秋の自然物を使った遊びの実践の比較を通して
著者 杉能 道明, 三宅 一恵
雑誌名 ノートルダム清心女子大学紀要. 人間生活学・児童
学・食品栄養学編
巻 44
号 1
ページ 34‑48
発行年 2020
URL http://id.nii.ac.jp/1560/00000434/
幼児教育と小学校教育をつなぐ「環境」の意義
―秋の自然物を使った遊びの実践の比較を通して―
杉能 道明
※・三宅 一恵
※Significance of "The Environment" to Connect Early Childhood Education and Elementary School Education
Michiaki S
uginoand Kazue M
iyakeIt's important to connect kindergarten, elementary school, junior high school and high school in the revision of curriculum, and it is expected that we should develop "three pillars of nature and ability". With this revision of curriculum, early childhood education has been greatly influenced, and changed. "Nature and ability that we should develop"
and "the figure which expect to develop by the infant end" were shown in kindergarten education(2018).Previously, it has been said, "it was basis of early childhood education to perform through environment". This will not change in the future either, but the significance has changed. It is expected that we should encourage "the viewpoint, and the way of thinking" of the child by connecting early childhood education and elementary school education. We considered what exactly constituted "environment"
in early childhood education, and understood that "the teacher" "is the most important environment" for a child.
Keywords: Viewpoint, way of thinking, the environment, constitute environment
1.はじめに
本稿は,幼児教育と小学校教育をつなぐ 1つの視点として「環境」に着目し,それ ぞれの「環境」の教育上の意義を整理する ことで,両校種間での子どもの学びをつな いでいくための手がかりを提示していくこ とを目的とする。また,幼稚園ならびに小 学校での実践事例をもとに,幼児教育に関 わる教師と小学校教育に関わる教師がいか
に「環境」を構成しているのかといった点 も比較考察し,幼児教育と小学校教育をつ なぐ学びのあり方を考えていきたい。
2.幼児教育と小学校教育の違い 小学校においては、文部科学大臣の検定 を経た教科用図書又は文部科学省が著作の 名義を有する教科用図書を使用しなければ ならない(学校教育法第 34 条)。これに 対して,幼児教育は「環境を通して行う」
キーワード:見方・考え方,環境,環境を構成する
※ 本学人間生活学部児童学科
質・能力の三つの柱」が示され,幼稚園か ら高等学校まで一貫して資質・能力を育成 することが中核の課題とされている。
幼児教育では,これまで,幼児期の教育 の修了までに育つことが期待される生きる 力の基礎となる心情,意欲,態度などにつ いて,「〜を味わう」,「〜を感じる」など のように,教育の方向性を示すことを重視 してきた。
ところが,今回の改訂では幼稚園教育に おいて育みたい資質・能力が示され,また,
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」
が示されている(保育所保育指針(2018),
幼保連携型認定こども園教育・保育要領
(2018)も同様)。
小学校教育以降で示されている資質・能 力の三つの柱は「生きて働く『知識・技能』
の習得」,「未知の状況にも対応できる『思 考力・判断力・表現力等』の育成」,「『学 びに向かう力・人間性等』の涵養」である。
これに対応する形で,幼稚園教育において 育みたい資質・能力は次のように示されて いる。
幼稚園教育において育みたい資質・能 力(幼稚園教育要領解説(平成 30 年 3月)より)
(1)豊かな体験を通じて,感じたり,
気付いたり,分かったり,できるよう になったりする「知識・技能の基礎」
(2)気付いたことや,できるように なったことなどを使い,考えたり,試 したり,工夫したり,表現したりする
「思考力・判断力・表現力等の基礎」
(3)心情,意欲,態度が育つ中でよ りよい生活を営もうとする「学びに向 かう力・人間性等」(下線:筆者)
これらの資質・能力の三つの柱は小学校 教育におけるそれと類似している。「〜の ことを基本としている(幼稚園教育要領
