- 95 -
訪問臨床における訪問者と学校関係者の連携に関する研究
人間教育専攻
臨床心理士養成コース
久 保 絢 子1.
問題と目的
田罵包
001)は,心理臨床の実践において,
本人自身に相談意欲がない(あるいは極めて乏 しし、)事例にどのように対応したらよいかとし
1うことは最も重要な問題のひとつであると述べ ている。そうした不登校支援に対するひとつの 手立てとして,専門家による「訪問カウンセリ
ング(名島,
1985など
)Jや「訪問面接(長坂,
1997
など
)J大学生や大判完生によって行われ る「メンタノレフレンド
Jなど,様々な名称で呼 ばれる訪問臨床活動(不登校児童・生徒の家庭 に支援者が訪問するという活動)が行われてい る。訪問臨床活動における訪問者の役割につい て,川村 (2006) は①チャム的役割,②ニュー オブジェクト的役割,(a濠庭教師的役割,④カ ウンセラー的鰐リの
4つを挙げている。神出
(2005)
は引きこもりがちな不登校児童生徒へ の家庭訪問では,適応指導教室や学校との密接 な連携を図ることが求められていると述べてお り,①学校関係者との連携,②スクールカウン セラーとの
i覇秀,③その他の機関との連携と対 象を分けてポイントをまとめている。①の学校 関係者との連携のポイントでは,担任以外の学 校関係者にもアプローチすることや生徒に寄り 添ういちばん身近な相生として,生徒と担任の 間に立って,気持ちの行き違いを取り持つこと などが挙げられている。②のスクールカウンセ ラーとの連携のポイントでは,親面接を経験し ているスクールカウンセラーと,訪問前に話し
指 導 教 員 吉 井 健 治
合い,見立てや,生徒本人冬場識のね兄を聞い て,関わりの方針を決めておくことや訪問者が,
スクールカウンセラーと生徒キ担任を繋ぐこと で,それ以降,スクールカウンセラーが学校関 係者と訪問者,学校関係者と保護者を取り持つ きっかけとなることなどが挙げられている。③ のその他の機関との連携のポイントについては,
適応指導教室や相談室,病院に行つてない生徒 を繋げるために,近隣の機関の紹介先の情報収 集が必要であるとまとめている。
平成 26年度より, Z県では訪問臨床事業の実 施要項に「関係者会議
jについて明記されるよ うになった。このことを踏まえ,訪問臨床活動 を行うにあたり,関係剃議員やスクーノレカウン セラー,保護者たちとの
2か月ごとの定期的な 関係渚会議を設けることで訪問臨床活動の資質 向上にどのように繋がるか明らかにすることを
目的とする。
2.
方法
研 究
1(質問紙調査)ω
対象臨床ン心理士を目指す大明境修士課程
1・
2年 生のうち,不登俊足童生徒に対して「訪問臨床」
活動を行った経験のある
25名(男性
11名,女 性
14名)とした。
ω
調査項目質問紙は神出
(2005)の研究結果をもとに筆
者が作成した。内容
l組連携の方法と回数
(5件法), 国 行 っ た 連 携 内 容 例 制 , 画 車 携 に
- 96 -
- 95 -
ついての良かった点,課題・問題点(自由言己主) の3項目とした。
研 究 n (事伊断究)
(1) 対象筆者が行った,不登校生徒の家庭への訪問を 行った事例を取り上げ,定期的に行った教員や スクールカウンセラーとの関係者会議に焦点を 当てた。
(2) 訪問期間
訪問 :X年9月,,‑,X年12月 計 四 回 関係者会議:X年 9月"‑'X年12月 計3回 3.
結 果
研 究
1 (質問紙調査う教員とスクーノレカウンセラーでは,訪問者は 教員と連携をとっている訪問者は25名中25名 であったが,スクールカウンセラーと連携をと っている訪問者は9名に留まった。また,連携 の内容については,教員,スクールカウンセラ ーともに事実確認射育報の交換は多くの人が十 分にできたと感じていた。
連携をして良かったこととして多く挙げられ たものは,
r
見立てのための情報が得られたJ r訪
問者と他の教負をつなぐJ
r
訪問者の心の支えと なるJ
といった内容であった。課題・問題点の 自由記述のからは,r
児童生徒の情報の伝えにく さJr
訪問者の思いや考えを伝えられないJr
話 を深められなしリなどが挙げられた。研 究 n (事研師究)
訪 問 :X年9月..‑‑....X年 12月 計 四 回 関係者会議:X年9月'"'‑'X年 12月 計3回
!頓の影響や,スクールカウンセラーが常駐して いないこと,訪問者にそれモれスーパヴァイザ ーがついていることが考えられる。こうし、った 情報交換は,お互いの気持ちをぶつけたり,意 見を言い合ったりすることに比べると,訪問者 号教員らの感情が大きく動かされるものではな いし,淡々と作業のように進められるため多く の人がやりやす功ミったのではなし、かと考えられ る。
関係者会議を行って良かったと感じる点は,
訪問者と学校関係者がひとつのチームとして,
Aと関わることができたことである。学校側はA が学校に来たいと思った時や,進学についての 学習のサポートを行い,訪問者はAの心のエネ ノレギーの充填のためのチャム的な役割を務める
といった役割分担ができたように思才オもる。
関係者会議では児童生徒のために何が必要か を常に念頴に置き,先生方と対等に向き合える 気持ちを持つことに留意する必要があるだろう。
本事例において,関係者会議が開かれるまで あまり関わりのなかった教員とスクールカウン セラーが,関係者会議の時だけでも話をするよ うになったことは大きな変化であったと考えら れる。神出
( 2 ∞ 5 )
が述べるように,関係者会 議は「スクールカウンセラーと生徒ぞ担任を繋 ぐことで,それ以降,スクールカウンセラーが 学校関係者と訪問者,学校関係者と保護者を取 り持っきっかけとなるjことが本研究でも示唆 され,関係者会議は有効で、あったと考えられる。プライバシー骨議のため内容は割愛する。 5.今後の課題
今回の調査では対象者の人数が少なく,十分 4.考察 な統計さ尚句な分析は行えなかった。そのため,
教員とスクールカウンセラーの連携の差は, 今後は対象者を増やして統計的な分析を行うこ 対象となった訪問者が行っている訪問事業の手 とが課題である。