中 小 製 造 業 の 海 外 展 開 の 課 題 へ の 取 組 に 関 す る 調 査 報 告 書
<2008-4>
平成21年3月
財団法人 中 小企業総合研究機構
委 託 先 全 国 中 小 企 業 団 体 中 央 会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
は じ め に
中小企業が新たな付加価値の創出等に取り組むことにより生産性を向上させることは、
中小企業の業況を改善させ、持続的な発展を遂げていくためにも必要です。
08年度中小企業白書では、グローバル化が進展する中で、中小製造業は売上高に占 める輸出割合が上昇しており、輸出を行っている中小企業と行っていない企業との業況 感に格差が生じていると分析しています。また、製造業における海外生産比率は上昇傾 向にあり、海外直接投資によって労働生産性が向上した中小企業の割合が約4割に上る など、中小企業が輸出や海外での事業展開に取り組むことが中小企業の労働生産性の向 上に寄与している可能性を指摘しています。しかしながら、中小企業が輸出や海外進出 を行っていくうえでパートナー企業の確保、品質管理が困難等様々な課題に直面してい ることを挙げています。
本調査は、中小企業のグローバル化への対応に対して、海外展開している中小企業が パートナー企業の確保や品質管理の困難等様々な課題をどのように克服しているのか 実態をアンケート調査、ヒアリング調査により把握し、中小製造業が海外展開を検討す るに際しての情報を提供することにより、海外展開による中小製造業の生産性向上に資 することを目的として実施したものです。
本報告書の様々な海外展開に取り組む企業の事例をもとにして、今後の企業経営等に 活用いただければ幸いです。
最後に、本報告書の取りまとめにご尽力いただきました関係者各位並びに調査実施に 際し貴重な情報を提供いただきました企業の皆様にこころより厚くお礼申し上げます。
Ⅰ 調査の概要... 1
1.調査の背景と目的 ... 1
2.調査対象 ... 1
3.調査の内容 ... 1
4.調査体制 ... 2
Ⅱ 事例調査結果... 3
1.事例調査総括 ... 3
2.個別企業事例 ... 5
Ⅲ アンケート調査結果... 67
1.調査の方法 ... 67
2.調査結果の概要 ... 67
資料... 73
1.アンケート調査集計表 ... 73
2.アンケート調査票 ... 85
Ⅰ 調査の概要
中小企業が新たな付加価値の創出等に取り組むことにより生産性を向上させることは、
業況を改善させ、持続的な発展を遂げていくためにも必要である。2008 年版中小企業白書 は、中小企業の生産性の向上について様々な角度から分析を行い、中小企業の輸出や海外 展開と生産性を取り上げている。
白書は、輸出が中小企業の生産を牽引する力は大きくなっており、輸出を行っている企 業のほうが輸出を行っていない企業よりも業況が良く、輸出が付加価値の増大をもたらし 生産性を向上させている可能性が示唆されるとしている。また、海外直接投資を行ってい る中小企業の生産性は直接投資を行っていない企業より高く、実際、直接投資によって生 産性が増加したとする企業が多いことから、海外展開は中小企業の生産性の向上に寄与す る効果があると指摘している。
しかしながら、中小企業が輸出や海外直接投資などの海外展開を行っていく上での課題 は多い。白書でも輸出業務を実施する際の課題として、優秀なパートナー企業の確保、海 外現地企業・居住者のニーズの把握、現地の制度運用・商慣行への対応などがあげられて いる。また、直接投資による海外拠点における経営上の問題として、現地マネージャー層 の不足、品質管理が困難、現地における更なる販路の拡大などがあげられている。
わが国経済のグローバル化が進展する中で、中小企業が様々な課題の克服に挑戦して海 外展開を行い、独自のアイディアと技術力によって生産性向上を図ることは極めて重要で ある。本調査は、海外展開をしている中小企業が海外展開における様々な課題をどのよう に克服しているのか実態を把握するとともに、今後、中小企業が海外展開を検討するに際 しての情報提供等の支援に役立てることを目的に行った。
2.調査対象
調査対象は、海外展開(輸出、直接投資)をしている企業の割合が高い一般機械、金属 製品、電気機械、精密機械、情報通信の各業種で、中国、東南アジア地域に進出している 中小企業とした。
(1)ヒアリング調査
ヒアリング調査は30社について行った。調査対象企業は、都道府県中小企業団体中央 会及び全国工場団地協同組合連合会の協力により紹介を受けた。
(2)アンケート調査
アンケート調査は1500社に対して行った。調査対象は、日本貿易振興機構(JETRO)
のデータベースを利用し、海外進出企業総覧(東洋経済新報社)からアジア地域への日本 側出資企業(中小企業:資本金規模)を抽出したほか、TSR企業情報インデックスから不 足分(海外進出の可能性を考慮し、資本金2000万円以上、従業員80人以上、売り上 げ伸長110以上の中小企業)を抽出した。
3.調査の内容
(1)ヒアリング調査
ヒアリング調査では、企業の概要、事業の特徴、直接投資(輸出開始)の動機、課題と解 決の経過、成功要因、留意点等の聞き取りを行った。課題については、できる限り投資(輸
出)の検討時と投資(輸出)実施後の両面から把握するよう務めた。
(2)アンケート調査
アンケート調査は、企業の概要、海外展開の動機、海外展開地域、海外展開における課 題等を内容とし、参考データとして集計した。
4.調査体制
本調査を行うため、専門家による「中小製造業の海外展開の課題と対応に関する調査委 員会」を設け、委員によるヒアリング調査を行うとともに、調査内容や報告書の取りまと めについてのアドバイスを受けた。調査委員会の構成は次の通り(順不同・敬称略)。
【調査委員会委員】
赤松健治 財団法人商工総合研究所調査研究室長
橋本大輔 中小企業診断士・合同会社マネジメントオフィス・ハシモト代表社員 長谷川清 松蔭大学経営文化学部准教授
望月和明 財団法人商工総合研究所組織調査部長 矢口義教 明治大学経営学部兼任講師
吉見隆一 財団法人商工総合研究所産業調査部長
【調査担当者】
三浦一洋 全国中小企業団体中央会調査部長
丸山博志 全国中小企業団体中央会調査部部長代理 栗原孝之 全国中小企業団体中央会調査部主事 渡辺隆一 全国中小企業団体中央会調査部主事 遠山佳世 全国中小企業団体中央会調査部書記
Ⅱ 事例調査結果
Ⅱ 事例調査結果
1.事例調査総括
海外展開を行っている企業は、取引先からの要請、現地市場の開拓、コスト低減などさ まざまな動機から直接投資や輸出を行っている。そして、海外展開に伴う課題を克服して 現地生産を成功に導いているが、課題やその解決方法は一様ではない。
今回の事例調査では、海外展開(直接投資など)の動機、直接投資等を行っている国・
地域、現地法人の内容、海外展開の課題とその解決の経過、成功要因と留意点などについ て、詳細な聞き取りを行った。聞き取りを行ったのは30社であるが、複数の国に現地法 人を設立して進出している企業もあり、直接投資等を行っている国ごとの企業数(延べ数)
は、中国が23社、タイが6社、フィリピンが4社、インドネシアが4社、マレーシアが 2社、ベトナムが2社であった。また、欧米や東アジアを含めて、これら以外の国に進出 している企業も14社あった。
