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早稲田大学大学院基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻

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(1)

修士論文

ゲーミフィケーションとマズローの欲求 5段階説を用いたタグ付きコーパスの作成

早稲田大学大学院基幹理工学研究科 情報理工・情報通信専攻

二宗 素紀

学籍番号 5114F071-1

提出 2016 年 2 月 1 日

指導教授 中島 達夫

(2)

Making Corpus with Tags by Gamification and Maslow’s Hierarchy of Needs

Motoki Nishu

Thesis submitted in partial fulfillment of the requirements for the degree of

Master in Computer Science and Communications Enginering

Student ID 5114F071-1

Submission Date February 1, 2016

Supervisor Professor Tatsuo Nakajima

(3)

概要

ゲーミフィケーションとは,ゲームによる楽しさ,競争などの要素をゲーム以外の分野に持ち 込むことによってそのモチベーションを向上させようという手法である.既存のゲーミフィケーショ ン手法には,バッジ,クエスト,ランクなどが挙げられる.しかし,これらの既存のゲーミフィケー ション要素は簡単なタスクに対しては有効であるが,複雑なタスクにおいては面倒さが勝ってしまい うまく働かず,ゲーミフィケーションをフルパワーに活かせているとは言えない.

 また昨今ではSiriに代表される,人間のように会話することが出来る人工知能(AI)が多く作成され ている.しかし,Siri等の人工知能は物事の理由を答えることが出来ない.これは,物事の理由と結果の ような文間を結ぶデータ(コーパス)が存在しないが故に,機械学習で解決出来ていないからである.

このコーパスを作成するタスクは,単語に単に意味を振るような単純なタスクではなく,複数の文か ら理由と結果の両方を探しだすという複雑なタスクであるため,ツールで行うのには時間がかかり,

また単調であるために非常に苦痛である.

 そこで本研究では,複雑なタスクとして理由ー結果のタグ付きコーパス作成を扱い,既存のゲー ミフィケーション要素のみでモチベーションが向上するかどうかの検証,及び既存のゲーミフィケー ション要素とマズローの欲求5段階説の両方を利用したゲームデザインにした場合にモチベーション が向上するかどうかの検証を行う.

(4)

目 次

1.1 背景 . . . 1

1.1.1 ゲーミフィケーション . . . 1

1.1.2 マズローの欲求5段階説 . . . 1

1.1.3 タグ付きコーパス . . . 2

1.2 目的 . . . 2

1.3 論文の構成 . . . 2

第2章 関連事項及び研究 4 2.1 関連事例 . . . 4

2.2 関連研究 . . . 5

2.2.1 Google Image Labeler . . . 5

第3章 システム構成 6 3.1 アノテーションツール. . . 6

3.2 アノテーションゲーム. . . 6

3.2.1 既存のゲーミフィケーション要素のみ取り入れた場合(束縛の試練) . . . 6

3.2.2 マズローの欲求5段階説によるゲームデザインを取り入れた場合(自由の試練) . . . 7

3.2.3 開発環境 . . . 8

第4章 実験 9 4.1 実験目的 . . . 9

4.2 実験内容 . . . 9

4.2.1 バートルテスト . . . 9

4.3 結果 . . . 10

4.3.1 事前実験結果 . . . 10

4.3.2 アンケート結果 . . . 10

4.4 考察 . . . 24

4.4.1 ゲーミフィケーション要素がない場合 . . . 24 . . . .

(5)

第5章 結論 26 5.1 結論 . . . 26 5.2 将来課題 . . . 26

参考文献 28

(6)

図 目 次

1.1 マズローの欲求5段階説 . . . 1

2.1 4travel . . . 4

2.2 ChoreWars . . . 5

3.1 アノテーションツール画面 . . . 6

3.2 既存のゲーミフィケーション要素を取り入れた束縛の試練画面. . . 7

3.3 マズローの欲求5段階説によるゲームデザインを取り入れた自由の試練画面 . . . 8

4.1 難易度があることによるゲームプレイのモチベーションの向上の有無. . . 11

4.2 制限時間によるモチベーションの向上の有無 . . . 11

4.3 クリアゲージによるクリア判定によるモチベーションの向上の有無 . . . 12

4.4 実績が確認出来ることによるモチベーションの向上の有無 . . . 13

4.5 ランキングによるモチベーションの向上の有無 . . . 13

4.6 問題をクリアすることで得られる報酬によるモチベーションの向上の有無 . . . 14

4.7 アイテム要素によるモチベーションの向上の有無 . . . 15

4.8 ライバル機能によるモチベーションの向上の有無 . . . 15

4.9 問題数の量 . . . 16

4.10 自由の試練で同じ問題を複数回回答したかどうか . . . 17

4.11 自由の試練のプレイが作業に感じたか . . . 17

4.12 自由の試練でNEWSの試練,レビューの試練,小説の試練のどれが一番やりやすかったか. . . 18

4.13 自由の試練は楽しかったか . . . 18

4.14 束縛の試練で同じ問題を複数回回答したかどうか . . . 19

4.15 束縛の試練のプレイが作業に感じたか . . . 19

4.16 束縛の試練でNEWSの試練,レビューの試練,小説の試練のどれが一番やりやすかったか. . . 20

4.17 束縛の試練は楽しかったか . . . 20

4.18 自由の試練と束縛の試練のどちらが楽しかったか . . . 21

4.19 アノテーションツールで同じ文章に複数回タグ付与作業を行ったか . . . 21 . . . .

