• 検索結果がありません。

受傷アスリートにおけるリハビリテーションアドヒアランスに影響を及ぼす要因の検討 [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "受傷アスリートにおけるリハビリテーションアドヒアランスに影響を及ぼす要因の検討 [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

背景および目的 スポーツ傷害による悪影響は身体的側面にとどまら ず,心理的側面まで及ぶことが知られている.受傷アス リートの抱える心理的な問題はさまざまであるが,たと えば,受傷アスリートはその後のリハビリテーション過 程において,不安,焦燥,抑うつ,怒り,および孤独感 などのネガティブな心理的反応を示すことが報告されて (たとえば,岡ら, 1998; 鈴木・中込, 2013 など)いる. これらのことは,受傷アスリートのリハビリテーション 過程における心理的側面を理解しようとする研究や,心 理的サポートの有効性を検討する研究が行われてきた背 景となっている. 心理的側面へのアプローチにおいて,着目されている 概念のひとつにリハビリテーションアドヒアランスがあ る.リハビリテーションアドヒアランスとは,主体性を 持って,リハビリテーションに積極的に関っていく姿勢 を示す用語である.受傷アスリートが競技活動が可能と なる身体条件を獲得するため,および競技への早期復帰 のためにも,このリハビリテーションアドヒアランスは 重要である.これまでにも,スポーツ傷害におけるリハ ビリテーションアドヒアランスの関連要因は,Wiese - Bjornstal et al.(1998)によって提案されたスポーツ傷害 に対する心理的反応を示した認知評価モデルである「ス ポーツ傷害への心理的反応とリハビリテーション過程に 関する統合モデル」を軸とし,多数特定されてきた.し かし,受傷アスリートの背景にあるさまざまな個人的お よび状況的要因,そしてリハビリテーション過程におけ るそれらの要因の変化の影響を踏まえた上での見解は一 致していない. したがって,本研究では,過去にスポーツ傷害による リハビリテーションを経験したことのある者を対象とし, さまざまな個人的要因や状況的要因を背景に有する受傷 アスリートのリハビリテーションアドヒアランスに影響 を及ぼす要因について,リハビリテーション期間の時間 経過を捉えながら,質的アプローチを用いて検討するこ とを目的とする.さらには,明らかにされた要因を踏ま えて,受傷アスリートに有効な心理的サポートの在り方 について提案することを目指す. 方法 1. 対象者 過去にスポーツ傷害によるスポーツリハビリテーシ ョンを経験した者 16 名(男性 11 名,女性 5 名)を対象 とした.調査対象者のインタビュー当時の年齢は 18―22 歳(平均 20.0±1.37 歳)であった. 2. 手続き 1) インタビューガイドの作成 「受傷アスリートのリハビリテーションアドヒアラ ンスに影響を及ぼす要因の検討」というリサーチクエス チョンに基づき,先行研究を参考にインタビューガイド を作成した.インタビューガイドには,個人的および状 況的要因の項目,リハビリテーションアドヒアランスと の関連が予測される項目,および調査対象者本人の,リ ハビリテーションアドヒアランス,および関連要因の評 価の項目が含まれた. 2) データ収集 九州大学人間環境学研究院人間科学部門 健康・スポ ーツ科学講座倫理委員会の承認を得た後,データを半構 造化インタビュー法による個別インタビューによって収 集した.調査期間は,2015 年 5 月上旬―2015 年 10 月中 旬であり,1 人当たりの所要時間は 1 時間―1 時間 30 分 であった.インタビュー内容は,調査対象者の承諾を得 て,IC レコーダにて録音された. 3) データ分析 リハビリテーションアドヒアランスの関連要因を,そ の背後にある文脈も含めて検討していくために,本研究 では質的内容分析による分析を行った.質的内容分析と は,データが何を語っているのか,また,その文脈に関 して妥当な推論を行うための調査技術である.詳細な分 析の流れは,表 1 に示した.

受傷アスリートにおけるリハビリテーションアドヒアランスに

影響を及ぼす要因の検討

キーワード:スポーツ傷害,スポーツリハビリテーション,質的内容分析 所 属 行動システム専攻 氏 名 髙井 真佐代

(2)

