1 . は じ め に
鉄筋の定着はフックが原則として使われてきた。鉄筋 が交差する箇所や,狭あい箇所での配筋作業において フックが施工しにくいという問題があり,それに代わる 方法として,機械式定着具や機械式定着鉄筋が開発され てきた。ここでは,工場にてあらかじめ定着具を鉄筋と 一体として製造した機械式定着鉄筋について紹介する。
鉄筋の定着のための定着具を用いるという考えは古くか らあったが,コスト的に成り立つものがなかなか開発で きなかった。近年,機械式定着鉄筋が多く使われるよう になったのは,製造方法の進歩により,製造コストの低 減と,現場施工の容易さの二つの面からメリットが出る ようになったからと思われる。本稿では,主な機械式定 着鉄筋である,プレート定着型せん断補強鉄筋工法(以 降,Head
-
bar と呼ぶ)と,拡径部による機械式定着鉄 筋工法(以降,T ヘッド工法と呼ぶ)について紹介する。2 . 製 造 技 術 2 . 1 Head-bar
Head
-
bar は,せん断補強鉄筋の端部にプレートを摩擦 圧接工法により接合して定着体としたものである。図-1 に示したように,高速回転させた定着プレートに異形鉄 筋を押し付け,摩擦熱により鉄筋とプレートを完全に一 体化する1)。摩擦圧接工法は JIS Z 3607 に規定され,自 動車産業等機械工業分野で広く利用される確立された技 術である。この工法によるせん断補強鉄筋と定着プレー トの接合部の強度は,鉄筋母材の強度以上となる。また,図
-1
に合わせて示したように,せん断補強鉄 筋としての基本形には,片端プレート付きと両端プレー ト付きの 2 種類があり,プレートとしては矩形と円形が 使用できる1)。2 . 2 T ヘッド工法鉄筋
T ヘッド工法鉄筋は高周波誘導加熱により端部に拡径 部を形成する。異種材料の接合がなく,信頼性が高い工 法である。製造過程は以下の通りである。図
-2
に製造過 程と鉄筋形状を示す。①鉄筋端部に誘導加熱用コイルをセット
②高周波誘導加熱によって,鉄筋端部を加熱
③成形型を加熱した鉄筋端部に押し当てる
④一体成形加工が完了
3 . 機械式定着鉄筋の形状寸法 3 . 1 Head-bar の形状寸法
図
-3
および図-4
に示したように,定着プレートの寸法 は,せん断補強鉄筋の定着機能の他に主鉄筋の座屈抑止 や帯鉄筋を拘束する機能が確保できるように,せん断補 強鉄筋の径と掛けられる鉄筋の径に応じて,十分な掛り 長が得られる大きさ以上に設定する1),2)。プレート厚さは せん断補強鉄筋の径より小さいため,半円形フックと比 較してかぶりの確保に有利となる。表
-1
にせん断補強鉄筋とプレートの径と材質の組合せ,表-2
に軸方向鉄筋とプレートの径と材質の組合せ,お よび表-3
に異形鉄筋の種類が SD 345,定着プレートの 材質が SM 490,コンクリートの強度が 21~30 N/mm2の 場合のプレートの寸法の一覧を示す。3 . 2 T ヘッド工法鉄筋の形状(図-5) ,寸法
T ヘッド工法鉄筋の各鉄筋呼び名に対する寸法規格を 特集/平成のコンクリート技術開発/1.構造・工法分野における技術開発/1
. 1 土木の事例
機械式定着鉄筋
石 橋 忠 良
** いしばし・ただよし/ジェイアール東日本コンサルタンツ㈱ 取締 役会長,技術本部本部長(正会員)
定着プレート 高速 回転
押し つける
完全に一体化
片端プレート+
他端半円形フック 両端プレート
図-1 Head-bar
T ヘッド 工法鉄筋
半円形フック
② ③ ④
①
図-2 T ヘッド工法鉄筋の製造過程
プレート長辺長
a:( 掛けられる鉄筋の径+両節高さ)×3/4+バリ量 10 mm b:(鉄筋径+節高さ)/2
c:プレート短辺長/2 せん断補強鉄筋
c
プレート短辺長
a バリ量
b
32 t×120×140
D 25
96 200
9 t×40×70
せん断筋D 16
D 32
128 357
16 t×60×90
f'ck<30 N/mm2未満の場合
主筋D 22 D 51
D 51
150
408
図-3 プレート最小寸法2) 図-4 プレートの掛り状態の例2)
表-1 せん断補強鉄筋または中間帯鉄筋の種類とプレート材料の組合せ2)
呼び名 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51 プレート材質 鉄筋の種類