(7)

表 目 次

4.1 バートルテスト結果 . . . 10

4.2 難易度に対するコメント . . . 11

4.3 制限時間に対するコメント . . . 12

4.4 クリアゲージに対するコメント . . . 12

4.5 実績に対するコメント. . . 13

4.6 ランキングに対するコメント . . . 14

4.7 報酬に対するコメント. . . 14

4.8 アイテムに対するコメント . . . 15

4.9 ライバル機能に対するコメント . . . 16

4.10 自由の試練で同じ問題を複数回回答したかどうかの理由 . . . 17

4.11 自由の試練が作業に感じたかどうかの理由 . . . 17

4.12 自由の試練が楽しかったかどうかの理由 . . . 18

4.13 束縛の試練で同じ問題を複数回回答したかどうかの理由 . . . 19

4.14 束縛の試練のプレイが作業に感じたかどうかの理由 . . . 19

4.15 束縛の試練は楽しかったどうかの理由 . . . 20

4.16 アノテーションで同じ問題を複数回回答したかどうかの理由 . . . 22

4.17 アノテーションツールによる作業が楽しかったかどうかの理由. . . 22

4.18 バートルテストによるアンケート比較 . . . 22

4.19 自由の試練と束縛の試練とアノテーションツールの比較 . . . 23

4.20 各被験者の回答数の比較 . . . 23

(8)

第 1 章 導入

本章では、この研究の背景、目的、および以降の論文の構成について述べる。

1.1 背景

1.1.1 ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションとは,ゲームによる楽しさ,競争などの要素をゲーム以外の分野に持ち込むことによっ てそのモチベーションを向上させようという手法である.既存のゲーミフィケーション手法には,バッジ,クエ スト,ランクなどが挙げられる.しかし,これらの既存のゲーミフィケーション要素は簡単なタスクに対して は有効であるが,複雑なタスクにおいては面倒さが勝ってしまいうまく働かないことがあり,ゲーミフィケー ションをフルパワーに活かせているとは言えない.

1.1.2 マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説とは,人間の欲求が5段階のピラミッド型になっており,下の階層の欲求が満たさ れるとその上位の階層の欲求を満たしたくなるというものである.下の階層から順に生理的欲求,安全欲求,

社会的欲求,尊厳欲求,そして自己実現欲求の合計5つの欲求で構成される(図1.1).

(9)

生理的欲求とは食欲や睡眠欲のように本能的な欲求のことである.生理的欲求を満たすと,安全欲求と呼ば れる安全な暮らしを求める欲求を満たしたくなる.安全欲求を満たすと次に社会的欲求を求める.社会的欲求 とは,家庭や会社のようにある一定のグループに属していたいという欲求である.この欲求が満たされないと 人は孤独を感じてしまう.この社会的欲求を満たすと,尊厳欲求と呼ばれる高次の欲求を求めるようになる.

この欲求は,社会的欲求を満たすために属したグループにおいて自分を認めてもらいたいという承認欲求であ る,そしてこの尊厳欲求を満たすと,創造的活動をしたいという自己実現欲求が生まれる.

1.1.3 タグ付きコーパス

昨今ではSiri[1]やしゃべってコンシェル[2]に代表される,人間のように会話することが出来る人工知能(AI)

が多く作成されている.これらの人工知能は,例えば「東京タワーはどこにあるの?」と質問すると正しく場 所を答えてくれる.これは,googleのナリッジグラフ[3]のように,「東京タワー」の場所として「芝公園」が データとして存在しているからである.しかし,これらの人工知能は「東京タワーはなぜ出来たの?」といっ た物事の理由を答えることが出来ない.これは,「東京タワーが出来た.」という結果の文章と,「このタワーの 目的は,東京地域の電波発信中継基地である.」という理由の文章が,「理由結果」というタグが付いてデータ

(コーパス)として存在しないが故に,機械学習で解決出来ていないからである.

このコーパスを作成するタスクは,単語に単に意味を振るような単純なタスクではなく,理由と結果の文章を 組で作成するという複雑なタスクであるため,ツールで行うのには時間がかかり,また単調であるために非常 に苦痛である.

1.2 目的

本研究では,理由と結果の文章の組を作成するという複雑なタスクのコーパス作成を,既存のゲーミフィケー ション要素だけでタグ付与者のモチベーションが向上するのか,また既存のゲーミフィケーション要素だけで なくマズローの欲求5段階説を用いたゲームデザインを採用した場合でタグ付与者のモチベーション向上が可 能であるのかの検証を行う.

 まずユーザーに理由と結果の文章の組を作成するという複雑なタスクを行ってもらうために本研究ではアノ テーションツールを作成し,またそのタスクに対して既存のゲーミフィケーション要素のみを組み込んだ場合 のゲームと,マズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすようなゲームデザインにした場合のゲームの2 種類を作成し,実験を行った.実験後アンケート及び被験者の回答数を集計することで知見を得た.

1.3 論文の構成

本論文は5つの章に分かれている.

第 1 章 導入

導入として,本研究の背景と目的を述べた.

(10)

第 2 章 関連事例および研究

本研究で主眼においているゲーミフィケーションに関する関連事項や,本研究に関連する研究について述 べる.

第 3 章 実装

本研究のために開発したアノテーションツール及び2種類のアノテーションゲームについて,その詳細を述 べる.

第 4 章 実験

今回行った実験について,その内容や結果,及び考察について述べる.

