 100万円 300万円 農家 の 43% 販売 額の 94% 市街 化区 域内 農地 面積 の 56% 農家の18% 市街化区域内農地の28% 農家 の 22% 販売 額の 77% 農家の57% 市街化区域 内農地の 44% 約4割の販売額100万円以 上の農家が販売額では9 割以上を、 約2割の販売額300万円以 上の農家が販売額では8 割近くを占めている 販売額100万円 未満の農家が、 4割以上の農地 の所有している 販売額100万円 以上の農家と、 市街化区域内 所有農地3,000 ㎡以上の農家を 合わせて、 市街化区域内 農地の8割以上 を占めている 稲作 農家 の 10% 米販 売額 の 77% 野菜 作農 家の 16% 野菜 販売 額の 79% 稲作は販売額100万円以上 の農家が、 野菜作は販売額300万円以 上の農家が、 販売額では8割近くを占め ている

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②基本農家類型の設定 都市農業の機能・効果を視点として、その機能・効果が期待できる農業の要件、それに対 応した営農タイプを設定し、販売額 100 万円以上については販売額最多作目別に4つの類型 に、販売額 100 万円未満については所有市街化区域内農地 3,000 ㎡以上と未満の2つの類型 に区分した(図 2)。 さらに、三大都市圏特定市と地方圏では、市街化区域内農地に係る税制等が異なることか ら、三大都市圏と地方圏に区分し、以上を総合して、集計・分析に用いる基本農家類型とし た。 また、販売額 100 万円以上というボーダーラインの設定については、検討の余地があるこ とから、販売額 300 万円以上という区分についても併せて集計・分析を行った。 図 2 都市農業の多面的機能と基本農家類型 (2) 農家類型の最適化の検討 上記の農家基本類型では、都市農業振興施策の対象とすべきボーダーラインを 100 万円と 定めたが、課題として、販売金額の下位層と上位層では営農や意識に違いがあることが予想 され、今後の施策等の検討にあたっては分けて考える必要性があった。 そこで、基本農家類型と合わせて、販売金額別をはじめ、その他の分析項目と総合し、最 適な農家類型に修正したうえで、都市農業の今後の施策等を検討することとした。 新鮮で安全な農産物の 都市住民へ供給 販売金額:100万円以上 or 300万円以上 身近な農業体験の場の 提供 災害に備えたオープン スペースの確保 ヒートアイランド現象の緩和 一定の販売量がある 100万円以上 ・・・大型農産物直売所の出荷者 平均は、約100万円 水稲・陸稲 農地面積:3,000㎡以上 ・・・首都圏における防災協力農地 の平均面積は、約3,500㎡。横浜 市の防災協力登録農地の面積要 件は2,000㎡以上 ・・・ヒートアイランド現象の緩和に は地域での農地等の総量が重要 で、特に水田は効果が大きい 直売中心 少量多品目露地野菜 都市農業の機能・効果 主な営農タイプ 集約的経営 施設野菜 市民農園 体験農園 観光農園 機能・効果が期待できる要件 集計用基本農家類型 心安らぐ緑地空間の提供 その他 一定額以上の 農産物販売額 一定面積以上の 都市農地面積 (ヒートアイランド現象の緩 和には特に水田における稲 作) その他 作付している農地全般 土地利用型経営 稲作 都市農地全般 ・・・都市住民が活用しやすい立地 条件や適した配置が重要 販売 額最 多作目 露地野菜 その他 施設野菜 販売金額:100万円未満 3,000㎡以上 市街 化区 域 内 農地 面積 3,000㎡未満 ※「三大都市圏」及び「地方圏」で区分

