【同志社法学会講演会】ケベックにおけるクラス・
アクション : ユニークな手続のハイライト
著者 ピシェ カトリーヌ, カライスコス アントニオス
雑誌名 同志社法學
巻 70
号 4
ページ 1517‑1538 発行年 2018‑11‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000356
◆同志社法学会講演会◆
ケベックにおけるクラス・アクション
――ユニークな手続のハイライト――
カトリーヌ・ピシェ アントニオス・カライスコス(訳)
Ⅰ.カナダの法体系と州における立法の特殊性
カナダは連邦国家であり、立法権限は、カナダ議会(連邦議会)と、法律 を採択する権限を有する州および準州の立法者との間で分散されている。立 法権限の分散については、1867年の憲法法1)91条および92条で定められてい る。連邦政府および州政府は、カナダ憲法によって行政権限を付与されてお り、法律を執行する。執行権限は裁判所にも付与されており、裁判官は、こ れを通じて、法の支配の遵守を保障する役割を担う。私法および民事手続に 関する問題については州が対処することになっているため、クラス・アクシ ョンという形での集団的救済も州法によって定められている。
カナダの最高裁判所は、同国で最上級の裁判所であり、連邦裁判所や州裁 判所の判断に対する上訴を審理する2)。州裁判所は、ピラミッド型制度の最 下位に位置し、その管轄権は訴訟物に応じて分配されている。たとえば、市
1) Constitution Act, 1867 (UK), 30 & 31 Vict, c 3, s 91-92, reprinted in RSC 1985, App II, No 5.
91条および92条は、カナダ議会および州の立法者が専属的に立法することができる事項を掲げ ている。
2) 連邦上訴裁判所および州上訴裁判所は、カナダ最高裁判所のすぐ下位に位置している。その
裁判所は、民事事件について限られた管轄権を有し、主に市税請求に関する 事件を審理する。
ケベック州の民事訴訟法典3)は、同州における民事手続を規律する。同法 典の規定は、各裁判所の事物管轄権を定めている。たとえば、ケベック裁判 所は、紛争の訴訟物の価値または請求金額が8万5千ドル以下の事件を審理 する専属管轄権を有する4)。上級裁判所は、クラス・アクションおよび差止 請求、ならびに他の裁判所の専属管轄権に属しない申立てを審理する専属管 轄権を有する。後者には、紛争の訴訟物の価値または請求金額が8万5千ド ルを超える事件が含まれる5)。加えて、上級裁判所は、上訴裁判所を除くケ ベックのすべての裁判所に対する司法審査の一般的権限を有する6)。上訴裁 判所は、他の裁判所によって言い渡された判決に対する上訴を審理する7)。 上級裁判所およびケベック裁判所によって言い渡された判決であって、訴訟 を終了させるもの、個人の完全性、身分もしくは能力に関するもの、政府の 特別な権利に関するもの、または裁判所侮辱に関するものに対しては、当然 の権利として上訴をすることができ、他の判決に対しては、たとえば、上訴 の対象である紛争の訴訟物の価値が6万ドル未満である場合には、許可を得 たときに限り上訴できる。
裁判所は、ケベック民法典(以下「ケベック民法」という)8)を適用する。
これは、ケベック州におけるユス・コムネ〔共通法〕であり、他のすべての
下位にあるのは連邦裁判所、カナダ税務裁判所および州・準州の上級裁判所である。
3) 民事訴訟法典(以下「民事訴訟法」という)、CQLR c C-25.01.
4) 民事訴訟法35条1項。ケベック裁判所は、養子縁組に関する事件を審理する管轄権、および 本人の同意なくして個人を保健施設または社会福祉施設に収容するための申立てについて決定 する管轄権を有する(民事訴訟法38条)。ケベック裁判所は、少額訴訟部を含む民事部、刑事・
犯罪部および青少年部の3つの部に分かれている。
5) 民事訴訟法33条。民事訴訟法35条2項も参照。
6) 民事訴訟法34条。
7) 民事訴訟法29条。
8) ケベック民法、 CQLR c CCQ-1991.
