ルベーグ積分入門後編
会田茂樹
平成
24
年12
月13
日版∗0
初めにこれは
,
解析学概論B2
の講義ノートです.
内容は1.
測度の再導入2.
測度空間の完備性・完備化3.
フビニの定理(a)
直積測度(b) Fubini
の定理(
完備化しない場合) (c) Fubini
の定理(
完備化した場合) 4.
ルベーグ測度に対するフビニの定理5.
ルベーグ測度に関する注意6.
確率論に関連する注意(a)
直積確率測度と確率変数の独立性(b)
大数の法則(c)
像測度と積分の変数変換の公式7.
Radon-Nikodym
の定理8.
有界変動関数・Stieltjes
積分・測度の構成9.
フーリエ変換∗まだ完成品ではありません. 順次更新します.
1 測度の再導入
前期の講義で
R
nの部分集合A
のルベーグ外測度m
∗L(A)
1を次のように定義した. m
∗L(A) = inf
{ ∑
∞i=1
| I
i| I
i はR
nの直方体( ∏
ni=1
[a
i, b
i] ( −∞ < a
i< b
i< ∞ )
の形の図形)
かつA ⊂ ∪
∞i=1I
i} .
このm
∗Lは次を満たす:(a) 0 ≤ m
∗L(A) ≤ + ∞
(b) A ⊂ B
ならばm
∗L(A) ≤ m
∗L(B )
(c)
任意のA
i(i = 1, 2, . . .)
に対してm
∗L(∪
∞i=1A
i) ≤ ∑
∞i=1
m
∗L(A
i).
これらを示すのは簡単である
.
次にA
をR
nの部分集合とする。任意のR
nの部分集合E
に対して つねにm
∗L(E) = m
∗L(E ∩ A) + m
∗L(E ∩ A
c) (1.1)
が成立するような集合A
全体をB
L( R
n)
と書くと2(d) B
L( R
n)
はσ-
加法族となること(e) B
L(R
n)
の元をルベーグ可測集合とよぶこと(f) m
∗LをB
L( R
n)
に制限したものをm
Lと書くと( R
n, B
L( R
n), m
L)
は測度空間となること を説明した.このm
L(A)
がルベーグ測度である.
ルベーグ外測度およびJordan
式の測度につい て演習問題をあげる.
演習問題
1.1.
前期に次の定理を述べ,これによりJordan
可測な有界集合はLebesgue
可測であり
, Jordan
測度(
リーマン式の体積)
はその集合のルベーグ測度と一致することが示せると述べた.
以下の定理を証明しかつ有界集合が
Jordan
の意味で可測のときそのJordan
測度とLebesuge
測 度は一致するという命題の証明を完成させよ.
定理
(1)
直方体I = ∏
ni=1
[a
i, b
i]
についてm
∗L(I) = ∏
ni=1
(b
i− a
i),
すなわちI
の通常の意味での体積 と一致する.
(2) A ⊂ R
nとする。次は同値である:1前期、およびこれまで外測度をm(A)などのようにmの上にバーをつけて表してきたが、測度の完備化の方でこ の記号を用いたほうがよいので、ここではm∗のように∗をつけて外測度を表すことにする
2外測度の性質からこの等式は不等式m∗L(E)≥m∗L(E∩A) +m∗L(E∩Ac)と同値である. また前期は「内測度」の 視点からこの等式の意味を説明した.
(i)
任意の直方体I
に対してm
∗L(I) ≥ m
∗L(I ∩ A) + m
∗L(I ∩ A
c).
(ii)
任意の集合E
に対してm
∗L(E) ≥ m
∗L(E ∩ A) + m
∗L(E ∩ A
c).
上記の外測度から測度を構成する部分では考えている集合がユークリッド空間である必要は無 く全く一般の集合で差し支えない.これは
Carath´ eodory
による発見である.これに従い,
一般的 な測度の構成定理を説明する.定義
1.2. X
を集合とする. X
の任意の部分集合A
に対して非負の数0 ≤ m
∗(A) ≤ + ∞
が定まり 次を満たすときm
∗を外測度という.
