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第1.1節研究の目的

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(1)

第1章序 論 第1.1節研究の目的

 ゴム製品は、日本では年間約140万t(2002年)生産されており・そのほとん どが硫黄を用いて架橋したいわゆる加硫ゴムである。加硫ゴムは、加硫剤、加 硫促進剤、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤などと、力学的特性の向上や 加工性の改善、増量によるコスト低減、さらに難燃性、電気伝導性など特殊機 能を付与する目的で、カーボンブラックをはじめ、各種粉体をフィラーとして 配合した複合材料である。

 Goodyearによる硫黄架橋の発明(1839年)で、ゴムが実用製品として用いられ るようになって以来、ゴムでは、フィラーはプラスチックよりもはるかに重要 な役割を果たしており、これは、輪ゴムや手術用手袋のような製品を除いて、

フィラーを用いないと実用製昂に必要な性能とならないためである。

 19世紀半ばからのゴム工業の黎明期からしばらくの間は、炭酸カルシウム、

タルク、クレーなど天然産の鉱物を粉砕したものがフィラーとして用いられ、

その役割は、増量によるコスト低減、粘着防止や粘度調節など加工性の改善に あったと思われる。ゴム工業では、着色性から、炭酸カルシウムなど無機粉体 は白色フィラーと呼ばれている。

 1912年に、Oen,lagerによりカーボンブラックの優れたゴム補強効果が見い出 されてからは、大部分の製品でカーボンブラックが用いられて来た・しかしな がら、最近では、ゴム製品に要求される性能が高度化、多様化し、カーボンブ ラックでは限界が見られるようになってきている。例えば、カーボンブラック 配合では困難であった走行性と安全性が両立し、騒音が低く、しかも燃費の良 好なタイヤの開発がシリカを用いてなされている。これは、シリカ配合加硫ゴ ムはタイヤに適した動的粘弾性を示すためである。また、繊維や製紙工業、食 品工業などで用いられる搬送用ベルトやロール、シール材、医療用ゴム、介護 用品のように物性、機能性と他への汚染防止が必要である分野や、スポーツ用 品や日用品などデザイン面、さらに作業環境や日常生活の安全面からもカーボ ンブラック配合の製品に代替可能な明色製品が要求されており、これらでは、

白色フィラー配合さ、カーボンブラック配合と同等かそれ以上の性能が求めら

れる。

一1一

(2)

 フィラー分散系高分子材料におけるフィラーの複合効果は次式の3要素であ

らわされる。

   複合効果=体積効果+表面効果一空げき効果

 体積効果は、フィラーの配合量で決まり、表面効果は、マトリックスポリマ ーとフィラー間の界面相互作用であり、フィラー表面へのマトリックスポリマ ーの化学的、物理的な吸着性やフィラーの分散性、一フィラー形状に依存する。

空げき効果は、変形時のマトリックスとフィラー界面のはく離によって生ずる 空げきであり、補強性にはマイナスの要因である。したがって、フィラーの補 強効果改善のためには、マトリックスーフィラー問の相互作用の向上が重要で ある。空げき効果は、相互作用の向上によって界面がはく離しなくなると、影 響が小さくなる。

 一般に、白色フィラーはカーボンブラックと比較してゴム補強性に劣る。こ れは、表面親水性であるために、マトリックスゴムとの相互作用が良好でない ためである。したがって、カーボンブラック配合の製品に替わることができ、

新たな機能性を付与させた高性能白色フィラー配合加硫ゴムの開発には、この 界面相互作用を向上させることが必要である。

 加硫ゴムは、混練用2本ロール機や密閉式混練機を用いて各種配合剤をゴム 原料に混練して練り生地を調製し、練り生地を切断や圧延ロール機、押出機な

どで製品形状に近い形に予備成形したのち、圧縮成形機や射出成形機、加圧熱 空気加硫機などで加圧、加熱下で加硫して製造される。製品性能に配合剤の分 散状態や加硫状態が影響するために、混練工程や加硫工程が最適に行われるこ とが必要である。特に、白色フィラーで比較的補強効果が良好なシリカやカオ リンクレーのようなケイ酸系フィラーを用いた場合、これらが加硫反応を遅ら せる傾向にあり、その制御が重要である。また、シリカはゴムの粘度を上昇さ せるために、混練時や予備成形時の加工性を低下させる欠点がある。

 このように、白色フィラー配合ゴム系複合材料の性能には、フィラー一ゴム マトリックス間の相互作用のみならず、加硫に及ぼすフィラーの影響も大きく 影響する。したがって、白色配合で高性能加硫ゴムを開発するためには、これ

らの問題点を考慮した配合設計、製造プロセスの管理が必要である。

 さらに、ゴム製品は、熱、光などの劣化要因に暴露されて用いられることが

(3)

多く、したがって、耐熱性や耐候性も調べる必要がある。

 本研究では、白色フィラーとして従来から広く用いられているシリカ、カオ リンクレー、タルク、炭酸カルシウムを用いて、これらの加硫に及ぼす影響に ついて調べ、その原因を明らかにするとともに、フィラーの補強効果とその機 構をカーボンブラックと対比して調べた。その結果をもとに、新規な多機能性 フィラーとして水酸化マグネシウムを開発した。さらに、界面相互作用を向上 させて、白色フィラー配合加硫ゴムの物性をカーボンブラック配合と同程度か それ以上に向上させるために、ゴムとフィラー双方に反応する化合物を用いて ゴムを改質する技術を開発した。また、白色フィラー配合加硫ゴムの耐熱性、

耐候性についても系統的に調べた。

 なお、本論文中で用いたゴム用語に関する解説、ゴム、配合剤などの略号、

加硫促進剤、老化防止剤、シランカップリング剤の化学構造を巻末にまとめて 示したので、適宜参照されたい。

一3一

(4)

第1.2節既往の研究

1.2.1フィラーと未加硫ゴムの性質

 硫黄と加硫促進剤を用いる硫黄加硫系(通常硫黄加硫系)で、ケイ酸系フィラ ーが架橋反応を遅らせる原因は、表面シラノール基に加硫促進剤が活性吸着さ れることであるといわれている1)。そこで、フィラーの加硫への影響を小さく するために、フィラーのジブチルアミン吸着量から配合する促進剤量を決定す

