技術ノート
大麦の配合割合が夏季の肥育豚の枝肉成績と
肉質成績に及ぼす影響
脇屋裕一郎・大曲秀明・卜部大輔・河原弘文・宮崎秀雄*・
明石真幸*・永渕成樹・松本光史**
佐賀県畜産試験場,佐賀県武雄市山内町宮野 23242-2,849-2305 *佐賀県茶業試験場,佐賀県嬉野市嬉野町下野丙 1870-5,843-0302 **(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター, 熊本県合志市須屋 2421,861-1192 (2012 年 6 月 28 日受付,2012 年 8 月 29 日受理) ───────────────────────── 緒 言 トウモロコシを主体とした輸入穀物価格の高騰 から,地域で生産,確保できる自給飼料を利用し た飼料体系への変換が求められているが,我が国 の畜産業は,大規模化等に伴い輸入飼料に依存し た飼養体系を行ってきた結果,穀物等の濃厚飼料 の自給率は 11% にとどまっている(農林水産省, 2012)。 また,地域で確保できる飼料として,食品廃棄 物を地域未利用資源として利用する取り組みが盛 んに行われており,飼料価格の高騰対策と併せ て,経営安定のためには,地域未利用資源に含ま れる機能性成分を利用した付加価値の高い畜産物 の生産が求められている。 さらに,九州地域をはじめとした西南暖地で は,温暖化による気温の上昇により,肥育豚の増 体が悪くなるなど生産性が低下しており,自給飼 料を主体とした暑熱対策技術を確立する必要があ る。 暑熱期に肥育豚の生産性が低下する一因とし て,飼料摂取量の不足や消化率の低下により,必 須アミノ酸(リジン)の利用性が低下することが 明らかにされており(松本ら,2008,2009),暑熱 環境下の肥育豚では,リジンの不足分を補充する ことで,生産性の改善ができる可能性がある。 脇屋ら(2009,2010)は,佐賀県の特産農産物 である茶の製茶工程で発生する製茶加工残さを利 用して肥育豚に市販飼料に対して重量比で肥育前 期 2%,肥育後期 1% 添加することで,カテキン等 の効果による豚肉の背脂肪厚低減効果と併せて ロース肉中の α-トコフェロール含量の増加等を 確認している。 そこで,佐賀県の地域性を活かした飼料とし Effects of Barley-Mixing Ratio in Diet on Carcass Characteristics and Meat Quality in Fattening Pigs under High Ambient TemperatureYuichiro WAKIYA, Hideaki OMAGARI, Daisuke URABE, Hirofumi KAWAHARA, Hideo MIYAZAKI*, Sadayuki
AKAISHI*, Shigeki NAGAFUCHIand Mitsuhito MATSUMOTO**
Saga Prefectural Livestock Experiment Station, Takeo, Saga 849-2305, Japan * Saga Tea Experiment Station, Ureshino, Saga 843-0302, Japan
** Kyushu Okinawa Agricultural Research Center, NARO, Koshi, Kumamoto 861-1192, Japan 連絡者 : 脇屋裕一郎(E-mail : [email protected] Tel. 0954-45-2030)
て,トウモロコシよりもリジン含量が高い飼料用 米や大麦を利用して,製茶加工残さ等の茶葉残さ とを組み合わせた暑熱対策技術試験を実施してい る。 前報では,2 mm 以下に粉砕した飼料用米 10% と大麦 5% を製茶加工残さと併せて配合した飼料 を夏季の肥育豚に給与することで,慣行飼料と同 等の飼養成績と肉質成績が得られ,官能検査で高 い評価が得られることが確認された(脇屋ら, 2012)。 不足するリジンの補充として,飼料用米と比べ て大麦はリジン含量が高く(独立行政法人農業・ 食品産業技術総合研究機構編,2009),暑熱期にお ける飼養成績などの改善効果が期待できるが,栄 養価,消化性等を考慮した適正な配合割合を検討 する必要がある。 そこで,本試験では飼料用米の配合割合を 10% に固定し,大麦の配合割合の違いが暑熱条件下に おける肥育豚の枝肉成績および肉質成績に及ぼす 影響を調査した。 