【論 文】 UDC :691
.
32 :666.
973.
6 日本建築学会構造系論 文報告集 第396 号・
1989 年 2 月ALC
外
壁
仕 上
げ
の
凍害劣化
の
評価
方 法
に
関
す
る
実 験 研 究
正 会 員 正 会 員 正 会 員 正 会 員千
鎌
大
歩
田楽
森
英
隆
敏
修
*治
**男
* * *司
* * * *1.
は じめ に ALC は多 孔 質であ り, 吸 水 性,
透水 性が大き く,
表 面 強 度が小さい という性 質 を持っ ており,
外 壁と して使 用す る場 合に は仕上 げ材に下地 の保 護機能を大き く期待 し て いる。 従 来,
仕上 げ材の 機能 と は 仕 上 げ材自体の性 能に よっ て評 価さ れ るこ と が多く,、
仕 上げ材の嫗体保護 性 能と は,
単に水お よび劣 化 物 質の遮 断 性 能と考え られ,
劣 化 条 件のき び しい場所で は,
透 水 性,
透湿性の小さ な 仕上 げが多く用い られ て きた。
し か し ながら, ALC , コ ン ク リー
トの よ う な多 孔 質 材 料 を下 地 とす る場 合に は,
下 地の呼 吸作用, す なわ ち その外 壁の お か れ る環 境 条件に よっ て水分 その他の物質の移 動・
蓄 積があり, 単 に遮 断性の高い仕上 げ を用いただけ で は壁 全体の性 能の 向上につ な が ら ない ば か りか悪 影 響 を 及 ぼ すこ とも あ る。 この典型的な例が寒 冷地にお け るALC
外 壁で あり, 施工上の 問題の ほ か に外壁 側の水 が 凍 結に よる大 き な圧 力によっ て押 し込 まれ る こ と,
室 内 側か ら内 部 結 露など の た め に水の供 給・
蓄 積が ある こ となど を考えな くては な らな い。
こ の ため,ALC
外 壁 仕上 げの評 価を行う た めに は,
それぞれの材 料の性 質を と ら え る だ けで は な く,
下地 処 理 と 仕 上 げ を 含 め たALC 外 壁 を トー
タル に考え る必 要が あ る。 寒冷地にお け るALC
建築物で は,
仕 上 げ材のふ く れ,
は く離な どの劣 化,
さ らにはALC
自体の 凍 害 劣化 も 認 め られて い る3〕 。 この劣 化の メ カニ ズム は複雑で あ る が, 大 別し て 二つ の異な っ た劣 化メカニ ズムが あ る。
ひとつ の劣 化は, 主に高 温 多 湿の室 内 側か らの水 分の 移 動 とその蓄 積に よっ て起こるもの であり,
塗 膜の裏面 に水 分が蓄 積さ れ た場 合には 塗膜のふ く れ を生じ,
壁 体 内の 0℃ 位 置に よっ ては,
ALC 断 面内に大 き な劣化 を 引き 起こ ず )。ALC
の 吸水 性の高さ, 含 水 率こ う配お よび温 度こ う配ので き や す さなど がこ の種の劣 化の発 生 本 報 告の一
部は,
文 献 1 )お よび2}において 発表し た デー
タ に 改 め て 考 察 を加え たもので あ る。
準 建 設 省 建 築 研 究 所 研 究 員 工 修 榊 北 海 道 大 学 教 授・
工 博 林 零 釧路 工業 高 等 専 門 学 校 助 教 授 聯 脚 釧 路工業 高 等 専 門 学 校 助 手 〔昭和53年6月6日 原 槁受理} を促 進さ せてい る。
ほ か の劣化は, 主に屋外側か らの水分の侵入に よる も の で あ り, 含 水 率の高まっ た表 面 部分 が凍結 融 解の繰り 返しを 受ける こ とによっ て脆 化 する もの である。
さらに,
屋 外 側か らの水 分の侵入 は凍 結 時の水圧 が押 し込み力と して働くことも考え ら れ る。 これ ら二 つの劣 化は,
その対 応 策も異な り,
仕 上 げ材 に は透湿性が大き く透 水 性が小さい とい う相反 す る性 能 を要求して い る。
本 研 究は,
下 地 処 理 を含め てALC
の仕 上 げ を総 合 的 にと らえt 寒冷地のALC
外 壁を想 定 し た2種 類の 凍結 融解試 験とALC
外 壁の基本 的な性能を と らえ る た めの 透 湿試 験,
透水 試験を行い,ALC
を下地と し た仕上 げ の凍 害に対 す る抵抗 性 と その メ カニ ズム に検 討 を 加え た もの であ る。
2.
