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調 査 結 果 事 例 1 事 例 2 事 例 3 調 査 結 果 2014 年 度 ひらく 日 本 の 大 学 調 査 では 国 際 化 学 生 の 送 り 出 し 受 け 入 れ についてさまざまな 内 容 を 聞 いた その 中 から 今 回 は 海 外 への 学 生 の 送 り 出 しに 関

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調査結果 2014年度 「ひらく 日本の大学」調査より ・コラム:トビタテ!留学JAPAN 事例1 鹿児島大学 ・短期間の海外研修 ・欧米だけでなくアジア・南米でも研修  中長期の留学へのきっかけに 事例2 大阪大学 ・理工系学生に対する1カ月間の海外研修 ・英語力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション 能力の向上 事例3 東京国際大学 ・約1年間の留学 ・授業の受講とともに多彩な課外活動で学生が成長

ひらく 日本の大学

 朝日新聞社と河合塾教育研究開発本部は、 2011年度から共同調査「ひらく 日本の大学」を実 施しており、本誌で調査結果や、大学の取り組み などを紹介している。  今回のテーマは「学生の成長を促す海外研修・留 学」である。  4月に発行した『「ひらく 日本の大学」から見る 大学の教育力』の巻頭インタビュー「学生を成長さ せる大学とは」で、最近の大学教育は、「専門的知 識・技能」だけでなく、「汎用能力」、さらには「自 己認識」を深めることも重要な役割となっている。 自己認識は、一般的には「人格形成」や「人格的な 成長」と呼ばれるものである。大学はこれまで学 生の人格的な成長という視点が希薄であったが、近 年は学生の人格的成長について大学教育への期待 が高まっている。学生の自己認識を深め、学生の 成長を促すためには、いろいろな経験を積ませる CONTENTS

p64

p66

p69

p72

朝日新聞×河合塾 共同調査

学生の

成長を促す

海外研修・

留学

第15回

ように工夫されたカリキュラムを構築することの ほか、ボランティアや海外留学、インターンシップ も自己の相対化に極めて大きな意味を持つ。特に 言葉があまり通じず、考え方が大きく異なる生活 環境で過ごす海外留学は学生の成長の大きなきっ かけとなるはず||と筑波大学金子元久教授は説 明する。  また、大学教育のグローバル化は多くの大学に とって非常に重要な課題だ。特にその中でも学生 を海外に送り出す海外研修・留学にも力を入れて いることが、「ひらく 日本の大学」調査でわかった。  そこで、今回はグローバル化に関する取り組み の中で、海外研修・留学を取り上げた。3つの大 学をレポートするが、特に海外研修・留学を経験 した学生の成長についても紹介したいと考え、今 回は大学の取り組みだけでなく、学生のインタ ビューも掲載している。 Kawaijuku Guideline 2015.9 63

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短期間の留学プログラム等の実施が最多

 まず、留学プログラム等について、全学での実施状況を 見てみよう。送り出しについては、学士課程・大学院とも 「短期間(1学期程度)の留学プログラム、サマープログ ラム、海外体験・研修」の実施率が最も高くなっている <図表1>。特に、学士課程においては75%とかなり高 い。期間が短い方が実施率が高い傾向がある。  全学的な留学プログラムだけでなく、学部独自の留学 プログラムを実施している大学も40%ある。設置者別に 見ると、国立大49%、公立大33%、私立大38%である。  系統別に見たのが<図表2>である。実 施率が高い系統から順に、医、歯、農学系 と続き、農学系とほとんど変わらない社会・ 国際系、さらに文・人文系と続く。文系の イメージが強い留学プログラムだが、そう ではないことがわかる。技術者・研究者な どは海外で活躍する機会が多いが、工学系 が32%にとどまっているのは、1年次から の積み上げ型のカリキュラムのため、行き づらいという現状があるようだ。なお、同 じ積み上げ型のカリキュラムでの医・歯系 が高いのは、主に5・6年次に行われる臨 床実習の際、海外での臨床実習プログラム (希望者)を用意しているからであろう。  では、海外研修・語学研修、異文化体験 等を目的としたプログラムや、留学に参加 している学生がどの程度いるのか。期間別 に聞いたのが<図表3>である。学士課程 では全体で約6万人の学生が参加している。 なかでも「2週間未満」「2週間以上~1 カ月未満」という1カ月未満の割合が全体 で6割以上となっている。

経済的負担、資金が障害

 ただ、送り出しについて全学的に障害に なっていることを聞くと、「学生・保護者の 金銭的負担が大きい」「送り出し学生の支援 のための十分な資金を大学が確保できない」といった資 金面での障害を指摘する大学が多い<図表4>。そのた め、事例にもあるように大学からも支援金を出し、学生 や保護者の経済的な負担を少しでも減らすことが、学生 の留学意欲を喚起する上でも重要になっている。  このように各大学で海外研修・留学に行く学生を増や そうと尽力している。長期の留学プログラムに参加する 学生を増やすためというのが最大の理由だが、短期の海 外研修・体験であっても、学生の成長を促し学修意欲を 喚起させ、その後の学修につながっているからという面 もあるからだ。 (注)2014 年4~7月に、国公私立大学 745 校(4年制または6年制の大学、大学院大学は除く)を対象に実施。回答校数 609 校(回答率 82%)。7 月 25 日までに回答した 607 校で集計・分析。 <図表1>学生の送り出しに関する全学的な実施状況