材料および方法 供試した飼料用米,大麦および製茶加工残さに ついて,飼料用米は「ニシアオバ」玄米,大麦は 「ニシノヒカリ」の規格外品(5 mm 以下),製茶加 工残さは,JA さが嬉野茶製茶工場において,茶 葉の加工工程において回収された水分約 20% 程 度の残さを飼料乾燥機で水分を約 10% まで乾燥 させてから供試した。ランドレース去勢豚 15 頭 を用いて,コンクリート平床豚房で 3 試験区を設 けて,各試験区 5 頭群飼により,暑熱条件下(6 月 ∼9 月)で肥育試験を行った。試験期間中の豚房 内の平均気温は 26.4℃,最低気温は 17.7℃,最高 気温は 36.8℃となった。供試飼料について,肥育 前期には市販飼料に製茶加工残さを 2% 配合して 各区に給与した。肥育後期には,大麦はトウモロ コシとの代替で,飼料用米 10%,大麦 5% を配合 した飼料を試験区 1 に,飼料用米 10% と大麦 15% を配合した飼料を試験区 2 に,飼料用米 10% と大麦 25% を配合した飼料を試験区 3 にそれぞ れ給与した。なお,各区の肥育後期飼料には製茶 加工残さを 1% 配合した(表 1)。 The second fattening diet 表 1. 肥育飼料の配合設計(%) 10 10 98 98 Exp. 3 Exp. 1 10 Materials Forage rice 98 Exp. 2
Table 1. Ingredient of Experimental diet (%)
TDN (%) 15.5 15.3 15.1 CP (%) 2 2 2 Tea manufacturing residual
45 55 65 Corn 1 fish meal 1 1 1 Tea manufacturing residual
1 1 1 Vitamin et. al 75.0 76.1 77.2 15 5 Barley 1 1 1 Wheat bran 16 16 16 Soybean cake 1 1 Fatting stage Commercial diet1) The first fattening diet 25
1)Composition of commercial diet : Corn 15.1%, Grain sorghum 15.0%, Soybean
肥育前期飼料から後期飼料への切り替えは,各 試験区の平均体重が 65∼75 kg の範囲に達した段 階で行い,試験期間中は不断給餌とした。供試豚 が 110 kg に達した時点でと畜して,枝肉調査,肉 質の理化学特性の分析を行うとともに,ロース肉 による官能評価を行った。 調査項目として,試験に供試した飼料の一般成 分,アミノ酸含量について分析を行った。アミノ 酸含量の分析は,塩酸加水分解の後,アミノ酸に よる抽出と高速アミノ酸分析計による分離により 定量した。その他の一般成分は常法(畜産試験場 加工第 2 研究室,1990)に準じた。 飼養成績については日増体量,枝肉成績につい ては枝肉重量,背脂肪厚,ロース断面積等をそれ ぞれ調査した。ロース断面積は体長の 1/2 の部位 を超音波測定装置のスーパーアイミート(富士平 工業社製,東京)でと畜前日に計測した。 肉質成績について,と体から第 4∼13 胸椎間の サンプルを採取し,分析に供するまで−18℃で保 存した。肉質成績について,胸最長筋の水分,保 水力,伸展性などの理化学性状,遊離アミノ酸含 量について測定を行った。また,背脂肪内層の脂 肪融点と脂肪酸組成を測定した。肉質に係る一般 理化学性状の測定は,常法(畜産試験場加工第 2 研究室,1990)に,また飼料分析に係る一般成分 は飼料分析基準(農林水産省,2008)に準じた。 胸最長筋の遊離アミノ酸含量は,スルホサリチル 酸で抽出して高速アミノ酸分析計により定量し た。脂肪内層の脂肪酸組成は,ガスクロマトグラ フィにより定量した。破断応力は高橋ら(2004) の方法に準じて測定した。 官能評価は,肉質成績で最も良い成績が得られ た試験区と試験区 1 のロース肉の 2 点について, 10 代∼70 代までの一般消費者 101 名を対象とし た消費者型で実施した。試験は,ロース肉を 2∼3 mm 程度にスライスした後,唐沢ら(1994)の方 法によって検査に供した。調査項目は「やわらか さ」,「香り」,「うま味」の 3 項目で,「やわらかさ」 について「非常に固い(−2)∼非常にやわらかい (+2)」,「香り」および「うま味」について「非常 に弱い(−2)∼非常に強い(+2)」の 5 段階評点 法で評価した。 得られたデータに関して,官能評価以外は統計 ソフト Stat View(SAS Institute Inc., Version 5.0) で一元配置分散分析を行い,危険率 5% 以下に なった場合に有意差があるものとし,さらに多重 比較(Turkey-Kramer 検定)を行った。