詳細は個別企業の事例を参照していただくとして、ここでは、直接投資等を行っている 国別に、海外展開の動機、海外展開の課題、成功要因と留意点をまとめておこう。課題や 成功要因は一様ではないとはいえ、国によって特徴的なこと、また国を超えて共通してい ることがあるように思われる。
(1)中国への進出企業
海外展開の動機 海外展開の課題 成功要因と留意点
・取引先の海外展開
・取引先の生産移管
・現地調達の一環としての 取引先の進出要請
・顧客の海外工場建設
・先発企業からの誘い
・現地の地方政府からの勧 誘・要請
・現地企業の要請
・現地企業へのOEM供給
・現地市場の開拓
・優秀な人材の確保
・若年人材の確保
・コスト競争力の強化
・製品の品質安定・向上
・製品の納期の遵守
・原材料の調達
・委託加工先の信用調査
・信頼できる外注先の選定
・信頼できる人の確保
・法律・税制など制度と解釈 の頻繁な変更
・知的財産権の保護
・投下資本の回収
・販売代金の回収
・従業員の定着
・現地労働者の教育
・人件費の上昇
・先発企業への相談・紹介
・代表者自らの現地確認
・現地行政との円滑な関係
・合弁パートナーの協力
・親会社現地法人の支援
・信頼できる人の確保
・リスクマネジメント徹底
・契約内容の精査と変更
・過大な投資の回避
・単独出資であること
・現地への再投資
・加工技術の順次移転
・日本留学経験者の採用
・人材の教育と育成
・従業員の定着率の向上
・現地従業員との意思疎通
・進出国の国内販売ライセン ス取得
・取引先企業からの要望
・海外展開による国内企業 のバックアップ
・許認可の時間がかかる
・現地税務への対応
・管理者・技術者の不足
・現地スタッフの確保
・リスクの洗い出し
・現地日系企業からの受注
・優れた人材の確保
・合弁から独資への転換
(3)インドネシアへの進出企業
海外展開の動機 海外展開の課題 成功要因と留意点
・取引先の海外生産強化 ・受注・販売先の確保と開拓
・就労ビザの取得
・現地での受注の確保
・最小限の借入
(4)タイへの進出企業
海外展開の動機 海外展開の課題 成功要因と留意点
・取引先の合弁提案
・顧客企業の現地進出
・コスト対応力の強化
・候補地の情報収集
・新しい現地顧客の開拓
・「技術」の教育
・恵まれた合弁パートナー
・本社との情報共有
・販売先の確保
・日本人スタッフ言語習得
・現地従業員の定着率向上
・従業員教育の強化
(5)マレーシアへの進出企業
海外展開の動機 海外展開の課題 成功要因と留意点
・現地日系企業からの打診
・顧客の海外進出
・人件費の抑制
・現地の取引先の確保
・品質の不安定
・現地企業との取引での代金 回収の遅れ
・優秀な人材の確保
・直接投資のタイミング
・日本国内の業績安定
・日本留学経験者の採用
・現地の制度・文化の理解
(6)ベトナムへの進出企業
海外展開の動機 海外展開の課題 成功要因と留意点
・取引先の海外進出
・現地の知人の誘い
・コストの低減
・ものづくりの基盤の不足
・煩瑣な輸出入手続き
・現地の文化の理解
・過大な投資の回避
・現地の知人の助力
・現地従業員の研修
・現地文化への配慮
2.個別企業事例
事例調査にあたっては、都道府県中小企業団体中央会及び全国工場団地協同組合連合会 の多大なご協力により、調査先企業をご紹介頂いた。また調査先企業には、多忙な中で時 間を割いて頂き、代表者や海外事業担当者から詳細なお話をうかがうことができた。以下 では、お話をうかがった30社の事例を紹介することにしよう。
(1)谷村電気精器株式会社 ……… 6
(2)株式会社ニュートン ……… 8
(3)株式会社ケディカ ……… 10
(4)山崎ダイカスト株式会社 ……… 12
(5)日本SMT株式会社 ……… 14
(6)岡部工業株式会社 ……… 16
(7)株式会社岩崎 ……… 18
(8)株式会社松下製作所 ……… 20
(9)株式会社電溶工業 ……… 22
(10)永田部品製造株式会社 ……… 24
(11)トシダ゙工業株式会社 ………・ 26
(12)株式会社 A工業 ……… 28
(13)富士ファイン株式会社 ……… 30
(14)株式会社 B工業 ……… 32
(15)株式会社加藤製作所 ………・……・ 34
(16)株式会社伊藤製作所 ………・……・ 36
(17)株式会社白山機工 ……… 38
(18)サン・プラント工業株式会社 ……… 40
(19)トキワ精機株式会社 ………・……・ 42
(20)株式会社 C工業 ……… 44
(21)株式会社英田エンジニアリング゙ ・……… 46
(22)株式会社石﨑本店 ……… 48
(23)株式会社ヒロテック ………・……・ 50
(24)株式会社大和製作所 ………・……・ 52
(25)株式会社岡本鉄工 ……… 54
(26)株式会社アテックス ………・……・ 56
(27)株式会社 D工業 ………・……・ 58
(28)株式会社土佐電子 ………・……・ 60
(29)穂岐山刃物株式会社 ………・……・ 62
(30)株式会社オーランド(協同組合日新工業会)………・……・ 64
企 業 名 谷村電気精機株式会社
所 在 地 岩手県北上市 業 種 電子機器の製造受託 資 本 金 9,887万5,000円 従 業 員 数 203人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 中国(輸出)、ヨーロッパ(輸出) U R L http://www.yamura.co.jp
2.事業内容とその特徴
DNA核酸抽出機などの医療分析機器、ガソリンスタンドなどで使用される情報端末機、
ワイヤードットプリンターなどコピー・プリント機器をOEM供給する受託製造型の電子 機器メーカーである。
当社は、テレプリンターを主力製品とする谷村新興製作所の製造部門的な役割として 1967 年に設立された。それゆえ、当社は当初製造機能に特化していたが、1975 年に谷村新 興から独立したことを契機に、独自営業を展開することになった。プリンター製造では、
アルプス電気のプリンターの製品設計・製造において優位性を築いている。
Ⅱ 海外展開の概要
海外展開は、1978 年にアルプス電気と協力関係を築いたことを契機に始まった。同社は プリンター事業を展開していたが、当社はそのプリンターの生産拠点となったのである。
後にアルプス電気の開発・設計部門が設計者不足になり、谷村から設計者を派遣すること になった。当時、アルプス電気のプリンターの約半数が当社の技術者によって設計されて いたほどであり、この経験によりプリンターに関するノウハウを取得することになった。
アルプス電気ブランドで販売されるワイヤードットプリンターは、海外へ輸出されてお り、当社は間接的に海外展開を始めることになった。また、アルプス電気は 1990 年に中国 へも輸出するようになったが、翌 91 年に中国市場から撤退することになった。当社として は、製造ノウハウが残ったことから、92 年にアルプス電気から中国での販権を獲得し営業 活動を開始し、中国市場に進出することになった。最終的な顧客は、銀行や公安機関など である。中国向けには PY-6800、6900 という中国仕様の製品を開発し提供している。
このように中国市場でのワイヤードットプリンター販売が当社の主要な海外展開となっ ているが、近年ではDNA拡散抽出機をスイスのロシュ製薬に納入するなど若干ながらヨ ーロッパへの輸出も展開している。
