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〈 研 究 ノ ー ト 〉
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク 推 進 と 法 制 度 上 の 課 題 注1)
佐 藤 孝 治
目 次
1.は じ め に
2.少 ヂ ・高 齢 化 の 進展 と 企 業 で の 継 続 雇 用 制 度 化 3.高 齢 者 向 け テ レ ワ ー ク の 期 待 効 果
4.高 齢 者 の テ レ ワ ー ク 制 度 を 進 め るhで の 課 題 J雇 川 管 理 の 整 備
h.高 齢 者 の テ レ ワ ー ク に 向 け た 課 題
1.は じ め に
戦 後の 日本経 済 は 若 くて 質 の 高 い労 働 力 に 支 え られ ,「 世 界 の 奇 跡」 とい わ れ る発 展 を遂 げて きた。 しか し,少F・ 高齢 化 は既 に 日本 社 会 に様 々 な影響 を 与え始 め て い る。 国 立社 会保 障 ・人 口問 題研 究 所 が2002年 ユ月 末 に 公 表 した
「将 来 人 口推 計」 に よれ ば,女 性1人 が 生 涯 に 産 む子 ど もの 数 は,こ れ まで の 予測 を さ らに ド回 り,長 期 的 に1.39ど ま りに な る との 見 通 しが 明 らか に され た。 少 子 ・高 齢化 で 大 きな影 響 を受 け る の は公 的 年 金 や 医 療 保 険 の 制 度 で あ る。 ・方,租 税 や社 会保 険料 な どの増 加 に よ る総 労 働 コ ス トの増 加 は,企 業 の 設備 投 資 や研 究 開発 を遅 らせ,国 際競 争 力 を低 下させ る 可能 性 が あ る。 また, 若 年 人口 の減 少 に よ り労 働 力 人 口 は大 き く減 少す る こ とは確 実 で あ り,生 産性 の低 ドや購 買力 の衰 退 が現 実 的 な問 題 にな る 町能性 も生 じて い る。
高齢 人rIの 急 激 な増 加,若 年 人 口 の大 幅 な減 少 とい う現 象 は,企 業 にお け る 年齢 構 成 に も大 きな影響 を 与 えて お り,高 齢 者 が 意欲 を持 っ て働 け る雇 用 シス テ ムの構 築 な ど,緊 急 に対応 しな け れば な らない 問 題が 数 多 くあ る。 労働 力 の
減 少,そ れ に よる生 産性 と負担 能 力の低 ドを避 け るため に も高齢者,女 性,障 害者 な どの能 力 を効 果 的 に活 用 す る必 要性 が生 まれ て い る。
わが 国 の高 齢 化 の動 向 を踏 まえ,活 力 あ る経 済社 会 を構 築 し,維 持 して い く た め に は,高 齢 者の社 会参 加 は緊急 か つ 不可 避 の 課題 で あ る。 今 後,厚 生 年 金 支 給 開始 年 齢 が 段 階 的 に65歳 へ と引 き上 げ られ る こ とか ら,働 く意 思 と能 力 の あ る高齢 者が もっ と活 躍 で きる職場 環 境 や 雇用 環境 を作 り出 して い く必 要 が あ る。65歳 現 役 雇 用 シ ステ ム を構 築 して い くこ とは,高 齢 者 の 高 い 就 業意 欲 に応 え,将 来 的 に発 生 す る労 働 力不 足 を補 い,年 金e福 祉,医 療 等 の財 政 負担 の増 大 を軽 減 す るた め に も,緊 急 か つ不 可欠 な 方策 で あ る。
近 年,情 報通 信技 術 の発 達,般 家庭 へ の情 報通 信 機 器 の普 及 な どに よ りt 個 人 レベ ルで の情 報 化 が急 速 に進展 して お り,就 業 形 態 の多様 化 へ の ニ ー ズの 高 ま りか らテ レワー クの 普 及 は今 後 も進 む と考 え られ る。 少 子 ・高 齢 化 の さ ら なる進 展,労 働 力 人 口の減 少 な どの急激 な変 化 の 中 で,テ レ ワー クは,勤 労 者 だけ で な く,企 業や 社 会 に対 して も大 きな便 益 を もた らす 可能 性 が 大 きな もの で あ る。
そ の よ う な中 で,高 齢 者 の テ レ ワー ク(在 宅勤務 等)は,通 勤 に伴 うス トレ スの 回避,余 暇時 間の増 大 とい った志 向 を強 め る高齢 者や職 業生 活 か らの 引 退 過 程 で 必 要 とな る家 庭 や 地域 中心 の生 活 へ の移 行 を円滑 に行 う こ とを望 む高齢 者 に とって,専 門性 の発揮 と余 暇 活 動 の 充実 な どの こ とを共 に実現 させ る こ と が で きる働 き方で あ る。
企業 にお け る高 齢 者 の継 続 雇 用 の制 度 化 や 高齢 者 の 多様 な雇 用 ・就 業 ニー ズ を満 たす た め に も,テ レワー クは 高齢 者 ・企 業 ・社 会 に とって有 効 な雇 用'就 業 形態 であ る。 一方,シ ニ ア ・テ レワー ク検 討 委 員 会 にお け る議論 を通 じて, 高 齢 者 の テ レワー クに は雇 用 管 理 な どの 法律 上 の 問題 点 の 検討 も必 要 であ る こ
とが 明 らか に な ったが,テ レワー クの期 待 効 果や 様 々な便 益 を考 え る と・ テ レ ワー クを現 行 労働 法 制 を理 由 に して 停滞 させ る こ とは社 会的 な損 失 に な る と判 断せ ざる を得 な い。
今,問 わ れて い る こ とは,現 行 の法 律 や 制 度 の維持 とい う観点 か ら課 題 や 問
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と 法 制 度 上の 課 題155
題点 を議 論 す る だけ で な く,技 術 革 新 の 進展 や 新 しい 雇用 ・就 業形 態 の登 場 を 前 提 に,多 様 な働 き方 を実現 す る こ とや現 行 の 法律 や制 度 との摺 り合 わせ を図
り,そ れ らが現 実 の 変化 に適 応 して い くこ とが で きる よ うにす る こ とであ る
。 テ レワー クは働 き手 を重視 した新 しい社 会生 産 シス テ ムへ の転 換 を 目指 し
,高 齢 者 の エ ンプ ロ イア ビ リテ ィを高 め る社 会的 に有用 な 手法 で あ り,社 会政 策 的
な観 点 か ら高齢 者の テ レワー ク を拡 充 して い くこ とが 必要 とな って い る。 本 稿 の 目的 は,高 齢 者の テ レワー ク推 進 上 の 問 題点 や 法 制 度 との課 題 を明 ら か にす る こ とで あ る。 第2章 で は,少 子 ・高 齢化 の進 展 と企業 での継 続 雇 用 制 度 化 につ い て現 状 を明 らか にす る。 第3章 で は,高 齢 者向 け テ レワ,̲̲.クの期 待 効 果 を検 討 し,第4章 で は,高 齢 者 の テ レワ0ク 制 度 を進 め るrで の 課題 を明 らか にす る。 最後 に,第5章 及 び第6章 で は,雇 用 管理 の整 備,高 齢 者 の テ レ ワー クに向 けた法 制 度上 の課 題 な どを検 討 して い る。
2.少 子 ・高 齢 化 の進 展 と企 業 で の 継 続 雇 用 制 度化
(1)少 子 ・高 齢 化 の 進 展
わ が 国 は,急 速 に 少 子 ・高 齢 化 が 進 展 して い る。 具 体 的 に は
,高 齢 人 口 が 増 加 しy若 年 人 口 が 減 る と い う現 象 に な っ て 現 れ て い る。 た と え ば,2000年 か ら2010年 ま で の10年 間 に お い て は ,15歳 〜29歳 ま で の 若 年 人 口 が600万 人 減 少 す る の に 対 して,60歳 以 上 の 高 齢 者 が 約850万 人 増 加 す る 。 こ の た め 2010年 に は 国 民 の 約3人 に1人 が60歳 以 上 の 高 齢 者 に な る も の と 見 込 ま れ て い る。 ま た,労 働 力 人 口 全 体 が2005年 を ピー ク に 減 少 に 転 ず る と 見 込 ま れ る 中 で,60歳 以 上の 労 働 力 人 口 は,1999年 の924万 人 か ら2010年 の1295万 人 へ とお よ そ4割 増 加 す る。 つ ま り,わ が 国 の 労 働 力 人 口 の5人 に1人 が60歳 以 上 の 高 齢 者 と な る もの と予 測 さ れ て い る。
この よ う な 高 齢 人 口 の 激 増 ,若 年 人 口 の 激 減 とい う現 象 はt企 業 で 働 く人 の 構 成 比 も,若 年 か ら高 齢 労 働 力 に 推 移 す る こ と に よ り,企 業 に お け る ピ ラ ミ ッ ド型 の 年 齢 構 成 は 崩 れ て くる 。 高 齢 者 が 意 欲 を持 っ て 働 け る 雇 用 シ ス テ ム の 構 築 な ど,早 急 に 対 処 しな け れ ば な ら な い 問 題 が 山積 して い る 。
