第 6 章 大 都 市 地 域 に お け る オ フ ィ ス 立 地 の 再 編
1 9 9 0 年 代 以 降 の オ フ ィ ス 市 況 低 迷 局 面 に お い て ,東 京 と 地 方 都 市 の 格 差 拡 大 が 注 目 さ れ て き た が , 個 々 の 都 市 内 部 レ ベ ル で も 状 況 は 一 様 で は な く , オ フ ィ ス 地 区 間 の 競 争 が 激 化 し て い る . そ こ で 本 章 で は , バ ブ ル 崩 壊 以 降 , 景 気 後 退 が 厳 し か っ た 大 阪 と , 比 較 的 底 堅 か っ た 名 古 屋 と い う 対 照 的 な 2 都 市 を 取 り 上 げ ,1 9 9 0 年 代 中 半 以 降 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 動 向 を 考 察 す る .
1 . は じ め に
1 9 9 0 年 代 後 半 以 降 ,わ が 国 の オ フ ィ ス 市 況 を 取 り 巻 く 環 境 は 劇 的 な 変 化 に 見 舞 わ れ て い る . す な わ ち , 大 規 模 開 発 に よ る 過 剰 と も い え る オ フ ィ ス 供 給 が ,東 京 で は オ フ ィ ス ビ ル 2 0 0 3 年 問 題 ,名 古 屋 に お い て は オ フ ィ ス ビ ル 2 0 0 7 年 問 題 と 呼 ば れ ,大 都 市 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 急 激 に 増 加 さ せ て い る 1 . 一 方 で , × × 年 問 題 つ な が り で 言 う な ら ば , 2 0 0 7 年 に は 団 塊 の 世 代 の 一 斉 退 職 が 始 ま り , オ フ ィ ス ワ ー カ ー の 総 数 が 減 少 に 転 じ る も の と 予 測 さ れ る . こ う い っ た オ フ ィ ス 市 況 を 取 り 巻 く 環 境 変 化 は ,
「 経 済 規 模 の 拡 大 → オ フ ィ ス 需 要 の 拡 大 → オ フ ィ ス 供 給 の 拡 大 」 と い う い わ ば 拡 大 成 長 神 話 の 崩 壊 を 意 味 し ,「 経 済 規 模 の 縮 小 + オ フ ィ ス 供 給 = オ フ ィ ス 間 競 争 の 激 化 」 と い う 新 し い 図 式 を も た ら し て い る .
こ の よ う な オ フ ィ ス 間 競 争 は 大 き く 3 つ の レ ベ ル で 議 論 す る こ と が で き る .第 1 に ,全 国 的 な 都 市 間 も し く は 都 市 圏 間 で の 競 争 の 激 化 で あ り , 支 店 オ フ ィ ス に 代 表 さ れ る , 中 枢 管 理 機 能 の 立 地 競 争 か ら 論 じ ら れ る 視 点 で あ る ( 阿 部 1 9 9 1 ). 第 2 に , 個 々 の オ フ ィ ス ビ ル 間 の 競 争 で あ り , い わ ゆ る 近 新 大 と い っ た ビ ル の 立 地 環 境 , 築 年 数 , 規 模 と い っ た テ ナ ン ト へ の 訴 求 力 に 関 わ る 問 題 で あ る ( 増 田 2 0 0 4 ). そ し て 第 3 に , 都 市 内 の オ フ ィ ス 地 区 間 で の 競 争 で あ り , エ リ ア と し て の 集 客 力 や ブ ラ ン ド 力 に 関 わ る 議 論 で あ る .
こ の う ち 最 後 の オ フ ィ ス 地 区 間 で の 競 争 は , 交 通 流 動 の 変 化 や 再 開 発
の 進 展 等 を 通 じ て , 都 市 内 部 構 造 に 短 期 間 で 抜 本 的 な 変 化 を も た ら す も の で あ り , オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 価 値 を 考 え る 上 で も 重 要 な 意 味 を 持 つ . た だ し , 従 来 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク に 関 す る 分 析 は , 圧 倒 的 な 市 場 規 模 を 持 ち , 大 規 模 開 発 も 多 か っ た 東 京 に 集 中 し て お り , 他 の 大 都 市 の オ フ ィ ス 集 積 を ス ト ッ ク の 観 点 か ら 扱 っ た 研 究 は 少 な か っ た 2 . し か し , 近 年 で は 多 く の 政 令 指 定 都 市 に お い て も , 大 規 模 な オ フ ィ ス ビ ル の 開 発 が 次 々 に 実 施 さ れ て い る こ と に 加 え ,J − R E I T な ど の 投 資 主 体 も 地 方 市 場 に 進 出 し 始 め て お り ( 松 村 2 0 0 6 ) ,東 京 以 外 の 都 市 に お い て も オ フ ィ ス 地 区 の 精 緻 な 分 析 が 必 要 と さ れ て い る . そ こ で , 本 稿 で は 大 阪 と 名 古 屋 を 事 例 都 市 と し て , 都 市 内 に お け る オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 特 徴 と そ の 変 化 の 傾 向 を 捉 え , 今 後 の オ フ ィ ス 集 積 の 動 向 を 明 ら か に し て い く .
さ て , わ が 国 に お け る オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 概 観 す る と , ス ト ッ ク の 量 や 質 に 関 す る 統 計 デ ー タ が 非 常 に 少 な い こ と に 気 づ く . 不 動 産 ス ト ッ ク の 総 量 を 把 握 で き る 資 料 と し て ,商 業 施 設 ,工 業 施 設 ,住 宅 に 関 し て は , そ れ ぞ れ 商 業 統 計 調 査 , 工 業 統 計 調 査 , 住 宅 土 地 統 計 調 査 と い っ た 全 国 的 な 統 計 デ ー タ が 整 備 さ れ て い る が , オ フ ィ ス 施 設 に 関 す る 統 計 調 査 は な い . し た が っ て , オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 分 析 を 行 う に あ た っ て は , 信 頼 性 の 高 い デ ー タ の 収 集 か ら は じ め る 必 要 が あ る .
こ の 点 に 関 し て , 日 本 不 動 産 研 究 所 で は 内 部 資 料 と し て 政 令 指 定 都 市 に お け る オ フ ィ ス ビ ル の 把 握 を 行 っ て い る 3 . 対 象 と さ れ て い る オ フ ィ ス ビ ル は , 名 古 屋 ・ 大 阪 に お い て は 指 定 容 積 率 6 0 0 % 以 上 の 地 域 で , 延 床 面 積 5 0 0 0 ㎡ 以 上 の 事 務 所 用 途 の ビ ル で あ る .な お ,こ こ で の オ フ ィ ス ビ ル と は , 公 共 施 設 を 除 く 民 間 の ビ ル の う ち , 事 務 所 用 途 が 過 半 数 以 上 を 占 め る も の で あ り , 貸 し 会 議 室 等 の 容 易 に 事 務 所 用 途 に 転 用 可 能 な ビ ル を 含 む . こ れ ら の オ フ ィ ス ビ ル は , 比 較 的 規 模 が 大 き く , 都 心 部 の オ フ ィ ス ビ ル を 代 表 す る も の で あ る . そ こ で , 本 稿 で は こ れ ら の オ フ ィ ス ビ ル の 延 床 面 積 を , 各 オ フ ィ ス 地 区 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 代 表 す る 数 値 と み な し ,J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク と 呼 ぶ .ち な み に ,調 査 は 2 0 0 5 年 末 時 点 で 竣 工 済 み の オ フ ィ ス ビ ル が 対 象 と な っ て い る . ま た , オ フ ィ ス ビ ル の 総 量 と し て は , 都 市 ご と に 固 定 資 産 税 の 課 税 対 象 床 面 積 が 公 表 さ れ て
お り , 政 令 指 定 都 市 間 で は 非 木 造 , 事 務 所 ・ 店 舗 用 途 で の 建 築 物 数 お よ び 床 面 積 が 公 表 さ れ て い る . そ こ で , こ の 値 を , 商 業 や 個 人 サ ー ビ ス 業 等 を も 含 む , 広 い 意 味 で の 都 心 的 業 務 用 の 床 面 積 と し て 業 務 用 ビ ル ス ト ッ ク と 定 義 し , J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク と の 比 較 を 通 し て み て い く .
