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密教文化 Vol. 1977 No. 118  002八田 幸雄「修験恵印法流の儀軌と密教 (2)――供養法・護摩法―― P15-43」

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第 二 章 供 養 法 一、 は じ め に 本 章 は 修 験 恵 印 法 流 の 供 養 法 の 儀 軌 類 を、 密 教 の 供 養 法 の 儀 軌 類 と 対 照 し、 修 験 の 特 色 を 明 ら か に し よ う と す る の で あ る。 恵 印 法 流 の 供 養 法 の 儀 軌 類 は ﹃ 日 本 大 蔵 経 ﹄ 修 験 道 章 疏 (1) 一 ( 日 蔵 四 六 巻 ) に 収 め ら れ て い る も の に、(10) ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 法 普 通 次 第 ﹄ ( 四 六 -三 一 )、(22) ﹃ 修 験 恵 印 三 昧 耶 法 玄 深 口 決 ﹄ ( 口 決 と 略 す 四 六 -一 二 四 )、(25) ﹃ 神 変 大 菩 薩 供 養 法 ﹄ ( 四 六 -一 四 六 )、(26) ﹃ 理 源 大 師 供 養 法 ﹄ ( 四 六 一 五 一 )、 ﹃ 大 峰 界 会 万 行 自 在 次 第 ﹄ ( 四 六 -一 六 四 ) が あ る。(20) ﹃ 修 験 恵 印 三 昧 耶 引 導 法 ﹄ ( 四 六 -一〇 一 ) も そ の 骨 組 み は 上 記 の (2) 供 養 法 と 同 じ で あ る。 ま た ﹃ 修 験 聖 典 ﹄ ( 以 下 聖 典 と 略 す ) に は 加 行 法 と し て、 弁 財 天 法、 深 砂 法、 金 剛 童 子 法、 愛 染 法、 不 動 明 王 法、 竜 樹 法、 大 目 法 の 次 第 が 示 さ れ て い る。 今 こ れ 等 の 次 第 を 比 較 対 照 し て 修 験 の 儀 軌 次 第 の 共 通 点 を 把 み、 そ れ を 恵 印 法 流 と 関 係 の 深 い 真 言 密 教 の 小 野 流 の 次 第 と 対 比 し て、 修 験 の 特 色 を 究 め よ う と す る の で あ る。 修 験 の 儀 軌 と よ く 対 比 出 来 る 小 野 の 次 第 は 栄 海 ( 一 二 七 八-一 三 四 七 ) (3) 撰 の ﹃ 略 念 諦 次 第 ﹂ 栄 然 ( 一 一 七 一-一 二 五 七 ) 作 栄 海 補 の ﹁ 如 (3) 意 輪 観 自 在 菩 薩 念 諦 次 第 ﹄ 等 で あ る。 し か し こ れ 等 の 次 第 は 小 野 の 次 第 と は い っ て も、 小 野 の 祖、 聖 宝 ( 八 三 二-九〇 九 ) の 時 代 か ら は る か に 隔 っ た も の で、 様 々 に 増 広 さ れ た 部 分 が (4) あ る。 ま た 聖 宝 撰 と い わ ゆ る ﹃ 持 宝 金 剛 念 諦 次 第 ﹂ が 小 野 の 根 本 次 第 で あ る と い わ れ る が、 弘 法 大 師 全 集 に 収 め ら れ て い る も の は 度 重 な る 写 本 で あ っ て 表 白、 神 分 等 の 附 加 も あ り、 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 こ の 次 第 が そ の ま ま 聖 宝 作 で、 聖 宝 の 時 代 に こ の 通 り の も の が 行 わ れ て い た か は 疑 わ し い。 そ の た め 小 野 の 供 養 法 も 弘 法 大 師 ( 七 七 四-八 三 五 ) 或 は 恵 果 ( 七 四 六-八 〇 五 ) の 原 点 に 帰 っ て、 そ の 次 第 の 綱 格 を 再 検 討 す る 必 要 が あ る の で あ る。 二、 密 教 の 供 養 法 密 教 の 供 養 法 は 十 入 道 念 諦 次 第 が 基 礎 と な っ て い る。 醍 醐 流 で は 十 入 道 の 次 第 に 金 剛 界 法 の 一 部 を 取 り 入 れ た 別 行 立 の 次 第 を 用 い る が、 そ の 根 本 は 十 八 道 の 次 第 が 基 礎 と な っ て い る の で あ る。 十 八 道 次 第 の 所 依 の 経 典 は 両 部 大 経 や 蘇 悉 地 経 に よ る と さ (5) れ る が、 特 に 不 空 訳 ( 七 〇 五-七 七 四 ) ﹃ 無 量 寿 如 来 修 観 行 供 養 儀 軌 ﹄ ( 大 正 一 九、 M 九 三〇 ) が あ る。 こ の 儀 軌 に は 十 入 契 印 を 説 き、 阿 弥 陀 仏 を 両 部 不 二 の 大 日 と 説 く。 ま た 不 空 訳 ﹃ 観 自 在 菩 薩 如 意 輪 念 諦 儀 軌 ﹄ ( 大 正 二〇、No. 一〇 八 五 ) は、 如 意 輪 を 本 尊 と す る こ と に お い て、 醍 醐 の 次 第 と 密 接 な 関 係 が あ る。 東 密 で 伝 え ら れ る 十 入 道 の 次 第 の 基 礎 は 弘 法 大 師 空 海 ( 七 七 四-八 三 五 ) が 師、 恵 果 阿 閣 梨 (七 四 六-八 五 ) よ り 授 か っ た (6) と い わ れ る ﹃ 十 入 契 印 ﹄ で あ る。 こ れ は 上 記 ﹃ 無 量 寿 儀 軌 ﹄ の 要 点 を 示 し た も の で あ る。 今 そ の 大 綱 を 示 す と、 ( 1 ) 荘 厳 行 者 法 に(1) 浄 三 業、(2) 仏 部 三 昧 耶、(3) 蓮 華 部 三 昧 耶、(4) 金 剛 部 三 昧 耶、(5) 被 甲 護 身。 (II) 結 界 法、(6) 地 結 ( 金 剛 櫃 )、(7) 四 方 結 ( 金 剛 將 )。 (III) 荘 厳 道 揚 法 に(8) 道 場 観、(9) 大 虚 空 蔵。 (IV) 勧 請 法 に(10) 宝 車 轄、(11) 請 車 轄、(12) 迎 請 ( 召 請 )。 ( V ) 結 護 法 に(13) 当 部 明 王、 (14) 金 剛 網 ( 虚 空 網 )、(15) 金 剛 炎 (火 院 )。 ( W ) 供 養 法 と し て (16) 關 伽、(17) 華 座、(18) 普 供 養 で あ る。 但 し(8) 道 場 観 に は 印 言 を 説 い て い な い か ら、 こ れ を 十 入 契 印 の 一 つ と し て 観 る こ と に (7) は 古 来 か ら 異 説 が あ る。 と も あ れ、 十 入 道 次 第 は 以 上 の 十 八 の 行 法 を 中 必 に、 加 持 供 物、 表 白、 神 分、 祈 願、 礼 仏 等 が 増 広 さ れ て く る の で あ る。 次 に 醍 醐 な ど で 行 わ れ て い る 別 行 立 の 次 第 に つ い て み て み よ う。 高 雄 真 済 ( 八 〇-八 六 〇 ) の 口 決 と 称 せ ら れ る ﹃ 高 尾 (8) 別 行 抄 ﹄ に よ る と、 ﹃ 金 剛 界 の 行 法 ﹄ に お け る 印 言 を ﹃ 十 入 道 ﹂ に 摂 取 し 寺 ﹃ 十 入 道 の 護 身 法 の 初 に 三 密 観 (No. 6 ) を 修 し、 加 持 香 水 の 次 に 覧 字 観 (No.13)、 観 仏 (No. 16 )、 金 剛 起 (No.17) 等 の 印 言 を 加 え、 更 に 二 種 結 界 の 前 に 四 無 量 観 ( No. 25 )、 勝 願 (...)、 大 金 剛 輪 (No. 28 ) の 三 種 印 言 を、 荘 厳 道 場 の 前 に 金 剛 眼、 召 罪、 擢 罪、 業 障 除、 成 菩 提 の 五 種 の 印 言 を

