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住宅再建にみる世帯の生活再建

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(1)

住宅再建にみる世帯の生活再建

藤 崎 宏 子

.はじめに

1983

10

月の三宅島噴火災害は,阿古地区を中心とする島民の生活に甚大な 被害をもたらした。それは,住宅の埋没や焼失,公共施設・道路の埋没,農地・

漁場・商店といった重要な生計手段の損害など,生活のあらゆる側面に及んで いる

O

しかし,あれから

3

年余り経った現在,島を訪れる人びとは,そのめざ ましい復興ぶりに目を見張るにちがいない。たしかに集落の様相は一変した。

しかし,様相を変えつつも, 新生"阿古の生活は脈々と息づいている

O

きち んと整地され区画化された団地には,真新しい家々が立ち並ぶ。地区の北方の 高台には,小中学校の漏酒な建物が海を臨んでいる

O

観光客相手の民宿やみや げ物庖も,すっかり生まれかわっている。そして,日中,集落内であまり人影 のないのは,むしろ各人がその持ち場で労働にいそしんでいる証拠である

O

こ うした光景をみるにつけ,この

3

年余のあいだの行政による復興施策の力,そ して島民一人ひとりの生活再建に向けての努力がいかに大きなものであったか を思わずにはいられない。

本稿では,噴火災害から現在までの阿古地区各世帯の生活再建過程の実態 と,これを左右した要因について検討する

o I

生活再建」とは,まさに生活ま るごとの再建を意味し 島民の生活を成り立たせているあらゆる物的・人的資 源に目配りを要する概念である

O

しかしここでは 生活再建のー側面としての

「住宅再建

J

にとりあえず焦点をしぼり これを通してみた生活再建のあり方

を問題にしたい。今回の噴火災害では,幸いにして死者や怪我人などの人的被

害はなかったものの 阿古地区のおおよそ

5

分の

3

の世帯が住居を失い,当面

(2)

のあいだ避難所や仮設住宅での不自由な生活を強いられた。したがって,行政 にとっても,住民自身にとっても,まず解決すべき緊急の課題は,いかに新し い住居を確保するかにあったからである口

また,住宅再建の過程についての考察にあたっては,各世帯の職業によるそ の差異に注目したい。職業のあり方により 住居のもつ意味や実際の構造・機 能が異なることは,容易に想像できる。大部分の勤め人にとって,住居は最低 限日常生活の場としての機能を果たせばこと足りるのにたいして,自営業を営 む世帯においては,それは日常生活の場であるとともに職業生活の重要な基盤

ともなる

o

以上のような点から,ここでの課題をいま一度整理すると,各世帯の職業(就 業形態)別にみた住宅再建過程の特徴をあきらかにし,これを通して世帯の生 活再建のー側面をとらえるということになる

O

とりわけ,後にふれるような,

自力再建,防集団地入居,村営住宅入居という住宅再建の三つの選択肢を前に して,どのような経緯で最終的な意思決定がおこなわれ これにともなう問題 はどのようなものであったのか,また,住宅タイプの選択にあたって作用した 職業以外の要因としてはどのようなものがあったのか,こうした諸点について,

1985

7

月の阿古地区世帯の悉皆調査(以下「再建調査j という)と,

1986

9

月におこなったケーススタデイの成果をもとに検討したい。なお,再建調査 データについてのここでの分析の対象は,調査完了 3 8 4 世帯中,溶岩埋設によ

り住宅を失った

255

世 帯 で あ っ た が 実 際 に は 就業形態別のクロスのとれる

250

世帯となった。

2 . 世帯の基本的属性と被害状況

はじめに,就業形態別の世帯グループについての基本的属性と噴火災害によ

る被害状況をみておきたい。ここでの分析の前提となる世帯の就業形態の分類

は , とりわけ困難な課題であった。後にふたたびふれるように,三宅島におけ

る世帯の就業形態は, まず 多就労"により特徴づけられる

O

このことは,基

本的には三宅島の産業基盤の弱さに由来している

O

近年 島をあげて力を入れ

(3)