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2)都市農家の市街化区域内農地等に関する意向の主な特徴

基本農家類型及びその他の属性ごとに、都市農家の市街化区域農地等に関する意向の特徴を 次表(表 3、表 4)に整理した。

(1) 基本農家類型による主な特徴

①基本属性 農家基本類型ごとに基本属性の主な特徴を挙げると、『100 万円以上』の所有市街化区域 内農地面積は平均で 5,000 ㎡程度であり、作目別でもあまり差は無い。また『稲』以外では 生産緑地指定率が 70%程度と高い。 『100 万円以上&稲』では、経営耕地のうち調整区域割合が高く、農産物の出荷はJAの 比率が高い(62%・販売額)。 『100 万円以上&露地野菜』では、農産物の出荷は卸売市場が最も多いが(34%・販売額)、 他の類型に比較して直売所出荷 19%(販売額)で最も多い。また、不動産所得割合でも 69% と最も多い。 『100 万円以上&施設野菜』では、相続税納税猶予適用率が高く(36%)、農作業の中心者 の年齢が若く、農産物の出荷は卸売市場が最も多い(45%)。また、農業所得割合が 45%と、 他の基本農家類型と比較して最も多い。 『100 万円未満&3,000 ㎡未満』では、農作業の中心者の年齢 65 歳以上が 59%と高齢化が 顕著となっている。 ②今後 10 年間の農地利用 所有市街化区域内農地の今後 10 年間の農地利用(問1)については、全体では平均で約 60%であり、『100 万円以上&施設野菜』が 81%と最も多く、『100 万円未満&3,000 ㎡未 満』が 55%と最も少ないが、全般的に顕著な差とはなっていない。 農地として利用する理由(問2)については、農産物の収穫の目的に差が現れており、『100 万円未満』は自家用目的が多く(75%)、『100 万円以上』は販売目的が多い(66%)。ただし、 100 万円以上であっても稲作は自家用目的が多い(64%)エラー! 参照元が見つかりません。。 このことは、都市農地の利用に関する評価類型(問9~問11)にも現れており、『100 万円以上&稲』は「農地継承重要視型」(23%)、『100 万円以上&施設野菜』及び『100 万 円以上&露地野菜』は「農業収益重要視型」(27%及び 26%)、『100 万円未満&3,000 ㎡以 上』は「転用収益重視型」(17%)、『100 万円未満&3,000 ㎡未満』は「生き甲斐重要視型」 (14%)が多い結果となっている。 宅地化が困難な理由については(問3)接道条件が悪いことが 68%と最大の理由であり、 圏域や類型による大きな差はない。

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③相続発生後の農地利用 農業後継者の有無については(問4)、すでに就農している農業後継者は『100 万円以上 &施設野菜』が 35%と最も多く、農業後継者と農業後継予定者を合わせた後継者がいる農家 は『100 万円以上&露地野菜』が 50%と最も多い。 一方、『100 万円未満&3,000 ㎡未満』は、農業後継者がいない「だれも継がないと思う」 農家が 44%と最も多く、農地の継承が困難な状況にある。 相続発生後の農地については(問5)、『100 万円以上』では、「農地を一部売却し、残 りは維持できると思う」が 42%と多く(「今はまだわからない」を除くと 67%)、『100 万円未満&3,000 ㎡未満』では「農地は維持できないと思う」が 16%(「今はまだわからな い」を除くと 32%」)と、他の類型と比較して最も多い。 ④農業継続の支障 市街化区域内農地で今後も農業を続けるにあたっての支障については(問6)、いずれの 類型も固定資産税や相続税の税負担が大きいという回答が圧倒的に多い。 三大都市圏では相続税負担がより大きく、地方圏では固定資産税負担がより大きい傾向と なっている。 『100 万円以上』では、より「相続税の負担が大きい」(77%)とされ、その他「収益性が 低い」(50%)、「周辺の市街化による営農環境の悪化」(48%)などが挙げられ、特に『施設 野菜』では「収益性が低い」(58%)ことがより強く意識されている。 ⑤税制の改正希望 税制の改正希望については(問7)、「市街化区域内農地の相続税評価を軽減」(87%)や、 「耕作している農地の固定資産税を軽減」(87%)といった希望が、いずれの類型でも非常に 多い。 税制については、圏域により制度が異なるが、『三大都市圏』のみに該当する「生産緑地 の納税猶予適用要件の緩和」についても希望が多く(44%)、固定資産税の負担が増している 『地方圏』では、一部を除いて生産緑地制度を導入していないにもかかわらず「要件緩和等 生産緑地の積極的指定」の希望が多い(39%)。 『100 万円以上』において、上記に加え、「農業用施設用地の固定資産税軽減」(62%)や、 「要件緩和等生産緑地の積極的指定」(49%)といった希望も多く、特に『施設野菜』では農 業用施設用地に対する「固定資産税軽減」(75%)及び「相続税納税猶予の適用」(33%)や、 「生産緑地の相続税納税猶予適用要件の緩和」(64%)の希望が多い。 また、自由回答(問 12)において、「農業収入からみて税負担が重くアンバランス」であ り、固定資産税及び相続税ともに、「農業を継続できる税負担であるべき」といった内容の 意見が多く見られた。 一方、『100 万円未満&3,000 ㎡以上』では、「市民農園貸付時の納税猶予適用」(26%) の希望が比較的多く、担い手がいないなどの理由で十分に利用されていない農地を市民農園

