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映像編集入門 動画を自在に操るコツ

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Academic year: 2021

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著者、出版社とも一切の責任を負いませんのでご了承ください。 本書に掲載されている会社名・製品名は一般に各社の登録商標または商標です。 本書は、「著作権法」によって、著作権等の権利が保護されている著作物です。本 書の複製権・翻訳権・上映権・譲渡権・公衆送信権(送信可能化権を含む)は著作 権者が保有しています。本書の全部または一部につき、無断で転載、複写複製、電 子的装置への入力等をされると、著作権等の権利侵害となる場合があります。また、 代行業者等の第三者によるスキャンやデジタル化は、たとえ個人や家庭内での利用 であっても著作権法上認められておりませんので、ご注意ください。 本書の無断複写は、著作権法上の制限事項を除き、禁じられています。本書の複写 複製を希望される場合は、そのつど事前に下記へ連絡して許諾を得てください。 オーム社開発部「<書名を記載>」係宛、 E-mail(kaihatu@ohmsha.co.jp)または書状、FAX(03-3293-2825)にて   

(3)

大学では 45 年にわたって、映画からビデオさらに最近のデジタル環境での動画コンテンツの 編集について教育してきました。 また、ビデオ好きのアマチュアの方々とはビデオ講座、教室、サークルでの講習、時には撮影 旅行などのお付き合いをさせていただく機会が多くありました。そのなかで、最初はビデオ編集 についてとても難しく考えていた人が、実際に経験していくなかで最後には「簡単に楽しく編集 ができた」と感じていたのがとても印象的でした。 こうした経験を生かして、「誰にでも理解できて」「役に立つ」本格的な映像編集を楽しめる本 を目指したのが本書です。 映像編集はワープロで文章を作る過程に似ています。ワープロの操作の得手不得手と文章の出 来は関係ありません。まずは文章をしっかり作れることが前提で、ワープロ操作はその後となり ます。ビデオの編集でも、しっかり映像を組み立てられることが前提で、その上に PC スキルが あるのです。 なかには編集の出来を編集ソフトのせいにする学生もいました。 上手にワープロが使えなくても良い文章が書けるように、編集ソフトの使い方があまり得意で なくても立派な映像作品を作ることができるのです。 映像編集は編集結果のイメージをどう作れるかが決め手です。 イメージを実現するためのセオリーや理論の理解 イメージを実現するための表現法や技術の習得 これらのバランスが編集ではなにより大切です。 技術の知識にこだわってしまう人も見かけます。現在のデジタルビデオ編集は高度な先端技術 によって成り立っており、アナログ時代の映画を原理から理解するようにはいきません。そのた め、編集ソフトの使い方や技術の習得ばかりを追いかけて思い通りの編集ができなくなってしま い、結局、映像編集は難しいとの結論になってしまいます。 しかし、実際に編集をしてみると驚くほど簡単に操作できることも事実です。ソフトの進歩は 編集作業をやさしくさせるために貢献しています。まずは試してみることが大切でしょう。 iii

(4)

慣れるための「コツ」を中心に解説していますので、編集中にちょっと思い出して、読み返し、 自分なりに創意工夫していってください。だんだんと映像編集の楽しさに気づくでしょう。第 3 章と第 4 章はコンテンツ制作を学ぶ学生や、本格的に編集に取り組む方を対象に解説しています。 技法ではなく原理を中心に書きましたので、基礎を学び、その中から応用できる技術を理解して ください。第 5 章は 100 年以上にもなる映像編集の歴史のなかで積み上げられた動画のつなぎ方 をまとめてみました。筆者のフィルム時代の編集が今でも役立っている経験を生かして、できる だけ具体的な記述を心がけています。 最後に、実際に操作を確認して、図版の準備に献身的な努力をしてくれた斉藤真澄君さらに、 本年度で東京工芸大学を定年を迎える私に記念碑ともいえる本の出版の機会を与えてくれたオー ム社開発部の皆様に感謝します。 2010 年 9 月 岡村 征夫 iv

(5)

第 1 章 楽しいコンテンツを編集で作るコツ

1.1

映像の編集とは ………2

1.1.1 映画のはじまり ………2 1.1.2 映像と動画 ………3 1.1.3 映像編集のはじまり ………4

1.2

歴史から学ぶ ………7

1.2.1 時間を長さでとらえるフィルム編集 ………7 1.2.2 感覚でとらえるビデオ編集 ………9 1.2.3 デジタルで新しい編集スタイル(ノンリニア編集)………12 1.2.4 ノンリニア編集の生まれる状況 ………13 1.2.5 アナログノンリニア編集 ………14 1.2.6 デジタルノンリニア編集 ………15

1.3

編集計画はコンテンツ企画の見直し ………16

1.3.1 「なるほど」とうならせる ………17 1.3.2 わかりやすく伝える ………17 1.3.3 物語性を生かして大きなシークエンスで考える ………17 1.3.4 地域のお祭りを編集しよう ………18

第 2 章 動画編集をはじめよう

2.1

動画編集をはじめる前に ………22

2.2

素材としての動画の準備 ………24

(1)編集する素材について ………24 v

(6)

(2)動画におけるカットの意味 ………26

2.3

PC 編集の操作上の注意 ………26

2.4

動画編集に必要な機器 ………27

2.4.1 カメラ ………28 2.4.2 PC ………31 2.4.3 接続ケーブル ………31 2.4.4 編集ソフト ………32

2.5

動画を取り込む ………33

2.5.1 ビデオカメラでの動画取り込み(信号で出力の場合)………34 2.5.2 ビデオカメラでの動画取り込み(AVCHD ファイル転送)………37 (1)Macintoshの場合 ………37 (2)Windowsの場合………38 2.5.3 デジタルカメラでの動画の取り込み ………38 (1)Macintoshの場合 ………39 (2)Windowsの場合………40 2.5.4 携帯電話での動画素材の取り込み ………41