また,官 能評価は二項検定法により統計処理を行った。 結 果 表 2 に供試した肥育後期飼料の飼料成分を示 す。飼料中のアミノ酸リジン含量は,大麦の配合 割合を高めることで多くなった。また他のアミノ 酸含量についても,リジンと同様な傾向が確認さ れた。 表 3 に各試験区における肥育豚の飼養成績を示 す。日増体量は,数値的には試験区 2 および試験 区 3 が試験区 1 よりも高い値を示したが,有意差 は見られなかった。 表 4 に各試験区における肥育豚の枝肉成績の比 較を示す。ロース断面積は,試験区 3 が試験区 1 と比較して有意に大きくなることが確認された (P<0.05)。 表 2. 供試した肥育後期飼料の飼料成分 (現物 %) 8.3 15.7 4.0 2.5 3.1 66.4 8.4 15.2 4.1 2.8 3.1 66.4 Exp. 3 Exp. 2 Exp. 1 0.78 0.34 0.53 1.20 0.71 0.70 0.53 0.64 0.76 0.34 0.50 1.20 0.68 0.68 0.51 0.63 0.74 0.33 0.52 1.24 0.67 0.67 0.51 0.63 Arginine Histidine Isoleucine Leucine Lysine Phenylalanine Threonine Valine
Table 2. Component of the second fattening
diet (FM%) 8.4 15.0 4.6 2.2 3.2 66.6 Moisture Crude protein Crude fat Crude fiber Crude ash
表 5 に各試験区における肥育豚の肉質成績の比 較を示す。肉質形質について,加熱損失は試験区 3 が試験区 1 と比較して有意に高くなり(P< 0.05),剪断力価も有意差はなかったが試験区 3 が 高い値を示した。 表 6 に各試験区における背脂肪内層の脂肪酸組 成を示す。背脂肪内層の脂肪酸組成では有意な差 は確認されなかったが,大麦の配合割合が高くな るほどオレイン酸の割合が増加した。また,飽和 脂肪酸であるパルミチン酸,ステアリン酸の割合 は大麦の配合割合が少ない試験区 1 が高く,リ ノール酸は大麦の配合割合が多い試験区 3 が少な くなった。 表 7 に各試験区におけるロース肉中の遊離アミ ノ酸含量を示す。遊離アミノ酸含量については, 大麦配合による傾向は確認されなかったが,うま The second fattening period 表 3. 各試験区における肥育豚の飼養成績 2.78 2.80 Exp. 3 Exp. 1 Daily gain1) (kg/head/day) 3.06 Exp. 2
Table 3. Feed intake and daily gain in fattening pigs
0.73±0.09 3.25 3.02 0.85±0.03 0.99±0.08 0.78±0.06 2.94 2.79 0.73±0.02 0.84±0.15 0.68±0.08 The first fattening period The second fattening period All fattening period The first fattening period 3.34 2.59 0.82±0.06 0.98±0.02 All fattening period
Feed intake (kg/head/day)
1)Daily gain : Means±Standard deviation
Back loin length (II) (cm)
表 4. 各試験区における肥育豚の枝肉成績の比較
Carcass width (cm)
Backfat depth (shoulder) (cm)
62.4±1.1 71.3±1.8 72.0±1.4 70.5±2.2
Backfat depth (back) (cm)
Exp. 1
Backfat depth (loin) (cm) Loin area (cm2)
Exp. 2 Exp. 3
Table 4. Effect of carcass measurements in fattening pigs
35.5±1.7 70.4±2.5 69.8±4.3 70.4±3.3 82.0±2.3 84.4±4.4 83.0±1.9 100.0±2.4 100.6±3.8 99.0±2.6 63.7±0.9 62.3±1.4 Carcass yield (%) Carcass length (cm) Back loin length (I) (cm)