9) ケベック民法予備的条文。
10) クラス・アクションに関する法律、R.S.Q., c. R.2-1. Janet Walker & Garry D. Watson, Class Actions in Canada (2014), p. 33; Catherine Piché, “The Cultural Analysis of Class Action Law”, Journal of Civil Law Studies, vol. 2 (2009), p. 44も参照。
11) クラス訴訟法、SO 1992(以下「オンタリオ州クラス訴訟法」という)。
12) プリンス・エドワード島およびカナダ領地では、現地の裁判所規則に従いクラス訴訟を提起 することができる。Western Canadian Shopping Centres Inc. v Dutton, 2001 SCC 46, at para 27(以下「Dutton判決」という)を参照。
13) クラス訴訟法、S.A. 2003, c. C-16(アルベルタ。以下「アルベルタ州クラス訴訟法」という)、
クラス訴訟法、R.S.B.C. 1996, c. 50(ブリティッシュ・コロンビア。以下「ブリティッシュ・
コロンビア州クラス訴訟法」という)、クラス訴訟法、C.C.S.M. c. C. 130(マニトバ。以下「マ ニトバ州クラス訴訟法」という)、クラス訴訟法、R.S.N.B. 2011, c. 125(ニュー・ブランズウ ィック。以下「ニュー・ブランズウィック州クラス訴訟法」という)、クラス・アクション法、
S.N.L. 2001, c. C-18-1(ニューファンドランド・ラブラドール。以下「ニューファンドランド・
ラブラドール州クラス訴訟法」という)、クラス訴訟法、S.N.S. 2007, c. 28(ノバ・スコシア。
以下「ノバ・スコシア州クラス訴訟法」という)、オンタリオ州クラス訴訟法、民事訴訟法574 条以下(ケベック)、クラス・アクション法S. 2001, c. C-12.01(サスカチュワン。以下「サス カチュワン州クラス訴訟法」という)を参照。
法律の基礎である9)。裁判所制度は、長年にわたって、カナダ市民が司法に アクセスするための唯一の道として考えられてきた。しかし、代替的な紛争 解決手続は、司法へのアクセスに対する障壁を特定し、これらを乗り越える ための解決を提供することで、カナダの民事司法体系において益々重要なも のになっている。このことは、民事訴訟法の最近の改正に表れている。その ため、司法という概念の範囲は、実状を反映するべく拡大されている。
Ⅱ.クラス・アクションの歴史と概観――3つの主な目的
ケベックの立法がクラス訴訟を可能としたのは1978年であり、カナダでそ れを行った初の州であった10)。オンタリオは、1992年にクラス訴訟に関する 立法を制定したカナダのコモン・ロー圏で初の州であり11)、ブリティッシュ・
コロンビアが後にこれに続いた。今日では、プリンス・エドワード島を除 く12)カナダのすべての州がクラス・アクション制度を有している13)。さらに、
カナダ連邦裁判所は、その連邦法管轄内において、クラス訴訟について定め
ている14)。カナダのクラス・アクションは、コモン・ロー圏の州では
「certification〔認可〕」、そしてケベックでは「authorization〔認可〕」と呼ば れる事前のフィルタリング手続を通じて処理されている15)。
ケベックのクラス・アクション制度は、当初はアメリカ連邦民事訴訟規則 23条から発想を得ていた16)。ケベックおよびカナダの他の州のクラス・アク ション立法にさらに強く影響を与えたのは、クラス・アクションに関するオ ンタリオ州法改正委員会の報告書である17)。これは、同委員会が、1982年に、
同州におけるクラス・アクション手続制度について提唱を行ったものである。
報告書は、この種の訴訟に関する3つの主な目的を基礎とするものであった。
カナダ最高裁判所は、
Dutton
判決で、これらの目的をクラス・アクション の利点として紹介した18)。第1に、同様の事実的および法的根拠を有する個々の請求の集成は、司法 経済の目的に資する19)。クラス・アクション手続は、司法資源のより効果的
14) 連邦裁判所法、R.S.C. 1985, c. F-7に従い制定された連邦裁判所規則、SOR/98-106を参照。
15) オンタリオ州クラス訴訟法5条、アルベルタ州クラス訴訟法5条、ブリティッシュ・コロン ビア州クラス訴訟法4条、マニトバ州クラス訴訟法4条、ニュー・ブランズウィック州クラス 訴訟法6条、ニューファンドランド・ラブラドール州クラス訴訟法5条、ノバ・スコシア州ク ラス訴訟法7条、民事訴訟法575条、およびサスカチュワン州クラス訴訟法6条を参照。
16) 連邦民事訴訟規則23条。ニューヨーク民事訴訟規則9条(2015年)も参照。ケベックのクラ ス・アクション法は、ニューヨーク民事訴訟規則9条以下もそのモデルとした。ケベックのク ラス・アクション法と同様に、アメリカのこれらの規則でも、クラス・アクションの条件が定 められており、クラス・アクションを「認可」する裁判所の命令が必要とされ、この命令はク ラスを画定するものでなければならず、代表原告はクラスの利益を「公正かつ適切に」代表し なければならず、クラス・アクションの通知が行われなければならない。
17) オンタリオ州法改正委員会の報告書、Report on Class Actions (1982), < https://archive.
org/details/reportonclassact01onta> にてオンラインで閲覧可能。
18) Dutton判決, at para 27; Vivendi Canada Inc. v Dell’Aniello, 2014 SCC 1, at para 1, [2014]
1 SCR 3 も参照(以下「Vivendi判決」という)。同判決によると、「この手続的手段にはいく つかの目的があるが、そこには、司法へのアクセスを容易にすること、有害な行動を修正する こと、および司法資源を保存することも含まれる」。
19) Dutton判決, at para 27.
な利用を可能とする。なぜなら、紛争は、複数の手続ではなく、1つの手続 だけにおいて法廷で争われるからである。クラス・アクションが個々の訴訟 のグループ化を可能とすることに鑑みると、裁判所に同様の事件が複数係属 する事態は生じない。加えて、クラス・アクションという手続上の装置は、
訴訟の総費用を減少させるため、当事者双方および司法制度にとっても有益 であろう。
第2に、クラス・アクション手続は、司法へのより良いアクセスを可能と する20)。訴訟は、著しい費用を伴う。クラス・アクションでは、個人は、経 済的な観点から個別には遂行する価値のない請求を遂行することができる。
これらは、一般的に、「個別には実行可能ではない請求」と呼ばれている。
これが意味するのは、個別に遂行することが経済的に可能ではない、少額の あるいは高額の請求のことである。クラス・アクションの専門家は、司法へ のアクセスを、何らかの賠償へのアクセスを意味するものとして理解するこ とが多い21)。
第3に、クラス・アクションは、実際の、または潜在的な違法行為者が「多 数の人々に少額の損害」を生じさせることを防止することを目的とする22)。 文献では、この政策目的について「行動修正」として言及するのが一般的で ある。基本的に、クラス・アクションは、訴える者に、濫用逸脱的な行為者 に対して制裁を課す機会を提供する。製造業者は、クラス・アクション訴訟 が自己に対して提起されるかもしれないと恐れる場合、これに合わせて自己 の行動を調整する。この種の訴訟は、そういうものとして、被告が侵害的な
20) Dutton判決, at para 28. Catherine PICHÉ, « La Class Action à la croisée des systèmes et des traditions », (2016) 2 R.I.D.C. (Int. Rev. Comp. L.) 287 & Catherine PICHÉ, « L’emprise des cinq doigts de Frankenstein : réflexion en cinq temps sur l’action collective », (2016) 2 R.I.D.C. (Int. Rev. Comp. L.) 291も参照。
21) Catherine Piché, “Class Action Value”’, (2018) 19:1 Theoretical Inquiries in Law.
