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総合商社の企業間関係 ― 「中間組織」の観点から ―

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(1)

はじめに

総合商社はサービス業の一業種であり,生産 財を持たないという点で,自らモノを創り出す 製造業企業とは大きく異なる。このことは,総 合商社の他企業との企業間関係を特徴付ける。

もちろん製造業企業においても,すべてを完全 に内部化することは現実的ではない。どこまで 内部化し,どこを市場取引に委ねるかは選択の 問題であり,企業戦略に委ねられる。

しかしながら,総合商社の場合は,他企業と の取引,あるいは取引相手となる他企業があっ てはじめて付加価値発揮の機会が得られる。こ のことから,総合商社の活動の基本には他企業 との何らかの関係が必ずあり,この企業間関係 のあり方にこそ,総合商社のビジネスの本質が あるのではないかと考えられる。

総合商社にとって,他企業との取引は自ら何 もしなければ市場取引が基本となる。したがっ て,総合商社が自分自身にとって有利な取引の

「統治機構(

governance structure

)」を求めると すれば,それはおのずと市場と完全内部化の中 間的なものとならざるを得ない。

また,近年,多くの産業において,世界的規

模での競争激化,技術の複雑化,市場ニーズの 高度化,製品寿命の短縮化などを背景に,一企 業のみでバリューチェーン内のあらゆる活動を 内部化することは事実上不可能となりつつあ る。むしろ競争的観点からは,速やかに他企業 との間で連携・提携することが求められてお り,「市場」でも「企業(あるいは階層組織)」

でもない,「中間組織」による企業間関係を形 成することによってはじめて競争優位が獲得で きる企業環境となりつつある。

こうしたことから,本稿では,総合商社の企 業間関係の考察において,「中間組織」という 概念が鍵になり得るとの基本認識に基づき,企 業間関係に関する理論と,その中における「中 間組織」の理論的な位置付けを確認した上で,

総合商社の企業間関係を「中間組織」の観点か ら考察することを目的とする。

1.組織間関係論における中間組織

(1)組織間関係論とは

総合商社は,今日では多角的に事業展開を行 なっているが,仲介貿易業を出自としており,

その企業活動においては,当初より他企業との 関係性が極めて重要な意味を持っている。

*早稲田大学大学院社会科学研究科 2011年博士後期課程満期退学(指導教員 長谷川信次)

論 文

総合商社の企業間関係

― 「中間組織」の観点から ―

三 宅 真 也

(2)

しかしながら,総合商社のみならず,一般に 企業は,企業を取り巻く環境と双方向に影響を 与えあいながら活動する存在であり,その環境 の中には他企業も当然に含まれる。その意味 で,総合商社の他企業との企業間関係を考察す る前に,企業間関係を含む一般的な組織間関係 の理論を確認しておくことは有益である。

組織間関係論の歴史自体は決して古くない(1)。 組織間関係とは,「いわば,組織と組織との取 引であり,組織間の資源・情報交換であ」って,

「組織間関係論では,価格機構によって調整さ れる自律的な組織間関係や,公式権限によって 組織内部のように調整される階層的な組織間関 係よりも,互いに自律し,しかも異なる目標を 持ちながら相互依存している組織間関係を主と して取り扱う」[山倉 1993

:

22

-

23]とされる。

そうした組織間関係論には様々なパースペク ティブが存在するが,本稿では,関係性そのも のに着目するのではなく,個別組織の観点か ら組織間関係を取り扱う「資源依存パースペク ティブ」と「取引コスト・パースペクティブ」の 2つのパースペクティブを概観することとする。

まず「資源依存パースペクティブ」であるが,

山倉(1993)は,同パースペクティブを組織間 関係論における支配的パースペクティブと位置 付ける。そして,「組織が存続するために,資 源を保有している他組織に依存していることを 前提とし」て,「資源依存という概念を組織間 関係を説明する基本概念とし,組織間関係の形 成・維持の理由や組織間マネジメントを解明し ている」と総括する[同

:

16]。

もう少し具体的に見ると,山倉(1993)は,

同パースペクティブを以下の2つの前提に基づ いていると説明する。

①組織が存続していくためには,外部環境か ら,諸資源を獲得・処分しなければならな いということ

②組織は自らの自律性を保持し,他組織への 依存を回避しようとし,またできるかぎり 他組織をして自らに依存させ,自らの支配 の及ぶ範囲を拡大しようとし,依存を受け 容れざるをえないときには,それを積極的 に取り扱うという行動原理をもつと考えて いること

その上で,組織の他組織への依存は,「他組 織が保有しコントロールしている資源の重要 性」と「他組織以外からの資源の利用可能性

(資源の集中度)」の関数であるとし,組織間の 依存関係のマネジメントのための組織間調整メ カニズム,あるいは組織が他組織との依存関係 を処理する戦略を次の3つに分類する。

①依存の吸収・回避をめざす自律化戦略(合 併・垂直的統合,部品の内製化など)

②依存を認めたうえで,他組織との間で,折 衝により互いの妥協点を発見し,他組織と の良好な安定した関係を形成しようとする 協調戦略(協定締結,包摂,人材導入,合 弁,アソシエーションなど)

③依存関係を当事者間で直接的に操作するの ではなく,第三者機関(上位レベル)の介 入,またはそれへの働きかけを通じて,間 接的に操作する政治戦略(正統性の獲得,

政府の規制,ロビイングなど)

(3)