33.3±1.2a 36.1±3.9ab 37.4±1.8b 3.9±0.6 3.2±0.4 4.0±0.6 2.4±0.5 2.3±0.4 2.3±0.6 3.8±0.3 3.8±0.5 3.9±0.4 35.4±1.8 34.9±1.3 Carcass weight (kg) Means±Standard deviation
みの主成分であるグルタミン酸は試験区 2 が多 かった。 図 1 に官能評価における回答者の性別,年代別 人数,図 2 に試験区 1 に対する試験区 2 のロース 肉の官能評価を示す。ロース肉による官能評価は 試験区 2 と試験区 1 のロース芯を 2 点比較で実施 した。官能評価の回答者は,男女割合は女性が 6 割を占めで,年代では 50 代が最も多かった。試 験区 1 と比較して試験区 2 は,有意差は確認され なかったが,全ての項目で高い評価が得られた。 考 察 必須アミノ酸であるリジンをトウモロコシより も多く含む飼料用米および大麦の特性と,国内で 生産される低利用資源(製茶加工残さ)の機能性 特性を有効に活用するために,大麦の配合割合の Shear value (kgf) 表 5. 各試験区における肥育豚の肉質成績の比較
Fat melting temperature (℃) Crude protein (FM%)
57.3±3.5 73.8±0.5 73.4±0.7 73.9±1.3
Crude fat (FM%)
Exp. 1 Exp. 2 Exp. 3
Table 5. Effect of meat quality in fattening pigs
38.5±2.4 15.6±3.4 16.5±5.7 20.5±4.7 20.0±4.6a 24.4±2.2ab 25.8±2.0b
21.2±3.8 20.1±3.0 21.3±3.2 58.6±5.1 59.8±5.6
Water holding capacity (%) Pressurization filter
paper method Extension rate (%) Heating loss rate (%)
2.1±0.8 Fat color 2.0±0.5 2.8±0.4 2.9±0.6 46.6±1.4 46.6±1.7 47.9±2.4 2.4±0.6 2.9±0.5 2.9±1.1 23.7±0.5 23.6±0.7 23.3±0.4 36.2±2.7 36.7±3.1 a* L* 6.0±1.1 5.9±0.3 5.9±0.9 Meat color 0.7±0.2 0.6±0.1 0.8±0.2 73.3±0.8 73.2±0.4 73.0±1.0 2.1±0.6 2.5±0.5 b* a* Moisture (%) L* b* Means±Standard deviation
Shows significant difference(P<0.05)
Oleic acid 表 6. 各試験区における背脂肪内層の脂肪酸組成 24.3±0.8 1.8±0.2 1.9±0.9 1.8±1.3 Exp. 1 Linoleic acid Exp. 2 Exp. 3
Table 6. Effect on fatty acid composition of subcutaneous fat
47.1±1.3 48.8±1.4 49.5±0.7 0.5±1.2 2.0±2.0 1.7±0.5 13.4±1.3 11.4±2.7 12.1±1.3 25.8±2.0 24.1±4.2 Palmitic acid Stearic acid Palmitoleic acid 11.4±0.2 11.8±2.8 10.7±1.9 Myristic acid Means±Standard deviation, (%)
違いが枝肉成績および肉質等に及ぼす影響を調査 した。 枝肉成績について,大麦の配合割合を多くする ことで,ロース断面積は大きくなった。大和ら (1991)は,高エネルギー低蛋白質飼料に L-リジ ンを添加して,暑熱時に給与することにより飼料 摂取量は増加し,発育促進効果が認められたこと を報告している。本研究においても有意差は認め られなかったものの,大麦の添加により日増体量 の増加が確認された。また,條々ら(1994)は, 大麦添加によりロース断面積は大きくなる傾向が みられ,肉中の脂肪含量は増加したと報告してお り,本試験においてもリジン含量の高い大麦を配 合することで同様のことが確認された可能性が考 えられる。 