ま た,社 会 シ ス テ ム 全 体 か ら み て も様 々 な 問 題 を惹 起 して く る。 た と え ば, 年 金,医 療,福 祉 な どの 社 会 制 度 をみ て も,若 年 人 口 が 減 少 し,高 齢 人 口 が 増
加 す る こ とか ら,社 会 を 支 え る 側 と 支 え られ る 側 の構 図 が 逆 転 し,こ の ま まで は 若 年 世 代 に過 大 の 負 担 を 強 い る こ と に な る 。
こ う した わ が 国 の 高 齢 化 の 動 向 を踏 ま え,な お か つ 活 力 あ る経 済 社 会 を 築 い て い くた め に は,高 齢 者 の 社 会 参 加 が ど う して も必 要 に な る 。 働 く意 思 と能 力 の あ る 高 齢 者 が も っ と活 躍 で き る 職 場 環 境 や 雇 用 環 境 を 作 っ て い く必 要 が あ る。 つ ま り,高 齢 者 が 社 会 を 支 え る側 に 廻 る こ とが,年 金 財 政 の 問 題 も 含 め, 活 力 あ る経 済 社 会 を維 持 ・発 展 させ る た め の 大 きな 力 に な る。
政 府 に お い て も,高 年 齢 者 等 職 業 安 定 対 策 基 本 方 針(平 成12年 〜17年)に お い て,「 定 年 の 引 き上 げ,希 望 者 全 員 を 対 象 とす る 継 続 雇 用 制 度 の 整 備 を 基 本 に しつ つ1高 齢 者 の 多様 な 就 業 ニ ー ズ に 応 じ た 多 様 な 形 態 に よ る 雇 用 の 機 会 の 確 保 を 推 進 し,向 こ う10年 程 度 は,原 則 と し て 希 望 者 全 員 が,そ の 能 力 と 意 欲 に 応 じて65歳 ま で は継 続 して 働 く こ との で き る 制 度 の 普 及 を 図 る」 と し, そ の た め に も,働 く意 欲 と能 力 に 応 じて 年 齢 に 関 わ りな くf希 望 す れ ば 少 な く
と も65歳 ま で は 現 役 と し て 働 き続 け る こ と の で き る 雇 用 シ ス テ ム ・ い わ ゆ る
「65歳 現 役 雇 用 シ ス テ ム 」 の 実 現 が 緊 急 の 課 題 で あ る こ と を 強 調 して い る 。
(2)企 業 で の 継 続 雇 用 制 度 化 の 課 題
現 在,多 くの 企 業 で の 定 年 は60歳 と な っ て い る 。 し か しな が ら,企 業 で 働 く労 働 者 が 定 年 以 後,65歳 ま で 働 きた い とい う希 望 に 対 して,一 律 定 年 制 を 定 め て い る 企 業 の う ち,労 働 者 が 希 望 す れ ば,65歳 ま で 働 く こ と が で き る 定 年 制 や 継 続 雇 用 制 度 を 設 け て い る 企 業 割 合 は,16.1%と な っ て お り,定 年 を 定 め て い な い 企 業 と合 わ せ て も25%程 度 の 企 業 で しか 働 くこ と は で きな い ・
他 方 で,厚 生 年 金 の 支 給 開 始 年 齢 が2001年4月 か ら61歳 に 引 きrげ ら れ, そ の 後3年 ご との 段 階 的 に65歳 へ 引 き ヒげ られ る こ とか ら,こ の ま まで は 雇 用 と年 金 制 度 の 間 で 「制 度 的 空 自 」 が 生 じて くる こ と に な る。
そ の た め に も,65歳 現 役 雇 用 シ ス テ ム の 構 築 は,高 齢 者 の 高 い 就 業 意 欲 に
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と 法 制 度 ヒの 課 題157
応 え,将 来 の 労 働 力 の 減 少 を 補 い,年 金 等 の 財 政 的 な行 き詰 ま り を緩 和 させ る な ど,必 要 不 可 欠 な 方 策 と い え る 。 しか し,企 業 で の60歳 以 降 の 継 続 雇 用 制 度 碇 年延 風 勤 務 延 長,再 雇 用 な ど〉の 制 度 化 へ の 取 り組 み に つ い て は
,⑦ 人 事 ・処 遇 制 度 の 見 直 し(年 齢基 準 に よる年 功 処遇 ,律 処 遇 〉,② 高 齢 者 の 能 力 の 個 人 差(能 力・体 力 等 のバ ラ ツキ),③ 高 齢 者 の 働 く場(働 く職 場 の 確保.職 域 開 発)を 課 題 とす る 企 業 が 多 く見 られ,一 律 処 遇,バ ラ ツ キ,職 場 確 保 とい っ た 従 来 型 の 枠 内 で の 課 題 解 決 の 難 し さ を示 して い る 。
ま た,経 済 的 に 成 熟 化 し た 社 会 に あ っ て は ,企 業 が 活 力 を 維 持 す る た め に は,高 付 加 価 値 の 商 品 や 技 術,サ ー ビ ス を提 供 し続 け る マ ネ ジ メ ン トカ
,開 発 力,業 務 遂 行 能 力 が 求 め ら れ,こ れ を担 い 得 る ゼ ネ ラ リ ス ト,ス ペ シ ャ リ ス
ト,エ キ ス パ ー トとい っ た 多 様 な 人 材 が 今 後 も必 要 に な っ て く る。
方,働 く こ と を 希 望 す る 高 齢 者 の 側 で も,近 年,雇 用 ・就 業 ニ ー ズ が 多 様 化 して きて お り,企 業 で の 律 的 な 処 遇 で は 大 き な ミス マ ッチ が 生 ず る こ と に な る。 そ の た め,企 業 に お い て も高 齢 者 の 能 力 や 個 人差 に 応 じた 多 様 な 就 業形 態 で の 雇 用 の 確 保 ・創 出 が 求 め られ て きて い る 。
他 方,イ ン ター ネ ッ トを は じめ とす る情 報 通 信 技 術 の 発 展 が 著 し く,パ ソ コ ンや 携 帯 情 報 端 末 等 を 利 用 す る こ と に よ り
,会 社 に い な くて も様 々 な 内 容 の 業 務 を 行 う こ とが 口∫能 に な っ て きて い る 。
こ う した こ とか ら,高 齢 者 の 雇 用 ・就 業 ニ ー ズ に応 じた 多 様 な 就 業 形 態 の 選 択 肢 の ひ とつ と して}高 齢 者 の テ レ ワ.̲̲.ク(在 宅 勤 務 等)は f通 勤 に 伴 う ス ト
レ ス の 解 消,仕 事以 外 の 自 由 時 間 の 増 加 とい っ た 志 向 を 強 め る 高 齢 者 や 職 業 生 活 か らの 引 退 過 程 で 必 要 と な る 家 庭 や 地 域 中 心 の 生 活 へ の 移 行 を 円 滑 に 行 う こ
と を 望 む 高 齢 者 に と っ て,有 効 な 雇 用 ・就 業 形 態 で あ る 。
3.高 齢 者 向 け テ レ ワ ー クの 期 待 効 果
企 業 が テ レ ワ ー ク に よ る 高 齢 者 の 継 続 雇 用 制 度 を 導 入 す る こ と に よ り
,高 齢 者,企 業,社 会 そ れ ぞ れ の 側 面 か ら以 ドの よ う な 効 果 が 期 待 で き る 。
(1)高 齢者 に とって の期 待効 果
① 経済 的 自立 と活 力 の 高 ま り
平 均寿 命が80歳 を超 えた現 在,日 本 で は60歳 以 上 の高 齢 者 の勤 労 意欲 も極 め て高 い ものが あ る。 しか し,従 来 の 雇 用就 労 シ ステ ム にお いて は,そ う した 高齢 者 の意 欲 が 十 分 に生 か され て い な い。 この ため60歳 を超 えた勤 労 意 欲 の あ る高齢 者 に とって は,テ レワー ク に よる継続 雇 用 の可 能性 の増 大 に よ り,経 済 的 自立 と活 力 が 一 層高 まる もの と期待 で きる。
② 業務 知 識 ・経 験 の活用
テ レワー ク に よ る雇用 の継 続 で,企 業 で 長 年 に わ た って培 って きた専 門知 識 を活 か した就 業 が 可 能 とな る。 また,高 齢 者 の住 環 境(家 庭)で は・子 供 の独 立等 に よ り仕 事 をす る場 所(ス ペース)の 確 保 も比 較 的容 易 で あ る。 こ う した スペ ー ス を利 用 しi長 年培 っ て きた 知識 や経 験 を生 か す こ とが で きる こ とは, 健康 ・精 神面 に も好 ま しいば か りで な く,高 齢 者 の生 き甲斐 を高 め る こ と も期 待 で きる。
③ ラ イ フス タイル に合 わせ た労働
成熟 した 日本 社 会 の高 齢 者 の ラ イ フス タイ ル に関す る意識 は,従 来の 「仕 事 中心 」 だ け の もの か ら 「仕 事 と余 暇 活 動 の 両 立」 や 「余 暇 活 動 中心 だ が 仕 事 も」 な ど,多 様化 して い る。 高 齢者 肖身の ラ イフ ス タ イル に合 わせ て,就 業 の 場 所,日 数,時 間 を柔軟 に設 定 で きるテ レワー クは,高 齢 者 ニー ズ の多様 化 に 合 致 した働 き方 と して 期待 で きる。