(1) m
∗(∅) = 0
(2) A ⊂ B
ならばm
∗(A) ≤ m
∗(B)
(3) (
外測度の劣加法性)
任意のX
の部分集合A
i(i = 1, 2, . . .)
に対してm
∗( ∪
∞i=1A
i) ≤ ∑
∞i=1
m
∗(A
i).
定理
1.3 (Carath´ eodory
の拡張定理).
集合X
上に外測度m
∗が与えられたとする.
任意のE ⊂ X
に対してm
∗(E) ≥ m
∗(E ∩ A) + m
∗(E ∩ A
c)
が成立するような
A
をm
∗-
可測集合といいm
∗-
可測集合全体をF
m∗と書くと次が成立する. (1) F
m∗はσ
加法族をなす(2) m
∗をF
m∗に制限したものをm
と書くと(X, F
m∗, m)
は測度空間となる.
証明
. (1) ∅ , X ∈ F
m∗は自明.A ∈ F
m∗ならばA
c∈ F
m∗ も自明. A
i∈ F
m∗(i = 1, 2, . . .)
なら ば∪
∞i=1A
i∈ F
m∗を示す. B
n= ∪
ni=1A
iとおく.
次を示そう.
(i)
任意のE ⊂ X
に対してm
∗(E) ≥ m
∗(E ∩ B
n) + m
∗(E ∩ B
nc).
(ii) A
i∈ F
m∗(1 ≤ i ≤ n)
がA
i∩ A
j= ∅ i ̸= j
を満たすときm
∗(E ∩ B
n) =
∑
n i=1m
∗(E ∩ A
i).
(iii) A
i∈ F
m∗(i = 1, 2, . . .)
がA
i∩ A
j= ∅ i ̸ = j
を満たすときB = ∪
∞i=1A
iとおくとm
∗(E) ≥ m
∗(E ∩ B) + m
∗(E ∩ B
c).
(i)
よりF
m∗が有限加法族であることがわかる. (iii)
によりσ
加法族であることもわかる. (i)
を帰 納法で示す. n = 1
は仮定から正しい. n
のとき成立するとする.
m
∗(E) ≥ m
∗(E ∩ B
n) + m
∗(E ∩ B
nc)
≥ m
∗(E ∩ B
n∩ A
n+1) + m
∗(E ∩ B
n∩ A
cn+1) + m
∗(E ∩ B
nc∩ A
n+1) + m
∗(E ∩ B
nc∩ A
cn+1)
≥ m
∗(E ∩ B
n+1) + m
∗(E ∩ B
n+1c). (1.2)
(1.2)
では外測度の劣加法性, A
n+1に対する仮定およびB
n+1= (B
n∩ A
n+1) ∪ (
B
n∩ A
cn+1)
∪ (B
nc∩ A
n+1) , B
n+1c= B
nc∩ A
cn+1 を用いた. (ii)
を示す. A
i∈ F
m∗を次々と用いm
∗(E ∩ B
n) = m
∗(E ∩ B
n∩ A
n) + m
∗(E ∩ B
n∩ A
cn)
= m
∗(E ∩ A
n) + m
∗(E ∩ B
n−1) = · · · =
∑
n i=1m
∗(E ∩ A
i). (1.3) (iii)
を示す. (i), (ii)
からm
∗(E) ≥ m
∗(E ∩ B
n) + m
∗(E ∩ B
nc)
=
∑
n i=1m
∗(E ∩ A
i) + m
∗(E ∩ B
cn)
≥
∑
n i=1m
∗(E ∩ A
i) + m
∗(E ∩ B
c) (1.4)
(1.4)
でn → ∞
とすると外測度の劣加法性を用いm
∗(E) ≥ ∑
∞i=1
m
∗(E ∩ A
i) + m
∗(E ∩ B
c) ≥ m
∗(E ∩ B) + m
∗(E ∩ B
c).