22) Dutton判決, at para 29.
23) オンタリオ州法改正委員会の報告書。
24) Ibid.
25) 民事訴訟法571条1項。
26) 民事訴訟法571条2項。
行動を繰り返すことを思いとどまらせることで、将来的な侵害に対する防止 手段として機能している。製造業者その他の法主体に対して、詐欺、富の不 当な集積、欠陥商品の拡散などの行動が受忍されないというメッセージを発 信するのである。加えて、「コストの内部化」のプロセスは、実際のまたは 潜在的な被告に、自己の行動が個人に生じさせるコストを「内部化させる」
ことを強制するものであるが、ここでも同じく行動修正が達成できる23)。た とえば、潜在的な被告は、社会に生じさせる損害を最小化し、かつ、最終的 な被害当事者への賠償を避けるために、自己のマーケティング戦略を変更す ることができるのである24)。
Ⅲ.二段階手続の第1段階――フィルタリング段階としての認可
A.代表手続としてのクラス・アクション
民事訴訟法571条は、クラス・アクションを、「クラスの構成員である者に、
委任なくして、クラス構成員団のために訴えを提起し、クラスを代表する権 利を付与する手続的な手段」として定義している25)。ケベックでは、代表原 告が、同様の状況にある他のクラス構成員のために裁判所に提訴することが できる(民事訴訟法517条ないし604条)。クラス・アクションは、それとして、
クラス構成員となることについて明示的に同意していない者たちの個別の請 求の集団的な取扱いを可能とする代表手続である。「クラス構成員」の定義は、
自然人に限られたものではなく、私的利益のために設立された法人、組合や 団体、あるいは法人格を有しない他のグループを含む26)。
B.認可の基準
ケベックのクラス・アクション手続は、二段階になっている。認可が行わ れて初めて事件の本案について集団的な審理を行うことができる。そのため、
まずはケベック上級裁判所に、クラス・アクションを提起するための認可に 関する申立てを行わなければならない。同裁判所は、ケベック州におけるク ラス・アクションについて専属管轄権を有する27)。認可に関する判決が言い 渡されるまでの期間は、平均して2年半である。認可申立ては事前的な要件 であり、ケベック州特有の手続段階である。これは、被告が「本案が支持さ れ得ない請求」28)に対して防御せざるを得ないような事態を防ぐために、根 拠がささいなまたは根拠のない事件をフィルターにかけることを目的とする ものである。
認可申立ては、「これの基礎となる事実及びクラス・アクションの性質を 述べ、その者が代表として行為しようとするクラスを説明するものでなけれ ばならない。また、その者がクラス・アクションを提起することを意図する 相手方に、弁論期日の少なくとも30日前にこれを送達しなければならな い」29)。認可申立ては、比例原則30)に則して、口頭でのみ争うことができ、
裁判所の許可なくしてこれにいかなる証拠も含めることができない。
クラスを構成するための認可申立てが提出されると、首席裁判官は、訴訟 を統括し、かつ、クラス・アクションに関する手続的事項を審理する責務を
27) 民事訴訟法33条2項。
28) Infineon Technologies AG v Option consommateurs, 2013 SCC 59, at para 37(以下
「Infineon判決」という。CanLiiで閲覧可能)。 Veronica Aimar, « L’autorisation de l’action collective : raisons d’être, application et changements à venir », in Catherine Piché, The Class Action Effect / L'effet de l'action collective (Montréal : Yvon Blais, 2018), p. Xも参照。
29) 民事訴訟法574条。
30) 民事訴訟法18条。Piché, “Class Action Value”, at 559も参照。
負う特別事件管理裁判官を務める裁判官を任命しなければならない31)。 特別事件管理裁判官は、クラス・アクションが認可されるべきか否かを評 価する際に、民事訴訟法575条に定められている次の4つの基準が満たされ ているのかを判断しなければならない。
裁判所は、次に掲げる事項を満たすとする場合、クラス・アクショ ンを認可し、自ら指定するクラス構成員を代表原告として任命する。
(1) クラス構成員団の請求が、法的また事実的に、同一の、同様 のまたは関連する問題を生じさせること
(2) 主張する事実が、求める結論を正当化するものであるように 見えること
(3) クラスの構成が、他者のために司法手続に参加するための委 任または訴えの併合に関する準則を適用することを困難または実行 不可能とするものであること
(4) 代表原告として任命するクラス構成員が、このクラス構成員 団を適切に代表できる立場にあること32)
民事訴訟法575条1項の「共通争点」基準(テスト)の目的は、「訴訟がク ラス・アクションとして遂行されることを認めることが、事実認定または法 的分析(評価)の重複を回避しうるか」33)を判断することにある。ケベック では、この「共通性」基準は、広く解釈されている。つまり、第1の基準を 満たすためには、潜在的なクラス構成員の間で1つの共通争点が確認できれ ば足りるのである34)。ケベックにおける「共通争点」の解釈は、そのような
31) 民事訴訟法572条2項。
32) 民事訴訟法575条。
33) Dutton判決, at para 39.「特定の事項が『共通』のものとなるのは、その解決が、各クラス 構成員の請求の解決のために必要となる場合だけである」。
34) Sibiga v Fido Solutions inc., 2016 QCCA 1299, at para 122(CanLiiで閲覧可能)。
ものとして、カナダのコモン・ロー圏の州におけるよりも、柔軟な解釈を可 能とする35)。
民事訴訟法575条の第2の基準である「主張する事実が、求める結論を正 当化するものであるように見えること」は、裁判所に対し、訴訟のための合 理的な理由があることを確保することを求めるものである。この基準は、「訴 訟の本案に関する基準」として意図されていない。潜在的な代表原告は、単 に、請求が「事実上の一定の根拠」を有することを示せればよい36)。換言す れば、単に「一応の証明がある事件」または「議論が成り立つ事件」である ことを確立できればよいのである37)。したがって、前述したように、ケベッ クにおける認可段階、特に民事訴訟法572条2項は、法的根拠のささいな、
または明らかに法的根拠のないクラス・アクションを避けることを意図する ものに過ぎない38)。
民事訴訟法575条の第3の基準について判断するためには、裁判官は、ク ラスの潜在的な規模とその特徴に関する情報を与えられなければならな い39)。この基準が満たされるのは、クラスの構成が他の手続的な途を実際的
35) Ibid, at para 54.