ることや1)、エチレングリコール類やトリエタノールアミンを添加してシラノ ール基に吸着させてその活性を低下させることがよく行われている2)。また、

Bomo3)は、各種加硫促進剤の溶液中からのシリカヘの吸着量を測定し、その結 果から促進剤の最適配合量を求める方法を報告している。

 シリカ、クレーなどケイ酸系フィラーのシラノール基は固体酸であるため、

ジフェニルグアニジン(DPG)のような塩基性促進剤を配合・使用した場合の加硫 阻害は吸着効果で説明できるように思われる。しかしながら、ジベンゾチアジ ル・ジスルフィド(MBTS)やN一シクロヘキシルー2一ベンゾチアゾリルスルフェンア ミド(CBS)を用いても加硫が遅れる傾向にあることはよく知られている。

Zaborskiら4)は、CBSのシリカヘの吸着量はDPGの1/3程度、MBTSは1/10で あることを報告しており、このことから、ケイ酸系フィラーの加硫遅延効果は 吸着のみが原因ではないと考えられる。

 ところで、Duhachekら5)は、ZnOの存在下でテトラメチルチウラムジスルフ ィド(TMTD)を用いた硫黄供与系加硫では、シリカが加硫を促進することを報告 している。このことは、シリカが固体酸としての性質を示していることを示唆 している。通常硫黄加硫系においても、ケイ酸系フィラーのシラノール基を固 体酸として評価し、それと加硫特性の関係を調べる必要があると思われる。

 硫黄加硫に影響を及ぼす要因としては、未加硫ゴム中に含有される水分が知 られている。Taylorら6)は、天然ゴム(NR)の純ゴム配合練り生地を貯蔵環境中 の湿度を変えて貯蔵した場合の加硫特性を調べ、練り生地中に含まれる水分量 が1%以下の微量でも加硫に影響し、水分量が多くなるほど加硫が速くなること を報告している。また、同様な結果は、カーボンブラック配合のNRやスチレ ンブタジエンゴム(SBR)でも得られており、加硫ゴム物性が影響を受けることが

(5)

報告されている7)41)。

 活性な表面シラノール基が存在するシリカでは、純ゴムやカーボンブラック 配合よりも多く水分を吸着すると考えられるため、その影響がより大きいと考 えられる。水島12)は、各種フィラーを配合したSBRの加硫特性を調べており、

シリカ配合が水分の影響を最も大きく受けることを報告している。また、SBR のシリカ配合では混練温度の影響が調べられており、ロール表面温度80℃で混 練した場合は影響しないが、65℃以下では吸着水分量が多いほどスコーチ時間 が短くなることが知られているB)。

 以上のことから、硫黄加硫におけるフィラーの加硫特性への影響は、フィラ ー表面の固体酸など活性点と加硫促進剤の相互作用のみならず、練り生地中の 水分の影響も考慮しなければならないと考えられる。

 また、NRやSBRのような非極性ゴムとニトリルブタジエンゴム(NBR)のよう な極性ゴムでは、水分の加硫に及ぼす影響が異なると思われるが、これについ て調べた報告はない。

 今までに発表された報告では、そのほとんどで加硫特性は回転式のムー二一 粘度計や引張試験で評価されている。ムー二一粘度計では加硫初期の評価はで きるが、機構上の制約から加硫反応全域を調べることはできない。引張試験は 時間がかかりすぎるだけでなく、加硫初期の挙動を解析することはできない。

加硫挙動が加硫ゴム物性、ひいては製品性能に大きく影響するにもかかわらず、

振動式加硫試験機を用いた報告は、Butlerのカーボンブラック配合ゴムの加硫 に及ぽす練り生地貯蔵湿度の影響に関する報告マ)があるのみである。

 白色フィラーの中で、シリカは最もゴム補強効果が高いが、ゴム練り生地の 粘度上昇が著しく、加工性が大きく低下する。これは、シリカはそれ自身で凝 集しやすく、ゴム中でネットワークを形成するためと考えられている14)。した がって、シリカ配合では練り生地粘度の調整が重要で、カーボンブラック配合 同様にプロセスオイルやクマロン樹脂などが用いられるが15)、シリカ自身の改 良16)や、流動性を改善する添加剤として、アルコシキシリル基をもつ反応性シ ロキサンが開発されている17)。また、シランカップリング剤ビス(3一トリエトキ シシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)には練り生地の粘度を低下させる 機能があることが知られている18)。ところで、NRを重量平均分子量で20,000

一5一

(6)

程度まで分解した液状天然ゴム(LNR)は、ゴムと共架橋可能な加工助剤として機 能すると考えられている19)。しかしながら、現在、LNRは、NRラテックスを 用いて、フェニルヒドラジンとコバルト塩を用いるレドックス反応で製造され ているために着色しており20)、淡色製品には適さない。また、製造時の廃棄物 の処理が困難である。そこで、環境負荷が少ない淡色のLNRが製造可能な方法 の開発が求められている。

       文献

1)平田好顕: フィラーハンドブック ,p.88,日本ゴム協会(1985)

2)岡田延弘,石井 真: フィラーハンドブック ,p204,日本ゴム協会(1985)

3)F.Bomo:.M盈ro醒ol,Chε π.,M盈ro規ol.3y np.,23,321(1989)

4)M.Zaborski,」.B.Donnet:Mαc左10配o .5y配ρ.,194,87(2003)

5)V.Duchacek,V.Brajko:」.4ρp1.Po!y鷹.Sc∫.,18,2797(1974)

6)R.H.Taylor,F.E Clark,W.P.Ball:1n4如Rめb8r昭ozl4,129,751(1954)

7)J.Butler,P.K.Freakley:R㍑わわεr Ch8〃z.TεcゐπoJ.,65,374(1991)

8)H.A.Braendle,B.Wiegand:1π4耐吻」αn4.En8∫nεε1∫n8Chε雁5妙,36,724

(1944)