また,組織間の資源依存関係について,「双 方依存(二つ以上の組織が双方向で依存してい る状態)」,「双方独立(組織間において依存関 係が第二次的役割しかもっていない場合)」,お よび「一方的依存」の3つに分類し,一方的に 依存している組織は他組織への依存を減少・回 避し,双方独立あるいは双方依存の状態をつく り出そうとすると主張する。そして,そのため の方策として以下の4つをあげる。

①他組織に対する自らの資源そのものの価値 を高めることであり,それによって他組織 の自らへの依存を高めること

②他組織以外の選択肢を増やすことであり,

代替源の拡大により,組織の他組織への依 存を低くすること

③他組織との関係の必要性を減らすことであ り,当該組織が他組織に与えている価値そ のものを減らすこと

④結託の形成により他組織にとっての選択肢 を減らすこと

以上の説明から,「資源依存パースペクティ ブ」における「中間組織」とは,「依存を認め たうえで,他組織との間で,折衝により互いの 妥協点を発見し,他組織との良好な安定した関 係を形成しようとする協調戦略」の下で,「双 方依存」の状態を作り上げるための組織間調整 メカニズムであると理解することができる。つ まり,互いに欠けている資源を補う相互補完性 をベースとした,資源依存関係に対処するため

の調整手段が「中間組織」なのである。

次に,「取引コスト・パースペクティブ」を 見てみたい。このパースペクティブは,他の パースペクティブが主に社会学者によって提唱 されてきたのに対し,経済学者により展開さ れてきたという特徴がある。そのため,分析 単位を「取引」に置き,「取引様式(取引の調 整形態)」に注目する。つまり,取引が権限に よって調整される「階層組織」によって行われ るのか,価格機構によって調整される「市場」

によって行われるのかという,「階層組織」と

「市場」の選択問題を,取引コストの観点から 取り扱うというアプローチであるが,「最近の フレームワークでは,市場・中間組織・組織と いう三分法に立ち,三つの取引様式の選択につ いて論じている」[同

:

54

-

56]。これは,

Coase

(1937)以来の流れを汲む取引費用経済学の組 織間関係論への応用である。

それでは,「資源依存パースペクティブ」と

「取引コスト・パースペクティブ」の関係をど のように理解すべきであろうか。前者は,企業 間の資源依存関係を調整する戦略を,また後者 は,取引コストの最小化を実現する取引様式を 提示するものであり,各々着眼点は異なる。し かしながら,組織間調整メカニズム,あるいは 取引様式として,「市場」および「階層組織」

に加えて,両者の中間的な調整形態,あるいは 統治機構の重要性を認識しているという点で共 通する。

したがって,「中間組織」の観点から企業間 関係を考察するにあたって,双方の着眼点を持 つことに相互干渉的な悪影響はないものと考え られる。むしろ,資源依存と交渉力は表裏一体 であることから,「資源依存パースペクティブ」

(4)

は,より積極的な経営戦略の観点から有意義で ある一方,「取引コスト・パースペクティブ」

は,コスト削減という,より防御的な経営戦略 の観点から有意義であると思われ,相互補完的 な関係にあると考えられる。

(2)中間組織の理論的位置付け

Chandler

(1977)は,アダム・スミスが「国

富論」において説いた市場による調整メカニズ ムという「見えざる手(

invisible hand

)」に代 わって,大規模で垂直的に統合された企業,あ るいはそのマネジメントの「見える手(

visible hand

)」という調整メカニズムの出現を主張し

た。この

Chandler

の主張を契機に,経済取引

の統治機構として,「市場」と「企業(あるい は階層組織)」という対立概念に基づく二分法 的な議論がなされるようになった。

しかしながら,近年では,その両者のいずれ とも言えない現実の経済活動を説明すべく,両 者の間の中間的な構造,すなわち「中間組織」

の存在を認め,「中間組織」に焦点を当てた議 論が盛んになされるようになっている。

「市場」と「企業」の選択に関する伝統的な 議論については,取引コスト理論によるアプ ローチが主流を占めてきたが,「中間組織」の 選択についても同様に取引コストによる説明が 可能である。つまり,「市場」よりも「企業」

内に内部化するよりも,何らかの関係性に基づ く取引,すなわち「中間組織」に基づく取引 の方がコスト(2)が低ければ,その「中間組織」

が選択されるということである。

近年注目される企業間の提携は,具体的には ライセンス契約,合弁事業,連携グループ形成 といったさまざまな形態をとりうるが,いずれ

も純粋な

arm

s length

の単発の市場取引でもな

ければ,単一企業内の取引でも無いという意味 で「中間組織」による取引である。つまり,「中 間組織」の態様は,より市場に近いものから,

より内部組織に近いものまで様々である。

日本における「中間組織」の重要性を主張す る今井ほか(1982)は,「経済のインターフェー スの技術は市場取引と組織内連結だけではな い。資本的な結びつきによる企業間関係や下請 も,また役員派遣等による企業間の人的結合も インターフェースの方法である。もちろん組織 というものを広く解釈すれば,市場と組織の選 択というときの組織には中間組織も含まれてい るとみなすことができる」[同

:

60

-

61]と述べ る。そして「中間組織」の存在理由について,

企業の内部組織と市場は取引を行なう制度とし ては代替的な関係にあり,双方に失敗があり得 ることから,その中間に「企業の内部でもあり 外部でもあるような中間組織」が求められる理 由があるとして,「もしその中間組織が市場の 失敗も内部組織の失敗をもともに避け,逆に両 者の長所を生かしうるならば,それは企業グ ループないし企業集団の基本的な組織論となり うるはずである」[同