調査結果

事例 3 事例 2 事例 1 調査結果  2014 年度「ひらく 日本の大学」調査では、「国際化」「学生の送り出し・受け入れ」についてさまざまな内容を聞 いた。その中から、今回は海外への学生の送り出しに関する情報を中心に、大学の取り組みを紹介する。 <図表2>学部独自の留学プログラムの実施状況 海外への留学義務づけ 長期間(1年以上)の留学プログラム 長期間(1年程度)の留学プログラム 短期間(1学期程度)の留学プログラム・サマープログラム等 海外インターンシップ 海外への留学義務づけ 長期間(1年以上)の留学プログラム 長期間(1年程度)の留学プログラム 短期間(1学期程度)の留学プログラム・サマープログラム等 海外インターンシップ 学 士 課 程 大 学 院 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育※国公立大のみ 理 工 農 医 歯 薬 保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 0% 20% 40% 60% 80% 0% 20% 40% 60% 80% 1% 11% 48% 75% 24% 0% 8% 26% 36% 12% 45% 48% 23% 35% 41% 32% 32% 49% 66% 54% 39% 33% 36% 38% 海外への留学義務づけ 長期間(1年以上)の留学プログラム 長期間(1年程度)の留学プログラム 短期間(1学期程度)の留学プログラム・サマープログラム等 海外インターンシップ 海外への留学義務づけ 長期間(1年以上)の留学プログラム 長期間(1年程度)の留学プログラム 短期間(1学期程度)の留学プログラム・サマープログラム等 海外インターンシップ 学 士 課 程 大 学 院 文・人文 社会・国際 法・政治 経済・経営・商 教育※国公立大のみ 理 工 農 医 歯 薬 保健 生活科学 芸術・スポーツ科学 総合・環境・人間・情報 全体 0% 20% 40% 60% 80% 0% 20% 40% 60% 80% 1% 11% 48% 75% 24% 0% 8% 26% 36% 12% 45% 48% 23% 35% 41% 32% 32% 49% 66% 54% 39% 33% 36% 29% 40% 38% Kawaijuku Guideline 2015.9 64

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「ひらく 日本の大学」第15回 学生の成長を促す海外研修・留学  各大学でも海外研修・留学に力を入れているが、国も それを後押ししている。2014年から始まった「トビタテ! 留学JAPAN日本代表プログラム」である。この制度は、 2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略~JAPAN is BACK」において2020年までに大学生の海外留学12万人 (現状6万人)、高校生の海外留学6万人(現状3万人)と 現状から留学生の倍増をめざすものだ。「官民協働海外留 学支援制度」として政府だけでなく民間企業から寄附を得 て、官民協働で将来世界で活躍できるグローバル人材を育 成しようとしている。河合塾もその趣旨に賛同し、協力し ている。  このプログラムには、大学生と高校生対象の2つがある。  現在、大学生対象のプログラムとしては、平成28年度 前期(第4期)の5つのコースの募集が始まっている。この プログラムは、留学したい学生が自分で留学プランを設計 するもので、交換留学など単位取得を前提とした留学だ けでなく、インターンシップやボランティア、フィールドワー クなど、学校に行かない活動でも応募できる。さらに第4 期については、海外への渡航経験が少ない学生の留学を 応援する枠が設定され、3カ月以上だけでなく28日以上 であれば短期の留学計画でも応募可能だ。  コースは「理系、複合・融合系人材コース」(220人)、「新 興国コース」(80人)、「世界トップレベル大学等コース」(100 人)、「多様性人材コース」(100人)のほか、「地域人材コー ス」もある。  高校生対象は、平成27年度は今年の1月からエントリー が開始し、この7月から留学が始まっている。応募者514 人のうち、書類選考を通過した432人について面接によ る第2次審査を実施し、303人が合格した。今年6月現在 の分野別生徒数(採用予定数)は、「アカデミック分野」 (154 人)、「スポーツ・芸術分野」 (58人)、「プロフェッショナル 分野」(55人)、「国際ボランティア分野」(36人)である。  応募条件やプログラムの詳細については、「トビタテ! 留学JAPAN」のホームページをご覧いただきたい。 <図表4>送り出しに関する障害 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■大きな障害である ■障害である ■どちらでもない ■あまり障害ではない ■全く障害ではない ■未回答 ■2週間未満 ■2週間以上∼1カ月未満 ■1カ月以上∼3カ月未満  ■3カ月以上∼6カ月未満 ■6カ月以上∼1年未満 ■1年以上 0% 20% 40% 60% 80% 100% 学生・保護者の金銭的負担が大きい 送り出し学生の支援のための十分な資金を大学が確保できない 学生の英語力が十分でない 長期留学によって就職活動に不利益が生じる 学生の意欲・関心が低い 23% 51% 15% 8% 2% 13% 41% 25% 16% 3% 4% 2% 10% 47% 23% 15% 2%2% 7% 27% 36% 23% 2% 6% 34% 27% 24% 6% 2% 国立大 公立大 私立大 全体 28% 38% 11% 4% 16% 3% 19% 41% 10% 4% 23% 2% 23% 38% 8% 12% 14% 4% 24% 38% 9% 10% 15% 4% <図表3>学士課程 海外でのプログラム・留学等(送り出し)の参加人数・割合(2013 年度中に出発した学生が対象) 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■大きな障害である ■障害である ■どちらでもない ■あまり障害ではない ■全く障害ではない ■未回答 ■2週間未満 ■2週間以上∼1カ月未満 ■1カ月以上∼3カ月未満  ■3カ月以上∼6カ月未満 ■6カ月以上∼1年未満 ■1年以上 0% 20% 40% 60% 80% 100% 学生・保護者の金銭的負担が大きい 送り出し学生の支援のための十分な資金を大学が確保できない 学生の英語力が十分でない 長期留学によって就職活動に不利益が生じる 学生の意欲・関心が低い 23% 51% 15% 8% 2% 13% 41% 25% 16% 3% 4% 2% 10% 47% 23% 15% 2%2% 7% 27% 36% 23% 2% 6% 34% 27% 24% 6% 2% 国立大 公立大 私立大 全体 28% 38% 11% 4% 16% 3% 19% 41% 10% 4% 23% 2% 23% 38% 8% 12% 14% 4% 24% 38% 9% 10% 15% 4% 国立大 公立大 私立大 全体 2週間未満 2,874 645 11,145 14,664 2週間以上~ 1カ月未満 3,872 1,366 18,420 23,658 1カ月以上~ 3カ月未満 1,129 337 3,775 5,241 3カ月以上~ 6カ月未満 408 146 5,746 6,300 6カ月以上~ 1年未満 1,619 748 6,845 9,212 1年以上 342 77 2,007 2,426 合計 10,244 3,319 47,938 61,501 Column