ている観光業にしても,現状では,海水浴客や釣り客の集中する夏場以外はこ れといったセールスポイントに欠ける

O

また伝統的な農林漁業についても,集 約的な労働力投下や機械力の導入により大規模に営まれるものはまれで,個人 もしくは世帯レベルで細々と零細に営まれているものが大部分である(1)。さ らに,ここでの農林漁業は,必ずしも市場への出荷を前提とするものばかりで なく,自家消費用に供する目的のものもかなり含まれる

(2)

。したがって,世 帯レベルでいえば,夏場は民宿,冬場は農林漁業や失対事業といった季節的な 就労状況の変化,そして,老人は自宅の一部で小規模な雑貨商,中年夫婦は農 業,孫は建設会社勤務といった世帯員聞の分業形態が,ごくあたりまえの現象

とされている

O

そこでここで、は,各世帯において複数ありうる職業のなかで,

世帯収入のもっとも大きな部分を占める職業について,その就業形態に注目し て,農林漁業自営,その他の自営(民宿,商庖,飲食庖,工務庖など),勤務,

無職の

4タイプに分けているO

なお,

250

ケースを

4

分類した場合のそれぞれ の比率は,農林漁業自営

14

. 4 %,その他の自営

18.8%

,勤務52.8% ,無職

14.0%

となる

O

)世帯の基本的属性

まず表

1

により,世帯主の年齢分布をみよう

O

総数については,

50

代の

28.5%

をモードとして,以下,

60

代2

4.1

% ,  

70

歳以上

17.3%

,40 代14.9% とつづく。

全体として高齢層への偏りがみられるが,これはいうまでもなく,若者の都会 への流出傾向が顕著であることを意味している

O

就業形態別にみると,農林漁 業自営で

50

代への集中度が

4

割弱と高いこと,その他の自営と勤務世帯は各年 齢層への分散が高いものの,

20

代 , 30代も 15~20% ほどみられ,相対的には若

い世帯が多く含まれることなどが指摘できる。しかし,ここでもっとも目立つ

特徴は,無職のグループで,

70

歳以上が60.0% ,6

0

代が34.3% と,計95% ほど

が6

0

歳以上の高齢者で占められていることである

O

無職と高齢という

2

条件が

きわめて高い頻度で重なってあらわれる点に,これらの世帯の生活上の困難さ

が予測される

O

(4)

1

世帯主の年齢

20

30

40

50

60

7

0

歳 上 計

農 林 漁 業 自 営

2.8  0.0  19.4  38.9  22.2  16.7  100.0 ( 36) 

そ の 他 の 自 営

2.1  12.8  14.9  29.8  25.5  14.9  100.0( 47) 

勤 務

3.8  19.1  16.8  32.1  21. 6.9  100.0 (131) 

無 職

0.0  0.0  2.9  2.9  34.3  60.0  100.0 ( 35) 

総 数

2.8  12.4  14.9  28.5  24.1  17.3  100.0 (249) 

*** 

注 ( )内は実数,これは以下の表についても同様

なお表右下の記号は

x2

検定の結果を示す(全表に共通)。

(***<0001 

<0.01 

<0.05 

2

世帯主の性別

男 女 計

農 林 漁 業 自 営

83.3  16.7  100.0 ( 36) 

そ の 他 の 自 営

85.1  14.9  100.0( 47) 

華 力 務

83.3  16.7  100.0

( 1

32) 

盤 職

42.9  57.1  100.0 ( 35) 

78.0  22.0  100.0 (250) 

*** 

つぎに表

2

により世帯主の性別をみると,総数では,男

78.0%

,女

22.0%

と いう分布で,女性世帯主の比率も無視できないものがある

O

データは示さない が,女性世帯主の年齢分布をみると 4分の 3が

60

歳以上の高齢者により占め られている。就業形態別では,農林漁業自営,その他の自営,勤務の

3

グルー プについては,女性世帯主の比率が

15%

前後であるが,無職においては

57.1% 

と過半数を占めている

O

このグループは,高齢,無職という条件に加えて,女 性世帯主が多いというハンデイもかかえているのである

D

以上のデータからすでに多少の推測がつく部分もあるが,つぎに,これらの

世帯の世帯構成上の特徴をみておこう

D

3

に示したように,ここではきわめ

(5)

