第5章 ビジュアル・メディアとしての沖縄海洋博
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(2) .. .. . .. 人 工 化・ 象徴化 され 、 <海 の沖 縄 >という テーマ 化と 機 能 分 化の 装 置へ と化 し て い く の で ある 。す な わ ち こ れ ら は、海 洋 博 の< 海> の テ ー マを 、 ( 離島 を含 め た)沖縄 に 全 域 化し て いく と同 時 に、 <海 > のなかの サ ブ・ カ テ ゴ リ ー を、 沖 縄県 内の 各地域 に割 り 当て 、個 性 化し てい る 。し た が っ て、 <海 > のテーマ 博 ・海洋博 の エ ピ ス テ ー メ ー は会 場 の中 だ け で . .. . .. .. . .. .. . .. なく 、会場外 の 沖縄 それ 自 体の リ ア リ テ ィ をも 方 向づ け よ う と し て い た の で あ る(→2 章・ 7 章)。 こ の よ う に し て、 海 洋 博 の効 用は 沖 縄の 全域 に 広げ ら れ よ う と し て い た。 (2)海 洋 博 会 場の な か の サブ ・ テ ー マ 以 上の 沖 縄 のゾ ー ニ ン グ に お い て成 り 立 っ て い た の は、〔 全 域 的な < 海 >の テ ー マと 、 そ の な か で のサ ブ・ カ テ ゴ リ ー へ の局所化 ・ 個 性 化〕 という 、両 極 的な 構図 で あ っ た。 興 味深 い こ と に こ の両 極 的な 構図 は 、海洋博 の 会 場 内で も ゾ ー ニ ン グ の基 本と な っ て いた 。 <海 >と い うメイン ・ テ ー マの も と で の、 次 の4 つの ク ラ ス タ ー と サブ ・テ ー マである 。 ① 魚の ク ラ ス タ ー 「海 に 親し む(Enjoying the Sea)」 ② 民族 ・歴 史 のク ラ ス タ ー「 海に 生 きる(Living with the Sea)」 ③ 科学 ・技 術 のク ラ ス タ ー「 海を 開 く(Developing the Sea)」 ④ 船の ク ラ ス タ ー 「海 を 行く(Man Plies the Seas)」 海 洋 博 協 会 は「 海 洋 博の 基 本 構 想」 の 中 で、 博 覧 会 を構 成 す る要 素 の 一つ と し て 、「 共 .. .. . .. .. 通の 展示 カ テ ゴ リ ー と 統 一 的か つ 個 性 的な ゾ ー ニ ン グ 」 を挙 げ て い る。 協 会 側 としては 、 各出展者 による 自由 な 企画展開 を 求め て い た が、 や は り 全く の放 任 では 海 洋 博 全 体 と し て の整合性 や 、統一的 な イメージ を 創り 出せ な い。 そ れ で 、一 定の サ ブ・ テ ー マ に し た が っ て各出展 を 分類 ・整 理 し、 そ れ に 基づいて 空 間 配 置の ゾ ー ニ ン グ を 行う こ と に した 。こ れ が、 <魚 > <民 族・ 歴 史> <科 学 ・技 術> < 船> の4 つ のク ラ ス タ ーである 。 も ち ろ ん こ れ ら のサ ブ ・テーマ は 、観 客に と っ て の自 由 選 択 やわ か り や す さ と い う 点か ら も考 慮さ れ て い た。 すなわち 、< 海> という メ イ ン・ テーマ に よ る 空 間 的 全 体 化と、 サ ブ・ テ ー マに よる 空 間 的 個 別 化 が、 海 洋 博 会 場 の内 部 と外 部( 沖 縄 県 全 域 ) の両 方で 、 パラレル な 形で 進め ら れ て い っ た のである 。 沖縄 振 興 開 発の 観点 か ら見 た場 合 、空 間 配 置 の政治学 と し て の< 海 >の テ ー マ 化は 、海 洋 博 会 場の 内 部と 外部 で 相互 に連 動 し合 っ て い る。 こ こ で便 宜 的・直 感 的に 、両 者の サ ブ・カ テ ゴ リ ーを 対 応さ せ て み る な ら、 <魚 >に は 本島南部 の 水産 セ ン タ ーと 宮 古 諸 島の 栽 培 漁 業ゾーン 、 <民 族・ 歴 史> には 本 島 中 部の 国 .. . . 際 海 洋 会 館 ・国 際 会 議 場( 歴 史 的 に 沖 縄は そ の「 地 理 的 優 位 性」 か ら、 ア ジ ア ・太 平 洋 諸 国と の国 際 交 流 の拠 点 と な っ て き た こ と が 強 調さ れ て い る)、<科 学・技 術> に は八 重 山 諸 島・ 久 米 島 の学 術 研 究 センター 、 <船 >に は 慶 良 間 諸 島 の海洋性 レ ク リ ェ ー シ ョ ン セ ン タ ーを 、そ れ ぞ れ対 応さ せ る こ と が で き る だ ろ う 。た だ し 、「 船を 通 じ て の国 際 交 流 」と い う 意味 なら < 船> は国 際 海 洋 会 館 ・ 国 際 会 議 場 と対 応し て く る し、 < 魚> も後 述 す る よ う に 「見 る た め の魚 」と し てレ ク リ ェ ー シ ョ ン 化 していく 側 面を 考え れ ば、 慶 良 間 諸 島 と対 応 する 。ま だ 他に も多 様 な組 み合 わせを 考え る こ と は で き る の で、 こ こ で は、 < 海> のテ ー マ世 界が 多 様な 形で 、 沖縄 の空 間 そのもの へ と開 かれ 、 割り 当て ら れつ つ あ っ たことを 押 93.
(3) さ え て お け ば よ い だ ろ う。 とすれば 、海 洋 博 会 場の ゾ ー ニ ン グ は、 復 帰 後の 沖縄県 のゾ ー ニ ン グに 先 行し て、空 間 開発 のひ と つ の モ デ ル に も な っ て い た と考 え る こ と が で き る 。こ こ で注 目す べ き は 、沖 縄 の< 海= 自 然> に対 す る空間的 な 再 帰 性の は た ら き で あ り、 沖縄 の 海洋空間 に 対し て未 来 のコ ロ ニ ー 化を 実現 し よ う と す る 意志 で あ る 。2海洋博 は 、復帰後 の <沖 縄> を イメージ に よ っ て先 取 りし 、そ の 未来 のコ ロ ニ ー 化を 空間的 ・ス ペ ク タ ク ル 的 に体 現し た 、あ る一 定 の世界像 の 演出 ・呈 示 な の で あ っ た。 (3)本 島 中 部 に割 り 当て ら れ た 「国際性 」 の政 治 的 意 味 ところで 、沖 縄の ゾ ー ニ ン グ の 方で 、本 島 中 部 に「国 際 性」 のテーマ が 割り 当て ら れ て い た こ と に 注目 し よ う 。理 由と し て「 沖縄 の 地 理 的 優 位 性」 が挙 げ ら れ て い る が、 なぜ 中 . . .. .. 部な の だ ろ う か 。こ れ に続 けて 、「中 部 地 域 は外 的 経 済 要 因 により 発展 し て き た所 であり 、 住民 は国 際 的 協 調 性 な ら び に友 交 、親善 の国 際 的 経 験が 豊 富である 。」と 、一 見 ポ ジ テ ィ ブ な表 現が さ れ て い る が 、こ の「 外 的 経 済 要 因 」と は ま ぎ れ も な く 、 米軍基地 の こ と を指 し て い る 。本 島 中 部は 嘉手納・ 普 天 間を 中 心に 米 軍 基 地が 広大 な 面積 を占 め 、周 辺 地 域 の経 済 も、米軍 との 関 わ り に よ っ て大 きく 左 右さ れ て き た。いわゆる「基 地 依 存 経 済 」で あ る。 3 海 洋 博の 用 地 選 定 委 員 会も こ の こ と を 念頭 に 置い て、 中 部は 「国 際 的 経 験が 豊 富」 と表 現 し た の で あ る。そ し て 委 員 会は 、「本 土 復 帰 と と も に、中 部の 都市 も 新た な経 済 基 盤 を確 立 する 必要 があり 、… … 」と 続け る 。明 ら か に 、本 土 復 帰 によって 基 地 経 済を 脱 す る こ と を 見込 んで 、新し い地 域 開 発 を行 う 必要 から 、「国 際 性」や「学 術 研 究 」という テーマ を割 り 当て た の で あ る 。 す な わ ち こ のゾ ー ニ ン グは 、基地 の リ ア リ テ ィ から <国 際 性> へと 、本 島 中 部を 読み か え、 空間 に 対し て象 徴 的な 変換 を も た ら そ う と す る も の な の で あ っ た。 そ し て そ の 際に 、 海 洋 博の テーマ 世界 が 活用 さ れ て い く 。そ れ に よ っ て 、 広大 な基 地 と隣 接す る コ ロ ニ ア ル な日 常が 覆 い隠 され 、 <国際性 > のク リ ー ン なイ メ ー ジ が か ぶ せ ら れ て い く の で あ っ た 。 もっとも 、 委 員 会と し て は 復帰 による 基 地 返 還を 想定 し て い た わ け だ が 、実 際 には 復 帰 後 も返 還は 進 ま な い た め に、 中部 を め ぐ る基 地 のリ ア リ テ ィと <国 際 性> のイ メ ー ジ は互 い に並 立し 合 って 、リ ア リ テ ィの 二重性 を構 成 し て い く こ と に な る の で あ る。 4 もちろん 、以 上の ゾ ー ニ ン グ や海 洋 関 連 施 設 の 設置 が 、基 地 との 関係 と いう 側面 だ け に 還元 さ れ る わ け で は な い。し か し こ の 点は 、海洋博 が 沖縄 に対 し て及 ぼ し た 象 徴 的な 影 響・ 効果 を見 る 上で 、非 常 に重 要な 点 で あ る。 まさに 海 洋 博 のエ ピ ス テ ー メ ーは 会 場の 中だ け . .. .. . .. .. . .. .. . で な く、 会場外 の沖 縄 それ 自体 の リ ア リ テ ィ をも 方向 づ け よ う と し て い た わ け で あ る。 こ の よ う な 意味 で 、政 府 出 展 の海 洋 文 化 館や 沖 縄 県 出 展 の 沖 縄 館が 設 置された 民 族・歴 史の クラス タ ー は、 アジア ・太 平 洋 地 域と そ の な か に 位 置す る沖 縄 における 戦 争・ 基地 ・ 2. 実際、海 洋 博 のク ラ ス タ ー型 パ タ ー ンは 、「将 来の 都 市の あ り 方 への 提言 を 含む と い う 点で、そ れ自 体 が ひ と つ の 展示 と な る 」( 日 本 工 業 新 聞 社 編 、1973、p.8 )と考 え ら れ て い た 。 3 1 9 6 9 年の 沖縄 に お け る基 地 関 係 収 入 は 2 億 9 2 0 万ド ル で、 最大 の ドル 収 入 源で あ っ た 。ち な み に こ の年 の沖 縄 の三 大 産 業 と比 較し て み る と、 砂 糖 類 の輸 出 額 が 4,458 万ド ル、 観 光 収 入 は 3,317 万 ド ル 、 パ イ ナ ッ プ ルの 輸 出 額 は 1,868 万 ドル で 、こ れ ら を 大き く上 回 っ て い る ( 琉 球 政 府 通 商 産 業 局 商 工 部 観 光課 、1970『観 光 統 計 要 覧 1 9 6 9 年版』p.17)。 4 中部 に位 置す る 宜 野 湾 市 に 、復 帰の 年 1 9 7 2 年、普 天 間 基 地と 隣 接す る形 で 沖 縄 国 際 大 学が 設立 さ れ. 94.