4) 信頼性と妥当性 質的研究に精通する研究者の意見を仰ぎながら,デー タ分析が進められ,研究者間のトライアンギュレーショ ンを図ることによって,信頼性と妥当性の確保に努めた. また,サブカテゴリーおよびカテゴリーを生成した後, 元のデータとの比較を行い,それらが元のデータを適確 に反映していることを確かめることで,サブカテゴリー およびカテゴリーの信頼性を確認した. 結果および考察 受傷アスリートのリハビリテーションアドヒアラン スに影響を与える要因について,質的内容分析を用いて 分析した結果,全てで 6 個のカテゴリーと 53 個のサブカ テゴリーが生成された.以下,カテゴリーは【 】,サブ カテゴリーは≪ ≫にて表し,その内容を説明する. 【心理的要因】は,リハビリテーション,競技,およ び怪我に対する個人内の意思や認知を表しており,≪リ ハビリの重要性≫,≪競技活動がしたいという思い≫, および≪回復の見込みのなさ≫などのサブカテゴリーが 含まれていた.【身体的要因】は,身体の状態を表してお り,≪受傷部位の状態≫と≪受傷部位以外の状態≫の 2 つのサブカテゴリーが含まれていた.【環境的要因】は, 環境や状況による影響を表しており,≪競技日程≫や≪ 受傷からの経過時間≫などのカテゴリーが含まれていた. 【社会的要因】は,第三者との相互関係を表しており, ≪チーム内の対人関係≫,≪情緒的ソーシャルサポート ≫,および≪チームからの疎外感≫などのサブカテゴリ ーが含まれていた.【リハビリテーション内容】には,リ ハビリテーションそのものに関するサブカテゴリーが含 まれており,≪リハビリ計画≫と≪リハビリプログラム ≫といった 2 つのサブカテゴリーが含まれていた.【個 人の経験】は,受傷前およびリハビリテーション期間に おける個人の経験に関するサブカテゴリーが含まれてお り,≪競技目標の達成不可能≫,≪過去のリハビリ経験 ≫,および≪リハビリの習慣化≫といった 3 つのサブカ テゴリーが含まれていた. そして,明らかとなった関連要因は,リハビリテーシ ョンアドヒアランスに対して,促進要因となるもの,阻 害要因となるもの,および促進・阻害要因のどちらにも なり得るものが存在した.また,傷害の発生から競技復 帰までのリハビリテーション過程は,リハビリテーショ ンプログラムやリハビリテーションを行う環境の違いに よって,受傷期,回復期,運動充実期,および競技復帰 期の 4 つの期間に分けられる(片寄, 2011).そこで,抽 出されたサブカテゴリーと元のデータを照らし合わせ, その文脈から,リハビリテーションアドヒアランスとの 関係性を読み取り,促進要因および阻害要因に分類した. さらには,受傷からの時間経過およびリハビリテーショ ンプログラムの内容を読み取り,リハビリテーション期 間別にリハビリテーションアドヒアランスの関連要因を 分類した.以下には,主要な結果を一部抜粋し記述する. 1. 心理的要因 心理的要因において,運動療法が取り入れられる時期 である回復期以降に≪競技活動がしたいという思い≫が, そして,徐々に競技に関連したトレーニングが行われる よういになる運動充実期以降に≪競技シーズンの重要性 ≫といったサブカテゴリーが関連要因として存在した (表 2).これらの期間に,競技に関する意識が関連要因 として認められたのは,リハビリテーション期間が進展 するにつれて競技に対する意識が高まっているためであ ると推察された.しかし,この競技に対する意識は,運 動充実期以降において促進要因としても,阻害要因とし ても存在しており,競技に対する強い意識を持つことが 焦りにつながるような場合は,適切なリハビリテーショ ンの実施を妨げることが示唆された.また,回復期以降 に促進要因として認められた≪復帰後の競技パフォーマ ンスのため≫にリハビリテーションを生かそうという, リハビリテーションの実施に対するポジティブな認知を 持つ個人は,競技に対する意識が促進要因として働き, 競技復帰期にある体力や競技の≪パフォーマスの低下の 知覚≫など,受傷による負の影響を認知している個人は, 阻害要因として働くことが考えられた. 受傷期 回復期 運動充実期 競技がしたいという思 い(+) 競技がしたいという思 い(+) 競技シーズンの重要性 (±) 復帰後の競技パフォー マンスのため(+) 復帰後の競技パフォー マンスのため(+) 回復への見込みのなさ (-) パフォーマンス低下の 知覚(-) 表2. 心理的要因 競技復帰期 競技がしたいという思 い(±) 競技シーズンの重要性 (±) 復帰後の競技パフォー マンスのため(+) 回復への見込みのなさ (-) 2. 身体的要因

(3)