36) Hollick v Toronto (City), 2001 SCC 68, at para 16(CanLiiで閲覧可能)。
37) Infineon判決, at para 64.
38) Vivendi判決, at para 37.「認可段階での裁判官の役目の一つに、支持できない請求に対し て被告が本案で防御させられないことを確保することがある。……そのため、基準が満たされ ているのかを認可段階で検討する際、裁判官は、手続的問題について判断しているのである。
裁判官は、事件の本案に取り組んではならず、本案は認可申立てが認容された後でのみ検討さ れる」。Infineon判決, at para 59も参照。「認可段階では、裁判所はフィルターとしての役割 を果たす。裁判所は、単に、申立人が民事訴訟法1003条〔現行民事訴訟法575条〕に定められ ている基準を満たしていると確認できれば足りるのである。その際、同条に定められている敷 居は低いものであることを念頭におかなければならない。認可裁判所の判断は、クラス・アク ションが進行するかを決めるものであるため、その性質は手続的なものである」。
39) Catucci v Valeant Pharmaceuticals International Inc., 2017 QCCS 3870, at para 327(CanLii で閲覧可能)。
ではなくすると裁判官が判断したときである。
最後に、民事訴訟法574条4項に従い、裁判官は、任命される代表原告が、
クラス構成員の利益を適切に代表できることを確保しなければならない。こ の判断に際しては、裁判官は、3つの要素を考慮しなければならない。それ は、その者が訴訟に対する利益を有するのか、能力を有するのか、および他 のクラス構成員と利益相反にないのかである40)。認可に関する判決は、代表 原告として行為する構成員を指定する41)。ケベックの民事訴訟法では、代表 原告として捉えることができる者の定義は拡大されており、非営利団体を含 むに至っている。しかし、宗教団体・政府団体・職業団体などの公益のため に設立された法人は、クラス構成員および代表原告になることができない。
Dutton
判決では、カナダ最高裁判所は、「代表の動機、代表の弁護士の適正、および、特に代表に生じる可能性のある費用を負担する代表の能力」42)
を含む、提案されている代表原告の適切性を評価する際に裁判所が考慮する ことのできる様々な要素を掲げた。加えて、提案された代表は、可能性のあ る「最良の」代表である必要はなく、クラスにおいて「典型的」である必要 もない43)。
代表原告は、特定されているクラス構成員のみならず、特定されていない クラス構成員の名においても行為する44)。代表原告以外のクラス構成員は、
40) Infineon判決, at para 149.
41) 民事訴訟法576条1項。
42) Dutton判決, at para 41.
43) Ibid.
44) 民事訴訟法589条。「代表原告は、自己の個人的債権が消滅しても、行為することについて十 分な利益を有するものとみなす。代表原告は、裁判所の許可なくして代表原告としての地位を 放棄することができない。裁判所は、裁判所が他のクラス構成員を代表原告として任命するこ とができる場合に限りその許可を与える。
代表原告がもはやクラス構成員を適切に代表する地位になく、又は代表原告の個人的債権が 消滅したときは、他のクラス構成員は、裁判所に対し、代表原告として置き替わること又はそ
代表原告を支援し、またはその申立てや争いを支持する場合を除き45)、代表 原告のために任意に介入することができない。訴答を修正し、もしくは取り 下げ、申立てを中断し、または判決から生じる権利を放棄するためには、代 表原告は裁判所の許可を得なければならない46)。裁判官は、基本的に、参加 していないクラス構成員が保護されていることを継続的に確認しなければな らない。
ケベックの裁判官は、認可の段階では、カナダのコモン・ロー圏の州にお けるのとは異なり、クラス・アクションがその事件にとって「望ましい手続」
なのかを検討することはできない。それにも拘わらず、裁判官は、比例原則 に基づき認可を拒絶することができる(民事訴訟法18条)。この原則は、ク ラス・アクションにおいても考慮されなければならないのである47)。裁判官 がクラス・アクションを認可するべきか否かが不明なときは、司法へのより 大きなアクセスを達成するために、認可が与えられるべきである。
C.認可判決
クラス・アクションを認可する判決は、クラス構成員が、構成員として含 まれている者を特定することができるよう、クラス・アクション判決によっ て拘束されることになる構成員の属するクラスを画定する48)。カナダ最高裁
の目的のために他のクラス構成員を提案することができる。
代替代表原告は、訴訟が進行していた段階からこれを継続する。代替代表原告は、従前の行 為がクラス構成員に対して修復不能な不利益をもたらす場合は、裁判所の認可を得た上で、こ れを認めることを拒絶することができる。代替原告代表は、代替前のものであって、かつ、自 己が認めない行為に関する訴訟費用その他の費用について責任を負わない。ただし、裁判所が 他の命令をした場合は、この限りでない。」
45) 民事訴訟法586条。裁判所は、そのような介入がクラスの助けになると考えるときは、クラ ス構成員が訴答を提出し、または訴訟に参加することを認めることができる。
46) 民事訴訟法585条。「代表原告による容認は、クラス構成員を拘束する。ただし、裁判所が、
容認がクラス構成員に不利益を生じさせると判断したときは、この限りでない。」