9)F.E.Rupert,F.W,Gage:1n伽3∫吻1αn4Eη8∫nεε吻8Chε加sかy,37,378(1945)

10)1.C.Rush:1n4制肋地n4En8 nε87∫n8Chε雁5妙,38,58(1946)

11)1.C.Rush,S,C.Kilbank:1n4μs師α1・n4En8∫πεε吻8Ch8酪 ry,41,167(1949)

12)水島克己:合成ゴム,4,40(1962)

13)岡田延弘,石井 真: フィラーハンドブック ,P.206,日本ゴム協会(1985)

14)平田 靖: 新版ゴム技術の基礎1 ,p.185,日本ゴム協会(1999)

15)河岡 豊: ゴム配合ハンドブック ,p.134,日刊工業新聞社(1987)

16)Y.Bomal et al.:κα厩5ch.θ麗遡履.κμn3∫3 .,50,434(1997)

17)K.Ishikawa,F.Yatsuyanagi,H.Kaidou:Pαp,151∫h/4C乱Rめわεr D∫v.Mεε∫.,

Pape∫No.9(1997)

18)S.Wolff:Rめわεr Ch8η2.Tθchnoム,69,325(1996)

19)山下晋三: ゴム工業便覧 第4版,P.202,日本ゴム協会(1993)

20)Abdul Aziz S.A.Kadir Rめわε7Chε砿丁εchη01.,67,537(1994)

(7)

1.2.2フィラーのゴム補強効果

 白色フィラーは増量剤としてや、電気的性質や難燃性、防音・制振性など機 能性の付与を目的にも用いられるが、フィラーの配合目的の第一は加硫ゴムの 力学的性質の改善にある。補強性フィラーとしては、カーボンブラックやシリ カ以外にも、カオリンクレーやタルクのような板状粘土鉱物も補強効果を有す ることが知られている1)。

 フィラーのゴム補強効果は、ゴムマトリックスーフィラー間の物理的、化学 的相互作用でゴム分子がフィラー表面近傍で束縛されるためといわれている。

したがって、補強効果は、フィラー表面に束縛されたゴム層が厚いほど大きい。

この束縛層は、束縛されて溶媒に不溶化したゲル量(フィラーゲル量)から評価 するPliskin.Tokitaの方法2)や、ゴムとフィラーが結合し、見かけ上、フィラー の体積分率が増大した結果であるとしてフィラー配合による溶媒膨潤度の変化 から評価するKraus3)の方法で評価されている。Krausの方法では、フィラーの 体積効果だけを仮定して、膨潤度からゴムの見かけの体積分率(V,)を求め、純

ゴム配合のそれ(V,0)との比、V,0/V,を求め・フィラーの体積分率をVfとして・

Vf/(1−Vf)に対してプロット(Kraus plot)して得られる直線の傾きから相互作用を

評価する。その傾きが負で値が大きいほど相互作用が大きく、したがって、そ のようなフィラーは補強効果が良好である。

 また、フィラーは動力学的な緩和現象にも影響するために、粘弾性試験から ゴムーフィラー間の相互作用を調べることができる。これには、フィラー配合 による損失正接(tanδ)の主分散ピーク温度の上昇から推定するDrosteらの方法 4)と、tanδのピーク値の変化から評価するZiegelの方法5)がある。

 フィラーゲル量はフィラー表面の化学的活性度に依存しており、活性なカー ボンブラックやシリカでは30〜50%生成するといわれている6)。しかしながら、

カーボンブラックとシリカの補強効果を引張物性で比較すると、引張強さは同 程度であっても、シリカ配合では伸張モジュラスが著しく低く、カーボンブラ ック配合の1/5〜1/3にすぎない。また、カオリンクレーでは5〜6%しか生成し ないが7)、これも補強効果を示し、モジュラスは低いが、引張強さでカーボン ブラックと同程度の値を示す配合設計も可能である。したがって、フィラーゲ ルのみでフィラーの補強効果を評価することは適当ではないと思われる。なお、

一7一

(8)

カオリンクレーの補強機構については、水渡ら8)や川崎7)らの報告があり、表 面シラノール基とゴム分子間の化学的相互作用の補強効果に及ぼす役割が調べ

一られ

ている。

 板状フィラー複合ポリプロピレンの動的弾性率は、粒状フィラーを複合化し たものより高くなるが、粒子径とアスペクト比の両方に依存していることが報 告9 10)されており、また、tanδが大きくなり、制振性を示すことが認められて いる11)。したがって、加硫ゴムでもシリカのような粒状フィラーと板状フィラ ーでは、動的粘弾性に及ぼす影響が異なることが考えられる。板状フィラー配 合ゴムの粘弾性特性に関する研究例としては、モンモリロナイト分散ゴムコン ポジットを用いた報告12)がある。この報告では、常温以上の領域でtanδが板 状フィラーの配向の影響を受け、大きくなることが示されている。したがって、

カオリンクレーやタルクも、弾性率だけでなく、tanδにも粒状フィラーとは異 なった影響を及ぼすことが考えられるが、これに関しても報告されていない。

 前項で述べたように、シリカやカオリンクレーなど表面酸性フィラーは補強 効果を有するが、加硫を遅らせる欠点がある。また、シリカは練り生地粘度を 著しく大きくするために、シリカ配合は加工性に劣る。一方、炭酸カルシウム のような塩基性フィラーは加硫に影響しないか、逆に促進する場合もあるが、

補強効果が良好でない。ところで、水酸化マグネシウムは、塩基性で、板状結 晶であるために、ゴムに配合した場合、特徴のある配合効果を示すこと考えら れる。また、Nagataら13)が水酸化アルミニウム配合加硫ゴムでシランカップリ ング剤が補強性改善効果を示したことを報告していることから、水酸化マグネ シウムでも同様な効果が期待される。ところが、現在市販されている水酸化マ グネシウムのゴム補強性は、中司らの報告14)に見られるように良好でない。こ れは、粒子径が大きいためであることが原因に推察される。したがって、市販 品よりも微粒子のものを用いれば、補強効果が向上することが期待される。