第 5 章 結論

今回の研究から得られた結論と将来課題について述べる.

(11)

第 2 章 関連事項及び研究

本章では,ゲーミフィケーションが用いられているサービスや,タグ付けに関連する研究について述べる.

2.1 関連事例

ゲーミフィケーションを用いた研究やサービスの例は、いくつか存在する。例えば、カカクコムが運営する クチコミ旅行サービスであるフォートラベル[4](URL:http://4travel.jp/)では,「アクセス数ランキング」やQ&A の「回答数ランキング」など,ユーザーの承認欲求を刺激するようなランキング要素が組み込まれている.

図2.1: 4travel(http://4travel.jp/help/service/)

また、雑務をゲーム化するChoreWars[5](URL:http://www.chorewars.com/)というサービスもある.ChoreWars では,家庭やオフィスでの雑務のようにあまり楽しみがないタスクをクエストとして登録し,各々のタスクを こなすことで経験値を得てキャラクターを成長させていくというものである.

(12)

図2.2: ChoreWars(http://www.chorewars.com/)

こういったゲームは、ランキングやクエスト等,単純なゲーミフィケーション要素のみによって単純なタス クをゲーム化し成功している例である.

2.2 関連研究

本節では、タグ付けに関連する研究を紹介する。

2.2.1 Google Image Labeler

Google Image Labelerとは,2006年9月1日(米時刻)に公開された画像タグ付けゲームである.このゲーム では,ランダムに選ばれた2名のプレイヤーが同じ画像にタグ付けを行う.2名が同じタグを付けたというこ とはそのタグは画像にふさわしいであろう,というアイデアを元に作成されている.

 画像に映っている物体が何であるかを判定する最も単純なアイデアは,画像認識によって推定する手法であ る.しかし,この手法は精度に問題があり,色々なアルゴリズムが試されている段階である.そこでgoogleは,

人手によって膨大な量の画像にタグを付けるという別の視点からの手法を試したのがこのGoogle Image Labeler である. 人手による画像タグ付けというタスクは,単調であり,かつタグ付けを行う人による恣意性に左右 されるという問題があるが,Google Image Labelerではこのタスクをゲーム化することで単調作業を楽しくさ せ,また2名のプレイヤーの両者が答えたタグを正解とすることにより恣意性を解決している.

(13)

第 3 章 システム構成

本章では,本研究の実験のために開発したシステムであるアノテーションツール及びアノテーションゲーム について述べる.アノテーションツール及びアノテーションゲームの目的は共に理由と結果の文章の組のデー タを集めることである.

3.1 アノテーションツール

文間をまたいで理由と結果のタグを付与するツールが存在しないため,本研究ではこのアノテーションタス ク用のツールを自作した(図3.1).本ツールでは予めタグ付与用の文章を用意し,ユーザーはその文章の中か ら理由とその結果の組であると思われるものを抽出することを行う.本ツールではタグ付与用文章の分野とし

てNEWS,商品レビュー,小説の3種類用意し,それぞれ文章10個を1セットとしたものを3セットずつ,

計9セット用意した.

図3.1:アノテーションツール画面

3.2 アノテーションゲーム

本研究では,アノテーションツールに既存ゲーミフィケーション要素のみを組み込んだ探し物ゲーム(束縛 の試練)と,既存ゲーミフィケーション要素だけでなくマズローの欲求5段階説を利用したゲームデザインに した連想ゲーム(自由の試練)の2つのゲームを作成した.

3.2.1 既存のゲーミフィケーション要素のみ取り入れた場合 (束縛の試練)

束縛の試練では,与えられた複数の文章から理由と結果の組を抽出するという,本研究で作成したアノテー ションツールと同様各文章にタグを付けるタスクに,制限時間,クリアゲージ,スコア,グレードの要素を入

(14)

れることにより探し物ゲームとし,さらに既存ゲーミフィケーション要素であるミッション,ランキング,ラ イバル機能を組み込んだ.本システムではランキングやライバル機能によりマズローの欲求5段階説における 社会的欲求,尊厳欲求を満たすことが出来るが,与えられた文章から抽出するという束縛があるので,創造的 活動をしたいという自己実現欲求が満たされない.

図3.2:既存のゲーミフィケーション要素を取り入れた束縛の試練画面

3.2.2 マズローの欲求5段階説によるゲームデザインを取り入れた場合 (自由の試練)

自由の試練では,束縛の試練では満たすことが出来ないマズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすよ うなゲームデザインにするため,与えられた文章から理由と結果の組を抽出するのではなく,結果の文章のみ を与えてその文章が生じる理由となった文章を自分で創作するという連想ゲームの形にした.また,束縛の試 練で用いた既存ゲーミフィケーション要素であるミッション,ランキングやライバル機能,またゲーム部分に おける制限時間,クリアゲージ,スコア,グレードを同様に採用している.

(15)

図3.3:マズローの欲求5段階説によるゲームデザインを取り入れた自由の試練画面

3.2.3 開発環境

本ツール及びゲームを開発するに当たり必要になったプログラミング言語及びツールを以下に示す.

• 使用言語:javascrypt, PHP, HTML, CSS

• 使用フレームワーク:materialize(CSSフレームワーク)

(16)

第 4 章 実験

本章では,本研究の実験について,実験の環境や内容.およびその結果とそれに基づいた考察を述べる.

