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現代口語ビルマ語の ဟိုး hó は指示詞か?

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(1)

現代口語ビルマ語の ဟိုး hó は指示詞か?

Is the Colloquial Burmese ဟိုး hó a Demonstrative?

岡野 賢二

東京外国語大学総合国際学研究院

OKANO Kenji

Institute of Glabal Studies, Tokyo University of Foreign Studies

はじめに

1. ビルマ語の名詞の下位分類

2. 現代口語ビルマ語の指示語体系概観 3. ဟိုး hóの先行記述

  3.1.  Myanmar Language Commission (1978-80) “ြမ န်မာအဘိဓာန် အကျဥ်းချုပ်”および    Myanmar Language Commission (2019) “Myanmar-English Dictionary (2nd edition)”

  3.2.  大野徹(2000)『ビルマ ( ミャンマー ) 語辞典』

  3.3.  Judson, A. (1852) “A DicƟ onary, Burmese and English”

Judson, A. (1953) “Judson’s Burmese-English Dictionary” revised and enlarged by Robert C. Stevenson and Rev. F.H. Eveleth.

  3.4.  Okell and AlloƩ (2001) “Burmese/Myanmar DicƟ onary of GrammaƟ cal Forms”

  3.5.  北京大学东方语言文学系缅甸语教研室编(1990)『缅汉词典』商务印书馆   3.6.  岡野(2011)「現代ビルマ語の「指示語」」

  3.7.  Yin Moe Thet(2020)「ミャンマー語の指示詞の特徴―非直示用法を中心にー」

4. ဟိုး hóの用例検討

5. ဟိုး hóとその他の指示語との比較検討   5.1.  位置名詞との共起

  5.2.  非位置名詞との共起   5.3.  本稿の説明に矛盾する例   5.4.  格助詞との共起関係

6. ဟိုး hó は指示語なのか ― 結論にかえて ―

キーワード:口語ビルマ語、指示語、位置名詞、非位置名詞

Key Words:Colloquial Burmese, demonstratives, location noun, non-location noun

ᮏ✏䛾ⴭసᶒ䛿ⴭ⪅䛜ᡤᣢ䛧䚸 䜽䝸䜶䜲䝔䜱䝤䞉 䝁䝰䞁䝈⾲♧㻠㻚㻜ᅜ㝿䝷䜲䝉䞁䝇䠄㻯㻯㻙㻮㼅㻕ୗ䛻ᥦ౪䛧䜎䛩䚹 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja

(2)

要旨

現代口語ビルマ語で指示詞によく似た形態素ဟိုး hó が近年よく使われるようになってきている。ビルマ 語の指示詞はဒီ/ဒါdì /dà (近称)、ဟိုhò (遠称I)の2項対立もしくはそれにအဲဒီ/အဲဒါʔɛ́dì /ʔɛ́dà (遠称Ⅱ) を加えた3項対立と見なされている。 「第四」 の指示詞ဟိုး hó は先行研究ではほとんど記述されてい ない。 その中で岡野 (2011) はこの形態素を指示詞ではないと結論づけた。というのも他の指示詞と

異なり、 限定用法が極めて限られているからである。

しかしながら先ごろ母語話者Yin Moe Thet (2020) により新しい解釈が提示された。 Yin Moe Thet はဟိုး hó は遠称指示詞でありビルマ語の指示詞は四項対立であると主張する。

本稿では先行記述とインターネットで公開されているコーパスを用いてဟိုး hó を再検討する。 本稿の

目的はဟိုး hó がビルマ語の指示詞のセットを成す形態素であるかどうかの証拠を発見することである。

結論としてဟိုး hó はビルマ語の指示詞とはまだ言えないが、直示的な区別を担っている可能性があり、 具体的根拠は見つからないものの、 将来的にビルマ語の第四の指示詞となる可能性がある。

Summary

Recently demonstrative-like morpheme ဟိုး hó has been used in colloquial Burmese. Burmese demonstratives are regarded as binary or ternary opposition: ဒီ/ဒါdì /dà (proximal) and ဟို

hò (distal I), or, these two and အဲဒီ/အဲဒါ ʔɛ́dì /ʔɛ́dà (distal II) respectively. Using the “forth”

demonstrative ဟိုး hó has not still well described in previous researches or literature. Among those, Okano (2011) verified this morpheme whether this can be said as a demonstrative or not. In my previous paper, this morpheme is concluded that this is not a demonstrative because its syntactic behaviour is not as same as the other original demonstrations, for example, its attributive usages are extraordinarily limited.

However, a new interpretation of this morpheme was presented by a native researcher, Yin Moe Thet (2020), where she claimed that ဟိုး hó is distal demonstrative in Burmese and Burmese has four-item opposition.

In this paper, the author will focus on this morpheme and re-verify the morpheme ဟိုး hó by dealing with data found in preceding descriptions and the public corpus on the internet.

The purpose of this paper is to find out some evidence to support that it is/is not a morpheme of Burmese demonstrative word set. As a conclusion, this morpheme might not have been a Burmese demonstrative, but there may be a possibility to extend the usage of deictic distinction in Burmese and it may become a forth Burmese demonstrative despite I can not find some concrete evidence.

(3)

はじめに

本論は現代ビルマ語1)の ဟိုး hó が指示語であるのかどうかについて検討する。現代口語ビル マ語の指示語について、岡野(2011)およびトゥザライン(2019)が詳細に検討した。岡野(2011)

は主として語構成の点から記述し、トゥザライン(2019)は指示対象とその分布条件について詳 しく論じている。その中で岡野(2011)ではဟိုး hó という形式についても扱い、指示語ではな いと結論づけている。[ibid.:84-5]

(1)a. ဟိုမှာ အိမ် ရှိတယ်၊ ေတွ ့လား။

hò=hmà ʔè iɴ ɕî =t̬ɛ̀, twê =lá .

HÒ= house exist= . fi nd=

あそこに家がある、見える?

 b. ဟိုးမှာ အိမ် ရှိတယ်၊ ေတွ ့လား။

=hmà ʔè iɴ ɕî =t̬ɛ̀, twê =lá .

HÓ= house exist= . fi nd=

ずっと向こうに家がある、見える? [ibid.:84](改変)

上記の例文a.、b.を見る限り、a.の ဟို hò と b.の ဟိုး hó とは全く同じ位置に生起しており、意 味的にもよく似ている。a.の ဟို hò が指示語であるのなら、b.の ဟိုး hó も同じ指示語、同じ語 類と考えてよさそうに一見して見える。実際、ဟိုး hó を指示語の中に位置づけようと試みる研 究もある[Yin Moe Thet 2020]。またこの二つの形式は声調のみで形式に対立しており、一方 が他方から派生した可能性や異形態である可能性も考えられなくはない。しかしながらこの二 つの形式の分布を詳しく見ると、かなり性質の異なるものであることがわかる。

結論としては、ဟိုး hó は少なくとも現代語において、指示語の体系の中に位置づけられるま での特徴を、他の典型的な指示語と共有していない。しかしながら、ミャンマー人の直観とし て、とくに現場指示の用法がこの本論ではこ のဟိုး hóによって拡張されている可能性があると いえるかもしれない。本稿では先行研究等に見られる ဟိုး hóの用例をつぶさに観察し、あらた めて検討する。

なお本稿で指示語というのは、指示機能を持つ3種の語類、すなわち指示限定詞、(非位置)

指示代名詞と位置指示代名詞を総称する概念である。

(1) a. ¥³µŸÄ² §³ŸÀ ¡Ä³– ÀÐ ·–Ãƶ¢²¾Ñ

hhò=hmà ުèiӦ ǯv W ࢚ʎ࡯, twê=lá.

HÒ=LOC house exist=VS.RLS find=Q

あそこに家がある、見える?

b. ¥³µ¾ŸÄ² §³ŸÀ ¡Ä³– ÀÐ ·–Ãƶ¢²¾Ñ

hhó=hmà ުèiӦ ǯv W ࢚ʎ࡯, twê=lá.