2.6

動画編集ソフトを使う ………41

2.6.1 ストーリーボード編集(クリップの配置)………42 2.6.2 トランジション編集(クリップのトリミング)………43 2.6.3 タイムライン編集(総合編集)………45 2.6.4 タイトルやテロップの挿入およびクリップの画像処理(クリップの修正) …47 2.6.5 トランジション(場面転換のつなぎ)………48

2.7

OS 付属のソフトで編集 ………49

2.7.1 iMovie での編集 ………49 (1)取り込み ………49 (2)クリップのトリミング ………50 (3)プロジェクトウィンドウでの配置と調整 ………51 vi

(7)

(4)タイトル・テロップの挿入 ………51 (5)音楽とSE処理 ………52 (6)カメラ収録音の整音 ………52 (7)ワイプやディゾルブの付加 ………52 2.7.2 Movie Maker での編集 ………53 (1)取り込み ………53 (2)タイムラインへの配置 ………54 (3)タイトルやテロップの挿入 ………55 (4)MA処理 ………55 (5)エフェクトとトランジション ………55

2.8

簡易ソフトでの編集 ………56

2.8.1 Power Director 8 (Cyber Link 社) ………57

(1)キャプチャ ………57

(2)編集 ………58

(3)出力ファイル ………60

(4)ディスク ………61

2.8.2 Ulead Video Studio 12 (COREL 社) ………61

(1)プロジェクト設定、環境設定 ………62 (2)キャプチャ ………63 (3)編集 ………64 (4)エフェクト ………65 (5)オーバーレイ ………66 (6)タイトル ………66 (7)オーディオ ………66 (8)完了 ………67

2.9

本格的な映像編集ソフトの廉価版 ………67

2.9.1 EDIUS Neo 2 Booster(トムソン・カノープス社)………67

(1)プロジェクトの作成 ………68

(2)素材の取り込み ………70

(3)クリップの編集 ………70

(8)

(4)エフェクトの適用 ………71 (5)オーディオの編集 ………71 (6)タイトルの作成 ………71 (7)作品の完成 ………72 (8)作品の出力 ………72

第 3 章 より実践的な動画編集を行ってみよう

3.1

本格的編集ソフトとは ………74

3.1.1 簡易編集ソフトとの違い ………74 3.1.2 主な本格的編集ソフト ………75

3.2

編集ソフトの設定 ………76

3.2.1 ユーザ設定 ………76 3.2.2 作業効率化の設定 ………77 3.2.3 メディア設定(プロジェクト設定)………78 (1)使用する素材(カメラ)による設定 ………78 (2)PCに読み込むファイルフォーマット設定 ………78 3.2.4 オフライン編集(プロキシ編集)………79

3.3

Adobe Premiere Pro の設定 ………79

3.4

Final Cut Pro の設定………82

3.5

ビデオ信号とビデオファイル ………88

3.5.1 ビデオ信号 ………88 3.5.2 ビデオファイル ………90

3.6

各種素材と PC への取り込み ………91

3.6.1 信号による取り込み ………91 (1)アナログ映像信号 ………91 viii

(9)

(2)デジタル映像信号 ………92 3.6.2 ビデオテープ素材 ………93 3.6.3 カメラからのファイル転送、取り込み ………94 3.6.4 ビデオカメラによるファイル素材 ………95 3.6.5 HDD ………95 3.6.6 SD カード・ CF メモリ・メモリスティック ………96 3.6.7 DVD ・ BD ………96

3.6.8 Adobe Premiere Pro と Final Cut Pro の取り込み ………100

3.6.9 ジャンルによる取り込み方法 ………102 (1)ドキュメンタリーの場合………102 (2)ドラマの場合………102 (3)PVの場合 ………102

3.7

クリップの整理 ………103

3.7.1 ビンの階層化 ………103 (1)取り込みビン(デジタイズビン)………104 (2)シーンビン………105 (3)インサートカットのビン………105 (4)その他のビン………105 (5)シークエンスビン………105 3.7.2 ジャンルによる編集 ………108 (1)ドキュメンタリー………108 (2)ドラマ………108 (3)PV(プロモーションビデオ) ………109 3.7.3 クリップの表示 ………109

3.8

タイムラインでの編集 ………111

3.8.1 尺を合わせる ………111 3.8.2 トランジション ………114 3.8.3 モーションコントロール ………115 (1)スローモーション………115 (2)早送り………115 ix

(10)

(3)フリーズフレーム(ストップモーション)………115 (4)逆転(リマップコントロール)………116 3.8.4 カラー調整 ………116 3.8.5 合成 ………117

3.9

タイトル ………118

(1)編集ソフトのタイトル機能………118 (2)タイトル作成専用ソフト………119 (3)After Effectsでのタイトル制作 ………120

3.10

MA 処理 ………120

(1)カメラ音声トラック………120 (2)SEトラック ………121 (3)ナレーショントラック………121 (4)BGMトラック ………121

3.11

出力 ………122

3.11.1 DV への出力 ………122 3.11.2 HDV への出力 ………123 3.11.3 ファイルへの出力 ………123

第 4 章 ノンリニアソフトの基本操作をマスター

4.1

習うより慣れろ ………126

4.2

基本操作を身体で覚える ………127

4.3

基本操作手順 ………128

4.3.1 Premiere を用いたトランジション編集(ソースモニタでの編集)…128 4.3.2 タイムラインでの編集 ………130 4.3.3 Soundbooth での音声処理 ………133 x

(11)