4.1 実験目的

本実験の目的は.理由と結果の組の文章を集めたタグ付きコーパスの作成という複雑なタスクに対してミッ ションやランキング等の既存のゲーミフィケーション要素のみでモチベーションが向上するのか,また既存の ゲーミフィケーション要素だけでなくマズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすようなゲームデザイン にした場合にモチベーションが向上するのかの検証を行うことである.

4.2 実験内容

本実験は,自由の試練と束縛の試練のみのプレイを22歳から24歳までの男性4名,自由の試練と束縛の試 練とアノテーションツール全てのプレイを22歳から24歳までの男性5名,女性3名に被験者として参加して もらった.まず事前実験として,ゲーマータイプの分類としてよく使われるバートルテストを受けてもらい,

その後約1週間の間アノテーションツール,アノテーションゲームを自由に使用してもらった.実験後,それ ぞれの被験者にツール及びゲームの利用モチベーションに関するアンケートを行い,また各被験者のそれぞれ のタスクに対する回答数も集計した.

4.2.1 バートルテスト

バートルテストとは,リチャード・バートル氏が考案したゲーマータイプの分類手法である.ユーザーはい くつかの質問に答えることにより,以下の4つの要素をどれほど持っているかを判別する.

• achiever

• explorer

• griefer

(17)

4.3 結果

本節では,本実験によって得られた結果を示す.

4.3.1 事前実験結果

事前実験で行ったバートルテストの結果を下記の表4.1に示す.なお,各被験者はachiever,explorer,griefer,

socializerのうち60%以上の数値のタイプを持つとする.

表4.1:バートルテスト結果 被験者番号 achiever[%] explorer[%] griefer[%] socializer[%]

1 47 73 20 60

2 60 53 40 47

3 60 33 40 67

4 40 87 13 60

5 60 33 80 27

6 53 27 67 53

7 33 53 60 53

8 33 80 13 60

9 40 67 33 60

10 33 80 33 53

11 67 53 47 33

12 47 60 53 40

4.3.2 アンケート結果

ここでは,実験後に行ったアンケート結果を述べる.なお,アンケートは7段階のリッカート尺度(1がそう 思わない,7がそう思う)及び,コメントにより行った.

自由の試練,束縛の試練共通の既存のゲーミフィケーションに関するアンケート結果

まず,作成したゲーム(自由の試練.束縛の試練共通)の両方に使用した既存のゲーミフィケーションの要素 によるモチベーションの向上の有無のアンケート結果(リッカート尺度)を以下の図4.1,図4.2,図4.3,図4.4,

図4.5,図4.6,図4.7,図4.8に,コメントによるアンケート結果を表4.2,表4.3,表4.4,表4.5,表4.6,表 4.7,表4.8,表4.9示す.

(18)

図4.1:難易度があることによるゲームプレイのモチベーションの向上の有無

表4.2:難易度に対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 難易度に差があり,その差が適切(だと思われる)なのでどんどん上のレベルに挑戦していこ うというモチベーションになりました.

難易度があると,とりあえず簡単なものからやっていこうという指標になる,何からやればい いかわかるとモチベーションが上がる.

否定的 特に束縛の試練は,Easyでも相当面倒だったため,NormalとかHardがもっと難しい事を考 えてモチベーションが下がった.

ゲームに難易度を求める事があまりないので,モチベーションはあがりませんでした.という より、Easyが自分にとっては十分難しかったので,これ以上の難易度をプレイしようと思い ませんでした.

(19)

表4.3:制限時間に対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 制限時間があった方が緊迫感があり、少しスリルになってました。

ギリギリ答えられなかったときに、悔しくてもう一回挑戦したり、次は間に合わせようって なってプレイ回数も集中も上がった

否定的 焦りやすい性格なので,制限時間があって少しモチベーションが下がりました.ただ,制限時 間のないツールに比べては,クリアしようというモチベーションがありました.時間が決まっ ているぶん,答えることに集中することになりました.

図4.3:クリアゲージによるクリア判定によるモチベーションの向上の有無

表4.4:クリアゲージに対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 クリアしようという気持ちになったので,モチベーションは向上したと思います.ゲージがあ ることであと何問答えれば良いのかが分かりやすかったです.

ギリギリ答えられなかったときに、悔しくてもう一回挑戦したり、次は間に合わせようって なってプレイ回数も集中も上がった

否定的 クリアしようとするモチベーションは高まったが,3,4問でクリア条件を達成してしまうた め,それ以降は面倒さが上回った.8割方やらないとクリアにならない,のように,もっとク リア条件を厳しくすると,後半もダレずに出来たと思う.

(20)

図4.4:実績が確認出来ることによるモチベーションの向上の有無

表4.5:実績に対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 実績を見ることで自分がどこまでやったか/どこをやっていないかが確認でき,やっていない ところをやろうとするモチベーションの高まりにつながりました.

否定的 クリアしようとするモチベーションは高まったが,3,4問でクリア条件を達成してしまうた め,それ以降は面倒さが上回った.8割方やらないとクリアにならない,のように,もっとク リア条件を厳しくすると,後半もダレずに出来たと思う.

図4.5:ランキングによるモチベーションの向上の有無

(21)

表4.6:ランキングに対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 他のユーザーと競いあう形で,リアルタイムで抜かされてるのを見ると抜き変えそうと躍起 になった.

ランキングが変動しやすかったので,自分でも上位に入れるかもしれないと思って,モチベー ションが向上しました.普段はあまり上位を狙おうと思わないのですが,上がりやすいのが分 かると,モチベーションになりました.