以上より
F
m∗はσ
加法族である.
(2) A
i∈ F
m∗(i = 1, 2, . . .)
がA
i∩ A
j= ∅ i ̸ = j
を満たすとし, B = ∪
∞i=1A
iとおく. (1.3)
でE = X
としm
∗(B) ≥ m
∗(B
n) =
∑
n i=1m
∗(A
i).
n → ∞
としm
∗(B) ≥ ∑
∞i=1
m
∗(A
i) ≥ m
∗(B)
だからm
∗(B ) = ∑
∞i=1
m
∗(A
i)
となり完全加法性 がわかる.
さてルベーグ測度は
Jordan
測度という有限加法的な測度を拡張して得られる測度である.
より 一般に有限加法的な測度がいつ測度に拡張できるかということについては,
次のようなHopf
の拡 張定理がある.
定理
1.4 (Hopf
の拡張定理). (X, A, m
0)
を有限加法的測度空間とする. F = σ(A)
と定める. (1) F
上完全加法的な測度m
が存在してm(A) = m
0(A) ∀ A ∈ A
となるための必要十分条件は
m
0がA
上完全加法的なこと、すなわち• A
i∈ A (i = 1, 2, . . .)
がA
i∩ A
j= ∅ (i ̸ = j), ∪
∞i=1A
i∈ A
を満たすときm
0( ∪
∞i=1A
i) =
∑
∞ i=1m
0(A
i)
が成立することである
.
(2)
さらに有限加法的測度空間(X, A , m)
がσ
有限,
すなわち(a) X
1⊂ X
2⊂ · · · X
n⊂ · · · , ∪
∞n=1X
n= X, X
n∈ A (b)
すべてのn
についてm
0(X
n) < ∞
とする
.
このとき拡張m
は一意的である3.
証明
. (1)
を証明する. (2)
は単調族定理を用いる必要があるので後で示す.
必要であることは明白 なので,
十分であることを示す.
外測度m
∗を導入する.A ⊂ X
に対してm
∗(A) = inf {
∞∑
i=1
m
0(A
i) A
i∈ A , A ⊂ ∪
∞i=1A
i}
.
外測度になるのは定義から自明である.
Carath´ eodory
の拡張定理より(X, F
m∗, m
∗)
は測度空間 になる.
次を証明すればよい.
(i) A ⊂ F
m∗(ii) m
∗(A) = m
0(A) ∀ A ∈ A .
(i)
を示す.
任意の集合E ⊂ X, A ∈ A
に対してm
∗(E) ≥ m
∗(E ∩ A) + m
∗(E ∩ A
c) (1.5)
を示せばよい. m
∗(E) = +∞
ならば常に成立するのでm
∗(E) < ∞
としてよい. ε > 0
を一つ取 る.このときB
i∈ A (i = 1, 2, . . .)
が存在してE ⊂ ∪
∞i=1B
iかつ∑
∞ i=1m
0(B
i) ≤ m
∗(E) + ε. (1.6)
3σ有限性が無いと一般的には一意性は従わない. 例えば演習問題3.11を見よ. しかしもっと人工的な例がそう難し く無く作れる. 例えば伊藤清三の本を参照せよ.
E ∩ A ⊂ ∪
∞i=1(B
i∩ A), E ∩ A
c⊂ ∪
∞i=1(B
i∩ A
c)
だから外測度の定義からm
∗(E ∩ A) ≤ ∑
∞i=1
m
0(B
i∩ A), m
∗(E ∩ A
c) ≤ ∑
∞i=1
m
0(B
i∩ A
c).
各辺を足し算して
m
∗(E ∩ A) + m
∗(E ∩ A
c) ≤ ∑
∞i=1
m
0(B
i∩ A) +
∑
∞ i=1m
0(B
i∩ A
c)
=
∑
∞ i=1m
0(B
i) (m
0の有限加法性より)
≤ m
∗(E) + ε
((1.6)
より).