HÓ=LOC house exist=VS.RLS find=Q

ずっと向こうに家がある、見える? [ibid.:84](改変)

(4)

1.  ビルマ語の名詞の下位分類

指示体系について述べる前に、 本論で非常に重要なキーとなる概念である、ビルマ語の名詞の下 位分類について述べておく。 ビルマ語の名詞は非位置名詞 non-location noun と位置名詞 location

noun に大別される。 非位置名詞は動詞の主語や目的語となり得る語類、 位置名詞はなり得ない語類

である。

表 1 ビルマ語の名詞の下位分類と格助詞が付与する格および代名詞化可能性

非位置名詞は格助詞 -က-kâ、-ကို -kò で標示されるとき、それぞれ主格、対格が付与される。 これに対し位置名詞では奪格(時間的位置名詞の場合、過去時になるケースもある)、向格と なる。また所格助詞 -မှာ -hmà は位置名詞のみに付される。人間名詞には所有構文の時のみ所 格助詞が付き得る。これは言い換えれば、非位置名詞は原理的に位置ではあり得ず、位置名詞 は動詞の表す事態の参加者にはなれないということである。なお、以下では空間的位置名詞を 単に空間名詞、時間的位置名詞を時間名詞と呼ぶ。

藪(1992:857r-8l)は格助詞に基底格という考えを取り入れ、 ကkâは源泉格 Source、 ကို kò は 目標格 Goal、 မှာ hmà は位置格 Location であるとした。そして က kâについて「-káは本来,奪 格(離格,ablative)を示す助詞で,空間的には起点・出所を,時間的には過ぎ去った時点を 表わす.動詞の「動作」との関連では,動作の出所,つまり,動作の起こし手(agent)を表 わす」[藪1992:857r]、ကို kòについて「-kou は,本来,向格(allative)を示す助詞で,空間的 には着点(到達点)あるいは方向を,時間的にはこれから訪れる時点を表わす.動詞の「動 作」との関連では,動作の受け手(patient),ないしは,動作の及ぶ対象(object)を表わす」

[ibid.:857r]としている。筆者はこれに同意するが、それに加え、名詞あるいは名詞句が「空 間・時間」であるか、そうではないのか、という意味素性があり、それと格助詞とのマッチ

ྡモ

㠀఩⨨ྡモ ఩⨨ྡモ

ே㛫ྡモ 㠀ே㛫ྡモ ✵㛫ⓗ఩⨨ྡモ ᫬㛫ⓗ఩⨨ྡモ

᱁ ᶆ

-† -kâ ୺᱁ ዣ᱁ 㐣ཤ᫬

࡞ࡋ

ྥ᱁ ᡤ᱁

-†³µ -kò ᑐ᱁ ᮍ᮶᫬

-ŸÄ² -hmà 㸦ᡤ᱁㸧 ̿ ᡤ᱁

௦ྡモ໬ ே⛠௦ྡモ ᣦ♧௦ྡモ ఩⨨ᣦ♧௦ྡモ ̿

(5)

ングにより、付与される格が決まっていると考える。普通名詞はそのような意味素性について 指定は文脈によりなされるが、それがどのような素性であるかは代名詞化によって明確に知る ことができる。

代名詞化するとき、非位置名詞のうち、人間名詞 human noun は人称代名詞が、非人間名詞 は指示代名詞が用いられる。一方、位置名詞のうち、空間名詞では位置指示代名詞が用いられ るが、時間名詞はそれがなく、指示詞時間名詞という形式にならざるを得ない。

(2)a. မသွယ်ကို ဩည့်တယ်။ b. သူ ့ကို ဩည့်တယ်။ 〔ヒト名詞〕

maʔt̪wè=k ò t㷡î =t ɛ . t̪û =k ò t㷡î =t ɛ .

= look.at= . 3 . = look.at= . マ・トゥエを見た。 彼 / 彼女を見た。

(3)a. ရုပ်ရှင်(ကို) ဩည့်တယ်။ b. အဲဒါ(ကို) ဩည့်တယ်။ 〔非ヒト名詞〕

youʔɕì ɴ(=k ò ) t㷡î =t ɛ . ʔɛ́dà(=k ò ) t㷡î =t ɛ . cinema(= ) look.at= . that.one2= look.at= .

映画を見た。 それを見た。

(4)a. ဈေး(ကို) သွားတယ်။ b. အဲဒီ(ကို) သွားတယ်။ 〔空間名詞〕

zé(=k ò ) t wá =t ɛ . ʔɛ́dì(=k ò ) t wá =t ɛ . market(= ) go= . there2(= ) go= . 市場へ行った。   そこへ行った。

(5)a. စနေနေ့ကို သွားမယ်။ b. အဲဒီနေ့ကို သွားမယ်။ 〔時間名詞〕

sănè nê =k̬ò t wá =mɛ . ʔɛ́dì =nê =k ò t wá =mɛ . Saturday= . go= . that2=day= . go= .

土曜日に行く。 その日に行く。

以上、格助詞が付与する格と代名詞化可能性から、非位置名詞はヒト名詞と非ヒト名詞に、

位置名詞は空間名詞と時間名詞とに下位分類することがサポートされる。

2.  現代口語ビルマ語の指示語体系概観

前節の観察に基づき、トゥザライン(2019:133)および Thuzar Hlaing and Okano(2019:1)の 分類に従い、現代口語ビルマ語の指示語をまとめると以下の表のようになる。

(2) a. Ÿ¤Ã À†³µ ƣ†½À– ÀÑ b. ¤¶ɕ†³µ ƣ†½À– ÀÑ 〔ヒト名詞〕

maުW ओZq N࢚z tǯv W ࢚ʎ࡯. W ओ€ N࢚z tǯv W ࢚ʎ࡯.

PERSON=ACC look.at=VS.RLS 3SG.OBL=ACC look.at=VS.RLS

マ・トゥエを見た。    彼/彼女を見た。 

 

(3) a. Ɛµ›À¡ÄŠÀ†³µ ƣ†À½– ÀÑ b. §¸˜±†³µ ƣ†½À– ÀÑ 〔非ヒト名詞〕

youުǯìӦ N࢚z tǯv W ࢚ʎ࡯. ުʎࡢdà N࢚z tǯv W ࢚ʎ࡯. cinema(=ACC) look.at=VS.RLS that.one2=ACC look.at=VS.RLS

映画を見た。     それを見た。 

 

(4) a. ·Ž¾†³µ ¤Ã²¾– ÀÑ b. §¸˜´†³µ ¤Ã²¾– ÀÑ 〔空間名詞〕

zé N࢚z W ओZi W ࢚ʎ࡯. ުʎࡢdì N࢚z W ओZi W ࢚ʎ࡯. market(=ALL) go=VS.RLS there2(=ALL) go=VS.RLS

市場へ行った。    そこへ行った。 

VýQqQr ުʎࡢdì Qr

(6)

表 2 現代口語ビルマ語の指示語体系

㏆⛠ 㐲⛠ϩ 㐲⛠Ϩ ୙ᐃ⛠

఩⨨௦ྡモ ˜´ dì

“here”

§¸˜´ ުʎࡢdì

“there2

¥³µ hò

“there1

ž À bʎ࡯

“where”

ᣦ♧㝈ᐃモ ˜´- dì-

“this”

§¸˜´- ުʎࡢdì-

“that2

¥³µ-hò-

“that1

ž À-bʎ࡯-

“which”

㠀఩⨨௦ྡモ ᵓᡂᙧ ˜´¥² dìhà

“this one”

§¸˜´¥² ުʎࡢdìhà

“that2 one”

¥³µ¥² hòhà

“that1 one”

ž À¥² bʎ࡯hà

“which one”

⼥ྜᙧ ˜± dà

“this one”

§¸˜±ުʎࡢdà

“that2 one”

¥£±~¥£Ä² hý(h)wà

“that1 one”

なお不定称の非位置代名詞融合型に ဘာ bà“what”がある[藪1992:853]が、意味が構成形と は異なるため、上記表からは外してある。

不定称を除けば、現代ビルマ語の指示体系は近称:遠称Ⅱ:遠称Ⅰの三項対立である[ト ゥザライン 2019:22-23、 Thuzar Hlaing and Okano 2019:1]。品詞あるいは語類からみると、岡野

[2007:41-3、 2011:77]が指摘しているように、位置指示代名詞 location demonstrative pronoun、

指示限定詞 attributive demonstrative、そして非位置代名詞 non-location demonstrative pronounに分 かれる。2)