(2018),以降は「幼稚園教育要領」)。また,
小学校教育は児童が学問体系の獲得を重視 する教科カリキュラムに基づき主に「各教 科等の授業」として行われるのに対して,
幼児教育は幼児の生活や経験を重視する経 験カリキュラムに基づき「遊びを通した総 合的な学び」として行われる。
幼児期における遊びとは,大人の余暇活 動のそれとは違い,学びそのものであり,
幼児が遊び込むことができる環境(学びに 深さと広がりをもたらす環境)をいかに構 築するかが教職員の指導における重要な課 題となる。幼児が遊び込むことができる環 境を構築し,幼児の主体的な活動を促す教 職員の適切な援助があれば遊びは深まる。
一方,児童期の教育においては,教科カリ キュラム等の実施のため,各教科等から構 成される時間割に基づく授業を行うことが 基本となる。ここでは,教員が教育すべき 内容を具体化し効果的な指導を行うことに より,児童が目標に到達することができる ようにすることが重要な課題となる。
このように,幼児教育と小学校教育には 発達段階と教育のねらいの違いによる教育 内容・方法の違いがある。一方,子どもの 育ちの観点から考えると,幼児教育と小学 校教育には類似点や連続性・一貫性も見ら れる。
3.幼児教育と小学校教育の類似点と連続 性・一貫性
平成 28 年 12 月 21 日の「幼稚園,小学校,
中学校,高等学校及び特別支援学校の学習 指導要領等の改善及び必要な方策等につい て(答申)」(以下,「2016 答申」)を参考 にすると,今回の幼稚園から高等学校の教 育課程の改訂はコンピテンシー・ベースで 行われたことが分かる。すなわち,「何が できるようになるか」の問いに対応する「資
育と小学校教育とを「つなぐもの」とは言 いにくいものであった。同会議では児童期 及びそれ以降の教育においては「学力の三 つの要素」の育成に特に意を用いなければ ならない,としている。この「学力の三つ の要素」とは「基礎的な知識・技能」,「課 題解決のために必要な思考力,判断力,表 現力」,「主体的に学習に取り組む態度」の ことである。これらは,小学校教育にとっ ては授業を通して付けたい力そのものであ るが,遊びを学びとして捉え,環境を通し て行うという幼児教育にとっては見通し目 指すものであっても「つなぐもの」とは言 いにくいものであった。今回の教育課程の 改訂では,幼児教育と小学校教育は「資質・
能力の三つの柱」が共有され,幼児教育の 修了時の具体的な子どもの姿が示されたこ とで幼児教育と小学校教育のつながりが理 論的に明確になったと考える。
今回の教育課程の改訂で「何ができるよ うになるか」という問いに次いで重視され ている視点がある。「どのように学ぶか」
という問いである。幼児教育と小学校教育 が目指す学び方の視点「どのように学ぶか」
という問いについてはどうだろうか。
小学校教育以降の学習指導要領では,「主 体的・対話的で深い学び」の視点が示され ている。幼児教育における学びの視点は次 の通りである。
幼児教育における学びの視点(2016 答申より)
(1)周囲の環境に興味や関心を持っ て積極的に働き掛け,見通しを持って 粘り強く取り組み,自らの遊びを振り 返って,期待を持ちながら,次につな げる「主体的な学び」が実現できてい るか。
(2)他者との関わりを深める中で,
自分の思いや考えを表現し,伝え合っ 基礎」という表現から小学校以降で育む
「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」
の基盤を育む意図が感じられる。また,個 別に取り出して指導するのではなく,遊び を通した総合的な指導の中で一体的に育む よう努めるとも書かれている。今回の改訂 で加えられた「幼児期の終わりまでに育っ てほしい姿」にも同様に小学校教育との連 続性が示されている。次の 10 の姿が挙げ られている。
幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 (1)健康な心と体
(2)自立心 (3)協同性
(4)道徳性・規範意識の芽生え (5)社会生活との関わり (6)思考力の芽生え
(7)自然との関わり・生命尊重 (8) 数量や図形,標識や文字などへ
の関心・感覚 (9)言葉による伝え合い (10)豊かな感性と表現
幼児期の教育と小学校教育の円滑な接 続の在り方に関する調査研究協力者会議
(2010)では,教育課程編成上の留意点と して「幼児期(特に幼児期の終わり)から 児童期(低学年)にかけての教育において は,「三つの自立」を養うことが重要であ る。」と報告している。「三つの自立」とは
「学びの自立」,「生活上の自立」,「精神的 な自立」のことである。幼児教育と小学校 教育のつながりのキー・ワードとして「三 つの自立」が示されているわけである。こ れは,小学校低学年の生活科の目標に通じ るものであり,生活科における究極的な児 童の姿である「自立」する姿を描いたもの である。幼児教育と生活科を「つなぐもの」
として共有してきたものであるが,幼児教
の基礎を培うものとして,幼児を保育 し,幼児の健やかな成長のために適当 な環境を与えて,その心身の発達を助 長することを目的とする。(下線:筆者)
幼稚園教育要領(平成 30 年3月)
第 1 章 総説 第1節 幼稚園教育の 基本
幼児期の教育は,生涯にわたる人格形 成の基礎を培う重要なものであり,幼 稚園教育は,学校教育法に規定する目 的及び目標を達成するため,幼児期の 特性を踏まえ,環境を通して行うもの であることを基本とする。(下線:筆者)
保育所保育指針(平成 30 年3月)
第 1 章 総則 1 保育所保育に関す る基本原則 (1)保育所の役割 イ 保育所は,その目的を達成するた めに,保育に関する専門性を有する職 員が,家庭との緊密な連携の下に,子 どもの状況や発達過程を踏まえ,保育 所における環境を通して,養護及び教 育を一体的に行うことを特性としてい る。(下線:筆者)