2 . 大 都 市 地 域 に お け る オ フ ィ ス 立 地 再 編 の 背 景
ⅰ ) オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 供 給 と 推 移
大 阪 ・ 名 古 屋 に お け る オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 三 大 都 市 間 で 比 較 す る と ( 図 6 - 1 ), 業 務 用 ビ ル 床 面 積 は , 東 京 都 区 部 の 1 0 , 1 8 0 万 ㎡ に 対 し て , 大 阪 市 が 3 , 9 4 0 万 ㎡ , 名 古 屋 市 が 2 , 0 7 5 万 ㎡ と な っ て お り , そ れ ぞ れ の 間 に 約 2 倍 程 度 の 差 が あ る . こ れ に 対 し て , J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク は ,そ れ ぞ れ ,4 , 7 6 6 万 ㎡ ,1 , 0 9 1 万 ㎡ ,3 9 8 万 ㎡ と な り , 業 務 用 ビ ル 床 面 積 に 比 較 し て よ り 大 き な 格 差 が 存 在 す る . さ ら に , 延 床 面 積 5 万 ㎡ 以 上 の J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク に 限 る と , 東 京 2 , 0 9 0 万 ㎡ , 大 阪 2 7 9 万 ㎡ , 名 古 屋 4 6 万 ㎡ と , 大 阪 は 東 京 の 1 割 強 に 過 ぎ ず , 名 古 屋 に 至 っ て は 2 . 2 % し か 存 在 し な い . こ れ は , オ フ ィ ス が お か つ 大 規 模 な オ フ ィ ス ビ ル ほ ど 上 位 都 市 へ の 集 中 す る た め で あ る .し た が っ て ,オ フ ィ ス 需 要 者 の 厚 み ,と り わ け 大 企 業 の 本 社 や そ の 支 店 等 に よ る 大 規 模 オ フ ィ ス の 需 要 量 に ,都 市 間 で 偏 り が あ る こ と を 示 唆 す る も の と い え よ う .
店 舗 に 比 べ て 上 位 都 市 に 集 中 す る 傾 向 に あ り , な
指数(東京=1)
0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40
大阪 市
名古 屋市 横浜市
札幌市 福岡
市 京都
市 神戸市
広島 市
仙台市 千葉市
川崎市 北九州市
さいた ま市 業務用ビ ルストック
JREIオフィスストック 延床面積5万㎡以上のJREIオ フィスストック
図 6 - 1 都 市 間 の J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク と 業 務 用 ビ ル ス ト ッ ク
資 料 )日 本 不 動 産 研 究 所 資 料 ,大 都 市 統 計 協 議 会「 大 都 市 比 較 統 計 年 表 」 2 0 0 5 年
図 6 - 2 事 務 所 ビ ル の 着 工 床 面 積 推 移 資 料 ) 建 築 着 工 統 計 比 較 統 計
0 100 200 300 400 500 600
1989年90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04
万㎡ 東京都
愛知県 大阪府
1991年=100
80 90 100 110 120 130 140 150 160 170
1991年92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 05
東京都区部 名古屋市 大阪市
図 6 - 3 業 務 用 ビ ル 延 床 面 積 の 推 移
次 に ,三 大 都 市 に お け る オ フ ィ ス ビ ル の 供 給 量 を ,国 土 交 通 省『 建
- 3 ). 延 床 面 積 が 最 も 大 き か っ た 東 京
別
資 料 ) 大 都 市 統 計 協 議 会 「 大 都 市 比 較 統 計 年 表 」
築 着 工 統 計 』 に お け る 事 務 所 ビ ル の 新 規 着 工 量 か ら 比 較 す る と , 東 京 都 ・ 愛 知 県 ・ 大 阪 府 と も 1 9 9 0 年 を ピ ー ク に , 1 9 9 0 年 代 を 通 し て ほ ぼ 一 貫 し て 減 少 し て き た ( 図 6 - 2 ). し か し , 東 京 都 で は 1 9 9 8 年 の 1 0 0 万 ㎡ で 底 打 ち し , 2 0 0 4 年 に は 2 1 0 万 ㎡ ま で 回 復 し て い る . ま た 愛 知 県 に お い て も , 1 9 9 0 年 の 1 4 8 万 ㎡ を ピ ー ク に , 2 0 0 0 年 に は 3 9 万 ㎡ ま で 減 少 す る も の の , 2 0 0 4 年 に は 6 1 万 ㎡ ま で 回 復 し , 全 国 で 2 番 目 の 事 務 所 ビ ル 供 給 地 と な っ て い る . こ れ に 対 し て , 大 阪 府 で は , 1 9 9 0 年 の 2 4 1 万 ㎡ を ピ ー ク に 減 少 傾 向 が 続 き , 2 0 0 4 年 に は 3 1 万 ㎡ ま で 減 少 し , 対 全 国 着 工 シ ェ ア も 1 9 9 0 年 の 1 1 . 6 % か ら 2 0 0 4 年 に は 4 . 1 % に ま で 低 下 し た .
こ の 結 果 , 3 大 都 市 間 に お い て は , 業 務 用 ビ ル の 延 床 面 積 の 推 移 に も 大 き な 格 差 生 じ て い る ( 図 6
都 区 部 で は , 1 9 9 1 〜 2 0 0 5 年 の 増 加 率 も 5 7 % と 最 大 で あ る . こ れ に 続 く 名 古 屋 市 は 同 3 6 % の 増 加 ,大 阪 市 は 同 2 6 % の 増 加 と な っ て い る .
こ の よ う な ス ト ッ ク 供 給 の 結 果 と し て , 既 存 の オ フ ィ ス 床 の 建 築 年 代 別 構 成 比 に も 差 異 が 生 じ て い る . 日 本 の オ フ ィ ス ビ ル を 建 築 年 で み る と , 1 9 8 1 年 新 耐 震 基 準 施 行 の 前 後 , 1 9 9 0 年 代 初 め ま で の 地 価 高 騰 期 の 前 後 , さ ら に そ の 後 の 地 価 低 迷 期 で 大 き く 3 つ に 区 分 す
図 6 - 4 J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 建 築 年 別 床 面 積
資 料 ) 日本不 動 産 研 究 所 資 料 よ り 筆 者 が 作 成 34.9%
29.3%
35.9%
47.2%
37.5%
15.3%
45.8%
35.8%
18.4%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
東京 名古屋 大阪
地価低迷期
(1994年〜)
バブル盛衰期
(1982〜1993年)
新耐震以前
(〜1981年)
成 な 屋 ・ 大 阪 で は 半
数 近 い ス ト ッ ク が 新 耐 震 基 準 以 前 に 建 築
な オ フ ィ ス ビ ル 空 室 率 4 と オ フ ィ ス の 賃 料 指 数 5 を み て み る( 図 6 - 5 ).1 9 9 6 〜 2 0 0 6
年 京 , 大 阪 , 名 古 屋 の い ず れ の
都
,
と り わ け , 名 古 屋 の 賃 料 水 準 は 2 0 0 6 年 時 点
る こ と が で き る . こ れ に し た が い , 1 9 8 1 年 以 前 に 建 築 さ れ た オ フ ィ ス ビ ル を 新 耐 震 基 準 以 前 , 1 9 8 2 〜 1 9 9 3 年 ま で を バ ブ ル 盛 衰 期 , 1 9 9 4 年 以 降 を 地 価 低 迷 期 の オ フ ィ ス ビ ル と 区 分 す る . 三 大 都 市 で 比 較 す る と
( 図 6 - 4 ), 新 耐 震 基 準 以 前 に 建 築 さ れ た ス ト ッ ク の 構
い が , 名 古 比 は , 東 京 で 最 も 低 く 3 4 . 9 % に 過 ぎ
さ れ た も の と な っ て い る . 逆 に , 地 価 低 迷 期 以 降 の ス ト ッ ク の 割 合 は , 東 京 で は 3 5 . 9 % に 達 す る の に 対 し て , 名 古 屋 ・ 大 阪 で は 2 0 % 以 下 と な っ て お り , 少 な く と も 2 0 0 5 年 時 点 に お い て は 東 京 に 比 べ て 新 陳 代 謝 が 滞 っ て い る .
ⅱ ) オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 稼 動 状 況
次 に , オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 稼 動 状 況 と し て , 主 要 の
に か け て の オ フ ィ ス ビ ル 空 室 率 は 東
市 に お い て も 類 似 し た 傾 向 に あ り , 2 0 0 3 年 に 最 も 悪 化 し , そ の 後 は 改 善 し つ つ あ る . た だ し , 東 京 で は 大 量 の オ フ ィ ス 供 給 に も か か わ ら ず , 空 室 率 の 低 下 が 著 し い の に 対 し , 大 阪 は 他 の 2 都 市 よ り も 一 貫 し て 空 室 率 が 高 い .