④ 老 後へ の柔 らか な移行
就 業 の場 所,日 数,時 間帯 に柔 軟性 の あ る在宅 ワー クや テ レワー クセ ン ター 等 で の勤 務 に よ り,仕 事 と余 暇活 動,あ る い は地域 社 会 との交 流,家 庭 生活 の 充 実 をバ ラ ンス よ く維持 す る こ とが 可能 とな る。 従 来 の よ うな一 律雇 用 就労 シ ス テ ム に よる フ ル タイ ム勤務 か ら勤務 な しへ の急 激 な環 境 変化 に比べ,老 後へ の 柔 らか な移行(ソ フ トランデ ィング)も 可能 とな る。
⑤ 通勤 疲 労 の軽 減 と余裕 時 間の増 加
特 に大都 市 圏 にお いて,都 市 中心 部へ の 毎 日の長 距離 ・長 時 間通 勤 は,高 齢
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者 に な れ ば な る ほ ど身 体 的 負 担 が 大 き く,疲 労 が 蓄 積 しや す い もの で あ る 。 こ う した 地 域 に お い て は,自 宅 な い し は 近 くの テ レ ワ ー ク セ ン タ ー 等 で の テ レ ワ ー ク の 実 施 に よ り,通 勤 疲 労 は 軽 減 さ れ,業 務 へ の 集 中 が 可 能 に な る。 ま た,通 勤 時 間 の 大 幅 な減 少 に よ る 余 裕 時 間 の 増 加 は
,趣 味,地 域 社 会 活 動,自 己 啓 発,家 族 の 介 護 な ど に そ の 時 間 を 充 て る こ と が で き る と い う利 点 も大 き
い 。
(2)企 業側 に とって の期 待 効 果
① 生 産性 の 向 上
通 勤 等 に よる身体 的 な負 担 の 軽 減 や柔 軟 な就業 形 態 に よ って 高齢 者 の専 門 能 力 を生 か した雇 用 形態 が 可能 となる。 これ に よ り,実 務知 識 お よ び経験 豊 か な 高齢 者 を,い わゆ る管 理 職 的 業務 か ら解 放 し,専 門分 野 の 生 産性 が 向 上す る と と もに,専 門的 な知 識 ・経 験 の後 輩へ の技 術 伝承 をス ムー ズ に行 な え る可 能性 も広 が り,企 業 全 体 と して の生 産性 を向上 させ る こ とが期 待 で きる。
② オ フ ィス コス トの削 減
高齢 者 に 限 らないが ・ 自宅 あ る い はテ レ ワー クセ ン ター等 での テ レワー ク勤 務 は,ス ペ ー ス コス トの 高 い都 市中心 部 の オ フ ィス に勤労 者 個 々人 の ワー クデ ス ク等 を設 け る必 要 が な くな る。 こ の結 果 ,所 要 オ フ ィス 面積 が 少 な くて済 み,ま た オ フ ィス 面積 の減 少 に伴 い 空 調 設 備 や 使 用 電 力 量 の 削 減 も可 能 とな
り,全 体 と して オ フ ィス コス トを大 幅 に削 減 す る こ とが期 待 で きる。
③ 高齢 者 の ニ ー ズ に合 わせ た雇 用対 応
テ レ ワー クに よ って 高齢 者 の雇 用 形 態 は,従 来 の オ フ ィス勤務 での 一律 集 中 型 の勤務 形 態 で は対 応 が 難 しい高 齢 者 の多 様 な ラ イ フス タイ ルに合 った働 き方 も実現 で きる。 高齢 者 の ニ ー ズ に対応 した勤務 日数,勤 務時 間 な どの設 定 が 可 能 とな る。 これ に よ って,専 門的 な 能力 を有す る 高齢 者 の継 続 雇 用 を拡 大 す る こ とが よ り 層 期待 で きる。
④ 企 業 イメー ジの 向h
多様 な形 態 で の 高齢 者 の積 極 的 な雇 用 イ メー ジ は,「 業 務 知 識 ・経験 の 豊 富
な優 秀 な 人 材 を長 く雇 用 し,人 材 を 重 視 して い る 企 業 で あ る」 とい う イ メ ー ジ を社 会 に 発 信 し,し い て は 企 業 イ メ ー ジの 向 トに つ な が る 。 ま た,高 齢 者 の 雇 用 ば か りで な く,年 齢 に 関 係 な く,専 門 的 な 能 力 を有 す る労 働 者 を集 め や す く す る とい う効 果 も期 待 で き る 。
⑤ 新 市 場 の 創 出
テ レ ワ ー ク に よ る 高 齢 者 雇 用 の 普 及 は,般 の テ レワ ー カ ー 及 び 高 齢 者 を 含 む,い わ ゆ る 通 勤 弱 者 に も使 い や す い 情 報 通 信 機 器 や 机 ・椅fな どの オ フ ィス 機 器 あ る い は ネ ッ トワ ー ク を 介 した サ ー ビ ス 等 に 対 す る 新 た な ニ ー ズ を 生 み 出 す 。 こ の こ と は,企 業 お よ び 産 業 に と っ て,高 齢 者 を含 む 通 勤 弱 者 の 就 業 に 適
した 商 品 ・サ...ビス に 関 す る新 しい 市 場 の 創 出 が 期 待 で き る 。
(3)社 会 的 な面 か らの 期待 効 果
① 少 チ ・高齢 社 会 にマ ッチ
高齢 者の テ レワ ー ク制 度 は,企 業の継 続 雇 用 の 可能 性 を広 げ る こ とで,急 速 な到 来が 予想 され る少f・ 高齢 社 会 にお け る労 働 力 の減 少 にマ ッチ した社 会 的 な労 働 環境 を生 み 出す 。 また,高 齢 者 が それ ぞ れ の ラ イフス タ イル に応 じて働 くこ とが で きる雇 用 ・就 業 機 会 を広 げ る こ とで,年 齢 にか か わ らず仕 事 を通 じ て社 会 と関 わ りを持 て る活 力 あ る社 会 の実現 が期 待 で きる。
② 地 域社 会 の経 済 的 ・人的 活性 化
高齢 者 の テ レワー クの 実 施 に よっ て,大 都 市 圏 か ら出 身地 域 へ のUタ ー ン が可 能 と な る。 また,都 市 郊 外 の 自宅 や テ レ ワー クセ ン ター 等 で の 就 業 に よ り,地 域 社 会で の 就業 人 口が増 加 す る。 こ う した こ とに よっ て,地 域 コ ミュニ テ ィの活 性 化 が 図 られ る と と もに,様 々 なス キ ル を持 っ た高齢 者 の交 流 に よっ て高 齢 者起 業 の可 能性 が 高 ま るな ど,地 域 社 会 の経 済 的 ・人的活 性 化が 期 待 で
きる。
⑥ 地 元諸設 備 の有 効 活 川
高齢 者の テ レワー クが 進 む こ とで,大 都 市圏へ の 人 口 の集 中 及 び少 子化 に伴 い 閉鎖 され る学 校 等 の 諸 施設 を,テ レワー ク施 設 に改 装 し,地 元 の 高齢者,障
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と法 制 度 ヒの 課 題161
害 者等 が利 用 で きる よ うに運営 す る こ とが可 能 とな る。 これ に よ り,比 較 的 少 ない経 済 的負担 で地 元 の遊 休 施 設 を有効 に活 用 す る と と もに,住 民 サ ー ビスの 向.ヒに結 びつ くこ とが 期待 で きる。
④ 各種 の社 会保 障 費 の削 減
高 齢 者 の テ レワー クに よ る継 続 雇 用 は,高 齢 者 の経 済 的 な 自立 を もた らす と と もに,通 勤 が な く就 業時 間帯 に束縛 され ない 柔軟 な就 業形 態 に よる精 神 的 ・ 身 体 的活 力 の増 進 を もた らす 。 これ に よ って,公 的 年 金,医 療 費,介 護 費等 の 社 会保 障 費 の削 減 につ なが る と期 待 され る。
⑤ITの 普及 と情 報 格 差の 是正
高齢 者 の テ レワー クの実 施 は,必 然 的 に電 子 メー ル に よる情 報 の 交換 ,イ ン ター ネ ッ トを利 用 した 各種 の 調 査 な ど,IT活 用 を促 進 し,年 齢 や 地 域 に よ る 情 報 格 差(デ ジタルデ ィバ イ ド)を な くす 効 果 が 期 待 で きる。 また そ の こ とが ITの 社 会的 な 普 及 につ なが る と期 待 され る。
4.高 齢 者 の テ レワ ー ク制 度 を進 め る上 で の 課 題
(1)高 齢 者 に お け る 課 題
① 適 用 労 働 者 ・適 用 業 務 の 限 定
テ レ ワー ク を 主 と す る 就 業 形 態 は パ ソ コ ン 等 の 情 報 通 信 機 器 の 利 用 能 力 が 要 求 され,か つ オ フ ィス か ら離 れ た 施 設 で で き る 自 己 裁 量 型 の 業 務 を 対 象 と した 比 較 的 専 門 性 の 高 い 業 務 能 力 を持 つ 高 齢 者 に適 す る もの で あ る 。 い わ ゆ るIT 弱 者 丁 フ ェ イ ス ・ ト ゥ ・フ ェ イ ス の 対 面性 を求 め られ る 業 務 ,1二 場 な どで の 技 能 的 業務 に 携 わ る も の に 対 して は 不 適 で あ り,適 用 労 働 者 が 限 定 され て し ま う