(4) 国際関係 の 歴史 を大 き く読 み か え 、これら 広 大な 地域 に 対し て、 < 海洋 >と い うテーマ の も と に新 た な方 向づ け を進 め て い こ う と す る 、き わ め て 政 治 的・ 象徴的 な機 能 を担 っ て い たと 言え よ う( 個々 の パ ビ リ オ ン の詳 細は 後 述)。. 第7 節. 政 府 出 展 施 設 の検 討. さて、 以 下で は海 洋 博に お け る 代 表 的な パ ビ リ オ ン 群 の具体的 な 展示内容 を 検討 し て い く。た だ し、これらを 包括的・網羅的 に紹 介 す る こ と は、本 稿の 目的 で は な い。5あくまで 、 以後 の沖 縄 イメージ の 形成 ・確 立 に つ な が っ た< 海> < 亜 熱 帯> < 文化 >に 代 表される テ ーマ 群が 、い か に し て 海 洋 博 の展 示に お い て 表出 さ れ、ス ペ ク タ ク ル 化さ れ て い っ た の か 、 と い う観 点 から 、焦 点 をしぼり 込 んで 見て い く こ とに し た い 。. .. .. . .. .. .. . ところで 、沖 縄 海 洋 博の 全体的 な主 導 権を 握っ て い た の は 、 沖 縄 県で は な く 、あ く ま で .. .. 日本政府 で あっ た。 そ の日 本 政 府 自身 は、 沖 縄で 開催 される <海 > のテーマ 博 に対 して 、 いかなる 具体的 な内 容 を与 え、 ど の よ う な 演 出・ 展示 を 行っ た の だ ろ う か。 政 府は 海 洋 博 の主催国 と し て の立 場 から 、最 大 規 模 の出 展 を行 う こ と に な り、 科 学・ 技術 の ク ラ ス タ ー にア ク ア ポ リ ス と海 洋 牧 場( 海上展示 )、民族・歴史 のク ラ ス タ ーに 海 洋 文 化 館( 陸 上 展 示)、 魚の クラス タ ー に海 洋 生 物 園(魚 類 展 示 )、さらには 海 浜 公 園を 、政 府 出 展 施 設 と し て設 け た。 こ れ ら の展 示内 容 に立 ち入 っ て検 討を 加 える こ と に よ っ て、 日 本 政 府が < 海> を め ぐ る< 科 学 技 術> <自 然 >< 文化 > に関 して 、 いかなる エ ピ ス テ ー メ ーを 構築 し 、そ れ に よ って い か な るイ メ ー ジ を可視化 し 、現実化 し よ う と し て い た の か 、 ま た こ こ ま で見 て き た 海 洋 博の 思 想が 、い か な る 形で 展 示に 具 現 化 さ れ て い る のか が、 具体的 に明 ら か になる 。 (1)ア ク ア ポ リ ス : 可 視 性を 義 務づ け ら れ たシ ン ボ ル 沖 縄 国 際 海 洋博覧会 の 全体 を最 も 象徴 し、代 表す るフ ィ ギ ュ アと し て、70 年 の大 阪 万 博 の「 太陽 の 塔」 に匹 敵 する モ ニ ュ メ ン タ ル な 建 築 物と い えば 、や は り日 本 政 府 出展 施設 の 「ア ク ア ポ リ ス 」で あ ろ う 。本 部 半 島 沿 岸 の 美し いエ メ ラ ル ド グ リ ー ン の海 に 、白 く巨 大 な人 工 的 構 造 物 が浮 か び上 がる 。 ア ク ア ポ リ スの 基 本 構 想として 挙 げ ら れ た の は、 次の 5 項目 で あ る 。 ①. この 海 洋 博 覧 会 のシ ン ボ ル と し て 、テーマ 「海 ― その 望ま し い未 来」 を 具現 す る も の で あ る こ と。. ②. 未 来 性の あ る技 術を 生 かし 、構 造、 機 能および 美 しさ の観 点 から 、世 界 初の 海 上 都 市と し て ふ さ わ し い も の で あ る こ と。. ③. 周囲 の環 境 を保 存し 、 こ れ と調 和 す る と と も に、 他の 会 場 施 設と の調 和 が と れ、 か つ相 互に 補 完す る も の で あ る こ と 。. ④. 多数 の観 客 を安 全に 受 け入 れる 方 法を 講じ る こ と 。. ⑤. 会 期 後の 利 用 方 法に つ い て 十 分 考 慮す る こ と 。 6. た こ と は 、 ま さ に こ の 事態 を象 徴 的に 表し て い る 。 5 海 洋 博の パ ビ リ オ ン 群の 包 括 的 な展 示 内 容 に つ い て は 、 『海 洋 博 公 式ガ イ ド ブ ッ ク 』や 電 通 編の『公 式 記録 』な ど を参 照さ れ た い 。 6 電 通 編、1976a、p.124.. 95.