これは
A
のm
∗-
可測性を示している.ここまでm
0のA
上の完全加法性を用いていない. (ii)
を示 すのに用いる.(ii)
を示そう. A ∈ A
なのでm
∗(A) ≤ m
0(A). m
0(A) ≤ m
∗(A)
を示す.そのため にはA ⊂ ∪
∞i=1A
i, A
i∈ A
となるA
iに対し,
m
0(A) ≤ ∑
∞i=1
m
0(A
i) (1.7)
を示せば良い
. B
n= A
n∩ (
∪
ni=1−1A
i)
c∩ A
とおくとB
n⊂ A
n, ∀ n B
n∈ A , B
n∩ B
m= ∅ (n ̸ = m) (1.8)
A = ∪
∞n=1B
n⊂ ∪
∞n=1A
n(1.9)
(1.9)
よりm
0のA
上での完全加法性からm
0(A) =
∑
∞ i=1m
0(B
i) ≤ ∑
∞i=1
m
0(A
i).
すなわち
(1.7)
が示された.
有限加法的測度から完全加法性をもつ測度を構成する方法を説明したが
,
ルベーグ測度の場合に どうHopf
の拡張定理を用いるか,
もう少し説明する. R
n上のルベーグ測度の構成の場合A = {
A ⊂ R
nI = ∏
ni=1
(a
i, b
i]
の形の半開区間の有限和として表される集合全体}
(1.10)
のような有限加法族を取る.
ただし半開区間I
については−∞ ≤ a
i≤ b
i≤ +∞
とし,
無限区間も 含むとする4. A
の定義で半開区間の有限和としているが,
A =
∪
N i=1I
i ただしi ̸ = j
のときI
i∩ I
j= ∅
4bi= +∞のとき(ai, bi] = (ai,+∞)と考える.
のように有限個の半開区間の
disjoint union
5 で書けているもの全体としても同じである. m
0はA = ⨿
Ni=1
I
iのときm
0(A) =
∑
N i=1| I
i| , | I
i| =
∏
n i=1(b
i− a
i)
と定めると(i) ( R
n, A , m
0)
は有限加法的測度空間でありm
0はA
上完全加法的である.
これからHopf
の 拡張定理を経由して作られる測度空間は( R
n, B( R
n), m
L),
ただしB( R
n)
はボレル集合族で ある,
(ii) F
m∗がルベーグ可測集合全体で,
外測度m
∗をこの集合族に制限して得られるのがルベーグ 測度ということになる
.
また,
今の場合, Hopf
の拡張定理の証明に現れる外測度はm
∗(A) = inf
{
∞∑
i=1
|I
i| I
i はR
nの半開区間でA ⊂ ∪
∞i=1I
i}
. (1.11)
と書いてよいこともわかる6
.
上の(i)
で自明でないのはm
0のA
上での完全加法性である.
これは 次を示せば十分である.
命題
1.5. I
を半開区間とする.
互いにdisjoint
な半開区間の列I
iがI = ∪
∞i=1I
iを満たすとき| I | =
∑
∞ i=1| I
i|
証明
. N
を任意の自然数とする. ∪
Ni=1I
i⊂ I, I
iは共通部分をもたないから| I | ≥ ∑
Ni=1
| I
i|
は明ら かと言っていいだろう.
したがって| I | ≥ ∑
∞i=1
| I
i|
である.
逆の不等式を示す. (1) | I | < ∞
のときε > 0
を取る. J ⊂ I
となる直方体J
7で| J | ≥ | I | − ε (1.12)
となるものがある
. I
iをすこし膨らました開直方体I ˜
i8を取り∑
∞ i=1| I ˜
i| ≤ ε +
∑
∞ i=1| I
i| (1.13)
とできる
. J ⊂ ∪
∞i=1I ˜
iなのでJ
のコンパクト性から適当なN
を取ればJ ⊂ ∪
Ni=1I ˜
i. (1.14)
5A=⨿N
i=1Iiのように書くこともある.