Ⅲ 海外展開の課題
中国への輸出を開始した時点では完成品を輸出していたが、次第に高率の関税が課され るようになった。また、中国系商社を通じて輸出していたが、製品価格の8%の手数料が 取られてもいた。これらの要因によりコストが増加し、結果的に製品価格の上昇につなが っていった。中国では、富士通や沖電気などの日本企業がワイヤードットプリンターで熾
烈な競争を展開しており、製品価格は低下の一途であった。それゆえ、厳しい価格競争に 勝ち抜くために当社としてもコストを削減し、製品価格を下げることが課題となった。
また、現地工場の設立も検討したが、結果的に輸出で展開することを決定した。中国で の販売台数は月 500 台程度であるため、量産効果が発揮できないだけでなく、事務所を設 置する費用やリスクがあるため割に合わないと判断し、中国企業に生産を委託することが 望ましいと判断した。しかし、パートナーを組んだ現地企業は、元来販売専門の企業とい うこともあり、品質管理の問題が重要な課題であった。さらに中国では、法制が前触れも なく突然変更されることがしばしばあるため、この問題への対応でも苦心している。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過と成功要因
中国市場でのコスト削減という点では、商社を経由するのではなく直接輸出することに よって、手数料をカットすることができた。関税対策としては、SKDに切り替えユニッ ト供給して、最終的に北京の中国企業で組み立てることで対応した。また、製品のカバー など非中核部品のデータを中国に送り現地で製造するようにした。この結果、関税が安く なっただけではなく、現地の低廉な労働力を使用できることにもつながった。現在では、
深圳の日系企業に部品製造を委託するようになり、当社から直接輸出される部品は基盤な どの高度な設計技術を要求されるごく一部のものに限られている。深圳は経済特区である ため、一度部品を香港へ輸出しその後再度北京へ輸出して組立を行っている。
中国で製造される製品の品質管理の面では、研修生を受け入れてライン作業を学習させ たり、日本人技術者が現地で指導を行うなどして対応した。しかし、指導している時は上 手くできても、指導員が日本に帰国してしまうとすぐに問題が発生してしまう。それゆえ、
現在でも社長自ら月に1度の割合で企業の指導に行かなければならない。また、法制の変 更への対応では、JETROなどを通じて情報収集するなど、対応を図っている。
2.留意点
中国進出に際しては代金回収が大きな問題である。中国では契約が無視されることがし ばしばあるため、時間をかけて信用できる人物を探し取引するよう心がける必要がある。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
輸出入などに関する手続きを簡素化してほしい。大企業では、専門のスタッフで対応す ることができるが、中小企業では煩雑な手続きに割くことができる人員に制限がある。手 続きを簡素化するか、中小企業に対する支援をお願いしたい。
企 業 名 株式会社ニュートン
所 在 地 岩手県八幡平市 業 種 精密プラスチック射出成形加工 資 本 金 6,787万円 従 業 員 数 130人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 中国(香港、深圳、昆山)、フィリピン U R L http://www.newton-ltd.co.jp/
2.事業内容とその特徴
工業用精密プラスチックの射出成形加工を行っている。製品分野は、HDD用部品から OA機器用部品、車載用各種センサー部品、プラスチック偏光レンズ、各種歯車など多岐 にわたっている。原材料の開発・選定から製品の設計・加工に至るまでの研究開発、3D -CAD/CAM を駆使した高精度・高品質な金型製作のほか、製品に合わせた独自の生産設備を 開発して生産を行うなど、高い技術力を持っている。
Ⅱ 海外展開の概要
1.直接投資の動機と投資国・地域
製品の納入先からの要請によって海外での生産を開始した。その際、必ずしも仕事の保 証をされることはなかった。1994年、中国の香港に受発注の拠点として事務所を開設 するとともに、広東省深圳市に現地法人を設立して海外生産を開始した。1996年には フィリピンのカヴィテ州に生産拠点として現地法人を設立した。さらに、2004年には 中国江蘇省昆山市に現地法人を設立し、中国国内の生産拠点を拡充した。
2.現地法人の内容
受発注拠点である香港事務所(SAN-TOHNO LIMITED(Hong Kong))は大手機械メーカーと 共同(当社出資比率90%)で設立した。深圳の生産拠点(三多楽精密注塑(深圳)有限 公司)は、SAN-TOHNO LIMITED(Hong Kong)の100%出資で設立した。資本金は500万 米ドル、従業員490人で、主に高精度歯車を中心とした各種のOA部品・車載部品を生 産している。
フィリピンの生産拠点(PTON Corporation (ピートン コーポレーション))は、単独出 資で設立した。資本金5600万円、従業員200人で、主にハードディスク内蔵部品を 中心とした精密小物部品を生産している。昆山の生産拠点(昆山三多楽電子有限公司)も 単独出資で設立した。資本金310万米ドル、従業員200人で、主に車載部品を中心と したユニット製品を生産している。
取引先は、いずれも日系企業が中心である。現地で生き残るためには新規開拓は不可欠 であり、生産開始から1~2年で、従来からの取引企業に加えて新規企業を開拓した。原 材料は、当初は日本から直接輸出していたが、現在は日系の商社から調達している。
Ⅲ 海外展開(直接投資)の課題
現地生産(海外投資)にあたっては、まず現地の様子をよく把握するとともに、信頼の おける人を確保する必要がある。また、日本人が現地法人をコントロールする仕組みを作 ることが必要であるが、日本から適任者を派遣するのが一番難しい。現在、フィリピンに 3人、深圳に1人、昆山に3人を派遣しているが、行きたい人に行かせるようにするのが 一番良いようである。資本金については、配当を日本に送金しても法人税を課税されるの で、1000万円以下にしたほうが良かったと考えている。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
進出にあたっては、複数の先発日系企業に話を聞いて現地の様子を確かめた。現地の弁 護士や会計士など、信用のできる人と結びつくことも大切であるが、その際も比較的長い 期間(5年から10年程度)にわたって現地にいる複数の日系企業から紹介を受けた。複 数企業に聞くことによって共通項が出てくるからである。
キイマンとして信頼のおける人材を採用するにあたっては、日本に住んでいる中国人の 母校の大学から先生を通じて紹介してもらうなどの工夫をしている。また、転職が多いこ とはやむを得ないと考えているが、従業員の定着を図るために周りの会社より少し待遇を 良くし、利益が出たら報奨金を出すようにしている。従業員の育成は、年に1~2回日本 に呼ぶほかはOJTで行っているが、昆山では中国人スタッフの部長も出ている。