面 が あ る 。
特 に,適 用 業 務 の 範 囲 で あ っ た と して も,高 齢 者 の 場 合 ,ITリ テ ラ シ ー が 不 足 して い た り,こ れ まで の 習 慣 か ら,裁 量 労 働 と成 果 孟義 が 中 心 の ワ ー ク ス
タ イ ル へ 容 易 に は 馴 染 め な い こ とが 課 題 と な る こ と もあ る。
② 仕 事 環 境 の 整 備 費 用 と手 間 の 増 大
テ レ ワ ー ク で は ・ 元 々・ 仕 事 の 場 と して 作 ら れ て い な い 自宅 が 就 業 の場 と な
る こ とが 多 い 。 こ う した 場 合,仕 事 場 の 環 境 を作 る た め に,情 報 通 信 機 器 や オ フ ィス 機 器 等 の 設 置 及 び 通 信 費 用 の 負 担 が 発 生 す る 。 企 業 側 が 負 担 す る こ と に なれ ば 大 き な 問 題 は な くな る が,そ の 場 合 で も,自 宅 の …一部 を ワ ー ク ス ペ ー ス と し て 空 け た り改 装 す る た め の 費 用 が 必 要 と な る な ど,仕 事 環 境 の 整 備 費 用 や
乎 間 が 増 大 す る こ とが あ る。
③ 自己 管 理 の 難 し さ
管 理 者 や 同 僚 か ら離 れ て 働 くテ レ ワー ク の 場 合,仕 事 の 進 捗 管 理,公 私 の 区 分,さ ら に 健 康 管 理 な ど,ほ と ん どの 過 程 を 「自 己 管 理 」 す る こ とが 求 め られ る。 集 団 的 就 業 形 態 で 長 期 間 働 い て きた 高 齢 者 に と っ て は,こ う した 自 己管 理 に 不 慣 れ な もの もあ る。 これ が 高 じる と,孤i̲of感 や コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン不 足 を 感 じた り,目 標 とす る 成 果 を 十'分に あ げ られ な い とい う課 題 を抱 え る 可能 性 が あ る 。
幽
(2)企 業 にお ける課題
① 就 業関連 諸 制 度 の再 整 備
高齢 者 を対 象 と した テ レワー クに よる就業 形 態 を導 入す る場 合,決 め られ た オ フ ィスで の 就 業 を前提 と して定 め られ て い る就 業 規 則 な どの社 内 諸制 度 だ け で対 応 す るの は難 しい こ とが あ る。 こ う した場 合,テ レワー クを含 め た就 業形 態 に即 した 人事 処 遇 ・賃金 システ ム,処 遇,賃 金,評 価 基準 等 を再 整備 す る必 要 が 生 じる。
また,テ レワー ク を実 施す る高齢 者 を企 業 か ら切 り離 し,別 組 織 の 企 業 を設 立す る場 合 には,新 た な社 内諸 制 度 を作 る こ とが必 要 とな る。
② 費用 負 担 の増 大
テ レワー クに必 要 な情 報通 信 機 器,通 信 回線,オ フ ィス機 器等 の諸 設備 を企 業側 が 負担 し貸 与す る場 合,諸 設 備 の 初期投 資 費 用 並 び に通 信料 金,パ ソ コ ン 等 の ソフ トウエ アの 更新 な どの 運用 費用 が,オ フ ィスで の 集 団 的就 業形 態 の場 合 に比 し増 え る 可能 性 が あ る。
特 に,高 齢 者 に多 く見 られ る パ ソコ ン等の情 報 通 信 機 器 の操作 に不 慣 れ な利
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と法 制 度 ヒの 課 題163
用 者 に対す るIT利 用教 育 や サ ポ ー ト費 の増 大 も考 え られ る。 また,情 報 通 信 分 野 は技 術 進 化 の早 い分 野 で あ るだ け に,新 しい シス テ ム等 の導 入 や バ ー ジ ョ
ンア ップ に際 しての 更新 費用 ,再 教 育 訓練 費 用 も発 生 す る可能性 が あ る。
③ 従 業 員管 理 の 複雑 化
高 齢 者 の テ レワWク を導 入 し,従 業 員個 々 人の ラ イ フス タイル に応 じた勤 務 日数 や勤 務 時 間 を設 定 した場 合,企 業 に とって は従 業 員管 理 が 多様 化 ・複 雑化 す る こ とに なる。
また,テ レ ワー クに よる就 業 にお いて 業務 内容 の適 ・不 適 の 基 準 づ く り(ガ イ ドライン策定)や テ レ ワー カー 個 々 人 へ の 命 令 指 揮 系 統 の 整 備 ,テ レ ワ ー カー を対 象 に した個 別 の相 談 窓 口 の 設置 ,教 育 ・支援 の仕 組 み,業 務 遂 行 に必 要 な情 報 共有 の仕組 み な どが 必 要 に な る。 こ う した仕 組 み は,オ フ ィスで の集 団的 就 業 形態 の 中 で は用 意 され て いな い もの もあ り,テ レワー クを有 効 に機 能 させ るた め には,新 た な整備 を求 め られ る 可能性 が あ る。
(3)社 会 に お け る課 題
①IT格 差(デ ジ タルデ ィバ イ ド〉へ の 対 応
テ レ ワ ー ク 制 度 の 実 現 に はITの 活 用 が 必 須 と い え る 。 しか し
,現 在 の 高 齢 者 の 場 合,情 報 通 信 機 器 や ネ ッ トワ ー クサ ー ビ ス な ど のIT利 用 は 相 対 的 に 低 い の が 現 状 で あ る。 テ レ ワ ー ク制 度 を 導 入 して も,現 状 で は,雇 用 で き る 高 齢 者 数 は 少 数 に と ど ま る 可 能 性 が あ る。 ま た,個 人 がIT利 用 技 術 を 有 して い た と して も,地 域 に よ っ て 利 用 で き る情 報 通 信 イ ン フ ラ の 格 差 もあ る。 こ れ を放 置 す れ ば ・ITを 積 極 的 に 活 用 で き る 環 境 に あ る 高 齢 者 と,ITを 利 用 で き る 環 境 に な い 高 齢 者 の 間 に,い わ ゆ る デ ジ タル デ ィバ イ ドと よ ば れ る 新 た な格 差 を 坐 み 出 す 恐 れ が あ る 。
② 労 働 関 連 諸 法 規 の 見 直 し
労 働 基 準 法 な ど現 在 の 労 働 関 連 諸 法 規 は,裁 量 労 働 制 の 創 設 な ど の 一部 が 改 正 され つ つ あ る もの の,基 本 的 に は 「特 定 の 事 業 場 で 就 業 し作 業 時 間 に応 じた 対 価 を支 払 う」 こ と を 前 提 に 定 め られ て い る 。 被 雇 用 者 の テ レ ワ.̲̲.クに対 して
は,た と え ば,労 働 災 害 あ る い は 安 全 衛 生 管 理 な どの 面 で の 問 題 を惹 起 しや す い 。 ま た,高 齢 者 の テ レ ワ ー ク で 広 範 に取 り入 れ られ る と思 わ れ る裁 量 労 働 制 に つ い て は,そ の 適 用 業 務 の 種 類 が 厳 し く限 定 され て い るの が 現 状 で あ る 。 テ
レ ワ ー クの 利 用 を よ り一一層 広 げ つ つ 労 働 者 の 権 利 を保 障 す る た め の 法 制 度 面 で の 整 備 が 課 題 とい え る 。
④ 社 会 的 な 意 識 改 革 と 支援 環 境 の 整 備
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク が 遅 れ て い る 背 景 に は,社 会 に 制 度 を受 け 入 れ る 十壌 が 十 分 に醸 成 さ れ て い な い こ と も あ る。 そ の 結 果 と して ・ テ レ ワ ー カ ー をサ ポ ー トす る,民 間 あ る い は 公 共 的 な 支 援 施 設 や ビ ジ ネ スサ ー ビ ス も不 足 して い る。
こ の た めT民 間 あ る い は 公 共 的 な テ レ ワ ー ク セ ン ター や い わ ゆ る ビ ジ ネ ス コ ン ビ ニ の 開 設 な どの 支援 シ ス テ ム,さ らに 自治 体 職 員 の テ レ ワー ク の 実 施 な ど, 政 府 ・民 間 あ わ せ て の 普 及 ・啓 蒙 ・支援 活 動 の 整 備 が 高 齢 者 の テ レ ワ ー ク を広
げ て い く上 で の 課 題 とい え る 。
(4)労 働 組 合 に お け る課 題
① 多様 な働 き方へ の理解 と権 利 保 護 の両 立
労 働 組 合 は一 律 の 雇 用就 業形態 を軸 と して労働 者 の労働 条 件 を改 善 し権利 を 守 る活動 を して きたが,テ レワー クな ど多様 な就 業形 態 の ニ ー ズ を持 つ 高齢 者 の継 続 雇 用 にお い て はy… 律 の雇 用就 業 形態 だ け を前提 に して は,雇 用 者の 権 利 を守 る こ とが 難 し くなっ てい る。 しか し,一 方 で,立 場 の弱 い 個 々人が 無原 則 に会社 と雇 用就 業 形 態 を結 ぶ こ とに なれ ば,労 働 条件 や 権 利が 損 なわ れ る恐 れ もあ る。