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(9) 挿 入 し て い る と い う。 こ の こ と は 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 も 同 様 で あ っ て、 供 養 法 に は 三 密 観、 ラ ン 字 観、 観 仏、 金 剛 起、 大 (10) 金 剛 輪 の 印 言 が 組 み 込 ま れ て い る。 金 剛 眼、 召 罪、 催 罪、 業 障 除、 成 菩 提 の 印 言 は 供 養 法 の 次 第 に は な い が、 恵 印 潅 頂 の (11) 滅 罪 潅 頂 法 の 次 第 に 出 て い る の で あ る。 さ て 醍 醐 の 別 行 立 次 第 は 十 八 道 の 印 言 に、 金 剛 界 行 法 の 印 言 を 併 用 す る 方 法 で、 こ れ を 金 剛 界 別 行 立 と い う の で あ る。 こ れ に 対 し 胎 蔵 界 行 法 の 印 言 と 併 用 す る 方 法 を 胎 蔵 界 の 別 行 (12) 立 と い い、 こ れ は 主 し て 台 密 で 行 わ れ る と い う。 別 行 立 と、 十 入 道 独 自 の 次 第 と は 別 視 す る か ど う か は、 流 派 に よ っ て 異 な る と い う。 そ も そ も 別 行 立 の 次 第 を 作 成 し た 動 機 は ﹃ 十 入 道 ﹄ の 行 法 を 修 し て 得 た 究 極 の 世 界 は 金 剛 界、 又 は 胎 蔵 界 の 世 界 と 一 つ で あ る と の 意 向 の も と に 編 纂 さ れ た も の で あ る と み ら れ る か ら、 次 第 の 外 形 的 な 面 に 眼 を 向 け れ ば、 明 ら か に 別 の も の で あ る が、 内 面 的 な 理 念 に 眼 を 向 け る な ら ば、 二 者 は 全 く 同 一 の も の と 観 な け れ ば な ら な い。 醍 醐 流 は 両 者 を 全 く 同 一 視 す る 立 場 を と る の で、 十 八 道 立 即 別 行 立 と し て い る (13) の で あ る。 今 供 養 法 の 大 綱 が 明 ら か に な っ た の で、 醍 醐 の 小 野 流 の 次 第 に つ い て み て み た い。 聖 宝 ( 八 三 二-九〇 九 ) 撰 ﹃ 持 宝 金 剛 念 請 次 第 ﹄ (弘 法 四-七 七 四 ) は 小 野 の 根 本 次 第 と い わ れ て い る。 (14) 淳 祐 ( 八 九〇-九 五 三 ) 撰 ﹃ 聖 如 土 息 輪 念 諦 次 第 ﹄ ( 石 山 次 第 ﹄ ) は 神 分、 五 悔、 五 供 養、 本 尊 加 持、 正 念 諦、 後 供 養 が 詳 し く 出 さ れ て い る。 ま た 淳 祐 の 時 に 印 信 が 師 の 観 賢 ( 八 五 三-九 二 (15) 五 ) か ら 授 け ら れ た と い わ れ て い る。 元 呆 ( 九 一 四-九 九 五 ) 撰 ﹃ 聖 如 意 輪 観 自 在 菩 薩 念 諦 次 第 ﹄ は 小 野 の 基 本 と な る が、 こ の 次 第 に つ い て は 栂 尾 祥 雲 博 士 が ﹃ 秘 密 事 相 の 研 究 ﹄ の 中 (16) で、 印 言 次 第 に つ い て 学 術 的 に 詳 し く 述 べ て お ら れ る。 栄 然 ( 二 七 一-一 二 五 七 ) 作、 栄 海 ( 一 二 七 八-一 三 四 七 ) 補 ﹃ 聖 如 意 輪 観 自 在 菩 薩 念 諦 次 第 ﹄ は ﹃ 石 山 次 第 ﹄ を も と に 表 白、 神 分、 (17) 祈 願、 礼 仏 を 附 加 し て い る。 栄 海 撰 ﹃ 略 念 調 次 第 ﹄ は 元 果 の 次 第 と 大 差 は な い が、 ﹃ 勧 随 通 用 次 第 ﹄ と し て 刊 行 さ れ て い て、 内 容 が よ く 判 る の で あ る。 こ れ 等 の 諸 次 第 や、 上 述 の 十 入 道 関 係 の 諸 次 第 を 対 照 す れ ば、 別 紙 38-4 0 頁 の 表 の 通 り で ぎ よ う あ る。 尚 こ の 他 に 叡 尊 ( 一 二 〇 一-一 二 九 〇 ) 撰 ﹃ 如 意 輪 念 諦 頸 次 第 ﹄ が あ り、 こ こ に は 表 白、 祈 願、 発 願、 勧 請、 小 祈 願、 (18) 随 心 廻 向、 作 法 等 が 詳 細 に 記 さ れ て い る と い う。 こ の よ う に 供 養 法 は 十 入 道 立、 或 は 別 行 立 等 の 次 第 を も と 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 に 組 織 さ れ て く る が、 そ の も と は ﹃ 十 八 契 印 ﹄ に あ る と み て よ い。 ﹃ 十 八 契 印 ﹄ に 別 行 立 の 印 言、 五 悔、 神 分、 表 白 等 諸 作 法 が 附 加 し て、 内 容 が 増 広 し て く る の で あ る が、 こ の 点 は 広 沢 の 方 も 同 様 で あ る。 五 悔 が 増 広 さ れ た の は 寛 平 法 皇 ( 八 六 七-九 三 一 ) の 次 第 に 出 る と い わ れ、 こ れ は 大 師 の ﹃ 十 八 道 次 第 ﹄ を も と に 附 加 し た も の と い わ れ て い る。 ま た 守 覚 法 親 王 ( 一 一 五-一 二 二 ) の 次 第 に は、 表 白、 神 分、 祈 願 を 別 紙 に 認 め、 ま た 同 じ く 守 覚 法 親 王 の 次 第 で は、 表 白、 神 分 を (19) 加 う と い わ れ、 神 分、 表 白 等 は 淳 祐 の 頃 よ り 以 後 の 附 加 の よ う に 見 ら れ る。 以 上 右 余 曲 折 を 経 て 来 た が、 小 野 の 供 養 法 の 綱 格 が 明 ら か に な っ て 来 た の で、 修 験 の 儀 軌 と の 対 応 が 可 能 と な っ て 来 る。 三、 恵 印 法 流 の 供 養 法 恵 印 法 流 の 儀 軌 次 第 を、 小 野 流 の そ れ と 対 照 し て み る と、 特 に 増 広 さ れ た 部 分 は 次 の(14) 辟 除 魔 民、(15) 怖 魔、(21) 登 覚 台、 (26) 法 界 円 満、(27) 仏 果 輪 縁、(30) 地 天、 駒 入 門 印、(34) 合 門 生、 (38) 大 智 慧、(40) 金 剛 摩 尼 転 成 福 智、(46) 法 螺、(48) 度 欠 思 議、(63) 環 輪 円 成 等 で あ る。 こ れ 等 の 印 言 は 主 と し て 恵 印 潅 頂 の 竜 樹 法 に 出 る も の で、 そ れ は 修 験 の 覚 悟 の 世 界 を 示 す も の で、 修 験 の 特 色 を 知 る に は 重 要 な 資 料 と な る。 上 記 印 言 に つ い て 記 し た も の に は、 ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ ( 三 昧 耶 普 通 次 第 と 略 す 日 蔵 ﹄ 四 六 -三 二 )、 ﹃ 霊 異 相 承 恵 印 儀 軌 ﹄ ( 日 蔵 四 六-七 五 )、 ﹃ 玄 深 口 決 ﹄ ( ﹃日 蔵 ﹄ 四 六-一 二 四 )、 ﹃ 三 昧 耶 法 口 決 ﹄ ( 日 蔵 ﹄ 四 六 -一 八 〇 )、 ﹃ 竜 樹 法 ﹄ ( 聖 典 ﹄ 一 九 七 )、 ﹃ 覚 悟 潅 頂 伴 子 手 控 ﹄ ( 聖 典 ﹄ 二 五 九 ) 等 で あ る。 こ れ 等 の 儀 軌 の 内、 ﹃ 霊 異 相 承 恵 印 儀 軌 ﹄ は 聖 宝 を 極 め て 神 格 化 し た 修 験 の 色 彩 の 濃 い も の で あ り、 他 の 諸 儀 軌 は 普 通 の 密 教 の 立 場 に 立 っ て 修 験 を 密 教 化 し た も の で あ る。 修 験 独 自 の 印 言 の 出 典 に つ い て は ﹃ 日 本 仏 教 ﹄ 40 号 第 一 図 に 示 し た が、 今 そ の 内 容 を 示 し て み た い。 (14) 辟 除 魔 民 ( び ゃ く じ ょ ま み ん )。 ﹃ 玄 口 ﹄ に よ れ ば ﹁ 蓮 華 部 三 摩 耶 印 也。 功 力 に 依 っ て 大 小 の 罪 障 を 消 除 し、 身 心 清 潔 を 得、 即 ち 蓮 華 部 主 宰 と 成 る ﹂ ( 四 六 -一 二 四 ) と 説 き、 ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ に は "om kili-kili-vajra ( 歓 呼 金 剛 よ 垢 繊 を 擢 伏 せ よ ) の 真 言 を 出 す ( 四 六 -三 二 )。 キ リ キ リ 金 剛 は 金 剛 軍 茶 利 の 異 名 で あ る。 こ の 真 言 は 密 教 の ﹁ 十 八 道 ﹂ の(13) 加 持 香 水、(14) 加 持 供 物 の 時 に 浄 化 す る 作 法 と し て

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(20) 用 い ら れ て い る。 尤 も 加 持 香 水 の 時 に は 甘 露 軍 茶 利 の 真 言

om amrte hum phat

を 用 い る こ と も 多 い が、 そ れ は 流 派 に よ っ て 定 ま る の で あ る。 と も に 浄 化 す る 真 言 な の で あ る。 (15) 怖 魔。 ﹃ 玄 口 ﹄ に よ れ ば ﹁ 最 正 覚 を 成 ぜ ん と 欲 す る 者 は、 て ん じ よ 先 づ 諸 の 魔 を 珍 除 し、 秘 供 養 を 行 じ、 然 し て 後 に 菩 提 を 証 す ﹂ ( 四 六-一 二 五 ) と あ り、 ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ は 次 の 真 言 を 出

す。"namah samanta-buddhanam maha-balavati

dasa-balodbhave maha-maitreya abhyudgate svaha"

( 四 六 -三 二、 帰 命、 大 力 あ る も の よ、 十 力 の 顕 現 よ、 大 慈 を 発 生 す る も の よ ) と あ る。 こ れ は 密 教 の ﹁ 胎 蔵 法 ﹂No. 74 怖 魔 の 真 言 (21) を そ の ま ま 採 り 入 れ て い る。 先 の 辟 除 魔 民 の 金 剛 軍 茶 利 の 真 言 の 趣 旨 と 同 様、 魔 性 を 降 伏 す る こ と に よ り、 一 切 が 浄 化 さ れ、 こ こ に 始 め て 菩 提 が 証 得 さ れ る と し て い る の で あ る。 (21) 登 覚 台。 ﹃ 法 口 ﹄ に 法 界 定 印、 真 言 は " om sarva samaya bodhi-sattva siddhi" ( 一 切 平 等 な る 菩 薩 の 世 界 の 成 就 ) と あ り、 ﹁ 此 の 真 言 の 功 力 に よ っ て 更 に 覚 心 を 退 か ず、 た と え 禁 戒 を 破 る と 錐 も 答 な し。 能 く 諸 々 の 心 魔 を 除 き、 寂 静 と し て 散 せ ず、 心 楽 忽 に 成 じ 疾 く 菩 提 正 智 に 満 つ ﹂ と あ る ( 四 六 -一 八 〇 )。 ま た ﹃ 玄 口 ﹄ に は ﹁ 悲 服 を 被 り て 後 如 来 の 究 覧 を 独 歩 す る の 義 也 ﹂ ( 四 六 -一 二 五 ) と あ る。 こ れ か ら 見 る に、 文 字 通 り さ と り の 世 界 に 入 っ た と い う 確 証 を 示 し た も の で あ る。 (26) 法 界 円 満。 ﹃ 玄 口 ﹄ に ﹁ よ れ ば 一 切 如 来 の 法 界 広 博 蔵 皆 悉 く 円 満 す ﹂ ( 四 六-一 二 五 ) と あ る。 ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄、 ﹃ 法 口 ﹄ に 真 言 を 出 す も、 悉 曇 文 字 の 判 読 は 困 難 で あ る。 し か し ﹃ 玄 口 ﹄ の 趣 旨、 並 に ﹃ 聖 典 ﹄ ( 一 九 八 ) の 文 字 か ら 見 て、 " Namo tathagata-vipula-garbha (帰 命、 如 来 の 広 博 な る 心 の 結 縁 ) と 解 さ れ る。 ﹃ 法 口 ﹄ に よ れ ば ﹁ 古 仏 の 果 位 に 大 法 輪 を 転 じ て、 行 者 を 加 持 慰 誘 し て 意 願 を 成 じ。 諸 々 の 人 天 を し て 仏 果 を 結 縁 せ し む ﹂ ( 四 六-一 八〇 ) と あ る。 つ ま り 無 限 の 真 理 を 自 ら 体 得 す る と と も に、 真 理 を 教 授 す る 利 他 行 が 満 足 出 来 る 境 地 を 指 し 示 し た も の と 解 さ れ る。 (27) 仏 果 輪 縁。 ﹃ 法 口 ﹄ に は 法 界 定 印 を 結 ぶ と あ り、 ﹁ 三 毒 を 擢 破 し、 心 王 を し て 寂 静 な ら し め ﹂、 ﹁ 頓 に 自 証 無 疑 心 を 証 す ﹂ ( 四 六-一 八〇 ) と あ る。 真 言 を 出 す も 文 意 は 不 明 で あ る。 ﹃ 玄 口 ﹄ に は ﹁ 仏 果 は 四 術 最 上 無 上 の 地 果 也。 彼 の 仏 果 の 無 量 広 大 に 随 喜 す、 願 く は 転 法 輪 を 諸 尊 の 行 者 に 与 え 玉 へ と、 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教( 2)