トビタテ!留学 JAPAN

Kawaijuku Guideline 2015.9 65

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4年間の体系的なプログラム

「P-SEG」

 P-SEGの核となるのは1~2週間 の短期海外研修だ。鹿児島大学では、 従来から教員が個人的なネットワー クを通じて、ゼミ単位で海外での研 修活動を実施してきた。中には20 年以上にわたって継続的に続けられ てきたものもある。当時は、意欲あ る学生が自費で参加しており、経済 的な負担も大きく、大学として海外 での教育活動を支援する仕組みは整 備されていなかった。そこで、2010 年から「鹿児島大学学生海外研修支 援事業」を開始し、学生の経済的な 負担の軽減、教育プログラムの充実 といった面だけでなく、危機管理の 面からも、海外研修を推進する体制 が整えられた。  「ところが、研修前後の指導は研修 ごとに異なっており、大学の資金を 使って海外研修を行っても、体系的 な人材育成になっていない面があり ました。そこで、2013年からは国際 連携推進センターがこの事業を統括 し、4年間を通じた体系的なグロー バル人材育成プログラムP-SEGと して再構築することになりました。 その上で、海外研修をP-SEGの中心 に位置づけたのです」(国際連携推進 センター中谷純江教授)  P-SEGの全体像を<図表1>に示 す。海外研修は「P-SEGコア」とし て展開されている。海外研修に参加 を希望する学生は、まず「P-SEG説 明会」を受講し、海外研修ごとに事 前学習を行う。2週間程度の海外研修 を行い、帰国後には報告書を提出す る。さらに事後学習として「グロー バル・イニシアティブ概論」を履修 する。なお、海外研修も「グローバ ル・イニシアティブ概論」もそれぞ れ共通教育科目(2単位)である。  一連の海外研修関連の活動と並行 して「P-SEG+(ピーセグプラス)」 も用意されている。学外の語学学校 の講師によるプレゼンテーション能 力向上やTOEFL対策など集中的な 英語講座や、海外研修で訪問する国 から来ている留学生と、その国の言 葉でコミュニケーョンすることがで きる多言語多文化交流の場などがあ り、こちらは正課外教育として提供 されている。  さらに、P-SEGには、共通教育で はなく各学部での専門に関する海外 研修も含まれており、こうした研修に も大学から支援金が提供される。共 通教育科目の海外研修から学部の海 外研修へとつなげ、そこから長期留 学や海外でのインターンシップ、ボ ランティア、フィールドワークなど の海外活動へと発展させることで、最 終的にグローバル人材の輩出をめざ しているのだ。  「海外研修は、グローバル人材育 成のあくまでも入口だと考えていま

中長期の留学へのきっかけづくりとして

短期間の海外研修プログラムを多数用意

鹿児島大学では、海外研修や語学学習、留学、海外インターンシップなどを 総合的に組み合わせたグローバル人材育成プログラム 「進取の精神グローバル人材育成プログラム(P-SEG:ピーセグ)」を展開している。 特に1~2年次を主な対象とする共通教育科目として開設されている短期の海外研修は、 国際協力や企業訪問など多彩なテーマを掲げて、アジアや北米、南米などで研修を行っている。 プログラム数も多く、年間約250人の学生が参加している。 <図表1>ロードマップ

鹿児島大学

調査結果 事例 1 事例 2 事例 3 中谷純江教授 3~4年次専門教育科目 1~2年次共通教育科目 P-SEG 説明会 (受講登録) P-SEG+

・語学学習(Intensive English Course) ・多言語多文化交流の場

(Global Language Space) P-SEGコア ・海外研修(共通教育科目) ・グローバル・ イニシアティブ概論 各学部での 海外研修 海外での活動 ・留学 ・インターン  シップ ・ボランティア ・フィールド  ワーク グローバル 人材の 輩出 ・就活 ・ワークキャリア  形成 ・研究活動 ・海外の  大学院留学

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す。海外研修に行って終わりではな く、そこでの経験を、より長期間の 留学につなげるきっかけにしてほし いのです。そのため私が担当してい る『グローバル・イニシアティブ概 論』では、異なる地域を訪れた、海 外研修参加者がお互いの体験を共有 する機会を設けています。現地で感 じた疑問や問題点をディスカッショ ンしたり、識者による講演会を開催 したりして、“その次の”ステップに 進んでいく意欲を高められるように 工夫しています」(中谷教授)

2014 年度は約 250 人が参加

 「P-SEGコア」における海外研修 の特色の1つは、多彩なプログラム が多数用意されている点だ。2015年 度は、共通教育科目の海外研修14プ ログラム<図表2>、学部の海外研 修12プログラムに支援金が支給され ている。支援金の支給が開始された 2010年度の参加学生は133人だっ たが、2014年度は247人が参加した。  研修先も多岐にわたり、北米だけ でなくアジアや南米も含まれている。 また、他大学と共同で実施する研修 もある。例えば「海外研修基礎コー ス in カリフォルニア」は、国内の複 数の大学との合同実施だ。「東アジア 社会の共通課題は何か?」は、韓国 の釜山大、高麗大、延世大と、日本 の九州大、西南学院大と合同である。  中谷教授が担当している「共生の ためのフェアトレードII」は、2013 年度に開始し、今年で3年目を迎え る。事前学習で世界には圧倒的な貿 易の不均衡があることを理解し、そ の解決手段の1つとしてフェアト レードの基本的なシステムを学んで から、バングラデシュに2週間ほど 滞在する。  「バングラデシュでは多くのNGO が活動しており、開発支援に関する さまざまな事例を見ることができま す。研修では、貧困者への少額融資 『マイクロクレジット』の創始者で、 ノーベル平和賞を受賞した経済学者 M・ユヌス氏が提唱するソーシャ ル・ビジネス(社会的企業)を視察 したり、農村地域で伝統的な技術や 農業の支援を行うNGOを訪問しま す。高収量の種や肥料を用いる農業 では、借金をして種苗会社から種を 購入し続けるため、いつまでたって も農民は貧困から抜け出せません。 このNGOでは、土着の種を用い、収 穫した作物から得た種を用いた自立 的農業を推進する活動を行っている のです。また、都会のダッカでは現 地の大学生とも交流します。この研 修の最大の目的は、途上国の都市と 農村の両方を見ることで、地に足を つけて生きている人々の暮らしの実 態を理解することにあります。それ が、開発の意味、貧しさや豊かさの 意味を問い直すことにつながってい くのです」(中谷教授)