て有意な差があらわれている

O

農林漁業自営は,夫婦世帯と夫婦と未婚の子か らなる核家族的世帯が

6

割を占めている

o

その他の自営においてはこの割合が さらに高く 7 割以上となる。勤務はこれが 6 割,そしてこのグループでは,

「その他」に分類される世帯が

23.5%

4

グループ中もっとも多い。「その他」

の世帯類型は,文字通り棒々雑多な構成のものが含まれるが,その中心部分は いわゆる三世代世帯である

O

一般には,家業継承などの点で,自営業世帯にそ の比率が高くあらわれるはずだと思われるが,少なくともこのデータではこう

した傾向はみられない。離島に深刻だといわれる「あとつぎ問題」は,ここで もまた無縁ではない。また無職のグループは,単身が

6

割と圧倒的で,これに 夫婦世帯の

3

割がつぐ。これまでのデータとあわせてみると,大部分がいわゆ

3

世 帯 構 成

単 身

夫 婦 末婦+未婚子

その他 計 農 林 漁 業 自 営

25.0  30.6  30.6  13.9  100.0( 36) 

そ の 他 の 自 営

12.8  27.7  44.7  14.9  100.0( 47) 

勤 務

14.4  27.3  34.8  23.5  100.0 

( 1

32) 

畢 職

60.0  31. 0.0  8.6  100.0 ( 35) 

総 数

22.0  28

. 4  

31. 18.4  100.0(250) 

* * *  

注 : こ れ は

85

7

月 調 査 時 点 の 世 帯 構 成 で あ る 。 こ の 時 点 で は 仮 設 住 宅 に か つ て の 世 帯 員 が 分 か れ て 住 む と い っ た 形 態 も

250

ケース中

20

ケ ー ス に み ら れ た が , こ れ ら 別居世帯員は含まない同居部分だけにかんする構成である。

る老人世帯であるといえる

o

つぎに,世帯の職業にかんするデータをみよう。さきにも指摘したように,

これら世帯の職業生活は,まず多就労により特徴づけられる

O

4

で各世帯に

おける職業数をみると,総数については, r 一つ

J

64.7%

でもっとも多いも

のの, r 二つ

J30.2%

,  r 三つ

J5.1%

と ,

3

世帯に

1

世帯は二つ以上の職業をもっ

ている。この数値は,平均世帯人員

2.6

人というサンブ

ρ

ルの特徴とあわせてみ

ると きわめて大きいものと思われる

D

ここで「職業」といっているのは,現

金収入をともなうものに限定され,自家消費用の野菜づくりなどは含まない。

(6)

しかし,現金収入の必ずしも十分でない島の生活では,こうした労働のもつ意 義は大きく, 生活を支える労働"という観点から拡大解釈すれば,

I

多就労」

はもっと大きな比率を占めるものと思われる

o

就業形態別にみると,勤務の世 帯では一つに限定されるものが

7

割強ともっとも多いのにたいし,自営業の

2

グループは

4

割から

5

割が二つ以上の職業をもっている。これは,自営業は 季節による収益の変動が大きいものが多いこと,また,民宿と農漁業のように,

職種によっては他の仕事と組み合わせることで経営コストを押えることができ ること,などが作用しているものと思われる

O

4

世帯の職業数

計 平世帯均当値 り

農 林 漁 業 自 営

50.0  44.4  5.6  100.0( 36)  1.

そ の 他 の 自 営

57.4  36.2  6.4  100.0( 47)  1.

勤 務

71.2  24.2  4.5  100.0 (132)  1.

総 数

64.7  30.2  5.1  100.0(215)  1.

5

就業形態の職種別分類

%  農 業 漁 業 製造業 建設業 商 庖 飲 食 庖 尽 旅 露 運 信 襲 公 務

毒装

その他

f

農林漁業自営

58.3  4

1 .