4.3.4 After Effects でのタイトル制作 ………136 4.3.5 After Effects での合成 ………139

第 5 章 映像編集の理論

5.1

編集の意義 ………146

5.1.1 編集の目的 ………146 (1)見ている情景をそのまま伝えたい………146 (2)わかりやすく伝えたい………147 (3)楽しく、面白く見せる………148 (4)映像だから伝えられる内容を膨らませる………149 5.1.2 編集の基本 ………150 (1)つながる、つながらないの問題………150 (2)編集経験の大切さ………152 (3)編集手法の変化………153 5.1.3 ダイナミックな編集を心掛ける ………154

5.2

カットを組み合わせる ………155

5.2.1 サイズを変化させる ………155 (1)大ロングショット………156 (2)ロングショット………157 (3)ミドルショット………157 (4)アップショット………158 5.2.2 アングルを変える ………158 5.2.3 カットの内容を整理する ………159 5.2.4 ファーストシーンとラストシーン(導入と余韻) ………160 5.2.5 クライマックスの表現 ………161 5.2.6 カットテンポとリズム ………162 (1)2秒以下のカット(短いカット) ………163 (2)2∼20秒のカット(標準のカット) ………164 (3)20秒以上(長いカット) ………164 xi

(12)

5.2.7 切り返しとどんでん ………165 5.2.8 アクションつなぎ(クロスカッティング) ………167 5.2.9 カットバック(パラレルカッティング) ………169 5.2.10 インサートカットによる時間と空間の表現 ………171 5.2.11 リアクションカット ………172 5.2.12 映像の象徴性 ………173 5.2.13 縦の編集と横の編集 ………173 5.2.14 モンタージュ論 ………174

5.3

シーンの形成 ………176

5.3.1 同一シーンでの連続性 ………176 5.3.2 位置の一致 ………177 5.3.3 目線の一致 ………178 (1)カメラ目線………178 (2)画面内への目線………178 (3)画面外への目線………178 5.3.4 方向性の統一(イマジナリーライン) ………179 (1)全体での方向性の一致………179 (2)連続性を保つ方向性の一致………180 5.3.5 エスタブリッシュメントショット ………180

5.4

できあがったシーンやシークエンスを組み合わせる ………182

5.4.1 時間の流れに沿った配置 ………182 5.4.2 時間の順序を入れ替えることによる強調 ………183 5.4.3 独立したシークエンスを組み合わせて大きなシークエンスへ ………183 5.4.4 起承転結でまとめる ………184

5.5

トランジション ………185

5.5.1 ディゾルブ(オーバーラップ) ………185 5.5.2 ワイプ ………186 5.5.3 フェードアウト/イン(FO/FI)………187 5.5.4 フレームアウト/イン ………188 xii

(13)

5.5.5 インサートカット ………189 5.5.6 音で場面変換 ………189 5.5.7 モーフィング ………190

5.6

音の編集(MA 編集) ………190

5.6.1 継続する時間にテンポを与える ………191 5.6.2 音による劇的効果を高める ………191 5.6.3 「嘘っぽい音」と「自然な音」 ………192 5.6.4 トランジション効果 ………193 (1)音を先行させる………193 (2)画面外の音でつなぐ………193 (3)音に注意を引かせて、カットを変える………194 5.6.5 音による省略と暗示 ………194 5.6.6 音による感情表現 ………194

5.7

ナレーション ………194

5.8

音楽(BGM)………195

5.9

オーディオスイートニング ………196

5.10

タイトルとテロップ ………197

5.10.1 タイトル ………197 5.10.2 テロップ ………198

付録 編集に必要なデータ形式・用語解説

付 1

編集に必要なデータ形式 ………200

1 カメラに記録されるファイル形式 ………200 2 カメラに記録されるフォーマット形式 ………200 3 カメラに記録されるフレームレート ………201 4 PC に読み込める代表的動画のファイル形式 ………201 xiii

(14)

5 PC に読み込める代表的静止画ファイル形式 ………202 6 PC に読み込める代表的な音声(音楽)素材ファイル形式 ………202 7 転送レートと録画時間の目安 ………202 8 アスペクト比と変換方式 ………203 9 編集に使用されるソフト ………204

付 2

用語解説 ………205

索 引 ………207

コラム

★ PC アレルギーを治す ………13 ★カット・シーン・シークエンス ………20 ★ファイルとフォルダ ………27 ★ SD と HD(スタンダードとハイビジョン) ………30 ★タイムコード ………36 ★ジョグシャトル ………45 ★圧縮と転送レート ………72 ★データ量を計算する ………89 ★ピクセル ………97 ★ MPEG 圧縮 ………98 ★ MPEG 圧縮の原理 ………98 ★フレーム内圧縮 ………99 ★用語について ………107 ★ AB ロール編集 ………113 ★便利なタイムライン編集 ………113 ★音声調整 ………135 ★ Photoshop でタイトルを作る ………136 ★映画における編集史 ………154 ★エイゼンシュテインと歌舞伎 ………175 xiv

(15)

楽しいコンテンツを編集で作るコツ

(16)

1.1

映像の編集とは

テクノロジの進歩は動画コンテンツの新しい形を作り続けてきました。これらの進歩により、 現在、動画コンテンツはさまざまな形で存在しています。そこで、動画コンテンツの原点である 映画編集を支えたテクノロジを振り返ってみましょう。