SD 295 - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 35 C,S 45 C SD 345 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 35 C,S 45 C
SD 390 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 45 C
SD 490 - - - - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 45 C
○:適用可,-:適用不可,疲労部材への適用は SD 345 の D 13~D 19 に限る
表-2 軸方向鉄筋の種類とプレート材料の組合せ2)
呼び名 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51 プレート材質
鉄筋の 種類
SD 295 - ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - S 35 C
SD 345 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - S 35 C
SD 390 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - S 45 C
SD 490 - - - - ○ ○ ○ - - - - S 45 C
○:適用可,-:適用不可
表-3 定着プレートの寸法
せん断補強鉄筋呼び径 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51
掛けられる鉄筋の呼び径
(標準プレート 適用範囲) D 13~
D 38 D 13~
D 35 D 13~
D 41 D 13~
D 38 D 13~
D 41 D 13~
D 38 D 13~
D 32 - - - -
標準 プレート寸法
長さ 9 9 12 16 16 19 19 22 25 25 32
長辺 70 70 80 80 90 90 90 - - - -
短辺 40 40 45 50 60 65 70 80 85 95 120
︵太径鉄筋の使用時︶*
1
D 13 長辺 80 90 95 110
D 16 長辺 85 90 95 115
D 19 長辺 85 90 100 115
D 22 長辺 90 95 100 120
D 25 長辺 95 95 105 120
D 29 長辺 95 100 105 125
D 32 長辺 100 100 110 125
D 35 長辺 95 100 105 110 130
D 38 長辺 75 95 105 105 115 130
D 41 長辺 75 75 85 95 100 105 110 115 135
D 51 長辺 80 85 85 90 100 105 105 115 120 125 140
*1 プレート長辺長をせん断補強鉄筋と掛けられる鉄筋の呼び径から決定。(図-3)
* 鉄筋種類が SD 345,プレート材質が SM 490 以外,コンクリート強度が 30 N/mm2以上の場合は審査証明の詳細に従う。
拡径部径0 1.2 ※
拡径部厚さ
※
※ は公称直径
図-5 T ヘッド工法鉄筋の形状
表-4
に示す。鉄筋呼び名 D 10 からD 51までを対象とする。拡径部直径 D0:2
.
5 d≦D0≦2.
8 d (d:公称直径)拡径部厚さ t:0
.
8 d≦t≦1.
2 d (d:公称直径)4 . 適 用 方 法
この 2 工法とも,せん断補強筋の半円形フックに変え て使うことができることが各種の実験により確かめられ ている。以下にそれぞれの使用方法について紹介する。
4 . 1 Head-bar
図
-6
,図-7
に示すように,Head-
bar は,従来配筋で 両側半円形フックあるいは,両側半円形フックのラップ 配置となるせん断補強鉄筋の片側の定着体に適用する。定着プレートは,コンクリート表面に最も近い鉄筋に掛 け,せん断補強鉄筋が掛ける鉄筋と接触するまで近づけ て配置することを原則とする2)。
「建設技術審査証明(土木系材料・製品・技術)2015.