研 究の概 要 本 研 究は,ALC
を下 地と し た各 種の仕 上 げにつ い て,
透湿 試 験,
透水 試 験,
加圧 透水 試 験,
片面 凍 結 融 解試験 お よ び全 面 凍 結 融 解 試 験を行っ たもの で,
実 験 時 期の違 いか ら シ リー
ズ 1と シ リー
ズ2に分か れ る。 (表一
1) 2.
1 使 用 材料ALC ・
1・
下 地のALC
は,
い ずれの実 験と も厚さ5
cmt 比 重約 0.
5で無 筋の普 通 品お よび撥 水 品 を 使 用 し た。
凍結融 解 開 始 時の 含水状態 が試 験結果に 影 響 す るこ と か ら,
すべ て の試 験 体の含 水 率を あ ら か・
じ め20
°
/vol (約40° /wt )に調整 し た後,
封かん状態で最 低 限 3ケ 月 間 放 置し,
内 部の含 水 率 分 布を安 定さ せ た。 こ のあ と 仕上げ面の封か ん材を切り取り,
各 仕 上 げ を行い,
そ の2
週間後にそ れ ぞ れの 実験を開 始し た。
仕 上 げ材…
下 地処理 を含め た 仕 上 げの一
覧 を表一
2 に示す。
シ リー
ズ1
で は下 地 処 理と し て セメン ト系フィ ラー,
エ ポキシ溶 液 系 シー
ラー,
下 塗セ メ ン ト系フ ィ丶
表一
1 実験の概 要 マ 藏 コー
一 石冖一
一
厂寸一
‘2°聯 上閣
一 一
掣
+…一 ・
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透 湿 臟P
水 試 験t
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o シリー
ズ 2 (14種の仕 上げ) O_
_ 、
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、倍 圧…
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3倍匡」.
一
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一
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表
一
2 仕 上 げ仕 様一
覧 下 地 処 理 仕 上 げL
シ1∫一
ズ 分 頬 箆 号 租 頬 シー
ラー
アィラー
下 塗 : 主.
材 トップコー
ト し1JIS 鳥 6909 外装潭塗材Si 阻 舎 モルタル 2回 (2,
研 ,…
撫
し2JIS A 6909 外 装 簿 塗材 E セ メ ン ト系フィ ラー
(o.
研 ) … 主 材 2回.
(1.
2〜
1.
6}2
一
リシ ン系 (L】 L3だ
エマル ショ
ン系 凋 笹 材(o.
8)げ
一
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エポ ギシ シー
ラー.
〔D.
1B) セ メソト系7イ ラー
(O,
67)71
一』
liL51Jls 貞 δ9α9 相 当 品 主 材 2回、
{0.
9x2) マス チンク系・
ヒ
1
嚠
lM1JIS 為69Dg E マスチ 7クA セ メ ン ト系フィ ラー
.
67)1
7ク リ ルエマ
ル シ: 主 材 ヲン (O,
15) q.
ω 1 (M) ヌ鑒
lM2i
ダ
マシ ラー
ωン系プ ラ イ.
5)々
停
〃
1、
I l } iEli 」ls 鳳 6910 韻層 堕材 巳 シ ラン系 プ ラ イ マー
〔o,
5渉 セ メント系フ ィ ラー
〔O.
67) アク リル
エ7 ルシ・
主 材 2回 9 ン 〔0.
15) (1.
4〜
197) シリコンゴ厶系 2匱1〔0.
4) 1.
1「
匸
1
lE21
”
厚
”
”
ア クワルエマ
ルショ
ン 2回 〔o.
4) iE31”
1 エマ
ルショ
ソ系.
調 鰲材 (o,
8,伊
「
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馥 層 系 〔E,iE41
”
1
三ポキ櫺
1セ メ 竍 系フ, ラー
(o.
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.
〃
E5 : ・駐
響
1
1 主材下吹 き 主 材 (1.
O〕 〔1,
2)i ア ク リ
ル
ユ?ル
シ曹
ン 2回 ω.
3>lE
E … ili匚
「 lE δ FJIS 丸 6910 複眉 塗 材Si1[
;
多
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シ1
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欝
けい酸 質系 2回 〔0,
6)lE7
」匸S 鳶 69m・
相 当 品 i’
欟ン
エ マル ン ・1
主 材 (L4} i (且
.