1.1.1

映画のはじまり

1839 年に映画を成立させる要素の 1 つである写真が発明されます。写真は銀板・紙・ガラス・ フィルムなどで作られた板(シート)に 1 カット 1 枚ずつ記録されていましたが、1888 年にジョ ージ・イーストマンは帯状のフィルムを発売し、1 本のフィルムに複数の画像の記録を可能にし ました。このフィルムが装填されたカメラは「コダック」と名付けられ、撮影が終了したあと、 カメラごとコダック社に送ると現像・プリントされ、新しいフィルムを装填して送り返してくれ るものでした。 翌年の 1889 年にはエジソン社のディクソンが映画用フィルムをイーストマン社に発注し、「キ ネトスコープ」が発明されました。ロールフィルム端にパーフォレーションと呼ばれるフィルム 駆動用の穴が開けられ、今日の映画フィルムとほぼ同じ規格のフィルムが生まれ、映画が登場し たのです。映画はロールフィルムに連続して記録された画像(コマ)を、撮影時と同じ速度で連 続的に再生することによって動画表現を可能にしています。 1894 年にルミエール兄弟が『シネマトグラフィー』を発表し、今日の上映形態での映画の発 明となっています。 ■ 2

(17)

映画の発明者の 1 人であるルミエール兄弟の初期の作品『列車の到着』は 1 カットで撮影され た作品で編集されていません。映画が発明された時代は「写真が動いた」とそれだけで感動する 状況が想定でき、1 カットの映画がたくさん作られ(およそ数万本)、今も残されています。

1.1.2

映像と動画

現在、「映像」という言葉と「動画」という言葉が使われています。「映像」はしっかり編集さ れた作品に対して使われ、「動画」は動く写真として 1 カットの映像に対して使われている場合 が多いようです。 デジタルカメラや携帯電話で撮影された動画は、ファイル保存されて再生されます。デジタル な環境(点的環境)で記録された動画は、ランダムにアクセスして再生することができます。 映像は、映像編集ソフトによって時間軸にカットを配置する機能が中心になっていますが、動 画では、例えばワープロソフトの Word 画面に動画をレイアウトすることなども動画編集と考え られます。動く写真によるアルバムは 2 次元平面での編集であり、時間軸に基づく映像編集とは 違った効果を生むでしょう。これは、動画をデジタルな環境でとらえることによって可能になり ます。 ■ ▲ 図 1-1 映画フィルムとビデオテープフォーマット フィルムは見る・触る感覚で編集する。ビデオテープは再生しないと直接画面を見ることがで きない。VTRの音声記録方式はVTRの方式により異なる。 3

(18)

1.1.3

映像編集のはじまり

一方、映像のはじまりとなった映画は、長いフィルムに記録されたリニア環境(線的な環境) に記録されます。フィルムでは撮影後に編集しなくても、続けて撮影したフィルムを上映すると 連続してショットが上映され、そこでは複数ショットが編集された状態になります。エジソン社 の作品『スコットランドの女王メアリーの処刑』では、カメラ内モンタージュといわれ、首をは ねられるときにダミーを使用する作品が残っています。これが、映像編集のはじまりといえるか もしれません。1 本のフィルムを数回に分けて撮影した場合に、カットとカットが時間の流れの なかで自然に融合されて上映されることを発見し、積極的にフィルムを切ってつなぐことに発展 し、創造的な編集のコンセプトが生まれたといえます。 初期のフィルムベースはセルロイドが使用されており、溶剤に溶けやすく加工しやすい素材で すので接合は容易でした。さらにセルロイドフィルムは破損しやすく、弱かったので上映中に切 ■ ▲ 図 1-2 動画のアルバム ワープロソフトを使って動画を平面的にレイアウト。時間軸への配置ではない動画編集といえる。 4

(19)

断してしまうことも多かったことでしょう。こうした状況でフィルム編集の基本であるカット (切る)&スプライス(接合する)のテクノロジが自然に生まれてきたことは容易に想像できま す。しかし、こうした破損と修復といった消極的な面が編集の本質ではありません。カット&ス プライスによるフィルム編集は映像編集のはじまりであり、すべてともいえるでしょう。 実際に異なるカットを連続して上映しカットのつながりを確認すると、カットとカットの連続 性に以下の 3 つの状態が発生していることに気づくでしょう。 ●連続性を保ち、かつ自然なつながりで再生される ・同じシーン(撮影場所)で時間の連続性を保ちながら撮影される。 ・複数のカメラで同時に撮影されたカットを時間軸に沿ってつなぐ場合(クロスカッティング)。 ・同じシーンでサイズやアングル、カメラポジションを大きく変化させて編集された場合。 ●連続性はないが自然なつながりで再生される ・異なるシーンで撮影されたカットは、時間の連続はないが自然につながって見える。 ・異なるカットが新しい意味を持ったカットのまとまりを作る。 ・連続する音声によってカットが連続して見える。 ●つながりに違和感が生じる場合 ・時間や空間の連続性が途切れた編集。例えば、ジャンプカットと呼ばれるつなぎで、同じ カメラポジションで撮影途中にカメラを止めたあとに撮影を続けると、カメラを止めてい た時間がジャンプした感覚を生み、違和感が生じます。ジャンプカットはコマ止めと呼ば れ、トリック撮影に使われます。 この 3 種類のつながり感覚を磨くことは編集する上で最初のコツとなります。ここで大切なこ とは自分の感覚を信じることで、セオリーはありません。「うまくつながった」と「ちょっとぎ くしゃくしたつなぎ」のこだわりが持てることで編集は上達します。 編集の格言として 2 つの言葉があります。 「似たカットはつながらない」 カットとカットはぶつけ合うことでつながります。似たカットでは、共通点が多くなる結果カ ットの変化が弱まり、つながりがわるくなってしまいます。大きくアングルやサイズを変えるこ とでカットのつながりがよくなります。編集は本来「カットとカットはつながる原則」で成り立 っているといえますので自由に編集できます。 「ロングショットはアップショットを要求し、アップショットはロングショットを要求する」 ロングショットを見せられているとき、観客はもっと細部の状況を見たいと欲し、アップショ 5

