• 検索結果がありません。

保育サービスの供給効率性に関する実証分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "保育サービスの供給効率性に関する実証分析"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

著者 塩津 ゆりか

雑誌名 經濟學論叢

巻 58

号 4

ページ 119‑141

発行年 2007‑03‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011133

(2)

【研究ノート】 

保育サービスの供給効率性に関する実証分析

1)

  塩 津 ゆりか  

1 は じ め に

 近年,大都市における保育所待機児童が社会問題化し,その解消にむけて さまざまな施策が講じられている.この需要に応えるため,量的には保育所 の新規開設が望まれる.だが,公営保育所の担い手である地方自治体は,少 子化および地方財政が悪化しており保育所の新規建設に対し慎重になってい る.他方,民営保育所に対しては,参入規制の撤廃により株式会社の保育所 運営も認められたが,あまり企業の新規参入はみられない.このように供給 サイドからみて保育の超過需要に対処できているとはいえない.加えて,現 状では周・大石(2003)が指摘するように保育所サービスに対する潜在需要は 大きく,供給拡大が新たな保育所サービスへの需要を生み出している.

 量的な側面だけでなく,質的な側面にも目をむけると,乳児保育など多様 化するニーズには一般に公営保育所よりも民営保育所のほうが柔軟に対応し ている.一方,保育所の運営費を比較すると公営保育所よりも民営保育所の 方が低コストで保育所サービスを提供しており,公営保育所はサービスの供 給に非効率性が生じているといわれる.その結果,各地で公営保育所の民営

1 )本稿の作成にあたっては,伊多波良雄氏(同志社大学)から厚いご指導をうけました.また,

藪谷あや子氏(人間環境大学)のご紹介により大阪保育研究所から貴重なデータをいただきました.

日本財政学会第62回大会にて,中村和之氏(富山大学),山重慎二氏(一橋大学)から貴重なコ メントをいただきました.ここに記して感謝の意を表します.当然のことながら本稿に含まれる すべての誤りは筆者によるものです.

 また,本稿は,平成17年度私立大学等経常費補助金特別補助高度化推進特別経費大学院重点特 別経費(学生分)の助成を受けました.

(3)

化が進められている.しかし,2006年に横浜地裁で行われた横浜市立保育所 の民営化に係る裁判では拙速な民営化は避けるべきであるとの判例がでてお り,民営化のありかたに疑問を投げかけている.

 ここで,保育所サービスの供給に関するこれまでの先行研究を概観しておく と,林(1998)は,公立保育所の運営費が私立保育所の運営費よりも高いこと を調査し2),保育料に公民格差がないのであれば,措置制度からの移行に伴っ て,サービス・質での競争が導入され,保育所利用者にとっては望ましいとし ている.また,「コスト論」に対する批判として,保育行財政研究会(2000)が 財政的な理由のみで保育所の民営化を行うことは,公的福祉の後退になり,保 育の質的低下を招くと指摘している.ところで,保育所サービスの供給効率性 について分析した先行研究は,筆者の知る限り十分な蓄積がなされているわけ ではない.一般に供給効率性を議論する際に用いられる手法として,確率フロ ンティア分析(SFA),包絡線分析(DEA),一般化線形モデル(GLM)の3つが あげられる.第一番目の手法であるSFAには標準経済理論にもとづいた生産(費 用)関数が明確化されており,効率性の解釈が容易であるという利点があるも のの,実際のデータにたいして,正規分布にしたがうことを要求するなど,か なり強い制約を必要とする.保育所サービスの供給効率性について,SFAを分 析手法とした研究はマイクロデータを利用した研究に白石・鈴木(2002)があ る.この研究からは,保育の質を考慮して確率フロンティア生産関数を使って 首都圏の保育所を対象に分析した結果,質の高い保育所ほど効率的であるとい う結論が得られている.次に二つ目の手法であるDEAは,データの分布に対 する制約を課さないので生産(費用)関数の形を特定化しなくてよいという利 点がある反面,効率性の解釈に理論的な背景をもたないという欠点がある.さ らに,第三の手法である一般化線形モデル(GLM)は,経済主体が市場価格の もとで費用最小化行動をとっていないという前提に立っている.一般化線形モ

2 )ここで,公立保育所とは,公設公営保育所と公設民営保育所をさす.私立保育所は,民設民営 保育所をさす.なお,本稿で公営保育所とは,公設公営保育所をさし,民営保育所とは,公設民 営保育所と民設民営保育所をさす.

(4)

デルを利用して保育所サービスの供給効率性を分析したものには,清水谷・野 口(2004)がある.この研究の特徴は,保育の質を考慮した費用関数の推定が 行われている点である.清水谷・野口(2004)では,以下の結論が得られている.

まず,個々の保育所から提供された賃金やレンタルコストおよび保育の質に関 するマイクロデータを用いて,首都圏でコブ・ダグラス型の保育所サービスの 費用関数を推定した場合,公営保育所は民営保育所に比べ6〜13%コスト高 となる.また,トランス・ログ型で推定した場合も7〜13%コスト高となる.

しかし,特に公営保育所の運営では,各種補助金を市町村でプールして配分す ることになるので,個別の保育所では実体がつかみにくくなっている.そこで 市町村単位での分析も行われている.このときはコブ・ダグラス型の生産関数 のみとなっているが,ここでも公営保育所が民営保育所に比べ11%程度コス ト高であることが指摘されている.

 以上のように,保育サービスの供給効率性についてはSFA,GLMによる 2つの先駆的分析がある.これらの研究が異なる評価手法を用いても首都 圏の公営保育所が非効率であることを示した意義は大きい.だが,Singh et al.(2002),中山(2003)が指摘するように効率性の評価を単独の手法のみで行 うことには限界がある.加えて,非効率性を規定する要因については残され た課題となっている.