Okell(1969:22)、Wheatley(1982:102)、藪(1992:583)、岡野(2007:42)などで指摘されてい るように、非位置名詞の指示語は「指示限定詞形式名詞 ဟာ hà」と、それが融合した形式と がある。非位置名詞は、いわば指示限定詞(位置指示代名詞と完全に同形)から派生した、後 の形式であることは明らかである。ちなみに、現代文語ビルマ語の指示体系は、非位置名詞の 単独の形式を持たず、また用法から見ても、それが独立した語類をなすとは認めがたい。

つまりビルマ語の指示語はもともと指示限定詞もしくは位置指示代名詞が存在し、その後、

非位置指示代名詞が口語で生じたことになる。派生の元であるか、先であるかは、重要であろ うと思われる。この点については稿を改めて論じたい 。3)

3.   ဟိုး  hó の先行記述

ဟိုး hó についての先行研究は管見の限り、岡野(2011)をのぞき、ほとんどない。ただし

いくつかの辞書には記述があるので、それらを以下にまとめることにする。

(7)

3. 1.  Myanmar Language Commission 1978-80“ြမ န်မာအဘိဓာန် အကျဥ်းချုပ်”  および Myanmar Language Commission 2019 “Myanmar-English DicƟ onary (2nd ediƟ on)”

ミャンマー連邦教育省ビルマ語委員会(Myanmar Language Commission、以下MLC)が編集・発行し た ြမ န်မာအဘိဓာန်အကျဥ်းချုပ်[ビルマ語辞典簡約版](1978-80、 以下CMD)4)、Myanmar-English Dictionary(2nd edition)(2019、以下MED2)は、いわばミャンマー教育省の「正式見解」であり、最も権威が

ある。 ただ ဟိုး hó の指示的な用法については記載がない。 同綴り、および同綴りのものを含む項目は以下

の通り。例文を除いてCMDとMED2はほぼ同じであるので、以下ではMED2のみを挙げ、CMDについては 注に記載した。

ဟိုး /hou:/ int [colloq] stop; whoa. [Hind ဟိုး] 5) ဟိုးေလးတေကျာ် /hou: lei: dagjo/ n talk of the town. 6)

ဟိုးလိုးေဟာင်းေလာင်း /hou: lou: haun: laun:/ adv in an uncovered state See also ေဟာင်းေလာင်း 7) ဟိုးဟိုးေကျာ် /hou: hou: kjo/ v be widely known. 8) [MED2 2019:592l]

品詞分類が異なるものの、 M E D 2に記載されている 項目については、 C M Dにおいてもほぼ 同 じ記述と見ていいだろう。なおေဟာင်းေလာင်း の意味記述は “adj uncovered; exposed adv Same as

ဟိုးလိုး ေဟာင်းေလာင်း adv” [ibid: 593r] となっている。 ようするに ဟိုးလိုးေဟာင်းေလာင်း hó ló há uɴ lá uɴの 前半部分 ဟိုးလိုး hó ló はリズム的に作り出された音節であり、実質的な意味は後半の ေဟာင်းေလာင်း 

há uɴlá uɴ が担っている語で、前半の音節は意味内容を持たない。

これ以外にミャンマー国内で発行されている緬英辞典 ဝင်းတင်ဝင်း၏ တကက သိုလ် ြမန်မာ-အဂႅလိပ် အဘိဓာန်

[win tin win's UNIVERSITY myanmar-english dictionary](発行年不明:887r)や ြပည့်စုံ ြမန်မာ-အဂႅလိပ်

အဘိဓာန် [Pyi Zone Myanmar-English Dictionary](2010:471)を基とする数種類の辞書を確認したが、

ほぼ同じ内容か、 記述を欠いている。

3. 2. 大野徹(2000)『ビルマ(ミャンマー)語辞典』

大野徹の『ビルマ(ミャンマー)語辞典』(2000)には、上記の間投詞(大野は動詞に分類)

の記述とともに指示的な用法を持つと思われる形式について、記載がある。

ဟိုး [ho:(動)止まれ]

ဟိုး [ho:(名)] ずっと向こう、遙か彼方 ဟိုး အ နှစ် ေလး ဆယ် နီး ပါး ကာ လ ေလ ာက် က ေ တွ့ ြ ကံုဆုံ စည်း ခဲ့ ဖူး တယ်။ 遙 か40年近くも前に遭遇した事がある

(8)

大野(2000: 759l)ではさらに以下の下位項目が挙っている。

ဟိုးတုန်းက [ho: doun:ɡa.](副)かつて ဟိုးမှာ [ho: m̥a(副)] ずっと向こうに

ဟိုးေရှးေရှးတုန်းက [ho: ʃe:ʃe:doun:ɡa.(副)昔々、] 遙か昔 ဟိုးေရှးေရှးယခင်က [ho: ʃe:ʃe:jək‘inɡa.](副)ずっと昔

ဟိုးအနှစ်ငါးဆယ်နီးပါးကာလေလာက်က [ho: ən‘iˀŋa:zɛ ni:ba: kala. lauˀka. mjin: ʤi:m̥a] 9), 10) (副)遙か50 年近くも昔

ဟိုးအြမင့်ြ ကီးမှာ [ho: əmjin:ʤi:m̥a] 11)(副)あの遙か高いところにမာ လ ကာ သီးေတွ က ဟိုး အ ြမင့်ြ ကီး မှာ ဘဲ။

バンジロウの実は遙か高いところにあるんだ

ဟိုအေဝးမှ12) [ho: əwe:m a.](副)ずっと遠方にဟိုးအေဝးမှ ေတာအုပ်များကိုြ မင်နိုင်သည်။ 遙か彼方に森が 見える

ဟိုအေဝးမှ [ho əwe:m a] 13)(副)遙か遠方に、ずっと遠くの方に

またMED2には独立した項目となっていない、副詞としての ဟိုးဟိုး hóhóという形式も挙げて いる。(同じく759l)

ဟိုးဟိုး [ho:ho:(副)広く、] 普く

ဟိုးဟိုးေကျာ် [ho:ho: tʃɔ](動)広く知れ渡る、普く知られるသ တင်း သည် ထို ေ ဒသ တ ဝိုက် တွင် ဟိုး ဟိုးေကျ ာ်ေန သည်။

3. 3.  Judson, A. (1852) “A Dictionary, Burmese and English”

Judson, A. (1953) “Judson’s Burmese-English DicƟ onary” revised and enlarged by Robert C.

Stevenson and Rev. F. H. Eveleth.

Judson の2冊の辞書はほとんど同じ記述であり、ヒンディー語起源の語彙については記載が

なく、以下のものが副詞としてあげられている。

ဟိုးဟိုး, adv. far and wide, as news spread abroad, သိတင်းဟိုးဟိုးေြ ကာ်သည် ။ [Judson 1852: 371r]

ဟိုးဟိုး, adv. far and wide, as news spread abroad, သိတင်းဟိုးဟိုးေြ က ာ်သည််, ဟိုးဟိုး ေကျ ာ်သည့်လူ။

[Judson 1953: 1188]

(9)

3. 4.  Okell and Allott (2001) “Burmese/Myanmar Dictionary of Grammatical Forms”

Okell and Allott (2001) ではဟိုး hó はဟို hò の変異と見なされている。

ဟို (~N or ~sfx) that N; that place, there; usually at a distance from both speaker and listener;

sellective noun, CB: = FB ထိုN; variants အဲဟို andေဟာဟို qvˑ sts pron and written ဟိုး, refl ecting long drawn out intonation for sth very far off; ... (以下略)[ibid.:253]

Okell and Allott (2001) の例は4節で検討する。

3. 5.  北京大学东方语言文学系缅甸语教研室编(1990)『缅汉词典』商务印书馆

『缅汉词典』 (以下『詞典』)ではဟိုး hó を代名詞(နစ)とし、「那里(あそこ)」と語義を与えている。 ဟိုး I နစ၊ <ho:> 那里: 〜ေရှးေရှးတုန်းက။ 很久很久以前。 II အ၊ <ho:> 〔印〕停!停!: 〜 ဆရာ 〜ဟု

လက် မှတ် ရာင်း က ကား ရပ် ခိုင်း သည်။售票员说; “师傅,停一下车!” / 〜 〜 မေြ ပာနဲ့ေတာ့။ 得了,别 说了![詞典:1028r]

ဟိုးထားအ၊ <ho: hta:> (售票员和司机的用语) 车一停一[詞典:1028r]

ဟိုးလားဟားလားကဝ၊ <ho: la: ha: la:> 大叫大嚷, 吵吵嚷嚷: သူများအိပ် နတယ်၊ 〜 မလုပ်နဲ့။ 别吵吵 嚷嚷, 大家正在睡觉。[詞典:1028r]