さ ら に , オ フ ィ ス 賃 料 の 推 移 を み る と , 東 京 , 名 古 屋 に お け る オ フ ィ ス 賃 料 は , 1 9 9 0 年 代 を 通 し て 下 落 基 調 で あ っ た が 2 0 0 4 年 を 底 に 急 速 な 回 復 傾 向 に あ る .
で 1 1 4 . 1 に も 達 し ,三 大 都 市 の 中 で 唯 一 1 9 9 5 年 の 水 準 を 上 回 っ て い る . こ れ に 対 し て , 大 阪 の 2 0 0 6 年 の 賃 料 水 準 は , 1 9 9 5 年 の 7 割 程 度 に 留 ま り , 3 都 市 の 中 で 最 も オ フ ィ ス 賃 料 の 回 復 が 遅 れ て い る
と い え よ う .
以 上 の 点 か ら , 1 9 9 0 年 以 降 の 三 大 都 市 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク は , ボ リ ュ ー ム で は 東 京 , 大 阪 , 名 古 屋 の 順 で あ る が , 供 給 量 で は 東 京 , 名 古 屋 , 大 阪 の 順 に な っ て お り , 東 京 を 別 格 と し て 名 古 屋 の 成 長 と 大
通 し て , 需 要 を 喚 起 す
阪 の 停 滞 と い う 特 徴 が 見 出 さ れ る . ま た , 需 要 動 向 で は , 東 京 に お け る 空 室 率 の 低 下 と 名 古 屋 に お け る 賃 料 水 準 の 上 昇 が 目 立 つ 反 面 , 大 阪 の オ フ ィ ス 需 要 の 回 復 が 鈍 い こ と は 明 ら か で あ る .1 9 9 9 年 以 降 , 約 2 0 0 万 ㎡ / 年 の 事 務 所 ビ ル 着 工 が 続 く 東 京 で 空 室 率 が 最 も 低 下 し , 着 工 ベ ー ス で の 全 国 シ ェ ア が 1 1 % ( 1 9 9 0 年 ) か ら 4 % ( 2 0 0 4 年 ) へ と 低 下 し た 大 阪 の 空 室 率 が 最 も 高 い こ と は , 潜 在 的 な 需 要 に よ り 大 き な 格 差 が あ る こ と を 示 唆 す る も の と い え よ う .
さ ら に , オ フ ィ ス の 供 給 が 潜 在 的 な 需 要 と 開 発 コ ス ト に 見 合 っ た 賃 料 に よ っ て 促 さ れ る こ と に 議 論 の 余 地 は な い . し か し , 新 規 オ フ ィ ス ビ ル の 建 設 が , 質 の 高 い オ フ ィ ス の 供 給 を
る 側 面 を 持 つ 点 も 無 視 す る こ と は で き な い . こ の た め , 新 規 供 給 の 拡 大 が オ フ ィ ス 需 要 需 要 を 盛 り 上 げ , ま す ま す オ フ ィ ス 床 の 拡 大
図 6 - 5 オ フ ィ ス の 賃 料 と 空 室 率 の 推 移
資 料 ) 日 本 不 動 産 研 究 所 「 全 国 賃 料 統 計 」、 生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム 「 不 動 産 白 書 」
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
60 70 80 90 100 110
120 オフィス賃料指数
空室率(棒グラフ) (折れ線)
1995年=100
東京区部 大阪市 名古屋市 東京圏 大阪圏 名古屋圏
を 促 す 一 方 , 供 給 の 停 滞 は オ フ ィ ス 需 要 を 潜 在 化 さ せ , 都 市 や 地 区 の オ フ ィ ス 立 地 場 所 と し て の 魅 力 を 低 下 さ せ る 可 能 性 が あ る . 莫 大 な コ ス ト と 時 間 及 び 開 発 適 地 を 要 す る オ フ ィ ス ビ ル の 建 設 は , 文 字 通 り 不 動 産 で あ り , 供 給 が 需 要 を 決 定 す る 側 面 を 持 つ こ と を 注 視 す る 必 要 が あ ろ う .
た だ し , 大 阪 ・ 名 古 屋 と も に 既 存 ビ ル の 建 築 年 代 は , 半 数 近 く が 新 耐 震 基 準 施 行 以 前 の 床 で 占 め ら れ て い る こ と に 加 え て , 大 阪 の 梅 田 駅 ヤ ー ド 地 区 や 名 古 屋 駅 周 辺 の 再 開 発 な ど , 今 後 多 く の 新 規 供 給 や 建 替 え が 見 込 ま れ て お り , 東 京 と は 時 差 を 持 ち つ つ 2 都 市 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 新 陳 代 謝 が 進 む も の と 思 わ れ る .
次 に , こ の よ う な 大 阪 と 名 古 屋 に お い て , 都 市 内 の 各 オ フ ィ ス 地 区 間 で は ど の よ う な 差 異 が あ る だ ろ う か . こ の 点 に つ い て , 次 項 で は , 大 阪 ・ 名 古 屋 そ れ ぞ れ の 都 市 に お け る オ フ ィ ス 地 区 を 概 観 し , 地 区 間 の 差 異 を 考 察 す る
3 . 大 阪 市 に お け る オ フ ィ ス 地 区 の 再 編
ⅰ ) 大 阪 市 の オ フ ィ ス 地 区 の 特 徴
大 阪 は 歴 史 的 に 東 京 と 並 ぶ オ フ ィ ス 集 積 を 持 つ 都 市 で あ り , 複 数 の 特 徴 的 な オ フ ィ ス 地 区 を 持 つ . す な わ ち , 堂 島 米 穀 取 引 所 に 起 源 を 持 ち , 商 社 や 金 融 機 関 が 立 ち 並 ぶ 堂 島 ・ 中 之 島 , 西 日 本 最 大 の タ ー ミ ナ ル 駅 で あ る 大 阪 駅 を 持 つ 梅 田 , 繁 華 街 に オ フ ィ ス が 入 り 混 じ る 心 斎 橋 , 難 波 , 1 9 8 0 年 代 か ら 開 発 が は じ ま り 高 層 ビ ル が 林 立 す る O B P な ど で あ る .そ こ で ,本 稿 で は ,こ れ ら の 歴 史 的 経 緯 を 踏 ま え , 大 阪 の オ フ ィ ス 地 区 を 2 3 の エ リ ア に 区 分 し ,そ れ ぞ れ の 地 区 毎 の 特 徴 を 把 握 し た ( 図 6 - 6 ).
オ フ ィ ス 地 区 の 特 徴 は , そ れ ぞ れ の 地 区 の ス ト ッ ク 量 と , オ フ ィ ス 業 務 へ の 純 化 の 程 度 に よ っ て 特 徴 付 け る こ と が で き る . こ こ で は ,
「 平 成 1 3 年 事 業 所 ・ 企 業 統 計 調 査 」 に お け る 事 業 所 の 形 態 別 従 業 者 数 の う ち ,「 事 務 所 ・ 営 業 所 」 形 態 の 事 業 所 従 業 者 数 を オ フ ィ ス 従 業 者 と み な し ,町 丁 別 集 計 を オ フ ィ ス 地 区 ご と に 組 み 直 し た( 図 6 - 7 ).
ち な み に , 大 阪 全 体 に お け る 平 成 1 3 年 の オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 は 4 3 . 6 % と な っ て お り , 対 象 地 区 の う ち , 天 王 寺 ・ 阿 倍 野 だ け が 市 全 体 の 平 均 を 下 回 っ て い る .