 そこで,本稿では,これらの効率性評価手法の限界を補うためにFried et al.(2002)によって提唱された分析手順を応用して,保育所サービスの効率性 評価と要因分析を試みる.具体的には,まずDEAによって各市町村にある運 営主体別の保育所サービス供給効率性を計測する.その上で,保育所サービ スの供給効率性を規定する要因を明らかにするため,SFAを行う.また,待 機児童問題は特定地域に限定された問題ともいわれる.もし,首都圏以外に 待機児童を抱える地域でも,保育の質を考慮してなお公営保育所の非効率性 が存在すれば,保育所サービスの供給効率性は地域固有の問題ではなくなる.

さらに非効率性の要因が明らかとなれば待機児童対策として公営保育所の民

(5)

営化も含めた保育所の運営改善に貢献できるであろう.

 本稿の第1の特徴は,効率性分析の2つの手法を併用することで分析の頑 健性を高め,かつ非効率性の要因分析を行っている点である.第2の特徴は,

保育の質の分析手法である.先行研究ではサービスの実施の有無を平均する

「点数評価アプローチ」によって質の評価が行われている.しかし,医学では QOL(患者の生活の質)の測定に際し因子分析を用いるのが慣例であり,教育 学や心理学においても「質」の計量分析では因子分析が行われることが多い3). そこで,本稿でもこれらの分野で多用されている因子分析により保育の質指 標を構成した.

 以下,本稿の構成は次のとおりである.第2章で大阪府での保育所運営費 調達制度を概観した後に,本稿で利用したデータについて述べる.続いて,

第3章では,効率性分析の代表的な手法である確率フロンティア分析(SFA)

と包絡分析(DEA)の特徴を簡単に紹介した上で,多段階アプローチによって,

保育所サービスの供給効率性と要因分析を行う.最後に,第4章で結論と今 後の課題について述べる.

2 デ ー タ

 認可保育所の運営費については,国の保育基準によって地域別に保育単価 が定められている.各保育所は実際にかかった運営費を通常保育に関しては,

3 )たとえば,牟田(2003)を参照.

4 )児童福祉法の改正により,平成16年度より公立保育所に対する保育所運営費の国庫負担金が一 般財源化された.他方,平成17年現在,私立保育所に対する国庫負担金は維持されている.

 児童福祉法の公立保育所とは,公設公営保育所と公設民営保育所をさし,私立保育所とは,民 設民営保育所をさす.

総 運 営 費 保育単価による支弁額

国 の 補 助 金

都 道 府 県 補 助 金

市 町 村 補 助 金

運 営 費 差 額 国 庫

負担金4)

都道府県 負 担 金

市 町 村 負 担 金

国基準の保育料 保 護 者 保 育 料

徴 収 金 差  額

第 1 表 保育所の総運営費の内訳

(6)

保育単価による支弁額として国・都道府県・市町村の負担金と保護者からの 保育料でまかなう.これとは別に長時間保育などの通常保育以外の特定事業 に関する部分は各事業への国・都道府県および市町村補助金でまかなう.(第 1 表参照)

 もし,当該市町村が独自の判断で国基準による保護者保育料を減免してい る場合は,第1表にある徴収金差額が発生する.現実には大多数の市町村で 減免が行われている.また,市町村が独自に国の保育士配置基準を上回って 保育士を加配していれば,その費用は運営費差額に反映される.また,保育 所サービスは労働集約的なサービスであるため,保育所運営費のうち人件費 が約9割を占める.公営保育所の保育士は公務員で勤続年数が長くなるほど 給与は上昇する.だが民営保育所は国の福祉職俸給表を参照するため,勤続 年数が長くなるほど給与の公民格差が生まれる.大阪府ではこの給与格差を 是正するため1973年に独自の民間社会福祉施設給与改善費という補助金(以 下,民改費と表記)を創設した.この結果,勤続年数が同じであれば本俸の公 私間格差は,ほぼなくなっている.

 各市町村は保育料の徴収金差額と運営費の差額を法定外市町村負担金とし て一般会計からの拠出金で補填している.

 本稿では保育の質を考慮した保育所費用関数を推定するため,運営主体別 に市町村単位で集計したデータを用いる.この理由は,市町村別であれば総 運営費が正確にわかることと公営保育所では各種補助金をプールして運用し ていることによる.

 分析に利用するデータは大阪保育研究所が独自に行ったアンケート調査か ら,2002年度大阪府下全市町村の運営主体別保育所運営費,府下の保育所労 働条件等のデータである.ただし,データの欠損があるため,大阪市,豊能町,

千早赤阪村は分析対象から除く.

 次に,生産要素を労働と資本,土地の3つと想定し,それぞれの要素価格 として保育士の年収と修繕費や給食材料費など人件費以外を資本価格,さら

(7)

に地価をデータとして準備する.保育士年収は,公営保育所については各市 町の保育士俸給表を使い,民営保育所については福祉保育労大阪地方本部試 算による大阪府「給与改善費補助金」標準給与表にもとづき算定した.人件 費以外の費用導出にあたっては国基準の保育単価内訳試算表から入所定員に 応じて各保育所の一般管理費および乳幼児生活費を計算の上,市町ごとに運 営主体別の合計額を算出した.一般管理費は修繕管理費や旅費などをさし,

保育所定員の増加に伴い増加する.また乳幼児一般生活費は入所児童の増加 に伴い逓増する.以下では,一般管理費および乳幼児一般生活費を合計した ものを管理費とよぶ.さらに地価については当該保育所付近の公示地価を利 用する.また,分析には生産物を保育所入所者数とする.