      文献

1)川崎仁士: フィラーハンドブツク ,P.169,日本ゴム協会(1985)

2)1』Pliskin,N.Tokita:■.」4pply.Poly彫、3c∫.,16,473(1972)

3)G.Kraus:Rμわわεr Chε溺.TεchnoZ.,31,6(1964)

(9)

4)D.H.Droste,A.T.Dibenedetto:/−4ρρム、Po1』y肱5ci.,13,2149(1969)

5)K.D.Ziege1:」.Co1Jo∫41n陀げαce3c∫.,29,72(1969)

6)例えば、S.Wolff:Rめ加r Chε肱丁εchnol・,69,325(1996)

7)川崎仁士,板谷克彦,草野文男,児玉総治:日本ゴム協会誌,45,64(1972)

8)水渡英二,荒川正文:日本ゴム協会誌,36,704(1963)

9)光石一太,児玉総治,川崎仁士:高分子論文集,44,551(1.g87)

10)K.Mitsuishi,S.Kodama and H.Kawasaki:孟〃「ocro海oムSc∫.ンPhy5記5,B26,

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11)池田耕太郎: フィラー活用辞典 ,p.212,大成社(1994)

12)Markus Ganter,Wolgram Gronski,Peter Reichert,Rolf M荘lhupt:Rめわε1Ch8〃!.

Tε6hno1.,74,2001(2001)

13)K.Nagata,Y.Takahashi,S.Shibusawa,Y.Nakamura:」.。44hε5∫on3c∫,Tεchηoム,

16,1017(2002)

14)青山 進,中司健一,池田慎哉,中西文昭:広島県東部工業技術センター報

告,9,87(1996)

1.2.3グラフト改質による白色フィラーの補強性改善

 フィラー分散高分子複合材料の物性を向上させる目的で、マトリックスポリ マーとフィラー間の界面相互作用を改善する方法として、一般に、次のような 方法が行われている。

①フィラーを微粒子化し、マトリックスとの界面の面積を大きくする。

②フィラー表面を改質して疎水化し、マトリックスとの親和性を向上させる。

③フィラーとマトリックスポリマー両方に化学結合するような薬剤を用いて、

フィラーを表面改質するか、又は混練時に添加する。

④フィラーとの親和性が良好か、フィラー表面の官能基と化学結合するような 極性官能基を持つモノマーをマトリックスポリマーに共重合させるか、または

グラフト化する。

 最近、研究が進められている粘土鉱物1)雪8)やシリカ9)一18)を用いたゴム系ナノ

コンポジットは①の方法である。ゾルーゲル法によって、ナノサイズのシリカ

一g一

(10)

粒子をマトリックス中で合成して分散させたり、厚さが数nmでアスペクト比 が大きい層状粘土鉱物の層間を有機アミンの挿入によりはく離させてマトリッ クスヘ複合化し、フィラーとマトリックスとの接触界面を大きくすることによ り、諸物性の向上が図られている。これらの方法は、複合化プロセスが複雑で ある一のみならず、機械的物性も、混練用2本ロール機や密閉式混練機を用いた 従来の方法で混練し、後述するシランカップリング剤を添加した加硫ゴム以上 の機械的物性はまだ得られていない。

 我が国では、炭酸カルシウムは自給可能な国産資源であることから、その有 効利用のために、フィラーとしての活用に関する研究が古くから行われている。

その一環として、戦前に、製造時、樹脂酸や脂肪酸を用いて表面改質した粒子 径が20〜100nmの沈降性炭酸カルシウムである白艶華が開発されており19)、こ れがフィラーの表面改質の先駆けである。白艶華は現在も市販されており、表 面改質剤としては、樹脂酸、脂肪酸などの他に各種界面活性剤が用いられてい る。ところが、上記のような表面剤で改質した炭酸カルシウムを配合使用した ゴムでは、加工性が改善され、加硫ゴムの引張強さや破断伸びは向上するが、

実用上重要な物性である伸張モジュラスや引裂強さなどが改善されない20)。

 白色フィラーでは、白艶華のように、微粒子化によって引張強さや破断伸び は向上するが、一般に、伸張モジュラスや引裂強さ、耐摩耗性、圧縮永久歪な どはカーボンブラックと比較して劣る。これは、カーボンブラックのように、

フィラーとゴムマトリックスが化学結合に近い相互作用をしていないためであ ると考えられている。そこで、③の方法が行われる。山下らは、硫黄架橋によ ってゴムに化学結合する可能性のあるソルビン酸などを用いて表面改質した炭 酸カルシウムを開発したが21)一23)、加工性に難点があったために実用化にはいた

らなかった。

 さて、一方はフィラーと、もう一方はマトリックスポリマーと化学結合する 2種類め官能基を持つ化合物はカップリング剤と呼ばれており、シランカップ

リング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、フォス フェートカップリング剤24)などがある。これらのうち、ゴムで実用的に用いら れているのはシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、フィラ ーへ表面処理するか、混練工程で添加する方法(インテグラルブレンド法)で用

(11)

いられている。硫黄加硫系では、末端がメルカプト基のγ一メルカプトプロピル トリメトキシシラン(γ一MPS)が用いられてきたが25)、耐スコーチ性に問題があ ったために、ビス(3一トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)が 開発された。TESPTを添加したシリカ配合では、引張強さ、伸張モジュラスな

ど静的物性のみならず、動的性質も改善される。TESPTを用いることにより、

高性能のシリカ入りタイヤの開発が可能となった26)。

 シランカップリング剤は、ジリカ、クレーのようなシラノール基を有するフ ィラーの場合に効果があるが、炭酸カルシウムのようなフィラーには有効でな い。そこで、炭酸カルシウム表面にケイ酸カルシウムを生成させたフィラーが 開発されたが、カップリング剤の効果はシリカほど良好ではない27)。また、炭 酸カルシウムと反応するフォスフェートカップリング剤も合成されたが、その 効果は実用的には十分でない24)。