図 6 - 6 大 阪 の オ フ ィ ス 地 区 筆 者 作 成
最 初 に ,地 区 別 に J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 延 床 面 積 を み る と , A グ ル ー プ の 堂 島 ・ 中 之 島 , 梅 田 の み が , 1 0 0 万 ㎡ を 上 回 り , 2 地 区 の 合 計 で 大 阪 全 体 の 2 5 % を 占 め る . ま た , オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 は 6 0 〜 7 0 % 程 度 で あ り , 店 舗 ・ 飲 食 店 等 も 混 じ る 多 様 な オ フ ィ ス 地 区 が 形 成 さ れ て い る .A グ ル ー プ に 続 く 延 床 面 積 を 持 つ の は , B グ ル ー プ の 淀 屋 橋 , 本 町 , 堺 筋 本 町 , 新 大 阪 , O B P で あ る . こ の う ち , 新 大 阪 と O B P は , 都 心 部 と は 距 離 を 隔 て た 特 殊 な オ フ ィ ス 地 区 で あ る こ と か ら , こ の 2 地 区 を B ( Ⅱ ) グ ル ー プ , そ れ 以 外 を B ( Ⅰ ) グ ル ー プ と す る . B グ ル ー プ は , さ ら に ス ト ッ ク 量 の 少 な い C グ ル ー プ の オ フ ィ ス 地 区 と と も に , い ず れ も オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 8 0 % を 超 え , オ フ ィ ス に 特 化 し た エ リ ア で あ る . ま た , B ( Ⅰ ) グ ル ー プ に 分 類 さ れ る 地 区 は , い ず れ も 堂 島・中 之 島 の 南 側 に 位 置 し ,北 か ら 南 へ ス ト ッ ク が 漸 減 し , 東 西 方 向 に は 急 減 す る 傾 向 に あ る . こ の よ う な 傾 向 は , オ フ ィ ス ビ ル の 規 模 か ら も 読 み 取 れ , 平 均 延 べ 床 面 積 が 3 万 ㎡ を 超 え る 梅 田 , 堂 島 ・ 中 之 島 地 区 は 別 格 と し て , B グ ル ー プ に 入 る 淀 屋 橋 , 本 町 , 堺 筋 本 町 が 1 . 5 万 ㎡ 前 後 な の に 対 し て , C グ ル ー プ の 7 地 区 は い ず れ も 0 . 8 〜 1 . 3 万 ㎡ と 規 模 が 小 さ い オ フ ィ ス ビ ル が 多 数 を 占 め る . ま た , D ・ E グ ル ー プ の オ フ ィ ス 地 区 は , C グ ル ー プ と 同 程 度 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 持 つ も の の , オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 は 低 く , 商 業 施
新大阪
中津 梅田
南森町 堂島・中之島
福島
肥後橋 淀屋橋
北浜
天満橋
阿波座 西本町
本町 堺筋本町
四ツ橋 心斎橋
長堀橋
谷町四丁目 OBP
難波 天王寺・阿倍野
0 20 40 60 80 100 120 140
30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0%
JREIオフィスストック 延床面積/万㎡
オフィス従業者比率 A
B
C
図 6 - 7 大 阪 の オ フ ィ ス 地 区 の 特 徴 日 本 不 動 産 研 究 所 資 料 よ り 筆 者 作 成
設 と オ フ ィ ス が 混 在 す る エ リ ア で あ る . こ こ で は , 南 に 行 く ほ ど オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 低 下 し , 繁 華 街 と し て の 特 徴 が 強 ま る . 以 上 の よ う に , 大 阪 に お け る オ フ ィ ス 地 区 は , 堂 島 ・ 中 之 島 を 中 心 に 御 堂 筋 ・ 四 ツ 橋 筋 沿 い に 南 北 方 向 に 広 が り , き た は オ フ ィ ス , み な み は 商 業 と 棲 み 分 け が な さ れ て い る .
ⅱ ) 大 阪 市 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 形 成 年 代
こ れ ら の オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 形 成 年 代 か ら 見 る た め , こ こ で は J R E I オ フ ィ ス ス ト ッ ク を , 新 耐 震 以 前 ( 〜 1 9 8 1 年 ), バ ブ ル 盛 衰 期
( 1 9 8 2 〜 1 9 9 3 年 ), 地 価 低 迷 期 ( 1 9 9 4 年 〜 2 0 0 4 年 ) の 3 期 で 区 分 し た . そ の 上 で , そ れ ぞ れ の 期 間 ご と の 床 面 積 比 率 を , 大 阪 全 体 の 平 均 構 成 比 で 除 し , 特 化 係 数 を 求 め た ( 図 6 - 8 ) 6 .
ま ず , 新 耐 震 以 前 の , い わ ば 建 替 予 備 軍 ビ ル の 床 面 積 構 成 比 が 平 均 以 上 の 地 区 は , 北 浜 , 谷 町 4 丁 目 , 本 町 , 淀 屋 橋 , 天 満 橋 , 堂 島 ・ 中 之 島 の 順 に 大 き く な っ て お り , 大 阪 の 核 心 部 で あ る 御 堂 筋 沿 い で 高 い 割 合 を 示 す . こ れ に 対 し て , バ ブ ル 盛 衰 期 に 建 設 さ れ た オ フ ィ
ス 床 が 高 い 構 成 比 を 示 す 地 区 は , O B P , 天 王 寺 ・ 阿 倍 野 , 新 大 阪 と い っ た 周 辺 部 の 新 興 オ フ ィ ス 地 区 と , 御 堂 筋 か ら 東 西 に ず れ る 四 ツ 橋 筋 , 堺 筋 沿 い の 地 区 と な っ て い る . こ れ は , 大 阪 に お け る オ フ ィ ス ビ ル の 形 成 が , 御 堂 筋 か ら そ の 東 西 の 筋 に 広 が っ て い っ た こ と と 符 合 す る .
次 に , 1 9 9 4 年 以 降 の 地 価 低 迷 期 に 建 設 さ れ た オ フ ィ ス 床 の 構 成 比 が 高 い 地 区 は , 新 大 阪 , 天 王 寺 ・ 阿 倍 野 , 梅 田 , 肥 後 橋 , 中 津 の 順 で , 梅 田 を 中 心 に 大 阪 の 北 部 で 高 い 傾 向 に あ る . こ の 地 価 低 迷 期 の 特 化 係 数 が 1 を 超 え る 地 区 に は , い く つ か の 明 確 な 特 徴 が あ る . 第 一 に , そ れ 以 前 の 2 期 間 に 特 化 係 数 が 1 を 超 え た 地 区 が そ れ ぞ れ 1 3 エ リ ア あ る の に 対 し て ,地 価 低 迷 期 に 特 化 係 数 が 1 を 超 え る 地 区 は 7 エ リ ア に 過 ぎ な い . す な わ ち , 地 価 低 迷 期 の オ フ ィ ス ビ ル の 供 給 は , 相 対 的 に 限 ら れ た エ リ ア で 集 中 的 に 行 わ れ て い た こ と を 示 す 7 . さ ら に , こ れ ら の 地 区 の う ち , オ フ ィ ス 従 業 者 へ の 純 化 の 程 度 が 高 か っ た B・C グ ル ー プ に 含 ま れ る 地 区 は ,新 大 阪 , 肥 後 橋 の 2 地 区 に 過 ぎ ず , 中 津 , 梅 田 , 福 島 , 堂 島 ・ 中 之 島 の 4 地 区 は , い ず れ も 商 業 − オ フ ィ ス 混 在 度 が 高 い , A ・ D グ ル ー プ に 含 ま れ る .こ の こ と か ら ,商 業 も し く は オ フ ィ ス へ 特 化 し た 地 区 よ り も , あ る 程 度 商 業 − オ フ ィ ス 混 在 度 の 高 い 地 区 で , 地 価 低 迷 期 の オ フ ィ ス ビ ル 供 給 が 多 か っ た と い う 特 徴 が 見 出 さ れ る . こ の 背 景 と し て , オ フ ィ ス 床 利 用 形 態 の 多 様 化 が あ る も の と 予 想 さ れ る( 松 村 2 0 0 5 ).
す な わ ち , 店 舗 の ほ か , ホ テ ル , 教 育 機 関 , 医 療 施 設 等 の 集 客 機 能 図 6 - 8 地 区 別 オ フ ィ ス ビ ル 建 築 年
代 ( 大 阪 )
資 料 ) 日 本 不 動 産 研 究 所 資 料 よ り 作 成
が オ フ ィ ス ス ペ ー ス の 需 要 家 と し て 存 在 感 を 増 し つ つ あ り , 一 般 の 顧 客 と オ フ ィ ス ワ ー カ ー 双 方 へ の 近 接 性 が 高 い 地 区 の 魅 力 を 底 上 げ し て い る も の と 考 え ら れ る .
ⅲ ) 大 阪 市 の オ フ ィ ス 需 給
次 に , オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 量 と 質 が 地 区 間 の オ フ ィ ス 需 要 に 与 え て い る 影 響 を , 空 室 率 , 賃 料 の 点 か ら み て み る . 空 室 率 や , 賃 料 に 関 し て は 不 動 産 コ ン サ ル テ ィ ン グ 各 社 が そ れ ぞ れ , デ ー タ を 公 表 し て い る が , 対 象 と さ れ る 地 区 や オ フ ィ ス ビ ル に 相 違 が あ る た め , こ こ で は 単 純 に 御 堂 筋 に 沿 っ て 南 北 に 連 な る 地 区 ご と の 比 較 を 行 う
( 図 6 - 9 ).