ဟိုးေလးတေကျာ်ကဝ၊ <ho: lei: d-gyaw> 大名鼎鼎,赫赫有名: 〜 ြ ဖစ်လာသည်။ 变得赫赫有名。 [ 詞典:1028r]

ဟိုးေလးဟားေလးကဝ၊ <ho: lei: ha: lei:> = ဟိုးလားဟားလား(1029l)

ဟိုးလိုးေဟာင်းေလာင်း ကဝ၊ <ho: lo: haun: laun:> 无遮无盖地,敞着: 〜 ထားမပစ်ခဲ့နဲ့။ 别不无遮着 集就放在那儿。[詞典:1029l]

ဟိုးဟိုးေကျာ်နဝ၊ <ho: ho: kyaw> 闻名四方,赫赫有名(贬)臭名远扬: ဂုဏ်သတင်း 〜သည်။ 美名传 四方。[詞典:1029l]

『詞典』で興味深いのは、指示語としての ဟိုး hó には代名詞(နစ)のみ挙げていることで ある。これに対し、ဟိုhò や ေဟာဟိုhɔ́hò には代名詞(နစ)とともに指示形容詞(နဝ)を挙げ ている。

ဟို I နစ၊ <ho> ①那:〜ကလာသလား။是从那儿来的吗?/〜ကို向那儿/〜တုန်းက那吋,从前/〜မှာ在 那儿 II နဝ၊ <ho> 那,〜ဟာ那个东西/〜ဘက်那边/〜ေရှးေရှးတုန်းက古吋候[詞典:1028r]

ေဟာဟို I နစ၊ <haw: ho> 那个,〜က从那儿/〜မှာ在那儿 II နဝ၊那个,〜ေနရာမှာရှိတယ်။在那个地方。/

〜လူကေြပာတယ်။那个人说。/〜ဟာ那个

(10)

このように『詞典』では指示形容詞としての機能をဟိုး hóが欠いていると見なしているので あろう。

3. 6. 岡野(2011)「現代ビルマ語の「指示語」」

恐らく岡野 (2011) が ဟိုး hó について記述しているほぼ唯一の先行研究である。岡野 (2011)

では ဟိုး hó が格助詞との共起可能性、名詞限定の形式を検証し、ဟိုး hó が所格助詞 မှာ hmà 以外

と共起しないこと、 また名詞を限定する際は奪格助詞 က kâ が現れること、他の指示詞とは異 なる特徴を指摘している。このことから ဟိုး hó を指示語の体系内に位置づけることは難しく、

指示語とは考えないと結論している。節で詳述する。

3. 7. Yin Moe Thet(2020)「ミャンマー語の指示詞の特徴 ̶ 非直示用法を中心に ̶ 」 最後にYin Moe Thet(2020)について述べよう。Yin Moe Thetは自身の母語であるビルマ語を 日本語と対照し、日本語からのビルマ語への翻訳を元にして、ビルマ語の指示体系を「近称を 表す系列は「dā/dī」、中称は「ɛ̀dī」、中称は「hō」、遠称を表す系列は「hòká」であること がみられた」[ibid.: 3]としている。このうち、Yin Moe Thetが「遠称(ア)」としているのが 本稿で扱っているဟိုး hóである。ただしYin Moe Thetは ဟိုး hó 単独の形式は挙げていない。以 下は Yin Moe Thet(2020:3)に掲載されている「ミャンマー語の指示詞の一連の語群」と題さ れる表から ဟိုး hó を抽出した。なお、引用元にはビルマ文字が記されていないので、補うこ とにする。

もの hò ká hā ဟိုးကဟာ、方角 hò bɛʔ ဟိုးဘက်、場所 hò hmā ဟိုးမှာ、もの/人 hò ká kaʊ̃’ ဟိုးကေကာင်、

性状 hò ká lō ဟိုးကလို、指定 hò ká ဟိုးက、容子 hò ká lō ဟိုးကလို

[Yin Moe Thet 2020:3]より筆者が抽出

ただ実例やビルマ語母語話者への調査ではဟိုး hóの例は出現しておらず、あくまで日本語か らの訳の中にのみ現れる。その例については次節で扱う。

なおこの表にはဟိုး hóの単独形式は挙げられていない。本稿の立場である指示代名詞(上記 表では「もの」)、もしくは指示限定詞(上記表では「指定」)の両方もしくは後者に他の指 示語は単独の形式があるが、ဟိုး hó には挙げられておらず、この点は『詞典』とは異なる。

以上まとめると、大野(2000)、『詞典』、Yin Moe Thet(2020)が本稿で扱う ဟိုး hó を指示 語として扱っており、大野は代名詞、『詞典』は(指示)形容詞とした。またYin Moe Thetは他 の文法的な要素との複合形式のみを挙げている。他方、Okell and Allott(2001)は ဟို hò の変 異として扱っており、指示語の一つとされている。MED2などミャンマーで発行されている辞

(11)

書や Judson(1852、1953)には指示語としての ဟိုး hó の記述がない。ヒンディー語起源の ဟိုး

hó も、イディオム ဟိုးဟိုးေကျာ်- hóhó tɕɔ̀- に現れる ဟိုးဟိုး hóhó も、いずれも本稿の ဟိုး hó とは 関係がないように思われる。語源について考察はしないが、新しい形式なのであろう。本稿で はこれは考察の対象から除外した。

4.   ဟိုးhó  の用例検討

では ဟိုး hóの用例を検討する。ဟိုး hó が指示語の一つであるのなら、指示限定詞、非位置指

示代名詞、位置代名詞のどれか、もしくは複数の機能を持っていることが期待される。

まず大野(2000:759l)に挙げられている項目について、考察する。

(6)a. ဟိုး အနှစ် လေးဆယ်နီးပါးကာလလောက်က တွေ့ကြုံဆုံစည်းခဲ့ဖူးတယ်။

hó 㷊㶙hni㷊 lé -s 㸖ɛ -ní bá -kà lâ =lau㷊=kâ twê t㷡ò u㸎+s㸖ò u㸎zí =k 㸖ɛ =p 㸖ú =t ɛ . year four-ten-nearly-time=about= . meet+coincide= = = . 遙か40年近くも前に遭遇した事がある

(7) a. ဟိုး တုန်းက b. ဟိုးရှေးရှေးတုန်းက hó-t ó u㸎=k̬â -㷡é 㷡é -t ó u㸎=k â

-term=. -olden-term= .

かつて 昔々、遙か昔

c. ဟိုးရှေးရှေးယခင်က d. ဟိုး အရင်တုန်းက -㷡é 㷡é -y㶙k㸖ì 㸎=k â -㷊㶙yì 㸎-t ó u㸎=k̬â -olden-before= . -past-term=.

ずっと昔 ずっと前に

以上の例において、ဟိုး hó が限定しているのは全て過去時を表す格助詞 ကkâで標示されて いることから時間名詞(句)である。

(6) a. ¥³µ¾ §ƏċÀ ·¢¾Œ Àš´¾›±¾†²¢·¢²†À† ·–Ãƶə†¼ƳŒ¼µ‹À¾‡¸½œ¶¾– ÀÑ

hhó ުýKQLު lé-V̸࢚ʎ࡯-QtEi-kàlâ=lauު=kkâ twêtǯòuӦV̸zXӦ]t N̸࢚ʎࡸ S̸࢚~ W࢚ʎ࡯.

HÓ year four-ten-nearly-time=about=P.T meet+coincide=AUX=AUX=VS.RLS

遙か40年近くも前に遭遇した事がある

(7) a. ¥³µ¾–µšÀ¾†  b. ¥³µ¾·¡Ä¾·¡Ä¾–µšÀ¾†

hhó-W ࢚yXӦ=NN࢚k hhóó-ǯéǯé-W ࢚yXӦ N࢚k HÓ-term=P.T HÓ-olden-term=P.T

かつて 昔々、遙か昔

c. ¥³µ¾·¡Ä¾·¡Ä¾ ‡ŠÀ† d. ¥³µ¾§¡ŠÀ–µšÀ¾†

hhóó-ǯéǯé-\ýN̸uӦ N࢚k hhó-ުý\uӦ-W ࢚yXӦ=NN࢚k HÓ-olden-before=P.T HÓ-past-term=P.T

ずっと昔 ずっと前に

(12)

(8) a. ဟိုး အဝေးမှ တောအုပ်များကို မြင်နိုင်သည်။

㷊㶙wé =hmaˆ tɔ 㷊ou㷊=myá =k ò myì 㸎=nà i㸎=t ì .

distant= forest= = see= = .