中期的な留学プログラムの

開発が課題

 海外研修に参加した学生は、長期 留学へと挑戦しているのか。  「2013年にバングラデシュの海外 研修に参加した13名のうち、1名は 『トビタテ!留学JAPAN』(注)に採択 されました。3名が交換留学プログ ラムを利用し、2名がインターンシッ プとして長期留学を実現させました。 こうした学生が周囲に刺激を与え、長 期留学への準備を始める学生は確実 に増加しています」(中谷教授)  ただし、大学全体で見ると、長期 留学者はP-SEG導入前から倍増した ものの、実数は20名(6名がトビタ テ、14名が交換留学)である。中谷 教授は、長期留学へのハードルを下 げる工夫の必要性も実感している。  「本学では留学経験者を年間600 名まで増やすという目標を掲げてい ます。その中に『P-SEGコア』の海 外研修を含めるとしても、現在は300 名程度です。長期留学者は50名く らいまで増加させるつもりですが、ま だまだ目標には及びません。そこで、 今後は3カ月~半年程度の中期留学 プログラムを拡充することを考えて います。学部で実施している海外研 修を、本センターが支援して長期化 する方法や、新たなプログラム開発 などに、留学生センターと協力しな がら取り組んでいきたいと思ってい ます。さらにはセメスター制の導入 や共通教育と学部教育の連携なども 視野に入れながら、海外研修から長 期留学へ、そしてグローバル人材育 成へという流れを、より強化してい きたいと考えています」(中谷教授) 「ひらく 日本の大学」第15回 学生の成長を促す海外研修・留学 <図表2>平成 27 年度実施予定の海外研修(共通教育科目)一覧 研修名 目的地 期間 前期 持続可能な社会形成の海外研修Ⅰ インドネシア 7 日間(9 月) 国際協力体験講座 タイコース タイ王国 9 月 2 日 ( 水 ) ~ 9 月 11 日 ( 金 ) 国際協力体験講座 ミャンマーコース ミャンマー 9 月 9 日 ( 水 ) ~ 9 月 18 日 ( 金 ) 東アジア社会の共通課題は何か? 韓国 15 日間(8 月) 進取の精神海外研修 in ベトナム ベトナム 7 日間(8・9 月) 海外研修基礎コース in カリフォルニア 米国 10 日間(9 月) 北米におけるグローバル人材育成 米国 21 日間(9 月) 南米における進取の気風研修計画 ブラジル 15 日間(8・9 月) 後期 持続可能な社会形成の海外研修Ⅱ インドネシア 7 日間(8・9 月) 海外研修基礎コース in 東南アジア シンガポール 9 日間(3 月) グローバル人材育成(雲南) 中国 14 日間(11 月) グローバル人材育成(タイ) タイ王国 8 日間(2 月) 共生のためのフェアトレードⅡ バングラデシュ 15 日間(2 月) 海外研修基礎コース in ハワイ 米国 10 日間(2 月) (注)65 ページのコラム参照。 Kawaijuku Guideline 2015.9 67

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長期留学を現実的に考えるようになり

海外での就職も視野に

学生インタビュー

鹿児島大学 法文学部 経済情報学科3年

森松 詩歩

さん 午前中は語学学校で英語を学び 午後は企業研修や現地大学生と交流 ──なぜ、シンガポールの海外研修に参加しようと思ったの ですか。 森松 私は一度も海外に行ったことがなかったため、1年次に、 同じ P-SEG の「海外研修基礎コース in カリフォルニア」に参 加しました。他大学の上級生に混じってカリフォルニア大学バー クレー校の大学生と交流する中で、勉強に対する熱意の違いに 衝撃を受け、ぜひもう一度海外研修に参加したいと思うように なりました。シンガポール研修を選んだのは、成長を続けてい る国であり、専攻する経営学ともつながると考えたからです。 ──どのような研修内容でしたか。 森松 午前中は語学学校で幅広い年齢層や国の学生に交 じって英語を学びました。私のクラスは、伝言ゲームやディ スカッションなど、英語を使うことを目的にしたレッスンが 中心でした。母語が異なる人たちの中で英語を学ぶので、何 が何でも英語を使ってコミュニケーションを取るしかありま せん。日本語が通じる環境で英語を学ぶのとはまったく違い、 とても新鮮でした。日に日に英語がゆっくり聞こえるように なり、だんだんと聞き取れるようになりました。今思い返し ても、この5日間の授業は効果が高かったと感じています。  午後は、出発前に各自で決めていたテーマに関するフィー ルドワークや、企業訪問、現地学生との交流などを行いまし た。私は「伝統文化」がテーマで、初日は旧正月に行われる 仮装パレード「チンゲイパレード」に参加して、フィールド ワークを行いました。シンガポールは、中華系、マレー系、 インド系などがいる多民族国家なので、このパレードに各民 族がどのような意識で参加しているのかを調べたいと思った のです。わずか1日でしたが、自分たちが異文化の中で生活 していることに誇りを持っており、それぞれの文化を持ち込 んで互いに楽しんでいることがよく理解できました。  企業訪問では、日系企業2社と、日本の地方自治体の国際 交流や国際事業を推進する活動をしている団体を訪問しまし た。日系企業では、シンガポールにおける女性の働き方につ いて、非常に興味深いお話を伺うことができました。シンガ ポールでは結婚や育児に関係なく働く女性が多く、また転職 をしながらステップアップしていく女性が多いということで す。それまで全く想像していなかったのですが、自分が海外 で就職することも視野に入れて考えるようになりました。も う1つの企業では、海外で働くことなどをテーマにしたワー クショップを行いました。英語でのビジネスでは、曖昧な態 度や返事は避ける必要があることや、現地の商習慣に合わせ る必要があることなどを学びました。 ──ほかに印象に残っている活動はありますか。 森松 シンガポール国立大学の日本語学科の人たちとの交 流では、彼らの海外志向の強さに驚くと同時に、国境を軽々 と越えていくグローバルなエネルギーの強さを感じました。 また、仲間のフィールドワークに同行して現地の日本語学校 を訪問しましたが、そこでは日本とシンガポールの教育環境 の違いに驚き、シンガポールの人たちの向学心の一端を垣間 見ることができました。 自分に自信が持てるようになり 留学生とも積極的に話すようになった ──海外研修を終え、ご自身に変化はありましたか。 森松 留学生と交流するサークルに入っているのですが、 研修参加前は、彼らとの間に何か壁があるように感じていま した。しかし帰国後は、もっとオープンに話せばいいんだと、 半ば開き直ったような気持ちで話せるようになりました。異 文化とのコミュニケーションに対する態度は大きく変わった と思います。また、海外で就職活動をしたいと思うようになっ たのも大きな変化です。家族はびっくりしていましたが(笑)。 さらに、1年間程度の留学をしてみたいと思うようにもなり、 「トビタテ!留学 JAPAN」への応募の準備を始めています。 ──成長したと実感できることはありますか。 森松 自分に自信が持てるようになったことです。これまで グループワークの中でも、自分から発言することは難しかっ たのですが、シンガポールで出会った人たちはみな、とにか く自分の意見を述べます。この研修を通じて「自分から発言 する大切さ」を痛感したため、積極的に発言しようと思い、 最近では授業中に発表することにも慣れてきました。最も大 きなことは、海外に対して感じた「壁」がなくなってきたこ とです。たった9日間の研修でしたが、私にとっては、将来 を大きく左右する非常に有意義な体験になりました。 「海外研修基礎コースin東南アジア」 (シンガポール研修)に参加