こ う した点 を考慮 して,労 働 組 合 と して も,テ レワー ク を高齢 者 の多 様 な 雇 用 ・就 業 ニ ー ズ を重 視 した新 しい就労 機 会 と して前 向 きに捉 える と ともに,そ
こにお け る新 た な権利 保 護へ の取 り組 みが 課 題 とな る。
(5)技 術 的 な 課 題1使 い や す さへ の 配 慮
ITの 活 用 に は,利 用 者 自 身 のITリ テ ラ シー の 向 ヒが 求 め られ るが,そ れ だ
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と 法 制 度Lの 課 題165
けで は解 決 で きない シス テ ムの使 い勝 手 の 問題 が 残 る。 特 に,高 齢 者 は}加 齢 と と もに何 らか の 身体 的 な障害 を抱 え る比 率 も高 くな り,複 雑 で細 か な機 器 の 操 作 が 苦手 にな る傾 向 が あ る。 現 在 の情 報 シス テ ム は,ま だ こ う した 高齢 者 や 障 害 者へ の 配慮 が ト分 で な い もの もあ る。 高 齢者 の テ レワー ク を広 げ るた め に は,今 後,誰 で もが使 いや す いユ ニバ ーサ ル デザ イ ンに基 づ い た情 報 通信 技 術 の 開発が 課 題 とな る。
5.雇 用 管理 の 整 備
(1)契 約 の形 態 と雇用 管 理
「高齢 者 に よる テ レワ ー ク」 にお け る雇 用 管 理 を考 え る場 合 ,中 高年 齢 者 に 対 す る労 働 安 全衛 生hの 配慮 を除 けば,年 齢 の 差 異か ら来 る特段 の留 意 は不 必 要 で あ る。 般 に は,雇 用契 約 は当 事者 間の 自由で ,し か も対 等 な もの と考 え られ るが,現 実 に は使用 者 と労働 者 で は経 済 的,社 会 的 な格 差 が 著 しいた め}
社 会政 策 的 な観 点 か ら 「使 用者 の 設 定 す る労 務」 に 対 して労 働 基 準 法,労 働 安 全 衛 生法,労 災保 険 法 な ど国家 に よ る法 的 規 制が 加 え られ,労 働 者保 護が 図 ら れ て い る。
労 働 契約 に基 づ き働 い てい る場 合 には,採 用 か ら退 職 まで の 全 ステー ジに わ た って使 用 者 には労 働 基 準法 を中心 とす る雇 用 管理 が 要請 され るが,委 任 契 約 や 請 負契 約 に よる仕 事の場 合 に は,原 則 的 には 委任 者や注 文 者 にそ の よ うな雇 用管 理 が 義務 づ け られ る こ とは ない。
(2)請 負 契 約 等 に伴 う問 題
テ レワー ク とは,複 数 の 者が協 同 で働 い て い る特 定 の場 所 を離 れ ,情 報 通 信 機 器 を利 用 して 白宅 や サ テ ラ イ トオ フ ィス等 で勤 務 す る形 態 を い う。 この た め,雇 用 労 働 者が テ レ ワー クに従 事 す る場 合 は勤 務 す る場所 が変 わ るだ け で あ るの で,労 働 法令 の適 用 関係 に変 化 は な くその ケ ー ス に適 っ た雇 用 管理 を行 え ば 良 い こ とに な る。
しか し,雇 用 関係 の ない 者 に注 文 者 が 自宅 で デ ー タ入力 や デザ イ ンや 製 図 の 作 成 を依 頼 す る とい っ たケ ー スで は,請 負 契約 に基 づ くもの と考 え られ る。 こ う した場 合,労 働 法 令 の 適 用 は な く,雇 用 管 理 とい っ た 概 念 も ない 。 そ の た め,請 負 者 は 一個 の事 業 者 と して,労 働 契約 にお け る雇 用管 理r.の す べ て を 自 己責任 で 行 わ なけ れ ば な らな い。 もっ と も,請 負 契約 と称 して いて も,注 文者 が 請負 人 に仕 事 の 開始 時 刻 や終 了時刻 を報 告 させ,あ るい は仕 事 の進捗 状 況 を 定 期 的 に報告 させ る とい っ た管理 を 日常 的 に行 って い るの で あれ ば,そ れ は実 質 的 な労 働 契約 と して各種 の雇 用管 理 が 求 め られ る こ とに な る。
テ レワー クは新 た な就 業形 態 だけ に,契 約 の不 明 瞭,就 業 条件 の 不 分 明 な ど 未成 熟 な部分 も多 く,ト ラ ブルが 多 発 し社 会 問 題 と もな って い る。 そ う した点 か らす る と,い か な る契約 で あ れ契 約 は 文書 で 取 り交 わ し,就 業 条件 を きちん
と規 定 してお くこ とが 必 要 とい え る。
それ らに関す る公 的 な啓 発 ・相 談体 制 の整備 も求 め られ る こ とに な る。 その 際 それ が た とえ労働 契 約 で は な い に しろ,実 質 的 に は安直 な労働 力 と して位 置 付 け られて い る 面 も否 め ない だ け に,労 働 契 約 と擬 制 して労 働 者保 護 法 規 を
1つ の基 準 とみ なす こ とも 一方法 で あ る。 た と えば,就 業 条 件 の 目安 と して 最 低 賃金 法 の最 低 賃 金 額 を援 用す る とか,VDT労 働 に 関す る労 働 衛 生 管 理 を用
い る こ とは,テ レワー クの 健 全 な発 展 の た め に は不可 欠 で あ る。
(3)労 働 契 約 によ るテ レワ ー クの雇 用 管理
テ レワー ク遂 行 の 形態 には労 働 契約 に基 づ くもの と,請 負 契約 な ど非労 働 契 約 に基づ くものが あ る。前 者 につ いて は労 働 者 保 護法 規 に裏 打 ち され た雇 用管 理 が 要 請 され るが,後 者 につ い て はそ う した義 務 はな い。 しか し,後 者 につ い て も労働 契約 に基づ くもの と見 な して措 置 した 方が テ レワー クの健 全 な発 展 の た め に プ ラ スで あ る。
① 就 業 規 則 の規 定 整備
就 業規 則 は,労 働 基準 法 第89条 に よ り,常 時10人 以 上 の労 働 者 を使 用 す る 事 業 場 にお い て,そ の作 成 と行 政 官庁 へ の 届 け 出で が 義務 づ け られて い る。就
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と 法 制 度iの 課 題167
業 規 則 に は 広 い 意 味 で 労 働 条 件 の す べ て が 記 載 さ れ る こ と に な る 。 と こ ろ が , テ レワ ー ク と い っ た 場 合,新 しい 就 業 形 態 だ け に ,雇 用 管 理 の 行 き届 い た 企 業 に お い て も,内 規 な ど で 規 定 す る に 止 ま り,そ の 本 則 で あ る 就 業 規 則 で テ レ ワ ー ク 関 連 事 項 に1及 して い な い ケ ー ス が 多 い の が 現 実 で あ る 。 そ こ で,就 業 規 則 本 則 に お い て も,テ レ ワ ー ク に 関 す る 根 拠 規 定 を 明 示 して 運 用 す る こ とが 必 要 に な る。
② 労 働 時 間 管 理 の 留 意 事 項
テ レ ワ ー ク とい っ た 場 合,本 来 の 所 定 勤 務 場 所 を離 れ て 労 務 を提 供 す る形 態 だ け に,管 理 監 督 者 等 の い な い 場 合,基 本 的 労 働 条件 で あ る労 働 時 間 につ い て は ど う 考 え るべ き か とい う 問 題 が 発 生 す る 。
労 働 時 間 等 に つ い て は,労 働 基 準 法 で は い くつ か の 規 定 が 設 け ら れ て い る (た と え ば,第32条,第34条,第35条,第36条,第37条)注2}。 こ う し た 基 本 的 な 労 働 時 間 制 の 例 外 と して,◇ 事 業 場 外 労 働 の み な し労 働 時 間 制 ,◇ 専 門 業 務 型 裁 量労 働 制 注3),◇ 企 画 業 務 型 裁 量 労 働 制ii.4),と い わ れ る もの が あ る。
す な わ ち,「 事 業 場 外 労 働 の み な し労 働 時 間 制 」 とは,1)労 働 者 が 事 業 場 外 で 業 務 に 従 事 した 場 合 で,2)使 用 者 の 具 体 的 な 指 揮 監 督 が 及 ば ず ,3)労 働 時 間 を算 定 す る こ とが 困 難 な 時 は,所 定 労 働 時 間 労 働 した も の とみ なす(第38条 の2)と い う制 度 で あ る 。