(5) 明らかに 海 洋 博 協 会 は、 ア ク ア ポ リ ス を海 洋 博 全 体の シ ン ボ ルとして 構 想し て い た。 そ の出 展 決 定 の際 、「望 ま し き 未来 を指 向 し つ つ科 学・技 術の 展 示などを 行 い、海 に浮 かぶ 巨 大構造物 として 、全 体 のシ ン ボ ル 、か つ 20 世紀後半 の モ ニ ュ メ ン ト」 と い う コ ン セ プ ト が、 明 確 化 さ れ て い た の で あ る 。 ア ク ア ポ リ ス のテ ー マ は 、「未 来 の 海 上 都 市 」 で あ る 。 こ のテ ー マ 自 体が 、 海 洋 博 全 体 の「 海― そ の望 ま し い 未来 」と い う、 より 抽象的 なテ ー マを 、物 質 的・ 視 覚 的 に具現化 し た も のと な っ て い る 。 だ か ら、 アクア ポ リ ス を海 上に 建 設・ 配置 す る こ と は 非 常に 重要 な 要素 で あ っ た。 ア ク ア ポ リ スが 海 上に 位置 し 、会場側 か ら海 と一 体 的に ま な ざ さ れ る視 覚 の構 図が 成 立す る こ と に よ っ て 、 本部半島 の <海 =自 然 >は そ の ま ま展 示の 一 部に な る こ と が で き る し、 <自 然 −人 間− 技 術> の関 わ り合 いと 結 びつきを 、 視 覚 的・ 美 的に 表現 す る こ と が で き た の で あ る。だから 協会 は 、こ の 構 造 物が 会 場 全 体の 中 心と な る よ う配 置し 、 会場 の ど こ か ら で も 観 客に 見え る よ う に配 慮 した の で あ る。 す な わ ちア ク ア ポ リ ス は、 遍 在的 な可 視 性を 義 務 付 けられた シ ン ボ ルで あ っ た 。 この 場合 の シンボル と は、 単に 海 洋 博 全 体 のシ ン ボ ル と い う だ け で は な い。 同時 に、 海 .. .. . . の< 未来 > のシ ン ボ ル で も あ っ た 。そ し て、そ の未来像 を 現在 に お い て 形象化 す る ために 、 「未来性 のある 」最 先 端の 科学 ・ 技術 が動 員 さ れ る。 こ れ に よ っ て 「未 来の 海 上 都 市」 を 実現 す る と き、ア ク ア ポ リ ス は科 学・技 術の 力 のシ ン ボ ル としても 立 ち現 れ る の で あ っ た 。 裏を 返せ ば 、< 海> に 関す る科 学 ・技 術を 形象化 して 展 示す る こ と は、 人間 の 海洋活動 の 現状 や可 能 性を 視覚 的 に表 現す る こ と に な り 、それは 「 <海 >の 望 ま し い未 来 」を 物 質 的 に表 現す る こ と でも あった の で あ る。 (2)環 境 創 出 型テ ク ノ ロ ジ ー による 包 括 的 管 理 実 際ア ク ア ポ リ ス は 、「 科 学・ 技 術 のク ラ ス タ ー」 に 属 し て い た 。 つまり ア ク ア ポ リ ス では 、科学・技 術の 展示 を 行うこと 、「展 示 的 価 値と し て の 科学・技 術 」が 、重 要な モ チ ー フに なって い た の で あ る。 「 世界初 の 」海 上 都 市 を実 現 す る た め に 、構造・機 能・美 し さ そ れぞれの 観 点か ら、 先 端 技 術を 投 入し て い く 。ア ク ア ポ リ ス は半 潜 水・ 浮 遊 式 を特 徴と し たが 、半 潜 水・ 浮 遊 式 の海 洋 構 造 物と し て は 当時 、世 界 最 大 で あ っ た。 そ れ は ま さ に、 科 学 技 術の 進 歩を 測る ための 実験 的 な海 上 都 市 なの だが 、 その 実験 そ の も のを ス ペ ク タ ク ル 的に 展示 し 、観 客の 視 覚 的 消 費 に 供す るこ と が ね ら い と さ れ て い た のである 。 科学技術 の 高度 に専 門 的な 知識 は 、難 し く て 一 般 人に は 近寄 り が た いの が常 だ が、 博 覧 会 は一 般の 観 客に わ か り や す く楽 し く、 科 学 技 術の 成果 を 見せ る こ と を重 視し て い た 。 と こ ろ で 3 章 1 節 では 、 万 国 博 覧 会 の歴 史を 振 り返 る な か で、 水 晶 宮 やエ ッ フ ェ ル塔 、 観 覧 車、 電 気 照 明な ど 、各時代 の 新し いテ ク ノ ロ ジ ー を 活用 した ス ペ ク タ ク ル 的な 演出 ・ 展示 が、 < 未来 >イ メ ー ジ を祝 祭 的に 演出 し 、観 客を 視覚的 に魅 了 し て き た こ と を 指摘 し た。 そ れ ら の展 示は 、 後の 日 常 生 活や 経 済 活 動の モ デ ル を提 供す る も の で あ っ た。 その 意 味で は 、最 新の テ ク ノ ロ ジ ー を使 って 未 来の 海 上 都 市を 祝 祭 的 に演 出し た ア ク ア ポ リ スも 、 明ら か に こ の流 れ を う け て い る 。 た だ し、 都 市 社 会 学 者 シャロン ・ズ ー キ ン は『 権 力の ラ ン ド ス ケ ー プ 』に お い て 、万 国 博 覧 会の 歴 史の 中で 、1893 年の シ カ ゴ 万博 と 1939 年の ニ ュ ー ヨ ー ク万 博 の間 では 、テ ク ノロジー の 展示方法 が 大き く変 容 した こ と を 指摘 し て い る 。1893 年に は 、新 し い機 械装 置 96.
(6) は例えば観覧車のように、個々の物質的な生産物として直接的に展示されていた。だが 1939 年ま で に は 、テ ク ノ ロ ジ ー の進 歩 のイ メ ー ジ は工 業 生 産 そのもの か らは 抽 象 化 され 、 博 覧 会の 風 景全 体の 中 に組 み込 まれて い っ た と い う。 ニ ュ ー ヨ ー ク 万博 では テ ク ノ ロ ジ ー の進 歩は 、 その 一貫 し たテーマ 「 明日 の世 界 」の 中に 、 組み 込ま れ て い た の で あ る 。 7 こ の 変 容 を 一 言 で 言 う な ら 、「 機 械 生 産 型 テ ク ノ ロ ジ ーか ら 環 境 創 出 型 テ ク ノ ロ ジ ー へ」 と名 付 け る こ と が で き よ う 。 沖 縄 海 洋 博 も、39 年 のニ ュ ー ヨ ー ク 万博 か ら 70 年の 大 阪 万 博ま で の流 れを 受 け継 い で い る。 ア ク ア ポ リ スは ま さ に 、< 海 >の 未 来 都 市という 人 工的 な環 境 で あ り、 様 々な 技術 を 複合 した 環 境 創 出 型 テ ク ノ ロ ジ ー によって 産 み出 され た のである 。 この 海 上 都 市の 技 術 的 要 件 と さ れ た の は、 まず 第 一に 、周 囲 の環 境 保 存 で あ る。 沖縄 の 美し い海 と の調 和を コ ン セ プ ト と し て い る 以 上、 ア ク ア ポ リ スの 建 設により 周 囲の 環境 が 破壊 され て し ま っ て は 台な し に な る。水 深 は 35〜40m と深く 、海 底 が平 坦で は な い た め 、 基礎構造 は 固 定 式に せ ず、 半 潜 水 ・浮 遊式 が 選ばれた 。 これ を 16 本の ア ン カ ー チ ェ ー ン の係 留に よ っ て 海底 に 固定 し た の で、 海底 の 破壊 を わ ず か に 抑え た 。 次に 、環 境 保 存 とセット で 考え る べ き 要件 は、 安全性 の確 保 で あ る。 多数 の 観客 の参 加 が前 提さ れ る以 上 、海 上で の 施設 には 安全性 への 充 分な 配慮 が 必要 と な る 。特 に 沖縄 では 、 台風対策 は 必須 で あ っ た。 半 潜 水 ・浮遊式 は 、台 風 対 策 の点 も考 慮 さ れ て い た の で あ り 、 台風 で海 が 荒れると 、約 200m 移 動し て沖 合 に出 て、15m 海 中に 沈 み、半 潜 水 状 態 に な る こ と で安 定 を保 つ。 こ れ に よ り 、 瞬間風速 80m の 台風 に も耐 え る と さ れ た。 ち な み に こ の 半 潜 水 ・ 浮 遊式 は 、 海 底 石 油 掘 削の 基 地 に 使わ れ つ つ あ っ た 方 式 で あ る 。 ここから 、 ア ク ア ポ リ スが 当時 、 オ イ ル シ ョ ッ ク 後の 石 油に 対す る 意識 の高 まりを 反映 し たもので も あ っ た こ と が読 み取 れ る( 実際 ア ク ア ポ リ ス の形 状も 、 石 油 掘 削 基 地と 似て い る)。75 年 の海洋博 に よ っ て海 洋 開 発 の問 題 が活 発に 取 り上 げ ら れ た背 景に は 、実 はこ の 政 治 的・ 経 済 的 文 脈 がある 。 次に 、内 部 構 造 で あ る。 ア ク ア ポ リ ス は海 上 都 市 のモデル として 、海 水を 汚 染しない ク ローズド ・ システム を 採用 す る と い う 主旨 か ら、 電力 ・ 水の 自 家 供 給や 、汚 水 ・廃棄物 の 再 循 環・ 無害化 を技 術 的に 実現 し た。 8 ア ク ア ポ リ スは 、コ ン ピ ュ ー タ ーの 情 報シ ス テ ム によって 、シ ス テ マ テ ィ ッ クな 管理 を 受け る。 こ の集 中 管 理 じたいが 、 海上都市 の <未 来> イ メ ー ジと し て機 能し て いる 。こ の .. . .. .. . コ ン ピ ュ ー タ ー の活 用 は、 展 示 演 出 面 (= ス ペ ク タ ク ル )と 管 理 面 (= 監視 ) に分 け ら れ る。 展示演 出 面 では 、 ア ク ア ホ ー ルに 設置 された ア ク ア ス ク リ ー ン に、 未来 の 海上都市 の 解説 ・映 像 、気 象 海 象 観測機器 による 測定 データ 、ア ク ア ポ リ ス 前 の海 洋 牧 場 の魚 の動 き. Z u kin, 1991, p.225 -226. 電力 はデ ィ ー ゼ ルに よ る 自 家 発 電を 行 い、 陸か ら の供 給を 受 け な い。 水 の供 給は 、 海水 の淡 水 化に よ って 行わ れ 、1 日 の最 大 収 容 人 員 2400 人に 対応 し て造 水さ れ た 。 汚 水 処 理 も こ の 人員 に 合わ せ て 設 備 が設 け ら れ 、3次 に わ た る処 理を 経 て 、残 っ た窒 素と リ ンを ク ロ レ ラ化 す る こ と で 対応 した 。ク ロ レ ラ は蛋 白 質 と 酸素 を つ く る の で 、海 上 都 市 の栄 養 源 に も な り う る と考 え ら れ た。処 理 済 の水 は ト イ レに 使 わ れ た 。廃 棄 物 の 焼 却 設 備 は 2 段 燃 焼 式を 採用 し 、下 部 燃 焼 室 で焼 却 時 に 発生 した ガ スが 、上 部 燃 焼 室 で燃 焼・ 分 解さ れ、 無 煙・ 無臭 の 無 公 害ガ ス に し て放 出 さ れ た。 ま たア ク ア ポ リ ス のエ ネ ル ギ ー 源 は 、 実際 には 軽 油の み に と ど ま っ た が、 波 力・潮 汐・ 温 度 差 ・太 陽・ 風力 など 、自 然 を活 用し た 様々 な海 洋 エ ネ ル ギ ー の展 示を 行 い、 ク リ ー ン ・エ ネ ル ギ ーの 開発 ・利 用 の啓 蒙を 図 った 。な お、 各 種 防 災 ・非 難 設備 が館 内 の各 所に 設 け ら れ た こ と は 言う ま で も な い 。 7 8. 97.
