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雑誌名 福井大学教育実践研究

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Academic year: 2021

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Zoomを利用した音楽劇発表の試み : 幼稚園・こど も園における表現領域への応用を見据えて

著者 梅村 憲子, 大山宮 和瑚

雑誌名 福井大学教育実践研究

号 45

ページ 119‑122

発行年 2021‑03‑26

URL http://hdl.handle.net/10098/00028649

(2)

実践報告・資料

Ⅰ.はじめに

 本稿は、福井大学において実施された2020年度幼稚 園教諭免許認定上進講習《表現領域(表現)スキルアッ プ講座》について、その実施内容を報告するものである。

 文部科学省の幼稚園教育要領(2017)に定められた 五領域中、表現は、「感じたことや考えたことを自分な りに表現することを通して,豊かな感性や表現する力 を養い、創造性を豊かにする。」(p.17)と示されている。

本講習では、表現領域(音楽)において幼児教育の現場 の先生方につけてもらいたい力として教育要領を勘案 し、楽典の再学修や演奏技術のブラッシュアップを主目 標とし、さらに音楽劇の上演により表現を包括的に取り 扱うものとした。二日間にわたる学修の最終目標は鍵盤 と歌唱の実技力のスキルアップと音楽劇『子どものため の音楽ものがたりスイミー ちいさいかしこいさかなの はなし』の制作発表である。

 当初、本講習は対面での授業実施を想定して受講者を 募った。しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大の 影響を受け、その実施方法について根本から見直さざる を得なくなる。特に、県外からの受講生の受入れの可否 や、学修内容の主軸となる歌唱での飛沫感染リスクにつ いては、早急に検討する必要があった。

 開講中止もやむなしという厳しい局面ではあったが、

受講人数の上限を20名から5名程度に縮小し、対面授 業を実施することとした。講習会場には、受講者同士、

受講者と講師の間も十分な社会的距離を確保できる音楽 実習室A(132m2)を使用する。これらは、歌唱を含む実 技指導が中心となる本講習の性質を考慮し、JCA(一般 社団法人全日本合唱連盟)が打ち出したガイドラインの 推奨事項を参考にしつつ、決定した。

 会場のレイアウトは次のように整えた。使用する電子 ピアノは、広く扇形に配置する。さらに、電子ピアノを 一台ごとにパーテーションで仕切り、2名の講師の前に もパーテーションを付置することによって、飛沫感染に よるリスク軽減を図った。(写真1)

写真1

 なお、当日は、受講者及び講師ともに検温に加えて手 洗いと手指や鍵盤の消毒を徹底し、マスク或いはフェイ スシールドの着用を必須とした。

 福井県外からの受講申込み者2名については、自宅で 講義を受けられるよう、Zoomを使用したリアルタイム の講義配信を行うこととした。実習室Aに設置されて いる42型テレビをメインモニターとして使用すること とし、モニターには出力専用のタブレットを繋げ、常時 Zoomの画面を表示させておく。対面授業受講者は、こ のモニター上でパワーポイントの資料や遠隔受講者側の 映像などを視聴し、遠隔参加者にはZoom上に資料を表 示、対面授業の様子は、下述するようにタブレットを随 時移動させ、教室内での重要な動きなどを試聴できるよ うにした。

Zoomを利用した音楽劇発表の試み

― 幼稚園・こども園における表現領域への応用を見据えて ―

福井大学教育学部 梅 村 憲 子 大阪成蹊短期大学幼児教育学科 大 山 宮和瑚

 本講習は①鍵盤と歌唱の実技力のスキルアップ、②音楽劇を短期間で仕上げ、発表するという2点の目 標を掲げて実施した。当初は対面での実施を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大防止を鑑み、

Zoomを用いた対面・遠隔の混合方式に変更した。Zoomはリモート会議用アプリケーションであるため、

発言者の音声のみしか拾えないうえ時差が生じる。そのため、本来は合奏やダンスのように同時に複数人 が音を出したり、同じ動きをする活動には適さない。しかしながら、タブレット、デスクトップPCの併 用に加えて、TV画面をモニターとして使用するなどのIT機器の活用。さらには役割分担や制作過程での 工夫等で、遠隔受講者と対面受講者の双方が一体感を持った音楽劇の発表の実施に繋げることができた。

キーワード: 表現(音楽)、遠隔授業、弾き歌い、音楽劇

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梅村 憲子,大山宮和瑚

Ⅱ.実施方法

実施日:2020年8月1日(土)〜2日(日)

    2日間全15時間

実施場所:①福井大学教育学部音楽実習室A      ②受講者自宅

実施者:梅村憲子(講師A、専門領域:声楽)

    大山宮和瑚(講師B、専門領域:ピアノ)

対象者:2020年度福井大学幼稚園教諭免許認定講習     《表現領域(音楽)スキルアップ講座》受講者 使用教材:音楽劇『子どものための音楽ものがたり ス

イミー ちいさいかしこいさかなのはなし』レ オ=レオニ作、谷川俊太郎訳、薬師神武夫作曲、

音楽之友社(2002年出版)他

 本講習は学修内容の性質上、その大部分をアクティブ ラーニング形式で実施した。実施内容は次の通りである。

(表1)