100.0 ( 36) 

その他の自営

17.0  29.8  8.5  34.0  2.1  8.5  100.0( 47) 

動 務

0.8  0.8 

1 .

5  37.1  2.3 

1 .

5  15.2  26.5  6.1  8.3  100.0

( 1

32) 

総 数

10.2  7

. 4  

0.9  26.5  7.9 

1 .

8

. 4  

9.8  16.3  3.7  7.0  100.0(215) 

」 一 一

* * *  

さて,さいごに無職を除く

3

タイプの就業形態について,より具体的なイメー ジをつかむために,小分類を示したものが表

5

である

O

まず農林漁業自営は,

実際には農業と漁業に分かれ,その比率は

58.3%

41.7%

となっている

O

その

他の自営では,民宿・旅館が

34.0%

でもっとも多く,これに商庖

29.8%

,建設

17.0%

がつく〉また勤務については,建設業

37.1

%,公務

26.5%

,運輸通信

15.2%

が代表的である

O

(7)

)被害状況

ここで分析の対象としている

250

ケースは,噴火災害により住宅を失ったと いう点では条件は一様である

O

しかし,冒頭にもふれたように,今回の被害は 住宅のみにとどまらず,生活のさまざまな側面に及んでいる

O

まず表 6により,職業に関連した被害状況をみてみよう

o

r とくに被害なし j

と答えているものは勤務と無職に多く,いずれも

4

割以上を占めている

O

これ にたいして自営業の

2

グループでは,相対的にこの割合が低い。被害項目を具 体的にみると,農林漁業自営では, r 農地を失った j ものが

38.9%

にのぼり,

これに「工場・倉庫を失った

J19

. 4 % ,   r 民宿を失った

J13.9%

なとマがつぐ。

その他の自営では, r 庖舗を失った

J3

1 .

9%

,  r 民宿を失った

J29.8%

がとくに 目立ち,これに「職(場)を失った

J23

. 4 %   r 工場・倉庫を失った

J2

1 .

3% 

などがつづく

O

自営業の場合は,さまざまな設備・備品を所有しているものが 多く,それだけ噴火災害による影響も受けやすかったものと思われる

O

こうした被害がもっともはなはだしい場合は,職業それ自体の内容変更を余 儀なくされる

O

表 7 は,被災前の世帯全体の就労状況を現状と比べてその異同 を評価してもらった結果であるが,総数については, r まったく同じ」として

いるものは約 7割で 3割近くは何らかの変化を経験している

O

グループ別で は,とくに無職に変化を指摘するものが多く, r 多少違う

J

r 大きく違う jの

2

カテゴリーを合計すると 7 割程度にものぼる。別のデータによると,無職のグ ループでは,噴火災害の結果として「無職」になったものが

3

割近く含まれて いるのである。

また,同じく噴火災害前と現状とを比べ,収入面の変化がどの程度あったか

を問うた結果が表

8

である

O

総数については,程度にかかわらず,多少なりと

も収入減を経験したものは全体の

3

割強となっている口グループ別にこの比率

をみると,農林漁業自営は

63.8%

,その他の自営は

48.9%

と多く,これにたい

して勤務は

17.9%

,無職は

38.3%

となっている

O

さきにみた職業関係の被害状

況の違レが, ここにもそのままあらわれている

O

(8)

6

宅地・住居以外の被害状況〔意向調査〕

M.A. 

職 失 (  場)を

っ た 農 失 地 を

っ f

工を場失・っ倉庫 た 実 舗 を

っ た 民 失 宿 を

っ た 旅 失 館 を

っ た 客途絶足えが た と害くな に 被 し 農 林 漁 業 自 営

= 36  5.6  38.9  19

. 4  

8.3  13.9  2.8 

。 。

19

. 4   そ の 他 の 自 営

N =  47  23.4  14.9  2

1 .

3

1 .

29.8  2.1  2.1  6

. 4  

=132 

6.8  15.2  6.1  7.6  9.1  0.0 

1 .