(7) な ど が表 示 され た。 他 方、 管 理 面 では 、観 客 への 館 内 放 送、 収 容 人 員 数 の管 理 、食 料・ 飲 料水 ・燃 料 等の 在 庫 管 理などに 、 コ ン ピ ュ ー タ ー が活 用 さ れ た。 こ の他 、外 部 ・内 部の 通 信、気象把 握 用 フ ァ ク シ ミ リ 9、館 内 放 送 設 備 、館 内 監 視 用テレビ などの 管理 シ ス テ ムが 中 央制御室 に 集められ 、 集中管理 できる 体制 が つ く ら れ た 。 4 章 5 節 で海 洋 博 会 場 全 体に 関 して 見た 、 <自 然− 人 間− テ ク ノ ロ ジ ー− 空 間− 未来 > の包括的 な 管理 が、 ア ク ア ポ リ ス の中 で は み ご と に集 約 的に 実現 さ れ て い る 。 特に 、館 内 監視 テ レ ビ カ メ ラは 、 観客 の安 全 を図 る た め に設 置さ れ た が 、観 客 自 身 が各 所 で監 視さ れ . .. . る対 象に な って もい た わ け で あ る 。こ の海 上 の人 工 都 市 の空 間の 中 で は ま さ に 、ス ペ ク タ .. .. . .. . クル の な か の監 視 、 観 客の <パ ノ ラ マ 的に 見 る主体化 > と< パ ノ プ テ ィ コ ン 的 に見 ら れ る 客 体 化> が 、同 時 並 行 的に 成立 し て い た。 ア ク ア ポ リ ス は、 安 全 性 と快適性 を 同時 に実 現 す る た め に 、徹底的 な 一 元 的 管 理 運 営 体 制 を と っ た海 上 都 市 だ っ た の で あ る 。 (3)< 海 >を め ぐ る テ ク ノ ロ ジ ーと フ ァ ン タ ジ ーの 節 合. そ れ で は 、パ ノ ラ マ 的な 展 示 空 間の 方は 、 ど の よ う な 構成 に な っ て い た の だ ろ う か。 ア ク ア ポ リ ス では 、「す ば ら し き体 験の 世 界 」を サブ・テーマ と し て 、観客 を海 の 世界 の体 験 へと 誘う こ と を コ ン セ プ ト と し て い た 。陸 の 会場 から 250m もの アクア 大橋 を 渡る こ と に よ っ て、 観 客た ち は さ ら な る非 日 常 性 の世 界 に入 り込 ん でい く。 橋 を渡 りな が ら、 海 洋 牧 場に 目を 奪 わ れ るう ち にア ク ア ポ リ ス に着 く と、 その 海上都 市の 巨 大さ に驚 く 。 ア ク ア ポ リ スで 観客 たちは 、上 の よ う な市 民 手 帳 を も ら っ た 。裏 面に は「 あ な た は今 日 から ア ク ア ポ リ スの 市 民で あ る こ と を 証明 します 」と 書 いてあり 、 証 明 写 真 欄 まである 。 . .. . ま さ に、 体験的 な 擬 似 イベント と し て の海 上 都 市 で あ る 。 その 入口 を 入る と、 エ ス カ レ ー タ ー を 上る 。これを 上 る に つ れて 、深海 に導 かれる 雰囲 気 が演 出さ れ て い る 。「 す ば ら し き 体 験へのお 誘 い」 で あ る 。薄 暗い ブルー の照 明 に加 えて 、 音 響 効 果に よ っ て 観客自身 の 話し 声が 変 わ っ て い く 。深 海で 起 きる 現 象の 再現 = 代理 (re-presentation)的な 演 出である 。 エ ス カ レ ー タ ー を降 りると 、「 マ リ ノ ラ マ 前 室」 に入 る 。「 あ な た は深 海 に迷 い込 みます 」。こ こ を歩 く観 客は 、あ た か も自 ら 魚に な っ て 海底 を さ ま よ う よ う な 感覚 に引 き 込まれる 。 室内 に は深 海 生 物 の映 像や オ ブ ジ ェが 配 置さ れ、 オ ブ ジ ェを 触 って 深 海 生 物の 感 触を 確か め る こ と も で き る 。こ の 暗闇 を歩 き 終わ る 9. こ れ に よ っ て 、 気 象 台か ら の気 象・ 海 象 情 報が 送 ら れ て き た 。た だ し 、 ア ク ア ポ リ ス自 体も 気 象・ 海 象 観 測を 行 う こ と が で き、 風向 ・風 速・ 温度 ・ 湿度 ・風 量・ 日照 ・波 高 ・潮 位・ 流向 ・流 速 な ど を観 測 した 。こ れ ら の デ ー タ はコ ン ピ ュ ー タ ーに フ ァ イ リ ン グ され 、ア ク ア ス ク リ ー ンに も表 示 さ れ た。. 98.
(8) と 、華 や か な 海中 の世 界 、 「マ リ ノ ラ マ 」が広 がる 。 「 あ な た は魚 に な り ま す 」。手塚治虫 プ ロ デ ュ ー ス の こ の空 間 は、 水 深 20〜30m の 海中 を表 現 している 。 四方 の壁 と 天井 は、 美 .. . .. .. . しい カ リ ブ の海 中 写 真 で覆 わ れ て い る 。沖 縄 ではない ! まさ に沖 縄 の青 い海 の 上で の、 写 真の ま な ざ し を 媒介 し た、< 青 い海 >の 代 理= 表象 representation の 体験 で あ る。観客 は ム ー ビ ン グ ベ ル トに 乗 って 、最 新 の音 響・ 照 明の 効果 に も導 かれ 、 海中 の世 界 を魚 に な っ た気 分で 進 んでいく 。 話し か け て き て く れ る 魚の オ ブ ジ ェたちは 、 エ レ ク ト ロ ニ ク スに よ って 目・ 口 ・エ ラ・ ヒ レなどが 動 く よ う に な っ て い る 。. マ リ ノ ラ マ とム ー ビ ン グ ベ ル ト ( 前に い る の は案内役 ・ ア ク ア メ イ ト) マ リ ノ ラ マ から 浅瀬 に 進む と、 ム ー ビ ン グ ベ ル ト は「 海 藻の 森」 を く ぐ り抜 け る。 天井 か ら た く さ ん の 海藻 の オブジェ が たれ 下が っ て い る 「 。 あ な た は海 藻 に な り ま す 」。こ こ で は 、ア ク ア ポ リス で実 際 に行 わ れ て い る 、ク ロ レラ に よ る 汚水処理 を 展示 し、 浄 化された 水 が貝 殻の オ ブ ジ ェか ら 泉に な っ て わ き 出て い た。 ここ から 一 転し て屋 外 に出 ると 、 海上 20mに か か る「 カモメ 橋」から 、眼 下に 広 がる 海の 美 しさ と恐 ろしさ を、体 験 的に 味 わ う こ と が で き た 。「 あ な た は海 鳥に な り ま す 」。 こ こ ま で、 深海 → 浅瀬 →海 上 へと 上が っ て い く、 体験的 なま な ざ し の構 図 で あ る。 他に も、 ア ク ア ポ リ ス の動 き を わ か り や す く 示し たア ク ア ポ リ ス 模 型、 休憩 し な が ら海 洋博会場 や 沖縄 の美 し い海 と島 々 を眺 望で き るアクア 広 場、仮設舞台・ア ク ア ス ク リ ー ン・ 海洋牧場 の パノラマ 展 示などの あ るア ク ア ホ ー ル が あ っ た。 以上 の よ う に、 徹底 し た管 理と ス ペ ク タ ク ル によって 創 り出 さ れ た 海上都市 の 空間 は、 <海 >を め ぐ る テ ク ノ ロ ジ ーと フ ァ ン タ ジ ー を節 合し 、 一 体 化さ せ た世 界で あ る。 科 学 技 術の 実態 そ の も の は 、 一 般 人に は 近寄 り が た い ほ どマ ニ ア ッ クで あ る。 そ こ で 、科 学 技 術 の粋 を集 め た海 上 都 市 を観客誰 も が楽 し め る よ う 、フ ァ ン タ ジ ッ ク な体 験 環 境 と し て演 出 した 空間 が 、ア ク ア ポ リ ス な の で あ っ た。 .. . .. . . .. この 疑似 イ ベ ン ト と し て の 海 上 都 市は 、沖 縄 の本 部 半 島 の海 に、 実 際に 浮か び 上がって . . .. . . いた 。この リ ア リ テ ィ は 、< 海> を め ぐ るイ メ ー ジ と現 実 が、脱-分 化す る よ う な形 で構 成 さ れ て い る。現実 の 沖縄 の海 の 上で、表象 = 代理 representation と し て の< 青 い海 >の 幻 99.
