• 検索結果がありません。

本章では、本研究の実験結果・考察から得られた結論および将来課題について述べる。

5.1 結論

ゲーミフィケーションとは,ゲームによる楽しさ,競争などの要素をゲーム以外の分野に持ち込むことによっ てそのモチベーションを向上させようという手法である.しかし,バッジやランキング等既存のゲーミフィケー ション要素は簡単なタスクに対しては有効であるが,複雑なタスクにおいては面倒さが勝ってしまいうまく働 かず,ゲーミフィケーションをフルパワーに活かせているとは言えない.

 また昨今ではSiriに代表される,人間のように会話することが出来る人工知能(AI)が多く作成されている.

しかし,Siri等の人工知能は物事の理由を答えることが出来ない.これは,物事の理由と結果のような文間を結ぶ

データ(コーパス)が存在しないが故に,機械学習で解決出来ていないからである.このコーパスを作成するタス

クは,単語に単に意味を振るような単純なタスクではなく,複数の文から理由と結果の両方を探しだすという 複雑なタスクであるため,ツールで行うのには時間がかかり,また単調であるために非常に苦痛である.

 そこで本研究では,複雑なタスクとして理由ー結果のタグ付きコーパス作成を扱い,既存のゲーミフィケー ション要素のみでモチベーションが向上するかどうかの検証,既存のゲーミフィケーション要素とマズローの 欲求5段階説を利用したゲームデザインにした場合にモチベーションが向上するかどうかの検証を行った.

 その結果,まずコーパス作成という複雑なタスクに対しては既存のゲーミフィケーション要素だけではうま くユーザーをモチベートすることは出来なかった.これはゲーミフィケーション要素だけでは面倒さに勝つこ とは出来なかったためと考えられる.また,マズローの欲求5段階説による自己実現欲求を満たすようなゲー ムデザイン,連想ゲーム形式にしたところ,ユーザーは創造意欲により楽しさを感じ,その結果ゲーミフィケー ション要素もうまく作用することとなった. つまり,既存のゲーミフィケーションだけでは面倒さが勝って しまうような複雑なタスクに対しても,マズローの欲求5段階説の自己実現欲求を満たすようなゲームデザイ ンにすることでユーザーをモチベートし,ゲーミフィケーション要素もうまく機能する可能性があるというこ とを示した.

5.2 将来課題

本研究では理由と結果というタグ付きコーパスの作成という複雑なタスクに対してゲーミフィケーション要 素の利用だけでなく,連想ゲームというマズローの欲求5段階説を利用したゲームデザインにすることでユー ザーのモチベーションを向上させることができたが,他のタスクに対して有効であるのか,どのようなゲーム 形式にすれば有効であるかの検証をしていない.故に,課題としてまずタスクの種類の分類及びタスクの種類 に対応したゲーム形式を検証する必要がある.また,本研究で用いたゲーミフィケーション要素だけではユー

ザーのパーソナリティによってモチベーションに差があったため,コレクション要素等他のゲーミフィケーショ ン要素も用い,全てのパーソナリティタイプに対応したシステムにする必要もある.

参考文献

[1] Siri, http://www.apple.com/jp/ios/siri/, accessed 2016/1/30.

[2] しゃべってコンシェル, https://www.nttdocomo.co.jp/service/information/shabette concier/, accessed 2016/1/30.

[3] Google Knowledge Graph, http://www.google.com/intl/es419/insidesearch/features/search/knowledge.html, ac-cessed 2016/1/30.

[4] 4travel, http://4travel.jp/, accessed 2016/1/30.

[5] ChoreWars, http://www.chorewars.com/, 2016/1/30.

[6] Chamberlain, J., Fort, K., Kruschwitz, U., Lafourcade, M. and Poesio, M, “Us-ing Games to Create Language Resources:Successes and Limitations of the Approach”, http://csee.essex.ac.uk/staff/udo/papers/GWAPSpringerChapter.pdf, accessed 2015/10/30.

[7] Avneet Kaur, “Maslow s Need Hierarchy Theory:Applications and Criticisms”, http://www.ripublication.com/gjmbs spl/gjmbsv3n10 03.pdf, accessed 2016/1/30.

[8] 根本 啓一,高橋正道,林直樹,水谷美由起,堀田竜士,井上明人,“ゲーミフィケーションを活用した自発 的・持続的行動支援プラットフォームの試作と実践”,情報処理学会論文誌vol.55 No.06 1600-1613, 2014.

[9] Kristin Siu, Alexander Zook, and Mark O. Riedl, “ Collaboration versus Competition: Design and Evaluation of Mechanics for Games with a Purpose”, http://www.cc.gatech.edu/riedl/pubs/siu-fdg14.pdf, accessed 2016/1/30.

関連したドキュメント