遙か彼方に森が見える

(9) b. ဟိုး အဝေးမှာ

hó 㷊㶙wé =hmà

distant=

遙か遠方に、ずっと遠くの方に

上記例において、ဟိုး hó が限定しているのは名詞 အေဝးʔăwé「遠く」であり、またそれを標 示している格助詞は奪格 မှhmâ および所格 မှာ hmà であることから、これは空間名詞である。

次にOkell and Allott(2001:253)に挙げられている例である。

(10) ဟိုးရှေးရှေးတုန်းကလို့ အစချီပြီး ပြောတဲ့ ရှေးစကား။ [ibid.:253]

hó-ɕé ɕé -t̬ó uɴ=k̬â =lô ʔăsâ +tɕʰì =pí pyɔ́=t̬ ɛ̂ ɕé -zăɡá . -olden-term=.= begin= speak= . old.days-language Old stories that begin “Long long ago”

(11) ဟိုးရှေးက ရိပ်ရိပ်ရိပ်ရိပ်နဲ့။ လူပဲ ထင်ပါရဲ့။ [ibid.:253]

hó-ɕé =k̬â yeiʔyeiʔ-yeiʔyeiʔ=nɛ̂. lù =p̬ ɛ́ tʰì ɴ=p̬à =yɛ̂.

-olden= indistinctly-indistinctly= human= foc think= = . There’s some vague shape a long way in front of me. I think it’s a man.

(10)ではやはり過去時の格助詞 က kâ によって標示されている。(11)の主要部名詞ေရှးɕê は辞

書記述 (MED2 2019:470l) では「1 n the past. 2 adj past; old; olden; early; ancient.(3 vは略)」であ り、時間名詞であるが、ここでは “in front of me”と英語訳がつけられていることから、声調違 いのေၡ ့ ɕê “front”のことであろう。とすれば、これは空間名詞である。

次にSEAlang Library14)のコーパスのデータを検討する。筆者が検索した結果、明確に非位置 名詞に付いている例は見つからなかった。なおSEAlang Libraryでは全ての例が出力されるわけ ではないため、実際に見ることのできない例が少なからずある。そのため、筆者が検討できな い例もあることをお断りしておく。

(8) a. ¥³µ¾ §·£¾ŸÄ ·–²§µ›ÀŸÁ²¾†³µ ŸŠÀƏ³µŠÀ¤ÀÑ hhó ުýZp hhmâ tDZࡢުouު P\i N࢚z myìӦ QjLӦ W ओ࢚u HÓ distant=ABL forest=PL=ACC see=AUX=VS.RLS

遙か彼方に森が見える 

(9) b. ¥³µ¾ §·£¾ŸÄ² hhó ުýZp hhmà HÓ distant=LOC

遙か遠方に、ずっと遠くの方に 

(10) ¥³µ¾·¡Ä¾·¡Ä¾–µšÀ¾†¢³µƵ §‹‡Á´Ʀ›´¾ ·Â›²–¸½ ·¡Ä¾‹†²¾Ñ [ibid.:253]

hhó-ǯéǯé-W ࢚yXӦ N࢚k=lô ުýVkWǯ̸u St pyDZࡢ W ࢚ʎࡸ ǯé-]ý̔i

HÓ-olden-term=P.T=QUOT begin=SEQ speak=AT.RLS old.days-language Old stories that begin “Long long ago”

(11) ¥³µ¾·¡Ä¾† ¡³›À¡³›À¡³›À¡³›Àš¸ƵÑ ¢¶›¸ —ŠÀ›±¡¸ƶÑ [ibid.:253]

hhó-ǯé=NN࢚k yeiުyeiު-yeiުyeiު Qʎࡸ. O S࢚ʎࡢ W̸uӦ S࢚j \ʎࡸ.

HÓ-olden=ABL indistinctly-indistinctly=COM human=DMfoc think=PLT=VS.RLS

There’s some vague shape a long way in front of me. I think it’s a man.

(13)

以下、SEAlang Libraryの例を、ဟိုး hóの後に現れる要素に基づき整理する。

(12) a. တုန်း(က)tó uɴ(=k̬â )「〜ころ」

e.g. ဟိုး ေၡးေရှးတုန်းက hó ɕé ɕé -tó uɴ=k̬a̬ ̂「ずっと昔」

ဟိုး အရင်တုန်းက hó ʔă yì ɴ-tó uɴ=k̬â ̬ 「ずっと以前」

ဟိုး ... ေၡ့ ပိုင်းတုန်းကေတာ့ hó ɕê bá iɴ-t̬ó uɴ=k̬â =t̬ɔ̂「ずっと(以前の)前半の頃に」

ဟိုး လွန်ခဲ့တဲ့နှစ်များတုန်းက hó lù ɴ=k̬ʰɛ̂=t̬ɛ̂ hniʔ=myá -t̬ó uɴ=k̬â「ずっと何年も前」

ဟိုး ၁၉၇၆ ခုနှစ်တုန်းက hó tʰâ uɴkó yà kʰună sʰɛ̂tɕʰauʔ-hniʔ-tó uɴ=k̬â 「はるか以前の1976年の頃に」

ဟိုး ငယ်ငယ် လးတုန်းက hó ŋɛ̀ŋɛ̀l-é -t̬ó uɴ=k̬â 「ずっと(昔の)幼い頃に」

ဟိုးဘက်လတုန်းက hó -p̬ʰɛʔ-lâ -t̬ó uɴ=k̬â 「もう何ヶ月も前に」

b. 「昔」「(時代の)初め」「若い/幼い頃」を意味する名詞類 e.g. ဟိုး အရင်ကhó ʔă yì ɴ=k̬â 「ずっと以前に」

ဟိုး ေရှးေခတ်ကhó ɕé kʰiʔ=kâ 「ずっと昔の時代に」

ဟိုး ေရှးဦးေတ် hó ɕé ʔú kʰiʔ「はるか最初の時代」

ဟိုး အစကေန hó ʔă sâ =k̬â nè 「ずっと(前の)最初から」15)

ဟိုး ငယ်ငယ် လးကတည်းကေန hó ŋɛ̀ŋɛ̀-lé -k̬ă dɛ́=k̬â nè 「ずっと(昔の)幼い頃以来」

ဟိုး ငယ်ဘဝေတွကိုhó ŋɛ̀-bă wâ =twè =k̬ò ̬ 「ずっと(昔の)幼い頃の境遇を」

ဟိုး ငယ်ငယ်က hó ŋɛ̀ŋɛ̀=k̬â n「ずっと(昔の)幼い頃に」

ဟိုး... ဝတထ ုအြ ဖ စ်ကတည်းကhó wuʔtʰû -ʔă pʰyiʔ-kă dɛ́=k̬â nè 「ずっと(昔の)小説ができた頃から」

c. လွန့်ခဲ့တဲ့ lù ɴ=k̬ʰɛ̂=t̬ɛ̂経過時間「〜(年etc.)前」

e.g. ဟိုး လွန်ခဲ့တဲ့ ၅ နှစ် ေလာက်ကɴ=k̬ ʰɛ̂=t̬ ɛ̂ ŋá -hniʔ=k̬â 「はるか5年前に」

ဟိုး လွန်ခဲ့တဲ့ နှစ်များစွာကɴ=k̬ ʰɛ̂=t̬ ɛ̂ hniʔ-myá -s̬wà =k̬â 「はるか何年も前に」

ဟိုး လွန်ခဲ့ေသာ နှစ် ေပါင်း (၄၀)ခန့် ကɴ=k̬ ʰɛ̂=t̪̬ɔ́ hniʔ-ŋá zɛ̀-kʰâ ɴ=k̬â 「はるか40年ほど前に」