身体的要因については,回復期以降において,促進要 因および阻害要因として≪受傷部位の状態≫が含まれて いた(表 3).受傷部位における痛みの緩和や,受傷部位 の回復は一貫して促進要因となっていた.一方で,受傷 部位の状態の未改善は,リハビリテーションに対する積 極性という意識面においては阻害要因となるが,受傷部 位を回復に導くためのケアの実施という行動面において は促進要因となっていた.≪受傷部位以外の状態≫につ いては,受傷部位以外の身体的疲労があることが阻害要 因となっていた.これは,限られた部位における反復的 なトレーニングの実施や,受傷前の日常生活に加えて, リハビリテーションを実施しているという日々のスケジ ュールの過密さが,身体的疲労を生じさせていると推察 された. 受傷期 回復期 運動充実期 競技復帰期 受傷部位の状態 (±) 受傷部位の状態 (±) 受傷部位の状態 (±) 受傷部位以外の状態 (-) 受傷部位以外の状態 (-) 表3. 身体的要因 3. 環境的要因 回復期以降において,シーズンオフの期間であること や,シーズンまでに時間的な余裕があるといった,重要 な≪競技日程≫を控えていない状況が,促進要因として 確認された.しかし,運動充実期以降になると,競技に 関連したトレーニングが取り入れられ,より競技復帰を 意識しながらリハビリテーションへと取り組むこととな り,シーズンインや,目標としている大会といった≪競 技日程≫に対して時間的な焦りを感じやすくなる.この ≪競技日程≫に対する時間的な焦りが,自己判断での無 理のあるトレーニングの実施や,十分な回復を得られな いままでの競技復帰を招いていた(表 4).【心理的要因】 と同様に,競技に対する強い意識や競技復帰に対して焦 燥を抱いている場合は,≪競技日程≫が阻害要因として 働くことが推察された. 受傷期 回復期 運動充実期 競技復帰期 競技日程(+) 競技日程(±) 競技日程(±) 表4. 環境的要因 4. 社会的要因 受傷期においては,専門機関でのリハビリテーション の実施が主となり,チームから離れて過ごすことを余儀 なくされる場合が多い.そのため,≪チーム内の対人関 係≫に関する不安が生じ,リハビリテーションに対する 積極性を低下させていると推察された.しかし,親の通 院サポートという≪道具的ソーシャルサポート≫を得る ことで,リハビリテーションの実施が促されることが明 らかになった. 回復期以降になると,ソーシャルサポートに関する要 因の数が増大し,リハビリテーションアドヒアランスの 向上に重要な役割を果たしていた.具体的には,励まし やリハビリテーションの実施に対する理解などのといっ た≪情緒的ソーシャルサポート≫,ケアやトレーニング といったリハビリテーションに関する情報提供を行う≪ 情報的ソーシャルサポート≫,およびリハビリテーショ ンに対する努力についての他者による評価といった≪評 価的ソーシャルサポート≫が促進要因として追加されて いる.また,チームの関係者によるソーシャルサポート が不足しているという≪ソーシャルサポートの認知≫を している場合には,≪チームからの疎外感≫の認知に結 びつき,リハビリテーションに対する積極性を低下させ ていたと考えられる(表 5). 受傷期 回復期 運動充実期 競技復帰期 チーム内の対人関 係(-) チーム内の対人関 係(-) 道具的ソーシャル サポート(+) 道具的ソーシャル サポート(+) 道具的ソーシャル サポート(+) 道具的ソーシャル サポート(+) 情緒的ソーシャル サポート(+) 情緒的ソーシャル サポート(+) 情緒的ソーシャル サポート(+) 情報的ソーシャル サポート(+) 情報的ソーシャル サポート(+) 情報的ソーシャル サポート(+) 評価的ソーシャル サポート(+) ソーシャルサポー トの認知(-) ソーシャルサポー トの認知(±) チームからの疎外 感(±) チームからの疎外 感(±) 表5. 社会的要因 5. リハビリテーション内容 リハビリテーション内容に関する要因は,本格的なリ ハビリテーションが始まる回復期以降において確認され た(表 6).リハビリテーションを行うにあたって,事前 の≪リハビリ計画≫の作成や,綿密な≪リハビリ計画≫ を立てていることが,一貫してリハビリテーションアド ヒアランスを向上させていた. 一方で,同じ内容の≪リハビリプログラム≫の反復的 な実施は促進要因および阻害要因として働くことが明ら かになった.同じ≪リハビリプログラム≫の繰り返しは, リハビリテーションに関する知識の蓄積につながり,専 門機関外における自主的なリハビリテーションの実施を 促すが,専門機関におけるリハビリテーションの実施に 対する重要性を低下させ,専門機関への通院の中断を招 いていたと推察された.