:

126

-

127]と主張する。

さらに,「中間組織」を考察するにあたって,

「市場」と「組織」という言葉が二つの概念を 示すこと,つまり,この二つ言葉は,取引の起 きる「場」を示す場合と,そういった「場」に おける取引の「原理」あるいは資源配分(3)

「メカニズム」を示す場合があることを指摘す る。したがって,「市場による資源配分」や「組 織を通じての資源配分」という場合に,それが

「場」をさしているのか,「原理」という意味で 使われているのか,明確に区別して考える必要

(5)

があると強調する。なぜならば,それは「市場 という『場』で行われている資源配分のメカニ ズムには『市場の原理』だけでなく『組織の原 理』がかなり入り込んでおり,また企業内の資 源配分にも『組織の原理』とともに『市場の原 理』が使われている」[同

:

137]からである。

つまり「場」と「原理」の両方において,「市場」

と「組織」の相互浸透ないしは補完的発展の関 係があるのである。

これを図示すれば,下図のとおりとなる。ベ クトルの第1要素(同図(1))が決定原理の特 徴,第2要素(同図(2))がメンバーシップ および参加者間の相互関係の特徴を示してい る。そして,市場を

M

(マーケット),組織を

O

(オーガニゼーション)とすると,

M

の決定 原理である

M

1は価格,メンバーシップである

M

2は自由な参入・退出,

O

の決定原理である

O

1は権限による命令,メンバーシップである

O

2は固定的・継続的関係ということになる。

そして,その中間的な形態を含めると

M

O

各々に3類型あることとから,資源配分の原 理として9つの組み合わせのマスがありうるこ ととなる。具体的には,例えば,純粋な市場取 引については(

M

1,

M

2),純粋な組織内取引 については(

O

1,

O

2)という2方向のベクト ルで示したマスに該当する。

今井ほか(1982)は,図の9つのマスのうち,

対角線上の3つを「中間組織」と呼ばれるもの であるとするが,純粋に「市場」でも「組織」

でもない他の7つのマスはすべて「中間組織」

と言うことも可能であろう。いずれにしても,

「中間組織といっても,それが組織であるから には,最終的にその組織を律する原理がはっき りしていなければならない」[同

:

158]という

指摘は,企業間関係をいかに規定する統治機構 であるかを認識する上で重要な留意点であると 考えられる。

2.総合商社研究における中間組織 総合商社研究における「中間組織」に関連し た議論としては,総合商社を「集団内取引の結 節点」と見た奥村(1994)の企業集団アプロー チがまず思い浮かぶ。奥村(1994)は,日本の 企業集団は総合的な産業体系を持ちつつも中心 は重化学工業にあるとして,同産業分野の特徴 として迂回生産と「規模の経済」の2点をあげ た。また,日本の大企業の特質として,特定の 産業分野に専業化し,その特定の産業分野の中 でも販売や輸送などを外部の他企業にまかせ,

製造分野でもまた多くの下請企業を使うことで 専業化し,外部化していることを指摘した。そ の上で,「重化学工業の産業的特質と日本の大 企業の歴史的な特質の二つの面から,日本では 企業間取引が多いといえるが,この企業間取引 は本来的に相対取引であり,不特定多数の売り

(出典:今井ほか(1982))

図 「市場」・「組織」・「中間組織」の概念図

(6)

手と買い手の間での競争取引とは性格を異にし ている」[奥村 1994

:

199

-

200]と主張している。

つまり,日本の企業集団は,市場という「場」

で取引をしつつも,取引の「原理」に関しては 固定的であるという意味で組織内取引と同様で あり,そうした取引における仲介機能を総合商 社が担っていたということを意味している。

この企業集団アプローチにおける「中間組 織」像では,総合商社の役割が環境決定論的に 与えられたに過ぎないとの印象を与えるが,他 の議論ではどうだろうか。

「商社商権論」を唱えた島田(2003

a,

2003

b,

2010)は,「商社は生産段階の川上から川下へ と拠点を結ぶ垂直的な統合を念頭に置いて資 源,川下への投資を考えているといえるが,そ れはリスクのタテ方向での平準化を目的に含む とはいえ,各段階に均等に投資して,独自の完 結したモノの流れの全体を支配することを意味 しない。商社にはその力はないし,そのリスク は負えない。この場合生産と流通の段階ごとに それぞれの産業をリードする主な投資主体は別 別に存在する」[島田 2003

b:

284]と述べる。

この見解は,総合商社は,垂直方向に完全に 内部化するというアプローチは採りえなかった ことを示すと同時に,総合商社の自らの意思に 基づく「中間組織」の形成意図を指摘している という点で,奥村(1994)の示した総合商社の

「中間組織」形成への関わり方に関する見解と は異なるものである。

そして,以下のように述べ,総合商社と他企 業との企業間関係は,総合商社の提供する機能 によって他企業の取引コストがどれだけ節約で きるかによることを指摘する。

商社は内外の有力企業との継続的な取引を開 拓し維持することを経営の基本としている。

継続的な取引は条件次第で相手を変える市場 取引の論理と異なり,相手をあらかじめ特定 して取引の条件を市場に合わせて調整すると いう関係的取引の論理によって成り立ってい る。ここで企業間結合の理論を見ると,関係 的取引や継続取引は,取引費用の理論によっ て,コスト節約が可能な取引として認知され ている。[島田 2003

a:

5]

もともと関係性の論理のもとで商社が存在を 主張できたのはそこに機能の有効性や効率性 が認められたからである。しかしこれらをめ ぐる条件は変化する。産業構造や市場環境が 変化するなかで問題になるのは商社の機能と コストの関係である。商社はその機能の多様 性を誇るが,問題は機能の質とコストにあ る。[同

:

15]

しかしながら,こうした見解も,既述の「取 引コスト・パースペクティブ」に基づくもので あり,より積極的な企業間関係の実現メカニズ ムとしての「中間組織」の説明はしていないし,

また困難と言わざるを得ない。

それに対し,小島・小澤(1984)の総合商 社による合弁企業向け海外直接投資(以下

FDI

」)に関する以下の見解は,より積極的な

「中間組織」の形成アプローチを指摘している と考えられる。

総合商社の海外投資のやり方は,システム方 式,すなわち「囲いのある市場」(クローズ ド・マーケット)を作り出し,その中で一手

(7)

取扱の商取引機会を獲得していくところにあ る。いわゆる商権の追求がこれである。換言 すると,海外投資(株式取得と直接投資を問 わず)を通じて,総合商社は,市場にある種 の不完全要素を人為的に注入することを企て るわけだが,それは「旧形態投資」に見られ るような,内部化による市場機能の完全な停 止とか,阻止をもたらすことはないのであ る。それどころか,逆に,今まで存在してい なかった市場をつくり出し,それを拡大させ ている。しかし,このようにして市場がいく らか一手取扱的にコントロールされることは 否定できないが,それは,“組織内での内部 化”(

hierarchical internalization

),いいかえれ ば企業の内部支配によるものではない。そう ではなく,各種企業体(総合商社が一部出資 ないし融資している)の間の準自主的な,緊 密かつ長期的な市場取引を中核とする協調協 力関係にほかならない。[同

:

212

-

213]

総合商社は,非商事分野に海外投資する場合,

市場を内部化することを,あるいは市場を取 り除くことを欲しないし,またこういうこと ができない立場にあることを強調したい。繰 り返し述べたように,内部化現象(すなわち 市場の排除)こそは“旧形態投資”の主要な 特徴なのである。それに反して,総合商社は 自らの新しい市場の創造に努力し,その中で 仲介業者としての利益を得ようとする─すな わち,協力関係にある海外企業や,海外諸事 業のパートナーとの密接な関係を活用し,収 益のあがる一手取引市場をつくり出すことに 努力しているのである。[同

:

224

-

225]

要するに,総合商社は自分たちの仲介活動の 分野(ドメイン)を拡大するのに懸命である。

新しいビジネスの機会があれば,それを組織 的に内部化するわけでもないし,だからと いって市場(マーケット)の自発的な調整に 任しきるのでもない。そのいずれでもなく,

総合商社のとる調整方法は,取引企業との特 別な同盟を結ぶゆるい統合の形をとるのであ る。[同

:

225

-

226]

小島・小澤(1984)の見解に基づけば,総合 商社は,モノの流れに着目した上で,取引先と の間で環境適合的な企業間関係の形成によって 新たな商流を創造することを目的に海外投資を 行なってきたということになる。このように,

1960年・1970年代において,総合商社が,製造 業分野の取引先企業との関係を中心に,海外に おける合弁企業という「中間組織」を形成する ことで商権確保に努めてきたことについては,多 くの先行研究でも指摘されているところである。

他方,近年では,他企業が新規事業展開する 際の触媒,あるいはパートナーであったり,必 要な機能だけを必要に応じて互いに提供し合 う,新しい形のソフトな企業連携の触媒となっ ているとの意見(奥田2003,中谷編著2001な ど)も見られる。このことから,総合商社の形 成する「中間組織」は,環境に応じてますます 多様になっていることをうかがい知ることがで きる。

総合商社のこうした新たな役割について,塩 見(2001)は,「バリューチェーンの外部ネッ トワーク化の進展は,脱仲介業者(ディスイン ターメディエーション)である一方で,再仲介 業者(リインターメディエーション)のプロセ

(8)

スでもある」[同

:

144]と指摘し,総合商社の伝 統的な仲介機能を見直す好機であると主張する。

総合商社の仲介機能の見直しは,情報通信革 命に伴う,モノの作り手と使い手,あるいは売 り手と買い手の間の力学の変化(4)に関連した ものであり,そうしたパラダイム・シフトへの 対応という観点から総合商社の環境適応を示唆 しているという点で興味深い指摘である。

3.総合商社と他企業との企業間関係

(1)取引先企業から見た総合商社

総合商社を取引先企業から見る場合,総合商 社の原点に立ち返ると,まずはアウトソーシン グ先ということになる。この場合,取引先企業 としては,総合商社を販売面などに限っての純 粋な市場取引の相手と考えることになるので,

理論的には,収入を一定とした場合のコスト,

すなわち収入一単位当たりコストの最小化の観 点から取引形態を選択することとなる。

取引先企業にとってのコスト節減効果は,取 引仲介者としての総合商社の関与が,市場取引 に伴う相互依存関係と複雑・不確実性を緩和す ることによって取引主体の限定合理性を補完 し,機会主義的行動を抑止する効果をも含んだ ものと考えることができる(5)。また,総合商社 が提供するサービスが,そのネットワークに基 づく情報や情報から内部創造した知識を組み込 んだものである場合には,取引先企業が内部化 により自ら総合商社と同等のサービスを生産す るには多大な取引特殊な投資が必要となること に鑑みれば,より節減効果が大きいということ ができる。