年に3回~4回社長が現地を回っている(以前は毎月回っていた)。また部長クラスの人 は、2~3か月に1回現地を回っている。現地に派遣する日本人スタッフは、4~5年で 世代交替していく。現地で4~5年は暮らしてみないと、現地事情を十分理解することは できないからである。
2.成功要因
現地では事件や事故が起こることは当然という前提でいたほうが良い。そのために、弁 護士や会計士など専門家を用意しておき、その都度解決していくことが大切である。事件 や事故が起こった時、どう対処したらいいかを幹部に理解させてから派遣することも必要 である。
3.留意点
分からないことや困ったことがある時には、他の日系企業や現地に詳しい人に聞くこと が大切である。特に、労働問題や税務、法律の問題は現地に行っている日系企業に共通し ているので、日本人会や日系企業がつくっている商工会に相談すると役に立つ。その意味 では、現地に派遣する人は社交的な人のほうが良い。
また、現地の人に気持ちよく働いてもらうために、最低限その国の歴史を知ってから行 くことも大切である。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
海外展開での困りごとを聞いて、こうすべきだという人、調整役をしてくれる人がいる
企 業 名 株式会社ケディカ
所 在 地 宮城県仙台市 業 種 めっき等表面処理、精密加工 資 本 金 4,800万円 従 業 員 数 160人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 フィリピン(バタンガス州ファーストフィリピン工業団地)
U R L http://www.kedc.co.jp/
2.事業内容とその特徴
当社は、めっきをはじめとする表面処理や超精密加工等を手がける「総合表面処理メー カー」。自動車半導体デバイス、電子通信部品への処理、特にアルミニウム材へのニッケル・
錫・銀めっきの技術は国内トップクラスで、独自に二次電解によるアルミ材への直接めっ き法を開発するなど、高度なめっき加工技術を誇る研究開発型企業である。
Ⅱ 海外展開の概要
1.直接投資の動機と投資国・地域
進出先はフィリピンのバタンガス州にあるファーストフィリピン工業団地(FPIP)。
きっかけは既に中国・東南アジアに進出していた取引先企業からの要望である。中国と 比較してフィリピンでは、現地ローカルめっき工場が皆無に等しく、高度なめっき処理が 可能な日系同業者がないため、当社に対して現地でのめっき処理を担ってほしいとの話が 持ち込まれたものである。
また、日本国内で製造業離れ、少子高齢化などといった人材不足が懸念される状況下に あって、フィリピンに進出することにより現地の優秀な人材確保やワーカーとしての労働 力確保も可能となる。当社の人材育成の観点からは、管理者、技術者のグローバルな意識 改革につながる。さらに、フィリピン等、東南アジアに進出した日系企業との新たな取引 関係ができれば、そこから日本国内の親企業との取引の開拓にもつながる。
2.現地法人の内容
2003年5月、現地法人「ケディカ・フィリピン・コーポレーション」を設立し、同 年9月、マニラに近いマカティに準備事務所を開設した。同年12月、FPIPに工場が 完成し、翌2004年4月から操業を開始している。資本金1,700万ペソ、従業員は 約130人。当初は1工場で立ち上げたが、2006年に第2工場が完成。また、200 7年にはISO-9001を取得している。なお、工場はリース契約である。
営業内容は、当初はフープめっき(銀めっき)、現在はICリードフレーム鉛フリー外装 めっき、鉛フリーバレルめっきなどで、主に現地に進出している日系の製造業から半導体 やHD部品のめっきを受注している。
Ⅲ 海外展開の課題
まず、海外進出することで当社の人的資源が分散してしまうリスクがあった。また、現 地における許認可や、労働者の採用、労務管理・財務管理など、はじめてのことで不明な 点が多かった。特に、許認可については揃うまでに時間がかかった。キャッシュフローの 減少などへの対処も必要となってくる。
また、言葉の問題や文化の違い、創業間もないため工場の管理者・技術者が育っていな いこと、環境対策(排水・排気)、通関業務など、組織を円滑に運営するため進出時に解決 しなければならない課題が多かった。
進出後は、源泉徴収関係など現地の税務への対応で苦労している。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
FPIPは日系企業が多く、進出時には現地のコンサルタントを紹介してもらい、許認 可事務から労働者の採用、住宅の用意まで、様々な支援を受けた。海外進出時には、現地 の事情に通じたコンサルタントなどの存在が大きいと考える。
2.成功要因
まずしっかりした事業計画書の作成。綿密に事前調査し、何回も現地に足を運び、きち んと文書化し、リスクを洗い出した。めっきは装置産業であり現地需要が鍵となるが、当 社はフィリピンに進出した日系企業の受注を獲得できたことが成功につながった。
人材面では、自社のナンバー3以上を派遣したこと。一方、現地採用者については、教 育のために日本に呼び、工場で研修した効果が大きかった。
進出後も、現地まかせでなく日本との連携で課題を克服していくべきである。当社では IP電話やテレビ会議のシステムを日本・フィリピンの両工場で整備し、現地で起きた問 題については、リアルタイムで本社と一体となって解決している。
3.留意点
まず、現地の人材不足から、当面は日本から継続的に技術者を派遣する必要があると考 えたほうがいい。また、政治の不安定な国では、法律・税制・環境対策など制度が未整備 であることに留意する必要もある。現地の労働者については、労働組合の設立の動きに注 意する必要がある。さらに、治安情勢は各国さまざまであり、日本から派遣する人の安全 対策も避けて通れない。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
現在、海外への技術者派遣制度を利用しているが、これを含め海外展開支援の諸制度は 是非、今後も継続してほしい。また、地方の中小企業にとって、海外へ進出する場合、国 内窓口が一本化されてないので、情報が入手しにくい。各国の制度の情報も含め、情報提 供を活発にしてほしい。
その他、日本での研修のためのビザ取得を円滑かつスピーディにしてほしい。また、現 地の工場立ち上げ時期にかかる諸費用(交通費、営業経費等)は国内本社の費用に計上で
企 業 名 山﨑ダイカスト株式会社
所 在 地 秋田県仙北郡美郷町 業 種 各種ダイカスト製品製造 資 本 金 8,000万円 従 業 員 数 約440人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 中国(香港・恵州)
U R L http://www.yamazaki-dc.co.jp/
2.事業内容とその特徴
金型設計から試作加工、鋳造、加工、組立まで、各種ダイカスト製品の一貫生産を行っ ている。DVDのピックアップ部品、自動車部品などを製造しているが、ミクロン単位の 精度をもつ精密なダイカスト製品である。アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合 金の3種類の材質に対応できることが強みである。
Ⅱ 海外展開の概要 1.直接投資の動機