6簡単なことであるが、確かめるべきことである.
7∏n
i=1[ai, bi]の形の集合
8∏n
i=1(ai, bi)という形の集合
(1.14), (1.12), (1.13)
より|I | ≤ |J | + ε ≤ ε +
∑
N i=1| I ˜
i| ≤ 2ε +
∑
∞ i=1|I
i|
これで逆向きの不等式が示された.
(2) | I | = + ∞
のとき(1)
と同じように示せる.
あるi
について|I
i| = +∞
ならば正しいので,
すべてのi
について| I
i| < ∞
とする.
大きな正数R
を取る. J ⊂ I
となる閉区間J
で| J | ≥ R (1.15)
となるものがある
. I
iをすこし膨らました開区間I ˜
iを取り∑
∞ i=1| I ˜
i| ≤ 1 +
∑
∞ i=1|I
i| (1.16)
とできる
. J ⊂ ∪
∞i=1I ˜
iなのでJ
のコンパクト性から適当なN
を取ればJ ⊂ ∪
Ni=1I ˜
i. (1.17)
(1.17), (1.15), (1.16)
よりR ≤ | J | ≤
∑
N i=1| I ˜
i| ≤ 1 +
∑
∞ i=1| I
i|
これは∑
∞i=1
| I
i| = + ∞
を意味する.
細かいことであるが、次を注意しておく
.
この節の冒頭でルベーグ外測度の定義を与えた.そこ ではI
iは直方体∏
ni=1
[a
i, b
i]
としていたが(1.11)
のように無限区間を含む半開区間にしても最初 に定義した外測度と同じことが示せるのである.
定理
1.4 (2)
の拡張の一意性を示すため,
単調族定理(Monotone class theorem)
を述べる.
定義1.6. (1) M
を集合X
の部分集合の族で次の性質をみたすとき単調族という:
(1) A
i∈ M , A
1⊂ A
2⊂ · · · A
n⊂ · · ·
のとき∪
∞i=1A
i∈ M . (2) A
i∈ M , A
1⊃ A
2⊃ · · · A
n⊃ · · ·
のとき∩
∞i=1A
i∈ M .
(2) X
の集合族C
に対してC
を含む最小の単調族が存在する9.
これをM( C )
と書くことにする.
定理1.7 (
単調族定理). A
を集合X
の有限加法族とする.
このときσ( A ) = M( A ).
証明
. M( A ) ⊂ σ( A )
だからM( A )
がσ
加法族であることを示せば良い.
そのためには9Cを含むすべての単調族の共通部分をとればよい
(i) A ∈ M(A)
ならばA
c∈ M(A) (ii) A, B ∈ M( A )
ならばA ∩ B ∈ M( A )
を示せばよい10.
(i)
の証明: M
1( A ) = { A ∈ M( A ) | A
c∈ M( A ) }
とおくとき, M
1( A ) = M( A )
を示せばよい. A ∈ A
ならばA
c∈ A
なのでA ⊂ M
1( A ).
従ってM
1( A )
が単調族であることを示せばよい.
(1)
のチェック:A
1⊂ A
2⊂ · · · , A
n∈ M
1( A )
とするとき∪
∞i=1A
i∈ M
1( A )
を示す.
まず∪
∞i=1A
i∈ M(A)
である. A
ci∈ M(A)
かつ{A
ci}
は単調減少列なのでM(A)
が単調族であること から( ∪
∞i=1A
i)
c= ∩
∞i=1A
ci∈ M( A ).
よって
∪
∞i=1A
i∈ M( A ).
(2)
のチェック:A
1⊃ A
2⊃ · · · , A
n∈ M
1( A )
とする. ∩
∞i=1A
i∈ M
1( A )
を示す.