5〜
2.
0) アク リル エ.
マルション 2回 {O.
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,, 主 材 上塗 (0.
5〜
0.
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.
…
」
ー
1
ー
I i iDl l l 川S 彑 6910 襖層 塗 材 防 水形 セ メント系フィ ラ
ー
〔O.
67) 溶 肢プ ラ イマ.
主材 下 吹 き1主 材上 吹き一
(O.
11, : (L鹽
5〜
1,
8) 1 ⊂1.
2〜
L.
5) ウレタン エナ メル {o.
圏 ) 1 1 」 ID2F
I
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ル シ〔0ョ
,
8ン系)F
層
〃
卍
旨
〃
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エ ポ ギ ン シー
ラー
〔0.
18 } セ メ ン ト系 フィ ラー
(0.
5η 脚 溶 渡 プ ラ ィ一
マ
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〃
〔0,
1D.
厂
.
D4 「.
.
セ メント系フィ 1エポ キ シ シー
ラ ラー
〔0.
67).
一
〔0,
18⊃碧
聯
、 ,i
署黥
, ウ レ タン エナ メル 2回 【D.
28) D5J 給 島 69m 1エポキシ シー
ラ 弾 性 単 眉塗材 i−
〔0.
18}エマ
i ル シ・
ン系i 凋整材 〔0・
9, ii
主 材 2 回’
(L卜 L5 )一
FIJi5 昼 69且0 禍 層堕材E シ ラ ン系プ ラ イマー
L (0.
5} ラー
(0,
57) 1 セ 〃 卜系フイ 1ア ク ワ ル エマ
ル シヨ
ン (0.
15) ‘1.
4〜
1.
7) ア ク リ ルエマ
ル ショ
ンL 2回 (0.
4}…
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”
〃
ヴ
lF3”
シ ラン系 プラ イマー
1 (0.
5)”
ア ク リル溶 液シー
ラー
(0、
2)”
ア ク リル溶 液 2回 (O・
召, 1 複 層 系 (F〕 しiF41”
”
”
1”
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「
i IIF51”
エポ キ シ ンー
ラー
〔0.
5)摩
”
11
”
〃
「
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I
」 」IS 晶 5910 阻 層塗材 防 水形一
液エポ 串シ系 プ ラ イマー
,
5) シリカ 系フィラー
1 【0、
5」一
液懈
系一
。 、、 F 弾 性アク リル シリコン系 1エ
マ
ルシ ・ ン2回 〔O・
25肩‘
2 lS2iJIS 鳥 6910 裡層塗 材SL解
配
q.
o) アク リ丿レ エ 7 ル2ヨ
ン2 12購 ’
ヨ
陶 1擢
シラン系プ ラ イ マー
L 〔o.
5〕 シリ カ系フィ
ラー
2 (0.
67) 澪液 系シー
ラー
1 〔o,
2) (L5) シ雪
甜
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制
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亅IS ^ 691D l 相 当 品 シ ラン系プ ラ イ マー
2 (o.
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セ s78〃
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セ メ ン1・
系フィ ラー
(o.
67) 〔L鹽
0〜
1・
2, : 〔0・
8〜
1・
0〕i
i S9・
i
〃
擢
層
ρ
1 1 r 卩 」 ) 内 は使 用 甜 Cka/m:
〕 注 〕 〔 S3,
S41ま使用材 料が同じ.
D4 は,
シー
ラー
箆 りの前に,
フィ
ラー
を塗り付 けた.
一
18
一
ラ
ー
, エ マ ル ショ ン系下地調 整 材の仕 様の ほ か,
セ メン ト系フ ィラー
の下 塗と して シ ラン系の 浸 透性プライマー
を使用 し た。
仕上 塗材は,
試 作 品を含めて リ シン系 塗 材 (L
系 )3
種, マスチッ ク系 (M
系 )1
種,
複層系 (E
系 )5種, 弾 性 系 (伸 長 形,D
系)3
種で,
下 地 処理 と 組み合わ せ た 20種の仕 様で実験を行っ た。 な お,E
系 の トッ ブコー
トは主 とし て, ア ク リルエ マ ルショ ン であ る。
シ リー
ズ 2 は, 複層仕上 塗 材 (F )系 (5種 〉とALC
専用と し て各 社で開 発され て い る通 気 性 仕 上 塗 材 (9
種)であり,F
系の トップコー
トは使 用 実 績のある 溶液系も加え た仕様で ある。
な お,そ れ ぞれ の仕 上 げの試 験 体 (仕 上 げな し を含む) は シ リ
ー
ズ 1,
シ リー
ズ2と も各 試 験の普 通品,
撥水品 のALC
そ れ ぞれにつ い て 2体ずつ 作 製し た。
2.