賃料
6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000
新大阪 中津 梅田 堂島・中之島 淀屋橋 本町 心斎橋 難波
円/㎡
1996 2000 2005
空室率
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
14.0%
16.0%
18.0%
新大阪 中津 梅田 堂島・中之島 淀屋橋 本町 心斎橋 難波
1996 2000 2005
図 6 - 9 地 区 別 賃 料 及 び 空 室 率 ( 大 阪) 資 料 ) 生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム
「 不 動 産 白 書 」 各 年 版
最 初 に , 賃 料 か ら み る と , 1 9 9 6 年 , 2 0 0 5 年 は 梅 田 が , 2 0 0 0 年 は 堂 島 ・ 中 之 島 が 最 も 高 水 準 で あ る が , 3 ヵ 年 次 と も ほ ぼ こ の 2 地 区 を 頂 点 に ,南 北 に 離 れ る ほ ど 賃 料 水 準 が 低 下 す る 傾 向 に あ る .た だ し , 9 6 - 0 5 年 の 下 落 率 で み る と ,梅 田 ,堂 島・中 之 島 が そ れ ぞ れ ,− 2 3 . 0 % ,
− 2 3 . 3 % 下 落 し て い る の に 対 し て , 中 津 と 本 町 は − 3 0 % を 超 え , 新 大 阪 ・ 淀 屋 橋 ・ 難 波 も − 2 5 % と , も と も と 賃 料 水 準 が 低 い 地 点 ほ ど 下 落 率 が 大 き く な る 傾 向 に あ る . さ ら に , 空 室 率 で 比 較 す る と , 梅 田 , 堂 島 ・ 中 之 島 , 淀 屋 橋 の 空 室 率 が 低 水 準 に な っ て お り , 特 に 梅 田 で は 2 0 0 5 年 に は 3 ヵ 年 次 で 最 も 低 い 水 準 に ま で 減 少 し て い る .逆 に ,新 大 阪 , 中 津 は , 2 0 0 5 年 時 点 の 空 室 率 が 3 ヵ 年 次 で 最 も 高 い 水
準 に あ り , 心 斎 橋 , 難 波 で も 2 0 0 5 年 の 水 準 は 1 9 9 6 年 に 比 べ て 1 % 以 上 高 い 水 準 に あ る .
以 上 , 大 阪 に お け る オ フ ィ ス 地 区 の 特 徴 を 要 約 す る と , ス ト ッ ク 量 が 最 も 大 き く , 1 9 9 0 年 代 以 降 の 地 価 低 迷 期 に も オ フ ィ ス 供 給 が 活 発 で あ っ た , 梅 田 , 堂 島 ・ 中 之 島 エ リ ア で は , 多 様 な 用 途 に オ フ ィ ス 需 要 が 下 支 え さ れ , 需 給 が 引 き 締 ま っ て い る . こ れ に 対 し て , 中 之 島 の 南 側 に 広 が る 淀 屋 橋 ・ 本 町 を 中 心 と し た エ リ ア で は , オ フ ィ ス へ の 純 化 の 程 度 が 高 い た め に , オ フ ィ ス 需 要 減 退 の 影 響 を 受 け や す く , 新 規 の 供 給 が 滞 っ て い た . ま た , 梅 田 の 北 側 に あ た る 中 津 , 新 大 阪 で は , 相 次 い だ 大 規 模 再 開 発 に よ り 大 量 の オ フ ィ ス が 供 給 さ れ て い る も の の , 2 0 0 5 年 時 点 で は , 必 ず し も 需 要 が 追 い つ い て な い 大 阪 に お い て は オ フ ィ ス 需 要 の 減 少 局 面 に あ っ て も , 高 度 な オ フ ィ ス 集 積 を 持 つ 核 心 部( 梅 田 ,堂 島 ・ 中 之 島 )は 相 対 的 に 堅 調 に 推 移 し , 周 辺 部 ほ ど 需 要 減 少 の 影 響 が 大 き く 表 れ た と 考 え ら れ る . ま た , 商 業 − オ フ ィ ス 混 在 度 が 高 い エ リ ア で , 相 対 的 に 新 規 の オ フ ィ ス ビ ル 供 給 が 活 発 で あ り , オ フ ィ ス 床 の 需 要 者 と し て 事 務 所 以 外 の 機 能 の 影 響 力 が 高 ま り つ つ あ る と い え よ う .
最 後 こ と が 示 唆 さ れ る . こ の よ う に ,
に , 2 0 0 6 年 以 降 に 竣 工 し た か
図 6 - 1 0 建 設 予 定 オ フ ィ ス 床 面 積 ( 大 阪 市 )
資 料 )大 阪 市「 環 境 配 慮 措 置 の 概 要 」
( C A S B E E ) お よ び 、「 不 動 産 白 書 」 よ り 作 成
竣 工 予 定 の オ フ ィ ス ビ ル の 床 面 積 8 を , 地 区 別 に 比 較 す る と ( 図 6 - 1 0 ),大 阪 全 体 の 新 規 供 給 予 定 の 1 2 9 万 ㎡ に 対 し て , 梅 田 が 約 4 0 万
㎡ を し め る . こ れ に , 堂 島 ・ 中 之 島 , 淀 屋 橋 を 加 え る と 大 阪 全 体 の
約 7 0 % に 達 し , 2 0 0 5 年 時 点 の 3 地 区 へ の ス ト ッ ク の 集 中 度 3 2 % に 比 べ て 極 め て 高 い . 企 業 の オ フ ィ ス 立 地 戦 略 に お い て 近 ( 好 立 地 ) ・ 新 ( 新 し い 設 備 ) ・ 大 ( ビ ル , フ ロ ア の 広 さ ) へ の 志 向 は ま す ま す 高 ま り つ つ あ る ( 生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム 2 0 0 4 ) . し た が っ て , 新 規 供 給 が 豊 富 な 地 区 で は ,「 家 賃 負 担 能 力 の 高 い テ ナ ン ト の 吸 引 → 地 区 の イ メ ー ジ や 魅 力 の 向 上 → 新 規 の 開 発 計 画 や 既 存 ビ ル の 立 替 」 と い う 好 循 環 が 生 ま れ る の に 対 し て ,オ フ ィ ス 床 の 更 新 が 滞 る 地 区 で は , 優 良 テ ナ ン ト の 流 出 が オ フ ィ ス 地 区 と し て の 魅 力 の 低 下 に つ な が り , 都 市 内 で の オ フ ィ ス 地 区 の 選 別 が 強 ま っ て 行 く こ と が 予 想 さ れ る .
4 .
図 6 - 1 1 名 古 屋 の オ フ ィ ス 地 区 筆 者 作 成
名 古 屋 市 に お け る オ フ ィ ス 地 区 の 再 編
名 古 屋 に お け る オ フ ィ ス
オ フ ィ ス 地 区 を そ の 歴 史 性 に 基 づ い て 区 分
ィ
ⅰ ) 名 古 屋 市 の オ フ ィ ス 地 区 の 特 徴
ス ト ッ ク の 形 成 は , 必 ず し も 古 い も の で は な い . こ れ は , 名 古 屋 に お け る 経 済 的 中 枢 管 理 機 能 の 集 積 が , 高 度 経 済 成 長 期 に 確 立 さ れ た こ と と 関 係 し , 地 下 鉄 の 敷 設 が 1 9 5 7 年 で あ る こ と か ら も 理 解 で き る . こ の た め , 名 古 屋 に お い て は , 大 阪 の よ う に す る こ と は 難 し い . そ こ で , 本 稿 で は 久 屋 大 通 り , 若 宮 大 通 , 東 海 道 本 線 な ど の 主 要 な 街 路 や 鉄 路 に 基 づ き , オ フ ィ ス 地 区 を 7 エ リ ア に 区 分 し た ( 図 6 - 1 1 ).