まず∩
∞i=1A
i∈ M( A )
はOK.
( ∩
∞i=1)
cA
i= ∪
∞i=1A
ci∈ M( A )
もA
ci∈ M( A )
から従う.
以上
(1), (2)
が示せたのでM
1( A )
は単調族である. (ii)
の証明:2
段階で証明する.
(a) M
2(A) = {A ∈ M(A) | ∀B ∈ A A ∩ B ∈ M(A)}
とおくとM
1(A) = M(A)
を示す.
まずA ⊂ M
2( A )
は明らか.
従ってM
2( A )
が単調族であることを示せば良い.
A
1⊂ A
2⊂ · · · , A
i∈ M
2( A )
のとき,
任意のB ∈ A
に対してA
i∩ B ∈ M( A ).
従って任意のB ∈ A
に対して( ∪
∞i=1A
i) ∩ B = ∪
∞i=1(A
i∩ B ) ∈ M( A ).
よって
∪
∞i=1A
i∈ M
2( A ).
A
1⊃ A
2⊃ · · · , A
i∈ M
2( A )
のとき∩
∞i=1A
i∈ M
2( A )
も同様な計算でわかる.
以上よりM
2( A )
は単調族である.
(b)
次にM
3(A) = {A ∈ M(A) | ∀B ∈ M(A) A ∩ B ∈ M(A)}
とおくとM
3(A) = M(A)
を 示す.
これで(ii)
が示され証明が完了する.
(a)
の結果より, A ⊂ M
3( A ).
したがって, M
3( A )
が単調族である事を示せばよい.
この証明は(a)
と全く同じなので省略する.
注
1.8.
この定理はA
を含む任意の単調族M
はσ( A )
を含むという主張と同値である.
単調族定理を使う問題として次をあげておく.
演習問題
1.9. µ
を可測空間(I, B(I))
上の有限測度とする.
ただしI = [0, 1]
かつB(I )
はボレル集 合族である. f
をI
上の有界ボレル可測関数とする.
任意の0 ≤ t ≤ 1
に対して∫
[0,t]
f (x)dµ(x) = 0
ならばf (x) = 0 µ-a.e.x
となることを示せ.10これが示されれば有限加法族であることがわかる
Hopf
の拡張定理(
拡張の一意性)
の証明. m
1, m
2をm
0のF (= σ(A))
への拡張とする. C = { A ∈ F | m
1(A ∩ X
n) = m
2(A ∩ X
n) ∀ n ∈ N}
と定める
. A ⊂ C
なのでC
が単調族であることを示せば単調族定理よりσ( A ) ⊂ C
となりすべての
A ∈ F
についてm
1(A ∩ X
n) = m
2(A ∩ X
n).
この式で
n → ∞
とするとm
1(A) = m
2(A)
となり一意性が言えることになる.
従ってC
が単調族であることを示せばよいが
,
これはm
1(X
n) = m
2(X
n) = m
0(X
n) < ∞
だから測度の単調性から 従う.
注
1.10. Carath´ eodory
およびHopf
の拡張定理を述べたがこれらは(1) (
無限)
直積確率測度の構成(2)
局所コンパクトハウスドルフ空間上の連続関数の空間上の正値な連続汎関数が測度に対応す ることを述べるリース・マルコフの定理などで使われる
. (1)
については後で述べる. (2)
は関数解析の講義で扱われる内容である.
2 測度空間の完備性・完備化
ルベーグ測度などのように外測度から
Carath´ eodory
の拡張定理を経由して構成される測度は完 備性と呼ばれる性質を持つ.正確には完備性は,
測度とσ
加法族両方に関わる性質である11.
定義2.1.
測度空間(X, F , m)
が完備とは次の条件(C)
が成立するときに言う.
(C) A ∈ F
がm(A) = 0
を満たせば,
任意のB ⊂ A
に対してB ∈ F
となり,
かつm(B) = 0.
注
2.2. ( R
n, B( R
n), m
L)
は完備でない測度空間である.
