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機械式定着鉄筋

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Academic year: 2022

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(1)

1 .  は じ め に

 鉄筋の定着はフックが原則として使われてきた。鉄筋 が交差する箇所や,狭あい箇所での配筋作業において フックが施工しにくいという問題があり,それに代わる 方法として,機械式定着具や機械式定着鉄筋が開発され てきた。ここでは,工場にてあらかじめ定着具を鉄筋と 一体として製造した機械式定着鉄筋について紹介する。

鉄筋の定着のための定着具を用いるという考えは古くか らあったが,コスト的に成り立つものがなかなか開発で きなかった。近年,機械式定着鉄筋が多く使われるよう になったのは,製造方法の進歩により,製造コストの低 減と,現場施工の容易さの二つの面からメリットが出る ようになったからと思われる。本稿では,主な機械式定 着鉄筋である,プレート定着型せん断補強鉄筋工法(以 降,Head

-

bar と呼ぶ)と,拡径部による機械式定着鉄 筋工法(以降,T ヘッド工法と呼ぶ)について紹介する。

2 .  製 造 技 術 2 . 1  Head-bar

 Head

-

bar は,せん断補強鉄筋の端部にプレートを摩擦 圧接工法により接合して定着体としたものである。図-1 に示したように,高速回転させた定着プレートに異形鉄 筋を押し付け,摩擦熱により鉄筋とプレートを完全に一 体化する1)。摩擦圧接工法は JIS Z 3607 に規定され,自 動車産業等機械工業分野で広く利用される確立された技 術である。この工法によるせん断補強鉄筋と定着プレー トの接合部の強度は,鉄筋母材の強度以上となる。

 また,図

-1

に合わせて示したように,せん断補強鉄 筋としての基本形には,片端プレート付きと両端プレー ト付きの 2 種類があり,プレートとしては矩形と円形が 使用できる1)

2 . 2  T ヘッド工法鉄筋

 T ヘッド工法鉄筋は高周波誘導加熱により端部に拡径 部を形成する。異種材料の接合がなく,信頼性が高い工 法である。製造過程は以下の通りである。図

-2

に製造過 程と鉄筋形状を示す。

①鉄筋端部に誘導加熱用コイルをセット

②高周波誘導加熱によって,鉄筋端部を加熱

③成形型を加熱した鉄筋端部に押し当てる

④一体成形加工が完了

3 .  機械式定着鉄筋の形状寸法 3 . 1  Head-bar の形状寸法

 図

-3

および図

-4

に示したように,定着プレートの寸法 は,せん断補強鉄筋の定着機能の他に主鉄筋の座屈抑止 や帯鉄筋を拘束する機能が確保できるように,せん断補 強鉄筋の径と掛けられる鉄筋の径に応じて,十分な掛り 長が得られる大きさ以上に設定する1),2)。プレート厚さは せん断補強鉄筋の径より小さいため,半円形フックと比 較してかぶりの確保に有利となる。

 表

-1

にせん断補強鉄筋とプレートの径と材質の組合せ,

表-2

に軸方向鉄筋とプレートの径と材質の組合せ,お よび表

-3

に異形鉄筋の種類が SD 345,定着プレートの 材質が SM 490,コンクリートの強度が 21~30 N/mm2の 場合のプレートの寸法の一覧を示す。

3 . 2  T ヘッド工法鉄筋の形状(図-5) ,寸法

 T ヘッド工法鉄筋の各鉄筋呼び名に対する寸法規格を 特集/平成のコンクリート技術開発/1.構造・工法分野における技術開発/1

. 1 土木の事例

機械式定着鉄筋

石 橋 忠 良

*  いしばし・ただよし/ジェイアール東日本コンサルタンツ㈱ 取締 役会長,技術本部本部長(正会員)

定着プレート  高速 回転  

押し つける  

完全に一体化  

片端プレート+

他端半円形フック 両端プレート

-1 Head-bar

T ヘッド 工法鉄筋

半円形フック

-2 T ヘッド工法鉄筋の製造過程

(2)