47) Lorrain c. Petro-Canada, 2013 QCCA 332. Marcotte v. Longueuil (City), 2009 SCC 43,
[2009] 3 S.C.R. 65, at para 129-130も参照。
48) 民事訴訟法576条1項。
判所は、
Dutton
判決で、次のように述べてクラス画定の重要性を強調して いる。クラスの画定は、重要である。なぜなら、通知および救済(救済が 与えられた場合)への権利を有し、判決に拘束される個人を特定す るからである。そのため、クラスが、訴訟の始めに明確に画定され ることが最も重要である。この画定は、クラス構成員を特定するこ とができる客観的基準を述べるものでなければならない。基準は、
すべてのクラス構成員によって主張されている共通争点との合理的 関連性を有しなければならないが、訴訟の結果に依存するものであ ってはならない。すべてのクラス構成員の名が挙げられ、または全 員が知られていることは必要とならない。しかし、クラス構成員で あることに関する特定の者の請求が、明白な客観的基準によって確 定できることが必要となる49)。
この画定の基準を満たす個人だけが、クラス構成員とみなされること、お よび、クラス・アクションの中で代表原告によって代表されることができる。
D.オプト・アウト制度
ケベックのクラス・アクション手続は、「オプト・アウト(除外を選択的 とする)」制度に基づいて機能する。そこでは、クラス画定の基準を満たす 個人は、明示的に「オプト・アウト」した場合を除き、訴訟に積極的に参加 しない場合であっても自動的にクラス構成員となる。その論理的帰結として、
クラス・アクションの認可判決は、クラス構成員に対する通知の公表を命じ、
クラス構成員に「オプト・アウト」するための十分な時間を与える50)。オプ
49) Dutton判決, at para 38.
50) 民事訴訟法576条2項。民事訴訟法579条も参照。同条によると、通知は、他の情報に加え、
クラスを説明し、集団的に取り扱われる主な事項の概要およびこれらの事項について求められ ている解決を示し、 代表原告、その弁護士の連絡先、およびクラス・アクションが開始される
ト・アウトのための具体的な期限は、判決によって定められる51)。オプト・
アウトすることを望む個人は、オプト・アウト手続を踏み、期限満了前に裁 判所書記官にその旨を知らせた場合には、クラス・アクションに関する終局 判決によって拘束されない52)。
Ⅳ.認可に続き本案審理に導く段階
A.開始申立ておよびこれに続く段階
クラス・アクションが認可された場合、3か月内に、裁判所事務に、クラ ス・アクションの開始申立てを提出しなければならない53)。認可判決は、集 団的に取り扱う事項を確定し、クラス・アクションをどの地域で開始するの かを決定する54)。裁判所は、法的または事実的事項に関する条件がもはや満 たされていないと判断した場合には、この判決をいつでも修正し、または取 り消すことができる55)。代表原告は、自らの求める結論を修正することが許 される場合がある56)。加えて、裁判所は、状況によって必要であれば、自ら
地域を特定し、クラス構成員がオプト・アウトする権利を有することを記さなければならない。
Canada Post Corp. v Lépine, 2009 SCC 16, at para 42, [2009] 1 SCR 549(以下「Canada Post判決」という)も参照。「通知手続が不可欠なのは、クラス・アクションを認可する判決 がクラス構成員に与える影響、クラス構成員が判決の下で有する権利――特にクラス・アクシ ョンからオプト・アウトする可能性――、そして、本件のように、事件に関する和解について、
クラス構成員に情報を与えるものだからである。」
51) 民事訴訟法576条3項によると、オプト・アウトするための期限は、「クラス構成員に対する 通知の日から起算して、30日より短く、又は6か月より長いものであってはならない」。オプト・
アウトするための期限は厳格なものであるが、クラス構成員は、より早く行為することが実際 に不能であったことを証明して、裁判所の許可を得た上でその満了後にオプト・アウトするこ とができる。
52) 民事訴訟法580条。さらに、クラス構成員は、期限の満了前に、クラス・アクションと同じ 訴訟物に関する従前の申立てを中止しなかった場合は、オプト・アウトしたものとみなされる。
Ibid.
53) 民事訴訟法583条1項。
54) 民事訴訟法576条1項。
55) 民事訴訟法588条1項。
56) 民事訴訟法588条2項。
のイニシアチブにおいて、いつでもクラスを変更し、または分割することが できる57)。
B.上訴権
ケベックの民事訴訟法は、興味深いことに、クラス・アクションを認可す る判決に対する上訴権、および、認可を拒絶する判決に対し、許可を得た上 で上訴する可能性について規定している58)。代表原告が上訴を提起せず、ま たは上訴が適切に提起されなかったために却下された場合には、クラス構成 員は、判決に対して上訴するために、代表原告を交替するための許可を上訴 裁判所に求めることができる59)。
C.既判力――参加しなかった構成員にも及ぶ
既判力の効果を得る判決60)は、オプト・アウトしなかったすべての構成 員を拘束する61)。換言すれば、「参加していない」クラス構成員は、もはや 裁判所で同じ訴えを提起することができない62)。判決は、クラス構成員団の 請求が集団的に、または個別的に満足させられることになるのかを特定しな ければならない63)。
57) Ibid.