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等として活用することについて、農地所有者にとっても一定のニーズがあることが確認でき る。 ⑥農業振興策の活用 農業振興策の活用については(問8)、『100 万円以上』において、作目別に特徴が現れて おり、『稲作』は「農業機械の整備」(36%)や「農業担い手育成支援」(27%)などが多い。 『露地野菜』では「加工・直売所等の整備」(28%)、『施設野菜』は「温室等の整備」(62%) や「施設等の補修」(28%)、「販路の拡大、苗木の育成・供給支援」(28%)が多いことが特徴 として見て取れる。 一方、『100 万円未満』であっても『3,000 ㎡以上』と面積規模が大きい場合は、「用排水 路等の維持管理への支援」(29%)や、「市民農園の整備」(28%)など、農地を維持するための 支援を求めていることがわかる。

(2) 農産物年間販売額別による特徴

まず、販売額『300 万円以上』という区分について、販売額『100 万円以上』の区分と比較 して、今後 10 年間の農地利用意向や、収穫物の販売目的、農業後継者などはやや多く、農業 振興施策についても温室や農業機械の整備に関して意向が多いなどの特徴が挙げられる。 しかし、全般的にそれぞれの差は大きくなく、販売額『100 万円以上』の類型とほぼ同様の 傾向と言える。 一方、販売額『700 万円以上』と比較すると、その特徴は顕著となり、目安として販売額『700 万円以上』を、収益性を強く意識した農業経営体と見なすことができる。 このことは、販売額『300 万円以上』であっても、農業所得は少なく、不動産収入等農外収 入に依存する構造は販売額『100 万円以上』と変わらない。一方販売額が『700 万円以上』と なれば、農外収入があるとしてもその依存度は低くなり、収益性を強く意識するなど様々な面 で意識が異なっている。

(3) その他の属性による特徴

以上の他、「所有市街化区域内農地面積別」、「経営耕地面積別」、「農作業の中心者の年齢 別」、「販売金額最多作目別」、「農業後継者の有無別」、及び「不動産経営所得割合別(農産 物販売額 100 万円以上を対象)」といった属性によって集計・分析を行った。その結果得られた 主な有意な特徴として挙げられる点は以下のとおり。 なお、不動産経営所得の割合別でも、農家の現状や意識に違いがあると予想したが、結果とし ては、一定の農産物販売額があれば(ここでは 100 万円以上とした)、不動産所得の多少による 農業や農地に対する意識等の顕著な違いは見られない。

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①基本属性 経営耕地面積が大きいほど、または農作業の中心者の年齢が若いほど、販売金額が多い。 ②今後 10 年間の農地利用 今後の農地利用意向が少ない属性は、農業後継者がいない農家であり、基本農家類型のど の類型よりも意向が少なく、農地利用を継続できない最大の要因となっている。 また、農地として利用する理由として、経営耕地面積が大きいほど、そして農作業の中心 者の年齢が若いほど「収穫物を販売して収入を得るため」とする回答が多い。 ③相続発生後の農地利用 所有市街化区域内農地や経営耕地面積が大きいほど、農業後継者がいる傾向があり、市街 化区域内農地面積の方がより顕著となっている。 農産物販売額が多いほど、特にすでに就農している農業後継者がいることや、作目別では 『花き・花木』や『施設野菜』で農業後継者が多い。 ④農業継続の支障 所有市街化区域内農地面積が大きいほど、固定資産税、相続税ともに税負担が大きいとの 回答が多くなっており、特に相続税の方が顕著となっている。 農作業の中心者の年齢別では、高齢なほど「高齢化や後継者不足で労働力不足」であるこ とが支障となっており、『75 歳以上』では 32%を占めている。労働力不足については、後 継者がいない「だれも継がないと思う」農家では 48%と、より一層深刻な状況にある。 また、果樹において「周辺住民からの苦情が多い」44%と他の作目に比べて多い。 ⑤税制の改正希望 所有市街化区域内農地面積が大きいほど、生産緑地の納税猶予適用要件の緩和の希望が多 い。また、作目別では、基本農家類型の施設野菜に加えて、『花き・花木』でも施設利用が 多いため、農業用施設用地への固定資産税軽減や、相続税納税猶予適用の希望が同様に多い。 ⑥農業振興施策の活用 経営耕地面積が大きいほど、機械化による作業効率化が必要となることから、農業機械の 整備に対する要望が多い。 作目別では、「露地野菜」に加えて果樹においても、「加工・直売所等の整備」の要望が 多く(29%)、「施設野菜」に加えて「花き・花木」においても、「温室等の整備」の要望が 多い(58%)。