限目 オリエンテーション

歌唱・演奏のための柔軟体操

限目 弾き歌いワンポイントレッスン

3限目

楽典(基礎)

限目 楽典(応用)

発声の基礎知識

5限目

弾き歌い初見視唱ワンポイントレッスン 第

1限目

歌唱・演奏のための柔軟体操

ディスカッション:コロナ禍の音楽活動につ いて

限目 ①「スイミー」を演奏しよう

3限目

②「スイミー」を演奏しよう

限目 ③「スイミー」を演奏しよう

限目 ミニ発表会

表1 幼稚園教諭上進講習実施内容

 これらの講義の中の一部では、遠隔受講者へ配信する 映像の撮影のために、カメラが講師の動きを追う必要が ある。そこで、前述したモニターに繋いだ出力専用のタ ブレットとは別に、デスクトップ型のパソコンを1台準 備した。手持ち用のタブレットとデスクトップ型パソコ ンは、ハウリングを避けるためにその都度ミュート機能 やスピーカー音量を切り替え、講義内容や状況に応じて 使い分けることとした。

 

(1)第1日

 1日目は、音楽表現活動に必要な歌唱技術及びピアノ 演奏技術のブラッシュアップと基礎的な楽典の再学修を 目的とし、両講師による講義とマンツーマン型の個人指 導を織り交ぜて進めた。

 1時限目はオリエンテーションと、講師Aによる柔軟

体操である。遠隔受講者に講師の動きを様々な角度から 見せるため、この時限はタブレットをギャラリービュー に設定しデスクトップ型パソコンと併せて前後双方向か ら映すように使用した。

 2限目のワンポイントレッスンでは、受講者があらか じめ準備した弾き歌い曲の個人指導を行った。まず受講 者が演奏を行い、その演奏に対して講師Bが解説と指導 を行う。ここでは、タブレットのミュート機能を解除し て画面をスピーカービューに設定し、対面受講者の演奏 や講師Bの手元、あるいは姿勢などがモニターに映るよ う使用した。また、遠隔受講者の演奏時にもタブレット を用い、講師が手本を示す際などに活用した。

 3,4限目は、講師Bによる《楽典》と、講師Aによる《発 声の基礎知識》である。パワーポイントの資料を用いた 座学型講義のため、両講師ともデスクトップ型パソコン を使用した。ここでは画面共有機能を利用し、遠隔受講 者は各々が使用しているデバイス上で、対面受講者はテ レビモニターで、資料共有を行った。

 5限目の両講師による初見視唱のワンポイントアドバ イスでは、2限目と同様、ミュート機能を解除したタブ レットを手持ちにして使用した。

(2)第2日

 2日目は、受講者同士の活発な意見交換を必要とする 内容であった。この日の最終目標は、受講者による音 楽劇の発表である。しかしながら、本講習で使用した Zoomをはじめ、会議用アプリケーションの多くは、複 数の音声を同時に拾うことができないうえ時差が生じる ため、本来は同時に音を出す活動に向かない。そこで、

音楽劇の制作発表を行う2限目以降は、面接受講者と対 面受講者を分け、両グループに講師が1名ずつ付いて練 習を進めた。

 1限目は講師Aによる柔軟体操と、コロナ禍の表現領 域(音楽)の指導についての現状報告とディスカッショ ンである。ディスカッションの際はタブレットをメイン デバイスとし、ミュート機能を解除のうえ、ギャラリー ビューに設定した。なお、デスクトップ型パソコンは ミュートのうえカメラをオフにし、Wordで受講者の発 言を記録するために使用した。(写真2)

写真2  (講師Aはディスカッションのファシリテーター、

講師BはPCでディスカッションを記録している)

(4)

 2限目以降は、受講者全員による音楽劇『子どものた めの音楽ものがたりスイミーちいさい かしこいさか なの はなし』の制作と発表である。まず、受講者にそ れぞれの役割を割り振り、両講師による模範演奏を行っ た。

 対面受講者は、主に歌唱、効果音、ダンスを担当する。

一方、Zoomで起こる時差により細かなタイミングを合 わせることの難しい遠隔受講者は、ナレーション、小物 の制作を受け持つ。ただし、対面受講者と遠隔受講者の 双方が全体の流れを把握し、一体感を持った音楽劇の発 表を目指せるよう、遠隔受講者も歌唱の一部分を練習す ることとした。2グループが同時進行で練習するため、

講師Aは別室に移動し、タブレットを用いて指導した。

 4限目には、一旦、受講者全員で通し稽古を行った。遠 隔受講者が全体を把握できるよう、通し稽古の際は、タブ レットのミュート機能を解除しギャラリービューに設定。

対面受講者の正面に据える。TVのメインモニターは対面 受講者の背面配置となるように空間を使った。(写真3)