11」では,Head
-
bar をせん断補強鉄筋または中間帯鉄筋半円形フック 定着体:
Head-bar
正側 負側
−1 000
−800
−600
−400
−200 0 200 400 600 800 1 000
−150 −120 −90 −60 −30 0 30 60 90 120 150
水平力(kN)
水平変位(mm)
半円形フック 定着体
かぶりコンクリートの剥落 内部コンリートの 破壊(図-10の状態)
正側
負側
δ δ
図-8 柱部材の正負交番繰返し試験水平力−水平変位の 包絡線の比較3)
表-4 拡径部直径,拡径部厚さおよび偏心量(単位:mm)
項 目 呼び名
D 10 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51
D0 最大 27 36 45 53 62 71 80 89 98 107 116 142
t
最小 24 32 40 48 56 64 72 80 87 95 103 127
最大 12 15 19 23 27 30 34 38 42 46 50 61
最小 8 10 13 15 18 20 23 25 28 30 33 41
偏心量 最大 1.9 2.6 3.2 3.8 4.4 5.1 5.7 6.4 7.0 7.6 8.3 10.2 公称直径 9.53 12.7 15.9 19.1 22.2 25.4 28.6 31.8 34.9 38.1 41.3 50.8
0 20 40 60 80 100 120 140
履歴吸収エネルギー(kJ)
靭性率 定着体 半円形フック 1 サイクル目
耐力損失過程
0 20 40 60 80 100 120 140
履歴吸収エネルギー(kJ)
靭性率 定着体 半円形フック 2 サイクル目
耐力損失過程
0 20 40 60 80 100 120 140
履歴吸収エネルギー(kJ)
靭性率 定着体 半円形フック 3 サイクル目
耐力損失過程
1 δ 2 δ 3 δ 4 δ 5 δ 6 δ 7 δ 8 δ 1 δ 2 δ 3 δ 4 δ 5 δ 6 δ 7 δ 8 δ
1 δ 2 δ 3 δ 4 δ 5 δ 6 δ 7 δ 8 δ
図-9 各繰返しサイクルにおける履歴吸収エネルギーの比較
この部位に適用する
鉄筋の
交称径以下 鉄筋がせん断 補強鉄筋また はバリと接触 するまで,奥 に差し込むこ とを原則
外側の鉄筋
図-6 Head-bar の適用事例と配置方法
図-7 定着体と端部の構成
に使用した場合について,以下のように証明されている2)。
・定着部の引抜耐力および抜出し量(剛性)は半円形フッ クと同等かそれ以上。
・Head
-
bar を用いた部材のせん断補強性能は半円形フッ クと同等。・Head
-
bar をせん断補強鉄筋または中間帯鉄筋に用い た場合の軸方向鉄筋の座屈を抑止する効果および部材 の靭性が,半円形フックと比較して,破壊までの挙動 を含めて同等。・高応力繰返し荷重に対する定着性能は半円形フックと 同等かそれ以上。
Head
-
bar を中間帯鉄筋に用いた柱部材の正負交番繰 返し試験結果の概要を図-8
,図-9
に示す3)。Head-
bar を 使用した試験体は,水平力-水平変位関係の比較におい て,水平力損失過程で保持される水平力が破壊まで半円 形フックと同等であること,破壊に至る過程でのエネル ギー吸収性能が半円形フックと同等であることがわかる。加えて,図-10に示したように,水平方向の復元力 が失われるまで定着体が帯鉄筋を拘束していることが確 認できる。
このことから,Head
-
bar を使用する場合においても,構造物の破壊までの挙動において軸方向鉄筋の座屈を抑 止する効果および部材の靭性が保持できる。
4 . 2 T ヘッド工法鉄筋(図 -11
,図-12
)タンクの底版と側壁,立坑の側壁,アーチリブ,トン ネル二次覆工,ボックスカルバート,橋脚,フーチング,
鉄道高架橋などのせん断補強鉄筋または中間帯鉄筋等
(ただし,棒部材の外周鉄筋には用いない)に使用する ことができる。また,高サイクル疲労の影響を受ける部 材にも用いることができる。