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表 3 基本農家類型による市街化区域内農地等に関する意向の主な特徴 基本農家類型 基本属性 今後10年間の農 地利用意向 相続発生後の農 地維持見込み 農業継続の支障 税制の改正希望 農業振興施策の 活用 全体 ・農地利用平均60% ・理由:自家用62% ・宅地化困難19%→接道 条件が悪い68% ・農業後継者or予定者 がいる37% ・農地を一部売却30% ・相続税が負担69% ・固定資産税が負担67% ・農業を継続できる税負担 ・市街化区域内農地の相続 税評価を軽減87% ・耕作している農地の固定 資産税を軽減87% ・農業機械の整備26% ・用排水路等の整備・改 修22% 三大都市圏 ・農地利用平均57% ・相続税が負担67%・固定資産税負担63% ・生産緑地の納税猶予適用 要件の緩和44% ・宅地化農地への納税猶予 の適用29% 地方圏 ・農地利用平均62% ・固定資産税が負担75% ・相続税が負担71% ・生産緑地の指定39% 販売額100万円以 上 ・生産緑地指定率:稲以 外70%程度 ・販売額最多目:露地野 菜55% ・農地利用平均66% ・理由:収穫物販売66% ・農業収益重視型22% ・農業後継者or予定者 がいる48% ・農地を一部売却42% ・相続税が負担77% ・収益性が低い50% ・周辺の市街化48% ・農業用施設用地の固定資 産税軽減62% ・要件緩和等生産緑地の積 極的指定49% ・温室等の整備35% ・農業機械の整備32% 稲 ・調整区域割合が高い ・JA出荷62% ・農地利用平均63% ・理由:自家用64% ・農地継承重視型23% ・農業機械の整備36% ・農業担い手育成支援 27%(地方圏は33%) ・用排水路等の維持管理 への支援24% 露地野菜 ・卸売市場出荷34%・直売所出荷19% ・不動産所得割合69% ・農地利用平均63% ・理由:収穫物販売68% ・農業後継者or予定者 が多い50% ・生産緑地の相続税納税猶 予適用要件の緩和63% ・加工・直売所等の整備 28% 施設野菜 ・納税猶予指定率36% ・年若い(65歳未満79%) ・卸売市場45% ・農業所得割合44% ・農地利用多い81% ・理由:収穫物販売77% ・農業収益重視型27% ・就農済み農業後継者 が多い35% ・収益性が低い58% ・農業用施設用地の固定資 産税軽減75% ・農業用施設用地への相続 税納税猶予33% ・生産緑地相続税納税猶予 適用要件緩和64% ・温室等の整備62% ・施設等の補修28% ・販路の拡大、苗木の育 成・供給支援28% 販売額300 万円以上 販売額最多作目 ・露地野菜52%、施設野 菜15%、稲作14% ・第1種兼業農家約4割 ・農地利用平均69% ・理由:収穫物販売73% ・農業収益重視型26% ・農業後継者or予定者 がいる53% ・農地を一部売却46% ・相続税が負担80% ・周辺の市街化52% ・収益性が低い52% ・農業用施設用地の固定資 産税軽減65% ・要件緩和等生産緑地の積 極的指定48% ・温室等の整備41% ・農業機械の整備34% 販売 額 100 万円 未満 市街化農地 3千㎡以上 ・農地利用60% ・理由:自家用69% ・転用収益重視多い17% ・農地を一部売却40% ・収益性が低い44% ・市民農園等貸付時の納税猶予適用26% ・用排水路等の維持管理 への支援29% ・市民農園の整備28% 市街化農地 3千㎡未満 ・年齢高い(65歳以上 59%) ・農地利用少ない55% ・生き甲斐重視が多い 14% ・誰も継がない44% ・農地は維持できない 16% ・周辺の市街化36% ・耕作している農地の固定資産税を軽減90%