否定的 ランキング上位に行きたいという気になった。.ただ,上位の人のポイントがそれほど自分と 離れておらず,ちょっと頑張れば1位になれそうな感じであったため,「いま頑張らなくても,

後でいいか」という気持ちになってしまった.

図4.6:問題をクリアすることで得られる報酬によるモチベーションの向上の有無

表4.7:報酬に対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 つまるところランキングでポイントを稼ぐためのアイテムが貰えるならモチベーションにもな ります.

ランキングが変動しやすかったので,自分でも上位に入れるかもしれないと思って,モチベー ションが向上しました.普段はあまり上位を狙おうと思わないのですが,上がりやすいのが分 かると,モチベーションになりました.

否定的 向上しなくはなかったが,問題あたりの面倒さに比べて,ジュエルの獲得数が少なすぎる. 段 位が上がったり,あるいは実績解除によるジュエルの獲得のほうが一気に貰えたためにやる気 が出た.

クリアするより実績を解除するほうがジュエルを獲得できたので、これによるモチベーション はそこそこでした。

(22)

図4.7:アイテム要素によるモチベーションの向上の有無

表4.8:アイテムに対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 今回のアイテムがポイントだったので,ランキングが上がると思ったらモチベーションになり ました.ポイントでなくても,コレクションアイテムでもモチベーションは向上したと思いま す.

ランキングを上げるためにはポイントを獲得する必要があり,それがジュエルで購入できるた め,その分モチベーションが向上した。.よって,ランキングによるモチベーションの向上分 程度はモチベーションが向上した.

否定的 手軽にポイントが増えるのはいい,が結局みんな使うので意味ない.

どちらとも言えない.貯まったジュエルに応じて自動でポイントが加算されるか,ジュエル じゃなくて始めからランキングにかかわるポイントとして渡してもらった方が自分は楽で嬉し い.ただし,ジュエルでポイント以外のものが買えたら変わるかも.

(23)

表4.9:ライバル機能に対するコメント 回答の性質 回答

肯定的 仲の良い相手をライバル登録してその相手に勝ちたくなった.大きな集団の中で上位に立つよ り,能力の近い相手と切磋琢磨するのが好きだから.

ランキングを上げるためにはポイントを獲得する必要があり,それがジュエルで購入できるた め,その分モチベーションが向上した。.よって,ランキングによるモチベーションの向上分 程度はモチベーションが向上した.

否定的 競争をしていても,勝ったことによるメリットが特になかったからかもしれません.ランキン グはよく見ましたが特別ライバルのみを気にすることは少なかったかと.

ライバルを意識するより,ランキングを意識することが多かったから.

図4.9:問題数の量

回答の性質 回答

否定的 各難易度5問*3にして細かい時間でできるようにするのもよかったかなと思います.

結構1プレイに時間がかかり,入力しなければならない文字数も多いので,それによってモチ ベーションが削がれ気味だった.

自由の試練のみに関するアンケート結果

次に自由の試練のみに関するアンケート結果を以下の図〜に示す.

(24)

図4.10:自由の試練で同じ問題を複数回回答したかどうか

表4.10:自由の試練で同じ問題を複数回回答したかどうかの理由

回答の性質 回答

肯定的 クリアはしたが失敗してしまったと感じたので,ハイスコアを塗り替えるべくプレイした.

easyぐらいグレードAAAにしたかった.

否定的 他の問題をプレイしたかったから.全部解答できたから.

面倒だった.

図4.11:自由の試練のプレイが作業に感じたか

表4.11:自由の試練が作業に感じたかどうかの理由

回答の性質 回答

肯定的 頭を使うので作業という感覚ではなかった.

比較的面倒さは少なく,楽しんでやれたため.

(25)

図4.12:自由の試練でNEWSの試練,レビューの試練,小説の試練のどれが一番やりやすかったか

図4.13:自由の試練は楽しかったか

表4.12:自由の試練が楽しかったかどうかの理由

回答の性質 回答

肯定的 小説の試練で理由を想像するのが楽しく,制限時間のゲージもいい刺激になったように感じま す.

大喜利をやっているようで普段使わない頭を使っている感じがした.また回答が浮かんでから 書くまでの時間が短く,タイピング練習の感覚があった.

否定的 正解がないのでクリアの実感がない.

束縛の試練のみに関するアンケート結果

同様のアンケートを束縛の試練についても行った結果を以下の図〜〜に示す.

(26)

図4.14:束縛の試練で同じ問題を複数回回答したかどうか

表4.13:束縛の試練で同じ問題を複数回回答したかどうかの理由

回答の性質 回答

否定的 1ステージが長いので.. 面倒だった.

図4.15:束縛の試練のプレイが作業に感じたか

表4.14:束縛の試練のプレイが作業に感じたかどうかの理由

回答の性質 回答

肯定的 回答の自由度が自由の試練より低く,作業感が強かった.

ゲーミフィケーション的な要素はあったものの,それを大きく上回る面倒さがあったから.

(27)

図4.16:束縛の試練でNEWSの試練,レビューの試練,小説の試練のどれが一番やりやすかったか

図4.17:束縛の試練は楽しかったか

表4.15:束縛の試練は楽しかったどうかの理由

回答の性質 回答

肯定的 コピペすることが多かったけど,その分楽で,見つける作業も割りと楽しかった.

作業感が強かったものの,どれだけ短時間で出来るか,というタイムアタックの感覚で楽しめ た.