肉質形質では,大麦配合割合が最も高い試験区 3 において,試験区 1 と比較して加熱損失率が有 意に高くなった。中村ら(2001)は,慣行飼料に 大麦の配合割合を調整して肥育試験を行った結 果,配合割合が最も多い 50% 配合区で加熱損失 率が高くなったと報告している。また,設楽ら (2005)は,慣行飼料に乾燥豆腐粕を 30% 代替給 与した場合に加熱胸最長筋の多汁性が低下したと 報告しており,大麦や乾燥豆腐粕を多く給与した 場合に,給与飼料の TDN は日本仕様標準・豚 (独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機 構,2005)に示された肥育豚の要求量である 75% より低くなったことから,栄養価の問題点がある Sweet constituent 表 7. 各試験区におけるロース肉中の遊離アミノ酸含量 1.1±0.3 6.1±1.8 6.4±1.7 5.6±1.8 Exp. 1 Flavor and bitter constituent Exp. 2 Exp. 3
Table 7. Free amino acid composition of loin
8.9±0.9 16.1±3.3 14.6±3.8 13.3±1.8 1.3±0.5 1.1±0.3 1.1±0.3 28.6±6.6 22.3±3.6 29.7±7.5 1.3±0.5 1.1±0.3 Glutamic acid 2.6±0.3 2.5±0.7 2.4±0.2 2.9±0.4 2.7±0.2 2.6±0.3 4.5±0.8 4.4±1.0 4.0±0.2 3.8±0.6 3.9±0.6 3.7±0.3 9.0±0.7 9.7±0.9 Taurine The others 0.5±0.3 0.5±0.1 0.6±0.2 Ornithine Methionine Proline Serine Threonine Glycine Alanine Asparagine Glutamine Aspartic acid 3.1±0.3 3.4±0.6 3.8±0.4 Arginine 0.1±0.1 0.1±0.1 0.1±0.1 Cystine 26.3±9.5 Taste and acid
constituent 20.6±4.4 23.0±6.6 3.1±0.3 3.3±0.5 3.3±0.3 Tyrosine 4.2±0.3 4.5±0.3 4.3±0.5 Valine Means±Standard deviation, (mg/100 g) 1.8±0.3 1.9±0.9 1.7±0.6 Histidine Lysine 3.1±0.2 3.3±0.4 3.4±0.4 Isoleucine 5.1±0.4 5.5±0.7 5.7±0.5 Leucine 3.4±0.2 3.5±0.6 3.4±0.4 Phenylalanine 3.9±0.3 4.3±0.5 4.6±0.4
ことが推察される。今回の試験では,加熱損失率 が高かった試験区 3 においても TDN が要求量を 満たす 75% であったが,暑熱環境下で消化率が 変動していることも考えられることから,暑熱期 における適切な TDN の設定も含めて原因を検討 する必要がある。背脂肪内層の脂肪酸組成につい て,有意差はなかったが大麦の配合割合が高くな るほどオレイン酸の割合が増加した。前報(脇屋 ら,2012)において,慣行飼料に飼料用米,大麦 を配合することで,オレイン酸の増加とリノール 酸の減少を確認しており,本試験においても同様 な傾向が確認された。 官能評価の結果において,試験区 1 と比較し て,試験区 2 のロース肉が高い評価となった。 「香り」,「うま味」の項目については,試験 1 と比 較して試験区 2 がオレイン酸およびグルタミン酸 含量が高かったことが理由として考えられるが, 有意な差はなかったため,今後さらに高評価が得 られるような配合割合を検討する必要がある。ま た,試験区 2 は試験区 1 と比較してロース肉の加 熱損失率,剪断力価は高くなったが,官能評価で 「やわらかさ」で高い評価を得たことより,官能評 価に影響を及ぼさない程度の数値差であったこと が推察された。 以上の結果から,暑熱環境下で飼料用米,大麦, 製茶加工残さの混合給与を行う場合,大麦の配合 割合を増やすことで枝肉のロース芯面積が大きく なる効果が見られた。しかし,大麦を 25% 配合 した場合に加熱損失が高くなったことより,栄養 価等も含めて適正な配合割合を検討する必要があ る。 今後は,大麦の配合割合を固定して,栄養価も 含めて飼料用米との最適配合割合を検討する。 謝 辞 本研究は,平成 23 年度農林水産省委託プロ 図 1. 官能評価における回答者の性別,年 代別人数