 ポリマーを極性モノマーでグラフト改質する方法(④の方法)に関する研究 は、笹木らの報告28)一31)が最初と思われる。笹木らは、2軸押出機を用いて、過 酸化物の存在下、ポリプロピレンやポリエチレンを無水マレイン酸などによる

グラフト改質を行い、改質したものに炭酸カルシウムを複合化した材料の物性 を調べている。ポリマーにグラフトしたマレイン酸と炭酸カルシウムが、

Scheme1.2.1のような化学結合に近い相互作用をするため、グラフト率が1%以 下でも物性が向上することを示している。同様な研究は藤山ら32) 33)も行ってい る。このことから、ゴムをマレイン酸で改質すれば、炭酸カルシウムのゴム補 強効果が向上することが考えられる。

 ④の方法に関して、ゴムでは、ポリマー鎖に共重合や化学的な改質で導入し たエポキシ基とシリカの反応(SchemeL2.2)を応用した研究がある。SBR34)と NBR35)では、エポキシ基を有するモノマーを共重合したものが開発されており、

これらにシリカを配合した加硫ゴムの物性は、Scheme1.2.2の反応により顕著に 改善されることが報告されている。また、エポキシ化天然ゴム(ENR)のシリカ配 合加硫ゴム物性は、シランカップリング剤を用いなくてもカーボンブラック配 合のそれに匹敵することが示されている36)。ENRとシリカの相互作用は、動的 粘弾性試験により検討されている37)。同様な結果は、アクリル酸などを共重合

したカルボキシル化NBRでも得られている38) 39)。

一11一

(12)

        l

       CH2

        1

       CH2

        1

    CH3 C−CH−COOH

        l I

       CH2CH2−COO−Ca2+(CO3)一1/2         I

       CH2

        1

Scheme1.2.1St皿cture of half salt fb㎜ed bythe reaction betw㏄n       modified polyolefin and calcium carbonate,

  …SiOH+CH2−CH2−R→レ≡SiOCH2CHR        \0/        1

       0H

Scheme1,2.2Reaction between silanol group and epoxy group

 ゴムでは、シランカップリング剤のフィラー補強効果が顕著であるが、カッ プリング剤の価格はkgあたり数千円で、ゴムや他の配合薬品と比較して高価な ために、その使用量を低減することが課題である。エポキシ基の導入によるシ リカ配合加硫ゴムの例から、ゴムでは、ポリマー鎖にフィラーと反応する官能 基を導入する方法が物性向上に効果的であると考えられる。

 エポキシ基を導入したNBR、SBRでは、エポキシ基を有する第3モノマーが

少量(0.07〜0.085mol/kg)で効果があるために興味深いが、実用化はされていな いようである。ENRは、溶剤を用いずに、NRラテックス中で過酸化水素とギ 酸を用いて製造されるために40)、溶剤を用いず、製造時の廃棄物が少ない環境

にやさしい材料であるが、現在、生産されていないようである。また、ENRは、

エポキシ基が多くなると、ガラス転移温度が上昇して耐寒性が低下するだけで なく36)、加工性、貯蔵安定性41)が低下する欠点がある。

 すでに述べたように、ポリオレフィンでは、2軸押出機のような加工装置を 用いて改質がなされているが、ゴムブレンドによるポリアミドの衝撃強さの向 上を目的に、密閉式混練機を用いて、エチレンプロピレンゴム(EPR)を、過酸化

(13)

物存在下で、ジブチルマレイン酸42)や無水マレイン酸43)でグラフト改質するこ とがなされている。フィラー配合ゴムでも、同様な改質方法による物性改善が 考えられる。また、無水マレイン酸が、光化学反応により、SBSブロック共重 合体に室温で気相から付加することが報告されている44)。このように、ゴムで

も、過酸化物と密閉式混練機を用いる方法や、光化学反応を利用した改質が考 えられる。このような方法は、市販原料とゴム製品製造機械を用いて可能であ

り、改質工程が簡便で、溶剤を用いない環境に優しい方法である。

       文献

1)Y.Kojima,K.Fukumori,A.Usuki,A.Okada,T.Kumuchi:訊Mαご8r如 51c∫εncε L疏εrs,12,889(1993)

2)A.Usuki,A.Tsukigase,M.Kato:PoJy耀r,43,2185(2002)

3)ZhangLiqun,WangYizh・ng,WuY・uping・WangYiqing・SmZha・hui・Zhang

Huifeng,Fu Auhua,Yu Dingsheng:P70ceε4∫π8・o/1nオεrπα廊onα1R訪わε■Coπ∫ε■ε雌cε,

April1999Seo旦,P316(1999)

4)ZhangLiqun,WangYizh・ng,WangYiqing,YuanSui・YuDingsheng:」・珈ρ乙

Po加;.Sc∫.,78,1873(2000)

5)W縦n2Yizh・ng,ZhangLiqun,TangChunh・ng,YuDingsheng:」・ゆρ1・P・塊

3c∫.,78,1879(2000)

6)MarkusGanter,W・lgramGr・nski,PeterReicherちR・lfM廿lhupt:R励8rChε吻・

T8chno1、,74,2001(2001)

7)M.A。Lopez.Manchado,M,Arroyo,B.Herrero,」.Biagiotti:」.。4 1.PoJyη1.3c1り 89,1(2003)

8)R.Magaraphan,W.Thaijroen,R.Lim−ochakun:Rめわe7chε肱丁εch㍑01・・76・406 9)掬谷信三,矢島愛子,ヂ 在龍,池田裕子:日本ゴム協会誌,67,859(1994)

10)池田裕子,田中 昭,鞠谷信三:日本ゴム協会誌,68,742(1995)

11)糊谷信三,田中 昭,和田嘉彦,池田裕子:日本ゴム協会誌,69,442(1994)

12)H.Tanahashi,S.Osanai,M.Shigekuni,K.Murakami,Y,Ikeda,S.Kohjiya:

R㍑わわεr Ch8〃霊.Tεchπ01.,71,35(1998)

一13一

(14)

13)K.Murakami,S.Osanai,M.ShigekuniンS、Ito,H.Tanahashi,S,Kohjiya,Y.