このように,幼児教育においては「環境」
が重視されていることが分かる。この「環 境」とは何を指しているのだろうか。
「環境」については2つの意味をもって いると考えられる。1つ目は教育方法とし ての「環境」である。松島(2016)は,「『環 境を通して行う』というときの『環境』は
〈保育者が子どもの発達を助長するために 構成し続けていく環境〉である」と述べて いる。前述の法律や法律に準ずる文書の中 に出てきた「環境」はこれに当たると考え られる。一方,2つ目は幼児教育における 領域としての「環境」である。松島(2016)
は,「領域の一つとしての『環境』は,〈子 たり,考えを出し合ったり,協力した
りして自らの考えを広げ深める「対話 的な学び」が実現できているか。
(3)直接的・具体的な体験の中で,「見 方・考え方」を働かせて対象と関わっ て心を動かし,幼児なりのやり方や ペースで試行錯誤を繰り返し,生活を 意味あるものとして捉える「深い学び」
が実現できているか。(下線:筆者)
このように学びの視点「主体的・対話的 で深い学び」についても同じ言葉が使われ ていることから,幼児教育と小学校教育で つながっていることが分かる。この学びの 視点については,当初は「アクティブ・ラー ニング」という言葉が使われていた。とこ ろが「アクティブ」という言葉がいろいろ な意味に捉えられる心配があり,「活動あっ て学び無し」になる懸念があったため,「深 い学び」というねらいを示した「主体的・
対話的で深い学び」という言葉が使われる ようになったようである。
4.幼児教育と小学校教育をつなぐ「環境」
幼児教育は「環境を通して行う」ことを 基本としている。次に示す法律や法律に準 ずる文書の中にも「環境」という言葉が多 く見られる。
教育基本法第 11 条
幼児期の教育は,生涯にわたる人格形 成の基礎を培う重要なものであること にかんがみ,国及び地方公共団体は,
幼児の健やかな成長に資する良好な環 境の整備その他適当な方法によって,
その振興に努めなければならない。(下 線:筆者)
学校教育法第 22 条
幼稚園は,義務教育及びその後の教育
や砂などの「自然」の3つに分類すること ができる。幼児教育の「環境」を次のよう に捉えることにする。
幼児教育の「環境」の内容
「身近な人々」…教師,友達,家族,ゲ スト・ティーチャー など
「社会」…建物,施設,遊具,用具,素材,
数量,図形,標識,文字,行事 など
「自然」…動植物,砂,水,川,山など
「教育は,子供の望ましい発達を期待し,
子供のもつ潜在的な可能性に働き掛け,そ の人格の形成を図る営み」(幼稚園教育要 領)と言われる。特に,幼児期の教育は,
生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な 役割を担う。この幼児一人一人の潜在的な 可能性は,日々の生活の中で出会う「環境」
によって開かれ,「環境」との相互作用を 通して具現化される。幼児は,「環境」と の相互作用の中で,体験を深め,そのこと が幼児の心を揺り動かし,次の活用を引き 起こす。幼児教育における「環境」は,子 どもが主体的に関わる対象として,また,
気付いたことを表現したり振り返ったりす るきっかけとなる対象として,重要な意義 をもっていると言える。
では,小学校教育における「環境」とは 何か。次に考えていきたい。
まず,入学当初において,幼児教育と小 学校教育をつなぐ重要な役割を担う生活科 について考えてみたい。生活科では,幼児 期における「遊びを通した総合的な学び」
から,「各教科等における,より自覚的な 学び」に円滑に移行できるよう,入学当初 において,生活科を中心とした合科的・関 連的な指導などの工夫(スタートカリキュ ラム)を行うなどの対応が求められている。
生活科では,子どもにとって身近な「学 校」「家庭」「地域」を児童の生活圏として どもの発達を環境との関わりから捉えるた
めの視点〉である」と述べている。幼稚園 教育要領には身近な環境との関わりに関す る領域「環境」について次のような記述が ある。
身近な環境との関わりに関する領域
「環境」
[周囲の様々な環境に好奇心や探究心 をもって関わり,それらを生活に取り 入れていこうとする力を養う。]
1 ねらい
(1)身近な環境に親しみ,自然と触 れ合う中で様々な事象に興味や関心を もつ。
(2)身近な環境に自分から関わり,
発見を楽しんだり,考えたりし,それ を生活に取り入れようとする。
(3)身近な事象を見たり,考えたり,
扱ったりする中で,物の性質や数量,
文字などに対する感覚を豊かにする。
「環境」については2つの意味があると 述べたが,「環境」は子どもが関わる対象 であることに違いはない。幼稚園教育要領 の中から「環境」の要素を示す言葉を収集 すると以下の通りとなる。
「環境」の要素(幼稚園教育要領)
物的環境/空間的環境/事物/他者/
自然事象/社会事象/人やもの/教師 や友達/遊具や用具,素材/自然環境
/教師自身/様々な人/自然/生き物
/ものの性質や数量,文字など/数量 や図形/標識や文字/情報や施設/行 事/人的環境 など
これらを整理すると,小学校の生活科で 考えられている教師や友達などの「身近な 人々」,建物や施設などの「社会」,動植物
とになる。第3学年以降は,生活科におけ る「社会」の内容が社会科で,「自然」の 内容が理科で学習対象になっていく。
このように考えると,幼児教育で「環境」
と捉えられていたものが,小学校教育では
「環境」であると同時に「学習対象」へつ ながっていることが分かる。
5.子どもの「見方・考え方」を豊かにす る「環境」