Fig. 1. Numbers of sex and age of sensory
evaluation respondent
図 2. 試験区 1 に対する試験区 2 のロース
肉の官能評価
Fig. 2. Sensory evaluation of loin in Exp. 2
ジェクト研究「自給飼料を基盤とした国産畜産物 の高付加価値化技術の開発」④「自給飼料多給に よる高付加価値豚肉生産技術の開発」の研究課題 である「飼料用米および麦と茶葉を組み合わせた 肥育豚の暑熱対策技術の開発(課題番号 : 46005)」 により実施されました。 本研究を実施するに当たり,プロジェクトリー ダーとしてご助言いただいた山形大学の吉田宣夫 先生と,畜産草地研究所の勝俣昌也上席研究員に 深謝いたします。また,肉質分析を指導いただい た九州沖縄農業研究センター常石英作氏およびそ の他関係者各位に御礼申し上げます。 文 献 畜産試験場加工第 2 研究室 : 1990,豚肉の品質改 善に関する研究実施要領,14-21,農林水産省畜 産試験場,茨城. 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 編 : 2009,「アミノ酸含量」,日本標準飼料成分 表(2009 年版),163-178,中央畜産会,東京. 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 編 : 2005,「2.2 養分要求量─風乾飼料中含量─」 日本飼養標準・豚(2005 年度版),18-19,中央 畜産会,東京. 唐沢恵子・高崎禎子・渋谷立人・青木 圭・伊藤 米人・内田哲二・北村雅彦・條々和実 : 1994,豚 肉の保存,調理法が官能検査に及ぼす影響,日 豚会誌,31,121-127. 條々和実・北村雅彦・石田昌弘・安藤純孝 : 1994, 優良系統豚を活用した良食味豚肉生産技術の確 立(第 4 報),山梨県畜産試験場研究報告,41, 9-20. 松本光史・村上 斉・阪谷美樹・井上寛暁・梶 雄 次 : 2008,暑熱環境が肥育後期豚の深部体温と 消化吸収能力に及ぼす影響,栄養生理研究会 報,52,43-48. 松本光史・村上 斉・井上寛暁・梶 雄次 : 2009, “暑熱環境下の肥育後期豚では飼料中アミノ酸 の消化吸収能力が低下する”,平成 20 年度九州 沖縄農業研究成果情報(研究・参考) 中村真弓・野沢久夫・阿部泰男・大久保彰夫・中 島芳郎 : 2001,系統豚「トチギ L」交雑利用に関 する試験─給与飼料による肉質への影響の検 討─,栃木県畜産試験場研究報告,9-19. 農林水産省 : 2008,飼料分析基準,5-34,平成 20 年 4 月 1 日・19 消安第 14729 号 農林水産省消 費・安全局長通知. 農林水産省 : 2012,飼料をめぐる情勢,1,http: //www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/ pdf/meguru_2402.pdf,2012 設楽 修・岩本英治・和出敦夫 : 2005,肥育豚へ の乾燥豆腐粕給与が発育と肉質に及ぼす影響, 兵庫県立農林水産技術総合センター研究報告 〔畜産編〕,41,1-5. 高橋知子・中川令恵・道脇幸博・川野亜紀・鈴木 美紀・和田佳子・大越ひろ : 2004,食べ易い食 肉のテクスチャー特性と咀嚼運動,日本家政学 会誌,55,3-12. 脇屋裕一郎・安田みどり・坂井隆宏・大曲秀明・ 河原弘文・宮崎秀雄・下平秀丸 : 2009,二番茶 製茶加工残さ給与が肥育豚の枝肉および肉質に 与える効果,日本暖地畜産学会報,52,51-56. 脇屋裕一郎・安田みどり・大曲秀明・宮崎秀雄・ 北島由希・西尾公志・河原弘文・下平秀丸 : 2010,二番茶製茶加工残さ給与が群飼条件下に おける肥育豚の枝肉および肉質に与える効果, 日本暖地畜産学会報,53,57-65. 脇屋裕一郎・大曲秀明・山口妃鶴・河原弘文・宮 崎秀雄・明石真幸・永渕成樹・松本光史 : 2012, 飼料用米,大麦,製茶加工残さの混合給与とそ の粉砕粒度が暑熱環境下の肥育豚の発育,枝肉 成績および肉質に及ぼす影響,日豚会誌,49, 1-13. 大和碩哉・投野和彦・古賀康弘 : 1991,西南暖地 の暑熱環境下での豚の飼料摂取促進技術 第 1 報 肥育豚に対する低蛋白質飼料へのリジンの 添加効果,福岡県農業総合試験場研究報告 C (畜産),11,21-24.