得意先の工場が中国に移転し、現地調達の一環として進出を要請されたため、委託加工 契約であればということで現地生産を始めた。国内生産は、量産ではコストがついて行か ないという事情もあった。取引先からの現地進出要請は、仕事を保証するものではなく、
自社以外の顧客にも納入して欲しいといわれ、日系企業数社と取引を行っている。
2.直接投資を行っている国・地域
2001年に単独出資で香港に取引拠点となる事務所を設立した。ここでは、税制優遇 との関係もあり、受注と商流を行っている。2002年には、設備と技術を供給して青島 工場で生産を始めた。しかし、青島工場は空港に近かったため、北京オリンピック開催に 伴う規制にかかり、現在は休止状態である。2003年には、新たに恵州で華陽多媒体有 限公司と契約し、委託加工契約による生産を始めた。
3.現地法人の内容
華陽多媒体有限公司は、資本金1800万香港ドル、従業員2500人を超える企業で ある。以前は中国政府が50%以上を出資する国営企業であったが、現在は完全な民間企 業である。その後、委託加工の契約先は同社の子会社に変わっている。技術指導や品質管 理の指導を行い、亜鉛合金ダイカスト(光学ピックアップ部品)を生産している。原材料 については、品質の問題があり、指定材料として日本から有償で支給している。
Ⅲ 海外展開の課題
1.直接投資検討時の課題
海外での生産拠点設置に当たって、単独出資あるいは合弁で現地法人を設立することも 検討した。単独出資の場合には法制がしばしば変わることに不安があり、合弁の場合には 現地企業に吸収されてしまうことに不安があった。検討の結果、委託加工という形をとる
ことにしたが、委託加工先の信用をどう調べるかが課題であった。
2.直接投資(輸出)実施後の課題
契約内容も課題であった。当初は、他の企業の契約を参考に、アレンジして契約書を作 成したが、業種に合わない内容があったり、文面にない解釈が相手の都合の良いようにな されてしまうこともあった。そのため赤字が続くことにもなった。通訳の問題もあり、先 方の通訳では、契約や交渉の解釈が先方寄りになってしまうこともあった。
委託加工に伴う課題には、日本と違って、管理者とワーカーの間に壁があり仕事の解釈 の違いが生まれること、管理者は優遇するが専門職(スタッフ)はワーカーと同じに見な してしまうことなどもある。技術のために人材を確保するという考え方も薄い。このため、
従業員を日本に呼んで研修を行っても、帰国した後にやめてしまうケースが多く、これま で7人の研修を行ったが、残っているのは4人である。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
委託加工先の信用の問題は、先発企業や取引先に聞くことで解決をした。青島の場合は、
現地で20年来活動している企業からの紹介を受け、恵州の場合は進出要請を受けた取引 先からの紹介を受けた。
契約内容の課題は、契約の全面変更により解決した。契約の変更にあたっては、モデル 契約の本の紹介を受けるとともに、銀行関係の相談所に文面上のアドバイスや日本で中国 関係を中心に活動している弁護士のチェックを受け、これまでの苦労を元に社内での見直 しも行った。通訳は香港事務所の日本人社員と「香港人社員」が同席し、確認するように した。
2.成功要因
日本の工場を残すための中国での委託加工であり、製品が安くコスト競争になりやすい 亜鉛合金ダイカスト以外は海外へは出さない、技術流出を防ぐため、鋳造から仕上までの 工程以外は海外へは出さないことを基本的な考え方とした。大きな投資をせず、何かあっ た時にはすぐに引き上げられるようにしたことが、今となっては良かったと考えている。
契約内容の全面変更ができたことも大きな成功要因である。材料の無償支給を有償支給 にしたこと、生産数保証をなくしたこと、追加工程の費用を標準工数プラス追加工数の計 算から1個当たりの計算に変えたこと等によって、収支の安定が得られた。
3.留意点
委託生産の場合、自社のノウハウを守るためにどうしたら良いかを考えて適切な契約と 日常の管理を行うこと、現地で先行している会社から評判を聞くなど提携する現地企業の 信用調査をしっかりと行うこと、何かあったら全部捨ててもいいと腹をくくることなどが 留意点としてあげられる。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
契約違反など、海外で起こることについては支援を期待することはない。ただ、現地企
企 業 名 日本SMT株式会社
所 在 地 秋田県秋田市 業 種 電子機器・電子部品製造 資 本 金 10,000万円 従 業 員 数 184人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 インドネシア(ブカシ)
U R L http://www.smt.co.jp/SMT/index_SMT_jp.php 2.事業内容とその特徴
電子機器製造サービス事業として、基板実装を中心に電子機器、電子部品の組み立てを 行っている。特殊材料であるセラミックやフレキなど基板の種類に応じた実装技術をはじ め、他社にないノウハウを持っている。また、部品生産からトータルでのものづくりを目 指して、製品の開発にも取り組んでいる。
Ⅱ 海外展開の概要 1.直接投資の動機
取引先の電子機器メーカーが海外生産を強化することになったのに伴い、契約上の要請 はなかったが、当社も海外で事業を行うことを決めた。仕事はいずれ日本から現地に出て 行くことになること、現地に行けば仕事を受注することができること、現在は取引を行っ ていない企業からも受注が見込めることなどから、海外に生産拠点を持つことは当社にと ってもチャンスだと考えた。
2.直接投資を行っている国・地域
取引先の工場がシンガポールにあったこともあり、取引先からアドバイスを受けながら、
1996年に単独出資でインドネシアのバタム島に工場を建設した。その後、取引先の事 業展開の変化に伴い、1999年にインドネシア西ジャワ州のブカシに移転した。ブカシ の工業団地は住友商事が開発したものであるが、取引先のほか多くの日系企業が入居して おり、需要が見込めるところでもあった。
3.現地法人の内容
ブカシへの移転に際して単独出資から合弁にした。合弁の相手は、日系現地企業1社の ほか日本国内企業3社(うち銀行1社)である。当社が51%の出資を保有しており、資 本金375万ドル、従業員1400人である。日本から8人が赴任している。事業内容は プリント基板と各種電子機器の組み立てである。当初からの受注先である電子機器メーカ ーのほか、工業団地に進出している日系企業などを新たな取引先として開拓した。
Ⅲ 海外展開の課題
最初にバタム島に進出した時は、仕事を確約されて進出したわけではないので、予定通 りの仕事をとることは難しかった。バタム島は狭く、企業も少ないので新規の顧客を開拓 することは困難であり、情報収集が足りなかったことを実感することとなった。
取引先の事業展開の変化に伴うブカシへの移転は、1998年から始まったアジア通貨 危機の最中であり、インドネシアの政権転覆も加わって大変な思いをした。最終的には充 分なリスクマネージメントを行い、株主の了解を得て実行した。
現地には8人の日本人を派遣しているが、経営層は平均して7~8年の滞在期間となり、