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密 教 文 化 是 に 諸 尊 の 縁 を 結 ぶ 義 な り と ﹂ ( 四 六-一 二 五 ) と 説 い て い る。 (30) 地 天。 ﹃ 玄 口 ﹄ に よ れ ば ﹁ 不 生 不 滅 の 三 摩 地 を 請 乞 す。 よ っ て 大 地 の 鉢 印 を 結 ぶ の 義 ﹂ ( 四 六-一 二 五 ) と あ り ﹃ 竜 樹 法 ﹄ に は ﹁ 大 地 を 堅 固 に し 諸 障 災 を 除 い て 皆 悉 く 成 就 を 獲 得 す ﹂ ( 聖 典 一 九 八 ) と 説 き、 真

言 "om prtiviye bandha siddhi"

( 地 神 よ 固 く 結 び 成 就 を 与 え よ か し ) と あ り、 自 巳 自 身 の 心 内 を 堅 固 に し て 障 擬 を 除 き、 悉 地 を 得 る こ と を 示 し て い る。 (33) 入 門 印。 ﹃ 法 口 ﹄ に は ﹁ 此 の 印 明 の 功 力 に よ っ て 正 覚 智 門 に 入 り、 究 黄 の 智 力 を 円 満 す。 即 ち 速 に 十 地 と、 等 妙 覚 と、 理 智 倶 密 と の 十 三 果 を 得 ﹂ ( 四 六 -一 八 〇 ) と あ り 真 言 を 出 す。 し か し 特 殊 な 究 文 を 集 め た の か 文 意 は 不 明 で あ る が、 " bodhi" を 十 三 回 繰 り 返 し 唱 え る こ と は、 す べ て が 仏 果 の 証 得 に あ る こ と を 意 味 す る 真 言 と 解 さ れ る。 ﹃ 玄 口 ﹄ に は ﹁ 十 界 皆 仏 果 な り と 観 じ て 化 度 を 垂 れ 高 下 な し。 入 る べ き に 門 な し。 故 に 十 界 の 仏 果 の 上 に 身 口 意 の 金 剛、 仏 果 に 随 喜 し、 三 密 門 に 入 る の 義 な り ﹂ ( 四 六-一 二 六 ) と 述 べ て い る。 即 ち 仏 教 の 示 す 究 極 の さ と り を 証 得 す る だ け で は な く、 密 教 の さ と り も 体 得 し 最 高 の 修 験 の さ と り に 入 る と い う 確 証 を 示 す も の と み ら れ る。 (34) 合 門 生。 ﹃ 法 口 ﹄ に は ﹁ 如 来 の 心 と 凡 夫 の 心 と 互 に 相 影 現 渉 入 し て 合 し て 一 体 と な り 隔 歴 有 る こ と な し。 有 漏 智 を 催 滅 し て 無 漏 智 を 生 じ、 自 性 の 心 蓮 華 を 開 示 悟 入 す ﹂ ( 四 六 -一 八〇 ) と あ る。 ﹃ 玄 口 ﹄ に は ﹁ 父 母 所 生 の 身、 諸 尊 の 三 昧 耶 に 依 っ て 両 部 合 し て 理 智 不 二 会 を 作 出 し、 然 る 後 十 界 仏 果 を 成 じ、 三 密 金 剛 の 仏 果 を 浄 め 本 尊 身 を 成 ず る 義 ﹂ ( 四 六 -一 二 六 ) と 説 い て い る。 先 の 入 門 印 を 受 け て 仏 果 を 証 得 し た 喩 伽 の 境 を 示 し た も の と み ら れ る。 真 言 を 出 す も 文 意 不 明。 (38) 大 智 恵。 ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ に よ る と 大 慧 刀 印 を 結 ぶ と い う ( 四 六-三 五 )。 真 言 は "Namah samanta

prajna he samanta mani ah jnaye?

( 普 き 諸 仏 に 帰 命 し 奉 る。 般 若 よ、 お お す べ て の 宝 珠 よ。 大 悲 の 心 よ (ah) 了 達 せ よ、 煩 悩 よ 催 け よ 催 け よ ) と あ り ﹁ 有 為 の 痴 種 を て ん 消 珍 し て 無 為 の 智 光 を 流 現 す ﹂ と 説 く。 ﹃ 霊 異 相 承 恵 印 儀 軌 ﹄ は 如 来 の 般 若 塔 印 と 説 き、 ﹁ 有 為 の 痴 種 を 隠 蔽 し て 大 空 の 智 蔵 を 顕 現 し、 般 若 無 尽 蔵 を 成 就 す ﹂ ( 四 六-七 七 ) と 説 く、 ﹃ 玄 口 ﹄ は 神 通 乗 ( 四 六 -一 二 六、 神 変 加 持 の 真 理 ) と 説 く。 (40) 金 剛 摩 尼 転 成 福 智。 ﹃ 霊 異 相 承 恵 印 儀 軌 ﹄ に は ﹁ 秘 蔵 宝

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珠 の 実 体 な り ﹂ と い い、 ﹁ 大 空 智 を 生 じ、 財 宝 は 虚 し か ら ず よ く 貧 乏 の 衆 生 に 富 饒 す る に 足 れ り ﹂ ( 四 六 -七 七 ) と い う。 ﹃ 玄 口 ﹄ で は ﹁ 金 剛 摩 尼 転 じ て 福 智 と な る は 福 と は 如 意 宝 珠 な り、 智 と は 文 殊 大 定 の 智 恵、 殊 は 又 大 宝、 大 空 蔵 即 ち 虚 空 蔵 尊 也。 金 剛 と は 普 賢 の 三 摩 地、 是 れ 全 く 大 乗 の 形 相 な り ﹂ ( 四 六 -一 二 六 ) と 説 く。 即 ち 本 性 の 如 意 宝 珠 を 体 得 す る こ と に よ っ て 福 智 を 自 ら の も の と す る こ と が 出 来 る と い う 意 で あ る。 真 言 を 出 す も 文 意 不 明。 (46) 法 螺。 ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ は ﹁ 法 螺 を 吹 く に 由 り、 菩 提 心 を 進 め て 諸 虎 狼 獅 子 虫 獣 恐 怖 し て 大 集 会 を 守 護 す ﹂ ( 四 六 -三 六 ) と あ り、

"namah samanta buddhanam am"

( 普 き 諸 仏 に 帰 命 し 奉 る。 大 空 の 世 界 に ) の 真 言 を 出 す。 こ れ は 密 教 (22) の 胎 蔵 法No. 91 -(2) 大 法 螺 の 真 言 を 充 て て い る。 ﹃ 玄 口 ﹄ で は ﹁ 大 法 威 力 を 彰 は し、 諸 の 罪 障 を 滅 せ し め る 義 ( 四 六 -一 二 六 ) と 説 く。 修 験 の 結 護 法 に と り 入 れ ら れ て い る の は 罪 障 消 滅 の 義 で あ る。 (49) 度 欠 思 議。 ﹃ 玄 口 ﹄ で は こ の 義 不 詳 と あ る が ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ で は 大 慧 刀 印 を 結 ぶ ﹁ 三 毒 の 性 鬼 を 挑 去 す。 三 毒 の 思 惟 砂 滅 し て 正 思 議 の 光 を 生 じ、 能 く 意 願 を 満 た し、 乃 し 究 莞 覚 に 至 る ま で 正 思 惟 を 失 わ ず ﹂ ( 四 六 -三 六 ) と 説 く。 即 ち 行 者 が 智 恵 の 主 体 と な っ て 働 く こ と を 示 す。 (63) 環 輪 円 成。 ﹃ 玄 口 ﹄ に は ﹁ 諸 の 悪 趣 を 擢 破 し て 法 輪 を 転 し、 円 満 ( 具 ) 足 成 就 の 義 ﹂ ( 四 六 -一 二 七 ) と 説 く。 即 ち 転 法 輪 の 主 体 と な る こ と で 利 他 覚 醒 の 働 き が 完 う せ ら れ る こ と を 示 す の で あ る。 無 所 不 至。 ﹃ 覚 悟 潅 頂 伴 子 手 控 ﹄ ( ﹃ 聖 典 ﹄ 二 六〇 ) に は 次 の 真 言 を 出 す。

"ham bah mam am ha yu bai

hum vam trah"

