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幻のオックスフォード留学記

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Academic year: 2021

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法律学の世界においても,近代法が当然の前提としてきた法的な男女二分法の正統 性を疑問視する有力な見解が現われている2 )

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を執筆し,発表を予定している(その後公表した。後出⑤,⑥ 参照)。また,わが国でも, 出生届の性別記載について猶予が認められている事実は産科医や法律家,戸籍事務 担当者らにあまり知られていないようなので,これを社会に発信すべく専修大学創 立140周年記念・法学部140回連続講演において報告することになっている3 ) 第4に,生殖補助医療の1つである代理母出産による出生子の親子法上の地位に 関する研究を行った。イギリスは羊についても人間についても世界最初の体外受精 に成功した国であり,かつ体外受精およびそれを応用した代理母出産についてその 適正な利用のために国家的規制立法をいち早く制定させた国であるが(1985年ヒト 受精および胚研究法,1990年改正。The Human Fertilisation and Embryology Act),近 年の医療のグローバル化に伴って,規制の厳しいイギリス国内を避けて海外(イン ド,アメリカ,ウクライナ等)で代理母出産によって子を得て帰国し,法的親子関係の 成立を求める訴訟が増加した。これまではイギリス国内法を潜脱して海外で実施さ れた代理出産によって生まれた子と依頼者夫婦との法的親子関係の成立を裁判所は 認めなかったが,2014年の重要な事例(Re X事件)を転機に,裁判所は生まれた子の 利益を最優先して,脱法的に海外で実施された代理出産による場合でも,依頼者夫 婦と出生子との間に法的親子関係の成立を認めるに至った。このRe X(Surrogacy: Time Limit)判決については英米家族法判例研究会(三木妙子早稲田大学名誉教授主宰, 2016年12月17日)において報告したうえで,近く公表の予定である(後出④参照)。 私は,研究期間を終えた後は教育に注力したいと考えているので,研究成果の執 筆も可能な限り研究期間内に終わらせるように努めた。研究期間の前半は文献の読 解を主とし,執筆は従とし,研究期間の後半は成果の執筆を主とし,文献読解は従 とした。この方針に従って,以下の3点については研究期間内に執筆し公刊した。 ①「イギリス判例法における『家庭内離婚』」(専修法学論集129号,2017年3月刊) ②「同意能力を有しない未成年者に対する妊娠中絶が認められた事例─ Re X(A

Child)[2014]EWHC 1871(Fam)」(専修法学論集128号,2016年11月刊)

③「未成年者の中絶に関する保健省通達がヨーロッパ人権条約に違反しないとさ

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れた事例─同意能力を有する未成年者に対する妊娠中絶と親への告知の要否 (Axon v. SSH,2006)」(専修大学法学研究所紀要42号『公法の諸問題Ⅸ』,2017年2 月刊) そして,研究期間終了後に以下の3点の公刊を予定している(既に公刊した)。 ④「代理母による出生子の法的親子関係─最近のイギリス法における“親決定” 裁判例を中心に─」(専修法学論集130号,2017年7月刊) ⑤「性別未確定で出生した子の性別決定─「性別の段階性」および「性別の相対 性」の視点から─」(専修法学論集131号,2017年11月刊) ⑥「イギリス法における法的性別の決定基準─ 性別を理由とする婚姻無効の裁 判例を中心に─」(専修大学法学研究所紀要43号『民事法の諸問題』,2018年2 月刊)

若干の感想と意見

体力的,能力的理由から海外に出かけることはできなかったが,もう少し若かっ たら留学したであろうオックスフォード大学に留学し,指導教授の講義・演習を受 けているつもりで,私は毎週のノルマを自分に課し,ほぼ実行した。なぜオックス フォードかというと,前々年の2014年に留学先候補を探すためにイギリスを個人的 に旅行し,エディンバラ,シェフィールド,ロンドン,オックスフォードを訪ねたのだ

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が,その時にオックスフォード中心街の通りに面したOxford University Press直営 書店の店頭で,Jonathan Herring “Family Law: A Very Short Introduction” (OUP, 2014)を見つけた。著者のHerring教授はオックスフォード大学(Exeter College)の 家族法および医事法の教授である。表紙に “Signed Copy” というシールが貼ってあ って何かと思っていたところ,それが著者のサイン入り本だったことに帰国してか ら気づいた。扉のページに彼のサインらしきものがあった(写真参照)。 入門書ということもあって,その文章はきわめて平易で,英語が苦手な私にも読 むことができた。そこで,留学するならこの先生のところと思ったのである。まず はHerring教授の家族法の教科書および演習書を読み4 ) ,そこに引用された判例や 参考文献から興味を引いたものを読むことにした。恥ずかしながら,私はこれまで イギリス家族法の教科書を通読したことがなかった。親子や親権など関心のある個 所をつまみ読みはしたが,苦手な夫婦財産なども含めて800頁近くある教科書を最 初から最後まで全ページ通読したのは今回が初めてであった。幸いなことに,最近 の教科書の英語は1980年代以前のものに比べると格段に読みやすい英語になってい る。中でもHerring教授の文章は読みやすい。おそらくオックスフォードも含めた イギリスの大学がグローバル化して,英語を母語としない多くの留学生を迎えるよ うになったからではないかと思う。教科書を読んだ後には,ゼミで報告するつもり で判例評釈を執筆した。当初は研究期間の後半6か月間は1か月に1本のペースで 計6本の判例評釈を執筆する予定だったが,5本に留まった。 なお,イギリスでは判例や立法資料等のデータベース化がわが国よりはるかに進 んでおり,現地に行かないと入手できない資料はほとんどなかった5 ) 。ネット社会 の効用を実感した。

4) Jonathan Herring, “Family Law (7th ed.)” (Pearson, 2015) および,J. Herring, “Law Express: Family Law (5th ed)” (Pearson, 2015)。

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参照

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