 次いで保育の質を考慮するため,国の保育士配置基準を上回るかどうか,

運動会,生活発表会,お泊まり保育の実施,総開園時間,休日保育,病児保育,

夜間保育,子育て支援,緊急・一時保育の実施を因子分析し,①構造指標② 父母の利便性指標③発達心理学的指標の3因子を抽出した5).これら3つの 指標の因子得点を保育の質指標として次章での分析に用いる.以上の変数に ついての記述統計量を第 2 表に示す.

5 )因子分析については付表を参照のこと.

平 均 値 標準偏差

統 計 量 統 計 量

入所児童数 1107.169 135.912

入所児童数(対数) 2.870 0.047

常勤者数 142.070 17.984

常勤者数(対数) 1.959 0.426

保育所数 10.338 9.924

敷地面積 15909.160 14256.377

敷地面積(対数) 4.055 0.370

保育士年収(円) 2015078 10485.850

保育士年収(対数) 7.919 0.465

平均年間管理費 3017481.345 739704.861

平均年間管理費(対数) 6.469 0.096

第 2 表 記述統計量

(8)

3 分 析

 これまで効率性評価を行う際にも分析が簡便なため,最小二乗法(OLS)が 多く利用されてきた.しかし,OLSでは誤差項のなかに非効率性を含めてし まい,効率性を過大評価してしまうという問題が指摘されてきた.そこで,

OLSが持つこの欠点を克服するため開発された手法が確率フロンティア分析

(SFA)である6).SFAは,パラメトリックアプローチとしてデータや効率性フ ロンティアが確率的に変動すると仮定している.さらに理論的に生産(費用)

関数が明確化されており,効率性の解釈が容易であるという利点がある.し かし,残差がskewness条件を満たすことや非効率項についてあらかじめ分布 を特定化することなどの制約をおかねばならない.ほかに代表的な効率性評 価の手法としては,多入力・多出力に対応した包絡分析(DEA)がある.DEA の特徴はデータの分布に対する制約を課さないので比較的サンプル数が少な くても分析可能であるという利点がある反面,効率性の解釈に理論的な背景 をもたないという欠点がある.SFAとDEAは独立に発展してきたが,相互補 完的に利用し効率性評価を試みる研究がSueyoshi(1999),Fried et al. (2002)

平均公示地価(円) 157156.998 51663.136

平均公示地価(対数) 5.168 0.170

実際の運営費(円) 1755825 219459.1

実際の運営費(対数) 6.040 0.052

開所時間 1.071 0.017

公営ダミー 0.549 0.501

配置 0.050 0.990

利便 0.055 0.916

心理 -0.071 0.472

人口 5.033 0.421

過不足常勤保育士数 1.430 0.588

過不足保育所数 7.373 10.356

過不足敷地面積 3.579 0.499

6 )SFAについての詳細な記述はKumbhakar and Lovell (2003)を参照.

(9)

をはじめ,Liu& Tone (2005)やCampbell et al.(2005)などによって行われて いる.これらの研究ではSFAとDEAの限界を補うために多段階アプローチ が提唱されている.具体的には,第1段階としてDEAを用いて生産要素や産 出物の過不足を計測する.第2段階では,第1段階で得られた生産要素や産 出物の過不足を加味してSFAを実行し,効率性分析において各事業体にはコ ントロールできない外的要因と誤差項に分解する.第3段階として,第2段 階で得られたデータをもとに原データを修正し,再びDEAによって各事業 体の効率性評価を行い,より厳密な意味でのマネジメント効率性を計測する.

この多段階アプローチでは,第1段階で計測された,生産要素や生産物の過 不足が生じるのは,規制など事業体にはコントロールできない外的要因と統 計的誤差,そして事業運営の適否による非効率性によると考える点に特徴が ある.本稿では,DEAとSFAを併用する多段階アプローチを応用して保育所 サービスの効率性評価と要因分析を試みる.

3. 1 DEAによる効率性分析

 DEAでは,コスト効率性のほか生産要素から得られる生産物の効率性を測 る技術効率性,生産要素の配分効率性なども計測できる.本稿では,コスト 効率性に焦点を当てる7).これは,保育の質を考慮した上で費用面からみた 非効率性を確認し,その規定要因を明らかにするためである.

 そこで,先述の多段階アプローチにしたがって,本節では,第一段階とし て原データを利用しDEAにより効率性を推定する.

 まず各事業体が直面する費用最小化問題は次式で与えられる.

    min cxx   (1a)  

    s.t.x Xλ   (1b)         yi Yλ   (1c)  

7 )詳細は刀根(1993)を参照のこと.

(10)

      L eλ U   (1d)  

      λ 0   (1e)  

 ただし,Xは生産要素を表すベクトルでcx(Xは各生産要素を表し,x=1,

……,nとする)は価格ベクトル,Yは生産物を表すベクトルとする.また,

λはウエイトを表わすベクトルである(λ=1,……,mとする)この問題の最適 解を(xλとすると,コスト効率性Ec

    Eccixi cix

(2)  

となる.ただし,0≦Ec≦1であり,Ec=1のとき,その事業体は相対的にコ スト効率的という.

 ここで,生産物Yは入所児童数とし,その生産に必要な生産要素Xを常 勤保育士数,保育所数,敷地面積で与える.各生産要素の価格は保育士年 収,年間平均管理費,公示地価とする.コスト効率性Ec<1の場合は,input

oriented modelとなるため,実際に各市町の運営主体別事業体が投入した生産

要素と費用最小化問題から得られた最適生産要素投入量の差(スラック)が正 であれば生産要素の過剰投入量を表す.このように生産要素の過剰投入を明 示的にとらえることで,後に非効率性の要因分析を行う際に外的要因による 非効率性や統計的誤差との分離が可能となる.以下では,大阪府下の市町で 運営主体別データの得られた71事業体について,規模に関して収穫可変の生 産関数を仮定したVRS Modelと規模に関して収穫一定の生産関数を仮定した CRS Modelとでコスト効率性を推定した8)

8 )分析に使用したソフトはDEAP Ver2.1である.