( 不 動、 釈 迦、 文 殊、 普 賢、 地 蔵、 弥 勒、 薬 師、 観 音、 勢 至、 阿 弥 陀、 阿 閤、 大 日、 虚 空 蔵 の 各 尊 の 種 子 )。 ﹁ 此 の 運 念 は 浄 土 門 内 の 十 三 仏 を 経 歴 す と 想 え ﹂ と あ る。 ま た こ の 十 三 地 は ﹃ 法 界 塔 印 ﹄ ( ﹃ 法 口 ﹄、 ﹃ 霊 異 相 承 恵 印 儀 軌 ﹄ ) と も 同 じ 内 容 で あ り ﹃ 入 門 印 ﹄ の 十 三 果 と も 何 ら か の 関 連 あ る も の と 思 わ れ る。 密 教 に お い て は 無 所 不 至 印 は ﹃ 大 日 経 ﹄ に 出 る。 ( 大 正 一 八 -一 八 b ) も の で、 大 日 如 来 の 最 極 秘 印 の 一 と さ れ る。 ま た こ の 異 名 に 大 卒 都 姿 印、 塔 印、 大 慧 (23) 刀 印、 大 日 剣 印、 無 尽 蔵 印 と も 呼 ば れ て い る。 大 日 如 来 の 究 極 の 世 界 を 象 徴 的 に 示 し た も の で あ る。 修 験 の 無 所 不 至 印 も 当 時 の 信 仰 を 総 括 し た も の と み ら れ る の で あ る。 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 以 上 修 験 の 儀 軌 に 出 る 独 自 な 印 言 に つ い て 見 て 来 た の で あ る が、 修 験 は そ の さ と り を 竜 樹 の 浄 土 と し て み て い く か ら、 様 々 な 儀 礼 も 密 教 と は 異 な っ た も の が 必 要 と さ れ、 こ の 立 場 を 貫 い て 新 な 印 言 が 考 察 さ れ て 来 た と み て よ い。 し か し 印 言 や 解 釈 を 見 る と そ の も と は 密 教 の 印 や 真 言 か ら の 変 容 で あ る こ と が 分 り、 密 教 を 土 台 と し て 独 自 な も の を 作 り 出 し た と も 見 ら れ る の で あ る。 ま た 印 言 の 解 釈 に つ い て も ﹃ 玄 口 ﹄ は 非 常 に 密 教 の 立 場 に 近 い も の が 見 ら れ、 ま た 聖 宝 を 神 格 化 し て 説 く ﹃ 霊 異 相 承 恵 印 儀 軌 ﹄ に は 修 験 の 色 彩 が 強 く 出 る 等 興 味 あ る 対 称 が 見 ら れ る の で あ る。 と も あ れ こ れ 等 の 印 言 が 主 と な り、 修 験 の 供 養 法 等 に 生 か さ れ、 独 自 の 儀 軌 を 作 り 上 げ て い っ た こ と は 注 目 し て よ い こ と で あ る。 次 に 修 験 の 信 仰 は そ の 本 質 が 山 岳 信 仰 に 基 づ く も の で あ る か ら、 崇 拝 対 象 も 真 言 密 教 と は 自 ら 異 な る。 こ の 問 題 に つ い て は 別 に 一 章 を 設 け て 述 べ な け れ ば な ら な い が、 本 章 に お い て は ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 法 ﹄ の 次 第 に 現 わ れ た 神 分、 礼 仏、 道 場 観 に つ い て 述 べ て み た い。 神 分 で は ﹁ 外 金 剛 部 金 剛 天 を 初 め 奉 り、 三 界 所 有 の 天 王 天 衆、 大 日 本 国 王 城 鎮 守 諸 大 明 神、 天 照 大 神、 八 幡 大 菩 薩 等、 六 十 余 州 の 大 小 神 祇、 殊 に は 大 峰 蔵 王 権 現、 地 主 金 精 大 明 神、 神 砂 大 王、 子 守、 勝 手、 天 之 川 神 社 等、 満 山 諸 神、 別 し て は 熊 野 三 所、 葛 城 護 法 等、 本 命 元 辰、 諸 宿 曜 等、 焔 摩 法 皇、 太 山 部 君、 司 命 司 録、 冥 官 冥 衆、 当 年 行 疫 流 行 神 等 ⋮﹂(日 蔵 ﹄ 四 六-三 一) の 数 多 く の 神 々 の 名 を 挙 げ て 称 賛 し、 更 に 祈 願 を す る た め に 金 を 打 ち、 併 せ て 奉 謝 の 念 を 捧 げ る 諸 尊 は 摩 詞 毘 盧 遮 那、 竜 樹、 不 動、 愛 染、 金 剛 蔵 王、 太 山 部 君 等 ( 四 六 -三 三 ) で あ る。 こ の 神 分 で は 多 く の 神 々 の 名 が 出 る が、 こ の 中 で 核 心 と な る べ き も の は 蔵 王 権 現 を 始 め と す る 吉 野 の 地 神 で、 そ れ は 金 精、 子 守、 勝 手、 深 砂 ( 山 の 精 )、 天 川 弁 財 ( 水 の 神 ) で あ る。 こ の 主 神 を も と に 熊 野 信 仰、 葛 城 信 仰、 更 に は 日 本 国 の 入 百 万 の 神 々、 民 間 信 仰 の 神 々 等 を 併 せ て 讃 嘆 し て い る の で あ る。 金 を 打 ち 奉 謝 の 念 を 捧 げ る 諸 尊 は、 神 分 作 成 当 時 特 に 信 仰 さ れ て い た 尊 と 考 え ら れ る。 礼 仏 で は 摩 詞 毘 盧 遮 那、 竜 樹、 不 動、 愛 染、 金 剛 童 子、 深 砂、 弁 財 と 一 乗 峰 中 の 諸 尊 で あ る ( 四 六 -四 二 )。 こ の 中 一 乗 峰 中 の 諸 尊 を 除 い た 七 尊、 又 は 更 に 毘 盧 遮 那 を 除 い た 六 尊 は 恵 印 法 流 の 儀 ﹂軌 に 共 通 に 出 る 尊 で あ り、 そ の 源 は 聖 宝 に ま で 湖 る も の と 見 ら れ る の で あ る。

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道 場 観 は 別 に 有 り と し て 明 記 さ れ て い な い。 し か し ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 六 壇 法 儀 軌 ﹄ ( ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 一 四 四 ) に は 前 記 恵 印 法 流 の 主 要 尊 で あ る 大 目、 竜 樹、 愛 染、 金 剛 童 子、 深 砂、 弁 財 の 六 尊 に つ い て 道 揚 観 が 示 さ れ、 ﹃ 聖 典 ﹄ に は ﹃ 不 動 明 王 法 ﹄ ( 聖 典 ﹄ 一 八 九-一 九 五 ) が あ り、 こ の 中 に 不 動 の 道 場 観 が 記 さ れ て い る ( 一 九 二 )。 こ れ 等 ﹃ 聖 典 ﹄ に 出 る 諸 尊 法 は、 け ぎ よ う 恵 印 法 流 の 加 行 法 で あ る 弁 財 天 法 を 基 礎 と し て い る の で、 諸 尊 は す べ て S U 字 ( 弁 財 天 の 種 子 ) か ら 生 じ、 様 々 な 徳 が 積 集 し て 諸 尊 が 出 生 す る よ う に 説 か れ て い る。 密 教 の 供 養 法 は 十 入 契 印 を も と に 十 入 道 の 次 第 が つ く ら れ、 更 に 十 入 道 の 次 第 を も と に 諸 尊 の 特 色 あ る 印 言 が 附 加 さ れ て 供 養 法 が 成 立 し た こ と は 既 に 述 べ た と こ ろ で あ る。 た と え 別 行 立 で あ っ て も 十 入 道 は 供 養 法 の 基 礎 で あ り、 念 諦 法 の 根 本 に な る も の で あ る。 そ れ 故 十 入 道 は す べ て 事 相 の 基 礎 と け ぎ よ う な る か ら 加 行 の 第 一 番 に 行 う 重 要 な 行 法 な の で あ る。 今 の 恵 印 法 流 に お い て も、 供 養 法 は 十 入 道 を 基 礎 と し て お り、 そ の 儀 軌 次 第 の 根 幹 は 醍 醐 の 教 学 に 基 づ い て い る の で あ る か ら 最 も 基 本 的 な 事 相 の 次 第 で あ る。 し た が っ て そ れ は ま た 修 験 の 行 法 の 基 礎 で あ る か ら、 修 験 の 加 行 法 に な る の で あ る。 修 験 の 加 行 法 は 何 故 弁 財 天 を 基 礎 と す る の で あ ろ う か。 恵 印 法 流 の 儀 軌 類 に は 竜 樹、 金 剛 童 子 な ど と と も に 古 く か ら 信 仰 さ れ て い た 尊 で あ る が、 山 は 雲 を 呼 び、 雨 を 降 ら し、 豊 か な 水 源 と な る こ と か ら、 古 代 農 耕 社 会 に お い て 水 神 で あ る 弁 財 天 の 信 仰 は と り わ け 重 要 な も の と な る。 そ の 上 大 峰 信 仰 が 金 峯 と 熊 野 の 広 大 な 地 域 に 関 わ り を も つ と、 大 峰 山 系 の 中 央 に あ り 而 も 最 高 峰 の 位 置 に あ る 弥 山 は、 大 峰 山 と 大 峰 信 仰 の 中 心 と な り、 ま た こ こ は 大 分 水 嶺 と な る と こ ろ か ら 弥 山 は 大 峰 の 弥 勒 浄 土 の 世 界 で あ り、 水 源 で あ る と こ ろ か ら 弁 財 天 信 仰 が 高 ま り、 天 然 自 然 の 恵 み の 中 に 一 切 の 富 が 創 造 さ れ る こ と を 諸 仏 諸 尊 の 出 生 と み て い る の で あ る。 恵 印 法 流 の 供 養 法 は 表 面 的 に は 小 野 の 次 第、 特 に 栄 海 の 次 第 と よ く 合 う。 し か し そ の 内 面 を 熟 視 す る な ら ば、 自 然 の 出 会 い、 自 然 の 恵 み、 自 然 の 霊 妙 と の 楡 伽 相 応 を、 密 教 の 儀 軌 次 第 を 通 し て 示 そ う と し て い る の で あ る。 そ し て 自 然 の 究 極 の 世 界 を 弁 財 天 で 象 徴 的 に 示 し て い る の で あ る。 注 (1) 配 本 順 に よ っ て 一 七 巻 と す る 場 合 も あ る。 (2) ﹃ 修 験 聖 典 し 醍 醐 三 宝 院 刊、 昭 和 四 三 年 再 版。 一 五 三 頁 以 下。 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 (3) ﹃ 勧 随 通 用 四 度 聖 教 ﹄ 勧 修 寺 刊、 大 正 一 四 年、 昭 和 四 五 年 再 版 に あ る。 作 法 を 詳 し く 記 し て い る。 (4) ﹃ 弘 法 大 師 全 集 ﹄ 第 四 輯 p 七 七 四 ( 密 教 文 化 研 究 所 ) 昭 和 四 〇 年。 弘 法 大 師 の 撰 と す る も 内 容 か ら み て 大 師 作 で は な い。 神 分、 祈 願 等 聖 宝 以 後 の 附 加 物 も 多 い。 (5) ﹃ 密 教 大 辞 典 ﹄ 法 蔵 館、 昭 和 四 四 年、 P 八 九 〇 中。 ﹃蘇 悉 地 経 ﹄ ( 大 正 一 八、 恥 八 九 三、 P 六 一 四 ) 三 部 の 真 言 が と り 入 れ ら れ る。 (6) ﹃ 弘 法 大 師 全 集 ﹄ 二 -六 三 四、 大 正 一 八、No. 九〇 〇、 弘 法 大 師 作 或 は 恵 果 造 と 言 わ れ て い る。 こ の 十 八 契 印 が 基 礎 と な っ て 十 八 道 次 第 が 造 ら れ る が 写 本 は そ れ ぞ れ 小 異 が あ る。 ﹃ 梵 字 十 八 道 ﹄ ( 弘 法 二 -六 一 三 ) ﹃ 十 八 道 念 請 次 第 ﹄ ( 弘 法 二 -六 一 六 ) 等。 (7) ﹁ 密 教 大 辞 典 ﹄ 法 蔵 館、 昭 和 四 四 年、 P 八 八 八 上。 (8) 栂 尾 祥 雲 著 ﹃ 秘 密 事 相 の 研 究 ﹄ 密 教 文 化 研 究 所、。 P 四 七。 (9) 上 掲 書 P 四 八、 覧 字 観、 観 仏、 金 剛 起 は 上 掲 書 P 二 九 三-P 二 九 四、 四 無 量 観、 勝 願、 大 金 剛 輪、 金 剛 眼 は P 三 二 七-P 三 二 八、 召 罪、 催 罪、 業 障 除、 成 菩 提 は P 三 三 五-P 三 三 七。 (10) ﹁ 日 蔵 ﹄ 四 六 -三 一-三 四。 (11) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六-二 一-二 二。 (12) 栂 尾 祥 雲 著 ﹃ 秘 密 事 相 の 研 究 ﹄ P 四 九。 (13) 上 掲 書 p 四 九。 (14) ﹃ 勧 随 通 用 四 度 聖 教 ﹄ に 出 る。 (15) 栂 尾 氏 上 掲 書 P 一 三 六。 (16) 栂 尾 氏 上 掲 書 P 四 四-P 五 二、 P 二 八 六-P 三 一 八。 (17) ﹃ 勧 随 通 用 四 度 聖 教 ﹄ に 出 る。 (18) 栂 尾 氏 上 掲 書 P 五 三 七。 (19) ﹃ 密 教 大 辞 典 ﹄ P 八 九-P 八 九 一、 栂 尾 祥 雲 著 ﹃ 秘 密 事 相 の 研 究 ﹄ P 四 七-P 四 九 参 照。 (20) 栂 尾 氏 上 掲 書 p 二 九 二-p 二 九 三。 (21) 栂 尾 氏 上 掲 書 p 四 九 一。 (22) 栂 尾 氏 上 掲 書 p 五〇〇。 (23) 佐 和 隆 研 編 ﹃ 密 教 辞 典 ﹄ 法 蔵 館、 昭 和 四 九 年、 p 六 六 六。 第 三 章 護 摩 法 一、 修 験 の 護 摩 の 儀 軌 類 修 験 の 護 摩 法 は 大 別 し て 役 君 伝 と い わ れ る も の と、 聖 宝 撰 と い わ れ る も の と の 二 系 統 が あ る。 役 君 伝 と い わ れ る も の に は 内 護 摩 を 説 く も の と し て ﹃ 柱 源 神 法 護 摩 次 第 ﹄ ( 日 蔵 ﹄ 四 六 -一 二 )、 外 護 摩 を 示 す も の と し て ﹃ 庭 壇 大 護 摩 供 次 第 ﹄ ( 日 蔵 ﹄ 四 六 -一 六 ) と ﹃ 柴 灯 大 護 摩 供 次 第 ﹄ ( ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -一 九 ) が あ る。 ま た 特 に 当 山 派 で 用 い る も の に ﹃ 柴 灯 護 摩 次 第 当 山 方 ﹄ (﹃ 聖 典 ﹄ 八 五 ) が あ る。 ﹃ 庭 壇 大 護 摩 供 次 第 ﹄ は 金 剛 道 揚 図 と し て、 野 外 で 護 摩 を た く 図 を 示 す。 護 摩 壇 は 金 剛 界 の 五 仏 を 表 わ す も の と 観、 そ の 根 本 は 不 動 明 王 で あ る と す る。 そ し て 大 日 が 恋 怒 の 不 動 明