プレート長辺長

a:( 掛けられる鉄筋の径+両節高さ)×3/4+バリ量 10 mm b:(鉄筋径+節高さ)/2

c:プレート短辺長/2 せん断補強鉄筋

c

プレート短辺長

a バリ量

b

32 t×120×140

D 25

96 200

9 t×40×70

せん断筋D 16

D 32

128 357

16 t×60×90

f'ck<30 N/mm2未満の場合

主筋D 22 D 51

D 51

150

408

-3 プレート最小寸法2) -4 プレートの掛り状態の例2)

-1 せん断補強鉄筋または中間帯鉄筋の種類とプレート材料の組合せ2)

呼び名 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51 プレート材質 鉄筋の種類

SD 295 - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 35 C,S 45 C SD 345 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 35 C,S 45 C

SD 390 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 45 C

SD 490 - - - - ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ SM 490,S 45 C

○:適用可,-:適用不可,疲労部材への適用は SD 345 の D 13~D 19 に限る

-2 軸方向鉄筋の種類とプレート材料の組合せ2)

呼び名 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51 プレート材質

鉄筋の 種類

SD 295 - ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - S 35 C

SD 345 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - S 35 C

SD 390 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - - - - S 45 C

SD 490 - - - - ○ ○ ○ - - - - S 45 C

○:適用可,-:適用不可

-3 定着プレートの寸法

せん断補強鉄筋呼び径 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51

掛けられる鉄筋の呼び径

(標準プレート    適用範囲) D 13~

D 38 D 13~

D 35 D 13~

D 41 D 13~

D 38 D 13~

D 41 D 13~

D 38 D 13~

D 32 - - - -

標準 プレート寸法

長さ 9 9 12 16 16 19 19 22 25 25 32

長辺 70 70 80 80 90 90 90 - - - -

短辺 40 40 45 50 60 65 70 80 85 95 120

︵太径鉄筋の使用時︶

1

D 13 長辺 80 90 95 110

D 16 長辺 85 90 95 115

D 19 長辺 85 90 100 115

D 22 長辺 90 95 100 120

D 25 長辺 95 95 105 120

D 29 長辺 95 100 105 125

D 32 長辺 100 100 110 125

D 35 長辺 95 100 105 110 130

D 38 長辺 75 95 105 105 115 130

D 41 長辺 75 75 85 95 100 105 110 115 135

D 51 長辺 80 85 85 90 100 105 105 115 120 125 140

*1 プレート長辺長をせん断補強鉄筋と掛けられる鉄筋の呼び径から決定。(図-3)

*  鉄筋種類が SD 345,プレート材質が SM 490 以外,コンクリート強度が 30 N/mm2以上の場合は審査証明の詳細に従う。

拡径部径0 1.2

拡径部厚さ

※  は公称直径

-5 T ヘッド工法鉄筋の形状

(3)

表-4

に示す。鉄筋呼び名 D 10 からD 51までを対象とする。

拡径部直径 D0:2

.

5 d≦D0≦2

.

8 d  (d:公称直径)

拡径部厚さ t:0

.

8 d≦t≦1

.

2 d (d:公称直径)

4 .  適 用 方 法

 この 2 工法とも,せん断補強筋の半円形フックに変え て使うことができることが各種の実験により確かめられ ている。以下にそれぞれの使用方法について紹介する。

4 . 1  Head-bar

 図

-6

,図

-7

に示すように,Head

-

bar は,従来配筋で 両側半円形フックあるいは,両側半円形フックのラップ 配置となるせん断補強鉄筋の片側の定着体に適用する。

定着プレートは,コンクリート表面に最も近い鉄筋に掛 け,せん断補強鉄筋が掛ける鉄筋と接触するまで近づけ て配置することを原則とする2)

 「建設技術審査証明(土木系材料・製品・技術)2015.