派遣する人材を確保するのが大変である。インドネシアではビザの関係がややこしい。現 地で働くには就労ビザが必要だが、取得には1か月かかる。就労ビザをとらず従業員を派 遣する場合、会議は問題ないが現場に入っただけで働いたことになってしまう場合がある。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
教育訓練はOJTが基本であるが、現地法人の幹部候補生に日本人と同じような考え方 を持ってもらうのは難しい。進出当初は、IMM Japan の研修を終えて帰国する人を面接し、
日本語のできるローカルメンバーとして採用した。インドネシアでは他の国に比べて転職 は少なく、ある程度は現在も幹部として残っている。
法人税は、前年度実績に基づく予納制度となっている。前年度より実績が下回った時に は過納付分を還付請求することができるが、現実に還付請求をするのは大変である。公認 会計士と契約して、監査や税務申告を行っている。公認会計士の選定は現地に任せている が、必要であれば住友商事に相談すれば情報を得ることができる。
海外進出で当然起こることについては、課題や苦労とは感じなかった。
2.成功要因
インドネシア暴動の中でのブカシへの移転であったが、取引先の動向を見ると撤退の話 はなく、当社としても撤退は考えなかった。暴動の発生は参入障壁になり、当社のような 先発企業を除いて、競争相手の進出を防ぐことができた面もある。
アジア通貨危機や暴動も、必ずしもマイナス要因ばかりではなかった。外貨建てで借入 をしていたのでルピアの大暴落によって損益的には膨大な為替損失を計上し、損益を悪化 させることになったが、節税効果もあり、キャッシュフローを悪化させるものではなかっ た。売り上げはドル建てである一方給与はルピア払いであったので人件費が数分の1にな った、スーパーインフレにより預金金利で給与を支払うことができたなど思わぬプラスも あった(但しこの様な環境は望んで実現できる事では無い)。
3.留意点
現地での受注(仕事)を確保できることが何よりも重要である。二の手三の手を打って 受注を確保できるスキームになっているなど、受注の根拠を十分に調査しておく必要があ る。また、最小限の借入で行うこと、現地のローカルになじめる日本人の責任者・幹部を 確保すること、現地幹部を育て信頼関係を築くことなどにも留意が必要である。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
困りごとはケースバイケースで発生するので、人頼みをする前提では直接投資はうまく いかない。ただし日本貿易振興機構での情報収集や海外貿易開発協会の補助による現地調
企 業 名 岡部工業株式会社
所 在 地 群馬県伊勢崎市 業 種 精密板金加工 資 本 金 3,500万円 従 業 員 数 約110人 海 外 展 開 国 ・ 地 域 中国(深圳)
U R L http://www.okbmfg.com/
2.事業内容とその特徴
精密板金加工、板金部品を中心にした製品の設計、組立を行っている。主な生産品目 はATM筐体であるが、光ファイバー中継ボックス、携帯電話基地局関連の筐体及び精 密部品等、受注先、生産品目の多角化を進めている。
Ⅱ 海外展開の概要 1.直接投資の動機
ATMの国内需要成熟化、競争激化により主力受注先である大手電気機器メーカーが ATMの紙幣識別ユニット生産を中国に移管。さらに原価を低減するため、筐体の主力 供給業者である当社に対しての中国現地生産要請により意志を固めた。
2.直接投資を行っている国・地域
中国に、2002 年、岡部工業(香港)有限公司、2003 年、岡部工業(深圳)有限公司を 設立し、現地生産を行っている。
3.現地法人の内容
香港、深圳とも単独出資で設立。従業員数は約 500 名。合弁では、利益処分、投資を はじめ、企業運営の多くの面で独自の意思決定ができず、経営に支障をきたすと考え、
独資の形態をとった。
生産拠点は深圳だが、中国での国内企業間の取引には増値税が課される為、香港の現 地法人が深圳の現地法人に発注する形態をとり、これを回避している。華南地区で生産 を行う日系企業一般がこのような形態をとっている。
主な販売先は大手電機機器メーカーでありATMの筐体を供給している。当初は日本 国内向けの生産だったが、4年ほど前から中国国内の需要が急拡大しており現在は中国 市場向けがほぼ 100%となっている。
Ⅲ 海外展開の課題
1.直接投資検討時の課題
取引先の要請はあったが時間をかけ慎重に検討した。信頼できる外注先の有無、イン フラを備えた進出地の選定が課題となった。生産に関しては、板金等機械加工は国内で 使用した機械を持ち込み、プログラムを使用するので人の問題はなかったが、溶接工の 確保が問題であった。
2.直接投資実施後の課題
法律、税制が日本と異なる部分が多く、よく変わるため対応が難しい。このため、国 内で採用した中国人の中から信頼できる人物を現地へ派遣し、法律・税務、対外交渉を 任せたが、不明朗な行為があって、なかなかうまくいかなった。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
中国を度々訪れ、同業者が当社レベルのものを作れるようになったことを確認したう えで、進出を決断した。進出場所についてはインフラ等の情報を持たないため、地元銀 行(日本)に紹介された都市銀行から物件紹介を受けた。進出以前から雇用していた数 名の中国人の中から信頼できる人物を香港に派遣し物件を確認させ、社長が何度も現地 を訪れ確認した。重い機械を使用するため工場の耐荷重性が重要だった。図面があって も信頼せず、同業者が既に進出している工場団地を探し、最終的には穴を掘り基礎を確 認した。決定に至るまで10数箇所紹介してもらい、4、5ヵ月かけた。
溶接工については、溶接機を購入した現地企業から広州の国有造船会社が保有する訓 練学校の紹介を受け、卒業生を雇用することができた。また、工場長、経理、生産管理、
品質管理の責任者については、日本から派遣、常駐させている。
2.成功要因
銀行から候補地の情報を提供してもらったこと、国内から派遣した中国人が一次情報 を確認したうえで、社長自身が充分時間をかけて確認し決定するという慎重な対応を行 った。また、国内で既に雇用していた中国人が、現地の中核としてワーカーの指導に当 たっており、労務管理、意思疎通が上手く行っている。
3.留意点
①独資であること、②要請を満たす最小必要限度の投資でスタートし、最悪撤退も視 野に入れて経営すること、③品質管理への充分な配慮(同社は工程ごとに検査する体制 をとり、従業員の1割を検査要員に充てている)、④中国社会には依然として不明朗な取 引があるので、現地人の責任ある地位への登用にはよく人物を判断する必要がある。幅 広い分野に亘り経営トップが積極的に関与する必要があるが、中国市場にはそれだけの 魅力がある。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
①中国での取引は前金が原則。一方受注先が日系企業である場合、材料手配から検収、
受取までの回収期間が長く、資金負担が大きい。中国は中小企業の重要な存立の基盤であ り、特別な融資制度を設けて欲しい。②税制・法律面でのきめ細かな支援を受けたい。特 に今後は、日本と中国の双方で受発注価格を巡る移転価格税制が問題になると思われる。