名 古 屋 に お け る オ フ ィ ス 地 区 を 概 観 す る と ( 図 6 - 1 2 ), J R E I オ フ ス ス ト ッ ク の 延 床 面 積 で は , 栄 , 伏 見 , 名 駅 の 3 地 区 が 突 出 し て お り , 他 の 地 区 は い ず れ も 3 0 万 ㎡ 以 下 に 過 ぎ な い . ま た , 商 業 − オ
名駅
丸の内 伏見
栄
泉 千種
新栄 金山
0 20 40 60 80 100 120
30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 90.0% 100.0%
オフィス従業者比 率 140 JREIオフィスストック
延床面積/万㎡
A
C B
図 6 - 1 2 名 古 屋 市 の オ フ ィ ス 地 区 の 特 徴 資 料 ) 日 本 不 動 産 研 究 所 資 料 よ り 筆 者 作 成成
フ ィ ス 混 在 度 を み る と ,
に 純 化 し て い る と い う よ り は , 商 業 施 設 が
フ ィ ス 混 在 度 を み る と ,
に 純 化 し て い る と い う よ り は , 商 業 施 設 が
最 も オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 の 低 い 伏 見 で も 6 2 . 5 % と , 大 阪 梅 田 地 区 の 6 0 . 8 % よ り も オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 高 く , 商 業 集 積 が 相 対 的 に 少 な い . ま た , オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 8 0 % を 超 え る 丸 ノ 内 , 金 山 の 2 地 区 は , 絶 対 的 な ス ト ッ ク 量 が 小 さ く , オ フ ィ ス 少 な く , 住 宅 地 と し て の 性 格 が 強 い 地 区 で あ る と い え る . こ の こ と か ら , 名 古 屋 に お い て は 大 阪 で み ら れ た よ う な 特 化 地 区 が 存 在 せ ず , 商 業 地 区 と オ フ ィ ス 地 区 と が 未 分 化 で あ る と 考 え ら れ る . ま た , オ フ ィ ス ビ ル の 平 均 延 べ 床 面 積 は 栄 ( 1 . 4 万 ㎡ ) > 伏 見 ( 1 . 2 万 ㎡ ) < 名 駅 ( 1 . 8 万 ㎡ ) と な っ て お り , 中 間 に 位 置 す る 伏 見 で は 大 規 模 な オ フ ィ ス ビ ル は 相 対 的 に 少 な い . こ れ は 3 地 区 に お け る オ フ ィ ス の 業 種 的 な 差 異 と も 関 連 し , 地 元 企 業 の 本 社 が 中 心 の 栄 と 大 企 業 の 支 社 が 多 い 名 駅 , 銀 行 や 証 券 会 社 が 立 ち 並 ぶ 伏 見 と い う 特 徴 を 表 す と い え よ う ( 伊 藤 2 0 0 7 ).
た だ し , 平 均 規 模 は 3 地 区 と も 大 阪 の 堂 島 ・ 中 之 島 や 梅 田 の 半 分 程 度 に 過 ぎ ず , 淀 屋 橋 , 本 町 , 堺 筋 本 町 に 最 も オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 の 低 い 伏 見 で も 6 2 . 5 % と , 大 阪 梅 田 地 区 の 6 0 . 8 % よ り も オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 高 く , 商 業 集 積 が 相 対 的 に 少 な い . ま た , オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 8 0 % を 超 え る 丸 ノ 内 , 金 山 の 2 地 区 は , 絶 対 的 な ス ト ッ ク 量 が 小 さ く , オ フ ィ ス 少 な く , 住 宅 地 と し て の 性 格 が 強 い 地 区 で あ る と い え る . こ の こ と か ら , 名 古 屋 に お い て は 大 阪 で み ら れ た よ う な 特 化 地 区 が 存 在 せ ず , 商 業 地 区 と オ フ ィ ス 地 区 と が 未 分 化 で あ る と 考 え ら れ る . ま た , オ フ ィ ス ビ ル の 平 均 延 べ 床 面 積 は 栄 ( 1 . 4 万 ㎡ ) > 伏 見 ( 1 . 2 万 ㎡ ) < 名 駅 ( 1 . 8 万 ㎡ ) と な っ て お り , 中 間 に 位 置 す る 伏 見 で は 大 規 模 な オ フ ィ ス ビ ル は 相 対 的 に 少 な い . こ れ は 3 地 区 に お け る オ フ ィ ス の 業 種 的 な 差 異 と も 関 連 し , 地 元 企 業 の 本 社 が 中 心 の 栄 と 大 企 業 の 支 社 が 多 い 名 駅 , 銀 行 や 証 券 会 社 が 立 ち 並 ぶ 伏 見 と い う 特 徴 を 表 す と い え よ う ( 伊 藤 2 0 0 7 ).
た だ し , 平 均 規 模 は 3 地 区 と も 大 阪 の 堂 島 ・ 中 之 島 や 梅 田 の 半 分 程 度 に 過 ぎ ず , 淀 屋 橋 , 本 町 , 堺 筋 本 町 に
52.8
43.5 43.4 43.7 79.0
32.6 53.4
29.6 31.2 49.3
41.9 40.4 11.5
61.1 46.6
13.9 16.0
7.2 14.6 16.0 9.6 6.3 0.0
56.4
0%
20%
40%
60%
80%
100%
名駅
丸の内 伏見 栄 泉
千種 新栄 金山
地価低迷期
(1994年〜)
バブル盛衰期
(1982〜1993年)
新耐震以前
(〜1981年)
図 6 - 1 3 地 区 別 オ フ ィ ス ビ ル 形 成 年 代
資 料 )日 本 不 動 り 筆 者 作 成
( 名 古 屋 ) 産 研 究 所 資 料 よ
類 似 す る .
ⅱ ) 名 古 屋 市 の オ フ ィ ス ス ト ッ ク 形 成 年 代
を 3 時 期 に 区 分 し , そ
,
) 名 古 屋 市 の オ フ ィ ス 需 給
に つ い て , そ の 賃 料 と 空 室 率 の 推 移
っ
次 に , オ フ ィ ス 地 区 別 の ス ト ッ ク の 形 成 年 代
の 構 成 比 を あ ら わ し た ( 図 6 - 1 3 ). す る と , こ こ で も オ フ ィ ス 地 区 間 の 差 異 は 小 さ く , 特 に ス ト ッ ク 量 の 多 か っ た 名 駅 , 伏 見 , 栄 で は そ の 形 成 年 代 は ほ ぼ 同 時 期 と 言 え る . 大 阪 と の 比 較 で み る と , 新 耐 震 以 前 の オ フ ィ ス 床 は 4 0 〜 5 0 % と , 梅 田 5 1 . 9 % , 堂 島 ・ 中 之 島 6 2 . 1 % に 比 べ 少 な め で あ り , バ ブ ル 盛 衰 期 の オ フ ィ ス 床 は 3 0 〜 4 0 % 程 度 で , 梅 田 1 6 . 4 % , 堂 島 ・ 中 之 島 1 8 . 7 % に 比 べ 約 2 倍 と か な り 多 い . こ の た め , 名 古 屋 都 心 部 の オ フ ィ ス ビ ル は 主 に バ ブ ル 盛 衰 期 に 建 設 さ れ た も の が 多 く , 建 築 年 代 で み る と 大 阪 の 都 心 周 辺 部 と 似 た 傾 向 を 持 つ と い え よ う .
ⅲ
名 古 屋 に お け る 各 オ フ ィ ス 地 区
を み て み る と ( 図 6 - 1 4 ), 名 古 屋 に お い て も オ フ ィ ス 賃 料 は 1 9 9 6 年 以 降 下 落 基 調 に あ た が ,そ の 下 落 幅 は 大 阪 に 比 べ て 小 さ い .1 9 9 6
〜 2 0 0 5 年 に か け て の 梅 田 , 中 之 島 ・ 堂 島 の 賃 料 下 落 率 が そ れ ぞ れ −
空室率
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
12.0%
14.0%
16.0%
18.0%
名駅 丸の内 伏見 栄 泉 千種 新栄 金山
1996 2000 2005
賃料
6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000
名駅 丸の内 伏見 栄 泉 千種 新栄 金山 円/㎡
1996 2000 2005
図 6 - 1 4 地 区 別 賃 料 及 び 空 室 率 ( 名 古 屋 ) 資 料 ) 生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム 「 不 動 産 白 書 」 各 年 版
2 3 . 0 % , − 2 3 . 3 % だ っ た の に 対 し て , 名 古 屋 で 最 も 下 落 幅 が 大 き か っ た 新 栄 で も − 1 6 % に 過 ぎ ず ,最 も 下 落 幅 の 小 さ い 金 山 で は − 2 . 7 % と な っ て い る . ま た , 空 室 率 で み る と , 泉 , 新 栄 が 特 に 高 く , 周 辺 的 な オ フ ィ ス 地 区 ほ ど 高 い 傾 向 に あ る も の の , そ の 他 の 地 区 間 の 差 異 は 小 さ い . ち な み に , 3 時 点 で 比 較 す る と 空 室 率 は 上 昇 傾 向 に あ る が ,ほ ぼ す べ て の 地 区 で 2 0 0 2 〜 2 0 0 4 年 の 間 に 空 室 率 が 最 も 高 か っ た 時 期 が あ り , 2 0 0 5 年 に は 低 下 傾 向 に あ る .