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王 と 一 体 と な る と き、 金 剛 界 の 阿 閾、 宝 生、 弥 陀、 釈 迦 の 諸 仏 は 不 動 明 王 を 中 心 と し た 降 三 世、 軍 茶 利、 大 威 徳、 金 剛 夜 叉 の 五 大 明 王 の 愈 怒 の 智 恵 の 働 き と な っ て、 一 切 煩 悩 を 焼 尽 し、 清 浄 な 心 を 体 得 し て い く こ と を 示 し て い る。 ﹃ 柴 灯 大 護 摩 次 第 ﹄ は 胎 蔵 大 目 の 真 言 を 通 し て、 エ ハ 大 を 観 じ、 有 漏 生 死 の 身 を 焼 尽 し、 本 有 の 六 大 と 相 応 せ し め、 蓮 花 三 昧 経 の ﹁ 帰 命 本 覚 心 法 身 常 住 妙 法 心 蓮 台 本 来 具 足 三 身 徳 三 十 七 尊 住 心 城 ﹂ の 偶 を 唱 え る。 こ こ で は 法 華 の 究 極 の 精 神 を 体 得 す る と と も に、 そ れ は 胎 蔵 大 日 の 世 界 も、 金 剛 界 三 十 七 尊 の 世 界 も と も に 証 得 し た も の で あ る こ と を 示 し て い る。 こ の 役 君 伝 と 伝 え ら れ る 護 摩 法 は 当 山 派 だ け で は な く、 近 世 に お い て は 広 く 本 山 派、 彦 山 派、 羽 黒 派 等 の 派 を 問 わ ず 修 せ ら れ た も の で (1) あ る。 以 上 の 護 摩 法 は 峯 中 で 授 け ら れ る と こ ろ か ら ﹁ 峯 中 法 流 ﹂ と 呼 ば れ て い る。 尚、 当 山 派 で 用 い る ﹃ 柴 灯 護 摩 次 第 当 山 方 ﹄ も、 ﹃ 修 験 聖 典 ﹄ で は 峯 中 法 流 の 部 に 入 れ て い る が、 そ の 内 容 は 前 壇 に 火 天 段 と 本 尊 部 主 段、 後 壇 に 諸 尊 ・ 世 天 段 を 説 く。 火 天 段 は 火 天 を、 本 尊 ・ 部 主 段 は 不 動 ・ 降 三 世 を、 そ し て 諸 尊 ・ 世 天 段 は 五 大 明 王 ・ 世 天 を 勧 請 し 供 養 す る。 こ れ は 役 君 伝 と い わ れ る も の よ り も 聖 宝 撰 と い わ れ る 恵 印 法 流 の 三 昧 耶 護 摩 法 に も 近 い も の が 見 ら れ る の で あ る。 聖 宝 撰 と 伝 え ら れ る 恵 印 法 流 の 次 第 に は ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 護 摩 法 ﹄ ( 日 蔵 ﹄ 四 六-五 二 )、 ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 柴 灯 護 摩 法 ﹄ ( 日 蔵 ﹄ 四 六-五 八 ) と が あ る。 こ の 二 つ は 先 の 峯 中 法 流 の 当 山 方 と 同 様、 修 法 の 内 容 は 火 天 段、 部 主 本 尊 段、 諸 尊 世 天 段 の 三 段 か ら 成 り 立 っ て い る。 こ れ は 東 密 の 小 野 新 本 と い わ れ る 仁 海 作 ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ の 火 天 段、 部 主 段、 本 尊 段、 諸 尊 段、 世 天 段 の 五 段 を 簡 略 に し た 構 成 と 見 ら れ る。 ま た 前 者 の 三 昧 耶 護 摩 法 の 次 第 は、 小 野 新 本 の 次 第 と 可 な り 近 い 内 容 を 持 っ て い る。 そ こ で こ の 章 で は 小 野 流 の 護 摩 法 と 対 照 し て 修 験 の 護 摩 の 特 色 を 探 っ て み た い。 こ れ 等 の 対 照 は 41 -4 3 頁 の 表 を 参 照 の こ と。 二、 密 教 の 護 摩 法 小 野 流 に 伝 え ら れ る 護 摩 法 と し て そ の 内 容 が 詳 し く 知 ら れ る も の は 栄 海 ( 一 二 七 八-一 三 八 七 ) 作 ﹃ 大 日 護 摩 次 第 ﹄ ( 勧 随 通 用 聖 教 ) で あ る。 こ の 次 第 は 元 果 ( 九 一 一-九 九 五 ) の ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ を も と に 栄 海 が 編 纂 し た も の で あ っ て、 供 養 法 の 上 に 五 段 の 護 摩 次 第 を 組 み 合 わ せ、 金 剛 界 法 に 出 る 五 相 成 身 の 印 言 ま で も 取 り 入 れ た 内 容 の 豊 か な、 そ し て ま た、 教 理 の 発 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 展 し た も の を 内 に 含 ん で い る の で あ る。 そ の た め 小 野 流 の 護 摩 法、 ひ い て は 護 摩 の 基 本 的 な 儀 軌 次 第 は 何 か と い う こ と に な れ ば、 他 の 儀 軌 並 に 諸 次 第 を も 比 較 対 照 し て 問 題 の 本 質 を 探 ら な け れ ば な ら な い の で あ る。 小 野 流 の 次 第 と し て は 仁 海 ( 九 五 一 -一 〇 四 六 ) の ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄。 覚 俊 (-一 〇 五 九 ) ﹃ 大 聖 不 動 明 王 念 諦 私 記 ﹄。 空 (2) 達 坊 ( 一 三 C ) の ﹃ 伝 法 潅 頂 護 摩 次 第 ﹄。 淳 祐 ( 八 九 〇 -九 五 三 ) (3) の ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ 並 に 聖 宝 ( 八 三 二 -九〇 九 ) の ﹃ 護 摩 次 第 ﹄ が あ る。 ま た こ れ 等 の 諸 次 第 の も と に な っ た も の と し て は、 (4) (5) (6) 大 師 の ﹃ 護 摩 次 第 ﹄、 ﹃ 息 災 次 第 ﹄ ﹃ 護 摩 口 決 ﹄ が あ り、 更 に は 密 教 護 摩 に 直 接 関 係 の あ る も の と し て は ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ ( 大 正 一 八、NO. 九 〇 一、 八 九 一-二 )、 ﹃ 大 日 経 ﹄ ( 大 正 一 八、 翫 八 四 八、 四 二-四 四 )、 ﹃ 略 出 念 諦 経 ﹄ ( 大 正 一 八、No. 八 六 六、 二 五 二 )、 ﹃ 金 剛 頂 喩 伽 護 摩 儀 軌 ﹄ ( 大 正 一 八、 恥 九 八、 九 一 六 -九 二〇 )、 ﹃ 建 立 曼 茶 羅 護 摩 儀 軌 ﹄ ( 大 正 一 八、 臨 九 一 二、 九 二 九 -九 三 四 )、 ﹃ 火 畔 供 養 儀 軌 ﹄ ( 大 正 一 八、No. 九 一 三、 九 三 四 -九 三 六 )、 ﹃ 火 畔 軌 別 録 ﹄ ( 大 正 一 八、 漁 九 一 四、 九 三 六 -九 四 一 )、 ﹃ 尊 勝 軌 ﹄ ( 大 正 一 九、 漁 九 七 三、 三 八 〇 )、 ﹃ 烏 劉 渋 腰 軌 ﹄ ( 大 正 二 一、No. 一 二 二 五、 一 三 五 ) 等 が あ る。 こ れ 等 の 儀 軌 類 は そ れ ぞ れ に 個 性 が あ っ て 一 々 対 照 し て そ の 特 性 を 把 む こ と は 困 難 で あ る。 し か し 部 主、 本 尊、 諸 尊、 世 天 等 の 結 構 に つ い て 分 類、 対 照 し 得 る そ の 内 容 を 示 す と 40 下 -4 1 頁 上 の 表 の 通 り と な る。 密 教 護 摩 の 諸 段 の 構 成 に つ い て は、 各 儀 軌 に よ っ て そ の 内 容 は 広 略 様 々 で あ る が、 も と は 火 天 供 養 が 根 本 で あ っ て、 火 天 を も と に 護 方 の 世 天 を 供 養 す る と い う の が 基 本 的 な 構 成 で あ る。 こ の 基 本 的 な 構 成 を 増 広 し て 部 主 段、 本 尊 段、 諸 尊 段 等 を 加 え て 小 野 流 の よ う な 次 第 が 出 来 上 っ た も の と み る こ と が 出 来 る。 小 野 流 の 五 段 の 内 容 に 発 展 増 広 さ れ た 次 第 も、 部 主、 本 尊、 諸 尊 等 の 勧 請 と、 そ れ 等 の 道 場 観 や 鈎 召 の 真 言 以 外 は 全 く 初 の 火 天 役 の 内 容 と 同 一 な の で あ る。 し た が っ て 護 摩 法 の 特 色 を 見 よ う と す れ ば 各 段 の 勧 請 の 箇 所 と、 混 沌 供 の 後 で 各 尊 に 供 養 す る 尊 名 等 を 見 れ ば よ い こ と に な る。 で は 小 野 流 の 護 摩 次 第 の 印 言 作 法 に 直 接 関 係 す る も の は 何 か と い え ば、 不 空 (七 〇 五-七 七 四 ) 訳 ﹃ 金 剛 頂 喩 伽 護 摩 儀 軌 ﹄、 法 全 ( 九 世 紀 中 ) の ﹃ 建 立 曼 茶 羅 護 摩 儀 軌 ﹄、 並 に ﹃ 火 件 軌 別 録 ﹄ で あ る。 こ の 中 で 特 に 東 密 の 護 摩 法 に 密 接 な 関 係 を 持 っ て い る の は 最 初 の 不 空 訳 ﹃ 金 剛 頂 喩 伽 護 摩 儀 軌 ﹄ で あ る。 こ れ は 息 災、 増 益、 降 伏、 鈎 召、 敬 愛 の 五 種 護 摩 を 説 き 各 壇 の