(20)

ットでは周囲の状況を求めます。カットとカットは補いながら大きなまとまり(シークエンス) を作っていきます。 この 2 つの言葉は映像編集のもっとも基礎的な要素を表現しているのです。 カットとカットのつながり関係を理解するために「5 ∼ 10 カットのノー編集撮影」の課題を課 し、撮影前にきちんとカット割りをして、できれば撮影コンテを作成した後に撮影するトレーニ ングが有効です。当然のことですが、映像編集の素材となるカットの撮影されたかによって編集 は大きな影響を受けます。編集しやすい素材と編集しづらい素材が存在するのです。編集を学ぶ ことで撮影も勉強できますし、撮影のときに編集をイメージすることもできるようになります。 ▲ 図 1-3 撮影・演出コンテ 撮影前にカットを組み立てる(編集する)。頭のなかでコンテ作りをする(編集する)練習となる。 6

(21)

1.2

歴史から学ぶ

初期の映画は 1 ショットだけの作品でしたが、1 ショットによる表現は決して未熟な表現では なく、映像編集の基本ともいえます。アルフレッド・ヒッチコックは『ロープ』で 1 ショット作 品を試みています。また、映像作りに編集が絶対に必要なわけではありません。撮影したままの 時間は映像で表現されている時間と上映時間が一致します。一致することはその場にいる感覚を 作り出しますので、臨場感が生まれてよい結果となる場合もあります。テレビのスポーツ生中継 番組がよい例で、編集の原則で考えるとダイジェスト版よりつまらないカットが多くなりますが、 迫力や臨場感が高まり番組としては面白くなります。さらに、編集をすれば必ずよい結果を生む わけではなく、編集によってわるくなるケースもあるので注意しましょう。 映画からはじまる映像の歴史はデジタル時代を迎えましたが、編集をビデオ編集に限定して独 立させて学ぶだけではなく、歴史から総合的に学ぶことが大切です。ここでは、映画編集からビ デオ編集へ、そしてデジタルノンリニア編集の歴史のなかで映像編集がどのように変遷したかを 学んでみましょう。

1.2.1

時間を長さでとらえるフィルム編集

我々の「時間」と「長さ」の感覚でいえば、時間は曖昧な要素が多く、長さは正確です。170 秒と 170cm を比較すれば明らかでしょう。身近な人の身長は 5cm 位の誤差であてられますが、 170 秒を 5 秒の誤差であてることは難しいのです。映画の世界ではいまだに「尺」という長さの 単位で映像の時間を呼んでいます。映画の編集者にとってフィルムの長さは時間そのものになっ ているのです。16mm 映画の編集では 24 コマが 1 秒、40 コマが 1 フィート、3 フィートが 5 秒の簡 単な換算数値で自由に長さと時間の空間を行き来して編集しています。初期のビデオテープには テープの長さがパッケージに表示されていましたが、編集上あまり意味のない数値です。 動画は、静止画を連続して見せることによって実現しています。映画では 24 コマの静止画が 1 秒間で上映され、フィルムは 24 コマ分の長さを持ちます。今日のデジタル時代では動画にこう した具体的なフレームやコマのイメージを持つことが難しくなりましたが、長いフィルムのコマ を自分の目で確認しながら時間を長さのイメージに変え、はさみで実際にフィルムを切る作業の フィルム編集から学ぶことは多くあります。具体的にフィルムを手にして編集をしている作業の ■ 7

(22)

イメージを持つことが映像編集では大切です。 ●カット&スプライス フィルム編集ではフィルムを切るはさみと切断されたフィルムを接合するスプライサによって 作業が進められます(カット&スプライス)。フィルムは実際に手で持つことができ、目で見る ことができます。一方、デジタル編集はバーチャル編集ですので、ソフト上で動画をカットして も実際の動画ファイルはカットされません。編集された結果をプレビューするのが編集ソフトの 役割なのです。 フィルム編集では撮影されたフィルムロールを切断してクリップを作成し、ビン(フィルムバ スケット)に吊します。 ▲ 図 1-4 フィルム編集の手順 編集作業が具体的にイメージしやすい。ノンリニアのバーチャル編集でもフィルム編集の手順 をイメージするとよい。 8

(23)

ビンは複数用意され、編集者の意図によって分類され、編集しやすい環境を作ります。作業と しては、何本かのクリップを左手に持ち、コマを確認しながらクリップの選択をします。考える ときは一時クリップを首にかけて次のクリップを探すこともあります。クリップの時間(長さ) を視覚で把握することができるので、編集されたフィルムロールの側面でスプライスされた箇所 の配置を確認することができ、編集のリズムを感じることができたといわれています。 このように、自分のやりたい方法でカット&スプライスするのがフィルム編集の流儀であり、 編集者の経験が生かされる世界といえます。 ●クリップ編集 フィルム編集室には多くのフィルムの断片であるクリップが吊り下げられ、編集者のイメージ に従って自由に選択され、吊されたクリップ群を見ながら編集をイメージしています。熟練した 編集者は、クリップをビンに吊しながらクリップの内容と位置を記憶し、編集室自体が記憶する 脳の一部となり、求めるカットは即座に見つけることが可能となります。 クリップ編集を一言で表現するとしたら完成イメージに向かって「分解して再構成」(カッ ト&スプライス)の繰り返しといえます。この映像編集方法は部品を吟味しながら組み立てる作 業で、論理的な方法ともいえます。