(4)

受傷期 回復期 運動充実期 競技復帰期 リハビリ計画(+) リハビリ計画(+) リハビリ計画(+) リハビリプログラム (±) リハビリプログラム (±) リハビリプログラム (±) 表6. リハビリテーション内容 6. 個人の経験 受傷に伴い,受傷前から設定していた競技目標につい て≪競技目標の達成不可能≫の経験をすることは,回復 期以降のリハビリテーション期間において,阻害要因と なることが明らかになった.受傷に伴う負の影響に意識 を向けることは,阻害要因になると考えられる.また, 競技復帰期では,リハビリテーションの実施の際に,自 分自身の≪過去のリハビリ経験≫を参照することが,リ ハビリテーションに対する専念の意識を生じさせていた ことが明らかとなった.参照された≪過去のリハビリ経 験≫は,競技復帰への焦りから適切なリハビリテーショ ンが行えず,痛みの繰り返しや再発を招いたという失敗 経験であり,同じ失敗を繰り返さないようにという意識 を生じさせたと考えられた. 受傷期 回復期 運動充実期 競技復帰期 競技目標の達成 不可能(-) 競技目標の達成 不可能(-) 競技目標の達成 不可能(-) 過去のリハビリ 経験(+) 表7. 個人の経験 総合論議 本研究で得られた結果を参考に,リハビリテーション アドヒアランス向上を目的とした心理的サポートの在り 方についての提案を以下に示す. 受傷による負の影響の認知は,リハビリテーション過 程においてリハビリテーションアドヒアランスの阻害要 因なることがわかった.したがって,受傷期や回復期と いったリハビリテーション過程の初期段階のうちに,受 傷後に競技目標を再設定することや,復帰までの見通し や回復への展望を認識できるようなスモールステップに 基づくリハビリテーション計画を立てていることが重要 といえよう.また,直面している問題に対して見方や発 想を変え,新しい適応の方法を探す認知的再評価を促す ことで,その後のリハビリテーション過程における,回 復または競技復帰への過度な焦りを抑制できると考えら れる. さらに,リハビリテーション過程が進んでいくと,リ ハビリテーションをこれまでの日常生活へと組み込むこ とに対する困難さの認知や,受傷部位以外の身体的疲労 の蓄積により,リハビリテーションからのドロップアウ トを招くと考えられる.リハビリテーションの継続を促 すには,受傷部位の状態だけでなく,心身の状態に即し たリハビリテーション計画およびプログラムの修正が必 要といえる.自らリハビリテーションを適切にコントロ ールできるように,リハビリテーションに関する情報的 サポートの充実が必要であろう. 競技復帰が近づいてくる運動充実期や競技復帰期に おいては,競技復帰に対する過度の焦燥を抱いている個 人に対して,とくに心理的サポートを行うことが求めら れる.受傷した今,何ができるのかを考えさせ,それを どのように今後生かしていくのかを考えさせるような心 理的サポート(小堀, 2004)や,ポジティブな言葉や思考 による焦りや不安を解消させることが肝要であろう. まとめ 先行研究において明らかにされていたリハビリテー ションアドヒアランスの関連要因よりも,さらに多くの 関連要因が存在することが明らかとなり,大きく 7 個の カテゴリーへと集約された.いくつかの結果においては, 先行研究を支持していたが,先行研究とは異なる見解が 得られた要因もあった.そして,リハビリテーション期 間の時間経過を捉えながら,さまざまな関連要因が同定 されたことによって,リハビリテーションアドヒアラン スと関連要因との直接的な相互関係だけでなく,関連要 因間での相互関係によってダイナミックにリハビリテー ションアドヒアランスに影響していることが示唆された. また,明らかになった関連要因を参考に,リハビリテ ーションアドヒアランス向上のための心理的サポートの 在り方について提案した.これらの提案は,受傷アスリ ートが,より早期に,かつ安全な状態で競技へと復帰す ることへの一助となるだろう. 主要引用文献 1. 岡浩一朗・竹中晃二・松尾直子・堤俊彦・児玉昌久 (1998)スポーツ傷害リハビリテーションにおける 心理的サポートの有効性,臨床スポーツ医学, 15:922-928. 2. 鈴木敦・中込四郎(2013)受傷アスリートのリハビ リテーション過程におけるソーシャルサポートの 希求の変容,スポーツ心理学研究,40:139-152. 3. Wiese-Bjornstal, D. M., Smith, A. M., Shaffer, S. M.,

and Morrey, M. A.(1998)An integrated model of response to sport injury: Psychological and sociological dimensions. Journal of Applied Sport Psychology, 10:46-69.

参照

関連したドキュメント

狭さが、取り違えの要因となっており、笑話の内容にあわせて、笑いの対象となる人物がふさわしく選択されて居ることに注目す

糸速度が急激に変化するフィリング巻にお いて,制御張力がどのような影響を受けるかを

関係委員会のお力で次第に盛り上がりを見せ ているが,その時だけのお祭りで終わらせて

(ページ 3)3 ページ目をご覧ください。これまでの委員会における河川環境への影響予測、評

(2)特定死因を除去した場合の平均余命の延び

FSIS が実施する HACCP の検証には、基本的検証と HACCP 運用に関する検証から構 成されている。基本的検証では、危害分析などの

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと

選定した理由