他方,総合商社の提供サービスが単純な仲介 機能の場合には,総合商社固有の情報優位性は

低く,規模や範囲の経済性を確保すれば他の方 法でも代替可能なケースも多い。一般的に市場 取引のハードルが高い,すなわち市場情報が乏 しいとされる中小企業や開発途上国との取引の 場合を除き,単純な仲介機能は取引先企業に よって内部化される傾向にあり,実際に内部化 されてきている。特に,従来アウトソーシング の対象としてきた活動が,取引先企業にとって 今後の持続的競争優位の源泉となり得ると判断 される場合には,内部化への転換が積極的に進 められる。典型的には,家電メーカーなどが,

一層の販売拡大に消費者情報が重要と判断し,

従来アウトソーシングの対象としてきた販売網 を内部化するようなケースが一例である。

その逆に,国内や海外のある国では内部化を 進めても,また別の国では総合商社を依然とし て活用するケースもある。例えば,国内では取 引先企業が既に内部化をしたり,自らコーディ ネートしているバリューチェーンについて,海 外のある国では,そのうちの一定の連続した活 動を総合商社に依存するケースが良く見られ る。例えば,自動車メーカーの場合,国内での 販売は自社,資金調達は銀行としていても,海 外,特に途上国では,販売・販売金融は一括し て総合商社を活用することがある。このよう に,現地展開している総合商社を活用すること によって現地企業に対する比較劣位を克服する と共に,他国競争相手に対する競争優位を確保 できる場合には,内部化を選択せずに総合商社 を活用することは経済合理性に適った判断とし て継続されている。

他方,アウトソーシング先として一定の市 場取引の実績を経た後に,継続的な提携関係(6)

に移行するケースもある。例えば,取引先企業

(9)

が,総合商社へのアウトソーシングが成功した と認識し,さらなる活用を図りたいとした場合 に,総合商社として取引特殊的な投資を必要と する場合がある。その場合,総合商社としては 長期契約や排他的独占契約,あるいは合弁事業 などの提携関係への移行を取引先企業に求める ことになる。この場合は,アウトソース元の企 業の積極的な選択というよりも,総合商社の意 向である。他方,アウトソース元の企業が,新 たなアウトソース先との間で生じるガバナン ス・コストを節減するため,一旦アウトソース 先とした総合商社との間で継続的な提携関係へ の移行を求める場合も考えられる。

こうした「継続性」に加えて,戦略的意図や 当事者間の独立性・対等性といった条件を満た す企業間関係を「戦略的提携」と呼ぶことがあ る。「戦略的提携」の動機については,①取引 コスト論,②戦略行動論,そして③組織間学習 論から論じられることが多い。先に見た組織間 関係論のパースペクティブと関連付ければ,① の取引コスト論は文字通り「取引コスト・パー スペクティブ」と同じアプローチの議論であ り,②の戦略行動論は,取引コスト論を拡大し たアプローチ,あるいは一面で「資源依存パー スペクティブ」に関連したアプローチの議論,

そして③の組織間学習論は「資源依存パースペ クティブ」に関連したアプローチの議論と言う ことができる。

取引コスト論によれば,「提携」は,市場取 引と内部取引の中間的取引であり,取引主体間 の継続的な取引であるため「中間組織」の一形 態とされる。「中間組織」の採用については,

取引特性,特に資産特殊性,あるいは取引特殊 的投資の有無が重要な影響を持ち,こうした投

資がある場合には,純粋な市場取引は採用され ず,「中間組織」または内部組織による取引が 選好される。

この議論に従えば,総合商社の伝統的な商権 に基づく取引においては,継続性は認められる ものの,取引特殊的投資は限定的であったと考 えられる。しかしながら,伝統的な商権に基づ く取引においても,取引の歴史が,企業間の信 頼の構築に基づく取引コストの削減を通じて

「中間組織」の形成に貢献している点は軽視で きない事実である。

いずれにしても,戦略的意図と当事者間の独 立性・対等性の有無次第では,総合商社も,単 なるアウトソース先ではなく,他企業の「戦略 的提携」相手となりうることが理解できる。

総合商社の関係先企業にとって,総合商社の 有用性は固定的ではなく変化する。従来は取引 費用の削減がもっぱらの有用性であった。しか しながら,今日,企業の自己完結型の事業展開 に限界が生じ,自社の能力を補完・強化する他 企業との連携が求められるようになる中で,総 合商社がそのパートナーとして選ばれるケース が見られるようになっている。

こうした観点からのアプローチが戦略行動論 である。戦略行動論は,取引コスト論がコスト の最小化の観点から「提携」を捉えるアプロー チであるのに対し,利益の最大化実現という積 極的な戦略に基づく行動として「提携」を捉え るアプローチと言うことができる。例えば,あ る企業が内部化可能な取引について,当該取引 を内部化せずに外部との取引を行なうことで市 場の拡大が期待されるなど,そのコストを補っ て余りある利益が期待される場合に,内部化し ないという行動を取ることが考えられる。その

(10)

際,市場拡大という戦略的意図を当該企業と総 合商社の間で共有し,独立・対等な立場で「中 間組織」を形成するのであれば,総合商社は当 該企業にとっての「戦略的提携」相手と言える。