双方の事情に通じた専門家からのアドバイスが必要であろう。
企 業 名 株式会社岩崎
所 在 地 群馬県みどり市 業 種 金属プレス加工・組立て 資 本 金 1,000万円 従 業 員 数 15人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 中国(広東省肇慶市)
U R L http://www.iwazaki.co.jp/
2.事業内容とその特徴
当社は、自動車部品やパチンコ器械などの加工を手がける金属プレス加工メーカー。そ の製造技術は薄板(0.1mm)から厚板(10mm)まで順送加工を得意とする。2002 年1月、ISO9001:2000を取得。
Ⅱ 海外展開の概要
1.直接投資の動機と投資国・地域
7年ほど前に中国の工場を見学した際に、中国の若者が厳しい工場現場で生き生きと働 く姿を見てカルチャーショックを受け、これからは中国に生産を移さないと生き残れない と確信した。そこで、香港の商社を紹介してもらい、商社と連携して中国進出を本格的に 進めることとしたものである。なお最終的には日本企業のみでの進出となった。進出した のは広東省肇慶市の大旺高新技術産業開発区である。
3.現地法人の内容
名称は肇慶弥生金属工業有限公司。2002年7月設立。資本金は200万USドルで
㈱岩崎および㈱山根製作所の2社の合弁企業。従業員50人。事業内容は、金属プレス加 工、溶接、組立等。現在は全て中国国内向けに販売している。当初は工場を賃借し操業開 始、2007年6月に自社工場が完成。
Ⅲ 海外展開の課題
1.直接投資検討時の課題
当初は香港側が現地開発区に工場を建設し、日本側は技術やノウハウを提供することで 話を進め、作業手順書やマニュアルなどのやりとりをしていた。しかし、実際に進出する ための交渉が遅々として進まず、最終的に工場の賃借料について先方との間で行き違いが 生じ計画が頓挫してしまった。このため、それまでの経緯を開発区の行政当局に説明し相 談したところ、別の工場を賃借できることとなり、当該工場で事業を立ち上げた。その後、
開発区から現在の区画を紹介され、購入し自社工場を建設。
2.直接投資実施後の課題
工場建設に当たりコストが日系企業の1/3程度ということで現地の建設業者を選定し たが、途中でコストが増加したとして最終的には当初見積もりの3倍近くを請求された。
また、当初の業者が工場を完成させなかったため、行政当局と相談の上、別の業者に依頼
して完成させた。建設費については、当局に建物を査定してもらったところ当初見積もり に近い金額が示されたこともあり、支払い額について当初の業者と話し合いを継続してい る。
その他では、現地労働者の教育、材料の調達などが課題。税関手続や進料加工の許認可 手続も結構手間がかかった。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
香港の業者との提携話が頓挫したときに、開発区の役所に相談したが、役所は非常に親 切で即座に別の工場を探してくれた。結果的にわずか3ヵ月で別の工場を借りることがで きた。また、自社工場建設時の業者との揉め事についても役所にいろいろと相談に乗って もらった。現地の日系企業が当社1社のみということもあったと思うが、通関やその他諸 手続きを円滑に行うためにも、日頃の役所とのコミュニケーションが非常に大事である。
材料については、現地企業の製品は品質にばらつきがあり、価格変動も大きいことから、
現地の日系企業からの調達と、一部日本から輸入しているが、これにより安定した品質の 材料が調達可能である。
2.成功要因
上記、役所との円滑な関係維持が海外展開にとり大きな成功要因であった。
また、労働者の教育については、現地労働者は言われたことだけしかせず、日本のよう なあいまいな指示は通用しない。しかし、基本的に労働意欲は非常に高いことから、仕事 の内容を納得させることができれば一生懸命働くので、時間をかけて教えることが必要で ある。
3.留意点
最も重要なポイントは、自ら現地に赴くこと。それもできれば複数回。他人から得た情 報はあまり役に立たないと考えたほうが良い。
また、工場の立ち上げ・操業については、日本から誰を送るか、責任者の選定が大切。
当初の立ち上げ時には、香港の業者とは口約束で話を進めてしまったのが失敗の一因で、
一つ一つ文書で確認すべきであった。また、工場建設費など先方の当初見積もりを鵜呑み にするのでなく、余裕を持った予算を考えておくべきだと思う。こういった点、常にリス クを認識しておくべきであり、上記労働者の教育もそうだが、日本的な考え方で物事を進 めようとするとトラブルのもととなる。
なお、開発区の行政当局とは密接にコンタクトをとってきたが、香港とのトラブル時や 開発区の用地購入時など、非常にスピーディにまた親切に対応してくれた。中国では行政 との関係構築が重要である。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
海外展開に当たり、現地で、いろいろな側面から支援してくれる出先機関のような仕組 みがあるとよいと思う。また、中小企業にとっては資金面の支援も重要である。
企 業 名 株式会社 松下製作所
所 在 地 山梨県笛吹市 業 種 精密プレス部品加工 資 本 金 2,000万円 従 業 員 数 約70人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 タイ(ナコーンラチャシーマ(略称コラート)) U R L http://www.matsushitass.com
2.事業内容とその特徴
絞り加工、曲げ加工、箔板加工など精密プレス部品加工を行う。ハイブリッド車電池 部品加工などの自動車向け、プリンター、携帯電話、コネクター部品加工など家電向け がそれぞれ5割程度の構成であり、曲げ加工、箔板加工は主としているが、近年では、
金型の製造や、絞り品もタイの現法で行っている。
金型制作からプレス加工まで一貫加工体制をとっており、“難しい仕事はまず松下に頼 む”という程、精度、品質、納期で顧客の信頼を得ている。タイに生産拠点を有してお り、コスト対応力の高さも強みとなっている。
Ⅱ 海外展開の概要 1.直接投資の動機
精密プレス部品加工には自信があったが、メインであった時計部品の量産加工が海外 に生産移転されていったのを目の当たりにし、海外生産でコスト対応力強化を図る必要 があると考えた。現会長が中国、インドネシア、フィリピンなどを視察した結果、仏教 徒が多く親日的なタイに生産拠点を設けることとし、95 年、バンコクから北東 300Km の 距離にあるコラートに現地法人コラート松下を設立した。
2.現地法人の内容
当社 65%、兼松 KGK5%、現地企業 30%の合弁形態で設立。日本本社で製作した金型 を使い、プレス加工を行っている。自動車・バイク関係、レーザープリンターのトナー、
デジカメ・時計・機構部品などの部品加工を行っている。従業員は約 380 名、社長、工 場長以下、製造、品質管理などの責任者として日本人 6 名が常駐している。
Ⅲ 海外展開の課題
1.直接投資検討時の課題
現地では候補地の選定のための情報収集、取得手続き等で苦労した。最も重要な課題 は、取引先の要望に基づく進出ではないため、現地で新たに顧客を開拓しなければなら ないことであり、実際、操業開始後は受注が少ない状態が続いた。言葉の問題などによ る意思疎通、労務管理面での不安があった。