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理工系学生こそ

海外で学ぶ意義は大きい

 大阪大学では、理工系学生に特化 した留学制度を充実させている。留 学というと、文系学生が中心のイ メージがあるが、理工系学生こそ海 外で学ぶ意義が大きいと、大阪大学 大学院工学研究科国際交流推進セン ターの金子聖子助教は語る。  「大阪大学の理工系の学部生は、ほ とんどが大学院に進学します。大学 院では、国際学会で発表したり、英 語論文を投稿したりといった機会 が増えますから、英語力はもちろん、 コミュニケーション能力、プレゼン テーション能力は不可欠です。そこ で、理工系学生に特化して、学部生 向けの『海外英語研修コース』と大 学院生向けの『海外研究発表研修 コース』を設けています」  大阪大学の理工系学部・大学院に は約500名の外国人留学生(大学全 体では約2,000名)が在籍し、研究 室での共同研究や、海外の大学・研 究機関との連携も盛んだ。大阪大学 の理工系学生は、将来、企業などで 研究開発職として国際的なプロジェ クトに携わることも多いだろうし、 日本にいても外国人と臆することな くコミュニケーションを図り、自分 の専門分野や研究内容を英語で伝え、 発表できる力は欠かせないだろう。

科学英語の基礎や

ディスカッションを通して

積極性と専門分野への意欲を養う

 学部生向けの「海外英語研修コー ス」は、科学英語の基礎を身につ けることと、コミュニケーション能 力の向上を目的とする。工学部、基 礎工学部、理学部の1~4年生が対 象で、学生はオーストラリアのモナ シュ大学で8月末から9月末の約1 カ月間学ぶ。一般家庭にホームステ イして、現地の社会・文化にも触れ るほか、モナシュ大学の研究室を訪 問する機会も設けられている。  授業は、モナシュ大学が開講して いる外国人留学生対象の英語講座 と、大阪大学の学生のために特別に 開発されたプログラムからなる。後 者では、基礎的な科学英語を修得 するほか、電力事情、宇宙開発など のトピックに関するグループディス カッションを行うことで、科学英語 を使ったコミュニケーション能力の 育成を狙いとしている。さらに、滞 在中、各自が興味を持ったテーマに ついて調べ、1カ月の研修の総まと めとしてプレゼンテーションを行う。 コメントを参考に修正を加え、帰国 後、事後研修として再度プレゼン テーションを行い、それに合格すれ ば「理工系英語基礎海外演習」とし て2単位が認定される。  金子助教は、参加学生の帰国後の 変化に、手応えを感じている。  「理工系はシャイでコミュニケー ションが苦手な学生が多いように思 います。ところが、留学を経験する と、多くの学生が明るく前向きに、教 員や友人たちに積極的に話しかけ るようになるのです。理由を聞くと、 『日本では講義を真面目に聞いていれ ば受け身でもよかったが、海外では、 発言しないと全く授業に入っていけな い。自然と積極的な姿勢が養われた』 と口を揃えて言います。英語力につ いては、英語講座を通じて力が伸び たという意識もあるようですが、1カ 月の短期間では限界もあります。劇 的に英語力が伸びるというより、留学 の経験をもとに、英語に対する学習意 欲を高めてほしいと考えています」

研究テーマを用いて

プレゼンテーションスキルを磨く

大学院生向けコース

 一方、大学院生向けの「海外研

研究発表能力やコミュニケーション能力を高める

理工系学生のための海外研修コース

大阪大学では、理工系学部生のための「海外英語研修コース」、 理工系大学院生のための「海外研究発表研修コース」を設置している。 夏休み期間中の約1カ月間のプログラムを通じて、 英語力やコミュニケーション能力、研究発表能力を向上させることが狙いだ。 それだけではなく、参加した学生には、前向きで主体的な姿勢が生まれている。

大阪大学

調査結果 事例 1 事例 2 事例 3 中橋真穂助教 金子聖子助教 Kawaijuku Guideline 2015.9 69

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究発表研修コース」は、英語での 研究発表能力、コミュニケーション 能力の向上が主な目的だ。工学研 究科、理学研究科、基礎工学研究 科、生命機能研究科の修士課程1年 から博士後期課程2年まで参加でき る。学生はアメリカのカリフォルニ ア大学デービス校で約1カ月間過ご し、ホームステイも経験する。  コースの中心となる授業は「プレ ゼンテーションスキル」で、自分の 研究に関するプレゼンテーションを 繰り返し行い、聴衆の興味を引き つけるスキルを実践的に身につける。 デービス校の教員に対しファイナル プレゼンテーションを行い、合格す ると「工学英語」として2単位が認 定される。プレゼンテーション能力 に磨きをかけた学生は、帰国後の国 際学会で賞をもらうことも多いとい う。また、週1回、「ホットトピック ス」という現地学生とグループディ スカッションする授業もあり、グー グルの自動運転車など、旬のテーマ を理工学的な観点から討論している。  研究室訪問では、世界の研究レベ ルに触れ、専門の学習への意欲を高 めることにもつながっている。  また、プログラムの最後の3日間 は、サンフランシスコ研修として、ス タンフォード大学、カリフォルニア 大学バークレー校の研究室や、シリ コンバレーの企業などを訪問する。  「サンフランシスコ研修では現地 学生との交流イベントを学生自身が 企画して開催しています。授業や 研究室訪問、サンフランシスコ研修 などの機会を通して、海外にネット ワークを広げることは、その先、世 界を舞台にして研究を行う学生に とって大きな意義があります。帰国 後、長期留学や、海外の大学院進学 なども選択肢になり、留学相談のた め『国際交流推進センター』を訪れ る学生も増えています」(大阪大学 大学院工学研究科国際交流推進セン ター・中橋真穂助教)