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表 4 その他の農家属性による市街化区域内農地等に関する意向の主な特徴 クロス分析項目 基本属性 10年後の農地利 用 相続発生後の農 地利用 農業継続の支障 税制の改正希望 農業振興施策の 活用 農産物年間販売額 別 ・販売額が多いほど農 業従事者数多い ・販売額が多いほど卸 売市場出荷が多い ・販売額が多いほど不 動産所得額が多い ・700万円以上は農地 利用が高い74% ・理由:収穫物販売79% ・農業収益重視型多い 34% ・販売額が大きいほど 後継者がいる(特に就 農している後継者) ・販売金額が多いほど 農地を維持できないが 少ない ・販売金額が多いほど 相続税負担や周辺の 市街化が支障 ・販売金額が多いほど 宅地化農地への相続 税納税猶予適用の希 望が多い ・販売金額が多いほど 温室等の整備が多い 所有市街化区域内 農地面積別 ・面積が大きいほど生 産緑地指定率が高い ・面積が大きいほど後 継者がいる(誰かが継 ぐ) ・面積が大きいほど税 負担が支障 ・面積が大きいほど、 生産緑地の納税猶予 適用要件の緩和を希 望 経営耕地面積別 ・面積が大きいほど農業従事者数、販売額が 多い ・農地利用の理由:面 積が大きいほど収穫物 販売が多い ・面積が大きいほど後 継者がいる ・面積が大きいほど農 業機械の整備が多い 農作業の中心者の 年齢別 ・若いほど販売額が多 い ・農地利用の理由:若 いほど収穫物販売が 多い ・高齢ほど労働力不足 販売額最多作目別 ・農業後継者・予定者は花き・花木52%と施 設野菜48%が多い ・果樹は周辺住民から の苦情多い44% ・施設野菜と花き・花木 農業用施設用地の固 定資産税軽減希望、農 業用施設用地への相 続税納税猶予希望多 い ・露地野菜、果樹:加 工・直売所等の整備が 多い ・施設野菜、花き・花 木:温室等の整備が多 い 農業後継者の有無 別 ・後継者無しは農地利 用少ない44% ・後継者無しは農地を 維持できない21%(わ からない51%) ・後継者無しは労働力 不足48% ( 参考) 不動産経営所得の 割合別 ※一定の農産物販売額があれば(ex.100万円以上)、不動産所得の多少による顕著な差はない

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3)今後の都市農地保全の見通し

今後の都市農地がどの程度減少すると予想されるかについて、本調査の結果をもとに試算 した。 その結果、10 年後については、問1の結果より、三大都市圏の宅地化農地が 45%減少し (生産緑地を含む市街化区域内農地としては 13%減少)、地方圏においては、市街化区域内 農地が 32%減少する。 地方圏は、三大都市圏に比べて生産緑地制度が導入されていないために、より減少割合が 大きくなると予想される。 一方、相続発生時には、問5の結果より、仮に「農地の一部を売却し、残りは維持できる と思う」との回答の場合に、30%売却すると仮定すると、相続発生時には三大都市圏では 36%、 地方圏では 39%市街化区域内農地が減少することになる(現在の所有農地をもとに計算した 減少率)。 これらは、農業を続けるうえでの支障(問6)の回答にあるように、固定資産税や相続税 の税負担が大きいことが最大の理由であるとともに、農業を誰も継がないと見込まれる(問 4)ことにより、市街化区域内農地はこのように大きく減少すると予想される。 図 3 意向調査結果による今後の市街化区域内農地の減少見通し (注)農地面積の減少は、いずれも現在の所有農地をもとにした減少率。 三 大 都 市 圏 宅地化農地が45%減少 地 方 圏 10年後の農地利用見通し 相続発生時の農地利用見通し 生産緑地 宅地化農地 現在の市街化区域内農地 生産緑地 市街化区域内農地 市街化区域内農地が32%減少 市街化区域内農地 市街化区域内農地 市街化区域内農地が36%減少 市街化区域内農地 市街化区域内農地が39%減少 ※仮に相続時に一部売却の場合、 3割を売却するとした場合 相続税 負担 固定資 産税負 負担