2.直接投資実施後の課題
外国での初めての起業の為、その国の風習、考え方等、全く違う環境の中でどのよう
にして『技術』を教育していくかが大きな課題であった、当初は従業員のほとんどを、
付近の村から採用したため、村の上下関係等が持ち込まれ苦労もしたが組織とは何かを 根気よく指導した結果、問題もほとんど無くなった。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
兼松 KGK から紹介を受けたコラートの名士でもある合弁パートナーから、土地の取得、
施工業者の紹介など、親身なサポートを受けた。労務面では現地法人社長(当社社長の 兄)を初めとする日本人スタッフがタイ語を習得、指導し、職制に沿った組織的行動、
規律の遵守、品質意識などを定着させた。
顧客開拓では、数年に亘り日本国内で営業マンが現地進出企業を訪問し開拓にあたっ てきた。この結果、95 年にタイ人 3 名程度でスタートした現地法人を、現在の規模にま で成長させることができた。
製造面では、以前は、材料欠品、金型損傷などの問題が起き、日本人スタッフを急派 して対応していたが、現地従業員のスキルも上がっており、問題は少なくなっている。
新規の部品加工の場合などには、金型と一緒に日本人スタッフがタイへ行き、立上げ まで充分指導してから帰国する方法をとっている。なお、材料は当初日本から輸出して いたが、現在は精度を要求されるもの、非鉄金属以外は現地で調達している。
2.成功要因
①現地に通じた兼松 KGK を介することにより合弁パートナーに恵まれた、②現会長の 方針により日本人スタッフにタイ語習得が義務付けられたこと、この結果従業員との意 思疎通が図れ、日本人スタッフ自らが通訳を介さず適切な指導を行うことができた、③ 技術の高さが背景にあったと考えられるが、国内で営業活動を展開し顧客開拓をサポー トした、④タイでの従業員の定着率が高いため、従業員の熟練度が高まってきた。
3.留意点
現地トップは、問題点の把握と対応に努める必要がある。また、本社との交渉、情報 共有なども重要である。現地での信頼獲得のためにも、経営責任を強く意識し、権限を 持つ信頼できる人材、できれば経営者の一族が現地に常駐することが望ましい。
合弁形態では、経営価値観が異なり事業運営で紛糾することがある。従ってパートナ ーは慎重に選ぶ必要がある。当社のパートナーは現地法人設立以前の土地探しの段階か ら親身になって世話をしてもらい、人間的な信頼関係もできている。製造業を営む資産 家で経営に理解があり、一定の配当が得られれば良いという姿勢であり、経営を一任し てもらっている。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項
海外進出に際し、財団法人山梨産業支援機構から申請手続き等について支援を受け、助 かった。公的機関の支援を積極的に活用することが重要だと考えている。
企 業 名 株式会社 電溶工業
所 在 地 山梨県中巨摩郡昭和町 業 種 電気抵抗溶接機製造 資 本 金 4,000万円 従 業 員 数 98人
海 外 展 開 国 ・ 地 域 中国(昆山市)、米国、インド U R L http://www.denyojp.com/
2.事業内容とその特徴
当社は自動車工場の生産ラインで使われる抵抗溶接機(ロボットガン、サーボスポット ガン、ポータブルガン等)の総合メーカーである。製品は殆どが受注生産であり、大手自 動車メーカー各社とロボット工作機械メーカーを顧客としている。
Ⅱ 海外展開の概要 1.直接投資の動機
取引先の日系自動車メーカーの海外生産拠点展開に伴い、当社に対しても現地でのメン テナンス、部品供給のための拠点整備の強い要請があったもの。
2.直接投資を行っている国・地域 (1)中国・江蘇省昆山市
形態:単独出資 設立:平成 13 年(2001 年)
(2)米国・オハイオ州コロンバス
形態:単独出資 設立:平成 17 年(2005 年)
(3)インド・ハリヤナ州グルガオン
形態:合弁(日本企業(機械商社)との合弁) 設立:平成 19 年(2007 年)
3.現地法人の内容
中国現地法人は生産拠点、米国現地法人とインド現地法人は販売とメンテナンスの拠点 である。中国現地法人は従業員 55 名体制で日系自動車メーカーの他、中国現地企業にも製 品を納入している。
Ⅲ 海外展開の課題
1.直接投資検討時の課題
中国進出に際しては、現地の情報や海外生産に関する知識が全くなく、手探りの状態で あった。
2.直接投資実施後の課題
進出当初は現地従業員の離職率が高く、その定着が課題であった。また、部品・資材の 現地調達を進める上では、調達先、外注先の選定、品質の維持等も大きな課題であった。
Ⅳ 課題解決の経過と成功要因及び留意点 1.課題解決の経過
中国進出に際しては社長が自ら現地に足を運んで調査し、数年の検討を経て進出地を決 定。経験を重ねる中で現地法人のマネジメントにも次第に慣れて、現地従業員の中で軸と なる人材も育ち、従業員の定着率も高くなっている。
製品・部品については品質・精度の面で日本から送らなければならないものもあるが、
ここ1~2年で中国現地法人の技術水準、品質も向上し、日本から技術面の指導に行く回 数も減っている。中国で作って日本に持ってくる部品や製品が増えてきており、中国現地 法人からの輸入が輸出を上回る状況になっている。現地の賃金は上がってきてはいるが、
まだ水準としては低い。今後、中国現地法人から輸入する製品・部品の種類を増やし、本 社では中国ではできないような製品の開発に力を入れていく方針である。また、中国工場 から第三国への輸出も増加傾向で、今後さらに伸ばしていく計画である。
現地での部品・資材の調達に関しては、中国人スタッフが現地企業を探し、材質の検査、
工場実査等を行って選定し日本人スタッフが承認、毎年見直しも行っている。品質に関し ては、最初はいいものを持ってくるが、次第に悪くなることがあり、常に管理、チェック していなければならない面がある。
現地では当社の製品を模倣した機械も作られており、重要な図面は外注先に流さない、
どのレベルの部品まで外注するかといった点に気を配っている。
進出当初は日系メーカーへの販売が中心であったが、現在では中国現地企業への売上が 上回っている。営業に関しては、日系企業は日本人総経理と日本語の話せる現地スタッフ が担当し、現地企業は独自の商慣習もあるため中国人スタッフに担当させている。現地企 業への売上については代金回収の問題もあり、取引開始時に相手企業の信用状態を調査し ている。また、180 日程度の手形での支払いというケースも出てきているとのことである。
2.成功要因
進出に際しては社長が自ら時間をかけて調査検討してことが円滑なスタートの要因であ る。また、実際の取引や経験を通じて、現地の文化、習慣等を学び、現地にあったやり方 を採用している。
3.留意点
現地化を進め、現地のやり方に合わせる一方で、日本のモノ作りの方法は守っていかな ければならない。やはり日本人が何らかの形で関与する必要があり、全て現地に任せて、
日本人ゼロということは難しいかもしれないと考えている。また、何より信頼できる現地 人マネージャーの存在が欠かせない。
Ⅴ 行政・支援機関等への要望事項 特になし