否定的 国語の問題を解いているようで,あまり楽しくはなかったです.

自由の試練と比べて、作業感・やらされている感がかなり強かったです。

自由の試練と束縛の試練の比較に関するアンケート結果

また,自由の試練と束縛の試練のどちらが楽しかったかを聞いた結果を以下の図〜に示す.

(28)

図4.18:自由の試練と束縛の試練のどちらが楽しかったか

回答の性質 回答

自由の試練 自由の試練は想像力をかき立てられるが,束縛の試練はゲームというより国語の問題集のよ うだった.

束縛の試練が国語の問題だったのに対して,自由の試練は自由に想像できたので楽しかったと 思います.

束縛の試練 まだ国語の問題要素のある抜出しのほうがたのしい.

束縛の試練の方が与えられた中からの抜き出しな文楽しいというか楽でした.

アノテーションツールに関するアンケート結果

最後に,アノテーションツールに関して,複数回同じ文章に複数回タグを振ったか,作業自体は楽しかった のかを聞いたアンケート結果を以下の図〜に示す.

(29)

表4.16:アノテーションで同じ問題を複数回回答したかどうかの理由 回答の性質 回答

否定的 こちらは本当に辛かったです.やる気がでなかった.

面倒だった.

図4.20:アノテーションツールによる作業は楽しかったか

表4.17:アノテーションツールによる作業が楽しかったかどうかの理由

回答の性質 回答

肯定的 正答を求められているタイプだと,じっくり考える時間があるほうが嬉しいので,ゲームの束 縛よりもツールのほうが楽しめました.

とてつもなく面倒だった

束縛の試練よりさらに作業感が強かった.

否定的 時間制限がなく束縛の試練に比べてのんびり解答できるので焦りなどはありませんでしたが,

そのぶんなかなか進まず,だんだん楽しさよりも面倒くささが増えていった気がします.

バートルテストによるアンケート比較

また被験者をバートルテストによる分類し,各プレイヤータイプに対するゲーミフィケーション要素に関す るアンケート結果の加重平均を計算したものが以下の表4.18である.なお,そう思うを(+7),そう思わないを (+1)として計算している.

表4.18:バートルテストによるアンケート比較

プレイヤータイプ 難易度 制限時間 クリアゲージ 実績 ランキング 報酬 ライバル アイテム

achiever 6.00 5.00 3.50 5.75 6.25 6.25 5.50 5.25

explorer 3.00 3.80 4.60 4.60 5.20 4.00 3.60 4.80

griefer 5.00 6.67 4.67 6.33 6.00 6.00 3.00 5.00

socializer 3.40 3.00 4.00 4.80 5.40 4.20 4.00 5.60

(30)

自由の試練と束縛の試練とアノテーションツールの比較

各被験者の自由の試練と束縛の試練の作業感,自由の試練と束縛の試練とアノテーションツールの楽しさの 比較は以下の表4.19の通りとなった.

表4.19:自由の試練と束縛の試練とアノテーションツールの比較

被験者 番号

自由の試練 の作業感

束縛の試練 の作業感

自由の試練 の楽しさ

束縛の試練 の楽しさ

ツールでの 楽しさ

1 6 7 2 1 1

2 2 2 7 4 5

3 3 6 6 2 1

4 3 5 5 3 3

5 2 3 7 7 4

6 5 7 3 1 1

7 2 6 6 3 2

8 3 7 6 3 4

9 7 5 1 2 -

10 6 6 6 7 -

11 2 6 6 5 -

12 4 4 4 4 -

各被験者の回答数

また各被験者の自由の試練での合計回答数,束縛の試練での合計回答数,ツールでの合計回答数は以下の表 4.20の通りとなった.

表4.20:各被験者の回答数の比較

被験者番号 自由の試練の回答数 束縛の試練の回答数 ツールでの回答数

1 196 33 29

2 198 91 173

3 120 62 60

4 96 0 16

5 192 121 20

6 93 39 40

7 88 61 77

(31)

4.4 考察

本研究の目的は,複雑なタスクに対して既存のゲーミフィケーション要素のみでモチベーションが向上する のか,また複雑なタスクに対して既存のゲーミフィケーション要素だけでなく,マズローの欲求5段階説を利用 したゲームデザインにすることによるモチベーションの向上の有無はあるのか,を検証することである.まず 仮説として,そのままだとモチベーションが上がらないような複雑なタスクに対しては既存のゲーミフィケー ション要素だけではうまくモチベーションが向上せず,複雑なタスクをうまくマズローの欲求5段階説を利用 したようなゲームデザインにすることによって向上が見られるのではないか,と考えていた.これは,複雑な タスクにおいては既存のゲーミフィケーション要素だけでは面倒さが勝ってしまいモチベーションが上がりに くく,またマズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすようなゲームデザインにすれば,面倒さよりも創 造意欲の方が勝るのではないか,と考えていたからである.

4.4.1 ゲーミフィケーション要素がない場合

まず既存のゲーミフィケーションも使わない場合であるが,図4.20よりユーザーのモチベーションはかなり 低い結果となっている.これは表4.17の否定的なコメントを見ても,面倒さが非常に大きかったことが要因と なっている.その結果,図4.19の通り同じ文章に対して複数回タグ付け作業を行う被験者はほぼいないことに なっている.