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炉 形 を 示 す ( 大 正 一 八 -九 一 六 )。 ま た こ こ に 出 る 真 言 は 大 師 (4) (5) (6) 作 ﹃ 護 摩 次 第 ﹄ ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ ﹃ 護 摩 口 決 ﹄ に と り 入 れ ら れ て い る。 そ れ 等 が も と に な っ て 小 野 の 次 第 が 出 来 上 る の で あ る が、 今 栄 海 の ﹃ 大 日 護 摩 次 第 ﹄ に ど の よ う に と り 入 れ ら れ て い る か を 見 て み た い。〇 印 の 中 の 番 号 は ﹃ 金 剛 頂 喩 伽 護 摩 儀 軌 ﹄ に 出 る 真 言 の 順 位 を 示 し、 ( ) の 中 の 番 号 は 栄 海 の 上 記 次 第 に 出 る 印 言 の 番 号 を 示 す。 こ の よ う に し て 両 儀 軌 の 関 連 を 明 ら か に し て み た い。 (1)鍬 ( 1 )、(2) 加 持 泥 塗 香 (-な し 但 し 地 神 )、(3)な 掲 摩 ( 35 )、 (4) 漱 口 灘 浄 ( な し、 栄 海 は 建 立 軌 の 5 番 )、(5) 漱 口 印 ( 29、 65 )、(6) 勧 請 火 天 ( 63 )、(7) 火 天 小 呪 ( 56、 63 )、(8)-(13) 護 摩 法 の 種 類 で 息 災、 増 益、 延 命、 降 伏、 鈎 召、 敬 愛、(14) 滅 悪 趣 ( な し )、(15) 帝 釈 (166)、(16) 火 天 (167)、(17) 焔 摩 (168)、(18) 羅 刹 ( 961 )、(19) 水 天 (170)、(20) 風 天 (171)、(21) 毘 沙 門 (172)、(22) 伊 舎 那 ( 561 )、(23) 梵 天 (173)、(24) 地 天 (174)、(25) 七 曜 (177)、(26) 二 十 八 宿 ( 871 ) で あ る。 ( 但 し、 楡 伽 儀 軌 の 番 号(1) -(5)= 大 正 一 八-九 一 七、(6)-(11)= 九 一 八、(12)-(21)= 九 一 九、(22)-(26)= 九 二 〇 ) 次 に 善 無 畏 系 の 儀 軌 に つ い て み る に、 ﹃ 火 噂 供 養 儀 軌 ﹄ は 息 災、 増 益、 降 伏、 敬 愛 の 四 種 法 を 説 き ( 大 正 一 八-九 三 五 b ) 更 に 供 物 の 造 り 方 や 諸 尊 の 供 養 の 仕 方 を 説 く。 ﹃ 火 畔 軌 別 録 ﹄ は 胎 蔵 法 に 立 っ た 内 容 で、 胎 蔵 大 日 の 三 手 等 の 真 言 "namah

samanta baddhanam om asame trisame samaye svaha"

( 大 正 一 八 -九 三 七 c ) や 一 切 智 々 の 真 言 "a-vi-ra-( 大 正 一 八 -九 三 八 a ) 等 の 胎 蔵 大 日 の 印 言 を 出 す。 世 天 の 真 言 は 十 二 天、 諸 星 天 子、 諸 竜、 一 切 使 者 及 鬼 神 等 の 真 言 が 出 さ れ て い る。 法 潤 口、 法 全 記 の ﹃ 建 立 曼 茶 羅 護 摩 儀 軌 ﹄ ( 大 正 一 八、No. 九 一 二 ) の 印 言 は、 ﹃ 大 日 経 ﹄ 秘 密 八 印 品 所 説 の 種 子 真 言 ( 大 正 一 八-三 七 a ) を 観 じ て 五 体 を 加 持 し ( 大 正 一 八-九 二 九 b ) 自 身 を 曼 茶 羅 と 観 想 す。(1) 道 場 観 の 真 言、(2) 鍬 ( 栄 海 一 )、(3) 塗 地、(4) 掃 地、 の 真 言 を 出 し、 続 い て 息 災、 増 栄、 敬 愛、 降 伏 の 四 種 法 を 示 す ( 大 正 一 八-九 三 〇 b )。 こ の 儀 軌 は 胎 蔵 を 表 に し た も の で、 台 密 の 護 摩 法 の 基 礎 と な る も の と さ れ て い る が、 内 容 に つ い て 検 討 し て み る と 東 密 の 諸 作 法 と は 決 し て 無 縁 で は な い の で あ る。 例 え ば(5) 加 持 香 水 ( 栄 海 六 一 )、(7) 請 召 火 天 ( 栄 海 六 三 )、(9) 加 持 漱 口 ( 栄 海 六 五 ) は 小 野 の 栄 海 の 次 第 と 共 通 の 印 言 な の で あ る。 次 に 栄 海 の 次 第 と 対 照 し た 小 野 の 諸 次 第 に つ い て み て み よ 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 う。 こ の 源 流 は ﹃ 金 剛 頂 玲 伽 護 摩 儀 軌 ﹄ ( 大 正 一 八、 恥 九 〇 八 ) (6) で あ り、 そ れ を も と に、 大 師 の ﹃ 護 摩 口 決 ﹄ 或 は 聖 宝 の ﹃ 護 (3) 摩 次 第 ﹄ が 作 成 さ れ、 そ れ 等 が も と と な っ て 淳 祐 の ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ (石 山 次 第 ) が 成 立 し た と い う。 こ の 次 第 は 安 流 に 用 い、 勧 流、 随 流 に も こ の 次 第 を 用 い る が 行 用 に は 使 用 し て お (7) ら な い と い う。 本 論 で 基 本 儀 軌 と し て 扱 う 栄 海 の ﹃ 大 日 護 摩 次 第 ﹄ は 元 果 の 次 第 を も と に し た も の で あ り、 元 呆 の 次 第 は 淳 祐 の 次 第 を も と に し た も の と さ れ て い る。 た だ こ こ で 問 題 と な る の は 淳 祐 や 元 果 の 次 第 で は 護 摩 の 結 構 は 火 天 -本 尊 -諸 尊-後 火 天-世 天 の 五 段 と な っ て い る が、 こ の よ う な 結 構 は 元 果 の 次 第 ま で で、 次 の 仁 海 の ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ で は 火 天 -部 主-本 尊 -諸 尊 -世 天 の 順 と な る。 こ れ は 部 主、 本 尊、 諸 尊 の 内 容 が 豊 か に な っ た も の で、 密 教 々 理 の 発 展 に よ る も (8) の と み ら れ る。 仁 海 の こ の 次 第 を ﹁ 小 野 新 本 ﹂ ( 小 野 新 流 ) と 名 づ け、 以 後 小 野 流 は こ の 結 構 に よ っ て 次 第 が 組 み 立 て ら れ る の で あ る。 こ れ は 恵 印 法 流 の 護 摩 法 と も 関 連 す る の で あ る。 覚 俊 の ﹃ 大 聖 不 動 明 王 念 請 私 記 ﹄、 空 達 房 の ﹃ 灌 頂 護 摩 作 法 ﹄ は、 そ の 結 構 は 両 者 と も 小 野 新 本 の 通 り と な っ て い る。 し か し 部 主 は 前 者 が 降 三 世、 後 者 が 仏 眼。 本 尊 は 前 者 が 不 動、 後 者 が 胎 大 日 と な っ て い る。 護 摩 の 部 主、 本 尊 に つ い て は 行 者 の 思 想 に よ っ て 一 定 し て い な い。 小 野 流 に お い て は、 淳 祐、 元 果、 仁 海 の 次 第 で は 本 尊 は 大 日 で あ る。 し か し 成 賢 ( 一 〇 二 四 -一 一〇〇 ) の 時 に な っ て ﹁ 十 入 道 ﹂ の 本 尊 は 如 意 輪。 護 摩 の 本 尊 は 不 動 と な る。 こ の こ と が 以 後 の 醍 醐 教 学 の 方 向 を 決 定 し て い く と と も に、 こ の 影 響 下 に あ る 恵 印 法 流 も ま た、 大 き く そ の 立 場 が 決 め ら れ て い く の で あ る。 部 主 に つ い て は 仏 蓮 金 の 三 部、 又 は 仏 金 宝 法 掲 の 五 部 に つ い て そ れ ぞ れ 決 め ら れ る。 例 え ば 大 日 を 本 尊 と す れ ば、 大 日 は 仏 部 の 尊 で あ る か ら 部 主 は 仏 眼 と な る。 元 果、 栄 海 の 次 第 は こ の 立 揚 を と る。 但 し 中 院 流 は 般 若 菩 薩 を 部 主 と す る。 不 動 を 本 尊 走 し た 場 合、 台 密 西 山 流 は 大 日 を 部 主 と し、 醍 醐 は 降 三 世 明 王 を 部 主 と す る。 本 尊 並 に 部 主 の 決 定 は 各 流 派 の 教 (9) 義 に よ っ て そ れ ぞ れ に 決 め ら れ た の で あ る。 さ て こ の よ う に 見 る と 護 摩 法 は 小 野 流 に 限 っ て も 仲 々 複 雑 な 内 容 を 持 っ て い て、 一 見 核 心 は 把 み 難 い よ う に 見 ら れ る。 し か し 護 摩 の 諸 儀 軌、 次 第 を 通 覧 し て み る と 一 つ の 基 本 構 造 が 浮 び 上 っ て く る。 そ れ は 護 摩 の 最 も 根 本 に な る も の は 火 天