前述のように,「何ができるようになる か」だけでなく「どのように学ぶか」とい う問いの学びの視点についても幼児教育と 小学校教育はつながっている。「活動あっ て学び無し」とならないためにも,「深い 学び」を大切にしたい。「深い学び」の鍵 と言われるのが「見方・考え方」である。
「見方・考え方」とは,2016 答申では,「各 教科等の特質に応じた物事を捉える視点や 考え方」「各教科等の学習の中で働くだけ ではなく,大人になって生活していくに当 たっても重要な働きをするもの」と説明さ れている。
2016 答申では,幼児教育における「見方・
考え方」について次のように記述されてい る。
幼児教育における「見方・考え方」
幼児教育における「見方・考え方」は,
幼児がそれぞれの発達に即しながら身 近な環境に主体的に関わり,心動かさ れる体験を重ね,遊びが発展し生活が 広がる中で,環境との関わり方や意味 に気付き,これらを取り込もうとして,
諸感覚を働かせながら,試行錯誤した り,思い巡らしたりすることであると 整理できる。(下線:筆者)
環境と関わる具体的・直接的な体験を通 して,自分なりの視点をもち,考えを進め の環境と捉えている。また,学習対象とし
て次の 15 を選び出し,整理している。
生活科の学習対象(小学校学習指導要 領(平成 29 年)解説生活編)
①学校の施設 ②学校で働く人 ③友 達 ④通学路 ⑤家族 ⑥家庭 ⑦地 域で生活したり働いたりしている人
⑧公共物 ⑨公共施設 ⑩地域の行 事・出来事 ⑪身近な自然 ⑫身近に ある物 ⑬動物 ⑭植物 ⑮自分のこ と
これらのうち⑮以外は,幼児教育で扱う
「環境」と同様に,学校で働く人,友達な どの「身近な人々」,学校の施設,通学路 などの「社会」,身近な自然,動物などの「自 然」に整理することができる。子どもにとっ ては学習対象であると同時に,「環境」で あるとも言える。
生活科における「環境」
「身近な人々」…学校で働く人,友達,
家族,地域で生活したり働いたりして いる人
「社会」…学校の施設,通学路,家庭,
公共物,公共施設,地域の行事・出来 事,身近にある物,
「自然」…身近な自然,動物,植物
生活科においては,子どもはこれらの学 習対象・環境と対話しながら具体的な活動 や体験を通して,身近な生活に関わる見方・
考え方を生かし,自立し生活を豊かにして いくための資質・能力を育成することを目 指している。
ただし,小学校第1学年では,幼児教育 の「環境」の内容の中にあった「数量,図 形」については算数科で,「文字」につい ては国語科で教科として学習対象とするこ
6.「環境」を構成する視点 次に,幼児教育において教師がどのよう に「環境」を構成していくべきかを考えて いきたい。幼稚園教育要領に次のような記 述がある。
幼児は,環境との相互作用の中で,体 験を深め,そのことが幼児の心を揺り 動かし,次の活動を引き起こす。
望ましい「環境」の条件を端的に言えば,
「幼児の主体的な活動を促すもの」と言え る。また,「身近な人々」も「環境」と考 えると相互作用(対話)を通して「自分の 思いや考えを振り返り広げたり深めたりす るきっかけとなるもの」でもある。そして,
前述のように「『見方・考え方』を豊かに するもの」でもある。このように考えると
「環境」は子どもの「主体的・対話的で深 い学び」をもたらすものであると言える。
その「環境」は,教師が構成することが 求められる。教師はどのように「環境」を 構成すればよいのだろうか。幼稚園教育要 領の記述をもとに考察する。
・幼児期の教育における見方・考え方 を生かし,幼児と共によりよい教育環 境を創造するように努める。
・幼児の主体的な活動が確保されるよ う幼児一人一人の行動の理解と予想に 基づき,計画的に環境を構成しなけれ ばならない。
・幼児と人やものとの関わりが重要で あることを踏まえ,教材を工夫し,物 的・空間的環境を構成しなければなら ない。
・活動が生まれやすく,展開しやすい ように意図をもって環境を構成してい く。
ていく過程が幼児教育における「見方・考 え方」と捉えることができる。子どもが主 体的に環境に関わり,環境と対話する姿が 描かれているとよめる。また,2016 答申 に次のような記述がある。
また,このような「見方・考え方」は,
遊びや生活の中で幼児理解に基づいた 教員による意図的,計画的な環境の構 成の下で,教員や友達と関わり,様々 な体験をすることを通して広がった り,深まったりして,豊かで確かなも のとなっていくものである。こういっ た「見方・考え方」を働かせることが,
幼稚園等における学びの中心として重 要なものである。(下線:筆者)
教師や友達などの他者と対話し,また,
自己と対話しながら「見方・考え方」が「広 がったり,深まったりして,豊かで確かな ものとなっていく」過程が描かれている。
これが「見方・考え方」を豊かにする「深 い学び」の姿と捉えることができる。
このような「見方・考え方」について,
2016 答申では「小学校以降において,各 教科等の『見方・考え方』の基礎になるも のである。」と記述している。
以上のことから,幼児教育における「深 い学び」の鍵は「見方・考え方」であり,「見 方・考え方」を豊かにするには,子どもが「身 近な環境に主体的に関わる」ことが重要で,
「心動かされる体験を重ね,遊びが発展し 生活が広がる中で」それを振り返り,「環 境との関わり方や意味に気付き」,「諸感覚 を働かせながら,試行錯誤したり,思い巡 らしたりする」という学びの過程を大切に すべきであることが分かる。「環境」が「見 方・考え方」を豊かにする鍵になる。
境の下で幼児と適切な関わりをする役 割とがある。
まとめると,次のようになる。
① 意図的,計画的に環境を構成する。具 体的には,
・ 幼児の主体的な活動が確保されるよう配 慮する