(11)

公営ダミー

収穫可変の生産関数を 仮定したコスト効率値 VRS total cost efficiency

収穫一定の生産関数を 仮定したコスト効率値 CRS total cost efficiency

吹 田 市 1 0.470 0.007

吹 田 市 0 0.472 0.014

摂 津 市 1 0.538 0.024

茨 木 市 1 0.487 0.029

高 槻 市 1 0.486 0.036

高 槻 市 0 0.489 0.043

島 本 町 1 0.619 0.064

島 本 町 0 0.77 0.091

豊 中 市 1 0.493 0.065

豊 中 市 0 0.565 0.083

池 田 市 1 0.555 0.09

池 田 市 0 0.543 0.096

箕 面 市 1 0.494 0.094

箕 面 市 0 0.558 0.115

能 勢 町 1 0.745 0.164

守 口 市 1 0.499 0.117

守 口 市 0 0.524 0.131

門 真 市 1 0.505 0.134

門 真 市 0 0.487 0.136

寝 屋 川 市 1 0.475 0.14

寝 屋 川 市 0 0.527 0.163

枚 方 市 1 0.487 0.158

枚 方 市 0 0.512 0.173

交 野 市 1 0.582 0.205

四 条 畷 市 1 0.568 0.209

四 条 畷 市 0 0.583 0.223

大 東 市 1 0.498 0.198

大 東 市 0 0.495 0.204

東 大 阪 市 1 0.474 0.202

東 大 阪 市 0 0.518 0.228

八 尾 市 1 0.478 0.218

八 尾 市 0 0.481 0.226

柏 原 市 1 0.623 0.303

柏 原 市 0 0.517 0.259

松 原 市 1 0.498 0.256

松 原 市 0 0.517 0.274

第 3 表 DEAによる各事業体のコスト効率性

(12)

 分析の結果,VRS Modelを仮定した場合,コスト効率値が0.7以上となっ たのは,島本町(民営),能勢町(公営),河南町(公営),阪南市(民営),岬町(公営)

藤 井 寺 市 1 0.519 0.282

藤 井 寺 市 0 0.624 0.348

羽 曳 野 市 1 0.519 0.298

羽 曳 野 市 0 0.484 0.285

富 田 林 市 1 0.496 0.299

富 田 林 市 0 0.506 0.313

大阪狭山市 1 0.623 0.394

大阪狭山市 0 0.589 0.381

河内長野市 1 0.62 0.41

河内長野市 0 0.509 0.344

美 原 町 1 0.554 0.383

太 子 町 0 0.653 0.461

河 南 町 1 0.766 0.552

堺 市 1 0.507 0.373

堺 市 0 0.541 0.406

高 石 市 1 0.521 0.399

高 石 市 0 0.561 0.437

泉 大 津 市 1 0.548 0.435

泉 大 津 市 0 0.523 0.423

和 泉 市 1 0.503 0.414

和 泉 市 0 0.482 0.404

忠 岡 町 1 0.596 0.508

岸 和 田 市 1 0.484 0.42

岸 和 田 市 0 0.487 0.43

貝 塚 市 1 0.533 0.478

貝 塚 市 0 0.502 0.458

泉 佐 野 市 1 0.53 0.491

泉 佐 野 市 0 0.496 0.467

泉 南 市 1 0.527 0.504

泉 南 市 0 0.694 0.674

熊 取 町 1 0.530 0.523

田 尻 町 1 1.000 1.000

阪 南 市 1 0.643 0.549

阪 南 市 0 0.911 0.67

岬 町 1 1.000 0.666

公営ダミーは,公営保育所であれば1,民営保育所であれば0とした.

(13)

といった比較的人口規模の小さい自治体にある保育所であった.逆にコスト 効率値が0.5以下であったのは,吹田市(公営・民営),茨木市(公営),高槻市(公 営・民営),豊中市(公営),箕面市(公営),守口市(公営・民営),寝屋川市(公営), 枚方市(公営),大東市(公営・民営),東大阪市(公営),八尾市(公営・民営), 松原市(公営・民営),富田林市(公営・民営),岸和田市(公営・民営),泉佐野 市(民営)の各市であった.このうち,泉佐野市以外は公営または公営+民営 保育所のコスト効率値が0.5以下であった.また,CRS Modelを仮定した場 合には,一般に効率値はVRS Modelのときよりも低く推定されるが,本稿で も同様の結果となった.コスト効率値が0.5以上となったのは,河南町(公営), 忠岡町(公営),泉南市(公営・民営),熊取町(公営),田尻町(公営),阪南市

(公営・民営),岬町(公営)であった.逆にコスト効率値が0.3以下となったの は,吹田市(公営・民営),摂津市(公営),茨木市(公営),高槻市(公営・民営), 島本町(公営・民営),豊中市(公営・民営),池田市(公営・民営),箕面市(公 営・民営),能勢町(公営),守口市(公営・民営),門真市(公営・民営),寝屋川市

(公営・民営),枚方市(公営・民営),交野市(公営),四條畷市(公営・民営),大 東市(公営・民営),東大阪市(公営・民営),八尾市(公営・民営),柏原市(民営), 松原市(公営・民営),藤井寺市(公営),羽曳野市(公営・民営),富田林市(公営・

民営)の各市であった.このうち,柏原市以外は公営または公営+民営保育所 のコスト効率値が0.3以下であった.

 以上のように,全般にコスト効率値は都市部で低く周辺部で高く推定され る結果となった.

 次に市町運営主体別の生産要素投入量がどの程度,過剰(不足)となってい るかを第 4 表で確認する.