45.5 

N =  

35  14.3  1

1 .

2.9  5.7  2.9  0.0  0.0  42.9 

総 数

10.8  18.0  10

. 4  

12.0  12.8  0.8 

1 .

34.0  =250 

**  **  **  ***  ***  *** 

注:

1)

このデータは,

83

12

月に村がおこなった「意向調査」の結果と

85

年7 月の「再建調査」の結果をつないだものである。

以下,この種のデータについては表題の右に[意向調査〕と表記する。

)ここでの検定は,各項目における該当の有無についておこなったものである

o

7

職業の変化

全く同じ 多少違う 大きく違う 計 農 林 漁 業 自 営

72.2  25.0  2.8  100.0 ( 36) 

そ の 他 の 自 営

74.5  19.1  6.4  100.0( 47) 

勤 務

74.8  11.5  13.7  100.0

( 1

31) 

E

28.6  14.3  57.1  100.0 ( 14) 

総 数

71. 15.4  13.2  100.0 (228) 

* * *  

8

収入の変化

増えた 変わ

らず

多減っ少 た 半 減分に った 半に分減以っ下 た な なった 計 農 林 漁 業 自 営

0.0  36.1  36.1  19.4  8.3  0.0  100.0 ( 36) 

そ の 他 の 自 営

12.8  38.3  19.1  14.9  12.8  2.1  100.0( 47) 

勤 務

17.1  65.1  9.3  2.3  4.7  1.6  100.0 

( 1

29) 

0.0  61.8  14.7  5.9  11. 5.9  100.0 ( 34) 

総 数

11.4  55.3  15.9  7.7  7.7  2.0  100.0 (246) 

* * *  

(9)

.住宅の再建過程

)行政施策の概略と住宅再建過程

1

は,ここで分析の対象としている

250

世帯の,被災直前から被災後

2

年 あまりのあいだの住宅再建過程を時間を追って示したものである

O

噴火災害に

より一様に住居を失ったこれらの世帯が,短期間にいかに住宅再建を中心とす る生活の建て直しに力を尽くしたかが想像される

O

ここでは,まず,村や都,

そして国によって進められた住宅再建諸施策

(3)

との関連で,この過程を概略 的に追ってみることにする

O

まず,噴火災害前の住宅形態をみると,

83.1%

が自己所有の家をもち, しか もその

9

割以上は土地も所有している。これにたいして,村営住宅やアパート,

社宅,借家・借間などの居住者はきわめて少数である

D

このことは,島の生活 が,まず自己所有の住居と土地を基礎として成り立っていることを意味してい る

O

さきにもふれたように,現金収入の必ずしも多くない島の生活において,

住宅費のかからない 持ち家"の意義は大きい。また,全体の

6

割近くが

300m2

以上というかなり広い敷地面積をともなっており,そこでは,一般に,自家消 費用の野菜づくりがおこなわれている。さらに,先祖伝来の土地・家屋を守り 続けていくことへの執着さの強さも,現地でのヒアリングのなかで再確認した 点である。こうしたさまざまな要因により,きわめて高い住宅の所有率があら

われているものと思われる

O

したがって,噴火災害による住宅の埋没・焼失は,このような島民たちの生 活の根幹が根こそぎ奪われたことを意味する

D

被災後,大部分の人びとは,当 分のあいだ不自由な避難所ぐらしを余儀なくされる。村は,まずこれへの対応 として,災害救助法にもとづく応急仮設住宅の建設を急いだ。

10

28

日には神 着に

50

戸,そして

11

29

日には阿古の下錆に

290

戸の仮設住宅が完成し,順次,

移転が始まった。図

1

でみると,避難所を出た直後の落ち着き先は

7

割方が仮 設住宅であるが,知人・親戚宅などに一時的に身を寄せたものも少なからずみ

られるのである

D

(10)

噴火災害前〔意向調査〕

避 難 所 を 出 た 直 後

1983

10‑11月)

意向調査時〔意向調査〕

(1

9

回 年

12

月}

再 建 調 査 時 (1

9

部 年

7

月)

再 建 調 査 時 の 予 定

lffi5

11

月を回途と

して)

(土地・住居自己所有

7

8 .