(9) 想 世 界を 、 観客 た ち は 楽し ん で い た。 こ れ に よ っ て、 < 海洋 >の 開 発と レ ク リ ェ ー シ ョ ン の新 しい < 未来 >が 切 り開 かれ 、 沖縄 の自 然 の海 に浸 透 していこ う と し て い た の で あ る 。 つ ま り、 こ う し たイ メ ー ジ の< 海 >の 世界 に よ っ て新 た に作 り変 えられ 、構 築 さ れ よ う と し て い た の は、 現実 の 海の 方だ っ た の で あ る 。 (4)海 洋 牧 場 と海 洋 生 物 園: 海 中 世 界の コ ン ト ロ ー ル とス ペ ク タ ク ル 化 ア ク ア ポ リ スの 展示 ・演 出 とセット に な っ て い た 海洋牧場 は、 アクア 大 橋 周 辺の 海域 を 網で 囲い 込 み、 世界 の 漁業 が直 面 している 「 とる 漁業 」 から 「つ く る漁 業 」「 育て る 漁業 」 への 発想 転 換を 、具 体 的に 可 視 化 し た も の で あ っ た。 こ の ね ら い は 、将 来の 海 洋 牧 場の モ デル を出 展 し、「 広く 日本・世界 の 人々 に そ の 実態 と重 要 性を 知っ て も ら う こ と 」と さ れ た 。 .. すなわち 、「海 ― その 望ま し い未 来漁 業 」である 。 囲い 網の 中 には ブリ 3,000 尾、 ハ マ チ 22,100 尾、 タイ 500 尾、 地元魚 300 尾な ど 数 万 尾を 放 養し た。 給餌船 は自 動 給 餌 機、 集 魚 用 音 響 発 信 器 、餌 料 保 冷 装 置 などを 備え 、 一定時間 に 必 要 量の 餌 を自動的 に 散布 す る こ と が で き た 。魚 の完 全 な生 態 管 理 を行 う と と も に 、そ の 実態 を水 中 カ メ ラで 撮 影し 、ア ク アポリス 内 で展 示し た 。 ここでは 魚 た ち が、 徹底 した コ ン ト ロ ー ル とス ペ ク タ ク ル の ま な ざ し に さ ら さ れ て い る 。 そ し て、 海 洋 牧 場の 「 つ く る漁 業 」や 「育 て る漁 業」 が ス ペ ク タ ク ル化 さ れ る と き 、不 特 定 多 数の 観 客た ち は そ れ を 視 覚 的 ・美 的に 楽 し む こ と を 通し て、 暗 黙の う ち に こ の 漁 業 様 式の 転換 を 受け 入れ 、 承認 し て い る こ とに な る。 ス ペ ク タ ク ル化 の 象 徴 的で 政治的 な効 果 は、 美的 で あ る と同 時 に中立的 ・ 肯 定 的な ま な ざ し を 引 き つ け る こ と に よ っ て 、言 葉に よ る や り と り を介 さ ず し て、 正 当 性 を獲 得す る こ と に あ る 。海 洋 牧 場 は、 海中 の 魚の 生態 に 対し て人 工 的な コ ン ト ロ ー ルを 加 える 行為 を 、同 時に ス ペ ク タ ク ル 化し て人 々 の観 賞の 対 象に す る こ と に よ っ て 、自明性 の も と に正 当 性の 承認 を 受け よ う と す る 試み で あ っ た。 政府出展 のうち 、海 洋 牧 場 が海 域会 場 の魚 類 展 示 で あ る の に 対し て 、「 魚の ク ラ スター 」 の中 核・海 洋 生 物 園 は 、陸 域会 場 の魚 類 展 示 で あ る 。そ のテ ー マは「海 か ら め ん そ ー れー 」 で、「 人と 海の 生 物と の出 会 いの 場」 という コ ン セ プ ト で あ っ た。 海 洋 生 物 園 は、 水 族 館 と「 いるかの 国 」か ら な る。 当 時、 世 界 一 の大水槽 が あ る と さ れ た水族館 は 、パ ン フ レ ッ ト で「 海 をザ ッ ク リ 切り と っ て き た よ う な 迫力 」が あ る と さ れ て いた 。「ここで 泳 ぐ魚 た ち を 見て い る と 、あ た か も 海の 中 に い る よ う な錯 覚を お ぼ え ま す 。」 海中世界 を 切り 取っ て く る こ と と 、人 間が 海 中 世 界に 入 っ て い く こ と が 、互 換 的な 関係 に ある よ う な 形で (脱-分 化 )、 観 客た ちは 魚 の世 界に 吸 い込 ま れ て い く 。 従来 の水 族 館が 、海 と魚 の 体 系 的 知 識 の伝 達を 主 目的 とし てきた のに 対 して 、こ の水 族 館は 、「原体験 」 =生 命ど う し の 共感 として 、魚 と 人と の出 会 いを 演出 し 、「 生 命 環 境と し ての 海」 へ の理 解を 深 め る こ と に 重点 を置 い た と い う 。 つ ま り、 知 識か ら体 験 への 移行 で あ る。 も っ と も 、 そ れ は あ く ま で < 海 と魚 の 世 界 >の 代 理 =再 現 = 表出 re-presentation に す ぎ な い の だ が、 それが 巨 大 水 槽や 諸々 の リ ア ルな 演 出 技 術に よ っ て 、む し ろか え っ て 生命環境 の 「原体験 」 で あ る か の よ う な擬 似 イベント として 、濃 密 なリ ア リ テ ィを 与え ら れ よ う と し て い たの で あ る 。 こうした 「体 験 」の 重視 は、 先 述の ア ク ア ポ リ スに も 共通 して 見 ら れ た特 徴 で あ る。 た だし ア ク ア ポ リ スの 場 合は 、人 工 的な 深 海 生 物たちの 泳 ぐイ メ ー ジ 準 拠 型の マ リ ノラマ 体 100.
(10) 験で あ っ た の に 対し て 、水族館 の 場合 は、 本 物の 魚た ち が泳 ぐ世 界 を間 近に 見 る、 より 現 実準拠型 の 体験 で あ る 。両 者と も に「 体験 」 を重 視す る の は 、観 客 に展 示( = 海の 世界 ) との 密接 な 関わ り合 い を も た せ 、 ス ペ ク タ ク ルの 中に 自 らを 入り 込 ま せ る こ と に よ っ て 、 人間 と海 の 深い 関 係 性 と い う、 海洋博 の基 本 的な コ ン セ プ ト をビ ジ ュ ア ル的 ・ 空 間 的・ 身 体的 に実 現 し よ う と し た わ け で あ る。 ア ク ア ポ リ スが 、 テ ク ノ ロ ジ ーの 媒介 による 人間 と 海と の関 わりを 象 徴 的 ・視覚的 に 具 現 化し た の に 対し て 、水族館 は <魚 >を 媒 介し て、 人 間と 海と の 関わりを 構 築し て い る 。 水 族 館の 観 覧ゾーン で は、「 さんごの 海 」「 黒 潮の 海 」「 深層 の 海」 と い う 3 種類 の水 槽 が見 ら れ た 。 「さ ん ご の 海 」は 、12m×12m×深さ 3m の 大 水 槽に 、様 々な 生き た さ ん ご と 、 120 種 6000 尾もの 熱帯魚 た ち の 世界 を再 現 した 。熱 帯 魚の 鮮や か な色 彩が 、 自 然 光を 取 り入 れた 照 明に 照ら さ れ、 観客 の目 を 奪う 。「 黒 潮の 海」 は、12m×26m×深さ 3.5m の世 界 最 大の 屋 内 水 槽に 、 タイ やマ グ ロを は じ め 、日 本 近 海 を泳 ぐ外 洋 魚 約 120 種 8000 尾が 集め ら れ た 。「 深 層の 海」 に は、 深さ 300m ほどの 深 海 生 物 約 20 種 300 尾が 入っ て い た 。 次第 に深 く な っ て い く 海を 、ゆ ら め く 光や 冷 気に よ っ て 幻 想 的に 演 出し て い た 。ま た、 足 を広 げ る と幅 3m に も 達す るタ カ ア シ ガ ニ は 話題 を博 し た。 各 水 槽 の周 囲に は 、そ れ ぞ れ の環 境に 合 った 光や 色 、音 響の 工 夫が な さ れ 、魚 のイ メ ー ジ 世界 を 体感 で き る よ う に な っ て い た。 10 そ れ ぞ れ の 水槽 が、 日本 と 関わりの 深 い現 実の 海 を再 現= 表 出す る、 ビ ジ ュ ア ル ・メ デ ィア と し て の機 能を 果 た し て い る こ と に注 意 し よ う 。 「 さ ん ご の海 」は沖 縄の < 亜 熱 帯> の 海を 、「黒 潮の 海 」は 日 本 人 になじみ 深 い魚 た ち の 泳ぐ 日 本 近 海を 、「深 層の 海 」は そ れ と 対 照 的に 遠 く離 れた 深 海の 世界 を 、そ れ ぞ れ 水槽 の中 に イメージ として 視 覚 化 し て い る の で あ る。 さ ら に深 層 の海 を抜 けると 、魚の 生 態を 映し 出す 5 台の カ ラ ー ビ デ オの 映 像があり 、そ れ ぞ れ魚 の 「感 覚 生 理 」「 行 動」「 防御 」「捕 食 」「 発生 」 を鮮 明に 映 し出 し て い た。 水槽 で は見 ら れ な い生 態を 、 より 詳し く わ か り や す い解 説つ き で示 し て い た。 水槽 と ビ デ オ映 像 が、それぞれ ビ ジ ュ ア ル・メ デ ィ ア と し て、相 互 補 完 的 な 役割 を果 た し て い た わ け で あ る 。 一 方「 い る か の国 」 は 、「い る か ス タ ジ オ 」「 オ キち ゃ ん 劇場 」「 じ ゅ ご ん プ ー ル 」で 構 成さ れ 、い る か たち と 人間 と のコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を上 演 した 。 11以上 の 海 洋 生 物 園は 、 展 示 物が 生 物で あ っ た た め 、従 業 員たちは 管 理に 相当 に 神経 を使 っ た と い う 。 12 海 洋 牧 場 で は 「つ く る 魚 」「育 て る 魚」 を 、 海 洋 生 物 園 で は「 見 せ る 魚」 を 、 そ れ ぞ れ テー マ化 し て い た わ け で あ る。 そして 、両 者 が共 通し て ビ ジ ュ ア ル 的に 具 現 化 した 世 界 観 とは 、< 魚 >の コ ロ ニ ー化 、海 中 生 態 系の コ ロ ニ ー化 であり 、人 間 のテ ク ノ ロ ジ ー に よ る 海中世界 の コ ン ト ロ ー ルの 増大 で あ っ た 。だ が こ れ らは 、 「 人間 と 海と の深 い 関わ り 」と い うポ ジ テ ィ ブな イ メ ー ジを 付与 さ れ る と と も に、 観客 の 視覚 を魅 了 する ス ペ ク タ ク ルと し. 10. なお 、こ れ ら一 連の 水 槽は 視 覚 効 果と 同時 に 、観 客 の移 動の 流 れを 整理 し 、方向 づ け る役 割 を も も っ て い た。 11 「い る かス タ ジ オ 」で は、音 響 装 置 な ど を 使っ て い る か と の 交信 の実 験 を行 い、水中 シ ョ ー と し て 構 成し た 。「 オキ ち ゃ ん 劇場 」では 、い る か た ち が 2 0 種 類 以 上の 曲芸 を 演じ た( こ れ は 現在 の 海 洋 博 公 園 でも 続い て い る )。「 じ ゅ ご んプ ー ル」に は、会 期 中 にイ ン ド ネ シ ア か ら2 頭の ジ ュ ゴ ンが 送 ら れ て き た が、 3週 間 後に は2 頭 とも 死亡 し て し ま っ た た め 、は く 製化 して 展 示さ れ た 。 12 なお 、水 族 館 に つ い て多 面 的な 考察 を 行っ て い る 書と し て は 、鈴 木、1 9 9 4 や堀、1 9 9 8 な ど が あ る 。. 101.