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の 請 召 と、 火 天 へ の 供 物 奉 献 と、 火 天 の 奉 送 で あ る。 こ の 一 連 の 所 作 儀 礼 を 仮 に ︹ x ︺ と 呼 ぶ こ と に す る。 こ れ に 併 せ て 世 天 を 供 養 す る。 世 天 は 入 護 方 神 に 梵 地 日 月 宿 星 等 を 加 え た も の で あ る。 部 主、 本 尊、 諸 尊、 と 護 摩 の 段 を 展 開 す る 時、 ︹ x ︺ の 中 の 火 天 を、 そ の 時 に 修 す る 部 主、 本 尊、 諸 尊 に 置 き 変 え て 勧 請 し、 最 後 に 奉 送 す る こ と に す れ ば よ い の で、 他 の 作 法 は 全 く 火 天 の 時 の 作 法 と 同 じ 要 領 で 行 う こ と に な る。 尚 こ の 護 摩 法 に は 火 天 の 段 を 修 す る に 先 だ っ て、 ﹁ 十 入 道 ﹂ に 示 さ れ た 供 養 法 を 修 す よ う に 増 広 さ れ て く る。 覚 俊 の ﹃ 大 聖 不 動 明 王 念 諦 私 記 ﹄ は 別 行 立 の 供 養 法 が 附 加 し、 栄 海 の ﹃ 大 日 護 摩 次 第 ﹄ に は 火 天 段 に 入 る 前 に 十 入 道 の 供 養 法、 表 白、 五 悔、 五 相 成 身 等 の 観 法 ま で が 附 加 さ れ て く る の で あ る。 こ れ を 要 す る に 護 摩 法 は ︹ 供 養 法 ︺ + ︹ x ︺ + ︹ 世 天 ︺ の 基 本 構 造 か ら 発 展 し ︹ 供 養 法 ︺ + ︹図 ︺ + ︹ 図、 ︺ + ︹x ︺ + ︹X︺ + ︹ 世 天 ︺ と い う 形 に な る の で あ る。 修 験 の 護 摩 法 も 基 本 的 に は こ の 構 造 に 依 っ て い る の で あ る。 三、 恵 印 法 流 の 護 摩 法 小 野 流 の 護 摩 法 の 内 容 が 明 ら か と な っ た の で 恵 印 法 流 の 護 摩 法 に つ い て み て い き た い。 ﹃ 修 験 道 章 疏 一 ﹄ 並 に ﹃ 修 験 聖 典 ﹄ を 見 た 限 り 五 段 護 摩 は 見 当 ら な い。 し か し 宮 家 準 氏 は ﹃ 修 験 道 儀 礼 の 研 究 ﹄ で 五 流 尊 滝 院 蔵 ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ を も (10) と に 修 験 の 息 災 護 摩 の 解 説 を さ れ て い る。 そ れ を 見 る と 内 容 は 五 段 護 摩 で、 し か も 栄 海 の 次 第 と 大 差 が 無 い こ と が 分 る。 そ う す れ ば 恵 印 法 流 に お い て も 栄 海 の 次 第 と 大 差 の 無 い ﹁ 息 災 護 摩 法 ﹂ が あ っ た と 見 て よ い。 こ の こ と は さ て 措 き、 ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 部 護 摩 法 ﹄ ( 日 蔵 四 六 -五 二 ) に つ い て 先 づ 眼 を 向 け よ う。 こ の 内 容 は 火 天 段 -部 主 本 尊 段 -諸 尊 世 天 段 の 三 段 で、 そ れ は 小 野 新 本 の 五 段 構 え を 三 段 に 約 し た も の と み ら れ る。 ﹃ 聖 典 ﹄ に 出 る 上 記 護 (11) 摩 法 は 火 天 段 に 先 だ っ て 供 養 法 が あ る。 火 天 段 に つ い て そ の 勧 請 の 箇 所 を 見 る に、 四 管 の 火 天 を 観 想 し、 道 場 観 は ﹁ 此 の 花 炉 中 に 至 り 荷 葉 座 と 成 る。 上 に 男 9 信 字 有 り。 変 じ て 賢 瓶 と 成 る。 又 変 じ て 火 天 身 と 成 る。 白 色 に し て 四 管 を 具 足 す。 右 の 一 手 は 施 無 畏、 二 手 は 念 珠。 左 の 手 は 杖。 二 手 は 軍 瓶 な り。 火 焔 身 に 遍 し ﹂ と あ る。 こ の 道 場 観 は 小 野 流 の そ れ と 大 差 は な い。 勧 請 の 真 言 に つ い て は 小 野 流 は 火 天 の 大 呪 に 四 明

(jah hum vam hoh)

と 鈎 召 (eihi eihi) を 附 し た も の を 唱 え る が、 恵 印 の 息 災 法 は 火 天 の 小 呪 に 息 災 の 語 を 附 し た も の、 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

(16)

密 教 文 化 即 ち、 "

om agnaye santika svaha

( 火 天 の た め に 息 災 よ ) " を 唱 え、 そ の 後 に 四 明 を 唱 え、 更 に 法 螺 を 三 遍 吹 く と あ る。 法 螺 は ﹃ 大 峰 道 場 荘 厳 自 在 儀 ﹄ に よ れ ば ﹁ 大 法 螺 を 吹 く は 諸 の 覚 有 情、 無 漏 の 天 仙、 有 漏 の 神 祇 を 呼 招 し、 道 場 に 堅 住 擁 護 (12) せ し む ﹂。 と あ り、 同 じ く 法 螺 の 徳 を 示 し た 碩 に は ﹁ 法 螺 音 声 一 切 法、 本 不 生 性 寂 浬 契、 恐 二 怖 大 魔 満 二 諸 願 一、 説 二 無 漏 法 一 (13) 消 三 煩 悩 こ と 記 さ れ て い る。 部 主 本 尊 段 は 不 動 尊 と 金 剛 界 大 目 を 勧 請 し て 修 法 を す る。 道 揚 観 は ﹁ 此 花 炉 中 に 至 り て 蓮 華 座 と 成 る。 上 に ham vam ( 不 動、 大 日 の 種 子 ) 字 有 り。 変 じ て 智 劒 と 率 都 婆 と 成 る。 又 変 じ て 不 動 尊 大 日 如 来 と 成 る。 相 好 円 満 に し て 遍 身 火 焔 あ (14) り ﹂ と。 勧 請 の 真 言 は "

om vajranam kam vajra dhatu vam

(15)

ihi eihi svaha"

と あ り、 次 い で 四 明、 法 螺 と な っ て い る。 不 動 を 胎 蔵 大 日 の 教 令 輪 身 と み れ ば、 こ の 修 験 の 不 動 大 日 は 金 胎 不 二 の 大 目 と み る こ と が 出 来 る。 尚 こ の 段 の 最 後 に 弥 陀 定 印(61) を 結 び ﹁ 六 道 ・ 四 生 ( 湿 卵 胎 生 ) を 転 じ、 自 他 の 頂 上 (16) に 満 た し、 愚 痴 煩 悩 を 照 融 し、 疾 く 無 上 大 覚 位 を 証 す ﹂ と 観 じ 金 剛 合 掌、 独 古 印、 智 拳 印、 無 所 不 至 印 を 結 び ﹁ 我 身 を 見 る 者、 我 名 を 聞 く 者、 我 説 を 聴 く 者、 我 心 を 知 る 者 ﹂ と し て そ の も の が 無 上 菩 提 を 証 得 し、 そ れ が ま た 金 胎 大 日、 不 動 の 心 と 一 つ に な る こ と を 示 そ う と し て い る。 諸 尊 世 天 段 で は 金 剛 界 諸 尊、 並 に 護 方 諸 天、 目 月 宿 曜 等 を 勧 請 す る。 道 場 観 は ﹁ 此 花 は 炉 中 に 至 り て ハ 蓮 華 或 は 荷 葉 座 と 成 り、 上 に

vam trah hrih ah hum ru

等 の 字 有 り。 変 じ て 五 智 如 来 の 所 属 の 諸 尊、 十 二 天、 十 二 宮、 七 曜、 二 十 八 宿 と 成 り、 そ の 上 に 座 せ り ﹂ と あ り、 勧 請 の 真 言 " om

va-adhatu vam hum trah hrih ah loka karaya eihi eihi

(17) svaha" を 出 し、 次 い で 四 明、 法 螺 を 説 く。 尚 諸 尊 世 天 供 養 中 に は 胎 蔵 の 中 台 四 菩 薩 を 含 む か ? )。 滅 悪 趣、 十 二 天、 七 曜、 二 十 入 宿、 修 験 恵 印 法 流 の 主 要 尊 で あ る 竜 樹、 不 動、 愛 染、 (18) 蔵 王、 深 砂、 弁 天、 更 に は 諸 天、 諸 部 類 を 加 え た 多 く の 尊 を 礼 す る こ と に な っ て い る。 こ の 諸 尊 は ﹃ 修 験 恵 印 総 漫 撃 擁 ﹄ の 諸 尊 に 近 い も の で あ る。 小 野 流 の 諸 尊、 世 天 は 金 剛 界 三 十 七 尊 と、 十 二 天、 七 曜、 二 十 八 宿 で あ る が 修 験 は 諸 尊 を 増 広 し て い る の で あ る。 次 に 大 き な 問 題 は 滅 悪 趣 尊 の 問 題 が 残 る。 ﹃ 喩 伽 護 摩 儀 軌 ﹄ に は 滅 悪 趣 を 説 く ( 大 正 一 八、No. 九〇 八、 九 一 九 翫 と、 恥 九 〇 九、 九 二 二 a、 但 し 後 者 に は 真 言 も 説 く )。 大 師 作 と 伝 え ら れ