2)

仮 設 住 宅

72.0 

89.3 

52.0 

自 家

7.8 

(防集

その他

2.2 (N=225) 

(N = 250) 

1.

(N= 225) 

知人・親戚宅

1. (N=250) 

(N = 238) 

10  20  30  40  50  6 0 7 0   80  90  100 

図 1 住 宅 再 建 の 過 程

一方村は,長期的な観点に立って,各世帯の生活再建,そして地域全体の復 興のために防災集団移転促進事業を復興計画の中心に据えることを考える

o83 

年度中にすべての計画を確定したうえで固にその適用を申請するための,きわ めて過密で煩墳な手続きにかんするスケジュールがたてられるのである。まず,

12

8

日から

12

日にかけて,

I

阿古地区復興住民意向調査

J

(以下「意向調査

J

と略す)

(4)

がおこなわれる。これは,新集落の候補地や公共施設の配置など

の決定にあたって,現状での各世帯の意向を把握する必要があるとの判断から

おこなわれたものである。またこの調査においては,その時点の各世帯の住宅

再建の意向も問うている

O

これによると,できるだけ早期に自力で再建したい

としているものは

2

割にも満たず,過半数は村の復興計画の全貌があきらかに

された後に具体的に考えたいとしている

O

早く住宅を確保したいという気持ち

は一様に強いものの,学校その他の公共施設はどうなるのか,道路の位置はど

うなるのか,そして商庖街などの村の中心部はどこになるのか,といった構想

(11)

が具体化されない限り,勝手に家をつくるわけにはいかないというのが当時の 一般的な受けとめ方であったと思われる

O

なお,この段階の実際の住宅状況は,

1

にみるように,仮設住宅への入居もほぼ完了し,全体の約

9

割がここに落 ち着いている

O

84

1

月末,村は復興計画の基本方針を提示するための住民説明会を開催 する

O

ここでは,各世帯の住宅再建にあたって,三つの選択肢がありうること が示される

D

一つは,土地も住宅も各自で確保する「自力再建

J

,二つ目は,

防災集団移転促進事業(以下「防集事業」と略す)にもとづき造成された宅地 に借地をして,そのうえに自力で住宅を建てる「防集団地入居

J

,そしていま 一つは,村の手により建設された「村営住宅への入居」である

O

さらに,

I

阿 古地区新集落形成基本計画jが策定された 2 月下旬より 村役場に設置された 災害復興課の職員を中心にして,各世帯の個別訪問がおこなわれ,さきの三つ の選択肢にもとづく最終的な決定がなされる

O

そして これをもとに固に防集 事業計画の申請がおこなわれ

3

5日に総理大臣の承認を経て正式決定の運

びとなるのである

O

83

年度中にすべての手続きを終えなければ翌年度から事業実施ができないと いう,きわめて厳しい時間的制約のもとにすすめられた作業の裏には,住民た ちの不安や迷いのさまざまなドラマが展開されたものと思われる

O

とりわけ,

自力再建,防集団地入居,村営住宅入居のどの選択肢を選ぶかという点は,各 世帯の生活の根幹にかかわる問題である。表

9

に示したように,住宅の広さ,

借地・借家料の問題,さらに資金の確保など,各世帯の生活の実情との関連で,

検討が繰り返された

O

再建方針の決定について,暫定的な意向の段階と最終的 な確定数とのあいだに 20%程度の方針変更があったことに,この過程が,各世 帯にとっても,行政サイドでも,いかに困難であったかが示されている

O

84

年度に入って早々の

4

月には,防集事業の具体的な事業内容,スケジュー ル,資金融資関係についての住民説明会が実施される。さらに同年

11

月には,

防集団地の宅地貸付説明会が聞かれ抽選により各世帯に宅地が割当てられる

O

宅地造成 L 事業も急ピッチですすめられ,

85

年の

2

月から

3

月にかけて,三カ所

の団地の造成工事がつぎつぎに完了している

O

すでに実際の住宅建設にとりか

(12)