1.2.2

感覚でとらえるビデオ編集

テレビ放送は 1939 年にドイツ、1937 年にイギリス、1939 年にアメリカで開始されました。日 本では 1953 年にスタートしました。当時、テレビは生放送が原則で、フィルムで制作された番 組をテレシネで TV に変換して放送していました。ビデオ記録はキネレコと呼ばれるフィルムで ■ ▲ 図 1-5 編集したフィルムロール コアに巻かれた編集済みフィルムでスプライスした箇所を確認できる。 9

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の記録が主体となっていました。 世界中ではさまざまな方式でテレビ画像を直接記録する方法が発表されましたが、1956 年に NAB(アメリカで開かれている映像機材展)で発表されたアンペックス社の VR-1000 が実用的 な VTR(ビデオテープレコーダ)のはじまりになっています。この 2 インチ幅のテープを使用し た VTR は、ビデオ編集についてはあまり考えられていませんでした。そこで、初期のビデオ編 集ではフィルム編集をそのまま踏襲してビデオテープを実際にカット&スプライスする編集が行 われました。フィルムと違い画像を確認できないビデオテープでの編集はたいへん困難な作業で あり、必要最小限の状況で、応急的な編集に使用されました。これはカット&スプライスでも創 造性をもったフィルム編集とはまったく別の意味での編集といえるでしょう。 1960 年代末から VTR コントロール技術が進み、ビデオテープを部分的に選択してコピーする ことによって編集するビデオ電子編集がはじまります。最初はビデオテープに記録された CTL 信号(コントロール信号)を VTR が読み取り、キュー信号(マークする信号)による電子編集 でした。それでも電子編集の普及によってビデオ編集は本格化し、リニア編集と呼ばれるフィル ム編集に対抗したビデオ編集のコンセプトが生まれてきます。 1970 年代になるとタイムコード規格が承認され、ビデオ編集のコンセプトが広がります。タ イムコードによってプレ編集であるオフライン編集が生まれ、バーチャル編集の基礎概念が確立 してきます。 1980 年頃に登場したデジタルビデオエフェクト(DVE)などのオンライン周辺機器はその後 も発展し続け、オンライン編集の技術を高度なものにしていきます。フィルム編集では想像もで ▲ 図 1-6 ビデオテープでのリニア編集 コントローラで 2 台(プレーヤとレコーダ)の VTR を操作。必要な長さのカットをコピーす る。再生機は複数になり、エフェクトも加えられるようになる。 10

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きなかったような特殊効果をリアルタイムで確認できる編集がビデオ編集で可能になり、ビデオ 編集の創造性が広がっていきました。 ビデオテープ時代(リニア編集時代)のビデオ編集室では編集者の隣にいるディレクターがプ レビューされる画面にイン/アウト点を指示することで編集が進められます。フィルム編集が静 的な作業なのに対してビデオ編集は動的な作業となります。イン/アウト点の指示はたいていデ ィレクターの指の音で行われ、編集箇所は頻繁にプレビューされ確認されます。ビデオ編集は、 プレビューする時間の流れのなかでカットとカットのつながりを確認して編集するトランジッシ ョン編集(つながりを確認する編集)が基本です。フィルム編集の切断したクリップを一度頭の なかで編集あがりのイメージを組み立ててから編集するクリップ編集と対比されます。 トランジッション編集とクリップ編集の違いを列記すると下記のようになり、それぞれが長所 と短所を持っています。 ●トランジッション編集とクリップ編集の違い ・感覚的編集:トランジッション編集は時間の概念を時間のままで感覚的に編集します。ク リップ編集は時間を長さに置き換え、論理的にクリップを分析して再構成します。 ・素材クリップのトータルな把握が難しい:ビデオ編集は非破壊編集です。素材の量が多い 場合、使用済み素材と未使用素材は素材テープにそのまま残りますので素材の確認作業で 再びすべての素材をプレビューすることになります。素材テープのプレビューには時間が かかるため素材の見落としが発生します。 フィルム編集の場合、使用しなかったクリップのみがビンに残っています。クリップを手 に取って画面を確認するだけで使える未使用素材が簡単に発見できます。 ・部分のイメージを拡大する編集:トランジッション編集は番組全体のイメージでクリップ を選択するより、クリップのつながりや流れで編集を積み重ね、全体に広げる編集といえ ます。 ・破壊編集と非破壊編集:ビデオ編集は非破壊編集なので編集中に何度でもやり直しができ ます。一方、フィルム編集は実際のフィルムを切断する破壊型の編集方法なので、切った フィルムを何度も戻す作業はビデオ編集に比べ面倒な作業となります。 ・頭からつなぐビデオ編集: VTR を使用したリニア編集時代のビデオ編集は編集終了後の修 正の難しさが問題になりました。ビデオ編集では中間のカットを 5 秒短くする修正では、そ れ以降の編集のやり直しになることもありましたが、フィルム編集では簡単な作業です。 ビデオ編集は仕上がりの時間(尺)に向けて編集が進められるのに対して、フィルム編集 は長めの尺で作り、少しずつ尺を詰めて完成の尺に合わせる方法がとられます。 11

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1.2.3

デジタルで新しい編集スタイル(ノンリニア編集)