(14)

公 営 ダミー

VRS Modelでのスラック CRS Modelでのスラック

常  勤

保育士数 保育所数 面  積 常  勤

保育士数 保育所数 面  積 吹 田 市 1 1.500 16.108 3.690 2.485 17.972 4.577 吹 田 市 0 1.400 12.108 3.368 2.371 13.944 4.242 摂 津 市 1 0.760 3.108 2.821 1.716 4.917 3.681 茨 木 市 1 1.350 16.108 3.607 2.291 17.889 4.454 高 槻 市 1 1.280 12.108 3.459 2.206 13.861 4.293 高 槻 市 0 1.420 18.108 3.508 2.332 19.833 4.329 島 本 町 1 0.460 0.108 2.844 1.357 1.805 3.651 島 本 町 0 0.110 -0.892 2.920 0.992 0.777 3.714 豊 中 市 1 1.590 25.108 3.984 2.458 26.75 4.765 豊 中 市 0 0.900 16.108 3.066 1.753 17.722 3.834 池 田 市 1 0.790 6.108 3.197 1.628 7.694 3.951 池 田 市 0 0.850 3.108 2.996 1.674 4.666 3.737 箕 面 市 1 1.080 5.108 3.354 1.889 6.638 4.082 箕 面 市 0 0.850 3.108 2.912 1.644 4.61 3.627 能 勢 町 1 0.150 1.108 2.758 0.929 2.583 3.459 守 口 市 1 1.360 15.108 3.421 2.125 16.555 4.109 守 口 市 0 0.970 4.108 2.873 1.720 5.527 3.548 門 真 市 1 0.950 5.108 3.080 1.685 6.499 3.742 門 真 市 0 1.130 6.108 3.138 1.851 7.471 3.787 寝 屋 川 市 1 1.390 14.108 3.631 2.096 15.444 4.266 寝 屋 川 市 0 1.400 22.108 3.427 2.091 23.416 4.049 枚 方 市 1 1.340 16.108 3.662 2.016 17.388 4.271 枚 方 市 0 1.780 33.108 3.526 2.442 34.36 4.122 交 野 市 1 0.540 1.108 3.097 1.187 2.332 3.679 四 条 畷 市 1 0.720 2.108 2.770 1.352 3.304 3.339 四 条 畷 市 0 0.490 1.108 2.622 1.108 2.277 3.178 大 東 市 1 1.050 4.108 3.149 1.653 5.249 3.692 大 東 市 0 1.280 13.108 3.321 1.868 14.221 3.850 東 大 阪 市 1 1.460 14.108 3.653 2.034 15.193 4.169 東 大 阪 市 0 1.820 36.108 3.337 2.379 37.165 3.840 八 尾 市 1 1.280 10.108 3.564 1.824 11.137 4.054 八 尾 市 0 1.440 15.108 3.384 1.969 16.11 3.860 柏 原 市 1 0.770 4.108 3.021 1.285 5.082 3.484

第 4 表 自治体運営主体別過剰(不足)生産要素投入量

(15)

柏 原 市 0 1.020 5.108 2.825 1.520 6.054 3.275 松 原 市 1 1.070 6.108 3.164 1.555 7.026 3.601 松 原 市 0 0.890 3.108 2.899 1.361 3.998 3.323 藤 井 寺 市 1 1.000 5.108 3.066 1.456 5.97 3.476 藤 井 寺 市 0 0.650 0.108 2.819 1.091 0.943 3.216 羽 曳 野 市 1 1.030 6.108 3.295 1.456 6.915 3.679 羽 曳 野 市 0 1.130 7.108 3.322 1.542 7.887 3.693 富 田 林 市 1 1.120 5.108 3.367 1.517 5.859 3.724 富 田 林 市 0 1.020 5.108 3.209 1.402 5.831 3.553 大阪狭山市 1 0.430 0.108 2.645 0.798 0.804 2.976 大阪狭山市 0 0.600 1.108 2.633 0.953 1.776 2.951 河内長野市 1 0.610 2.108 2.758 0.948 2.748 3.062 河内長野市 0 1.240 10.108 3.244 1.564 10.72 3.535 美 原 町 1 0.640 1.108 2.859 0.949 1.692 3.137 太 子 町 0 0.590 1.108 2.611 0.884 1.664 2.876 河 南 町 1 0.180 −0.892 1.983 0.459 −0.363 2.234

堺 市 1 1.580 30.108 3.846 1.845 30.609 4.084

堺 市 0 1.930 56.108 3.907 2.180 56.581 4.132

高 石 市 1 0.890 3.108 3.025 1.125 3.553 3.237 高 石 市 0 0.670 1.108 2.868 0.891 1.525 3.067 泉 大 津 市 1 0.730 6.108 3.073 0.936 6.497 3.258 泉 大 津 市 0 0.890 2.108 2.897 1.081 2.47 3.069 和 泉 市 1 1.320 17.108 3.665 1.496 17.442 3.824 和 泉 市 0 1.020 4.108 3.228 1.182 4.414 3.374 忠 岡 町 1 0.490 0.108 2.987 0.637 0.386 3.119 岸 和 田 市 1 1.320 15.108 3.585 1.452 15.358 3.704 岸 和 田 市 0 1.350 13.108 3.404 1.468 13.331 3.510 貝 塚 市 1 0.810 3.108 3.175 0.913 3.303 3.268 貝 塚 市 0 0.920 7.108 3.177 1.008 7.275 3.256 泉 佐 野 市 1 1.050 10.108 3.415 1.124 10.247 3.481 泉 佐 野 市 0 1.130 7.108 3.286 1.189 7.219 3.339 泉 南 市 1 0.780 3.108 3.159 0.824 3.191 3.199 泉 南 市 0 0.300 0.108 2.271 0.329 0.164 2.297 熊 取 町 1 0.780 6.108 3.421 0.795 6.136 3.434 田 尻 町 1 −0.100 −0.892 2.804 − 0.100 −0.892 2.804 阪 南 市 1 0.610 1.939 2.907 0.595 2.08 3.064 阪 南 市 0 0.300 −0.23 2.493 0.271 0.052 2.807

岬 町 1 0.410 1.6 2.558 0.366 2.024 3.028

−は不足量を,+は過剰量を表す.公営ダミーを除く各変数はいずれも対数値である.