(11) て演 出さ れ る こ と に よ っ て 、暗 黙 のうちに 正当性 を保 証 さ れ る こ と に な る の で あ っ た。 (5)海 浜 公 園 :造 園 技 術 に よ る <亜熱帯 > イメージ の 演出 政 府 出 展 施 設の 一つ で あ る 海 浜 公 園は 、広 さ約 27 万㎡ にも 及び 、 会場全体 の 4 分の 1 あ ま り も の 面積 を占 め て い た。 これは 日 本 初 の、 世 界 的 規 模 の亜 熱 帯 公 園で あ っ た 。会 場 全体 の雰 囲 気を 特徴 づ け る に あ た っ て 、そ れ が果 た し た 空 間 的・ 視覚的 な役 割 は決定的 な ものであ っ たと 言え よ う。 海浜公園 の 建設 は建 設 省が 担当 し、 日 本 公 園 緑 地 協 会 を基 本 設 計 者と し た。 設計 の基 本 方針 では 、 次の よ う に 言わ れ て い る。 「博覧会 の テ ー マ『 海− そ の望 ま し い 未来 』に ふ さ わ し く 、沖 縄 の海 辺の 美 しく 雄大 な . .. . .. 景観 を生 か し つ つ、 海 との 触れ あ いを 楽し み 、亜 熱 帯 特 有の 植物 を 配し た、 憩い と 交 . . .. .. . .. .. . .. .. .. 歓の た め の 公園 と す る た め 、最 新 の造 園 技 術 、海 岸 技 術 の粋 を集 めた 最 高 水 準を 示 す 設計 に な る も の 」 13 と す る 、と 。ま た、「 大 阪 博の 日 本 庭 園と は 異な り 、沖縄 の気 候 、風土 、また 海 浜の 開 放 性 を生 かした 海 浜 公 園 」 14と す る 、と も 述べ ら れ て い た 。沖 縄 な ら で は の < 亜熱帯 > と< 海 >の イ メ ー ジが 、互 い に調 和し 合 う よ う に し て、 し か も そ れ が大 阪 万 博 の伝 統 的な 日 本 庭 園と 対比 される よ う な 沖縄 の個 性 と し て、 強 調さ れ よ う と し て い た のである 。 ここには 第 2 章で見 た よ う な、 新全総 〜沖 振 計に 明記 された 沖縄 の 「自然的 ・ 地 理 的 諸 条 件」 が、 実 際に <資 源 >として 活 用さ れ、 海洋博 の会 場 空 間 に視 覚 的に 体現 されて いる 。 た だ し、 そこに 演出 された <沖 縄 ら し さ> < 亜 熱 帯ら し さ> は、 あ く ま で造 園 テクノロ ジー の媒 介 によって 、 人 工 的に 構 築さ れ た も のである 。 実際 、植 え ら れ た花 木 は、 必ず し も沖 縄 原 産 にこ だ わ ら ず、 世 界 中 の熱 帯・ 亜 熱 帯 地 域 か ら集 め ら れ て い る。 そ し て そ れ ら のセット が 、< 亜 熱 帯 >と し て の 沖縄 イ メ ー ジの 演 出 装 置として 機 能し て い る の で あ る 。 公 園 内に は ヤシ・ソテツ・ハ イ ビ ス カ ス・ブ ー ゲ ン ビ リ ア・マ リ ー ゴ ー ル ド・サルビア 、 そ し て沖 縄 の県 花デ イ ゴな ど、 < 亜 熱 帯> な ら で は の 植 物が 数多 く 植え ら れ た 。木 々の 緑 をベース に して 、こ れ ら< 南国 > の花 々の 赤 ・白 ・黄 ・ 紫な ど、 鮮 や か な色 彩 が ち り ば め られ 、ま た そ れ が白 い シ ェ ル タ ー (屋 外 休 憩 所) とも セット に な っ て、 沖縄 の <青 い空 、 青い 海> と 見事 に美 し い調 和を 見 せる の で あ る。 観客 た ち は、 こ れ ら のカ ラ フ ル で< 自 然> 豊か な 風景 を、 美 的な 観光 の ま な ざ し ・写 真 の ま な ざ し で客体化 し て と ら え な が ら 、公 園 内を 散策 す る な か で 、 その 風景 に 自ら を一 体 化さ せて い く。公 園 内に は水 の 階段(人 工の 滝 ) ・ 水の プ ロ ム ナ ー ド・ 花 見 坂・ 中 央 階 段・ 花園 ・夕 陽 の広 場な ど の名 所が と と の え ら れ 、散 策す る 人たちに 海 ・花 ・夕 陽 な ど の美 し い風 景を 堪 能さ せ る た め の 、視 覚 的・ 空 間 的 な配 慮が な さ れ て い た 。 ここでも 演 出さ れ て い る の は、 亜熱帯 イメージ の 「体 験」 である 。そ れ に よ っ て 、人 間 と亜熱帯 の 自然 (風 景 )と の深 い 関 係 性と い うコンセ プ トを 、可 視 化し て表 現 して い る わ けである 。 ア ク ア ポ リ スや 水 族 館 が< 海> を メ イ ン・ テーマ に し て い た の に 対 して 、海 浜 公園 は植 物 群に よ っ て <亜熱帯 > をメイン ・ テ ー マに し て い る。 海 浜 公 園は 、 沖縄 の< 亜. 13 14. 電 通 編、1976a、p.119、強 調は 多田 。 日 本 工 業 新 聞 社 編、1973 、p.39 。. 102.
(12) 熱帯 >を 開 発 資 源と し て活 用し て いくこと 、 また 人間 が <亜熱帯 > と身 近で 深 い関 わ り を もつこと 、 そういう 近未来 のイ メ ー ジ を、 先 取りして 会 場 空 間に 体 現し て い る の で あ る 。 そ し てこ れ はま た、 以 後の 沖縄 の 観光 リ ゾ ー ト化 の方 向 性を 、先 取 り的 に予 示 し た も の で もあった 。 実際 この 公 園は 、会 期 後は 亜 熱 帯 性 植 物 公 園 へと 発展 さ せ る こ と が 決ま っ て お り、 会 場 跡 地は 、本 島 北 部 お よ び 沖縄全域 の リゾート 開 発の 拠点 として 位置 づ け ら れ て い た( →7 章 5 節 )。海 浜 公 園 に表 出さ れ た< 亜 熱 帯 >イ メ ー ジ の方 に準 拠 する 形で 、現実 の 沖縄 の観 光 開 発 ・空 間 開 発 が進 め ら れ て い く こ と に な る の で あ る 。 また 、こ の 方 向 性に お い て 海 浜 公 園は 、2 章 3 節で 見 た海 洋 博 関 連 公 共 事 業 における 国 道 58 号線 の植 樹 事 業 と、 連動 し 合っ て い る 。海洋博 を 見に 来る 観 客たちの 多 くは 、那 覇 方面 から 海 洋 博 道 路 ・58 号 線を 通っ て 会場 に到 着 していた 。こ の 58 号 線そ の も の が す で に、 西 海 岸 の絶 景と 道路沿 いに 植 え込 ま れ た 熱帯植物 に よ っ て、 < 海> と< 亜熱帯 >の ロ ー ド パ ー ク と し て演 出 さ れ て お り 、そ の延 長 線 上 に海 洋 博 会 場が あ っ た わ け で あ る 。そ の 意味 では 、58 号線 と 海 洋 博の 海 浜 公 園は つ な が っ て い た。両 者こそが 、沖縄 の <亜熱帯 > イメージ の 大 規 模な デ ィ ス プ レ イ 装置 と な っ て、 以後 の 沖縄 全域 の 空間開発 に モ デ ルを 提 供し て い く の で あ る 。 海洋牧場 と 海 洋 生 物 園 が、 <魚 > のコ ロ ニ ー 化を 視 覚 化 したのに 対 して 、海 浜 公 園 は< 亜 熱 帯 植 物 >の コ ロ ニ ー化 を、 ビ ジ ュ ア ル 的 に具現化 し て い た。 それは 、人 間 のテ ク ノ ロ ジー に よ る 亜 熱 帯 環 境 のコ ン ト ロ ー ル の増 大 と い う世 界 観を 、暗 黙 のうちに 指 し示 し て い る。 だが 、 そ れ も ま た 、人 間に 対 して 視 覚 的 ・体験的 な 快適 さを 提 供す る こ と に お い て 、 正 当 性を 与 え ら れ る の で あ っ た 。 そ し て こ れ は、 亜 熱 帯 リゾート と し て の沖 縄 の観 光 開 発 そのもの を 正 当 化す る ビジョン に も つ な が っ て い くの で あ っ た。 (6)海 洋 文 化 館: 太平洋 オ リ エ ン タ リ ズ ム のなかの < 日本 > 海 洋 文 化 館 は、 「 民族・歴 史の ク ラ ス タ ー 」の中 心 的 存 在となる 政 府 出 展 施 設 であった 。 この 建物 は 会 期 後も 博 物館 と し て 恒 久 化さ れ る こ と に な っ て お り 、 現地 の景 観 との 調和 を 考慮 され て い た 。海 に 面し た側 の壁 には 熱 線 反 射ガ ラ スの ハー フミラー を 採用 し、 冷 房 負 荷を 軽減 さ せ る だ け で な く 、ここに 美し い伊 江 島、 本部 の 海、 沖縄 館、 か り ゆ し広 場の に ぎ わ いな どを 映し 出 すこ と に よ って 、視 覚 効 果と 同 時に 、周 辺 環 境 との 調和 が図 ら れ て い た 。. .. この パ ビ リ オ ン は、 海を 人文. .. .. . . 学的観点 か ら と ら え て テ ー マを 展 開す る こ と を 、基 本 構 想 としてい た 。特に 、 「 日本 に と っ て海 とは 何 か、 日本 に お け る海 洋 文 化 と は ど の よ う な も の か を、 日 本の 海 洋 文 化と 密接 な 関係 に あ る 太平洋圏 と の比 較で 問 い か け る も の」と し て 考え ら れ て い た 。さ ら に、アジア ・ 太 平 洋 地 域 を中 心と し た人 間と 海 との 関わ り 合い を、 文化的 ・歴 史 的 観 点か ら 展示 し、 海 への 夢と 憧 れを 再 認 識 し、 国 際 交 流を 深め る こ と を目 的 と し た。 103.