ဟိုးေခတ်အဆက်ဆက်က kʰiʔ-ʔă sʰɛʔsʰɛʔ=kâ 「ずっと昔から代々引き続いて」

d. 時間ကkâ /ကတည်းကkă dɛ́=k̬â 「〜(年etc.)前/以来」

e.g. ဟိုး နှစ် ေပါင်းများစွာက hó hniʔ-pá uɴ myá -s̬wà =k̬â「はるか何()年前に」

ဟိုး နှစ်နှစ် ေကျာ်က hó hnă -hniʔ-tɕɔ̀=k̬â 「はるか二年以上前に」

ဟိုး နှစ် ေပါင်းတစ်ရာကတည်းက hó hniʔ-pá uɴ tă yà =k̬ă dɛ́=k̬â「はるか100年前から」

ဟိုး လွန်ခဲ့ေသာ နှစ် ေပါင်း (၄၀)ခန့် က hó lù ɴ=k̬ʰɛ̂=t̪̬ɔ́ hniʔ-ŋá zɛ̀-kʰâ ɴ=k̬â 「はるか40年ほど前に」

ဟိုး...အချိန်ကတည်းက hó ʔă tɕʰè iɴ-k̬ă dɛ́=k̬â 「ずっと昔の時以来」

e. တစ် tiʔ名詞類「あのとき、あの時代etc.」

e.g. ဟိုး တစ်ချိန်က hó tă -tɕʰè iɴ=k̬â 「ずっと以前のあのときに」

ဟိုး တစ် ခတ်ကို hó tă -kʰiʔ=kò 「ずっと以前のあの時代へ」

f. ကတည်းkă dɛ́(=k̬â )「以来」

e.g. ဟိုးကတည်းက hó -k̬ă dɛ́=k̬â 「ずっと昔以前;ずっと遠くにいた頃か」

(14)

g. 「遠く」を表す名詞類、「遠いところ」を想起させる名詞類(地名など)

e.g. ဟိုး အေဝးြ ကီးမှာ hó ʔă wé -t̬ɕ̬í =hmà 「ずっと遠くで」

ဟိုး ခပ် ေဝးေဝးက hó kʰaʔwé wé =k̬â 「かなり相当遠くから」

ဟိုး ချင်းြ ပည်နယ်ဖလမ်းထိ hó tɕʰí ɴ-pyì nɛ̀ fă là m-lá ɴ-tʰî 「ずっと向こう、チン州ファラム道まで」

h. 空間名詞、局所名詞 16)

e.g. ဟိုးေအာက်ကေန hó -ʔauʔ=kâ nè 「ずっと向こうの下から」

ဟိုးဖက်က hó -p̬ʰɛʔ=kâ 「ずっと向こう側から」

ဟိုးအထက်က hó -ʔă tʰɛʔ=kâ 「ずっと上から」

ဟိုး တစ်ဖက် ေရနက်ရာမှာ hó -tă pʰɛʔ-yè nɛʔyà =hmà 「ずっと、向こう側の水の深いところで」

ဟိုးေတာင်တန်းေပါ်က hó -tà uɴdá ɴ-p̬ɔ̀=k̬â 「ずっと向こうの山岳地帯(の上)から」

i. 文脈上「昔」と解釈されるもの

e.g. ဟိုး အညာခရီးကို hó ʔă ɲà -kʰă yí =k̬o「随分昔の上ビルマへの旅のことを(ふと思い出した)」

SEAlang Libraryを見ても、時間名詞、空間名詞以外の例は見当たらない。

最後にYin Moe Thet(2020)に挙げられている例を見る。

(13)B:(100mほど先の信号を指して)

「あの 信号 を 左に 曲がって 50m ほど 行けば // ho ̀ka ́ mi ̀pwaĩ ́ 㷅õ bɛ bɛ㷊 t㷡ho ̀pi ̀ mĩ tã 50 la㷚㷊 θwa ̀ jĩ

ဟိုးက မီးပွိုင့် ကို ဘယ်ဖက် ချိုးပြီး မီတာ ၅၀ လောက် သွားရင်

左側 に ありますよ」

bɛ bɛ㷊 hmã hji ́dε ̅. //

ဘယ်ဖက် မှာ ရှိတယ် [Yin Moe Thet 2020:3](太字は筆者による)

この例では ဟိုး hó の後に奪格助詞 က kâ が付き、それが後の名詞 မီးပွိုင့် mí pwâ i㸎 「信号」 を限定 している。同種の例は岡野 (2011:84)で指摘されている。 この例で ဟိုးက hó =k â が限定している名詞

မီးပွိုင့် mí pwâ i㸎 「信号」 が空間名詞であるかどうかは判断がつきにくい。 これは次節で考察する。

以上、先行文献およびコーパスを詳細に検討したが、ဟိုး hó は位置名詞である時間名詞また は空間名詞と共起する例しか見られなかった。これを主要部名詞に先行するからといって、こ れを限定していると見なすかどうかは、ここでは考察しない。次節ではコンサルタントへの聞 き取りの結果を参照しつつ、その他の指示語との比較検討を行う。

(13) B:(100mほど先の信号を指して)

「ああの 信号 を 左に 曲がって 50m ほど 行けば // ho ࡯ND ࡢ PL ࡯SZD΢ ࡢ ̔} EʎࢦEʎު WǯKR ࡯SL ࡯ P΢Wm50 ODڠު ԬZD ࡯ M΢

¥³µ¾† Ÿ´¾›Ã³ƳŠÀ½ †³µ ž Àœ†À ‡Á³Ƴ¾Ʀ›´¾ Ÿ´–²ËÆ ·¢²†À ¤Ã²¾¡ŠÀ

左側 に ありますよ」

EʎࢦEʎު KPm KML ࡢGİ ࣃ. //

ž Àœ†À ŸÄ² ¡Ä³– À [Yin Moe Thet 2020:3](太字は筆者による)

(15)

5.   ဟိုး hó とその他の指示語との比較検討

本節ではဟိုး hóとその他の指示語について詳細に比較検討する。本節で出典が示されていな

い例は筆者の作例だが、コンサルタント17)に容認度を確認している。

5. 1.  位置名詞との共起

前節までの結論としてはဟိုး hóが格助詞を介在させずに名詞の前に現れる場合、その名詞は 時間名詞か空間名詞、すなわち位置名詞であった。ただ位置名詞であってもဟိုး hóと共起しな い例もある。a.が人間名詞、b.が非人間名詞である。

(14) a. ?* ဟိုးနေရာမှာ b. ?* ဟိုးအချိန်က hó-nè yà =hmà hó-ʔă tɕʰè iɴ=k̬â -place= -time= .

(ずっと向こうで) (遙か以前に)

(15) a. ဟိုနေရာမှာ b. ဟိုအချိန်က -nè yà =hmà hò-ʔă tɕʰè iɴ=k̬â -place= -time= . あの場所で あのとき

(14)a. 、b. が容認できない理由は今のところよくわからない。 ေနရာnèyà 「ところ」や အချ ိန်

ʔătɕʰèiɴ「時間」が特定性の低い名詞類であるからなのか、それとも ဟိုး hó が共起できる名詞

類が SEAlang のコーパスに出てくるようなものに限られているからなのか、理由ははっきりし ない。

なお指示限定詞のဟို hòはいずれも限定可能である(例(15)a. 、b.)。

5. 2.  非位置名詞との共起

次に ဟိုး hó が非位置名詞の前に現れることができるかどうかを、筆者の作例を使ってコンサ

ルタントに訊ねた。

(14) a. ?* ¥³µ¾·š¡²ŸÄ² b. ?*¥³µ¾§‡Á³šÀ†

hhoࡢࡢ-Qq\j KPj hhoࡢࡢ-ުýWǯ̸èiӦ N࢚k HÓ-place=LOC HÓ-time=P.T

(ずっと向こうで) (遙か以前に)

(15) a. ¥³µ·š¡²ŸÄ² b. ¥³µ§‡Á³šÀ†

hho࡯࡯-Qq\j KPj hho࡯࡯-ުýWǯ̸èiӦ N࢚k HÒ-place=LOC HÒ-time=P.T

あの場所で あのとき

(16)

(16) a. * ဟိုးလူ b. ?? ဟိုးဟာ

* hó-lù ?? -hà

-person -thing

(遙か向こうにいる人) (遙か向こうにあるもの)

(17) a. ဟိုလူ b. ဟိုဟာ

-lù hò-hà

-person -thing あの人 あのもの、あれ

上記例(16)から、ဟိုး hó は非位置名詞とほぼ共起できないことがわかる。(17)に見るように、指示限

定詞のဟို hò はそのようなことはなく、非位置名詞と共起可能である。

ではဟိုး hó が非位置名詞と共起できないかというと、岡野(2011:84)やYin Moe Thet(2020:2)