lkeda:RめわεrChε〃2.Tεchno1.,71,119(1998)

14)A.S.Hasim,B.Azahari,Y.Ikeda,S.K・hjiya:R励87Chε規・T8chn・!・・71・289

(1998)

15)S.K・hjiya,KMurakami,S.It・ンT・Tanahashi・Y・Ikeda:R励εrChε耀・

TεchnoJ.,74,16(2001)

16)吉海和正,山口雅裕,西村克己:日本ゴム協会誌,69,485(1996)

17)吉海和正,大崎徹郎,末吉 梓:日本ゴム協会誌,73,144(2000)

18)吉海和正,末吉 梓,大崎徹郎:日本ゴム協会誌,73,660(2000)

19)白石恒二:特許第7474g号(1927);U.S.P.16541099(1927)

20)貫井徳蔵: フィラーバンドブック ,p.137,日本ゴム協会(1985)

21)古川淳二,山下晋三:日本ゴム協会誌,34,928(1961)

22)古川淳二,山下晋三,丹羽 宏:日本ゴム協会誌,36,295(1963)

23)丹羽宏,古川淳二,山下晋三:日本ゴム協会誌,40,375(1967)

24)T.Nakatsuka,H.Kawasaki,K.ltadaniかS・Yamashita:1・オ〃1・P・塊5c ・・27・

259(1982)

25)M.P.Wagner:Rμわわεr Chε肱丁εchnoJ,48,703(1975)

26)小林直一,古田勲:日本ゴム協会誌,70,147(1997)

27)貫井徳蔵:・フイラーバンドブツク ,P.139,日本ゴム協会(1985)

28)笹木 勲,伊藤憲一,児玉恒雄,井出文雄:高分子論文集,32,645(1975)

29)笹木 勲,伊藤憲一,児玉恒雄,井出文雄:高分子論文集,33,122(1976)

30)笹木 勲,児玉恒雄,井出文雄:高分子論文集,33,162(1976)

31)笹木 勲,井出文雄:高分子論文集,38,67(1981)

32)藤山光美,脇野哲夫,和知 洋,谷 和雄:高分子論文集,49,87(1992)

33)藤山光美,脇野哲夫,和知 洋,谷 和雄: 高分子論文集,49,97(1992)

34)D.C.Edwards.K Sato:Rμわわεr Ch8肱丁εchnoJ,52,84(1979)

35)D.C.Edwards.K Sato:Rμわわε7Chε .Tεchπo1,53,66(1980)

36)C.S.L.Baker,1.R.Gelling,R.Newel1:R励βrChε脚・Tεchπ・1・・58・67(1985)

37)S.Varughese,D.K Tripathy:∫.ノ4pμ』y.PoZ』y肱Sσ∫.,44,1847(1992)

38)S.K.Chakraborty,S.K。De:R麗bわ8r Ch8〃L Tεchnol.,55,990(1982)

(15)

39)S.Bandyopadhyay,P.P.De,D.K.Tripathy,S.K.De:R麗わわεr Chθη.T8chno1.,

69,637(1996)

40)1.R.Geliing:Rμわわεr Chεη2.Tεchnoム,58,86(1985)

41)A.Subramaniam,Wong Wai Suin:」.翫孟.RめわαRεs.,1,58(1985)

42)R.Greco,C Maglio,E Martuscelli,P,Musto,R.Palumbo:Po1卿8r Procε55

En8∫πεεr∫n8,4ン253(1986)

43)C.H.Wu,A.C.Su:Po1卿.En8.αn43c∫.,31,1629(1991)

44)S.Tazuke,H.Kimura:」.PoJy肱3c∫.ノPoly趨.Chε配・,15,27047(1977)

1.2.4加硫ゴムの環境劣化とフィラー

 硫黄加硫して用いるゴムは二重結合を有するために、熱、光、オゾンのよう な環境劣化要因によって、プラスチックよりも比較的短期間で劣化し、実用性 能を失うので、環境劣化性の評価と、それに対する対策が重要である。

 高分子材料を屋外使用した場合、光が最も大きい劣化の原因であるが、加硫 ゴムではオゾンも劣化を引き起こす。オゾン劣化は二重結合を有するゴムがオ ゾンによって酸化され、分子鎖が切断する現象であるので1)、ゴムの化学構造 の影響が大きく、フィラーの種類による劣化挙動の相違は小さいと考えられる。

 加硫ゴムの光劣化はこれまであまり検討されることはなかった。これは、優 れた光遮蔽剤であるカーボンブラックが配合された製品が大部分であったため であるが、本研究で対象としている白色フィラーを配合した明色製品を屋外使 用する場合は光劣化が問題となる。白色フィラーを用いた加硫ゴムの光劣化に 関しては、二重結合が少ないために比較的耐候性が良好であるといわれている ブチルゴム2)やEPDM3)を用いた報告がある。これらでは、劣化の進行はフィラ ーの種類によって異なり、酸化チタンのような遮光性の高いものは遅く、シリ カのように光透過性のよいフィラーで速いことが述べられている。しかしなが

ら、これらの報告では、劣化は試料の外観の変化や断面の顕微鏡観察で評価さ れており、物性の変化は調べられていない。

 ところで、鉄道用防振パットに100年近く使われた非カーボンブラック配合 のNRゴムは、表面近傍の劣化は著しいが、内部になるほど劣化の進行が遅い

一」.5一

(16)

ことが報告されており、これは、表面に硬化層が形成されて光が遮蔽されるこ とや、酸素の内部への拡散が抑制されるためであると考えられている4)。した がって、NRの耐候性は白色フィラー配合でも比較的良好なことが考えられる が、光劣化に及ぼすフィラーの影響について物性変化を調べて評価した報告は

見られない。

 熱劣化は熱によって生成したポリマーラジカルに酸素が結合することで開始 される酸化反応であるために、ポリマーの化学構造の影響が大きい。したがっ て、EPDMのような二重結合の少ないゴムと比韓して、NRやSBRのようなジ