11」では,Head

-

bar をせん断補強鉄筋または中間帯鉄筋

半円形フック 定着体:

Head-bar

正側 負側

−1 000

−800

−600

−400

−200 0 200 400 600 800 1 000

 −150 −120  −90  −60  −30  0  30  60  90  120  150

水平力(kN)

水平変位(mm)

半円形フック 定着体

かぶりコンクリートの剥落  内部コンリートの 破壊(図-10の状態) 

正側

負側

δ δ

-8  柱部材の正負交番繰返し試験水平力−水平変位の  包絡線の比較3)

-4 拡径部直径,拡径部厚さおよび偏心量(単位:mm)

項 目 呼び名

D 10 D 13 D 16 D 19 D 22 D 25 D 29 D 32 D 35 D 38 D 41 D 51

D0 最大 27 36 45 53 62 71 80 89 98 107 116 142

t

最小 24 32 40 48 56 64 72 80 87 95 103 127

最大 12 15 19 23 27 30 34 38 42 46 50 61

最小 8 10 13 15 18 20 23 25 28 30 33 41

偏心量 最大 1.9 2.6 3.2 3.8 4.4 5.1 5.7 6.4 7.0 7.6 8.3 10.2 公称直径 9.53 12.7 15.9 19.1 22.2 25.4 28.6 31.8 34.9 38.1 41.3 50.8

0 20 40 60 80 100 120 140

履歴吸収エネルギー(kJ)

靭性率 定着体 半円形フック 1 サイクル目

耐力損失過程

0 20 40 60 80 100 120 140

履歴吸収エネルギー(kJ)

靭性率 定着体 半円形フック 2 サイクル目

耐力損失過程

0 20 40 60 80 100 120 140

履歴吸収エネルギー(kJ)

靭性率 定着体 半円形フック 3 サイクル目

耐力損失過程

1  δ 2  δ 3  δ 4  δ 5  δ 6  δ 7  δ 8  δ 1  δ 2  δ 3  δ 4  δ 5  δ 6  δ 7  δ 8  δ

1  δ 2  δ 3  δ 4  δ 5  δ 6  δ 7  δ 8  δ

-9 各繰返しサイクルにおける履歴吸収エネルギーの比較

この部位に適用する

鉄筋の

交称径以下 鉄筋がせん断 補強鉄筋また はバリと接触 するまで,奥 に差し込むこ とを原則

外側の鉄筋

-6 Head-bar の適用事例と配置方法

-7 定着体と端部の構成

(4)

に使用した場合について,以下のように証明されている2)

・定着部の引抜耐力および抜出し量(剛性)は半円形フッ クと同等かそれ以上。

・Head

-

bar を用いた部材のせん断補強性能は半円形フッ クと同等。

・Head

-

bar をせん断補強鉄筋または中間帯鉄筋に用い た場合の軸方向鉄筋の座屈を抑止する効果および部材 の靭性が,半円形フックと比較して,破壊までの挙動 を含めて同等。

・高応力繰返し荷重に対する定着性能は半円形フックと 同等かそれ以上。

 Head

-

bar を中間帯鉄筋に用いた柱部材の正負交番繰 返し試験結果の概要を図

-8

,図

-9

に示す3)。Head

-

bar を 使用した試験体は,水平力-水平変位関係の比較におい て,水平力損失過程で保持される水平力が破壊まで半円 形フックと同等であること,破壊に至る過程でのエネル ギー吸収性能が半円形フックと同等であることがわか

る。加えて,図-10に示したように,水平方向の復元力 が失われるまで定着体が帯鉄筋を拘束していることが確 認できる。

 このことから,Head

-

bar を使用する場合においても,

構造物の破壊までの挙動において軸方向鉄筋の座屈を抑 止する効果および部材の靭性が保持できる。

4 . 2   T ヘッド工法鉄筋(図 -11

,図

-12

 タンクの底版と側壁,立坑の側壁,アーチリブ,トン ネル二次覆工,ボックスカルバート,橋脚,フーチング,

鉄道高架橋などのせん断補強鉄筋または中間帯鉄筋等

(ただし,棒部材の外周鉄筋には用いない)に使用する ことができる。また,高サイクル疲労の影響を受ける部 材にも用いることができる。

 杭・柱および橋脚等の軸方向鉄筋のフーチング等のよ うにマッシブなコンクリートへの定着に用いる。

 T ヘッド工法鉄筋をせん断補強鉄筋として用いた梁の 曲げせん断試験体での正負繰返し載荷の実験や,脚柱供 試体での中間帯鉄筋に T ヘッド工法鉄筋を用いた交番載 荷実験の結果が,通常のフックを使用した場合と比較し て報告されている4)。いずれも,半円形フックを用いた 場合と同様の結果が得られていると報告されている。