(16)

 DEA(VRS Model)によるコスト効率性分析から導出した生産要素としての 常勤保育士数は,田尻町以外の全市町で過剰であった.また,敷地面積も全 市町で過剰であった.保育所数は4自治体のみ不足で他は過剰であった.な かには大幅に過剰な自治体もある.ここでも保育所の数が過剰な自治体は,

比較的人口規模の大きい都市部であることがわかった.CRS Modelによる場

合では,VRS Modelに比べて効率値を低く推定するため,生産要素投入量の

過不足(スラック)は,すべての自治体で敷地面積が過剰であったほか,田尻 町以外では常勤保育士が過剰となった.また,VRS Modelの場合と同様に,

比較的人口規模の大きい市町で保育所数が過剰であった9)

 以上,DEAを利用したコスト効率性分析からは,都市の規模と非効率性に なんらかの関係があることが予測される.しかし,DEAからは非効率性の要 因を明らかにすることができない.そこで,次節では確率フロンティア分析

(SFA)による要因分析を試みる.

3. 2 SFAによる非効率性の要因分析

 本節では先行研究にならい各生産要素の過不足を被説明変数として,事業 運営の非効率性を規定する要因分析を試みる.具体的な手法として,確率フ ロンティア分析(SFA)を利用する10).SFAは,標準的経済理論にもとづいた 生産(費用)関数を想定しており,非効率性を明示的に分析・解釈できるとい う特徴をもつ.SFAを使った非効率性の要因分析では,まず事業体にコント ロールできない外的要因と考えられる説明変数が必要である.ここでは,前 節の分析から推測された都市の人口規模と公営保育所ダミーを取り上げる.

これ以外に保育所が独自の方針で決定できる変数として,保育所の開所時間,

保育士の加配などの人員配置,親の利便性に関する指標および保育の質を表 す発達心理指標が考えられる.事業体がコントロールできる変数で説明され

9 )DEAはあくまでも母集団のなかでの相対評価にすぎないことに注意が必要である.

10 )非効率性の要因分析には本稿で利用した手法以外に地下鉄・バスの効率性評価を行った倉本他

(2006)がOrdered Probitを用いている.

(17)

る部分を事業運営の非効率性と定義する.

 まず,生産要素の過不足について次式のようにモデル化する.

    Sxq(ri,Ϸ)×exp (viUi) (3)  

SはDEAによって推定された生産要素の過不足量(スラック)を,添え字の xは生産要素の種類を,iは事業体をあらわす.rは事業体にとってコントロー ル不能な外的要因をあらわし,Ϸはパラメータをあらわす.vは通常の誤差項で N(0,σv2)に従うと仮定する.Uiは事業運営の非効率性を表し,N(0,σu2)に従うとし,

UiZiと定義する.δはパラメータ,Ziは非効率性に影響する説明変数とする.

 分散をσ2=σv2u2,Ϲ=σu22とすると,生産効率性TEiは(4)式のよう に表される.

    TEiE(exp{uii)=

1−Ф(−μi/σ) 1−Ф(σ−μi/σ)

×exp 2

−μi+ σ1 2* (4)  

 ここでεiviuiを示す.

 以上の準備のもと,被説明変数をDEA(CRS Model)11)から導出した各生産 要素のスラック(過不足常勤保育士数,過不足保育所数,過不足敷地面積)とし,

事業体がコントロールできない外的要因に,人口規模,公営保育所ダミーを 想定し,さらに非効率性を説明変数としてモデルを推定する.非効率性には,

通常8時間の保育時間を超えて開所するかどうか(以下では,開所時間とよぶ)

と親の利便性を表す利便指標,保育の質を表す発達心理指標,構造指標を想 定する.推定式は生産関数の推定式(5)と非効率性の推定式(6)の2本に 分けられる12).推定は最尤法による.

11 )ここでSFAによるコスト効率性推定時にCRS Modelを採用したのは,VRS Modelから得られた スラックを投入すると非効率性と誤差項の間にマルチコが生じるためである.

12 )推定に用いたプログラムはFRONTIER Ver.4.1 c である.

(18)

    Sx

i=Ϸ0+Ϸ1POPi+Ϸ2PUBUiVi (5)  

    Ui=δ0+δ1KAISYO+δ2HAICHI+δ3RIBEN+δ4SHINRI (6)  

Sx

:DEA(CRS Model)から導出した各生産要素のスラック(過不足常勤保育士数,過不i

足保育所数,過不足敷地面積)POP:人口 PUB:公営保育所ダミー U:非効率性 v:誤差項 KAISYO:保育時間 HAICHI:配置指標 RIBEN:利便指標 

SHINRI:発達心理指標  u:誤差項

 第一段階で得た各事業体の生産要素の過不足を被説明変数としてSFAを 行った結果は次のとおりである.事業運営の非効率性が統計的に有意に観察 できたのは,常勤保育士数の過不足についてのみであった.保育所数の過不 足に関しては,ここで定義した事業運営の非効率性は存在しなかった.また,

15%水準と有意水準は低くなるものの,敷地面積については事業運営の非効 率性がうかがえる.よって,以下では常勤保育士数の過不足に関する非効率

過不足保育士数 過不足保育所数 過不足敷地面積

係数 t値 係数 t値 係数 t値

定数項 −3.596*** −2951.778 -82.834*** −83.297 −0.662 −1.490 人口 1.078*** 4509.404 18.551*** 44.318 0.856*** 10.214 公営保育所