ただしB( R
n)
は(
位相的)
ボレル集合族, m
Lはルベーグ測度.
(a)
任意のルベーグ測度0
の集合の部分集合はルベーグ可測であること(b)
濃度が連続体の濃度ℵ
のルベーグ測度0
の集合が存在すること(c) B( R
n)
の濃度はℵ
であること11確率過程論で重要なブラウン運動には情報増大系と呼ばれるσ加法族がある.このσ加法族は完備ではないが、完 備化すると色々と有用な事がある.
から濃度の比較によりルベーグ可測だがボレル可測ではない集合が存在することがわかる.これ は前期にレポートとして出題した
.
上記の(c)
は全く自明ではない.
例えば「実関数論」(
近藤基 吉、朝倉書店)
12を参照のこと.
定理
2.3. (X, F, m)
を測度空間とする. F
m=
{
B ⊂ X | m-
測度ゼロの集合N ∈ F
とA ∈ F
が存在してA △ B ⊂ N · · · ( ∗ ) }
と定める
.
ここでA△B = (A \ B) ∪ (B \ A).
以下(
曖昧さが無いときは)
簡単のため, F
mをF
と 測度m
を省略して書くこともある.
(1) F
mはσ
加法族であり, F ⊂ F
m.
(2) (1)
の( ∗ )
の関係にあるB
に対してm(B) = m(A)
と定める.
このとき,
この定義はwell-defined
であり, (X, F
m, m)
は完備な測度空間になる.
さらにA ∈ F
ならばm(A) = m(A)
となる.
この 測度空間を(X, F , m)
の完備化と言う.
証明
. (1)
まずF ⊂ F
は明らか. σ
加法族であることを示す. (i) A ∈ F
ならばA
c∈ F
(ii) A
i∈ F (i = 1, 2, . . .)
ならば∪
∞i=1A
i∈ F
を示せばよい
. (i)
を示す. A ∈ F
のとき, B ∈ F
とN ∈ F
でA △ B ⊂ N , m(N) = 0
となるも のがある. A
c△ B
c= A △ B ⊂ N
となり, B
c∈ F
だからA
c∈ F . (ii)
を示そう.
各A
iについてB
i∈ F , N
i∈ F
でA
i△ B
i⊂ N
i, m(N
i) = 0
とできる.
( ∪
∞i=1A
i) △ ( ∪
∞i=1B
i) = (( ∪
∞i=1A
i) ∩ ( ∩
∞i=1B
ci)) ∪ (( ∪
∞i=1B
i) ∩ ( ∩
∞i=1A
ci))
= {
∪
∞i=1( A
i∩ (
∩
∞j=1B
jc))}
∪ {
∪
∞i=1( B
i∩ (
∩
∞j=1A
cj))}
⊂ ( ∪
∞i=1(A
i∩ B
ic)) ∪ ( ∪
∞i=1(B
i∩ A
ci))
⊂ ∪
∞i=1N
i.
となりm( ∪
∞i=1N
i) ≤ ∑
∞i=1
m(N
i) = 0
だから(ii)
が示された.
(2)
まずこの定義がwell-defined
であることを示す.
別のA
′∈ F, N
′∈ F
でA
′△B ⊂ N
′, m(N
′) = 0
とする.
A △ A
′= (A \ A
′) ∪ (A
′\ A)
⊂ (
(B ∪ N ) \ A
′)
∪ (
(B ∪ N
′) \ A )
⊂ (
(B \ A
′) ∪ N )
∪ (
(B \ A) ∪ N
′)
⊂ N ∪ N
′なので
m(A △ A
′) = 0.
従ってm(A) = m(A
′).
またこの事から定義したm
はm
の拡張であるこ とも定義から明らか. m
が測度になること,
すなわち完全加法性はm
の完全加法性から従う.
完備 性の定義の条件(C)
も明らかである.
12古い本ですが復刻版が出ています.