エン系ゴムは耐熱性に劣る。

 ところで、NRは、ゴムとしての性質に優れているとともに、持続生産可能な 環境に優しい材料で、グリーン調達の要求にも対応でき、価格面の優位性から も、今後、ますます重要性が増すと考えられる。しかしながら、その連続使用 温度は60℃5)といわれているように耐熱性が良好でないために、使用環境によ

ってはNR以外のゴムを用いた性能の低い製品を用いなければならない場合が 多い。したがって、NRの高度な性能を発揮させ、過酷な使用条件に耐える製品 の開発には、その耐熱性を向上させることが必要である。

 加硫ゴムの耐熱性は、有効硫黄加硫系や硫黄供与加硫系を用いることにより 改善されることはよく知られているが6)、これらを用いた加硫ゴムは引張物性 や屈曲亀裂抵抗性があまり良好でない。また、これらの加硫系で用いられる TMTDのようなチウラム系促進剤は、加硫時に生成するN一ニトロソアミンの発 ガン性が疑われている。また、ウレタン加硫7)が一時注目されたが、コストに課 題がある。したがって、硫黄加硫系で老化防止剤の効果を十分発揮させるよう な配合設計が必要である。

 Mathewら8)やHamedら9)は、NRの硫黄加硫ではカーボンブラックが熱劣化 を促進することを報告している。川崎ら10)は、NR、のカーボンブラック配合と炭 酸カルシウム配合を比較し、耐熱性は後者の方が良好であることを示している。

さらに、Levy11)は、カーボンブラック配合とクレー配合で老化防止剤の効果を 調べ、クレー配合における効果が優れていることを報告している。これらの研 究から無機フィラー配合NRの耐熱性がカーボンブラック配合NRより良好であ ることが示唆される。しかしながら、カーボンブラックに次ぐゴム補強性フィ

(17)

ラーとして広く用いられているシリカを配合したNRの耐熱性について調べた 報告は見られない。

       文献

1)池田裕子:・ゴム技術の基礎 ,P.35,日本ゴム協会(1999)

2)D.C.Edwards,R.C.Klingender:Rμbわεr。48ε,Octo畳》er,65(1964)

3)H.Baldyga,H.C.Jones:Rめわεr Chε肱丁8chno1.,39,1347(1966)

4)H.Nakauchi:∫.オ〃1y.P・1y醒.3c∫りP・1y肱Sy仰…58}370(1992)

5)秋葉光雄: ゴム工業便覧 第4版,p.610,日本ゴム協会(1994)

6)太智重光: ゴム技術の基礎 ,p.150,日本ゴム協会(1999)

7)C.L.S.Baker: Natuml Rubber Science and Technology ,p.468,0xford Science Publications(1988)

8)N.W.Mathew,S.K De:Po加2ε■,24,1042(1983)

9)G.R.Hamed,J.Zhao:Rめわεr Chε η.TεchnoJ.,72,721(1999)

10)川崎仁士,草野文雄,児玉総治,中司卓男,板谷克彦:岡山県工業技術センタ ー報告,9,33(1983)

11)M.Levy:κα碗5ch.(ヲ麗溺雁κ耽3餅.,42,129(1989)

一17一

(18)

第1.3節本論文の概要

1.3.1フィラーと未加硫ゴムの性質

 第2章第2.1節では、加硫特性には練り生地中の水分とフィラー表面のシラ ノール基が影響すると思われることから、まず、硫黄加硫系の純ゴム配合練り 生地を用いて、貯蔵湿度条件を変えた場合の加硫特性の変化を調べた。その結 果、NRとSBRでは、水分量が多いほど加硫反応の誘導時間(10%加硫時間、tc(10))

が短くなり、水分量が安定するとt。(10)も一定したが、加硫速度は水分の影響 を受けなかった。この原因として、水分が加硫の誘導期に加硫促進剤とZnO、

ステアリン酸が反応して生成する中間体の生成を促進していることを推察し た。一方、NBRでは、tc(10)、加硫速度とも水分の影響を受けなかったことから、

ニトリル基が水分と同様の役割をしているために、見かけ上、水分は影響しな かったと考えられた。

 第2章第2.2節では、シリカ配合のNR、SBR、NBRの練り生地を用いて、貯 蔵湿度条件を変えて加硫特性を測定し、加硫に及ぼす水分の影響を調べた。NR

とSBRでは、練り生地中の水分によってtc(10)、加硫速度とも大きく影響を受 け、水分量が多いほど加硫が速くなった。また、この貯蔵湿度による加硫特性 の変化は可逆的であった。これは、表面シラノール基とZnOの相互作用のため であることを推察した。一方、純ゴムと同様に、シリカ配合でも、NBRの加硫 に水分の影響が小さかったが、これは、ニトリル基とシラノール基の相互作用 により、ZnOとの反応が起きないためと考えられた。また、練り生地の貯蔵時 の湿度によって、加硫ゴム物性も影響を受けるために、錬り生地の管理に十分 注意しなければならないことを示した。

 第2章第2.3節では、ゴム加工助剤に用いる液状天然ゴム(LNR)の新しい製造 方法として、NRラテックス中にオゾンを吹き込んで、NRを酸化分解する方法 について検討した結果を述べた。この方法では、分解機構がpHに依存し・pH が8以上ではオゾンと水酸基の反応によって生成したペルオキシラジカルによ って開始されるラジカル分解で、それ以下ではオゾンの直接酸化分解機構で分 解すると考えられた。また、過酸化水素の添加により分解が促進されることを 見い出した。ここで行った反応条件では、重量平均分子量で50,000以下のもの

を調製することはできなかったが、分解生成物は淡色で、プロセスオイルと同

(19)