4.4.2 ゲーミフィケーション要素自体に関して

次にゲーミフィケーション要素(難易度,制限時間,クリアゲージ,実績,ランキング,報酬,ライバル,ア イテム)自体によるモチベーションの向上の有無について述べる.まず難易度についてだが,表4.18より,達 成することを好むachiever,対人戦や競争を好むgrieferといった,高難易度を越えていくことにモチベーショ ンが高まるタイプには有効で,逆に探索を好むexplorer,交流を好むsocializerといった高難易度を求めないタ イプのプレイヤーにはいい結果が得られず,どちらも妥当な結果となっている.次に制限時間についてだが,

表4.18より,grieferタイプに特に有効で,逆にsocializerタイプにはあまりいい結果となっていない.これは,

gieferタイプは相手を速やかに倒す対人気質であること,またsocializerは時間を気にすることなく他の人と交

流したいタイプであることを考えるとこちらも妥当な結果と言える.次にクリアゲージについてだが,表4.18 から見ても特にどのタイプのプレイヤーにも有効な結果とはなっていない.これは表4.4の否定的な意見のよ うに,ゲーム調整によるクリア判定が緩すぎて簡単にクリアゲージを超えてしまい,それ以上は面倒さが勝っ てしまっていることが大きな原因と見られるので,テストプレイの回数を重ねて調整すれば改善が見られると 考えられる.次に実績とランキング,報酬についてだが,表4.18よりこれらはどのタイプにもおおよそ有効で あるが特にgrieferタイプとachieverタイプに有効であると見られる.これはgrieferタイプは相手を倒すこと の実績を好み,またachieverタイプは目に見える実績を特に好むことから妥当である.次にライバル機能につ いてだが,表4.18から対人や競争そ好むgrieferタイプが低くなるという結果になってしまっている.これは 表4.9の否定的な意見から,勝っている時のメリットがなかったことや,ライバルよりランキングを意識する ことの方が多かったことが原因として挙げられる.故にライバルのポイントを抜いた時や一定時間勝ってると 何らかの報酬を与えるようなシステムにすれば改善されると考えられる.最後にアイテム要素について述べる.

表4.18より全タイプにおおよそ効果はあると言える結果であったが,これは今回アイテムがポイントを得る

(32)

効果のあるもののみであり,表4.8のコメントにもある通りランキングが上がるという意味でモチベーション が上がっているだけであるため,コレクション要素のあるようなアイテムを追加すればさらにモチベーション 向上に繋がったのではと考えられる.以上より,今回用いたゲーミフィケーション要素のうち実績,ランキン グ要素はどのタイプにもうまくモチベーション向上に作用し,それ以外のゲーミフィケーション要素もプレイ ヤーのタイプによってはうまく働いていると言える.

4.4.3 ゲーミフィケーション要素のみ取り入れた場合 (束縛の試練)

ゲーミフィケーション要素のみを取り入れた場合の結果は図4.14,図4.15,図4.16,図4.17の通りである.

第4.4.2章より,ゲーミフィケーションの要素のみを取り出して取り出してアンケートを取るとうまくモチベー

ションの向上に繋がっているように思われるが,表4.20の束縛の試練の回答数とツールでの回答数を比較する と,モチベーションが向上しているとは言えない.これは表4.14や表4.15の否定的な意見から,ゲーミフィ ケーション要素よりも作業感が勝り,非常に面倒であったからであると考えられる.その結果図4.14の通り同 じ問題に答える被験者もいなかった.故に,複数の文章から理由と結果の組を取り出すという複雑なタスクに おいて単純にゲーミフィケーション要素のみを加えてモチベーションが向上しているとは言えない.

4.4.4 ゲーミフィケーション要素とマズローの欲求5段階説によるゲームデザイン取り入れ

た場合 (自由の試練)

自由の試練ではゲーミフィケーション要素だけでなく,マズローの欲求5段階説における自己実現欲求を満 たすような,つまり創造的活動が出来るようなゲームデザインにするために,束縛の試練のように複数の文章 から抜き出すのではなく,結果の文章のみ与えられて理由の文章は自分で考える連想ゲーム形式とした.その

結果が図4.10,図4.11,図4.12,図4.13であり,束縛の試練との比較が表4.19と表4.20の通りである.まず

表4.19から,被験者12名中8名が束縛の試練よりも作業感が減り,また束縛の試練よりも楽しく感じたとい う結果となっている.その結果,表4.20から被験者12名全員が束縛の試練よりも自由の試練の方が回答数が 多くなっている.これは,表4.11の肯定的意見にある通り,文章を選ぶというタスクを連想ゲームという自ら 頭を使うタスクに置き換えることによりうまく作業感を減らし,また表4.12の肯定的意見にあるように連想す るという要素が楽しく感じたためモチベーションが向上したためであると考えられる.その結果,束縛の試練 では同じ問題に対して同じ回答をした被験者は0名だったのが自由の試練では図4.10から被験者の半数まで増 えていることが分かる.また表4.10から,ハイスコアやグレード等のゲーミフィケーション要素もうまく作用 していると見られる.故に,本研究では,ゲーミフィケーション要素だけではうまくモチベーションが上がら ない複雑なタスクにおいて,マズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすようなゲームデザインにするこ とにより作業感を減らし,ユーザーのモチベーションを向上させることが出来る可能性があることを示せた.