写真3

 この通し稽古の後、画面共有機能を利用して録画ビデ オを全員で視聴し、動きやタイミングの改善のためのディ スカッションを行う。(写真4)

写真4

 この際、対面受講者より、遠隔受講者もダンスなどに 参加できるアイディアが幾つか出された。

 写真3は魚たちがお互いに挨拶を交わす場面。左側 の対面参加者がモニターの中の遠隔参加者に手を振って いる。モニターの中の遠隔参加者はそれを受けて右側の 対面参加者に手を振り、右側の参加者はそれに気づいた

という大げさなリアクションを行い、さらに右側の対面 参加者に挨拶を繋いでいく。他の場面では、対面参加者 が波を表すモールを揺らし、遠隔参加者は魚や貝などの ペープサートを画面の中でそれに乗せる様に動かすな ど、遠隔参加者と対面参加者の共演は、“ ごっこ遊び ” の要素も含む、興味深い試みとなった。

Ⅲ.受講者ノート、アンケートから

 講習後に回収した受講者アンケートの自由記述には、

特に遠隔授業の感想や、実技の学びについての意見が多 くみられた。以下に代表的なものを挙げておく。

【苦手克服】

・苦手の “ 音楽 ” を楽しく学ぶことができた。

・音楽は嫌いではないが年齢を重ねるごとに苦手意識が 強くなっていたが、夏休み明けの子どもたちとの保育 が楽しみになった。

・苦手意識のあった歌唱について、呼吸を意識して、現 場で生かすことができると感じた。

【実技の学び】

・自分の癖、ボディーマッピングなどについて新しい知 識を得ることができた。

・講師が二人だったので、より専門的な知識と実践を教 えてもらえた。

・ピアノと歌、それぞれ専門の講師にアドバイスをもら えたことに、深い学びを感じている。

【リモートについて】

・リモートの講習は初めてだったが、これからの形を経 験できてよかった。

・オンラインで受講できたので周りへの感染リスクを心 配することなく良かった。

・コロナパンデミックの中、文化的な保育がやりづらい ことが大きな課題だが、問題提起する場があったこと で、他園の現状を聞くことができた。

・Zoomを使って、遠い人ともこんなに身近に出来るこ とが楽しかった。

【『音楽劇スイミー』について】

・音楽ものがたり『スイミー』実践の企画はユニークで、

とても楽しく熱く参加した。

・『スイミー』はみんなで作り上げていくのがとても楽 しく、いろんな意見が出て、“ 子どもたちもこんな感 じなのかな ” という気持ちが味わえた。

・歌うこと、演奏すること、みんなで一緒にするという 楽しさを改めて感じた。

Ⅳ.まとめ

 本講習実施方法の変更には、様々な懸案事項があった。

特に、対面受講者と遠隔受講者による音楽劇の発表につ いては、双方の時差をどのように解決するのかが最大の 課題であった。しかしながら、受講者アンケートには、

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梅村 憲子,大山宮和瑚

リモートの不便さではなく、その利点について言及した 記述が一定数見られる。これは、多くの教育現場で採用 されているZoomなどの一般的な会議用アプリケーショ ンを用いても、役割分担や演者の動きに工夫を持たせる ことで、音楽においても双方が一体となって制作発表に 取り組み、達成感を得ることが出来たことの証明になろ う。

 コロナ禍で発表会などを行う際、登園できない子ども がいる場合でも、IT機器の活用により “ 劇に参加できた ” という実感を持たせられれば、リアルとバーチャルを繋 いだ形での新しい表現活動を “ 楽しんで ” 作り上げるこ とが可能であることが示されたと言える。

 また、もう一つの目標である実技力のスキルアップに ついても、限られた時間の中ではあったが、表現活動に 生かせるとの記述があり、講習で得た学びを基に、参加 者のさらなるスキルアップを願うものである。

 2020年6月末には、YAMAHAからリモート合奏用ア プリケーションSYMCROOMがリリースされ、ほぼ時

差の無いリモート演奏が可能となった。現在のところ、

OSや使用デバイス、同時使用人数などが限定されるの が難点だが、今回行った遠隔での音楽劇発表などではも ちろんのこと、様々な表現活動で大いに活用することが できるだろう。

 今後、様々な事情で遠隔による授業実施や自宅保育の 必要性が生じたとき、本講習での取り組みが、表現活動 へのアイディアや足掛かりとなることを期待したい。

注:文中の括弧について、以下の様に記した。

引用「 」、楽曲名など『 』、科目名など《 》、発言等 “ ”

参考文献

『幼稚園教育要領』文部科学省,2017

一般社団法人全日本合唱連盟『合唱活動における 新型 コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン 第1版』

2020  https://www.jcanet.or.jp/

/JCAchorusguideline-ver1.pdf,2020年7月1日閲覧

Attempting a preschool musical performance through a zoom call - Developing practical applications for performing arts in kindergardens -

Noriko UMEMURA, Miwako OYAMA

Keywords:Expression domain(Music), Remote class, Singing with playing the piano, Drama with music

参照

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