に見られるဟိုးက hó =k â という形で可能である。

(18)a. ဟိုးကလူ b. ဟိုးကဟာ

hó=k̬â -lù =k̬â -hà = -person = -thing 遙か向こうにいる人 遙か向こうにあるもの

(19)a. ?? ဟိုကလ ူ b. ?? ဟိုကဟာ

?? =k̬â -lù ?? =k̬â -hà = -person = -thing ??あそこの人 ??あそこのもの

ここに現れる က kâ は奪格助詞で、後の名詞を直接限定して「〜からの…」という意味にな る。これが意味するところは、奪格助詞によって標示される ဟိုး hó それ自体が空間名詞であ る、ということに他ならない。

(16) a. * ¥³µ¾¢¶ b. ??¥³µ¾¥²

* hhó-lù ?? hhó-hà

HÓ-person HÓ-thing

(遙か向こうにいる人) (遙か向こうにあるもの)

(17) a. ¥³µ¢¶ b. ¥³µ¥²

hhò-lù hhò-hà

HÒ-person HÒ-thing

あの人 あのもの、あれ

(18) a. ¥³µ¾†¢¶ b. ¥³µ¾†¥²

hhó N࢚k-lù hhó N࢚k-hà HÓ=ABL-person HÓ=ABL-thing

遙か向こうにいる人 遙か向こうにあるもの

(19) a. ??¥³µ†¢¶ b. ??¥³µ†¥²

?? hhò N࢚k-lù ?? hhò N࢚k-hà HÒ=ABL-person HÒ=ABL-thing ??あそこの人 ??あそこのもの

(17)

これに対して位置代名詞であるဟိုhò も奪格標示が可能だが、こちらは名詞を限定するのはかなり 不自然である(例(19)a. 、b.)。ဟိုhò が(特に現場指示の場合は)指示限定詞のဟိုhò を使った

ဟို-Nhò -Nで十分に表すことができるからと思われる。

以上から、ဟိုး hóは非位置名詞と共起するには奪格助詞က kâの介在が不可欠である。これは 他の指示語には見られない言語事実である。

5. 3.  本稿の説明に矛盾する例

Yin Moe Thet(2020)の例について、မီးပွိုင့် mí pwâ i㸎 「信号」について、コンサルタントは「位置名詞」

であるとの回答であった。(グロスおよび表記は本稿の解釈に変更してある)

(13)ʼ ဟိုးက မီးပွိုင့်ကို ဘယ်ဖက် ချိုးပြီး ...

hó=k̬â mí pwâ iɴ=k̬ò bɛ̀-p̬ ʰɛʔ tɕʰó =pí ...

=abl traffi c.signal= left-side bend= seq

あの信号を左に曲がって… [Yin Moe Thet 2020:3](一部省略)

ဟိုးက hó =k â によって限定されることはまたここをဟိုး မီးပွိုင့် hó mí pwâ i㸎(向こうの信号)とすることはでき ないとのことであった。これはဟိုး hó が位置名詞と共起するという説明と矛盾する。

またコーパス等には位置名詞を ဟိုးက hó=k̬â が限定する例は出現していなかった。本稿にお ける解釈では、この例の説明は不可能である。

ただこの文は日本語からの翻訳であり、コンサルタントは ဟိုးက မီးပွိုင့်ကို hó =k â mí pwâ i㸎=k ò 「あそ この信号に」の後に ေရာက်ရင် yauʔ=yì ɴ 「到着したら」が省略されていると感じるとも回答している。

また ဟိုးက မီးပွိုင့် hó =k â mí pwâ i㸎 「向こうの信号」を標示している格助詞 ကို kò は、これが位置 名詞なら向格、非位置名詞なら対格を標示する。対格の解釈は極めて不自然であるが、向格で あってもコンサルタントの言うように ေရာက်ရင် yauʔ=yì ɴ 「到着したら」が省略されていなければ解釈が できそうにない。18) 極めて破格の文と言えるかも知れないが、コンサルタントは自然な文であると回答し

ており、 今後の検討課題としたい。

5. 4.  格助詞との共起関係

では次に ဟိုး hó と格助詞との共起関係について検討する。まずは格助詞が所格、奪格、向格 として解釈される場合についてである。以下(20)〜(22)は岡野(2011:84)に挙がっている例だ が、そのときの文法性判断が今回は異なった。

(13)’ ¥³µ¾† Ÿ´¾›Ã³ƳŠÀ½†³µ ž Àœ†À ‡Á³Ƴ¾Ʀ›´¾ ...

hó Nࡩk PtSZkL݆ Nࡩz bܭҒ-Sࡩހܭݦ tܨȯoƴα’Çƴ ...

HÓ=abl traffic.signal=ALL left-side bend=CNJseq

あの信号を左に曲がって… [Yin Moe Thet 2020:3](一部省略)

(18)

(20) a. ဟိုးမှာ အိမ် ရှိတယ်၊ တွေ့လား။

hó=hmà ʔè iɴ ɕî =t̬ ɛ̀, twê =lá . = house exist= . fi nd=

(ずっと)向こうに家がある、見える?

b. ဟိုမှာ အိမ် ရှိတယ်၊ တွေ့လား။

=hmà ʔè iɴ ɕî =t̬ ɛ̀, twê =lá . = house exist= . fi nd=

あそこに家がある、見える?

(21) a. ဟိုးက(နေ) လာတယ်။ b. ဟိုက(နေ) လာတယ်။

hó=k̬â (-nè ) là =t̬ ɛ̀. hò =k̬â (-nè ) là =t̬ ɛ̀. = (-stay) come= . HÒ= (-stay) come= .

(ずっと)向こうから来た。 あそこから来た。

(22) a. ဟိုးကို သွားတယ်။ b. ဟိုကို သွားတယ်။

=k̬ò t̪wá =t̬ ɛ̀. =k̬ò t̪wá =t̬ ɛ̀.

= go= . = go= .

(ずっと)向こうへ行

った。 あそこへ行った。

岡野(2011:84)では(20)a.は文法的だが、(21)a.、(22)a.は非文法的だとしていたが、今回の コンサルタントはいずれも文法的だという。このように文法性容認度が人によって変わる理由 は不明であるが、今回の結果の方が矛盾がないとは言えるだろう。 ဟိုး hó は位置指示名詞と しての機能を有している、といえる。

次に非位置代名詞として ဟိုး hó が使われるかどうかについて検証する。表 2 に示したよう に、遠称Iの指示代名詞は ဟိုဟာ hòhà (もしくは融合形の ဟဝါhăwà 〜 ဟဝှာhăhwà)である。

(20) a. ¥³µ¾ŸÄ² §³ŸÀ ¡Ä³– ÀÐ ·–Ãƶ¢²¾Ñ

hhoࡢࡢ=hmà ުèiӦ ǯv W ࢚ʎ࡯, twê=lá.

HÓ=LOC house exist=VS.RLS find=Q

(ずっと)向こうに家がある、見える?

b. ¥³µŸÄ² §³ŸÀ ¡Ä³– ÀÐ ·–Ãƶ¢²¾Ñ

hho࡯࡯=hmà ުèiӦ ǯv W ࢚ʎ࡯, twê=lá.

HÒ=LOC house exist=VS.RLS find=Q

あそこに家がある、見える?

(21) a. ¥³µ¾†·š ¢²– ÀÑ b. ¥³µ†·š ¢²– ÀÑ

hhoࡢࡢ=N࢚k-Qq Oj W ࢚ʎ࡯. hho࡯࡯=N࢚k-Qq Oj W ࢚ʎ࡯.

HÓ=ABL(-stay) come=VS.RLS HÒ=ABL(-stay) come=VS.RLS

(ずっと)向こうから来た。 あそこから来た。

(22) a. ¥³µ¾†³µ ¤Ã²¾– ÀÑ b. ¥³µ†³µ ¤Ã²¾– ÀÑ

hhoࡢࡢ=N࢚z W ओZi W ࢚ʎ࡯. hho࡯࡯=N࢚z W ओZi W ࢚ʎ࡯.

HÓ=ALL go=VS.RLS HÒ=ALBL go=VS.RLS

(ずっと)向こうへ行った。 あそこへ行った。

(19)

(23)a. ဟိုဟာက ကောင်းတယ်။ b. ဟိုဟာကို ပေးတယ်။

hò hà =k̬â ká uɴ=t̬ ɛ̀ hò hà=k̬ò ̀ pé =t̬ ɛ̀. that1.one= good= . that1.one= give= .