以 上 の 点 か ら , 名 古 屋 に お け る オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 形 成 は , 栄 , 伏 見 , 名 駅 の 3 地 区 を 中 心 に , 面 的 に 進 行 し て き た も の で あ り , 地 区 間 の 差 異 は 比 較 的 少 な い と 考 え ら れ る . ま た , 需 要 の 観 点 か ら み て も , 大 阪 に 比 べ る と 全 般 的 に 底 固 く 推 移 し て お り , 特 に 上 記 3 地 区 間 で の 差 異 は ほ と ん ど 見 受 け ら れ な い . た だ し , 名 古 屋 オ フ ィ ス ビ ル 2 0 0 7 年 問 題 と い わ れ る よ う に , 2 0 0 6 年 以 降 に 大 量 の オ フ ィ ス ビ ル 開 発 が な さ れ て お り , 現 在 も ま た 進 行 し て い る ( 瀬 口 2 0 0 6 ).
図 6 - 1 5 建 設 予 定 オ フ ィ ス 床 面 積 ( 名 古 屋 市 ) 資 料 ) 名 古 屋 市 「 環 境 配 慮 措 置 の 概 要 」( C A S B E E ) h t t p : / / w w w . c i t y . n a g o y a . j p / 、 お よ び 、「 不 動 産 白 書 」 よ り 作 成
そ こ で 大 阪 と 同 じ よ う に , 2 0 0 6 年 以 降 に 竣 工 し た も し く は 竣 工 予 定 の オ フ ィ ス ビ ル 床 面 積 を 地 区 別 に 集 計 す る と ( 図 6 - 1 5 ), 名 駅 エ リ ア で は 2 0 0 5 年 時 点 の ス ト ッ ク の 3 0 % に あ た る 3 0 万 ㎡ の オ フ ィ ス 床 が 2 0 1 0 年 ま で に 建 設 予 定 で あ り ,伏 見 エ リ ア で も 2 4 万
㎡ の オ フ ィ ス 床 の 供 給 が 計 画 さ れ て い る .ま た ,そ の 他 の 地 区 で も 2 2 万 ㎡ の オ フ ィ ス 床 が 供 給 予 定 で あ る が ,こ の う ち の 9 割 以 上 は ,今 回 エ リ ア 設 定 が な さ れ て い な い 名 古 屋 駅 西 口 で の
供 給 と な っ て い る . 一 方 , 栄 エ リ ア で の 供 給 予 定 は 2 . 4 万 ㎡ と 極 端 に 少 な く , 丸 ノ 内 エ リ ア の 3 . 2 万 ㎡ と 併 せ て も , 供 給 予 定 全 体 の 1 割 以 下 に 過 ぎ な い . こ う い っ た 点 か ら み る と , 名 古 屋 に お け る オ フ ィ ス 集 積 は , 今 後 , 名 駅 周 辺 の エ リ ア に 重 心 を 移 し て い く こ と が 予 想 さ れ , 名 古 屋 最 大 の 商 業 集 積 地 と し て 文 化 ・ 商 業 施 設 の 集 積 を 目 指 す 栄 エ リ ア 9 と は 棲 み 分 け が な さ れ て い く 可 能 性 が あ る .
5 . ま と め
本 稿 で は , 大 阪 ・ 名 古 屋 に お け る 都 市 内 で の オ フ ィ ス 地 区 を , オ フ ィ ス ス ト ッ ク の 形 成 過 程 と 商 業 − オ フ ィ ス 混 在 度 か ら 概 観 し , オ フ ィ ス エ リ ア と し て の 成 長 性 を 論 じ た . こ の 結 果 , 都 市 ご と に , オ フ ィ ス 地 区 の 役 割 分 担 や 形 成 過 程 に 大 き な 差 異 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た .す な わ ち ,大 阪 で は そ れ ぞ れ の エ リ ア が 商 業 ,オ フ ィ ス , 混 在 地 区 に 区 分 さ れ て い た の に 対 し て , 名 古 屋 で は エ リ ア ご と の 純 化 の 程 度 は 緩 や か で 純 粋 な オ フ ィ ス 地 区 は み ら れ な い . ま た , ス ト ッ ク の 形 成 過 程 に お い て も , 大 阪 で は 梅 田 , 堂 島 ・ 中 之 島 と い っ た 御 堂 筋 沿 い の 核 心 部 か ら 周 辺 部 へ と オ フ ィ ス 建 設 が 波 及 し , 9 0 年 代 以 降 に は 都 心 回 帰 の 動 き が あ る の に 対 し て , 名 古 屋 で は ス ト ッ ク の 形 成 年 代 に エ リ ア 間 の 差 異 は 少 な い .
加 え て , 各 エ リ ア に お け る オ フ ィ ス の 稼 動 状 況 か ら み る と , 大 阪 で は 1 9 9 0 年 代 後 半 以 降 ,オ フ ィ ス に 純 化 し た エ リ ア ほ ど 需 給 状 況 が 悪 化 し , 逆 に オ フ ィ ス 従 業 者 比 率 が 7 0 % 程 度 の 商 業 − オ フ ィ ス 混 在 度 の 高 い エ リ ア で は , 需 給 状 況 が 良 好 で , 新 規 の オ フ ィ ス 供 給 も 活 発 で あ っ た . 名 古 屋 に お い て は , 2 0 0 0 年 代 初 め に オ フ ィ ス 市 況 が 急 速 に 改 善 し た こ と も あ り , ほ ぼ す べ て の エ リ ア で オ フ ィ ス 需 給 が 引 き 締 ま り , こ こ で も エ リ ア 間 の 差 異 は 少 な か っ た .
こ の よ う な 大 阪 ・ 名 古 屋 の 差 異 の 背 景 に は , 1 9 9 0 年 代 以 降 オ フ ィ ス 需 要 の 減 退 が 著 し く , ス ト ッ ク の 成 長 が 停 滞 し て い た 大 阪 と , オ フ ィ ス 需 要 が 成 長 過 程 に あ っ た 名 古 屋 と い う 違 い が あ る も の と 考 え ら れ る . 言 う な れ ば , オ フ ィ ス 需 要 の 成 長 期 に は , 都 市 全 体 で オ フ
ィ ス ス ト ッ ク の 拡 大 と 新 陳 代 謝 が 進 行 す る が , オ フ ィ ス 需 要 が 減 少 局 面 に 入 る と , オ フ ィ ス 地 区 と し て の 魅 力 の 優 劣 に よ っ て 地 区 間 の 格 差 が 拡 大 す る も の と 考 え ら れ る . ま た , オ フ ィ ス 地 区 と し て の 魅 力 を 左 右 す る 要 素 と し て , 商 業 と オ フ ィ ス の 混 在 度 が 鍵 の 一 つ と な り つ つ あ る . こ の た め , 集 客 施 設 が 立 地 し や す い タ ー ミ ナ ル 駅 の 周 辺 に , 新 規 の オ フ ィ ス ビ ル の 供 給 が 集 中 す る 傾 向 が 見 出 さ れ た .
今 後 , わ が 国 の オ フ ィ ス 需 要 は , 労 働 力 人 口 の 減 少 に と も な っ て 縮 小 傾 向 に 向 か う こ と が 予 想 さ れ る . し か し な が ら , オ フ ィ ス の 供 給 は 当 分 続 く 上 に , 一 度 供 給 さ れ た ス ト ッ ク の 他 用 途 へ の 転 換 は 困 難 で あ り , ス ト ッ ク 量 が 需 要 を 上 回 る 地 区 が 増 加 し て い く 可 能 性 が あ る . こ の た め , オ フ ィ ス 地 区 間 の 競 争 は ま す ま す 強 ま り , 相 対 的 に 魅 力 に 劣 る 地 区 で は , ス ト ッ ク の 新 陳 代 謝 が 滞 り , そ の 価 値 を 劣 化 さ せ て い く だ ろ う . た だ し , よ り 一 層 の 国 際 化 や 情 報 産 業 の 集 積 に と も な っ て , 都 市 間 の 競 争 も 激 化 し , オ フ ィ ス 需 要 を 吸 引 す る 都 市 と 収 奪 さ れ る 都 市 が 明 確 化 し て い く こ と も 考 え ら れ る . し た が っ て , 都 市 内 の オ フ ィ ス 地 区 間 格 差 を 考 慮 す る 上 で , そ れ ぞ れ の 都 市 に お け る オ フ ィ ス 需 要 の 動 向 を 明 ら か に し て お く 必 要 が あ る と い え よ う .