58) 民事訴訟法578条。「クラス・アクションを認可する判決は、上訴裁判所裁判官の許可を得た 場合に限り、これに対し上訴することができる。認可を拒絶する判決は、申立人が、当然の権 利として、及び、認可申立てがそのために行われたものであるクラスの構成員が、上訴裁判所 裁判官の許可を得て、これに対し上訴することができる。上訴は、優先して審理し、これにつ いて判断する。」。民事訴訟法602条も参照。「クラス・アクションに関する判決は、当然の権利 として、これに対し上訴することができる。」
59) Ibid. この要請は、判決通知の公表または通知の時から2か月内に行わなければならない。
Ibid.
60) Gaudette v Whirlpool Canada, 2017 QCCS 4193, at para 17.
61) Deborah Hensler, “The Global Landscape of Collective Litigation” in Deborah Hensler, Christopher Hodges & Ianika Tzankova, Class Actions in Context: How Culture, Economics &
Politics Shape Collective Litigation (2016) 1 at 6.
62) Ibid.
63) 民事訴訟法592条。
D.金銭的分配および集団的回復の種類
請求権の救済が集団的なものであると言われるのは、証拠から、請求の正 確な合計金額を特定することができる場合である64)。クラス構成員団の請求 の個別的な清算が「実際的ではなく、又は不適切若しくは過度の費用を要す るもの」である場合には、裁判所は、費用、報酬その他の支出の配当を決め た後の残額を特定し、この金額を、裁判所が選定する第三者に送金すること を指示しなければならない65)。加えて、クラス・アクション支援基金による 源泉徴収の割合に関する規則の1条に従い、その金額の30% から90% まで の一定の金額がクラス・アクション支援基金に支払われる66)。
回収された損害賠償金の清算、分配または送金は、訴訟費用、代表原告の 弁護士費用、および代表原告の出費が支払われた後で、裁判所によって決定
64) 民事訴訟法595条によると、債権総額が確定された後、「裁判所は、これをその全額について、
又は裁判所が特定する条件に従い、ケベック内で営業する金融機関に送金するべきことを命じ ることができる。送金した金額に係る利息は、クラス構成員に帰属する。裁判所は、賠償につ いて追加的な形態を命じた場合は債権総額を減じることができる。また、金銭賠償に代えて、
状況に適した賠償を命じることができる」。
民事訴訟法596条も参照。「集団的回収を命じる判決は、クラス構成員の債権の個別的清算又 は各構成員に対する特定金額の分配について定める。
裁判所は、この事務を行う者を指定し、その者に対し、証拠及び手続に関する指示を含む必 要な指示を与え、その報酬を決定する。
裁判所は、残額については、他の事項に加えて、構成員の利益を考慮した上で、第三者に対 し送金をする場合と同じ方法で、これを処理する。判決が国家を被告とするものである場合に は、残額は、司法アクセス基金にこれを支払う。」
65) 民 事 訴 訟 法597条 1 項。Catherine Piché & André Lespérance, “L'action collective comme outil de prévention, d'évitement et de dissuasion” in Colloque national sur l’action collective.
Développements récents au Québec, au Canada et aux États-Unis (Montréal : Éditions Yvon Blais, 2016) 61、およびCatherine Piché, “Le recouvrement et l’indemnisation des membres dans l’action collective” (2016) 94 R. du. B. Canadien 171, 188も参照。
66) Regulation respecting the percentage withheld by the Fonds d'aide aux actions collectives, CQLR c R-2.1, r 2, Art. 1。Catherine Piché, “Public Financeers as Overseers of ClassProceedings” (2016) 12:3 NYLJ 776, 23も参照。
された限度で行われる67)。個別的な救済については、裁判所は、個々のクラ ス構成員の債権(請求額)を特定しなければならない68)。個別に請求を申し 立てた構成員だけが、被告から賠償を受けることができる。
E.クラス・アクションの融資
ケベックでは、クラス・アクションは、成功報酬を用いることで、主にク ラス弁護士によって融資されている。さらに、「敗訴者負担原則」は、クラス・
アクションを含むあらゆる民事訴訟に適用される。これは、敗訴した当事者 が訴訟費用を負担することを意味する。しかし、クラス・アクションでは、
費用を支払うリスクを負うのは代表原告であり、ケベックでは、司法へのア クセスに関する従前からの考えに基づき、この費用負担はいかなる場合にお いても最小限のものとなっている。
ケベックや、オンタリオ等の他の州では、代表原告がクラス・アクション の費用を引き受ける際の支援としての公的融資が存在する。たとえば、クラ ス・アクションを提起する際、代表原告は、「集団的訴訟支援基金」から初 期の融資を受けるために申請することができる。この基金は、ケベック政府 の財源によるものであり、同州におけるクラス・アクションの3分の1に融 資している69)。前述したように、ケベックでの代表原告は、実際に、クラス・
アクション訴訟を提起する際に過度の費用を負担することはない。
67) 民事訴訟法598条。民事訴訟法593条も参照。「裁判所は、代表原告に対し、その支出に関す る補償並びに訴訟費用及び弁護士の専門的報酬に関する金額を裁定することができる。これら は、いずれも、集団的に回収された金額から、又は個別的請求の支払前に支払わなければなら ない。
裁判所は、クラス構成員の利益において、弁護士が請求する報酬の合理性を評価する。報酬 が合理的でない場合は、裁判所は、その金額を定めることができる。裁判所は、クラス・アク ション支援基金が代表原告に支援を提供したのかを問わず、訴訟費用及び報酬について判断す る前に、基金の意見を徴する。裁判所は、基金が訴訟費用又は報酬の全部又はその一部の支払 について保証したか否かを考慮する。」
68) 民事訴訟法600条。民事訴訟法599条も参照。これによると、債権の個別的回収を命じる判決 は、個別的債権を確定するために判断するべき事項を特定しなければならない。
69) 集団的訴訟支援基金のウェブサイト < http://www.faac.justice.gouv.qc.ca/#>。
Ⅴ.和解
ケベックでは、クラス・アクションの約82% が和解に至っており、他方 で16% が本案審理に至っている70)。多くのクラス・アクションが、認可の前 または後で
ADR
手続を通じて解決されているが、和解に至っている訴訟の 大多数は認可前にそうなっている71)。クラス・アクションの和解は、当事者 によって正当に交渉され、その公正な性格およびクラス構成員の利益に最も 適うものであることを確保するために、裁判所によって認証されなければな らない72)。クラス・アクションに関する法では、交渉に参加していないクラ ス構成員の利益を保護するために、和解は、裁判所の認証を得た場合に限り 行うことができると定められている73)。この場合、裁判所は、クラス構成員 を保護する者として行動する74)。Ⅵ.複数州にわたるクラス手続および全国的なクラス
カナダの裁判所は、複数管轄クラス・アクションとしても知られる全国的 クラス・アクションを認めている。これは、クラス構成員が、特定の州の住 民に限られず、むしろ、その特定のクラスの構成員の画定に合致するあらゆ るカナダ住民となるものである75)。たとえば、先住民である生徒たちに寄宿 学校での学習を強制したことについて、連邦政府に対して全国的クラス・ア クションが提起された事件がある76)。このクラス・アクションは、歴史的な
70) クラス・アクション研究所が25年にわたって入手したデータによる。
71) Ibid.