なお,戦略行動論のアプローチは,戦略的意 図の実現コストも取引コストと観念すれば,取 引コスト論の延長として捉えることも可能であ ると思われる。また,戦略的観点から他企業 の資源に依存する点に注目すれば,「資源依存 パースペクティブ」に関連した議論でもある。

それに対し,組織間学習論は,戦略行動論と 同じく,企業間の補完関係に着目した議論であ り,

Penrose

(1959)が「生産的資源(

productive resources

)の蓄積(

pool

)」と定義した企業のリ ソースに,より焦点を当てた議論である。この 議論では,主として市場取引では得難い知識や 情報をパートナーから学ぶことを「提携」の目 的として論じるが,総合商社と取引先企業との 提携関係をこの文脈で論ずるのは難しい。総合 商社の生産的資源である知識は,基本的に存続 性が無いために速やかに費消されることが望ま しく,一旦費消される,すなわち取引が実施さ れたり,事業が組成・開発されると不要とな ることが多い。つまり,「学ぶ」という継続的 なアップグレーディングのための活動によって 価値が高まるような性質の資源ではないのであ る。さらに言えば,総合商社と取引先企業との 提携関係においては,互いの知識を利用した価 値実現が目的であって,パートナーの知識の内 部化を通じた自身のリソースの強化を目的とは していない。その意味で,総合商社の行なう戦 略的提携は,組織間学習から論ずる意義は薄い のではないかと考えられる。

(2)総合商社から見た取引先企業

今度は逆に,総合商社の立場から見た関係先 企業の位置付けを議論することとする。

総合商社の立場からすると,純粋な市場取引 に依存していると取引関係が不安定となり,経 営そのものが安定しない。したがって,完全な 内部化は不可能であるし,また目指さないとし ても,純粋な市場取引ではなく,安定的・継続 的な取引の確保,すなわち「商権」の確保を目 指すこととなる。そのためには,取引先企業の 利益拡大への貢献ができるか否かが重要な課題 となる。

取引先企業による内部化を阻止することは,

総合商社の活動における基本原理であり,取引 先企業との関係維持のため,総合商社は自らの 提供価値の高度化・差別化を追求してきた。し たがって,取引先企業との間で情報の非対称性 が縮小し,総合商社として提供価値の高度化に も限界がある国内取引について,取引先企業が 従来アウトソースしていた活動の内部化を進め ていったのは自然な成り行きであった。また,

その結果,総合商社としては海外分野の強化な どの対応を迫られることとなった。

島田(2003

b

)は,近年の総合商社における 共通の戦略の一側面として,投資対象分野に資 源と川下の二つの方向をあげる例が多いと指摘 する。そして,川中に強い日本の製造大企業と の関係性を重視してきた総合商社が,川中を避 け川上・川下に向かい,かつ投資リスクを負う 方向になっていることを念頭に,20世紀型総合 商社像の二重の否定であるとの見解を示してい る[同

:

283]。しかしながら,同時に「商社の 投資の方向などからみた戦略の転換は,商権形 成の場を移動させる動きとして理解できるが,

(11)

それは商社の本質を変えずに状況の変化に適応 する要素が強い」[同

:

285]との見解を示し,

総合商社の本質には変化が無いことを強調して いる。

総合商社が,川下分野として具体的に展開し たのが国内小売事業への投資と食品事業の再編 である。伝統的に関係性を築いてきた国内の製 造業大企業との間では新たな事業機会を見出す ことが困難となり,海外にその活路を見出さざ るを得なくなった結果,国内における新たな事 業分野として,従来関係性を築いてこなかった 小売分野,あるいは食品分野にその関心を拡大 したのである。

この背景としては,21世紀に入り加速した市 場の価値観の変化における「信頼ある仲介者」

へのニーズの高まりがあると考えられる。21世 紀の市場の大きな特徴は市場の二極分化であ り,かつ個々の需要者が二つの異なる行動を取 ることにある。つまり,今日,需要者は必ずし もハードの価値のみで製品を評価しなくなって おり,ハードに付加されるソフトやサービス,

あるいはそれらの提供プロセスを含めたトータ ルな価値,さらには感性に訴えるか否かといっ た点を評価するようになっている。その結果,

伝統的な経済原則が機能しなくなっているので ある(寺本ほか2007)。こうした市場の価値観 の変化に対応するためには,供給者側も需要者 側も,自らが保有していない知識の効果的な活 用が不可欠となり,そのために「信頼ある仲介 者」としての総合商社に対するニーズも高まり つつあると考えられるのである。

そうした新規分野への参入に関して総合商社 の採用したアプローチは,新規事業の立ち上げ ではなく,あくまで商権を持った既存企業への

出資参画,あるいは買収を通じて展開の足場を 確保するというものであった。具体的には,伊 藤忠商事がコンビニエンスストアのファミリー マートを,三菱商事が同じくローソンを傘下に 収めた件や,三菱商事が食品問屋の再編を進 め,傘下の菱食に統合する形で,最終的に三菱 食品を作った動きなどが典型的である(大森ほ か2011)。これらは,新しい市場の価値観に十 分対応できていなかった業界に目を付け,いち 早く需要者の取り込みを図ることを狙いとした 対応であったと評価できる。このように,総合 商社は,国内においては,従来重視していた分 野との有機的な結び付きはなく,現在および今 後の有望性に着目した需要重視のアプローチを 採るようになっている。