(33)

第 5 章 結論

本章では、本研究の実験結果・考察から得られた結論および将来課題について述べる。

5.1 結論

ゲーミフィケーションとは,ゲームによる楽しさ,競争などの要素をゲーム以外の分野に持ち込むことによっ てそのモチベーションを向上させようという手法である.しかし,バッジやランキング等既存のゲーミフィケー ション要素は簡単なタスクに対しては有効であるが,複雑なタスクにおいては面倒さが勝ってしまいうまく働 かず,ゲーミフィケーションをフルパワーに活かせているとは言えない.

 また昨今ではSiriに代表される,人間のように会話することが出来る人工知能(AI)が多く作成されている.

しかし,Siri等の人工知能は物事の理由を答えることが出来ない.これは,物事の理由と結果のような文間を結ぶ

データ(コーパス)が存在しないが故に,機械学習で解決出来ていないからである.このコーパスを作成するタス

クは,単語に単に意味を振るような単純なタスクではなく,複数の文から理由と結果の両方を探しだすという 複雑なタスクであるため,ツールで行うのには時間がかかり,また単調であるために非常に苦痛である.

 そこで本研究では,複雑なタスクとして理由ー結果のタグ付きコーパス作成を扱い,既存のゲーミフィケー ション要素のみでモチベーションが向上するかどうかの検証,既存のゲーミフィケーション要素とマズローの 欲求5段階説を利用したゲームデザインにした場合にモチベーションが向上するかどうかの検証を行った.

 その結果,まずコーパス作成という複雑なタスクに対しては既存のゲーミフィケーション要素だけではうま くユーザーをモチベートすることは出来なかった.これはゲーミフィケーション要素だけでは面倒さに勝つこ とは出来なかったためと考えられる.また,マズローの欲求5段階説による自己実現欲求を満たすようなゲー ムデザイン,連想ゲーム形式にしたところ,ユーザーは創造意欲により楽しさを感じ,その結果ゲーミフィケー ション要素もうまく作用することとなった. つまり,既存のゲーミフィケーションだけでは面倒さが勝って しまうような複雑なタスクに対しても,マズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすようなゲームデザイ ンにすることでユーザーをモチベートし,ゲーミフィケーション要素もうまく機能する可能性があるというこ とを示した.

5.2 将来課題

本研究では理由と結果というタグ付きコーパスの作成という複雑なタスクに対してゲーミフィケーション要 素の利用だけでなく,連想ゲームというマズローの欲求5段階説を利用したゲームデザインにすることでユー ザーのモチベーションを向上させることができたが,他のタスクに対して有効であるのか,どのようなゲーム 形式にすれば有効であるかの検証をしていない.故に,課題としてまずタスクの種類の分類及びタスクの種類 に対応したゲーム形式を検証する必要がある.また,本研究で用いたゲーミフィケーション要素だけではユー

(34)

ザーのパーソナリティによってモチベーションに差があったため,コレクション要素等他のゲーミフィケーショ ン要素も用い,全てのパーソナリティタイプに対応したシステムにする必要もある.

(35)

参考文献

[1] Siri, http://www.apple.com/jp/ios/siri/, accessed 2016/1/30.

[2] しゃべってコンシェル, https://www.nttdocomo.co.jp/service/information/shabette concier/, accessed 2016/1/30.

[3] Google Knowledge Graph, http://www.google.com/intl/es419/insidesearch/features/search/knowledge.html, ac- cessed 2016/1/30.

[4] 4travel, http://4travel.jp/, accessed 2016/1/30.

[5] ChoreWars, http://www.chorewars.com/, 2016/1/30.

[6] Chamberlain, J., Fort, K., Kruschwitz, U., Lafourcade, M. and Poesio, M, “Us- ing Games to Create Language Resources:Successes and Limitations of the Approach”, http://csee.essex.ac.uk/staff/udo/papers/GWAPSpringerChapter.pdf, accessed 2015/10/30.

[7] Avneet Kaur, “Maslow s Need Hierarchy Theory:Applications and Criticisms”, http://www.ripublication.com/gjmbs spl/gjmbsv3n10 03.pdf, accessed 2016/1/30.

[8] 根本 啓一,高橋正道,林直樹,水谷美由起,堀田竜士,井上明人,“ゲーミフィケーションを活用した自発 的・持続的行動支援プラットフォームの試作と実践”,情報処理学会論文誌vol.55 No.06 1600-1613, 2014.

[9] Kristin Siu, Alexander Zook, and Mark O. Riedl, “ Collaboration versus Competition: Design and Evaluation of Mechanics for Games with a Purpose”, http://www.cc.gatech.edu/riedl/pubs/siu-fdg14.pdf, accessed 2016/1/30.

(36)

謝辞

本研究を行なうにあたり,丁寧かつ熱心なご指導を頂いた中島教授に深く感謝致します.また,実験を行なう に際し被験者を快く引き受けて下さり,またアンケートにも協力して頂いた同期や後輩の皆様に感謝致します.

図 2.1: 4travel(http: // 4travel.jp / help / service / )
図 2.2: ChoreWars(http: // www.chorewars.com / )
図 3.3: マズローの欲求5段階説によるゲームデザインを取り入れた自由の試練画面
図 4.1: 難易度があることによるゲームプレイのモチベーションの向上の有無 表 4.2: 難易度に対するコメント 回答の性質 回答 肯定的 難易度に差があり,その差が適切 (だと思われる) なのでどんどん上のレベルに挑戦していこ うというモチベーションになりました. 難易度があると,とりあえず簡単なものからやっていこうという指標になる,何からやればい いかわかるとモチベーションが上がる.
+7

参照

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