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表 5 意向調査結果による今後の市街化区域内農地の減少見通し (10 年後の農地面積の試算方法) 問1において、現在所有している市街化区域内農地(生産緑地を除く)について、今後 10 年間でその利用がどのように変わると思うかについて、農地として利用する割合を尋ねてい る。この割合を所有する市街化区域内農地に乗じて、10 年後の農地面積を計算し、同じ該当 者が現在所有する市街化区域内農地と比較した(市街化区域内農地が不明の場合は計算から 除外)。なお、生産緑地は 10 年後も減少しないものとする。 (相続後の農地面積の試算方法) 問5において、将来、相続が発生した場合、相続税の支払いや市街化区域内農地はどのよ うになるかについて尋ねている。それぞれの選択肢ごとに、下表のように相続後の農地面積 を計算した。そして、同じ該当者が現在所有する市街化区域内農地と比較した(市街化区域 内農地が不明の場合は計算から除外)。 なお、選択肢4.の「農地の一部を売却」する場合の割合を、30%と仮定した。 選択肢 相続後の農地面積の計算 1.各税額控除等により相続税を支払わなくても済むので、農地は維持 できると思う →現在と同じ面積 2.農地を売却しなくても、現金・預貯金や宅地の売却等で相続税を支 払えるので、農地は維持できると思う →現在と同じ面積 3.相続税の支払いに農地の一部を売却し、残りの農地は維持できると 思う →現在より30%の減少 4.相続を機に全ての市街化区域内農地または宅地化し、農地は維持で きないと思う →農地は0 5.相続税の支払い、農地はどのようになるか今はまだわからない →計算から除外 現在 面積(㎡) 面積(㎡) 増減率 全国 7,744,197 6,216,012 -19.7% 生産緑地を除く 4,173,624 2,645,439 -36.6% 三大都市圏 4,967,482 4,341,056 -12.6% 宅地化農地 1,396,909 770,483 -44.8% 生産緑地 3,570,573 3,570,573 0.0% 地方圏 2,776,715 1,874,956 -32.5% (注) 該当条件は、F1.市街化区域内農地面積が1㎡以上、かつ問1.今後の農地利用意向に回答有り 現在 面積(㎡) 面積(㎡) 増減率 全国 4,707,690 2,958,212 -37.2% 三大都市圏 3,226,857 2,056,103 -36.3% 地方圏 1,480,833 902,109 -39.1% (注) 該当条件は、F1.市街化区域内農地面積が1㎡以上、かつ問5.相続発生後の納税や農地について、 5.「現在は まだわからない」を除く回答有り 10年後 Q 1 .市 街 化 区 域 内 農 地 の 1 0 年 後 の 農 地 利 用 面 積 相続後 Q 5 .市 街 化 区 域 内 農 地 の 相 続 後 の 農 地 利 用 面 積

表 3  基本農家類型による市街化区域内農地等に関する意向の主な特徴  基本農家類型 基本属性 今後10年間の農 地利用意向 相続発生後の農地維持見込み 農業継続の支障 税制の改正希望 農業振興施策の活用 全体 ・農地利用平均60%・理由:自家用62% ・宅地化困難19%→接道 条件が悪い68% ・農業後継者or予定者がいる37%・農地を一部売却30% ・相続税が負担69% ・固定資産税が負担67% ・農業を継続できる税負担 ・市街化区域内農地の相続税評価を軽減87%・耕作している農地の固定 資産税を軽減8
表 4  その他の農家属性による市街化区域内農地等に関する意向の主な特徴  クロス分析項目 基本属性 10年後の農地利 用 相続発生後の農地利用 農業継続の支障 税制の改正希望 農業振興施策の活用 農産物年間販売額 別 ・販売額が多いほど農業従事者数多い・販売額が多いほど卸売市場出荷が多い ・販売額が多いほど不 動産所得額が多い ・700万円以上 は農地利用が高い74% ・理由:収穫物販売79%・農業収益重視型多い34% ・販売額が大きいほど後継者がいる(特に就農している後継者) ・販売金額が多いほど農地を
表 5  意向調査結果による今後の市街化区域内農地の減少見通し  (10 年後の農地面積の試算方法)  問1において、現在所有している市街化区域内農地(生産緑地を除く)について、今後 10 年間でその利用がどのように変わると思うかについて、農地として利用する割合を尋ねてい る。この割合を所有する市街化区域内農地に乗じて、10 年後の農地面積を計算し、同じ該当 者が現在所有する市街化区域内農地と比較した(市街化区域内農地が不明の場合は計算から 除外)。なお、生産緑地は 10 年後も減少しないものとする。  (

参照

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