5 .  施 工 事 例

 実際の現場での,配筋のフックから機械式定着鉄筋へ の変更事例を図

-13

に示す。

 この例で示したように,機械式定着鉄筋は,ボックス カルバートでの使用実績が多い。多く使用されるのは,

隅角部等の過密部でなく,上下床版および側壁のせん断 補強鉄筋である。特にせん断補強鉄筋のピッチが細かく,

施工数量が非常に多い場合や,両フックで施工するのに 非常に手間がかかる場合あるいはできない場合に使用さ れる事例が多い。

  7  

2 回目 δ

定着体の掛りが確認できる

-10 水平力低下時の状態3)

壁状構造物 梁状構造物 柱状構造物 

せん断補強鉄筋 中間帯鉄筋 

※外周鉄筋は適用外 拡径部をかぶりコンクリート内に配置

拡径部をコアコンクリート内で重ね継手

-11 「T ヘッド工法鉄筋」の適用例(横方向鉄筋)

杭 柱・橋脚

-12 「T ヘッド工法鉄筋」の適用例(軸方向鉄筋)

設計 上床版 変更

設計 側壁 変更

設計 下床版 変更

-13 ボックスカルバートの配筋変更の例

(5)

6 .  終 わ り に

 兵庫県南部地震以後,耐震設計規定の厳格化に伴い,

橋梁やカルバートなどの土木構造物ではせん断補強鉄筋 および中間帯鉄筋量が増加している。鉄筋が高密度化す ることにより,せん断補強鉄筋の標準フックなど,曲げ 加工部分を有する鉄筋の組立が非常に難しくなっており,

配筋作業の施工性の低下を招いている。また,標準フッ ク部などの曲げ加工部分がコンクリート打込み面に多く 存在することとなり,ホースなどの吐出口や締固め用の 棒形振動機の配筋内部への挿入が困難となることもある

(写真

-1

)。このように,鉄筋の高密度化は配筋作業の施 工性低下,コンクリートの充填性の低下の要因となり,

土木構造物の生産性および品質の向上が大きな課題と なっている。また,加工においても鉄筋の高強度化や太 径化により曲げ加工がしにくくなっている。このような 背景から様々な機械式定着工法が開発され,普及をして きた。

 施工性の向上については,T ヘッド工法に関するボック スカルバート型ケーソンの鉄筋工に関する歩掛かり調査に よると,段取り筋や重ね継手部の省略などから労務量は 25%程度削減できることが報告されている4)。また LNG 地上タンク定番のせん断補強鉄筋に採用した例では,従 来のフックでのせん断補強鉄筋に比べてせん断補強鉄筋 の組立て工期が半減できた例も報告されている4)。  また,コンクリート打込み面の半円形フックや重ね継 手部などがなくなることにより,ホースなどの吐出口や 締固め用の棒形振動機の配筋内部への挿入が容易にな り,コンクリートの充填性の向上にも寄与している。

 建設業界は,作業員不足の状況が続いている。そのよ うな状況で,施工の効率化は重要なテーマである。技術 的に問題なくかつコスト面での優位性のある工法が多く 開発されることが望まれており,この定着鉄筋はその期 待に応えた開発と言えるだろう。

 本文をまとめるに当たり,大成建設 武田 均様,清 水建設 吉武謙二様に,資料や助言をいただきましたこ と,誌面を借りてお礼申し上げます。

参考資料

1) VSL ジャパン技術資料「プレート定着型せん断補強鉄筋 Head- bar」カタログ

2) 土木研究センター:建設技術審査(土木系材料・製品・技術)

「Head-bar」,2015. 11

3) 府川 徹・福浦尚之:中間帯鉄筋にヘッドバーを用いた単柱試験 体の正負交番繰返し載荷試験,コンクリート工学年次論文集,

Vol.35,No.2,pp.529~534,2013

4) 木村克彦ほか:T ヘッド鉄筋工法の開発とその施工例,コンクリー ト工学,Vol.42,No.3,2004. 3

写真-1 フックの多い配筋

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