た だ し,事 業 場 外 労 働 で あ っ て も,「 何 人 か の グ ル ー プ で 事 業 場 外 労 働 に 従 事 す る場 合 で,そ の メ ンバ ー の 中 に 労 働 時 間 の 管 理 を す る 者 が い る場 合 」,「事 業場 外 で 業 務 に従 事 す る が,無 線 や ポ ケ ッ トベ ル 等 に よ っ て 随 時 使 用 者 の 指 示 を受 け な が ら労 働 して い る場 合 」,「事 業 場 に お い て,訪 問 先 ,帰 社 時 刻 等 当 日 の 業務 の 具体 的 指 示 を受 け た の ち 事 業 場 で 指 示 通 りに 業 務 に 従 事 し,そ の 後 事 業 場 に 戻 る場 合 」 に つ い て は,み な し労 働 時 間 制 の 適 用 は な い と さ れ て い る (昭63年1月1日 基発 第1[7F」")。
テ レ ワ ー ク とい う就 業 形 態 で,在 宅 勤 務 や サ テ ラ イ トオ フ ィ ス勤 務 を して い る か ら と い っ て,使 用 者 が 随 時 通 信 機 器 に よ っ て 業務 指 示 を 出 して い る よ う な ケ ー ス に は,事 業 場 外 の み な し労 働 時 間 制 が 適 用 さ れ る わ け で は な い 。 ま た ,
在 宅 勤 務 や サ テ ラ イ トオ フ ィス 勤 務 で あ れ ば,そ の 就 労 場 所 が 「事 業 運 営 上 の 重 要 な 決 定 が 行 わ れ る 事 業 場 」 で は な い た め,企 画業 務 型 裁 量 労 働 制 が 適 用 で きる 余 地 は な い 。 専 門 業 務 型 裁 量 労 働 制 に して も,特 定 の 業 務 だ け に 適 用 され る た め,テ レ ワ ー ク の す べ て が 該 当 す る わ け で は な い 。
テ レ ワ ー ク に対 す る労 働 時 間 制 度 と して は,使 用 者 が 具 体 的 な 業 務 指 示 を し な い とい う原 則 のFで,事 業 場 外 の み な し労 働 時 間 制 を適 用 す るか,本 来 の 所 定 勤 務 場 所 で 用 い られ て い る労 働 時 間 制 度 を 適 用 す る と い っ た こ とが,現 実 的 な労 働 時 間 管 理 に な る。 後 者 の 場 合,フ レ ッ ク ス タ イ ム 制 を 導 人 す る こ とは 可 能 と な る 。
テ レ ワ ー ク とい っ た 場 合,使 用 者 に も ま た テ レ ワ ー カ ー に も,労 働 時 間 の 概 念 の 希 薄 な"自 由 勤 務"と い っ た 雰 囲 気 で 捉 え られ が ち で あ る が,労 働 基 準 法 が 適 用 され る 労 働 で あ る 以 上,法 定 の 労 働 時 間 条 項 が 厳 格 に 適 用 さ れ る こ と
を,労 使 と も確 認 して お く必 要 が あ る 。
フ レ ッ ク ス タ イム 制 の 他,他 の 変 形 労 働 時 間 制,1ヶ 月 単 位 の 変 形 労 働 時 間 制(第32条 の2>や1年 単位 の 変 形 労 働 時 間 制(第32条 の4)を 活 用 す る こ と も 可能 で あ る 。 こ と に1ヶ 月 単位 の 変 形 労 働 時 間 制 は,1年 単 位 の 変 形 労 働 時 間 制 に 比 べ 規 制 条 項 が 少 な い だ け に 利 用 しや す い 制 度 とい え る 。
こ の よ う に 見 て くる と,テ レ ワ ー ク の 労 働 時 間 制 度 と して は,コ ア タ イ ム な しの フ レ ッ ク ス タ イム 制 を適 用 す る の が,従 業 員 が 自 由 に始 業,就 業 時 刻 を選 択 で き,よ り裁 量 度 が 増 す だ け に現 実 的 な 方 法 とい え る 。
(4)労 働 安 全 衛 生 管理 上 の 留意 点
テ レ ワー クの場 合,特 に在宅 勤 務 にあ っ て は,そ れが 高齢 者 で あ って も,極 端 なケ ー スで は,昼 夜逆 転 の生活 やそ れ か ら来 る健康 破綻 が危 惧 され る。 これ
を予 防 す るに は,「 就 労 時 間管 理 表 」 な どに よ り就 労 時 間 と私 的 時 間 を き ちん と区別 して生 活 す る こ とが 必要 で あ る。 また,自 宅 は これ まで就 労場 所 で は な か った こ と もあ り,適 正 な就労 スペ ー ス をいか に確 保 す るか,さ らに高 齢者 の 場 合,加 齢 要 因 もあ って,長 時 間就 労 に対す る照 度 や,机,椅 子か ら来 る作業
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と 法 制 度Lの 課 題169
姿 勢 の 問 題 も発 生 しが ち な だ け に,作 業 環 境 に 注 意 が 必 要 で あ る。 使 用 者 側 か ら,そ れ らに 関 す る 具 体 的 な モ デ ル を提 示 す る こ とが 望 ま しい とい え る。 そ の 際,「VDT作 業 の た め の 労 働 衛 生 上.の指 針 」(昭60年12月20Li基 発 第705≒}) な ど を 最 大 限 活 用 して,作 業 環 境 管 理,作 業 管 理 及 び 健 康 管 理 に つ い て は ,き ち ん と した 研 修 を行 う必 要 が あ る 。
(5)労 働 災害 へ の対 応
労 働 者が 業務hの 事由 または通 勤 に よ る負 傷,疾 病 等 を被 った時 は,労 災保 険 か ら療 養補 償 給付,休 業 補償 給 付 等 ・定 の保 険給 付 が 行 わ れ る。 こ こで い う 業務 上の 事 故 と して 認 定 され るた め には,「 業務 遂 行性 」 と 「業務 起 因性 」 と い う2つ の要 件 が備 わ って い る必 要 が あ る。
テ レワー クに お け る在宅 勤 務 の場 合 はs住 居 と就 業場 所 が 同 ・の ため ,通 勤 災害 の 概 念 は発 生 して こない と して も,事 業 養三の 支配 ドにあ る労 働 時 間部 分 と 私生 活 が極 め て 隣接 してい るた め,事 故が 発 生 した と して も,業 務 上の事 故 か 私 的 事 故か の 判 断 は困 難 を極 め る こ とが 多 く,具 体 的 には個 々 の ケー ス ご とに 判断 され る こ と にな る。
サ テ ライ トオ フ ィス勤 務 の場 合 は,サ テ ラ イ トオ フ ィスそ の ものが 就 業 の場 所 で あ る。 そ こで 事故 が 起 きた場 合 に は,業 務 遂 行性r業 務 起 因性 が 認 め られ れ ば,業 務L災 害 と して保 護 され る こ とに な る。 自宅 か らサ テ ライ トオ フ ィス までの 問 に 発生 した事 故 等 につ いて は,そ れが 合理 的 な経 路 ,方 法 に よ り往 復 す る途 中の もの で あれ ば,通 勤 災害 と して 保 護 され る。
(6)メ ン タル ヘ ル ス対 策
テ レワー クの場 合,人 に よ って は ど う して も閉 塞 感や 孤 独 感 が募 りや す い た め,定 期 的 に 出勤 日を設 け る とか,特 定 の番 号 に電話 をか け る と会社 の様 々な 情 報 が 得 られ る電 話サ ー ビ ス を行 う とか,文 書に よる定 期 的 な情 報伝 達 の手段 を通 じて コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を取 りや す くす る な どの 特 段 の 配 慮 が 必 要 で あ る。
6.高 齢 者 の テ レ ワ ー ク に 向 け た 課 題
(1)高 齢 者 の 知 識 の 活 用 と生 き が い の 創 出
高齢 者 は,そ の キ ャ リア を 通 じて,多 くの 専 門 的 な知 識 を蓄 積 して い る 。 し か し,従 来の 制 度 的 な 枠 組 の も とで は,高 齢 者 が 就 労 へ の 意 欲 を持 っ て い た と して も,人 生 の 成 熟 期 に お け る そ れ ぞ れ の ラ イ フ ス タ イ ル に 合 わ せ た 就 労 ニ ー ズ に は 十 分 に 応 え られ な か っ た 。 そ の 意 味 で,働 く場 所 や 時 間 に お い て ワ ー カ..̲̲それ ぞ れ の ラ イ フ ス タ イ ル に 合 わ せ た 裁 量 余 地 の 高 い テ レ ワ ー ク の 普 及 は,高 齢 者 の 就 労 機 会 を 広 げ,そ れ を通 じて 経 験 豊 か な高 齢 者 の 知 識 を事 業 活 動 に 生 か す こ と に つ な が る 。