・「見方・考え方」を生かしやすくなるよ うしかけをする
・ 活動が生まれやすく展開しやすいように 配慮する
・教育的価値を含ませる
・試行錯誤できるようなしかけをする
・幼児の自発的な活動としての遊びを生み 出せるようなしかけをする
② 教師自ら「環境」の一部と自覚し幼児 に関わる。具体的には,
・常に環境を再構成し続ける
・幼児との信頼関係を十分に築く
・ 幼児と共によりよい教育環境をつくり出 す
さらに上記の環境をつくり出すために も,教師は,幼児が行っている活動の理解 者として,幼児との協同作業者,幼児と共 鳴する者として,あこがれを形成するモデ ルとしての役割や遊びの援助者として,幼 児の遊びが深まっていかなかったり,課題 を抱えたりしているときの適切な援助者と しての役割を担っていく必要がある。
例えば,環境全体が緊張や不安を感じさ せるような雰囲気では,活動意欲は抑制さ れてしまう。幼児が安心して周囲の環境に 関われるような雰囲気が大切である。その 上で,幼児が興味・関心をもち,関わらず にはいられないように,そして,自ら次々 と活動を展開していくことができるように,
・遊具や用具,素材だけを配置して,
後は幼児の動くままに任せるといった ものとは本質的に異なる。
・環境の中に教育的価値を含ませなが ら,幼児が自ら興味や関心をもって環 境に取り組み,試行錯誤を経て,環境 へのふさわしい関わり方を身に付けて いくことを意図した教育。
・幼児の環境との主体的な関わりを大 切にした教育。
・幼児が自分から興味をもって,遊具 や用具,素材についてふさわしい関わ りができるように,遊具や用具,素材 の種類,数量及び配置を考えることが 必要。
・教師自身も環境の一部である。
・幼児が必要な体験を積み重ねていく ことができるように,発達の道筋を見 通して,教育的に価値のある環境を 計画的に構成していかなければならな い。
・計画を立てて環境を構成すればそれ でよいというわけではない。常に活動 に沿って環境を構成し直し,その状況 での幼児の活動から次の見通しや計画 をもち,再構成し続けていくことが必 要なのである。
・教師は自分も幼児にとって環境の非 常に重要な一部となっていることを認 識して環境の構成を考える必要があ る。
・幼児の自発的な活動としての遊びを 生み出すために必要な教育環境を整え ることが求められる。
・教師には,幼児との信頼関係を十分 に築き,幼児と共によりよい教育環境 をつくり出していくことも求められて いる。
・教師の役割は,教材を工夫し,物的・
空間的環境を構成する役割と,その環
書かれている。
領域「環境」
(ねらい)
〇 身近な環境に親しみ,自然と触れ合う中 で様々な事象に興味や関心をもつ。
〇 身近な環境に自分から関わり,発見を楽 しんだり,考えたりし,それを生活に取 り入れようとする。
(内容)
・ 自然に触れて生活し,その大きさ,美し さ,不思議さなどに気付く。
・ 自然などの身近な事象に関心をもち,取 り入れて遊ぶ。
(内容の取扱い)
・ 幼児期において自然のもつ意味は大き く,自然の大きさ,美しさ,不思議さな どに直接触れる体験を通して,幼児の心 が安らぎ,豊かな感情,好奇心,思考力,
表現力の基礎が培われることを踏まえ,
幼児が自然との関わりを深めることがで きるように工夫すること。
(2)環境構成の工夫
これらのねらいや内容を受け,各園の教 育課程や指導計画において,秋の遊びに自 然物を取り入れる活動を考える。
以前までは,登園時,園に来るまでの道 すがら,親子で道端にあるそれらを拾った り,摘んだりして,園に持ってくる幼児の 姿が見られた。しかし,近年,園に来るま でにそのような場所がなく,また,登降園 も,送迎バスや車,自転車に乗って登園し てくる親子も増え,幼児らが自然物を目に する機会が圧倒的に少なくなった。
そのため,園では,園庭に実のとれる草 や木を植えたり,幼児らと園外保育に出掛 け,自然の中で遊び,落ちている自然物を 拾ってきたり,または,休日を利用して担 任らがたくさんの秋の収穫物を集めて持っ てきたりすることもある。また,保護者に 配慮され,構成された環境が必要である。
これらの環境を構成するのは教師である。
また,幼児が興味・関心をもち環境に関 わることができる条件がそろっても,それ だけでは十分ではない。幼児が好き勝手に 遊んでいるだけでは,必ずしも発達にとっ て価値のある体験をするとは限らない。「活 動あって学びなし」ではだめなのである。
教師の意図を環境の中に盛り込んでいかな くてはならない。教師の関わりは,基本的 には間接的なものとしつつ,長い目では幼 児期に幼児が学ぶべきことを学ぶことがで きるように「環境」を再構成し援助してい くことが重要である。
このように考えると,教師の存在が幼児 にとっての最も重要な「環境」であると言 うことができる。
7.秋の自然物を使った遊びの実践例 幼稚園と小学校の「秋の自然物を使った 遊びの実践例」を比較考察する。
幼稚園:「秋の自然物をつかって遊ぶ」
(1)活動のねらいと内容
幼稚園では,季節を通じて,様々な自然 物を環境として用意し,幼児の目に触れる 場所に置いたり,遊びに使ったりできるよ うにしている。自然物は,幼児にとって身 近なものであり,公園や道端に落ちている のを見つけて触ったり,拾い集めたり,遊 びに使ったりする。特に,秋は,いろいろ な自然物が豊富な季節である。
秋の自然物といえば,ドングリ,マツ ボックリなどの様々な木の実,ジュズダマ やムラサキシキブなどの草の実,赤や黄色 などきれいに紅葉した葉っぱなどたくさん ある。担任らは,幼児が自然に関心を向け る絶好の機会と考え,それらを保育に生か すための環境構成を考える。
幼稚園教育要領の領域「環境」で,特に 自然に関することについては,次のように