9 住宅再建の条件

I

,ー&ー・

その他の条件

自 力 再 建 自力確保(借地も含む) 自力確保

住居部分1/2以上,

防集団地入居 防集団地に借地

自力確保 敷地面積 商売をする場合は 借地料金月 1500円程 280‑290m 騒音・営業時間な

どの規制あり

村営住宅を賃貸 住宅を利用しての

一般世帯 敷地面積 商売は,事実上不

村営住宅入居 27000円(ただし 3年間は半額)

可能

180m 小 世 帯

20000円(ただし3年間は半額)

かっていた多くの自力再建者に加えて,防集団地入居予定者もいよいよ本腰を 入れて住宅再建にとりくむことになるのであるO なお 35戸の村営住宅は,三 カ所の防集団地に分散して配置することとされ,この建設工事も,同年 5月か

6月にかけて完了している。

わ れ わ れ 都 立 大 の 研 究 チ ー ム が 都 精 神 医 学 総 合 研 究 所 と の 連 携 の も と に 阿 古地区住民の生活再建調査をおこなったのは 同年

6

月末から

7

月初めにかけ て,ちょうどすべての世帯の住宅再建の目途が明確になった時期であるO

図 1

にみるように,この段階の自家再建者の比率は38.0%になり,意向調査時に 9 割を占めていた仮設住宅入居者は約半数にまで減少しているO さらに,今後の 予定としては,仮設住宅の入居期限である8511月を目途として,自力再建が 49.1 %,防集団地入居が38.7%,計87.8%が自家所有,そして残りの12.2% 村営住宅入居ということになっている。したがって,被災前の比率を上廻る自 己所有の家が確保されることになるのであるD 繰り返しふれたように,この過 程はさまざまな困難を含んだものであったが,とりあえず,各世帯の中心的な 生活基盤がここに整備されつつあったといえる。

)就業形態別にみた住宅再建の過程

以上,被災後の住宅再建過程を復興施策との関連で概説したが,ここでは,

(13)

こうした過程の各世帯における多様性を,就業形態との関連でみることにする口 まず表10 は,噴火災害前の住宅形態を示しているが,就業形態の

4グループ

においてきわめて有意な差がある

O

農林漁業自営では一戸建の専用住宅が代表 的で

4

分の

3

を占め,これに庖舗や民宿の併用住宅を加えると

9

割以上にのぼ る

O

その他の自営の場合は,専用住宅はむしろ少なく,庖舗や民宿の併用住宅 がおおよそ 3分の 2を占めている。勤務の世帯は,専用の一戸建て住宅の比率 がその他の自営グループを除く 3グループ中もっとも低く 7割に満たない。

そしてこのグループでは,アパート,村営住宅,社宅などの入居者が14 .4%と,

4グループ中もっとも高くなっているO

また,無職者については,一戸建ての 専用住宅の割合が

8

割弱ともっとも高く,収入の低さを補う意味でも,住宅の

もつ意味は大きかったであろうと推察される

O

10

噴火前の住宅形態

住戸建 宅 村営・社宅

庖用舗住併 宅 民併宿用・住旅館 宅 その他 計

‑アパート

農 林 漁 業 自 営

75.0  5.6  5.6  11.1  2.8  100.0( 36) 

そ の 他 の 自 営

27.7  6.4  34.0  31. 0.0  100.0( 47) 

重 力 務

68.9  14.4  8.3  7.6  0.8  100.0(132) 

主 正 職

77 .1  8.6  8.6  2.9  2.9  100.0 ( 35) 

総 妻 女

63.2  10.8  12.8  12.0  1.2  100.0(250) 