72) Catherine Piché, Fairness in Class Action Settlements (Toronto: Carswell, 2011). 73) 特に民事訴訟法590条およびオンタリオ州クラス訴訟法29条を参照。
74) Piché, Fairness in Class Action Settlementsを参照。
75) Walker et al., at 871.
76) 寄宿学校事件に関するウェブサイトhttp://www.aadnc-aandc.gc.ca/eng/1100100015576/
1100100015577を参照。
和解で終了した。そこで合意されたのは、他の事項に加えて、共通部分の支 払、特別部分の支払および政府による公式の謝罪であった。複数管轄クラス・
アクションの有効性は、ケベックでは、2008年の上級裁判所の
Brito v.
Pfizer Canada inc
判決で認められた77)。同判決では、裁判官は、要するに、クラス・アクションに関するケベックの立法は、司法へのアクセスを優遇す るために判例法では広く解釈されていると述べたのである78)。
今日では、立法者は、ケベック民事訴訟法において複数管轄クラス・アク ションを認めている79)。同法577条によると、裁判官は、単にクラス構成員 がケベック外で既に開始されている複数管轄クラス・アクションの一部を成 しているということを理由に、クラス・アクションの認可を拒絶できな い80)。裁判所は、管轄権を否定するべき旨、クラス・アクションを開始する ための認可申立ての手続を停止するべき旨、またはクラス・アクション手続 を停止するべき旨を求められた場合には、ケベック住民の権利および利益を 考慮しなければならない81)。複数管轄クラス・アクションが既にケベック外 で進行している場合、裁判所は、そうすることがケベックのクラス構成員の 権利および利益の保護により寄与すると考えたときは、認可申立ての停止を 拒絶すること、または他の代表原告による同じ訴訟物に関するクラス・アク ションの開始を認可することができる82)。
さらに、ケベック外のクラス・アクションで判決が言い渡され、および、
和解の認証または判決の承認に関する申立てが行われた場合は、裁判所は、
外国判決の承認および執行に関するケベック民法の規定が遵守されたこと、
77) Brito v Pfizer Canada inc., 2008 QCCS 2231(CanLiiで閲覧可能)。
78) Ibid, at para 99.
79) 民事訴訟法577条。
80) 民事訴訟法577条1項。
81) 民事訴訟法577条2項。
82) 民事訴訟法577条3項。
ならびに、クラス構成員が適切な通知を受けたことを確認しなければならな い83)。また、裁判所は、ケベックの住民が、ケベックの裁判所におけるもの と同様の権利を行使できることを確認しなければならない84)。第三者に対し て支払うべき残額があるような集団的回収の状況においては、ケベックの上 級裁判所は、ケベック住民の割合分を決定することになる85)。
民事訴訟法および裁判所が複数管轄クラス・アクションを認めているにも 拘わらず、実際には、カナダの異なる州管轄の間での調整が欠如している。
カナダ最高裁判所は、
Hunt v T&N plc
判決で次のように述べた。法体系およびルールは、社会における基本的価値を反映かつ表現す るものである。したがって、社会の多様性を尊重するためには、法 体系における相違を尊重することが重要である。しかし、数多くの 取引や相互作用が国境を越え、拡散された世界的法秩序で、法的活 動を行う個人の集合体を定義づけるものとなっている私たちの時代 において、これが機能するためには、このような多様性を調整する 実現可能な方法もなければならない。そうでなければ、無秩序体系 の最悪の属性が出現し、個人である訴訟当事者は、避けることので きない不公正性の犠牲となる86)。
この引用部分は、カナダにおける複数管轄クラス・アクションの複雑性を 示しており、いくつかの疑問を生じさせる。1つの管轄圏における規定期間 の停止は、他の管轄圏でも効果を生じるのだろうか。代表原告および参加し ていないクラス構成員のクラス弁護士となるのは、どの弁護士事務所(ある いは複数の事務所)なのだろうか。それぞれの管轄圏の認可基準は、クラス・
83) 民事訴訟法594条1項。
84) 民事訴訟法594条2項。
85) 民事訴訟法594条2項。
86) Hunt v T&N plc, [1993] 4 SCR 289(CanLiiで閲覧可能)。
アクションがどこで開始されるのかを決定する際に役割を果たすのだろう か。たとえば、ケベックの認可段階は敷居が低いため、他の管轄圏と比べて 認可基準を満たすことが容易である87)。これらの問題に鑑みると、カナダの 複数管轄クラス・アクションの根本にある多様性は、すべての訴訟当事者に 対して司法へのアクセスを強化するためにより効果的に調整されなければな らないと主張することができる。
さらに、複数管轄クラス・アクションには、憲法上の問題も残る。裁判所 は、基本的に、州外の事項について立法する権限を有しない可能性がある。
そ の 権 限 は、 そ の 管 轄 内 に 限 定 さ れ て い る か ら で ある88)。
Unifund Assurance Co. v Insurance Corp. of British Columbia