2 実 験 方 法 こ こ で は,
寒 冷地にお け るALC
外 壁 仕 上 げの劣 化 を 再 現 す る2
種類の 凍結 融 解 試 験 と,
仕 上 げ を 行っ たALC
壁の透 湿性お よ び透 水性を評価する新し い試 験 方 法を行っ た。
従来,
透 湿 性お よび透 水 性は,
仕 上 げ材の みの性質 を 評 価 す る方 法が行わ れ て いた が,ALC
外 壁 を考え る と下 地の吸収に.
よ り仕 上 げ層の性 質が変わ る こ と,
ま た は仕上 げ材が 入 り込むことに よ り下 地 層の性 質 が変わ ること な どの 影 響 が あ り,
ALC , 下地 処理お よ び仕上 げ材を全 体的に と ら え ることが必要であり, 以 下 に示す よ う な実 験 方 法 を 行っ た。
透湿試験…
試 験体は15
×15
×5cm
で,
図一
1に示 す よ うに, 深さ25mm 程度の蒸 留 水を 入れ た ア ク リ ル 樹 脂 製 容器に仕 上 げ面 を上に して配 置し,
端 部 をシー
ル し た後, 20℃, 60% の恒 温 恒 湿 室に放 置 し,
重 量の減 少を測 定し た。
容 器の中の蒸 留 水は蒸 発し,
ALC 内部に含水 率こ う 配を与え仕上 げ を通 過す ると考え られるが,
放置直後は,
ALC 内部の含 水 率 分 布が一
定と な らない た め,
単 位 時 間 当た りの重 量 変 化がほぼ一
定の値になっ た時 点 を実 験 の開始 時 点と し た。
標準透 水 試 験…
JIS
A
6910 (複 層 仕上 塗 材 )の試 験 方 法に準 じ たもので,
図一
2に示 す よ うに水 を仕 上 げ 材 表 面か ら250mm まで入れ,
水 頭の下りを読む方 法であ る。 実 験は 1週間まで継 続し,
測 定 は24時 間Clとに行 っ た。 試 験 体 形状,
放 置 条件は透湿試 験と 同様であ る。
加圧透水試 験…
図一3
に示す よ うに標 準 透 水 試 験の 水 頭 を 大 き く し た もの で, 試験体形状,
放置条 件は標 準 透 水 試 験と同 じ と し た。
シリー
ズ1で は,
加 圧 透 水 試 験 の水 頭は標 準 透 水 試 験の約 6倍である が,
シリー
ズ2
で は, こ の ほ か に約 3倍の水 頭の実 験 も行っ て いる。 片 面凍結 融 解 試 験…
外壁 が 室 内側か ら水 分 を 供 給さ れる条 件 を 再 現した試 験 方 法であり,
試 験 装 置は図一
4 1仕.
しげ面1 ア月
ヘニ
ニ
ー
ム
齪 AしC試隙 体 テー
ア・
【i5Xi5〆5咀
〕エ
ボ ギ シ接着 材 ンー
リ ング材一
囓
豐
水バ
γ
ク7,
プ桝 ア ク リル
樹脂 展 宕 器 図一
1 透湿試 験 方 法 顕 鵬 ト シー
リ ン グ材 On開
「
.
ALC 試験 体.