ダミー 0.254*** 4.041 −0.874 −0.561 0.415*** 4.039

非効率性

定数項 1.243 1.373 0.305 0.335 0.548 0.123

開所時間 −0.758 −0.897 0.365 0.271 −0.449 −0.121 配置 −0.047 −0.762 0.199 0.442 −0.065 −0.626 発達心理 −0.361*** −5.635 0.175 0.225 −0.531 −0.528

利便 0.063 0.833 −1.116 −1.240 0.115 0.342

σ2 0.103*** 4.294 40.013*** 29.533 0.096** 2.206

Ϲ 1.000*** 9546860.300 0.000 0.305 0.474 1.524

LL −1.138 −230.374 −9.172

LR 36.291 1.223 12.103

第 5 表 SFA推定結果

***1%水準で,**5%水準で有意.

(19)

性と敷地面積の非効率性について言及する.どちらのケースも人口規模と公 営保育所ダミーは,1%水準で有意であった.係数の符号はともに正である.

これは,人口規模が大きくなるほど常勤保育士の過剰がみられることを意味 する.また,公営保育所ダミーも正であることから,公営保育所は常勤保育 士の過剰問題を抱えていることがうかがわれる.また,事業運営の非効率性 をみると,過不足保育士数では発達心理指標のみ1%水準で負に有意となっ た.つまり,発達心理指標(運動会やお泊り保育など)は事業運営の非効率性に マイナスの影響を与えており,保育内容を充実させるためには多くの常勤保 育士が必要であるという仮説は支持されないことがわかった.そのほか,開 所時間や配置基準,親の利便性といった項目はいずれも事業運営の非効率性 に影響していない.他方,敷地面積の過不足を被説明変数とした場合,人口 規模が大きな都市ほど過剰な敷地面積をもつ保育所が存在することが示され た.さらに公営保育所ダミーも正であることから,公営保育所は広大な敷地 面積をもっていることがうかがわれる.しかし,事業運営の非効率性をあら わす各説明変数はいずれも有意とならなかった.これは,敷地面積が広いか らといって開所時間を長くするわけでも,親の利便性(休日保育や病児保育など)

が高まることもないことを示す.また,配置指標や発達心理指標も有意では ないので,敷地面積の過不足については別の要因が考えられる.

4 結論と今後の課題

 本稿から得られた結論は,次の点である.まず第1の目的であった,首都 圏以外の待機児童を抱える地域でも公営保育所であれば非効率性であるのか については,DEAとSFAの2つの手法を併用して分析の頑健性を高めても,

コスト非効率性が存在することが確認できた.第2の目的であった非効率性 の要因分析であるが,Sueyoshi(1999),Fried et al.(2002)の分析手順にした がってさらに詳細に検討した結果,コスト非効率性は生産要素としての常勤 保育士を過剰投入していることに起因すると結論づけられた.また,事業運

(20)

営の非効率性に関しては,常勤保育士の過不足を被説明変数としたときに運 動会やお泊り保育など発達心理指標が負の影響をもっていた.これは,「保育 の質」の一部を構成する指標がむしろ事業運営の効率性を高めることを意味 し,質と効率性が常に正比例の関係にはないことを示唆する.これらに加え て明らかとなった点は,人口規模の拡大が常勤保育士の過剰をもたらしてい ることである.以上の結論をもとに考察すると,待機児童の多い地域では公 営保育所のコスト非効率性がある.これは,先行研究とも整合的な結論であり,

たとえ保育の質を考慮したとしても公営保育所のコスト非効率性の存在はま ぬがれない.さらにコスト非効率性を分解したところ,過剰な生産要素とし ての常勤保育士投入が大きな要因であった.常勤保育士の過剰投入が発達心 理指標を有意に低めており,少ないスタッフであってもよりよい「保育の質」

を追及することは可能であると考えられる.結局,保育所の運営改善を行っ ていくためには,ドラスティックに運営主体を変更してしまうという方法も 選択肢のひとつである.だが,民営化のみならず,現行の配置基準が乳幼児 にとって望ましいものであるならば,これに沿った保育士の適正配置を行う ことでも改善が見込まれる.また,スタッフが少なくても「保育の質」を維 持・向上することは可能であることから,意欲的な人材を確保していくことで,

質を担保しつつ事業運営の効率性を高めることが期待できる.

 今後の課題としては,通常の生産関数で仮定される資本を保育所サービス ではどのように取り扱えばよいのか研究を深めることにある.それによって 今回,非効率性の要因分析で有意とならなかった資本の寄与分についてさら なる分析が可能となる.さらに今回はデータの制約から常勤保育士数しか取 り上げられなかったが,実態として多くの非常勤保育士が雇用されている.

よって,効率性評価を行う場合には可能な限り,常勤・非常勤を問わず生産 要素として考慮すべきであろう.この点も改善を図りたい.また,発達心理 指標を生成する過程でも,データの制約から運動会や生活発表会などのいわ ゆる行事についてしか取り上げられなかった.しかし,日常の生活習慣や社

(21)

会的活動形成支援を反映させるほうが,より発達心理を表すと考えられる.

したがって,この点でも改善の余地は残されている.

Kaiser-Meyer-Olkin の標本妥当性の測度 0.583

Bartlett の球面性検定

近似カイ2乗 175.56

自 由 度 66

有 意 確 率 0

KMO および Bartlett の検定 付表 因子分析

因   子

構 造 利 便 低年齢児対策 発 達 心 理

病 児 保 育 0.091 −0.005 −0.112 0.163

子 育 て 支 援 0.028 0.36 −0.175 0.129

休 日 保 育 0.025 0.297 0.017 0.087

運 動 会 −0.016 −0.896 −0.008 0.255 生 活 発 表 会 0.078 −0.001 0.11 0.515 お 泊 り 保 育 −0.052 0.353 −0.149 0.584 対0歳児配置基準 0.049 −0.106 0.546 0.01 対1歳児配置基準 0.273 0.036 0.025 −0.165 対2歳児配置基準 0.274 0.022 0.837 −0.047 対3歳児配置基準 0.647 −0.062 0.043 0.012 対4歳児配置基準 0.796 0.122 0.089 0.262 対5歳児配置基準 0.837 0.054 0.196 0.257 因子抽出法:主因子法

回転法:Kaiserの正規化を伴うバリマックス法

*5回の反復で回転が収束しました.