事件で議論されたよ うに、「州が州外において立法する権限を有しないことは十分に確立されて いる。オンタリオ法がブリティッシュ・コロンビアでの事故から生じる民法 上の権利を規律することを意図するなら、このことは、州立法の州外適用と なり、許されないだろう」89)。そのような領域的制限は、カナダ憲法におい て中心的なものである連邦制の原則と一貫している。カナダ最高裁判所が述 べたように、「この領域的制限は、わが国の連邦制にとって根本的なもので ある。そこでは、各州が、他の州の立法領域におけるその主権を尊重する義 務を負い、反対に、同じく尊重されることを期待している」90)。もっとも、連邦制の原則にはいくつかの例外があり、そこでは、州の立法 が州外の民事的権利に影響を与えることが認められる。たとえば、立法が、
「州の有効な目的」に関連し、州のその目的にとって州外の民事的権利に対 する効果が「必要な付随事項」であり、州の権限行使に「付帯的な」もので
87) Infineon判決, at para 64.
88) Walker & Watson, at 268.
89) Unifund Assurance Co. v Insurance Corp. of British Columbia, [2003] 4 SCR 289, at para 50, (CanLiiで閲覧可能)。
90) Ibid at para 51.
ある場合がある91)。いくつかの文献では、裁判所は、複数管轄クラス・アク ションを認可し、または認証する権限を有すると主張されている。それは、
「クラスと法廷地である州との間に真のかつ本質的な連結」がある場合だと いう92)。実際には、憲法上の問題はまだ解決されていない。そのため、複数 管轄クラス・アクションに関しては不確実性が残っている。このことは、最 終的な判決または和解が、州外で認証され、執行されるのかについて特に当 てはまる。
さらに、
Currie
判決は、外国のクラス・アクションで既に解決されてい る請求の原告による遂行を被告が防ぎたい場合に、複数管轄クラス・アクシ ョンで言い渡された判決に「専占の効果(排他的効力)」が付与されるかに 焦点を当てた93)。この判決では、他の管轄圏で言い渡された判決は、「専占 の効果(排他的効力)」を生じさせないとされた。なぜなら、カナダのクラ ス構成員に対して行われた通知が不適切だったからである94)。前述したよう に、通知は欠かせない95)。カナダ弁護士会の直近の議定書は、「複数管轄ク ラス・アクションの管理およびクラス・アクション通知の実施」というタイ トルのものであるが、通知の基本的な重要性に言及し、クラス訴訟で通知を 行うためのベスト・プラクティスに関する提案を行っている96)。この議定書 を作成した全国クラス・アクション・タスク・フォースは、議定書の1つの 箇所を、複数管轄事件における審理や申立ての管理に充てている97)。その前 の議定書は2011年に発行されたが、今日もなお関連性をもつ。その議定書は、91) Walker & Watson, at 269.
92) Ibid at 271.
93) Currie v. McDonald's Restaurants of Canada Ltd., [2005] O.J. No. 506, 74 O.R. (3d) 321
(C.A.), par. 17.
94) Ibid at 37.
95) Canada Post判決, at para 42.
96) Canadian Judicial Protocol for the Management of Multi-Jurisdictional Class Actions and the Provision of Class Action Notice, Ottawa, Canadian Bar Association National Class Actions Task Force (November 2017).
97) Ibid.
複数管轄クラス・アクションにおける和解およびその通知義務の管理に焦点 を当てていた98)。いろいろ考慮してみると、複数管轄クラス・アクションと いうものは、カナダで非常に重要な課題となっていることが分かるが、この ことは、カナダ弁護士会の議定書が、そのような訴訟の調整および管理を支 援することを目的としていることからも分かるのである。
*本稿は、南北アメリカ大陸司法研究センターに提出した報告書に基づくも のである99)。
【訳者付記】 本稿は、2018年7月14日に同志社大学で行われた第3回同志社 法学会講演会「ケベックにおけるクラス・アクション制度の概要」における 報告の基礎となった原稿を訳出したものである。筆者のカトリーヌ・ピシェ 教授(モントリオール大学法学部、クラス・アクション研究所所長)は、ケ ベック州(カナダ)におけるクラス ・ アクション制度の第一人者であり、
2018年7月に来日され、上記講演会のほか、同月26日には筑波大学でも講演 を行われた。本翻訳にあたっては、田村陽子教授(筑波大学)から貴重なご 意見を賜った。ここに記して感謝の意を表したい。なお、本研究は、JSPS 科研費18
K
12693の助成を受けたものである。98) Canadian Judicial Protocol for the Management of Multi-Jurisdictional Class Actions, Ottawa, Canadian Bar Association National Class Actions Task Force (August 2011).
99) 同報告書については、たとえばCatherine PICHÉ & Pierre NOREAU, Civil Justice Reform in Quebec and Canada, Consultation Report for the Justice Studies Center of the Americas, December 2018 (specialmandate), 120 p.を参照。