* * *  

つぎに,

83

12

月の意向調査時の住宅再建方針についてみよう

O

11

に示さ れるように,村全体の復興計画のあり方いかんを問わず,早期に自力で住宅を 確保したいという意向をもつものはその他の自営で

34.1%

ともっとも多く,こ れに農林漁業自営の

28.6%

がつく二無職ではこういった意向をもつものは皆無 であり,すべてが態度を保留している

o

とくに民宿や商庖などは,住宅の再建 が同時に職業基盤の確保であり,これなくしては収入の途がとざされてしまう

ということもあって,早期自力再建の希望が強くなるものと思われる

o

また,

データは示さないがこの時点の村営住宅入居希望をみると,入居したいとする

比率が高いのは無職と勤務で,それぞれ63.0% ,40.5  %を占めている

O

これら

(14)

の世帯にとっては,住宅はとりあえず 日常生活の場"としての意味あいが強 いため,状況によっては村営住宅入居を考慮したいといったところであろうか。

11

意向調査時の住宅再建方針〔意向調査〕

自早力再期建 復 提 興 示 計 ま 画 ち 予たた定

計 農 林 漁 業 自 営

28.6  40.0  31. 100.0 ( 35) 

そ の 他 の 自 営

34.1  52.3  13.6  100.0( 44) 

勤 務

11. 56.8  32.2  100.0(118) 

鉦 職

0.0  77 .8  22.2  100.0( 27) 

J

17.0  55.8  27.2  100.0(224) 

L一 一

*** 

12

再建調査時の住宅状況

f

反設

f

主宅 建した

分 の 家

知親戚人

の家

村背住宅 その他 計 農 林 漁 業 自 営

52.8  36.1  2.8  2.8  5.6  100.0( 36) 

そ の 他 の 自 営

31. 57.4  2.1  0.0  8.5  100.0( 47) 

勤 務

57.6  35.6  0.8  3.8  2.3  100.0(132) 

主E

57.1  22.9  0.0  17.1  2.9  100.0( 35) 

総 数

52.0  38.0  1. 4.8  4.0  100.0(250) 

** 

さて,つぎに 8 5 年 7月の再建調査時の状況をみよう口表

12

によると, 4グルー プ中とくにその他の自営で住宅再建が急ピッチであることがわかる

O

他の

3

グ ループはいずれも仮設住宅に居住しているものが半数を超えるのにたいし,そ の他の自営ではこれが

3

割にまで減り,すでに再建した自家に移り住んでいる ものが

57

.4%にのぼっている

O

ここでもやはり,住宅すなわち生計手段である というこれらの世帯の特徴をみることができる

O

また, 8 5 年 1 1月を目途とした 今後の予定については,表

13

のとおり,自力再建の比率は,その他の自営と農 林漁業自営でそれぞれ

72. 

% ,  

64 . 

%と高く,勤務と無職は各

42.3%

29.0% 

と相対的に低い。これにたいして防集団地入居の比率は,勤務が

50.0%

ともっ

表 1 世帯主の年齢 %  2 0 代 3 0 代 4 0 代 5 0 代 6 0 代 7以 0 歳上 計 農 林 漁 業 自 営 2 . 8  0 . 0  1 9 . 4  3 8
表 6 宅地・住居以外の被害状況〔意向調査〕 M.A.  %  職 失 (  場)を っ た 農 失 地 をっ fこ 工を場失・っ倉庫た 実 舗 をっ た 民 失 宿 を っ た 旅 失 館 を っ た 客途絶足えが た と害くな に被 し 農 林 漁 業 自 営 N  = 3 6  5
表 9 住宅再建の条件 土 地 住 I 屯 ,ー&amp;ー・ 広 さ その他の条件 自 力 再 建 自力確保(借地も含む) 自力確保 住居部分 1 / 2 以上, 防集団地入居 防集団地に借地 自力確保 敷地面積 商売をする場合は 借地料金月 1 , 5 0 0 円程 280‑290m 2  騒音・営業時間な 度 どの規制あり 村営住宅を賃貸 住宅を利用しての 一般世帯 敷地面積 商売は,事実上不 村営住宅入居 月 2 7 , 0 0 0 円(ただし 3 年間は半額) 可能 1 8 0 m 2  小 世

参照

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