こうした映画やビデオの編集の歴史を受けてノンリニア編集が生まれますが、ノンリニア編集 のコンセプトは次のようになります。 ・ランダムアクセス(クリップとタイムラインの任意のポイントへの)による操作ができます。 ・最初からの順序通り編集しなければならない、さらに中間のクリップの長さの修正が難しいリ ニア編集の欠点をなくしています。 ・ UI(ユーザインタフェース)のアイコン採用で、フィルム編集者やビデオ編集者が普段使用 していた機材操作を踏襲したときに違和感ない編集室がデスクトップ上に再現されています。 ・ビデオ信号をデジタル信号に変換して取り込むことによって、デジタルエフェクト処理が容易 になります。 PC(パソコン)の編集ソフトを用いるノンリニア編集は、フィルム編集とビデオ編集の利点 と欠点を精査した上で開発されており、素材のプレビューウィンドウ(イン/アウト設定)は ビデオ編集の感覚的な判断のよさを踏襲しており、タイムラインでの編集はフィルムのクリッ プ編集のよさを実現しています。さらにデジタル技術はクリップの文字情報(ログデータ)な どを統合・検索することが可能となり、新しい編集スタイルを確立させています。 ▲ 図 1-7 ノンリニア編集画面(iMovie) 素材のカット/プレビュー画面/編集されたタイムラインの3つのウィンドウで構成されている。 ■ 12

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ノンリニア編集では、簡単なカット編集からはじめると動画編集を楽しむことができるでしょ う。まずは簡単なカット編集を覚え、経験を積むことで編集ソフトの機能を 1 つひとつ理解し、 使いこなし、高度な編集作業ができるようになります。ノンリニア編集ソフトは決してやさしい ソフトではありませんが、ソフトの全体的な機能を理解しなければ扱えないわけではないので、 やさしい操作から段階的に理解する気持ちで経験を積むことが肝心です。 PCアレルギーを治す ビデオ編集はPC作業になりますが、PC操作が苦手な人も少なくないでしょう。PCは ① 演算(計算する部分でPCはかつて計算機と呼ばれていました。今は「考える」パートです) ② 記憶(データを保管する部分、計算をするときのメモ部分です) ③ 制御(キーボードや画面、VTRやカメラなどをコントロールする部分です) の3つの機能を ① 選択 ② 命令 の2つの操作で処理する機械です。 つまり、PCはワープロになったり、ビデオ編集機になったりする万能機(チューリングマシン)で す。 WindowsやMacintoshのOSは同じ結果のための操作方法を3つ以上用意しています。 例えばファイルを開いてなかを見たいときは、 ① ファイルをクリックで選択→画面の上にあるコマンドバーで開く(命令)を選択。 ② ファイルをダブルクリック。 ③ ファイルを選択後コントロールキー+O(Win)、コマンドキー+O(Mac)(ショートカット)。 の 3 つの方法があります。①から③になるに従い慣れた使い方になります。最初は①の方法しかな いと考えることもPCに慣れるコツかもしれません。 どの方法で操作するかは使用者の自由で PC に慣れてくるとマニュアルを読まなくても勘で操作で きるようになります。「どの方法が正解?」という疑問を持たなくなることで PC 操作に慣れてきま す。「操作方法は1つ」とか「操作を間違えたらどうしよう」といった考え方は捨てましょう。 操作のやり直しはコントロールキー+ Z(Win)、コマンドキー+ Z(Mac)のショートカットで簡単 にできますし、誤操作でPCは壊れません。

1.2.4

ノンリニア編集の生まれる状況

フィルム編集ではできなかったトランジッションや特殊効果・合成の確認や非破壊作業による 作業の効率化などがビデオ編集では可能になり、創造性が確立していきます。しかし、ビデオ編 集はリニア編集のため編集の済んだカットの入れ替えやトリミングにはたいへんな労力が必要と ■ 13

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されます。フィルム編集のように試写が済んで、「あのカットを詰めて」といった指示や規定時 間内に作品を収めるために全体のカットを短めにするなど、フィルムでは日常的であった作業も ビデオ編集ではタブーな作業になってしまいました。ビデオ編集は感覚的なイン・アウトの指示 で進行させる作業、フィルム編集はシークエンスロールの確認と調整、すなわちカットをシーク エンスへ発展させ、さらにシークエンスを作品に組み立てる作業との分離が進んでいきます。 作業部分の確認ではビデオ編集は有利ですが、作品全体の構成を検討するにはフィルム編集の ほうが有利になる傾向が進みます。 こうして、同じ映像を編集する作業でありながらフィルム編集とビデオ編集は違った土俵での 評価が下されるようになってしまいましたが、この大きな要因としてノンリニア編集とリニア編 集の相違があげられます。 こうした隙間を埋め、ビデオ編集とフィルム編集のコンセプトを重ね持つテクノロジがデジタ ルノンリニア編集のコンセプトとなります。さらにノンリニア編集はビデオとフィルムという異 なるメディアの統合化にも貢献しています。

1.2.5

アナログノンリニア編集

「フィルム編集を、フィルムという特殊な素材を扱う職人的な技術を伴わない無制約の自 由なフィールドで編集をしたい」 「想像で判断するのではなく、実際に編集された映像を常に確認したい」 「変更や特殊効果などの作業結果を待たずに確認したい」 こうした要求が特にアメリカの映画業界で強くおこりました。これらの要求のいくつかはビデ オ編集によって可能でしたが、ビデオ編集にはリニア編集であるための致命的な問題を抱えてお り、フィルムをビデオに変換して編集することだけでは解決できません。 そこで、フィルム編集とビデオ編集のよさを併せ持った方法として、アナログノンリニア編集 が導入されました。タイムコードによるフレームの特定とコンピュータによる VTR 制御の技術 は確立していましたので、多数の VTR を制御することによって、編集された結果を確認する方 法が考えられたのです。 簡単に原理を説明しますと、例えば 30 台の VTR に同じ素材テープ(2 時間まで)をセットし て、それぞれの VTR はコンピュータの指示によって、編集で指定した一連のカットの頭出しを 完了させた状態ですぐに再生できるように待機させておきます(最初の VTR には 1 番目のカッ ト、次の VTR には 2 番目のカットといった状態で準備します)。30 台の VTR を編集の結果に合 ■ 14