あれはよい。 あれを与えた。

(24)a. ??ဟိုးက ကောင်းတယ်။ b.*ဟိုးကို ပေးတယ်။

 hó =k â ká u㸎=t ɛ hó =k ò pé =t ɛ .

 HÓ= good= . HÓ= give= .

aʼ.  ဟိုးကဟာက ကောင်းတယ်။ bʼ. ဟိုးကဟာကို ပေးတယ်။

 hó =k â -hà =k â ká u㸎=t ɛ hó =k â -hà =k ò pé =t ɛ .  HÓ= -thing= good= . HÓ= -thing= give= .  あっちのものはよい。 あっちのものを与えた。

a”. ??ဟိုးဟာက  ကောင်းတယ်။ b”.??ဟိုးဟာကို ပေးတယ်။

 hó -hà =k â  ká u㸎=t ɛ hó -hà =k ò pé =t ɛ . HÓ-thing=  good= . HÓ-thing= give= .

上記の例からすれば、ဟိုး hó は非位置代名詞としての用法を持っているとは言い難い。最も 自然なのは Yin Moe Thet(2020:2)が挙げている ဟိုးကဟာ hó=k̬â-hà (例(18)b.) という形式を用 いるケースである。これは格助詞 က kâ を用いた複合的な句であり、構成的な意味内容を持っ ている。

(24)b. は完全に容認不可であるのにもかかわらず、(24)a. が完全に非文法的とならない理

由、(24)a”、b”についても完全な非文とならない理由もよくわからない。

6.   ဟိုး hó は指示語なのか ―結論にかえて―

従来、指示語とされていたものは指示代名詞、位置代名詞、非位置代名詞の三つの形式が全 て揃っていた(表 2)。しかし、ဟိုး hóはかなり「抜け」が多い。

(23) a. ¥³µ¥²† ·†²ŠÀ¾– ÀÑ b. ¥³µ¥²†³µ ·›¾– ÀÑ

hhòhà N࢚k káuӦ W ࢚ʎ࡯ hhòhà N࢚z Sp W ࢚ʎ࡯.

that1.one=NOM good=VS.RLS that1.one=ACC give=VS.RLS

あれはよい。 あれを与えた。

(24) a. ?? ¥³µ¾† ·†²ŠÀ¾– ÀÑ b. * ¥³µ¾†³µ ·›¾– ÀÑ

N࢚k káuӦ W ࢚ʎ࡯ Ky N࢚z Sp W ࢚ʎ࡯.

HÓ=NOM good=VS.RLS HÓ=ACC give=VS.RLS

a’. ¥³µ¾†¥²† ·†²ŠÀ¾– ÀÑ b’. ¥³µ¾†¥²†³µ ·›¾– ÀÑ hó N࢚k-Kj N࢚k káuӦ W ࢚ʎ࡯ hó N࢚k-hà=N࢚z Sp W ࢚ʎ࡯.

HÓ=ABL-thing=NOM good=VS.RLS HÓ=ABL-thing=ACC give=VS.RLS

あっちのものはよい。 あっちのものを与えた。

a”. ??¥³µ¾¥²† ·†²ŠÀ¾– ÀÑ b”. ?? ¥³µ¾¥²†³µ ·›¾– ÀÑ -Kj N࢚k káuӦ W ࢚ʎ࡯ -hà=N࢚z Sp W ࢚ʎ࡯.

HÓ-thing=NOM good=VS.RLS HÓ-thing=ACC give=VS.RLS

(20)

表 3 現代口語ビルマ語の指示語体系とဟိုး hó

㏆⛠ 㐲⛠ϩ 㐲⛠Ϩ ¥³µ¾hó

఩⨨௦ྡモ ˜´ dì

“here”

§¸˜´ ުʎࡢdì

“there2

¥³µ hò

“there1

??¥³µ¾ hó

ᣦ♧㝈ᐃモ ˜´- dì-

“this”

§¸˜´- ުʎࡢdì-

“that2

¥³µ-hò-

“that1

¥³µ¾ hó㸦᫬㛫ྡモࡢࡳ㸧

㠀఩⨨௦ྡモ ᵓᡂᙧ ˜´¥² dìhà

“this one”

§¸˜´¥² ުʎࡢdìhà

“that2 one”

¥³µ¥² hòhà

“that1 one”

¥³µ¾†¥² hó=kࡩâ-hà

⼥ྜᙧ ˜± dà

“this one”

§¸˜± ުʎࡢdà

“that2 one”

¥£±~¥£Ä² hý(h)wà

“that1 one”

位置代名詞としては容認度がかなり低く、完全に容認不可能な例もある。指示代名詞とし ても容認度は、それが共起する名詞が位置名詞の場合は容認可能、非位置名詞の場合は容認 度がかなり低い。なお位置名詞の場合も、かなり共起可能な名詞は限られている可能性があ る。また「遠さ」を想起させるような位置名詞と共起する例が多く、特に時間名詞の用例 が多かった。非位置代名詞としては、ဟိုး hó 単独で用いられることは非常に容認度が低く、

ဟိုးကဟာ hó=k̬â-hà という句を用いる。統語的な複合句であり、これが体系化の中に組み込む

ことは躊躇わざるを得ない。

Yin Moet Thet(2020)が示唆するように、現場指示についてはもともと3項対立であったも のが、4項対立に変化している兆しとみることも可能かもしれない。筆者の個人的な体験でも

「ဟို hòよりももっと遠いのが ဟိုး hó」というようなネイティブスピーカーによる発言を何度

か耳にしている。とするならば、遠称Iよりも遠いところを特に指す方法が発展してきたと言 えるのかも知れない。つまり ဟိုး hóの品詞としては名詞であっても、それが統語的に許される 形式が第4の現場指示の3つの用法を埋めていく。そして一部は他の指示語と同じような形式を 取り始めた、という変化の途上にあるといえるのかもしれない。

この発展を考える上で興味深いのは(これも筆者個人の印象ではあるが)「遠い過去」 あるい は「現在からは隔絶した過去」を表す語や表現とဟိုးhó は極めて親和性が高く、用例数も他を 圧倒している点である。これが事実とすれば、「遠い過去」「現在からは隔絶した過去」などが

ဟိုး hó の元々の用法であり、現場指示用法は後から派生したものである可能性は少なくないと

思われる。もしそうであれば、これは指示語の発生と発展という意味では注目に値する。文語 ビルマ語において、指示限定詞ははっきりと存在するが、位置指示代名詞は部分的にしかな く、指示代名詞に至ってはそれよりもさらに少ないという事実から、ビルマ語の指示詞は指 示限定詞から他の語類が発展してきたとみるのが普通だからである。

表 2 現代口語ビルマ語の指示語体系 ㏆⛠ 㐲⛠ϩ 㐲⛠Ϩ ୙ᐃ⛠ ఩⨨௦ྡモ  ˜´  dì “here”  §¸˜´ ުʎࡢ dì“there2 ”  ¥³µ  hò “there 1 ”  ž À  b ʎ࡯  “where”  ᣦ♧㝈ᐃモ ˜´ -  dì-“this”  §¸˜´ -  ުʎࡢ dì-“that2” ¥³µ - hò-“that1” ž À - b ʎ࡯ -“which” 㠀఩⨨௦ྡモ  ᵓᡂᙧ  ˜´¥²  dìhà “this one” §¸˜´¥² ުʎࡢ dìhà“that
表 3 現代口語ビルマ語の指示語体系と ဟိုး  hó  ㏆⛠  㐲⛠ϩ  㐲⛠Ϩ  ¥³µ¾ hó  ఩⨨௦ྡモ  ˜´  dì “here”  §¸˜´ ުʎࡢ dì“there2 ”  ¥³µ  hò “there 1 ”  ??¥³µ¾ hó  ᣦ♧㝈ᐃモ  ˜´ -  dì-“this”  §¸˜´ -  ުʎࡢ dì-“that2” ¥³µ - hò-“that1” ¥³µ¾ hó㸦᫬㛫ྡモࡢࡳ㸧  㠀఩⨨௦ྡモ  ᵓᡂᙧ  ˜´¥²  dìhà “this one” §¸˜´¥² ުʎࡢdì

参照

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