そ の た め に は,企 業 に お け る 課 題 と し て 指 摘 し た よ う に,従 来 型 の 一律 雇 用 ・フ ル タ イム 勤 務 とい う形 態 だ け に こ だ わ らず,多 様 な就 労 形 態 の 選 択 肢 を 提 供 す る こ とへ の 理 解 を進 め る と と も に,個 人 の 自立 性 を 尊 重 し た 裁 量 性 の 高 い 働 き方 に 応 じた 人 事 評 価 や 労 務 管 理 の シ ス テ ム を 整 備 す る こ とが 求 め られ る 。 同 時 に,高 齢 者 の 過 去 の 経 験 を 新 しい 時 代 に 生 か す た め に は,高 齢 労 働 者
に 対 して も,継 続 的 な学 習 機 会 を提 供 す る こ と も必 要 で あ る。
ま た,こ れ ま で の よ う な 日本 の 年 功 人 事 シ ス テ ム に あ りが ち な 管 理 職 と して の ゼ ネ ラ リ ス ト的 な 組 織 調 整 能 力 の 形 成 に と ど ま らず,労 働 者 が 意 識 して 自 ら
の 専 門 的 な 実 務 能 力 を明 確 に し,自 らの エ ン プ ロ イ ア ビ リ テ ィ を 高 め て い く こ とが 求 め られ る 。 高 齢 者 が こ れ まで 蓄 積 して きた 専 門 的 な 能 力 を 生 か し,そ れ ぞ れ の ラ イ フ ス タ イ ル に応 じ た形 で,生 産 活 動 を 通 じて 経 済 社 会 に 参 画 で き る こ と は,自 らの 経 済 的 自立 を 高 め る と と も に,蓄 積 して きた ス キ ル を風 化 させ ず に 実 践 の 場 で さ らに 向 上 させ る こ とが で き,高 齢 者 自 身 の 生 きが い を高 め る
こ と に もつ な が る。
(2)地 域 活 動 へ の 参 加 の 広 が り と老 後 へ の 軟 着 陸
テ レ ワ ー クは,地 域 に お い て,生 活 とバ ラ ン ス の と れ た働 き 方 を 可 能 に す る もの で あ る。 遠 隔 地 で の 勤 務 が 可 能 で あ り,時 間 的 な 裁 量 度 が 高 い テ レ ワ ー ク
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と法 制 度Lの 課 題171
を 活 用 す る こ とで,こ れ まで は 親 の 介 護 に あ た っ て,退 職 を 余 儀 な く され て い た よ う な ケ ー ス で も,介 護 を し なが ら雇 用 を継 続 す る と い う ケ ー ス も広 が っ て こ よ う。 ま た,生 活 地 域 に 密 着 した勤 務 で あ る こ と,フ ル タ イム で は な い 就 労 形 態 で あ る こ と を活 用 し,地 域 で の ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 へ の 参 加,余 暇 活 動 へ の 参 加,家 庭 生 活 の 充 実 な ど,こ れ ま で の 通 勤 を 前 提 と した 就 労 形 態 で は 十分 に で きな か っ た 家 事 や 地 域 活 動 へ の 参 加 機 会 を広 げ る こ とに もつ な が る 。
こ の こ と は,高 齢 者 本 人 の 生 活 の 枠 を 広 げ る と い う だ け で は な く,一 一方 で は,仕 事 を通 じて 経 済 社 会 と結 び つ い て い る こ とで,地 域 のNPO活 動 な ど に と っ て も,專 門 的 な職 業 能 力 を 有 す る 人材 を得 る な ど,そ の 活 動 の 幅 を広 げ る こ と に役 立 つ 。 そ れ と 同 時 に,フ ル タ イ ム 勤 務 か ら退 職 に よ っ て 急 激 に仕 事 の な い 生 活 に 入 る の で は な く,生 活 との バ ラ ン ス を と りな が ら段 階 的 に 老 後 の 生 活 へ と ソ フ トラ ン デ ィ ン グ して い くた め の 道 筋 と して も 有 効 な 手法 に な る と考
え られ る 。
(3)テ レ ワ ー ク を支 え る社 会 的 イ ン フ ラの 充 実
テ レ ワ ー クで 仕 事 を ス ム ー ズ に 進 め る た め に は,事 務 用 品 や 備 品 の 調 達 ,資 料 類 の 入 手 ・購 入,ち ょ っ と した 打 合 せ な ど,仕 事 に 付 随 す る 様 々 な雑 用 が 発 生 す る。 またfテ レ ワ ー ク で は 情 報 通 信 シ ス テ ム の 利 用 が 必 須 な た め ,専 門外 の 技 術 的 な トラ ブ ル や 使 い 方 に 関 す る 疑 問 の 発 生 に悩 ま さ れ る こ と も 少 な くな
い 。
この よ う に,現 在 は ま だ,在 宅 テ レ ワ ー ク を選 択 した 高 齢 労 働 者 に と っ て, 十 分 に働 きや す い 環 境 が 整 備 さ れ て い る と は い え な い 。 しか し,テ レ ワ ー クが 普 及 す る こ と に よ っ て,こ う した 課 題 を解 決 す る た め の 社 会 的 な サ ポ ー ト事 業 が 整 備 さ れ て い く こ とが 期 待 で き る。 た だ し,こ う した サ ポ ー ト事 業 につ い て は,社 会 的 な 事業 で あ る か ら と い っ て,公 的 部 門 が す べ て をす べ き と 考 え る 必 要 は な い 。 民 間 の 商 業 ベ ー ス で も成 り 立つ 事 業 で もあ れ ば,な るべ く 市場 原 理
に任 せ る の が 望 ま し い 。 ま た,営 利 事 業 に よ る もの だ け で な く,地 域 のNPO 活 動 を 活 用 して い く方 法 も検 討 さ れ る べ き で あ る 、,
こ う した地 域 に お け る支 援 施 設 や 支 援事 業 の 整 備 は,テ レ ワー カ ー に 限 ら ず,地 域 の ビ ジネ ス環 境 に も望 ま しい影響 を与 え,地 域経 済 の 活性 化 に もつ な が る もの と思 わ れ る。 また,ビ ジ ネ スの 分 野で 専 門 的 な能 力 を持 った 人 々が 地 域 社 会 と 日常 的 に関 わ る よ うに な る こ とで,経 済 に限 らず 地域 社 会全体 の活性 化 に も寄 与す る と期待 され る。
(4)法 制 度上 の課 題
ここで検 討 した テ レワー クは,高 齢 者 の 雇 用,就 業 の 可能性 を質 的 な 面で よ り 一層 高め る であ ろ うテ レワー クにつ い てで あ る。 単 な るデ ー タ入 力等家 内労 働 的 な 業務 が皆 無 とは い え な いが,大 多 数 は,人 生 あ る い は 職 場 で 長 年 に わ た って培 って きた 高度 のエ ンプ ロ イア ビ リテ ィに裏 打 ち され た専 門技 術,専 門 知識 を駆 使 した テ レワ ー ク とい え る。65歳 現役 社 会 の創 設 が 声 高 に叫 ば れ る 今,高 齢 者の 可 能性 を育 む新 しい雇 用,就 業形態 で あ る テ レワー クを現 行 労働 法制 の ドでlj̲枯れ にす る の はa社 会 的損 失 に外 な らない とい え る。
① 労 働 時 間 等 に 関す る規 定 の適 用 除外 につ いて
労働 基 準 法 はそ の41条 で 「労 働 時 間等 に関 す る規 定 の 適 用 除外 」 の 条項 を お いて い る。 す な わ ち,① 農業,水 産業 の 従事 者,② 管 理 監督 者,③ 監視 断続
的労 働 従 事者 で 行 政官 庁 の 許 可を受 け た もの,に つ い て は,労 働 時 間,休 憩, 休 日に 関す る 規定 は適 用 しない と して い る。 そ の性 質 また は態様 が法 定 労働 時
間や 休 憩,週 休 制 を適 用 す る には 適 しな い 事 業 また は 業務 に従 事 す る労 働 者 の,労 働 時 間 等 の適 用 除外 を謳 って い るの で あ る。
新 しい雇 用 就 業形 態 で あ る テ レワー ク も,本 来 の ヘ ッ ドオ フ ィス を離 れ て勤 務す る こ とか ら,労 使 双 方 に"自 由勤 務'と 認 識 され る面が あ る よう に,テ レ
ワー ク従事 者 の 裁量 領域 は広 く,そ の た め身 体 また は精神 的 緊張 は 少 な く,労 働密 度 の疎 の 部分 も少 なか らず あ る。 そ うであ るな らば,テ レワー ク従 事者 に つ い て も,監 視 断続 的労 働 従 事 者 と同 じ く行 政 官 庁 の 許可 を条 件 に,労 働 時 間 等 の 規 定 の適 用 を除外 して も,労 働 者 保 護 に も とる よ うな 事態 に はな らない と
も考 え られ る。
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク推 進 と 法 制 度 ヒの 課 題173