杭・柱および橋脚等の軸方向鉄筋のフーチング等のよ うにマッシブなコンクリートへの定着に用いる。
T ヘッド工法鉄筋をせん断補強鉄筋として用いた梁の 曲げせん断試験体での正負繰返し載荷の実験や,脚柱供 試体での中間帯鉄筋に T ヘッド工法鉄筋を用いた交番載 荷実験の結果が,通常のフックを使用した場合と比較し て報告されている4)。いずれも,半円形フックを用いた 場合と同様の結果が得られていると報告されている。
5 . 施 工 事 例
実際の現場での,配筋のフックから機械式定着鉄筋へ の変更事例を図
-13
に示す。この例で示したように,機械式定着鉄筋は,ボックス カルバートでの使用実績が多い。多く使用されるのは,
隅角部等の過密部でなく,上下床版および側壁のせん断 補強鉄筋である。特にせん断補強鉄筋のピッチが細かく,
施工数量が非常に多い場合や,両フックで施工するのに 非常に手間がかかる場合あるいはできない場合に使用さ れる事例が多い。
7
2 回目 δ
定着体の掛りが確認できる
図-10 水平力低下時の状態3)
壁状構造物 梁状構造物 柱状構造物
せん断補強鉄筋 中間帯鉄筋
※
※外周鉄筋は適用外 拡径部をかぶりコンクリート内に配置
拡径部をコアコンクリート内で重ね継手
※
※
図-11 「T ヘッド工法鉄筋」の適用例(横方向鉄筋)
杭 柱・橋脚
図-12 「T ヘッド工法鉄筋」の適用例(軸方向鉄筋)
設計 上床版 変更
設計 側壁 変更
設計 下床版 変更
図-13 ボックスカルバートの配筋変更の例
6 . 終 わ り に
兵庫県南部地震以後,耐震設計規定の厳格化に伴い,
橋梁やカルバートなどの土木構造物ではせん断補強鉄筋 および中間帯鉄筋量が増加している。鉄筋が高密度化す ることにより,せん断補強鉄筋の標準フックなど,曲げ 加工部分を有する鉄筋の組立が非常に難しくなっており,
配筋作業の施工性の低下を招いている。また,標準フッ ク部などの曲げ加工部分がコンクリート打込み面に多く 存在することとなり,ホースなどの吐出口や締固め用の 棒形振動機の配筋内部への挿入が困難となることもある
(写真
-1
)。このように,鉄筋の高密度化は配筋作業の施 工性低下,コンクリートの充填性の低下の要因となり,土木構造物の生産性および品質の向上が大きな課題と なっている。また,加工においても鉄筋の高強度化や太 径化により曲げ加工がしにくくなっている。このような 背景から様々な機械式定着工法が開発され,普及をして きた。
施工性の向上については,T ヘッド工法に関するボック スカルバート型ケーソンの鉄筋工に関する歩掛かり調査に よると,段取り筋や重ね継手部の省略などから労務量は 25%程度削減できることが報告されている4)。また LNG 地上タンク定番のせん断補強鉄筋に採用した例では,従 来のフックでのせん断補強鉄筋に比べてせん断補強鉄筋 の組立て工期が半減できた例も報告されている4)。 また,コンクリート打込み面の半円形フックや重ね継 手部などがなくなることにより,ホースなどの吐出口や 締固め用の棒形振動機の配筋内部への挿入が容易にな り,コンクリートの充填性の向上にも寄与している。
建設業界は,作業員不足の状況が続いている。そのよ うな状況で,施工の効率化は重要なテーマである。技術 的に問題なくかつコスト面での優位性のある工法が多く 開発されることが望まれており,この定着鉄筋はその期 待に応えた開発と言えるだろう。
本文をまとめるに当たり,大成建設 武田 均様,清 水建設 吉武謙二様に,資料や助言をいただきましたこ と,誌面を借りてお礼申し上げます。
参考資料
1) VSL ジャパン技術資料「プレート定着型せん断補強鉄筋 Head- bar」カタログ
2) 土木研究センター:建設技術審査(土木系材料・製品・技術)
「Head-bar」,2015. 11
3) 府川 徹・福浦尚之:中間帯鉄筋にヘッドバーを用いた単柱試験 体の正負交番繰返し載荷試験,コンクリート工学年次論文集,
Vol.35,No.2,pp.529~534,2013
4) 木村克彦ほか:T ヘッド鉄筋工法の開発とその施工例,コンクリー ト工学,Vol.42,No.3,2004. 3
写真-1 フックの多い配筋