回転後の因子行列

(22)

【参考文献】

Cam pbell, R., K. Rogers, and J. Rezek, (2005)Efficient Frontier Estimation : A Maximum Entropy Approach 2005 Proceedings of the American Statiscal Association, Business and Economics Statistics Section, Alexandria, VA : American Statistical Association.

Frie d, H. O., C. A. K. Lovell, S. S. Shemidt, and S. Yaisawarng, (2002) Accounting for Environmental Effects and Statistical Noise in Data Envelopment Analysis , Journal of Productivity Analysis 17, pp.157-174.

Kum bhakar Subal C., and C. A. Knox Lovell, (2003) Stochastic Frontier Analysis, Cambridge University Press.

Liu, J., and K. Tone, (2005) A Multiple-Stage Approach To Measuring Japanese Banking

Efficiency 日本オペレーションズ・リサーチ学会,2005年秋季研究発表会報告論文.

Sing h, S., T. Coelli, and E. Fleming, (2000)Performance of Dairy Plants in the Coor- Perative and Private Sectors in India, CEPA Warking Papers No.2/2000, Department of Econometrics, University of New England.

Suey oshi,T.,(1999) DEA Non-parametric Ranking Test and Index Measurement: Slack- adjusted DEA and an Application to Japanese Agriculture Cooperatives , Omega International Journal of Management Science 27, pp.315-326.

林正義,(2002)「自治体特性と非効率性: 確率フロンティア分析による予備的考察」

  『研究所年報』(明治学院大学産業経済研究所)第19巻, pp.15-21.

林宣嗣,(1998)「児童福祉と財政政策」『季刊社会保障研究』34巻1号, pp.26-34.

保育行財政研究会(2000), 『公立保育所の民営化 どこが問題か 』自治体研究社. i−子育てネットホームページ,(2004)http://www.i-kosodate.net.

國崎 稔・中村和之,(1994)「地方公共サービスの生産効率性」『富大論集』第40巻第2 号, pp. 305-325.

倉本 宜史・金坂成道・赤井伸郎,(2006)「公営交通(地下鉄・バス)事業の効率化効果 の実証分析」第14回日本地方財政学会報告論文.

牧厚志・宮内環・浪花貞夫・縄田和満,(1997)『応用計量経済学Ⅱ』多賀出版.

牟田 博光,(2003)「構造的評価に基づく総合的国際協力の試み」『日本評価研究』第3

巻第1号, pp.65-75.

(23)

中山徳良, (2003)『日本の水道事業の効率性分析』多賀出版.

大阪保育研究所編,(2003)『大阪の保育問題資料集 2002年版』大阪保育運動連絡会.

,(2004)『大阪の保育問題資料集 2003年版』大阪保育運動連絡会.

,(2005)『大阪の保育問題資料集 2004年版』大阪保育運動連絡会.

清水 谷諭・野口晴子,(2004)『介護・保育サービス市場の経済分析』東洋経済新報社. 白石 小百合・鈴木亘,(2002)「保育サービス供給の経済分析 認可・認可外の比較

」JCER Discussion Paper, No.83.

周燕 飛・大石亜希子,(2003)「保育サービスの潜在需要と均衡価格」『季刊家計経済研究』

No.60 , pp.57-68.

刀根薫,(1993)『経営効率値の測定と改善 包絡分析法DEAによる』日科技連.

山下 耕治・赤井伸郎・佐藤主光,(2002)「地方交付税制度に潜むインセンティブ効果 フロンティア費用関数によるソフトな予算制約問題の検証 」『フィナン シャル・レビュー』第61号, pp.120-145.

(24)

The Doshisha University Economic Review Vol.58 No.4

Abstract

Yurika SHIOZU, Measuring Allocation Efficiency, Effectiveness of Childcare Service   Demand for day nursery service is increasing more and more due to the changes of social situation. So, the improvement of management efficiency may be urgently required for excessive demand. In this paper I employ Fried et. al (2002) in which two representative methods of effective analysis are used and make an evaluation of effectiveness and an analysis of factors concerning day nursery service. A characteristic of this paper lies in the constitution of a quality index of childcare, with the result that the inefficiency of childcare decreases as the quality of childcare is improved. Thus, this research has also brought a theoretical justification even in the actual analysis.

参照

関連したドキュメント

様々な国の子供の死亡原因とそれに対する介入・サービスの効果を分析すると、ミレニ アム開発目標 4

Work Values, Occupational Engagement, and Professional Quality of Life in Counselors- in Training: Assessment in Constructivist- Based Career Counseling Course.. Development of

葛ら(2005):構造用鋼材の延性き裂発生の限界ひずみ,第 8

医療保険制度では,医療の提供に関わる保険給

名の下に、アプリオリとアポステリオリの対を分析性と綜合性の対に解消しようとする論理実証主義の  

The input specification of the process of generating db schema of one appli- cation system, supported by IIS*Case, is the union of sets of form types of a chosen application system

An easy-to-use procedure is presented for improving the ε-constraint method for computing the efficient frontier of the portfolio selection problem endowed with additional cardinality

Table 2.1 displays the expected call volume, average handling times, minimum staffing requirements, optimal sta ffi ng levels, and quality of service estimates for the first 24