様な可塑化効果を示した。

1.3.2フィラーのゴム補強効果

 第3章第3.1節では、5種類のフィラー(カーボンブラック、シリカ、炭酸カ ルシウム、カオリンクレー、タルク)を配合したNR、SBR、NBR及びEPDMの 加硫ゴムの引張強さ、伸張モジュラス、弾性率に及ぼすフィラーの配合効果を 評価するとともに、マトリックスゴムーフィラー問の相互作用をZiegelの方法 で評価し、物性値との関係を調べた。弾性率は、純ゴム配合ゴムとフィラー配 合ゴムのtanδのピーク値の比(tanδc/tanδm)で一律的に表され、tanδc/tanδ

mが大きいほど弾性率が高かったが、シリカなど粒状フィラーとクレー、タル クの板状フィラ・一では弾性率のtanδc/tanδm依存性が異なり、板状フィラー 配合の方が依存性が大きかった。一方、NR以外の伸張結晶化しないゴムの引張 \ 強さは・フィラーの種類にかかわらず、ゴムごとで同じ直線上でtanδc/tanδm の増大とともに向上したが・伸張モジュラスとtanδC/tanδmは、カーボンブ ラックとその他のフィラーで異なった直線関係にあり、いずれのゴムでも、カ ーボンブラック配合の方が依存性が著しく大きかった。また、板状フィラーと、

粒状フィラーでは、室温付近のtanδに及ぼす影響が異なり、tanδは板状のク レー、タルクでは配合量とともに著しく大きくなった。これらの結果とフィラ ーゲル量や膨潤度の測定結果から、界面相互作用の機構として、カーボンブラ ックではゴムマトリックスとフィラー間の化学的な強い相互作用が存在してお り、一方、シリカではフィラー粒子間の相互作用、板状のクレーやタルクでは 形状効果が影響していることが示唆された。

 このように、tanδc/tanδmは、界面相互作用だけでなく、フィラー粒子間 の相互作用や、形状効果を含めたゴムーフィラー間の相互作用を評価するパラ メーターであると考えられた。

 板状フィラーが特異な配合効果を示したことから、第3章第3.2節では、粒 子径が0.2μm程度の板状結晶の水酸化マグネシウムを合成して、そのゴム配合 効果を調べた結果について述べた。用いた水酸化マグネシウムは、加硫促進効 果、ゴム補強効果、難燃効果を示す多機能性フィラーであり、しかも、シラン カップリング剤が効果を示すことを認めた。

 第4章では、白色フィラー配合加硫ゴムの物性を改善する目的で、ゴム分子

一19一

(20)

を無水マレイン酸やシランカップリング剤を用いて改質し、ゴムマトリックス ーフィラー問の界面相互作用を向上させる方法について述べた。

 第4章第4.1節では、ポリオレフィンの例にならって、エチレンプロピレン ジエン3元共重合体ゴム(EPDM)を、過酸化物の存在下・密閉式混練機を用いて・

無水マレイン酸で改質することにより、炭酸カルシウムの加硫ゴム補強効果が 改善されることを示した。しかしながら、過酸化物を用いるために、SBRやNR ではゲル化や分解のために改質することができなかった。

 そこで、改質時のゲル化などゴムの変質が少なく、エネルギー消費量の少な い方法として、光反応開始剤の存在下で、光化学反応による改質を実施した。

改質剤は、第4章第4.2節では無水マレイン酸、第4章第4.3節ではシランカッ プリング剤γ.MPSを用いた。無水マレイン酸を用いた場合、NBRのみグラフ

ト化が可能であったが、γ一MPSは、SBR、NBR・EPDMにグラフトした・

 無水マレイン酸改質NBRでは、0.3%程度の低いグラフト率でも、炭酸カルシ ウムだけでなくシリカ、カオリンクレーの加硫ゴム補強効果が改善された。

 γ、MPSでは、シリカ配合加硫ゴム物性が添加法やシリカを表面改質剤して用 いるよりも少量で著しく向上し、これは、フィラー一ゴム間の界面で化学結合 に近い相互作用が存在しているためであることを確認した。

 また、改質を行うことにより、白色フィラー配合でもカーボンブラック配合 に匹敵するか、それ以上の性能を示した。

 1.3.4加硫ゴムの環境劣化とフィラー

 第5章では、白色フィラーを配合した加硫ゴムの耐候性と耐熱性を調べた結 果、NRは白色フィラー配合でも耐候性に優れていることと、耐熱性はカーボン ブラック配合よりも良好なことを見いだした。

 第5章第5.1節では、シリカ、クレー、タルク奪配合した加硫ゴムの耐候性 試験機を用いた促進試験を行い、抗張積(引張強さと破断伸びの積)の保持率の 変化で耐候性を評価した。保持率は、SBRやEPDMでは著しく低下し、いずれ のフィラーでも暴露40時間以下で初期値の20%以下になった。一方、NRはSBR やEPDMでよりも著しく劣化が遅く、暴露400時間でも、保持率は、シリカ配 合で50%、クレー、タルク配合では80%であった。このような結果は、屋外暴 露試験でも同様で、NRは劣化が遅かった。劣化試料の赤外吸収スペクトルによ

(21)

り、劣化反応で生成するカルボニル基の生成量を試料の深さ方向で調べた結果、

カルボニル基は、NRでは暴露表面近傍で多く生成し、内部では生成していなか ったのに対して、EPDMではかなり内部にまで生成していた。このことから、

NR、は表面近傍でのみ劣化しているのに対して、EPDMは内部まで劣化するた め、EPDMの方が物性の低下が大きくなったと考えられた。また、NRの表面劣 化層は樹脂状に硬化しており、その硬化層が光を遮蔽し、酸素の内部への拡散

を抑制しているものと思われた。

 第5章第2節では、ギヤー老化試験機を用いて、NRのシリカ及びカーボンブ ラック配合加硫ゴムの熱劣化試験を行って、引張強さと破断伸びの変化を調べ ることにより、ゴムの熱劣化挙動や老化防止剤の効果に及ぼすシリカとカーボ ンブラックの影響を比較した。老化防止剤未配合の場合では、シリカ配合とカ ーボンブラック配合は同様な傾向で物性が低下したが、老化防止剤を配合する と、その効果はシリカ配合の方が良好で、これはクレー配合でも同様であった。

これは、シリカやクレーのシラノール基が老化防止剤を活性化しているためで あることを推察した。また、老化防止剤には、主鎖の分解や架橋反応を抑制す るだけでなく、架橋構造を安定化する効果があることを認めた。

一21一

参照

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