そ こ で,検 討 委 員 会 で は,労 働 基 準 法 第41条 に 第4号 と して,「 四 専 門 的 テ レ ワ ー ク に 従 事 す る 者 で,使 用 者 が 行 政 官 庁 の 許 可 を受 け た もの 」 を 付 け 加 え,テ レ ワ ー ク を現 行 の 労 働 時 間 法 制 か ら開 放 し,新 しい 雇 用 就 業 形 態 と して よ り 層 進 展 す る こ と を 国 に提 案 した 。 そ う す る こ とで,テ レ ワ ー ク は 労 働 時 間,休 憩,休 日 に 関 す る硬 直 的 あ る い は無 用 の 定 め か らは 自由 に な る こ とが で き る 。
② 専 門 業 務 型 裁 量 労 働 制 に つ い て
雇 用 ・就 業 機 会 よ り労 働 者 保 護 の 観 点 を よ り重 視 して テ レ ワ...クを そ こ まで 柔 軟 に 考 え る こ とに 危 惧 す る 向 き に は,次 の よ う な 考 え 方 を提 起 した い と考 え
る 。
労 働 基 準 法 第38条 の3はf前 に 触 れ た よ う に,専 門 業 務 型 裁 量 労 働 制 の 規 定 を お い て い る。 す な わ ちT労 使 協 定 に よ り,「 ① 命 令 で 定 め る 業 務 の う ち か ら労 働 者 に 就 か せ る こ と とす る 業務 を定 め る と と も に,② そ の 業 務 の 遂 行 の 浜 段 及 び 時 間 配 分 の 決 定 等 に 関 し労 働 者 に 具 体 的 な 指 示 を しな い こ と とす る 旨,
③ そ の 労 働 時 間 の 算 定 に つ い て は そ の 協 定 で 定 め る と こ ろ に よ る こ と とす る 旨」 を 定 め た 場 合 は,そ の 協 定 で 定 め る 時 間 労 働 した もの とみ な す とい う の で あ る 。
命 令 で 定 め る 業 務 に つ い て は,労 働 基 準 法 施 行 規 則 第24条 の2の2第2項 に お い て,
「新 商 品,新 技 術 の 研 究 開 発 等 の 業 務 」 以 ド5つ の 具 体 的 な 業 務 と 「前 各 号 の ほ か,中 央 労 働 基 準 審 議 会 の 議 を経 て 厚 生 労 働 大 臣 の 指 定 す る 業 務 」 が 掲 げ られ て い る 。 最 後 の 厚 生 労 働 大 臣 の 指 定 す る 業 務 と して,厚#:労 働 省 告 示 第7 一号 に よ り
}コ ピ ー ラ イ タ ー や 公 認 会 計 上,弁 護 十,1級 建 築1,,不 動 産 鑑 定 一1̲,弁 理 七の6つ の 業 務 が1二 げ ら れ て い る。 こ れ に,「 テ レ ワ ー ク で 行 う技 術 的 専 門 的 業 務 」 を 加 え る こ と を 検 討 して も良 い の で は な い か と考 え る 。 そ れ が 実 現 す る と,時 間 外 労 働,休 憩 時 間,深 夜 業,休 日 に 関 す る労 働 基 準 法 の 規 定 は適 用 さ れ て も,労 働 時 間 に つ い て は 「協 定 で 定 め る 時 間 労 働 した も の 」 とみ な さ れ る こ とに な る わ け で あ る 。
少 子 ・高 齢 化 の さ ら な る 進 展 、労 働 力 人 口 の 減 少 な どの 急 激 な 変 化 の 中 で,65歳 現 役 社 会 の実 現 はす ぐれ て社 会 的課 題 で あ り,そ の大 きな選 択 肢 の ひ とつ に テ レワー クが位 置 す る今,テ レワー クの環 境 を整 え る観 点 か ら以上 の よ うな労 働 法 の整 備 を要請 す る こ とは,時 宜 に適 った こ とで あ る。
注1:本 稿 は,財 団 法 人 高 年 齢 者 雇 用 開 発 協 会 が 平 成12年 度 に 実 施 し た 「シ ニ ア ・ テ レ ワ ー ク 検 討 委 員 会 」 に 座 長 と し て 参 加 し,高 齢 者 の 多 様 な 就 業 ニ ー ズ に 対 応
し た 情 報 通 信 技 術 の 活 用 や テ レ ワ ー ク 導 人 の 制 度 的 な 課 題 に 関 す る 調 査 研 究 を 行 っ た が,そ の 際 の 議 論 や 報 吉 資 料 な ど を も と に ま と め て,今 後 の テ レ ワ ー ク に 関 連 し た 法 律 的 な 検 討 の 素 材 とす る こ と を 意 図 し た も の で あ る 。
2二 労 働 時 間 等 に つ い て 労 働 基 準 法 は 次 の よ う な 規 定 を 設 け て い る 。
◇ 休 憩 時 間 を 除 き,1週 間 に つ い て40時 間,1日 に つ い て8時 間 を 超 え て 労 働 さ せ て は な ら な い(第32条)O
◇ 労 働 時 間 が6時 間 を 超 え る 場 合 は 少 な く と も45分,8時 間 を 超 え る 場 合 は 少 な く と も1時 間 の 休 憩 を'チえ な け れ ば な ら な い(第34条)。
◇ 毎 週 少 な く と も11口1の 休 日 を ケ え な け れ ば な ら な い(第35条)。
◇ 法 定 労 働 時 間 を 超 え て 労 働 さ せ る 場 合,法 定 休liに 労 働 さ せ る 場 合 に は,そ の 事業 場 で 労 使 協 定 を 締 結 し,そ れ を 行 政 官 庁 に 届 け 出 な け れ ば な ら な い(第 36条)。
◇1週40時 間,1日8時 問 を 超 え て 労 働 さ せ た 場 合,ま た は 午 後10時 か ら 午 前 5時 の 深 夜 時 間 帯 に 労 働 さ せ た 場 合 に は2割5分 増 し の 割 増 賃 金 を,法 定 休H
に 労 働 さ せ た 場 合 に は3割5分 増 し の 割 増 賃 金 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い(第 37条)。
3:「 専 門 業 務 型 裁 量 労 働 制 」 と は,以 ドの よ う な11業 務 に 限 っ て,① 労 使 協 定 で 業 務 の 遂 行 の 手段,時 間 配 分 の 決 定 等 に 関 し労 働 者 に 具 体 的 な 指 示 を し な い こ と
と す る 旨,② 労 働 時 間 の 算 定 に つ い て 労 使 協 定 で 定 め た 時 は そ の 労 働 時 間 労 働 し た も の とみ な す(第38条 の3)と い う 制 度 で あ るU
① 新 商 品,新 技 術 の 研 究 開 発 等 の 業 務
② 情 報 処 理 シ ス テ ム の 分 析,設 計 の 業 務 (3)新聞,出 版 等 の 取 材,編 集 の 業 務
④ 新 た な デ ザ イ ン 考 案 の 業 務
⑤ 放 送 番 組 の プ ロ デ ュ ー サ ー,デ ィ レ ク タ ー の 業 務
⑥ そ の 他 厚 生 労 働 大 臣 の 指 定 す る 業 務
◇ 広f{17,宣 伝 等 に お け る 文 章 の 案 の 考 案 の 業 務
高 齢 者 の テ レ ワ ー ク 推 進 と 法 制 度 ヒの 課 題175
◇ 公認 会計 」:の業務
◇ 弁護i士=の業務
◇1級 建築Lの 業務
◇ 不動 産鑑 定 七の 業務
◇ 弁理}:の 業務
4「 企画 業務 型 裁量労働 制」 とはT① 事 業運 営 トの重 要な決 定が 行 わ れ る こ とに お いて,② 労使 委員会の 設 置,決 議 の下で,⑧ 事業の 運営 に関す る 事項 につ いて の 企画,立 案,調 査及 び分 析 の業務 を対象 に,決 議 された労働 時 間労働 した もの
とみ なす(第38条 の4)と い う制 度で ある。
〈 参 考 文 献 〉
財 団 法 人 高 年 齢 者 雇 用 開 発 協 会,『 高 齢 者 の た め の テ レ ワ ー ク に 関 す る 検 討 結 果 報 告 酎,財 団 法 人 高 年 齢 者 雇 用 開 発 協 会,2001.3.
佐 藤 孝 治,「 通 勤 困 難 者 の た め の テ レ ワ ー ク セ ン タ ー:情 報 通 信 技 術 の 社 会 政 策 的 な 活 用 策 」1『 商 経 論 叢i』第33巻 第2号,神 奈 川 大 学 経 済 学 会,1997.10,pp.63‑117.
社 団 法 人 日 本 サ テ ラ イ トオ フ ィ ス 協 会,『 分 散 型 オ フ ィ ス ・ガ イ ド ラ イ ン 調 査 報 告 書 』,社 団 法 人 日 本 サ テ ラ イ トオ フ ィ ス 協 会,1995.3.
同,『 通 勤 困 難 者 の た め の コ ミュ ニ テ ィ オ フ ィ ス に 関 す る 実 践 的 研 究 報 告 壽 』,社 団 法 人 日 本 サ テ ラ イ トオ フ ィ ス 協 会,1996.2.
目 本 労 働 研 究 機 構,『 通 信 情 報 機 器 の 活 用 等 に よ る 在 宅 勤 務 の 展 開 』,iI本 労 働 研 究 機 構,1995.9.
郵 政 省 編,『'ド 成12年 版 通 信r膚 』,株 式 会 社 ぎ ょ うせ い,2000.6.