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わせてコンピュータの指示によって次々にスタートさせることによって、30 カットまでのカッ ト編集結果を連続して見ることができます。この結果を録画することで編集結果を記録すること はできますが、実際の使用では編集結果のプレビュー用として、フィルム編集を支援するツール として使用されました(タイムコードのリストをフィルムのエッジナンバーに変換することで最 終的に撮影されたネガフィルムを編集するネガカットリストを作成したのです)。 もちろん、最初のカット再生した VTR はプレビュー中に 31 カット目の頭出しができますので、 VTR の台数以上のカットのシークエンスを編集することが可能となります。 編集者は、タイムコードでカットのイン・アウトと再生順序を決め、コンピュータに指示する だけです。実際には編集されないバーチャル編集ですが、編集結果だけはプレビューで確認でき ます。編集結果を見て、変更が生じてもリニア編集の制約なしに作業できます。操作はタイムコ ードという数値のデータをコントロールするだけですので、コンピュータにはストレスがかかり ません。これで、編集者やディレクター、プロデューサーは「もし、○○○○だったら」を視覚 的に確かめながら作業ができるようになりました。こうした VTR を使用したアナログノンリニ ア編集機は 1984 年に登場しましたが、その後すぐにレーザディスクをベースにした編集機が発 表されます。レーザディスクのアクセス速度は速いため頭出しが容易になり、二十数台の機械で 一般的なテレビ番組の編集が編集可能になっています。ちなみに、日本では 1 台も使用されるこ とはありませんでした。感覚的・実証主義的な編集姿勢と観念的・概念的な編集姿勢の違いがみ られます。しかし、結果そのものを感覚的に判断する編集スタイルはこれからの映像編集の基本 的な編集スタイルとなるでしょう。

1.2.6

デジタルノンリニア編集

1970 年に CMX600 というデジタルノンリニア編集機が発表され、これが最初のデジタルノン リニア編集機といえるでしょう。しかし、当時のコンピュータ技術はビデオ情報を扱うには十分 ではなく、プレビューしても極端にわるい画質での編集しかできず、普及するには至りませんで した。しかし、ここで取り入れられた今日のノンリニア編集の元になるグラフィックアイコンに よるユーザインタフェースは、前述のアナログノンリニア編集へと受け継がれていきます。 1988 年になりますと、高画質の映像をコンピュータストレージ(ハードディスクなど)に取 り込む形式の本格的ノンリニア編集機が登場します。 その後のデジタルノンリニア編集機の改良は、コンピュータの能力の進展に対応する形で進め られます。その流れは大きく 2 つに分けられます。 1 つは非圧縮のデジタルビデオ信号を扱う流れであり、ビデオ信号を処理するワークステーシ ■ 15

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ョンの構築になります。ビデオ機器開発の延長上に存在するこれらの機種はノンリニア編集機の メリットとデジタルビデオ信号によるビデオ表現の多彩さ(DVE やペイントボックスの延長) の追求となります。具体的にはオンライン編集室の統合化の実現が開発の目標となりました。非 圧縮のビデオ信号の情報量は大きく、当然それを扱う機器の価格は高価なものになりますが、オ ンライン編集室の設備自体が高価なものであり、ビデオ制作の業界では十分受け入れられるもの でした。 もう 1 つの流れは、圧縮されたビデオ信号を対象としたデジタルノンリニア編集です。この流 れの原点はワードプロセッサ(ワープロ)に見いだせます。文字情報を自由に扱うワープロの魅 力は広く認知され、コンピュータ能力の向上により画像情報も取り込んだ DTP(デスクトップ パブリシング)ソフトに発展していきます。ワープロも DTP ソフトもノンリニア編集ソフトも 基本的なソフトウェア機能では共通しています。この 3 者を分けているものは扱っているメディ アの情報量の違いでしょう。 現時点では、文字情報は PC にとって軽い情報となっています。静止画像情報は決して軽い情 報ではありませんが PC の性能の不足を感じるほどの重さではありません。ビデオの情報はやや 重いデータといった位置づけがされてきましたが、現在は通常の PC で十分処理できる情報量と なってきています。また、インターネット環境もブロードバンド化が進み動画(ビデオコンテン ツ)の配信がはじまっています。 PC で動画を扱えるようにするための 1 つの方法として、デジタル圧縮技術があります。初期 の PC によるノンリニア編集は圧縮率の高い状態でしか扱えませんでした。圧縮率は当然画質に 影響してきます。初期の圧縮されたビデオは小さな画面、ぎこちない動き、不鮮明な画質でした。 しかし、最近になって圧縮技術は大幅に改善され、非圧縮画像と比較しても遜色のない画質にま で高められています。

1.3

編集計画はコンテンツ企画の見直し

編集する前に編集後の全体像をイメージすることは大切です。本来は作品を企画する時点での 問題とされがちですが、撮影された素材映像をよく見て編集計画を立てることが必要で、編集に よって新たな作品を創造する姿勢が編集を成功させる第一歩となります。 編集は自由な発想で取り組むことが大切なのです。実際、編集によってすばらしい作品に生ま 16

参照

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