(13) こ の よ う な パ ー ス ペ ク テ ィ ブは 明 ら か に、 アジ ア・ 太平洋 に開 かれた 海 洋 地 域にある 沖 縄の 特異 な 地 理 的 位 置 に あ っ て こ そ、 出て く るも の で あ っ た 。そ し て こ れ は 、 新 全 総に お いて 、沖 縄 ブロック を 日本 の< 南 >の 玄関 として 、国 際 交 流 に有 利 な位 置に あ る と し た 視 . .. . .. .. . 点と も符 合 する( →2 章 2 節)。復 帰 記 念イ ベ ン ト としての 海洋博 は 、日 本の 中 に あ り な が .. .. ら独 特な 沖 縄の 地 理 的 位 置 を、 さ っ そ く< 資 源> と し て 活用 し よ う と す る の で あ っ た。 だ が、 このよ う に 沖縄 を 活用 す る こ と に よ っ て 、日 本 政 府 は何 を行 お う と し た の だ ろ う か 。 海 洋 文 化 館 は、 ア ジ ア・ 太平洋 との 関係性 を通 し て、 <日本人 > <日 本> の 文 化 的ア イ デ ン テ ィ テ ィの 画定 を 図る も の で あ っ た 。こ の点 で 実は 、70 年 大 阪 万 博 に お け る政 府 出 展 施設 「 日 本 館 」 15と、 ほ ぼ等 価 な機 能 を果 た し てい る 。た だ し、 そ のベ ク ト ルが 正反対 な のである 。 すなわち 、 大阪万博 の 日 本 館が 、 日本 の文 化 史・ 産業 ・ 自然 ・四 季 ・伝 統・ 科 . .. . 学 技 術・ 未 来 構 想な ど を包括的 に 展示 す る こ と に よ っ て 、内 側か ら <日本人 > <日 本> の ア イ デ ン テ ィ フ ィ ケ ー シ ョ ンを 視覚的 に実 現 し た のに 対 して 、海 洋 文 化 館は 、 ア ジ ア・ 太 . .. . 平洋 の海 洋 文 化 と そ の 中で の< 日 本> を展 示 す る こ と に よ っ て、 外 側か ら < 日本人 >< 日 本> のア イ デ ン テ ィ フ ィ ケ ー シ ョ ンを 視 覚 的 に実 現し た の で あ る 。 そ し て こ れ が、 大 阪 万 博に 続く 形 で、 沖縄 で 国際 博 覧 会 を開 催す る こ と の象 徴 的・ 政 治 的 な効 用の ひ と つ で も あ った 。沖 縄は 、日 本 のナ シ ョ ナ ルな ア イ デ ン テ ィ テ ィ の画 定 作 業 に、<南 >の 海 の側 から 、 独特 の形 で 貢献 する 役 割を 与え ら れ て い た の で あ る。 海洋 文 化 館 のテーマ は「 黒 潮に 生き る 」である が、 当 初の 構想 で は よ り明 確 に「 海と 日 本人 」と さ れ て い た 。 「黒 潮 」も 、日本人 と 海の 関 係 性 を 、よ りシ ン ボ リ ッ ク な 形で 表現 し て い る。 そして 、あ く ま で 「海 の な か の日 本 人」 のア イ デ ン テ ィ テ ィを 画定 す る ために 、 沖縄 を国 内 の軸 と し て ア ジ ア・ 太平洋 の空 間 枠 組 みを 設 定し 、南 太 平 洋 の島 じまに ま で ま .. なざしを 向 けていく 。 こ の ま な ざ しこ そ、 ひ と つ の日 本 版オ リ エ ン タ リ ズ ム で あり 、太 平 .. .. . 洋の な か の <他 者> を ま な ざ す こ と を 通し て <自 己> = 日 本 人の 位 置を 画定 し よ う と す る 点で 、太 平 洋オ リ エ ン タ リ ズ ム と 名づ け る こ と が で き よ う。 この 方向性 に対 し て、 人 類 学 的フ ィ ー ル ド ワ ー ク が 動員 さ れ て い く 。 展 示 品の 収 集に は、 人 類 学・ 民 族 学 専 攻 の 大 学 院 生な ど数 十 人が 各地 に 派遣 さ れ た 。そ の結 果 、ポ リ ネ シ アか ら 270 点、太 平 洋 全 般 241 点、メ ラ ネ シ ア 318 点、ミ ク ロ ネ シ ア 220 点、 東南 ア ジ ア 306 点 、 ヨ ー ロ ッ パ 20 点、 日本 120 点、計 1,495 点 もの 漁 具・舟・生 活用 具・装 飾 品・祭具 な どが 集め ら れ た 。 これらを 展 示ホール 内 に陳 列す る 手法 と し て 、① プ ロローグ(「 地球・海 の誕 生 」「 大 航 海 時 代 」「人 種 ・ 言語・生活 の 共 通 性 、相 違 性」)→ ②ポ リ ネ シ ア→ ③ メ ラ ネ シ ア →④ ミ ク ロ ネ シ ア→ ⑤ 東南 ア ジ ア →⑥ 日本 という 順の 6 部 構 成か ら な る ス ト ー リー 展開 を 組み 立て 、 海と 人間 と の関 わり 合 いを 観客 に わ か り や す く示 し た の で あ る。 実はこの 順 番は 、日 本か ら の距 離に し た が っ て 並 べ ら れ、 遠い 海 域か ら近 い 地域 へと 進 ん で く る よ う に な っ て い る 。つ ま り、 海 洋 文 化 館 の抽 象 的な 展 示 空 間の 中で 、 太 平 洋 各 地. 15. 大 阪 万 博 の日 本 館に つ い て の詳 細は 、 通 商 産 業 省 、1971 な ど を参 照。. 104.