第 6 章 の 脚 注
1 オ フ ィ ス ビ ル 大 量 供 給 の 背 景 に は , バ ブ ル 崩 壊 後 に 放 出 さ れ た 国 鉄 跡 地 の 再 開 発 , 都 市 再 生 特 別 措 置 法 等 の 政 策 的 後 押 し , 不 動 産 投 資 の 拡 大 の ほ か に も さ ま ざ ま な 制 度 的 ・ 技 術 的 側 面 が 指 摘 さ れ る ( 山 本 ほ か 2 0 0 5 ).
2 企 業 の 支 店 網 や オ フ ィ ス 従 業 者 の 集 積 の 視 点 か ら オ フ ィ ス 機 能 の 立 地 を 扱 っ た 研 究 は , 全 国 的 に 一 定 の 蓄 積 が あ る も の の , オ フ ィ ス ビ ル の 棟 数 や 床 面 積 な ど の オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 直 接 扱 っ た 研 究 は 少 な い . 東 京 に お け る オ フ ィ ス ス ト ッ ク を 扱 っ た 研 究 と し て は , 開 発 主 体 に よ る ス ト ッ ク 形 成 の 空 間 的 差 異 を 扱 っ た 松 原 ( 1 9 8 8 ) や , オ フ ィ ス 供 給 の 集 中 と 分 散 の 観 点 か ら ス ト ッ ク を 扱 っ た 坪 本 ( 1 9 9 6 ) な ど が あ る が , 大 阪 ・ 名 古 屋 や 他 の 政 令 指 定 都 市 に お け る ス ト ッ ク と し て の オ フ ィ ス 研 究 は 管 見 の 限 り 見 当 た ら な い .
3 日 本 不 動 産 研 究 所 「 第 1 回 J R E I オ フ ィ ス ビ ル 調 査 結 果 」 2 0 0 6 年 7 月 1 2 日 .
4 生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム 「 不 動 産 白 書 」 各 年 版 に お け る , 総 平 均 値 を 使 用 .
5 日 本 不 動 産 研 究 所 「 全 国 賃 料 統 計 」 各 年 版 に お け る , 都 市 圏 別 賃 料 指 数 を 使 用 .
6 大 阪 全 体 の ス ト ッ ク を S , オ フ ィ ス 地 区 n の 全 ス ト ッ ク N と す る と , オ フ ィ ス 地 区 n に お け る t 期 の 特 化 係 数 R { n ( t ) } は 以 下 の 式 で 求 め る . R { n ( t ) } = { S ( t ) / Σ S } / { N ( t ) / Σ N } ・ ・ ・( 1 )
7 大 阪 市 に お け る 第 1 種 ・ 第 2 種 市 街 地 再 開 発 事 業 1 1 地 区 の う ち 6 地 区 が 北 区 に 集 中 し て い る . ま た , 都 市 再 生 特 別 地 区 6 地 区 の う ち 3 地 区 が 梅 田 駅 周 辺 の 開 発 と な っ て い る な ど ( 佐 藤 2 0 0 5 ほ か ), 今 後 も 梅 田 駅 周 辺 で 集 中 的 に オ フ ィ ス ビ ル の 供 給 が 続 く 予 定 で あ る .
8 2 0 0 6 年 以 降 竣 工 , も し く は 竣 工 予 定 の オ フ ィ ス ビ ル 床 面 積 は , 主 に
「 環 境 配 慮 措 置 の 概 要 」( C A S B E E )か ら 作 成 し た .大 阪 市 ,名 古 屋 市 等 で は , 一 定 規 模 以 上 の 建 築 物 を 建 て る 際 に , 環 境 計 画 書 の 届 出 を 義 務 付 け て お り , 届 出 の 内 容 を ホ ー ム ペ ー ジ に お い て 公 表 し て い る . そ こ で 本 稿 で は , 公 表 さ れ た 建 築 物 の う ち , 主 な 用 途 が 事 務 所 で , 延 床 面 積 5 0 0 0
㎡ 以 上 の 建 築 物 を オ フ ィ ス ビ ル と 定 義 し ,2 0 0 6 年 1 月 以 降 に 竣 工 し た か 竣 工 予 定 の オ フ ィ ス ビ ル を 集 計 し た . た だ し , オ フ ィ ス ビ ル の 開 発 計 画 が 公 表 さ れ て か ら , 環 境 計 画 書 の 届 出 が 出 さ れ る ま で に は タ イ ム ラ グ が あ る た め , 生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム 「 不 動 産 白 書 」 各 年 版 に お い て 公 表 さ れ て い る 「 新 築 ・ 計 画 中 ビ ル リ ス ト 」 を 利 用 し 補 足 し た .
9 2 0 0 5 年 名 古 屋 市 都 市 計 画 マ ス タ ー プ ラ ン に よ る と ,名 古 屋 駅 地 区 は ,
「 業 務 ビ ル の 建 替 な ど の 再 開 発 を 積 極 的 に 誘 導 ・ 支 援 す る と と も に , 良
好 な 都 市 景 観 の 形 成 」が 目 指 さ れ て い る の に 対 し て ,栄 地 区 は ,「 都 心 の に ぎ わ い を 楽 し む ま ち 」 が 掲 げ ら れ , 商 業 ・ 文 化 施 設 な ど の 拠 点 を 結 び つ け た 回 遊 性 を 目 標 に 掲 げ て い る .
第 6 章 の 文 献
阿 部 和 俊 1 9 9 1 ,『 日 本 の 都 市 体 系 研 究 』 地 人 書 房 .
生 駒 デ ー タ サ ー ビ ス シ ス テ ム 2 0 0 4 , 企 業 の オ フ ィ ス に 対 す る 意 識 − ア ン ケ ー ト 分 析 ,『 不 動 産 白 書 』: 1 6 - 2 7 .
伊 藤 健 司 2 0 0 7 , 名 古 屋 都 心 部 の 景 観 と そ の 変 化 , 阿 部 和 俊 編 『 都 市 の 景 観 地 理 日 本 編 1 』 古 今 書 院 : 4 7 - 5 8 .
佐 藤 道 彦 2 0 0 5 , 大 阪 市 に お け る 都 市 再 生 特 区 に つ い て , 都 市 計 画 5 4 : 3 2 - 3 6 .
瀬 口 哲 夫 2 0 0 6 ,名 古 屋・都 心 の 活 性 化 計 画 と 大 規 模 開 発 ,都 市 計 画 5 5:
3 7 - 4 0 .
坪 本 裕 之 1 9 9 6 ,東 京 大 都 市 圏 に お け る オ フ ィ ス 供 給 と 業 務 地 域 の 成 長 , 人 文 地 理 4 8 , 2 1 - 4 3 .
増 田 悦 左 2 0 0 4 ,近 新 大 と 遠 古 小 の 格 差 が さ ら に 広 が る 2 0 0 4 年 の オ フ ィ ス 賃 貸 市 場 , リ ア ル エ ス テ ー ト マ ネ ー ジ メ ン ト ジ ャ ー ナ ル 5 8 . 松 原 宏 1 9 8 8 ,『 不 動 産 資 本 と 都 市 開 発 』 ミ ネ ル バ 書 房 .
松 村 徹 2 0 0 5 , 再 考 / 東 京 オ フ ィ ス 市 場 の 「 2 0 1 0 年 問 題 」 − ビ ル 需 要 の 多 様 化 が オ フ ィ ス ワ ー カ ー 減 少 の 緩 衝 材 に − , N L I R e s e a r c h I n s t i t u t e 2 0 0 5 年 4 月 2 7 日 : 1 - 1 7 .
松 村 徹 2 0 0 6 , 地 方 賃 貸 オ フ ィ ス 市 場 と 投 資 市 場 − 改 善 す る 賃 貸 市 況 と 流 入 す る 投 資 資 金 − , ニ ッ セ イ 基 礎 研 R E P O R T 1 1 3 : 2 - 7 .
山 本 忠 ・ 平 井 敏 彦 ・ 西 嶋 淳 2 0 0 5 , 不 動 産 市 場 の 構 造 変 化 が 都 市 づ く り に 与 え る 影 響 , 不 動 産 研 究 4 7 - 2 : 2 1 - 3 1 .