留学への参加意欲を

高めることと

英語力維持のサポートが課題

 参加した学生の成長が感じられる 一方で、課題も残されている。  1つは、学生の参加意欲の喚起だ。 今年度、「海外英語研修コース」は 定員を30名から40名に増やしたが、 参加者は例年並みの28名にとどまっ た。「海外研究発表研修コース」も、 例年約25名の参加者が、今年は17 名に減少した。大学院生については、 企業の採用広報開始時期が後ろ倒し になり、多くの企業で夏休み期間中 のインターンシップが増えたことも 影響しているが、いずれにしても、い かにして学生の目を留学に向けさせ るか、留学の意義を伝えていくかが 今後の課題といえよう。  「もう1つの課題は、せっかく留 学を通して身につけた英語力や、コ ミュニケーション能力を維持でき ない学生も一部いるということです。 研究活動や就職活動で忙しい理工系 学生に対する留学後の支援をいっそ う強化する必要があると考えていま す」(中橋助教)  大学が行っている取り組みとして は、国際交流推進センターが主体と なり、留学経験のある学生などがス タッフとして運営する「イングリッ シュカフェ」がある。1~2週間に 1回、学生食堂で、日本人学生と外 国人留学生30 ~ 40名が英語で交 流するイベントを開催している。ま た、留学経験者が中心となったサー クル「Handai AIC(Association for International Communication)」 も発足し、お花見や餅つきなど、外 国人留学生との交流イベントを企画 している。これらに参加することで、 留学参加意欲の喚起と留学効果の維 持が期待できる。  この他に、英語開講の正規科目 「国際交流科目」の活用も考えられる と金子助教は言う。「国際交流科目」 は外国人留学生と一緒に受講するこ とができ、2015年度は1学期25科 目、2学期32科目が開講されている。 「身の回りの高分子」「先端科学技術 における応用物理学」など、理工系 学生向けの科目も多い。必修科目や 実験・実習の関係から受講する学生 は多くないものの、受講人数が増え れば、異文化交流や、専門分野を英 語で学ぶことへの興味を高めること ができるだろう。 「海外研究発表研修コース」の様子

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(注)学生フォーミュラ大会… 『ものづくりによる実践的な学生教育プログラム』として、アメリカの自動車技術者協会 (SAE) が主催するフォーミュラカーの 競技会のこと。1982 年より開催され、現在ではイギリス、オーストラリアでも開かれている。日本でも公益社団法人自動車技術会が「全日本学生フォー ミュラ大会」を開催している。

外国人への心理的バリアがなくなり

異文化交流に意欲が生まれる

学生インタビュー

大阪大学 工学部 応用理工学科 マテリアル科学専攻3年

倉田 星哉

さん 中国人留学生のパワーに刺激を受けて タフさを身につける必要性を痛感 ──「海外英語研修コース」に参加しようと思った理由は 何ですか。 倉田 もともと大好きだった英語の力を高めたいと考え、 2年生の夏休みに参加しました。留学前は、現地の人々と 会話する中で、新しい単語や言い回しを覚え、文法を復習 するなど、高校までの英語学習の延長のような学びを想定 していました。けれども、留学先で授業を受けたり、ホス トファミリー と 交 流 す るうちに、 例 え ば「Can I help you ?」の意味を単に知識として持っているだけでは不十 分で、ホストファミリーが困っているときに、実際に口に出 して言えるようになって初めて本物の英語力なのだという ことを感じました。怖じ気づかずにきちんと声に出す姿勢 が身についたことが、留学の最大の成果だと感じています。 ──現地の大学で印象に残っている授業はありますか。 倉田 グループディスカッションが印象的でした。「宇宙船 に乗って月に不時着した。200km離れた母船に戻るために、 縄、ピストル、水、電池など 20 のアイテムから5つ選べ」 といったテーマが与えられます。行程や必要な道具を、月 の温度や重力などの条件を加味しながら理工学的な視点で 考え、グループで話し合って選ぶのが、とても楽しかった ですね。日本の授業とは異なる雰囲気の中で、自ら積極的 に発言できるようになりました。  モナシュ大学の外国人留学生対象の英語講座では、中国 人学生のパワーに圧倒されました。先生の話が終わった瞬 間に意見を語り始めるのです。私は、将来グローバルな環 境で働きたいと考えており、そこでは中国の人々と共同で プロジェクトを行うこともあるはずです。そのときに、き ちんと自分の意見が表明できるように、もっと積極的にな り、説得力ある発言をし、精神的にもタフにならなければ と痛感しました。 ──1日に何時間の授業があったのですか。 倉田 1日4時間です。授業は午前中で終了するので、午 後は仲良くなったモナシュ大学の中国人留学生とメルボル ンを観光したり、ホストファミリーとゲームや日本につい ての話をしていました。 ──研究室を訪問する機会もあったのですか。 倉田 腹腔鏡手術用のロボットアームの制御技術、3D の 360° スクリーンなどの研究室を訪問しました。海外の最先 端の研究に触れたことは大いに刺激になりました。また、 私はマテリアル科学を専攻しているので、「学生フォーミュ ラ大会」(注)に出場しているサークルも訪れ、車体を軽量化 するための材料の工夫などを見学しました。 海外で活躍したいという夢が 現実的な目標になった ──留学を経験したことで、どんな成果を得ることができま したか。 倉田 外国人に対する心理的なバリアがなくなり、もっと 異文化交流をしたいという意欲が生まれました。そこで、帰 国後は、AIC という外国人留学生との交流イベントを開催す るサークルに入り、先日はお好み焼き・たこ焼きパーティー を企画しました。国際交流推進センターが主催する外国人 留学生との交流会「イングリッシュカフェ」にも積極的に参 加し、サウジアラビアの学生が MC を務めて、チーム対抗 戦で中東クイズに答えるクイズ大会などを楽しんでいます。  さらに、マレーシアからの留学生のチューターも担当して います。授業でわからなかった日本語を教えるなど学習面の 支援のほか、留学生は文化の違いで戸惑うことが多いため、 生活面の支援も行っています。留学を経験していなかったら、 ここまでアクティブな学生生活にはならなかった気がします。 ──専門の学びや、将来に生かせる面はありましたか。 倉田 大阪大学では4年次から研究室に配属されるのです が、私が希望している研究室は、約3割が外国人留学生です。 当然、共同で研究することも多く、留学で身につけた英語 力やコミュニケーション能力を生かせると考えています。 何よりも大きかったのは、以前から漠然と持っていた海外 で働きたいという夢が、留学を通して強まり、現実的な目 標になったことです。その実現のためにも、修士課程1年 次に約3カ月間、海外の企業でインターンシップを行いた いと考えています。 Kawaijuku Guideline 2015.9 71