その点,海外分野のアプローチは,国内に比 べると連続的・漸進的である。総合商社の原点 は仲介貿易業務にあるが,取引先企業が多けれ ば多いほど効率的な仲介が可能となり,サービ ス供給の限界生産性を高めることができる。ま た,総合商社による取引先企業のネットワーク 拡大は,取引先企業にとってもネットワーク外 部性に基づき享受可能なメリットを高める効果 が期待されることから,顧客維持や新規顧客獲 得につながる可能性もある。こうした観点か ら,総合商社は,海外に現地法人・支店を設立 するとともに,合弁事業,マイノリティ出資参 画,三国間取引など,早くからネットワークの 拡大を積極的に推進してきた。

なお,総合商社の海外現地法人や支店設立に かかる

FDI

は,本業である商事分野の

FDI

あり,製造業企業にとっての設備投資と同じで ある。それに対して,合弁事業,マイノリティ 出資参画,三国間取引などの活動は,特定の取

(12)

引先企業との関係性,すなわち「商権」の維持・

確保を目的として非商事分野で行なわれるもの であり,海外現地法人や支店の設立とは別の動 機に基づくものである。

また,総合商社は,「商社金融」と呼ばれる 取引先に対する与信活動を積極的に行ってきた が,当初の企業集団内の企業に対する与信か ら,次第に国内の中堅中小企業や海外取引先

(特に途上国)に対する与信へと,その対象を 拡大していった。中堅中小企業や海外取引先な どの市場情報の乏しい取引先との実取引に基づ く信用情報は重要な経営資源であり,取引ネッ トワークの拡大は,総合商社にとって,事業拡 大であると同時に経営資源の拡充でもあった。

総合商社が取引先企業と安定的・継続的な関 係を構築する動機は強いが,具体的な関係のあ り方は多様である。そのため,取引の統治機構 についても,いずれの場合であっても市場取引 と内部取引の中間にある「中間組織」を形成し ようとする点では違いはないが,①契約に依存 しない緩やかな提携関係の構築,②長期契約

(独占販売権,ライセンス契約など)の締結,

③合弁事業の設立など多様な選択肢があり,よ り市場取引に近いものから,より内部取引に近 いものまで幅がある中から最も適切な形態を選 択することになる。

なお,「中間組織」の形成に当たり,一般に,

企業は情報的経営資源の外部流出・陳腐化に留 意する必要が生じる。特に製造業企業の場合に は,情報的経営資源の外部流失は直ちに企業特 殊優位性の喪失に繋がる可能性があるため,一 般に完全内部化が選好される。これに対し,総 合商社の場合は,情報的経営資源は,ヒトに蓄 積された暗黙知や社内の非公式人的ネットワー

クに基づく部分が大きいことから容易に流出す る危険性は低い。また,情報の流れが本社から の派遣人材を通じることによって管理可能でも あることから,非商事分野における完全内部化 の意思はほとんど無く,むしろ「中間組織」の 形成に強いモティベーションがあることが特徴 である。

そうした背景の下で,近年の海外向け事業投 資における「中間組織」の位置付けはどのよう に理解できるだろうか。事業投資は,投資先の 事業からの収益を目的とするものであり,海外 現地法人や支店のように内部化対象事業向けの 投資とは異なり,総合商社が100%出資を行う ことは稀である。したがって,当然にパート ナーなり,実態としての事業実施主体となる他 企業の存在が前提となる。そうした企業との関 係は,明示的な契約関係となり,部分的な内部 化を相互に認める関係であり,同時に相手に補 完的な機能を期待する関係である。

また,事業投資における他企業との関係性 は,伝統的な商業資本としての総合商社の取引 先企業との関係性とは大きく異なる。つまり,

従来の取引先企業との関係性はモノを基点とし た関係性であった。総合商社の「中間組織」形 成の狙いは,仲介業者としてモノの流れを抑え るために取引先企業との関係性を重視し,あく までモノの取引を通じて利益を上げることに あった。

それに対し,事業投資においては,モノの流 れは投資機会を見つけるきっかけに過ぎず,事 業投資を通じて,従来からの取引先か否かに関 わらず,新たな関係性が構築されるのである。

この差異は,海外合弁事業のあり方に典型的 に現れている。1960年・1970年代のモノの流れ

(13)

まとめ

本稿では,総合商社の企業間関係について,

「中間組織」の観点から考察した。

まず,総合商社の企業間関係を考察する上で も有用である一般的な組織間関係論を概観し た。その結果,組織間の調整メカニズム,ある いは取引の統治機構として,「市場」および「企 業(あるいは階層組織)」に加えて,両者の中 間的な調整形態,あるいは組織構造である「中 間組織」が重要であることを確認した。

また,「市場」と「企業」には,相互浸透,

ないし補完的発展の関係があり,取引の「場」

と「原理」を区別して考える必要があること,

そして「中間組織」は,文字通り「市場」と「企 業」の間にあり,より「市場」に近いものから,

より「企業」に近いものまで幅広い態様がある ことを確認した。

そして,次に総合商社研究における「中間組 織」の議論を概観した。一つは,総合商社が中 核的役割を果たしてきた企業集団に関する議論 であるが,この議論は,総合商社にとって「中 間組織」が環境決定論的に与えられたものであ るとの印象を与えるものの,少なくとも企業集 団という「中間組織」の存在が総合商社の活動 にとって不可欠であったことが明らかとなった。