士の力で,関心を広げ,共有し,活動を展 開していく。そのため,幼稚園教師は,幼 児の次なる姿を想定し,環境をさらに再構 成させていくのである。それらを時系列に 示すと以下の通りになる。
ドングリを使った遊びの発展
(環境構成)
・ 園外保育に出掛けた翌日,拾ったたく さんのドングリをそのままカゴにいれ て,保育室の真ん中に置いておく ↓
(予想される幼児の姿)
・ カゴの中のたくさんのどんぐりをさ わって,混ぜて,がらがら大きな音を たてる
・ どんぐりを転がす ・ドングリを並べる
・ ドングリをごちそうに見立ててままご と遊びをする
・ いろいろな大きさ(種類)のドングリ があることに気付く
↓
(教師の援助―環境の再構成)
・幼児の様子を見ながら,必要なものを 用意する
(友達と一緒に遊びを楽しめるように)
・机の上にいろいろな種類のドングリを 並べた横に,図鑑を置く
(大きさを比べたり,図鑑で調べたりする ことができるように)
↓
(幼児の姿)
【一人で】
・ドングリを飾りにしてケーキをつくる ・ドングリに穴をあけて,ドングリごま
をつくる
・ドングリに顔を描いて,ドングリ人形 をつくる
・カップなど空き容器にドングリを入れて,
ふたをして,マラカスを作って遊ぶ 呼び掛けて集めたり,地域の方からいただ
いたりして,子どもたちが季節の自然物に 触れる機会をもつなどの工夫も行われてい る。いずれにしても,自然物に触れさせる 機会は,子どもたちにとって重要であり,
そこから何かを感じとったり,学んだりす ることが多くあるに違いない。
秋の自然物をどのように子どもたちに触 れさせるか,いかに興味や関心をもたせる かといった視点が大切であるが,幼児が目 を輝かせ,触ったり遊んだりすることがで きるように,どのような環境を用意するの か,教材研究を重ねた担任の工夫が不可欠 となる。
例えば,幼児と園外保育に出かけ,ドン グリを拾うことを楽しみ,さらに,持って 帰ったドングリを使って,どのような遊び を創造するかについては,そのクラスの子 どもの年齢や実態,興味や関心によって異 なってくる。そのために,教師はどのよう な物や用具をどの程度,準備するべきなの だろうか。幼稚園教育要領に「幼児が自ら 周囲の環境に働き掛けて様々な活動を生み 出し,それが幼児の意識や必要感,あるい は興味などによって連続性を保ちながら発 展されることを通して育てられていくもの である」とあるように,まずは,幼児が主 体的に環境にかかわるように援助すること から考えていきたい。
従来,保育環境を構成する場合,幼稚園 教諭は,子どもの予想される姿と実際の姿 をもとに,環境の再構成を繰り返す。例え ば,「ドングリを使った遊びの発展」につ いては,まず,予想される幼児の姿を想定 し,環境を構成する。そして,実際,子ど もはそこで,(一人で)関わったり(仲間 と)関わったりといった姿を見せる。そう した個と集団の両面での幼児の実際の姿を 受け,幼稚園教師は,改めて必要な環境を 構成していく。多くの場合,子どもたち同
られたので,担任は,重ねた大型積み 木に段ボールをもたれかかるようにガ ムテープで止めた。幼児らは,その様 子をじっと見ていたが,担任が,ドン グリを一つ拾って,段ボールの上から 転がすと,次々にドングリをころがし 始める。幼児らは,転がしては拾い,
また上から転がす,ということを繰り 返している。一つずつ転がす幼児もい れば,たくさんのドングリをカップに 入れて,一度にころがし,その勢いよ く転がる様子を見て楽しんでいる幼児 もいる。
教師は,幼児がこの遊びを十分楽し んだころ,平らな段ボールの中ほどに 廃材の箱を貼りつけて,「この中に入っ たら当たりよ」と,遊びに変化をつけ る。幼児たちは,ただ上から転がす,
だけでなく,箱を狙って転がるように なる。箱に入ると大喜びだが,なかな か入らないと,繰り返し転がすだけで なく,今度は,自分で空き箱を持って きて,面に貼りつけだした。また,面 の横から途中で落ちることに気付いた 幼児は,側面に別の紙を貼って,ドン グリが落ちないように壁や道を作りだ す。小さな箱を貼って,「ここは大当 たり!」と箱の大きさと難しさを考え て工夫する姿も見られる。
そのうち,大勢の幼児が次々と転が すため,転がす順番でもめたり,一斉 に転がしたため,ドングリが部屋中に 転がり,あとから部屋に入ってきた幼 児が踏んでしまったりするなどのトラ ブルが起こる。教師は,互いの思いを 代弁したり,必要に応じて環境の再構 成をしたりして,これらトラブルも共 に考えながら,幼児の育ちにつながる ように援助する。
幼児らは,次の日も,また次の日も,
・ドングリにフックねじをつけて,紐を 通し,ネックレスなどをつくる ・紙箱などを利用して,コリントゲーム
をつくる
【友達と】
・段ボールや積み木を利用して,ドング リを上から転がす遊びを繰り返す ・ドングリで作ったものを使って,お店
屋さんごっこをする
【発展して】
・牛乳パックなどを利用して,ドングリ 人形の家を作る
・ドングリに絵具をつけて,画用紙を敷 いた箱の上でころがし,絵を描く ・タンポを使って,茶色い丸をつくって
ドングリに見立て,乾いてから顔や手 足を描く
【ドングリに興味が膨らむ】
・画用紙にドングリを大きく描き,顔も かいてハサミで切り抜き,足をモール でつけて,ドングリ人形をつくるなど,
ドングリを題材として製作活動(紙芝 居づくり)
・歌「どんぐりころころ」をうたう ・ドングリの手遊びやわらべうたを楽しむ
(3)保育の実際
下線部分は「環境構成」と考える支援で あり,二重下線部分は「環境の再構成」と 考える支援である。
事例「ドングリころがし」4 歳児 10 月 園外保育に出掛けた次の日,保育室 の隅に平らな段ボール紙と大型積み木 を,中央に拾ってきたドンクリを置い ておく。
幼児らは,ひとしきりドングリを 触った後,転がして遊ぶ幼児の姿が見