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正規科目受講、寮生活、

クラブ活動など

現地学生との交流の機会が豊富

 東京国際大学の留学プログラムに は長い伝統がある。1965年の創学当 初から、ウィラメット大学で夏期ゼ ミナールを実施。以降、春期ゼミ ナールなど、留学プログラムを拡充 し、1989年、ウィラメット大学の隣 接地に「東京国際大学アメリカ校 (TIUA)」を開設し、約1年間留学 をする「アメリカンスタディーズ・ プログラム(ASP)」をウィラメッ ト大学と共同でスタートした。この プログラムでは、48単位を上限とし て単位認定されるため、約1年間留 学しても4年間で十分に卒業が可能 だ。  ASPに参加する学生の多くは2年 生(1年生の2月から)だが、3・ 4年生でも参加できる。そのため、 学生の英語力に合わせて充実したプ ログラムとなるよう工夫されている。 春学期(2月中旬~5月上旬)は英 語力の強化を目的とし、ネイティブ 英語教員による少人数授業を受ける。 夏学期(5月中旬~7月初旬)は、 春学期に培った英語力を基にリベラ ルアーツ科目を受講する。英語力の 基準を満たせば、秋学期(8月下旬 ~ 12月中旬)は、ウィラメット大 学の正規科目も受講する。  正規科目は現地学生と一緒に受講 するが、さらに現地学生との交流の 機会を増やすため、さまざまな工夫 がされている。  「ASPの学生は、図書館や体育館 などウィラメット大学の施設を自由 に利用できます。ウィラメット大学 の学生とルームメイトになり、学内 の学生寮で共同生活を送るなど、学 生はウィラメット大学のキャンパス ライフに完全に溶け込んで1年間を 過ごします」(高橋宏学長)  また、ボランティア活動やクラブ 活動、夏休み中のインターンシップ や他大学のプログラムへの参加など、 多彩な課外活動に参加できることも 大きな特徴だ。  「ボランティアには多い学生は 200時間以上参加しています。海岸 清掃や森林再生の他、遊園地や放送 局で業務を経験するなど内容はさま ざまです。ASPの学生はクラブ活動 にもとても積極的で、ほぼ全員が参 加しています。ウィラメット大学に は多様な国籍・民族の学生が在籍す るため、授業を受講するだけでなく、 課外活動を通じて交流を深めること が、多様性に触れる貴重な機会にな っています」(小室広佐子副学長)

苦難を乗り越えた自信が

成長を生む

現地学生の圧倒的な

学習量も刺激に

 ASPの参加学生は、約1年間の長 期にわたり現地で生活するため、そ の間に直面する葛藤や困難も多いは ずだが、学生たちはどのような成長 を遂げるのだろうか。  「一言でいえば、学生は自立して 帰ってきます。保護者からは、一皮 むけた、見違えるようになったとい う声が聞かれます。日本で英語を得 意と感じている学生でも、現地の大 学で英語による授業を受けるとなる と、まず英語力の不足を痛感するこ とになります。それだけでなく、ア メリカの授業では積極的に発言しな いと評価されませんから、自分の性 格、授業に対する姿勢を変える努力 も求められます。さまざまな苦難を 乗り越えたという自信が、成長につ ながっているといえるでしょう。留 学前はゼミで黙っていた学生が、帰 国後は自ら進んで発言し、時には今 日の議論は自分が仕切りますと、 リーダーシップを発揮している姿を

アメリカの大学で約1年間の留学を経験する

「アメリカンスタディーズ・プログラム」

「公徳心を体した『真の国際人の養成』を教育の基本理念とする 東京国際大学では、創学当初から留学プログラムの充実に力を注いでいる。 1989 年には米国姉妹校ウィラメット大学の隣接地にアメリカ校(TIUA)を開設。 約1年間の留学を経験する「アメリカンスタディーズ・プログラム(ASP)」を ウィラメット大学と共同でスタートさせ、 毎年120 名前後の学生が留学生活を送っている。

東京国際大学

調査結果 事例 1 事例 2 事例 3 高橋宏学長 小室広佐子副学長

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見ると、留学の効果を実感します」 (小室副学長)  さらに、高橋学長も、学生の学習 に対する姿勢の変化についてこのよ うに語る。  「アメリカで同世代の学生の学習 に対するひたむきな態度を目の当た りにする効果は絶大です。学生は相 当な自覚を持って帰国するので、学 習量も、学習に対する姿勢も見違え るようです」   もちろん、英語力も飛躍的に向上 する。TOEICのスコアが平均で約 200点も上昇しているのだ。  「参加した学生に聞くと、耳が英語 に慣れるのに約2カ月かかるそうで す。約1年間の長期留学だからこそ、 これだけの成果が上がっているとい えます」(高橋学長)  なお、ASP参加者は、言語コミュ ニケーション学部、国際関係学部の 学生の割合は高いものの、4分の1 程度は商学部、経済学部、人間社会 学部の学生だ<表>。  「グローバル化が進行する現代社 会では、どの分野に進学・就職して も国際的な感覚やコミュニケーショ ン能力が不可欠になります。今後は 商・経済・人間社会学部の学生の参 加人数もさらに増えることを期待し ています」(小室副学長)