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る ﹃ 護 摩 次 第 ﹄ ( 弘 法 二 -五 八 六 ) ﹃ 息 災 護 摩 次 第 ﹄ ( 弘 法 二 -六 九 一 ) ﹃ 護 摩 口 決 ﹄ に は 滅 悪 趣 尊 を 説 く。 小 野 流 で も 栄 海 の ﹃ 大 日 護 摩 次 第 ﹄ の 中 で は 諸 尊 段 の 次 に 滅 悪 趣 を 説 く。 修 験 の 法 で は 表 に は 出 な い が、 諸 尊 世 天 段 の と こ ろ で 混 沌 供 の 中 に 滅 悪 趣 尊 の 名 が 出 る。 滅 悪 趣 尊 は 煩 悩 邪 悪 を 滅 除 す る こ と を 示 す 尊 で、 そ れ は 火 天 の 一 切 煩 悩 を 焼 尽 す る 働 き と 軌 を 一 つ に す る も の で あ る。 小 野 流 で こ の 滅 悪 趣 尊 が 薄 れ る の は、 胎 大 目 の 教 令 輪 身 と し て の 不 動 明 王 の 念 怒 尊 の 思 想 の 導 入、 金 剛 界 三 十 七 尊 は す べ て 葱 怒 智 の 性 格 を 持 つ こ と、 更 に は そ れ を 徹 底 し た も の が 降 三 世 明 王 で あ る と の 思 想 に よ り、 部 主、 本 尊、 諸 尊 の 段 が 成 立 す る と、 相 対 的 に 滅 悪 趣 の 性 格 が 光 彩 を 失 っ た。 栄 海 の 次 第 に は ﹃ 喩 伽 儀 軌 ﹄ の 根 跡 と し て 滅 悪 趣 尊 が 残 っ て い る と 見 て よ い の で は な い か。 恵 印 法 流 の 護 摩 法 は 小 野 新 本 に 基 づ き、 こ れ の 簡 略 し た も の の 上 に 修 法 次 第 が 成 り 立 つ と み れ ば、 当 然 に 滅 悪 趣 は 護 摩 法 に は 影 の 薄 い 存 在 と な る の で あ る。 し か し 修 験 の 性 格 は も と も と 山 岳 料 撒 の 厳 し い 練 行 に あ る の で、 不 動 尊 に 示 さ れ る よ う な 厳 し い 態 度 が 要 請 さ れ る の で あ る。 し た が っ て 不 動 を 主 尊 と す る 護 摩 法 は 修 験 に は 最 も ふ さ わ し い も の で あ り、 ま た 滅 悪 趣 尊 も 修 験 に と っ て は 捨 て 切 れ る 尊 で は な い。 恵 印 法 流 に お い て は ﹃ 極 印 潅 頂 ﹄ の 滅 罪 潅 頂 に 滅 悪 趣 菩 薩 が 新 に 生 か さ れ て く る (19) の で あ る。 四、 柴 燈 護 摩 次 に 修 験 独 自 の 護 摩 と い わ れ る 柴 灯 護 摩 に つ い て み て み た い。 柴 燈 護 摩 は 修 験 道 に 野 外 に て 修 す る 護 摩。 理 源 大 師 聖 宝 (20) 初 め て 之 を 修 す。 と 伝 え ら れ て い る。 野 外 で 修 す る 護 摩 と い う こ と に な れ ば、 古 く は イ ン ド の 護 摩 法 は そ う で あ る し、 日 本 で も 弘 法 大 師 ( 七 七 四-八 三 五 ) の 在 世 当 時 に は 土 壇 が 用 い (21) ら れ て い た こ と も あ っ た よ う で あ る と い わ れ て い る。 し た が っ て、 聖 宝 が 始 め て 行 っ た か ど う か は 別 と し て、 野 外 の 護 摩 の 伝 統 は 極 め て 古 い も の が あ っ た こ と は 注 目 し て よ い。 恵 印 法 流 に 伝 え ら れ た も の と し て は ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 柴 燈 護 摩 法 ﹄ ( 日 蔵 ﹄ 四 六-五 八 ) が あ る。 こ の 護 摩 法 の 結 構 は 火 天 段、 部 主 本 尊 段、 諸 尊 世 天 段 と な っ て い て、 外 見 の 結 構 は ﹃ 修 験 最 勝 恵 印 三 昧 耶 護 摩 法 ﹄ と 同 じ で あ り、 仁 海 の 小 野 新 本 の 伝 統 に 基 づ い て い る。 た だ 火 天 段 に お い て、 中 央 に 組 ん だ 柴 灯 を 金 剛 界 の 五 仏 と み て い る の で あ る。 柴 灯 の 観 想 は ﹁ 東 方 阿 閤 如 来 の 木 は、 西 方 弥 陀 如 来 の 金 を 以 っ て 之 を 斬 り、 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

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密 教 文 化 中 央 大 日 如 来 の 大 地 ( 土 ) に 置 き、 南 方 宝 生 の 火 を 以 っ て 之 を 焼 き、 北 方 釈 迦 如 来 の 水 を 以 っ て 之 を 漉 ぐ。 こ れ 五 大 の 依 身 を 焼 き 尽 し て 還 帰 せ し む L と あ る。 部 主 本 尊 段 で は、 部 主 と し て 降 三 世 を、 本 尊 と し て は 不 動 を 勧 請 し、 降 三 世 の 大 呪 (23) (25) 並 に 不 動 火 界 叩几 を 唱 え る。 諸 尊 世 天 壇 で は 金 剛 界 五 仏 と 不 動 尊、 十 二 天、 七 曜、 二 十 入 宿 を 勧 請 す る。 ﹃ 柴 灯 護 摩 法 ﹄ は 部 主 本 尊 が 降 三 世、 不 動 と な る 他 は ﹃ 三 昧 耶 普 通 次 第 ﹄ と 大 差 な く、 次 第 も 簡 略 で あ る。 ﹃ 聖 典 ﹄ に は ﹃ 庭 壇 護 摩 供 次 第 ﹄ に、 庭 壇 図 と 護 摩 供 次 第 と を 出 す ( 聖 典 ﹄ 九 三-九 七 )。 こ れ に よ る と、 柴 燈 は 中 央 を 大 日、 四 方 は 阿 閾、 宝 生、 弥 陀、 釈 迦 の 五 仏 と 観 て い る。 そ し て こ れ 等 五 仏 は 不 動、 降 三 世、 軍 茶 利、 大 威 徳、 金 剛 夜 叉 (24) の 五 大 明 王 と 観 じ、 こ の 念 怒 明 王 の 威 力 に よ っ て 臓 悔 滅 罪 が 可 能 と な り、 諸 魔 を 除 き、 仏 果 を 体 得 し、 法 輪 を 転 ず る こ と が 出 来 る と す る。 そ こ に 自 己 と 天 地 が 一 体 と な る 柱 源 の 場 が 開 け る と す る の で あ る。 以 上 修 験 の 護 摩 法 を 見 て 来 た が-柴 燈 護 摩 は 外 儀 に お い て は 独 自 の 作 法 を も っ て い る が-教 義 の 内 容、 儀 軌 次 第 に つ い て は 密 教 の 作 法 と 大 差 は な い。 し か し 修 験 の 護 摩 法 は す べ て 不 動 明 王 を 中 心 と し て い る こ と は、 山 岳 自 然 の 厳 し さ と 恵 み を、 そ し て 山 岳 料 撤 の 練 行 と、 そ れ を 乗 り 越 え て 生 れ 出 る 清 浄 な る 大 空 の 心 を、 大 目 の 教 令 輪 身 で あ る 不 動 を も っ て 示 そ う と し た も の と み ら れ る の で あ る。 注 (1) ﹃ 会 報 ﹄ 一 二。 (2) 勧 修 寺 門 跡 大 円 ( 和 田 大 円 門 跡 ) の 手 記 に よ れ ば ﹁ 空 達 房 定 真 作 一 巻、 空 達 坊 は 理 明 房 の 附 法 に し て 成 宝、 光 宝、 栄 然 等 と 同 門 な り ﹂ と あ る。 (3) ﹃ 弘 法 大 師 全 集 ﹄ 第 四 輯 一 三 巻 p 八 二 六 ﹁ 弘 法 大 師 ﹂ ﹁ 理 源 大 師 聖 宝 ﹂ の 両 説 が あ る。 多 分 聖 宝 作 で あ ろ う。 ﹃ 仏 書 解 説 大 辞 典 ﹄ 三 巻 p 三 一 八 -三 段。 (4) ﹃ 弘 法 大 師 全 集 ﹄ 第 二 輯 七 巻 p 六 八 六。 (5) 上 掲 書 p 六 九 一。 (6) 上 掲 書 p 七 五。 (7) 栂 尾 祥 雲 著 ﹃ 秘 密 事 相 の 研 究 ﹄ P 五 七 〇。 (8) 高 井 観 海 著 ﹃ 密 教 事 相 大 系 ﹄ 山 城 屋 文 政 堂、 昭 和 二 八 年、 p 三 八 三 ﹁ 小 野 新 流 ﹂ と も い う。 (9) 栂 尾 祥 雲 著 ﹃ 秘 密 事 相 の 研 究 ﹄ P 九 一 参 照。 (10) 宮 家 準 著 ﹃ 修 験 道 儀 礼 の 研 究 ﹄ 春 秋 社、 昭 和 四 六 年、 P 三 七 六-三 八 四。 (11) ﹃ 修 験 聖 典 ﹄ 修 験 聖 典 編 纂 会、 昭 和 二 年、 P 二 〇 八-P 二 一 三。 (12) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -六 一 下。

(19)

(13) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -六 一 下。 (14) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 三 下。 (15) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 三 下。 (16) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 四 上。 (17) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 五 上。 (18) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 五 下 -五 六 上。 (19) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -二 一 上 -二 二 下。 (20) ﹁ 密 教 大 辞 典 ﹄ 法 蔵 館、 昭 和 六 年、 P 七 六 a。 (21) 亀 井 宗 忠 著 ﹃ 護 摩 の 歴 史 的 研 究 ﹄ 山 喜 房 仏 書 林、 昭 和 四 二 年、 p 八 〇。 (22) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 八 上。 (23) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -五 八 下。 (24) ﹃ 日 蔵 ﹄ 四 六 -一 八 上。 (25) 修 験 聖 典 ﹄ 修 験 聖 典 編 纂 会、 p 九 六。 供 養 法儀 軌 次 第 出 典表(左 は次 第 の番 号、 右 は原 典 の頁 数) 10. 修験最勝慧印三昧耶普通次第 日蔵46-31 22. 修験 最 勝 慧印 三昧耶 法玄 深 口決 日蔵46-124 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

(20)

密 教 文 化 25. 神 変 大 菩 薩 供 養 法 日蔵46-146 26. 理 源 大 師 供 養 法 日蔵46-151 30. 大 峰 界 会 萬 行 自在 次 第 日蔵46-164 20. 修 験 慧 印 三 昧 耶 引 導 法 日蔵46-101 修験 聖 典 P. 175頁 以下

(21)

無 量 寿如 来観 行 供 養儀軌 大正19. No.930. P. 67以 下 観 自 在 菩 薩 如 意 輪 念 諦 儀 軌 大 正20. No. 1085. P. 203以 『下 十 八 契 印 大 正18. No.900. P. 782以 下 1. 持 宝金 剛 念踊 次第(聖 宝)弘 法 大師 全集4 P. 774以 下 2. 聖 如意 輪 念論 次第 石 山内供 勧随通 用 3. 聖 如 意 輪観 自在 菩薩 念諦 次第 栄然 勧 随通用 4. 略 念 論私 次第 栄 海 勧 随通用 15 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

(22)

密 教 文 化 護 摩 法 次 第 出 典 表(左 は次 第 の番 号、 右 は原 典 の頁 数) 大 日護摩次第(栄 海) 勧随通用 12 息 災護 次 第(小 野 新本 仁海) 勧随 通 用 11 大聖 不動 明王 念 調私記(覚 俊) 勧 随通 用 13

(23)

伝 法 灌頂 護摩 次 第(空 達 房) 勧随 通用 14 10. 息 災護 摩 次第(石 山淳祐) 勧 随通 用 10 護摩 次 第(聖 宝)弘 法大 師全集4 P. 826以 下 修 験 最勝 恵 印三昧耶 護 摩法 日蔵46-52 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

(24)

(25)

1. 修験恵 印法流 の供 養法 の次 第 と密 教の次 第 の対照 表(そ の2) 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

(26)

密 教 文 花 2. 護摩 の結構 対照 表 亀 井宗 忠 著 『護 摩 の歴 史的 研 究』 山喜房 仏 書林 昭和42年 P. 145-146参 照 高 井観 海 著 『密教 事相 大系』 山城屋 文政 堂:昭 和44年 FP. 383参 照 栂 尾祥 雲著 『秘 密 事相 の研 究」 密教 文化研 究 所 P. 89参 照

(27)

3、 密 教 の 護 摩 法 と 修 験 の 護 摩 法 と の 対 照 表 ( そ の 1 ) 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

(28)

密 教 文 化 ( そ の 2 ) ( そ の 3 ) ( そ の 4 )

(29)

(昭 和51年 度 文 部 省 科学 研 究 費 『奨 励 研 究B』 『密 教 経軌 真 言対 照研 究 』 の 研 究 成 果 の一 部) ( そ の 5 ) 修 験 恵 印 法 流 の 儀 軌 と 密 教 (2)

参照

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