さを感じたり,一つとして同じものはない こと,他の物と比べたり,調べたり,する ことで様々なそのものの特徴に気付いたり することができ,自然物に関わることで,
言葉にできないものをたくさん受け取って いると感じる。
「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接 続の在り方について(2016)」の中で,「幼 児期から児童期にかけては,学びの芽生え と自覚的な学びの両者の調和のとれた教育 を展開することが必要である」とあるよう に,小学校以降の教科の中で,ドングリを 教材として学習する前の幼児期に,さまざ まな体験を重ねることで,たくさんの学び の芽生えを育てていくことが大切である。
小学校との接続期というと,年長児の後半,
アプローチカリキュラムを考えるが,その 時期だけでなく,幼児期全般で,さまざま な体験をすることが,小学校以降の自覚的 な学びとなる。
小学校:「あきをたのしもう」
(1)単元目標と単元構想
小学校学習指導要領(平成 29 年告示)
では,生活科の内容(5)「季節の変化と 生活」,(6)「自然や物を使った遊び」に ついて次のように記述している。
(5)「季節の変化と生活」
身近な自然を観察したり,季節や地域 の行事に関わったりするなどの活動を 通して,それらの違いや特徴を見付け ることができ,自然の様子や四季の変 化,季節によって生活の様子が変わる ことに気付くとともに,それらを取り 入れ自分の生活を楽しくしようとする。
(6)「自然や物を使った遊び」
身近な自然を利用したり,身近にある 物を使ったりするなどして遊ぶ活動を 通して,遊びや遊びに使う物を工夫し 繰り返し,ドングリをころがしたり,
道を作り直したりしながら,この遊び を楽しんだ。
【考察】
予想される姿から,ダンボール紙や積み 木,廃材などを用意していたことで,幼児 の興味が途絶えることなく「ドングリころ がし」の遊びにつながった。
友達と一緒に遊ぶ中で,一人で勝手に転 がすのでなく順番に並んだり,もっと面白 くなるように工夫したりして,友達同士で 刺激を受けあいながら遊びを進めていた。
その中で,自分の思いを言葉で相手に伝え あいながら遊びを楽しむことができた。ま た,せっかく作ったものを意図的にしても そうでなくても,壊されたことなどのトラ ブルが起きるだろう。その中で,友達とか かわり,互いに折り合いを付けながら遊ぶ ことができるように見守りながら,必要に 応じて援助することが大切であると考える。
保育室の中に,常に置いてあることで,
かかわる幼児も次々と変わっていくことも 予想できる。自ら遊びにかかわることがで きるようになるためには,幼児の「やって みたい」という気持ちを大切に,長期的に 場を残しておくような環境の再構成が必要 である。
(4)実践を振り返って
ドングリという自然物を通して,「環境」
の領域から省察したが,これらの遊びを通 して,自然の中で思い切り遊ぶ姿(健康),
友達と協同して遊んだり(人間関係),や り取りしながら遊んだりする姿(言葉),
音を楽しんだり,絵を描いたりして自分の 思いをのびのびと表現する(表現)など,
すべての領域のねらいや内容から,これら の遊びを考察することもできる。
また,自然物ならではの感触のあたたか
した。
まず,第一次で,「あきみつけ」をした子 どもたちは,見つけてきたものを紹介した り,遊んだりしたいなという願いをもち,第 二次で,見つけたものでつくったり遊んだり した子どもたちは,もっと多くの人と遊んだ り,楽しんでもらったりしたいなという願いを もち,第三次で,2年生と一緒にフェスティ バルをするというものである。
(3)具体的な教師の支援(環境構成を含 む)と子どもの姿
単元目標を達成するために,①「自分の 考えをもつための支援」と,②「自分の考 えを表現し,高め合うための支援」を行っ た。第二次での支援と子どもの姿を述べる。
下線部分は「環境構成」と考える支援であ り,二重下線部分は「環境の再構成」と考 える支援である。
①自分の考えをもつための支援
○実物・写真の提示
どんぐりごまとこすり出しの実物を提示 した。これにより,子どもは,作るものの イメージをすぐにもつことができたようで ある。
○掲示資料の数や難易度を考慮
どんぐりコーナーは「マラカス」「どん ぐりロケット」「どんぐりこま」の3つ,
落ち葉コーナーは「こすりだし」「しおり」
「はりえ」「かんむり」の4つの計7つの掲 示資料を用意した。資料には絵と短いこと ばで作り方を示した。掲示資料を見ながら,
子どもたちは作りたいものをすぐに決める ことができた。
○資料の縮小版を児童の手元に準備 手元の資料では,掲示資料の写真に作成 手順の説明を文章で加えた。このことで,
作り方も手元の資料から自分で読み取って 活動する子どもが多かった。
○活動の場の設定 てつくることができ,その面白さや自
然の不思議さに気付くとともに,みん なと楽しみながら遊びを創り出そうと する。
この2つの内容と(8)「生活や出来事 の伝え合い」の内容を含む「あきをたのし もう」という単元を設定した。
(単元目標)
○ 秋になると自然の様子や自分たちの生活 の様子が変わることや,秋の自然物を 使って遊ぶ物や飾りをつくることができ る。また,友達と遊ぶ楽しさに気付くこ とができる。 (知識・技能)
○ 見つけた秋の自然物を使って,遊ぶ物や 飾りをつくったり遊び方を考えたりし て,友達と楽しく活動するとともに,し たことや思ったこと,自分なりの気付き などを表現することができる。
(思考・判断・表現)
○ 身近な秋の自然に関心をもち,体全体を 使って秋の自然と関わったり,身近な秋 の自然物を使って制作や遊びを工夫しよ うとしたりして秋の自然に親しむことが できる。(主体的に学習に取り組む態度)