目的の明確化をめざして

事前学習を充実

帰国後のより高度な学びも提供

 東京国際大学では、学生の留学が よりいっそう充実したものとなるよう、 事前・事後学習の充実にさらに力を入 れている。  事前学習では、これまで年約10回 実施していたガイダンスや説明会を、 今年度から「留学準備(ASP Prep)」 科目として単位化した。  「なぜ留学したいのか、現地で何を どのように学びたいのか、留学中の経 験を帰国後の学びにどうつなげたいの かなど、留学の目的を明確にすること がこの科目の目標です。これまで、ガ イダンスとして主に生活指導を行って いましたが、ディスカッションなどの グループワークやプレゼンテーショ ンなどを豊富に取り入れながら、学生 の目的意識を高める内容にしました」 (小室副学長)  また、姉妹校ウィラメット大学と連携 した英語教育組織Global Teaching Institute(GTI)を編成し、所属する26 名のネイティブ教員がアメリカ直輸 入の英語教育を実践。学生一人ひと りの英語力を十分把握し、きめ細かい 指導を行っている。留学前からネイ ティブスピーカーとの会話に慣れるこ とで、スムーズに留学生活がスタート できる。  2013年度には、学内に英語オン リースペースEnglish PLAZAをオー プ ン。常 駐 するGTI専 任 教 員とリ ラックスした雰囲気の中、英会話の レッスンを受けられるラウンジや、英 語学習のアドバイスを受けられるエリ アなどがあり、ASP参加者は、留学前 の準備や留学で身につけた英語力を 維持・向上させるために、積極的に活 用しているという。  さらに、東京国際大学では、2014 年度から、英語による科目のみで学位 取得可能な「English Track Program」 を開設した。  「約50カ国から学生が集まっており、 国際色豊かな環境のもとで学ぶことが できます。一定以上の英語力があれ ば、このプログラムへのコース変更や、 授業の受講が可能です。今後、ASP の参加者からそういった学生が出てく ることを期待しています」(高橋学長)  また、ASP参加後、ウィラメット大 学をはじめとした姉妹校・提携校へ正 規留学を果たす学生も年間約10名に 上る。そうした旺盛な意欲のある学生 に応えて、今年度から留学カウンセ ラーを配置して指導を強化しているほ か、4カ月程度のセメスター留学の拡 充なども検討している。  「ASPは学生が『国際人』となるた めの第一歩であり、決してゴールでは ないと考えています。在学中に二歩 目、三歩目を学生が踏み出せるよう、 今後も充実した留学制度の構築に努 めていきます」(小室副学長) 「ひらく 日本の大学」第15回 学生の成長を促す海外研修・留学 <表> 2014 年度 ASP 参加者(2014 年2月〜 2014 年 12 月) 学部 商学部 経済学部 言語 コミュニ ケーション 学部 国際関係 学部 人間社会学部 合計 人数 10 5 56 36 15 122 Kawaijuku Guideline 2015.9 73

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授業も課外活動も充実した1年間

自らチャンスをつかむことが大切

学生インタビュー

東京国際大学 言語コミュニケーション学部 英語コミュニケーション学科3年

藤城 麻

さん 専門科目では大量の宿題が課され 夜8時から午前2時まで図書館で勉強 ──ASPに参加しようと思った理由は何ですか。 藤城 大学入学前から英語が好きだったのですが、自分の 英語力に自信がありませんでした。アメリカで1年間勉強 すれば、英語力を高められると考え、1年生の冬から ASP に参加しました。説明会に来学した ASP 修了生の先 輩たちが、皆さん社会で活躍していて輝いていたことも理 由の1つです。 ──どんなことを学んでいたのですか。 藤城 春学期はレベル別の英語の授業で、ウィラメット大 学での授業を受けるために必要なエッセイの書き方、プレ ゼンテーションの方法などを学びます。私は、夏学期はア メ リ カ ン コ ミ ッ ク の 歴 史 を 学 ぶ リ ベ ラ ル ア ー ツ 科 目 「Heroes in History, Fiction, and Contemporary

Culture」、秋学期は原爆をテーマにしたウィラメット大学 の正規科目を受けることができました。どちらの科目でも 大量の宿題が課されます。膨大な資料を読み、エッセイを 作成しなければなりません。その際、心強いのがウィラメッ ト大生のチューターの存在です。エッセイの添削や、プレ ゼンテーションの指導をしてもらい、十分に準備した上で 授業に臨みました。留学中は夜8時から大学図書館が閉館 する午前2時まで勉強していましたが、これはアメリカで は特別なことではなく、周囲のウィラメット大生もその時 間まで勉強していて、とても刺激を受けました。 ──夜8時まではどのようなことをしていたのですか。 藤城 ウィラメット大学では課外活動も盛んです。私もボ ランティアやサークル活動、委員会活動など、さまざまな 課外活動に参加しました。ボランティア活動には合計で 270 時間参加しました。その中でも印象的だったのが、 夏休みに1週間、教会に泊まってホームレスの支援を体験 したことです。ホームレスの人たちに食べ物や靴下などを 配布する活動も行い、アメリカの抱える社会問題について 考えるきっかけとなりました。  また、JSSL という日本文化を紹介するサークルにも入 りました。手作りした日本食の売り上げを東日本大震災の 被災地に送ったり、イベントで和太鼓やソーラン節などを 披露したりしました。ここでは現地学生と日米の文化・社 会について話す機会が多く、日本を客観視することができ るようになったとともに、日本についてもっと学び、きち んと説明できるようになりたいと感じました。さらに、ウィ ラメット大学と TIUA の架け橋の役割を担う LEAD という 委員会にも所属し、私が中心となって新たに「WLE(We Love English)」という分科会を組織し、ASP 参加学生の 英語を話す機会をより増やそうと、スピーチコンテストな どを企画しました。ミーティングが毎日あり忙しかったで すが、英語によるミーティングでの話し方、自己主張の仕 方に磨きがかかったと思っています。  ASP では多彩な活動に参加することができますが、そ のチャンスは待っていて与えられるものではありません。 自分で積極的に機会を求める姿勢が重要だと感じました。 授業との両立は大変でしたが、私は完全燃焼することがで き、最後のセレモニーで、ボランティアアワードを獲得し、 MVP にも選出されました。 TOEIC のスコアが急上昇 帰国後は転部を決意し将来の目標も固まる ──留学でどんな成果を得ることができましたか。 藤城 まず、英語力は確実に伸びました。留学前後で TOEIC のスコアが 360 点上がりましたし、外国の方と英 語で話すことへの抵抗が全くなくなりました。授業や課外 活動を通して英語力に自信がつき、より深く英語を勉強し たいと思い、帰国後に経済学部から言語コミュニケーショ ン学部に転部しました。身についた英語力を維持したいの で、現在は毎朝8時に大学に行き、授業開始前に TOEIC、 TOEFL の勉強をするのが習慣になっています。  また、留学を通じて、「自分の選択肢が広まった」とい う感覚があります。授業をはじめ、課外活動に挑戦し、精 一杯取り組んだからこそだと思います。転部を決意したの も留学で英語に触れ、学びを深めたからですし、小さいこ ろから抱いてきた、将来は中学校の英語教師になりたいと いう目標も固まりました。今後は、在学中にアメリカの大 学の正規課程に留学し、アメリカの教育現場について研究 したいと考えています。

参照

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