また,「商社商権論」に基づく議論では,防 御的ではあるものの,総合商社自身の意思に基 づく「中間組織」の形成が浮かび上がった。そ して,海外投資に関する小島・小澤の議論で は,総合商社が,企業間関係の調整メカニズム として,海外投資という形態によって,より積 極的に「中間組織」の形成を図っていたことが 明らかとなった。

に着目した「中間組織」の形成においては,合 弁事業といっても付き合い程度のマイノリティ 出資であり,取引先企業としても総合商社が大 きな発言権を持つことを望まないという点で両 者の思惑が一致していた。しかしながら,1990 年代以降の事業投資においては,総合商社に とって,仲介業者としてモノの流れを抑えるこ とは二の次とされたことから,従来のモノを基 点として関係性を構築した取引先企業とは別の 視点から「中間組織」の形成相手が選ばれるこ ととなった。別の言い方をすれば,仲介事業に おいては,モノを基点として,伝統的な顧客で ある日本企業との関係性構築にプライオリティ が置かれたが,事業投資重視へのシフトに伴 い,あくまで事業収益を上げることを一義的な 目的に取引先企業との関係が考えられるように なったのである。

一例をあげれば,三宅(2013)が詳述した

IPP

(独立発電事業者)事業が典型例である。

過去

EPC

(7)ビジネスでは,総合商社は従来か らの顧客である日系企業の機器・設備を売るこ とを目的に売り込み先の発掘・拡充に努めてき た。しかしながら,事業投資においては,過去 のビジネスを通じて取引関係を持った非日系企 業を事業パートナーとし,モノについては,従 来からの取引先企業か否かに関わらず,事業の 収益性の観点から最善と考えられる機器・設備 を調達するといった対応をしている。つまり,

「中間組織」の形成相手として,トレードとい う視点から日本企業を顧客として重視する姿勢 から,事業投資という視点に基づき,場合に よっては従来の顧客と利害対立のある企業にま で関係性の形成相手を拡げるようになっている のである。

(14)

な性質

⑶ 今井ほか(1982)は,「資源配分は取引の結果起 きる。取引とは,財の使用権(あるいは所有権)

の移転である。複雑な資源配分は複雑な取引の連 鎖の結果として起きる」として,「この取引の連鎖 としての資源配分は,したがって複数の意思決定 者の各々の意思決定がなんらかのかたちで集まり,

その結果として生み出されてくる」[同: 137]と述 べている。

⑷ Reich(2001)は,「新興経済においては,選択

と喧騒と混乱の満ちあふれる中で,買い手はしば しば自分でも何が欲しいのかわからなくなってし まうことがあり,そのときは欲しいものを発見す る手段として,ブランド・ポータルを用いる。主 要なブランド・ポータルは,特定の製品を意味す るのではなく,むしろ問題解決を意味するのであ る」,そして「こうしたブランド・ポータルは,売 り手ではなく買い手の代理人の役割を果たしつづ ける場合にのみ,信頼できるものという評価を維 持することができる」[同: 邦訳62]と述べている。

これは,売り手から買い手へのパワー・シフトと ともに,「信頼ある仲介者」の存在意義が高まって いることを意味している。

⑸ 総合商社については,取引仲介を業とする以上,

機会主義的行動をとる可能性が低いとの前提に 立っている。

⑹ ここでの提携関係は,「提携とは企業間で,合併 とはゆかないまでも,事業のいろいろな面での結 びつきを深める正式な,しかも長期間にわたる友 好関係をいう。」[Porter & Fuller 1986: 邦訳289]と いった意味合いで使用している。

⑺ Engineering, Procurement & Constructionの各頭文 字を取った略であり,設備の設計・調達を含む一 括請負契約を意味する。

参考文献

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について,双方おのおのの立場からの考察を行 なった。まず取引先企業から見た総合商社の原 点は,単純なアウトソーシング先にしか過ぎな い。しかしながら,どのような「中間組織」を 形成できるかによって,戦略的提携の相手先と なることも可能であり,今日,その可能性が高 まっていると考えられた。逆に,総合商社から 見た取引先企業は,絶えず「中間組織」形成の 相手先であり,総合商社がみずから取引先の ニーズに応えるべく態様を変化させていく中 で,「中間組織」の形成相手の範囲をも拡大さ せていくことが可能となったと考えられた。

以上の考察から,本稿では,「中間組織」の 形成は総合商社の活動の出発点であり,かつ本 質であって,総合商社は,形成する「中間組織」

の態様変化によって環境適応を図ってきた,と の仮説を導き出すことができた。この「中間組 織」の態様の変化には,具体的な組織構造の変 化のみならず,「中間組織」の形成相手の変化 も含んでいる。

今後,本稿で導出された仮説について,総合 商社の存続性の解明の観点から論証することを 次の研究課題とすることとしたい。

〔投稿受理日2013. 12. 21 /掲載決定日2014. 1. 23〕

⑴ 山倉(1993)によれば,組織間関係論は,1950 年代終わりから1960年代初頭に成立し,1970年代,

特に後半において,組織論の重要領域として定着 したとされる。

⑵ 今井ほか(1982)によれば,取引コストの規定 要因は以下の2つであるとされる[同: 55]。

①取引される財・サービスの特性,および取引が行 なわれる場の客観的特性

②取引にかかわる主体,ないし意思決定者の人間的

(15)

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参照

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