(14) の空 間 的 配 置が 時 間 化 され 、物 語 の系 列へ と 変換 され て 、日 本と い う現 在= 中 心へ と至 る よ う に構 成 さ れ て い る こ と が明 ら か で あ る 。 も ち ろ ん こ れ は 、観 客 に わ か り や す く す る 便 宜を 図る た め の ス ト ー リ ー 構成 で は あ っ た 。 が、 逆に そ の こ と が 、 すなわち 、 博 覧 会に お ける ス ペ ク タ ク ル化 という 事態 が 、こ う し た 太 平 洋オ リ エ ン タ リ ズ ムの 視点 を 正 当 化す る こ と に も な る。 空 間 的 差 異 を時 間 的 差 異へ と 変換 する こ と に よ っ て 、そこで 登 場す るポ リ ネ シ ア・ メ ラ ネ シ ア ・ ミ ク ロ ネ シ ア・ 東南 アジア の海 洋 文 化 は、 < 日本 人> が <海 >と の 間に も っ て き た 関わ り の歴 史 的 厚 みを 想起 さ せ、 過去 へ と さ か の ぼ ら せ る よ う な、 一種 の ノ ス タ ル ジ アの 装置 として 機能 し て い るの で あ る 。 もっとも 、こ れ ら太 平 洋 諸 国の 展 示 品 が醸 し出 す 海洋文化 の 世界 は、 直 接 的 には <日 本 .. . 的なもの > を指 し示 し て い る わ け で は な い 。 し か し そ れ ら は <日 本 人> に と っ て、 同じ 太 .. .. . . . 平洋 の な か に 生 きる < 他者 >と し て立 ち現 れ て い る。し か も こ の 他者 は、< 日 本 人> の「 鏡 .. .. . . に映 った 自 己 」 で も あ る。 広大 な 太 平 洋に お い て 、「航 海 」「 冒険 」 を し な が ら 、生 き生 き と た く ま し く海 の生 活 を営 ん で き た諸民族 を ビ ジ ュ ア ル 化す る。 そ れを 通し て 、同 じ太 平 洋の なか の 一存 在で あ る< 日本 人 >も 間 接 的 に指 し示 さ れ、 そ し て 最後 のコ ー ナ ー では 直 接的 に定 位 され る の で あ る 。こ こ で の <日 本 人> のア イ デ ン テ ィ テ ィは 、大 阪 万 博 の「 日 本館 」と は 対 照 的に 、 太 平 洋の な か の <他 者 >たちを 経 由し て、 外 側か ら ゆ る や か に画 定 さ れ て く る 。そ し て そ の際 に民 族 学が 、科 学 的な 正 統 性 を与 える 役 割を 果た す の で ある 。 なお 海 洋 文 化 館 でも 、様 々 な映 像・ 音 響 装 置が 駆 使さ れ て い た。 広大 な太 平 洋の 諸 文 化 の過 去・ 現 在を 、実 物 と映 像に よ っ て 把握 で き る よ う な 総 合 的な 展 示の 工夫 が な さ れ、 新 しい 博 物 館 のモデル として 計画 された 。特 に 映像 ホ ー ル は、 プ ラ ネ タ リ ウ ム ・ 映 写 機・ ス ラ イ ド・ 音 響・ 照明 を 複合 させ 、 広大 な海 の 世界 をス ペ ク タ ク ル 的 に再 現・ 表 出し た。 そ こ で は、 平 家 物 語と 世阿弥 の謡 曲 にヒント を 得た 「海 の 道」 や 、「 日本 の 海」「 世界 の海 」、 浦島物語 を 基調 に し た 民話 のア ニ メ「 水の 種 」が 上映 された 。展 示 ホ ー ルと 映 像ホール は 相互 に補 完 し合 い な が ら一 体と な っ て 、「日本人 と 海」の深 い 関係 を映 し 出す ビ ジ ュアル ・ メディア として 、機 能 し て い た の で あ る。 (7)< 文 化> の政 治 的 効 用 政 府 出 展 施 設に お い て、 ア ク ア ポ リ ス ・海 洋 牧 場・ 海 洋 生 物 園 は <海 >の イ メ ー ジを 表 出し 、海 浜 公 園 は< 亜熱帯 >の イ メ ー ジを 表 出し た。 これに 対し て 海 洋 文 化 館 は、 太 平 洋 の海 に関 し て< 文化 > のイ メ ー ジ を表 出し た と言 う こ と が で き る 。 だが 、な ぜ 政府 は、 太 平洋 に対 し て< 文化 > の ま な ざ し を向 け、 表 出す る必 要 が あ った の だ ろ う か 。 また 、沖 縄 において 太平洋 の< 文 化> を表 出 す る こ と に は、 ど の よ うな 意味 が あ っ た の だ ろ う か。 日本 と太 平 洋、 そ し て沖 縄 の関 係を 問 う と き、 決定的 に重 大 な歴 史、 し か も そ れ で い て 海 洋 文 化 館 では 一 切 言 及さ れ な か っ た 最大 の 歴 史 的 事 件 が あ る。 それは 言う ま で も な く 、 太 平 洋 戦 争 で あ る。 ま たアジア ・ 太 平 洋に 関 して 、植 民 地 支 配や 軍 事 基 地の 問 題も 、今 日 まで 依 然 解 決さ れ ず に 残っ て い る 。だ が、 海 洋 文 化 館 は 、アジア ・ 太 平 洋を ま な ざ す際 に <文 化> と いう テ ー マ に特 化す る こ と に よ っ て、 こ れ ら 戦争 ・植 民 地・ 基地 と い っ た政 治 性の 強い 問 題を 、対 象 外・ 領 域 外 の も の と し て切 り離 す こ と を実 現 していた の で あ る。 も っ とも 、昨 今 のカ ル チ ュ ラ ル・ス タ デ ィ ー ズ の 諸 潮 流に 見 ら れ る問 題 意 識 か ら すれば 、 文化 は ま さ に こ う し た 問 題 圏と も 密接 に関 わ り合 っ て い ると 言え る の だ が、 海 洋 文化館 に 105.
(15) お け る< 文 化> は、 こ れ ら の生 々 しく 暴 力 的 な問題圏 の 切り 離し に 成功 し て い る。 . .. . そ し て実 は、 こ の切 り離 し 自体 が、 < 文化 >の 政 治 的 効 用 な の で あ る 。日 本 が沖 縄を 通 .. して ア ジ ア・太 平 洋の 広 大な <海 > に向 かい 合 う と き 、 (沖縄戦 を 含む )太 平 洋 戦 争 の歴 史 をいかに 読 み か え、 新 たに ク リ ー ンな イ メ ー ジを い か に 構築 し て い く か 、と い う課 題が あ . .. . .. .. った (→ 本 章 6 節)。 海 洋 文 化 館 は、 <海 > を人 文 学 的 観 点 から と ら え る と い うコ ン セ プ トの も と に 、各 海 域の 伝 統 的 な生 活 文 化 に焦 点を シフト す る こ と に よ っ て 、「 青少年 に海 へ ... の夢 と憧 れ を抱 かせ 」、国 際 交 流 を促 進 す る と い う 、健 全 な 方 向づ け を行 お う と し た の で あ る。 す な わ ち、 こ う し た海 洋 文 化 のス ペ ク タ ク ル は、 アジア ・太 平 洋を め ぐ る 、新 たな 世 界観 の構 築 ・呈 示で も あ っ た。 そ れ に よ っ て 、こ の広 大 な海 域の 歴 史を 読み か え る と と も に、 未来 の 現実 に対 しても 、< 文 化> と い う 一定 の方 向 づ け を与 え て軍 事・ 政 治と は別 次 元の 現 実を 構 築 する という 、 それ 自 体 政 治 的 で象 徴 的な 機 能を 担 っ て い た の で あ る。 16も ち ろ ん そ う し た 後も 、 軍事 ・政 治 の領 域は 依然残 り続 け る。 し か し だ か ら こ そ 、< 文化 > の領 域を 確 立す る こ と に よ っ て 、 軍事 ・政 治 とは 別の 次 元として < 文化 >の パ ラ レ ル ワ ー ルド を構 築 する 、リ ア リ テ ィの 二重性 の効 果 が重 要と な る の で あ っ た。 そ し て こ う し た 効果 は、 海 洋 文 化 館 だ け に は限 ら れ な い。 実 は海洋博 そ の も のが 、こ れ と同 様の 機 能を 果た し て い た。 海洋博 は全 体 と し て、 戦 争・ 植 民 地 ・基 地と い っ た 問 題 圏 を、 ほ と ん ど除 外す る 傾向 に あ っ た。 だが 、 海洋 こ そ が 長い 歴史 の 中で 、戦 争 や植 民 地 支 配の 経路 であり 続け て き た 側面 も 、否定 しえ な い 。しかし 、(先 進 国が 主 導 権 を握 る )海 洋 博は 、決 し て こ う し た 側面 には ス ポ ッ トを 当 て な い。 ま し て や、 会場地 の沖 縄 における 過 去の 地 上 戦 や広 大な 米 軍 基 地の 存 在に つ い て も、 一 切 言 及しない 。 む し ろ そ う い う 陰の 側 面が あ れ ば こ そ 、そ れ と は 別の 次 元に 、< 海 >に 関連 し て「 開発 」「環 境 保 全 」「観 光・ レ クリェーション 」 「国 際 交 流 」と い っ た 、よ り クリーン な 新し いイ メ ー ジ を打 ち 立て 、パ ラ レ ル ワ ー ル ドを 構築 し て い くこ と が重 要と な るの で あ っ た( 第 3 章を 参 照)。 だ が 、「 開 発 」「 環 境 保 全 」「観 光 ・ レ ク リ ェ ー シ ョ ン 」 は それ 自 体 、 先 進 国 を 中 心に 、 新た な形 で <海 >を コ ロ ニ ー化 し て い こ う と す る 方 向 性 で も あ っ た 。国 際イ ベ ン ト ・海 洋 博という 非 日 常 的な 祝 祭は 、巨大 で美 的 な< 海> の ス ペ ク タ ク ルを 演出 す る こ と を 通 して 、 こうした 新 たな <海 > のコ ロ ニ ー 化に 対し て 、強 力な 正統性 を付 与 する 政 治 的 側 面 を持 ち 合わ せて い た の で あ る 。 さて 、以 上の 政 府 出 展 施 設 において は、 < 海> <亜 熱 帯> <文 化 >と い っ た テ ー マが 表 出された 。 実は 、こ れ ら の テ ー マ は、 以後 の 沖縄 の観 光 開 発 に お い て も 、空 間 のテーマ 化 を進 める 際 の主 要な フ ァ ク タ ー となり 、沖 縄 イメージ そ の も の の 形 成に お い て も、 重要 な テ ー マと な っ て い く の で あ る( →2 章・ 7 章)。も っ と も 政 府 出 展 施 設で は、沖 縄に つ い て の直接的・明 示 的 な言 及は ほ と ん どな い のだ が 、こ の点 に つ い て は 後 述す る こ と にしよう 。 海 洋 博に お け る <沖 縄 >そ の も の の表 出・ 上 演に つ い て 見る 前に 、 外国出展 と 民間出展 に つ い て、 検 討を 加え て お く こ と に し よ う。. こ れ と同 様の 読 み か え は 、海 洋 博 後 の 沖縄 キ ャ ン ペ ー ンに お い て も行 わ れ た 。7 章 6 節「 ポ ス ト 海 洋 博か ら沖 縄 キ ャ ン ペ ー ンへ 」を 参 照。 16. 106.
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