(単元構想)全 23 時間
第一次 学校の周りや○○公園,○○山に
「あきみつけ」に行く …5時間 第二次 「あきみつけ」で見つけた物を紹
介し合ったり,集めた物を使って 遊んだりする …4時間 第1〜 3時 落ち葉や木の実などを使っ て遊ぶ物や飾りをつくったり,遊 んだりする (本時1/3)
第4時 振り返りをする
第三次 2年生と一緒に「フェスティバル」
をする …14 時間
(2)願いの高まりの想定
子どもの願いの高まりを次のように想定
聞いて投げる距離が長くなるようコーナー を広げた。
○ 自分の取組を友達に紹介する「おしらせ タイム」の設定
○ 振り返りの視点の提示「うまくいったよ」
「困っているよ」
自分の取組を友達に紹介する「おしらせ タイム」を設定し,振り返りの視点を提示 した。多くの子どもが自分が作ったものを お知らせしたいと自分から挙手をした。そ れぞれ「うまくいったこと」や「こまった こと」等の視点で自分の気付きを発表する ことができた。例えば,「どんぐりごまは,
つまようじを切ったらよく回りました。」や
「マラカスの中に大きいどんぐりと小さいど んぐりを入れたら音が違いました。」等の気 付きを表現することができ,一人の気付き をみんなの気付きに広げることができた。
(4)実践を振り返って
二次の2時目,3時目になると,子ども たちの活動も広がり,教室に準備していた 図書資料から自分が作りたいものを見つけ て作る子どもも現れた。数珠玉のブレス レットや指輪,貼り絵などもより多くの種 類の材料を使って作っていた。
本実践から,教師の環境構成や環境の再 構成を含む様々な支援により,子どもの活 動や体験を充実させることができることが 分かった。
8.おわりに
幼児教育と小学校教育をつなぐ「環境」
について考察した。「環境」は子どもにとっ て関わる対象であり,幼児にとっては「環 境を通して」学ぶことになる。「環境」は やがて小学校の児童にとっては「学習対象」
になっていく。子どもは身近な人々,社会 及び自然と関わり相互作用の中で「見方・
考え方」を豊かにし「深い学び」をしていく。
例えば,どんぐりコーナーでは,作るも の毎に活動場所を設定しておくことで,友 達の作る様子を見てよいところを取り入れ て作ったり,友達同士教え合ったりする姿 が見られた。
② 自分の考えを表現し,高め合うための支 援
○十分な量の素材の確保
色・大きさ・形等で種類分けをした落ち 葉やどんぐりを紙箱に分けて準備した。数 も十分な量を準備した。これは,あきみつ けをして紹介し合った後,子どもたちと一 緒に分けたものである。材料を自由に選ん だり,何度も取りに来たりする子どもの姿 が見られた。第2,3時目は子どもの使用 の様子に合わせて数を補充した。
○活動時間の確保
活動時間を確保するため,第1時目では,
どんぐりごまの材料のどんぐりはあらかじ め教師が穴を開けて用意しておいた。第3 時目以降は,どんぐりごまの作り方が分 かってきたので,自分で穴を開けるように し,穴を開けるためのキリやどんぐりを固 定するための粘土を準備した。しおり作成 の材料の台紙やリボンもあらかじめ適当な 大きさや長さで準備しておいた。みんなで 使うはさみやボンド,クーピー等の道具も それぞれのコーナーに準備しておいた。2,
3時目になるとしおりやこすり出しを作成 しようとする子どもが増えてきたので,材 料や道具の数を増やした。
○ 「かざる・ためす」ための活動環境の整備 作った作品を置く,作品の展示コーナー やどんぐりごまを回したりどんぐりロケッ トを飛ばして遊んだりするコーナーも設定 した。展示コーナーで友達の作品を見て,
自分が作っていない種類のものを作ること にした子どもの姿が見られた。どんぐりロ ケットのお試しコーナーについては,もっ と遠くから投げたいという子どもの願いを
が生まれる環境構成,ひかりのくに株式 会社
2) 厚生労働省編(2018),保育所保育指針 解説(平成 30 年3月),フレーベル館 3) 中央教育審議会(2016),幼稚園,小学校,
中学校,高等学校及び特別支援学校の学 習指導要領等の改善及び必要な方策等に ついて(答申)
4) 内閣府・文部科学省・厚生労働省(2018),
幼保連携型認定こども園教育・保育要領 解説(平成 30 年3月),フレーベル館 5) 松島のり子(2016),保育の環境と領域「環
境」の関係に関する一考察
6) 文部科学省(2018),小学校学習指導要 領(平成 29 年告示)解説生活編,東洋 館出版社
7) 文部科学省(2018),幼稚園教育要領解 説(平成 30 年3月),フレーベル館 8) 幼児期の教育と小学校教育の円滑や接続
の在り方に関する調査研究協力者会議
(2010), 幼児期の教育と小学校教育の 円滑な接続の在り方について(報告)平 成 22 年 11 月 11 日
幼稚園と小学校での「秋の自然物を使っ た遊びの実践例」を比較考察したとき,ど ちらにも「環境構成」や「環境の再構成」
といった教師の支援があること,その支援 は子どもの学びにとって重要であることが 分かる。また,本実践に限れば,教師の支 援の多さから,小学校教育での支援がより 意図的・計画的であるとみえる。幼児教育 が環境を構成し「待つ」「見守る」ことを 大切にし,子どもの様子を観察しよりよい 育ちのために環境を再構成しているのに対 して,小学校の生活科の単元目標がより具 体的で明確であり,授業時間の中で目標を 達成することが求められているためと考え られる。しかしながら,小学校教育におい ても子どもの主体性を大切にすべきである ことは言うまでもない。
「環境」の中でも最も重要な「環境」は 教師である。そのことを肝に銘じて不断の
「環境」の構成や再構成に努めていきたい。
参考・引用文献
1) 岡上直子(2017),ワクワク!ドキドキ!