「
圏
図一
2 標 準透水試 験 凶:
01SO
3D 図
一
3 加 圧透 水 試 験 刀 {t上げ面 …三
A・ ・試畷
ギ
3 }1
〜1
昌 〜! l 〒 水一
25 凍 結 融 解 槽 (十 5目
C〜−
2D囗
C} 水櫓35℃ (一
定 ) 図一
4 片 面凍結 融 解 試 験 20 15 10 単 位 面 積 あ た り の 透 湿 量 5ヱ
へ
x10 π /)
L系 (普 通 品1 L2 L4 し3 Ll L5 00 2 25 20 15 10 5 L系 (掃 水 品 ) L2L4 L1B 蘆 50 5
0 5 1
1 位 面 積 あ た り の 透 湿 量
(
・ ぴ ・ / ) 10 20 30 0 20 15 10 5 10 20 30 図一
5 10 20 100 工0 20 30 5 D系 (普 通 品 ) D系 (田 水 品 ) Ds Dl D2 D3 Dl DZ D4 04 Ds O 10 20 300 エ0 20 ao 経 過 日数 経 過 日 数 仕上塗材別の透湿 量の変化の一
例 (シ リー
ズ1)に示す よ うに室 内側 を想 定した下 部の水 槽 と屋 外 側 を想 定し た上 部の凍 結 融 解 槽か ら成り
,
試 験 体は こ の 2つ の 槽の間に置かれる。 試 験 体の形 状は 30x15 ×5cm で あ り,
凍 結 融 解 槽は一20
℃ か ら十5
℃ まで凍 結18
時 間,
融解6
時間の条件で凍結融 解が繰り返 さ れ,
試験体の下 部は雰囲 気 温度が 25℃ と な る よ うに水槽 内の水 温 を35
°
C
に保持し た。 実験は28
日間継続し,
仕上げ材表面 のふ く れ,
は く離を観 察し たe 全面 凍 結 融 解試験…
外 部か ら水が供 給さ れ, 凍 害が 発 生す る条件を再 現 し た試験 方 法で あ る。 試 験 体 形 状は 30×15× 5cm であり,30×15cm の面に仕 上 げ を行っ た。
シ リー
ズ 1で は側 面と側 面に近い裏 面 をエ ポ キシ樹 脂 塗 材で密 封した が,
ALC の材 質 として の耐 凍 害 性が 劣っ て いること から,
開 放さ れて い る裏 面からの吸 水の 悪 影 響が生じ た。 この た め,
シリー
ズ2で は,
この開 放 部 分を小さ く し (4×4cm 角,
2 ケ所〉,
かつ こ の 部 分 に撥 水 材の塗 布 を行っ た。
ま た シ リー
ズ2
で は密封す る 材料として シリコ ン シー
リン グ材 を 用い た。
試 験条 件はASTM
C
666B
法 (気 中 凍結水 中融 解試 験}に準じ た もので,− 20
℃ か ら +5
℃ まで1
日5
サ イクル の凍結融解を繰り返す もの である。
実験は70サ イクルまで継続し,
仕上げ材表面の ふく れ,
は く離を観 察し た。3.
実 験結 果の概要 今回の実験で は,
シ リー
ズ1と シ リー
ズ 2の実験結果 は異なっ て お り, これ は, 試 験 場 所, 試 験 条件,ALC
板の製 造日の違い などに より生じ た もの と考え られ,
同一
レベル で の比 較は で きな い。
試 験 条 件は特に大き な影 響 を与えて いる と考えられ,
全 面 凍 結 融 解 試 験では裏 面 処理 の影 響が大き く出て いる。この た め,
こ こ では シ リー
ズごとに実 験結果 を紹 介 す ることにす る。
透湿性 透湿試 験の放置 日数に伴う透湿 量の変化の一
例を図一
5お よ び 図一
6に示す。 重 量の減 少量 は仕上 げの種 類に よっ て大き く異なり,
し ば ら く放 置 する と重 量 変 化は ほ ぼ一
定の値と なっ て い る。
こ こ で は放 置14 日か ら30
日 まで の透 湿 量の測 定か ら下 式に より透 湿 度を求め,
透 湿 性の指 標と し た。 透湿 量が定 常と なっ た段 階 以 降に おける透 湿 量 (9) 透 湿度 (9/m2・
h
)=
:
試験 面 面積 (m2 )×放置 時 間 (h
)・
…・
・
一 ・
………・
………・
…
(3−1
) (シ リー
ズ1 > リ シン (L
)系で は,
仕上 げの仕 様に よる差が大き く,
特に下 地 処 理によ る差が表れて い る。L2 ,
L
4のセメ ン ト系フ ィ ラー
の仕様で は,
エ ポ キシ系シー
ラー
を下 塗 り し た場 合 も含め て無 処 理 板の 50−
70 %の水 分 を放 出 して いるの に対 し,
エ マ ル ション系 調 整 材 を用いたもの一
20
一
匚
凵
05 印 位 面 概 あ た り の 遇 醒 量
〔
灘 R /)
漏
ノ
P系 { M晶 〕 151
/h
:
i
:
1
ぞ
0 10 2D ヨ)D 10 乞〕 30 経過 日眩 縫過日 践 図一
6 仕 上 塗 材 別の透 湿 量の変 化の一
例 (シ リー
ズ21 60甜
蓑 肚 40t5ee
9 0一
幌過日
腔 tiAHfi匸 図一
ア ALC 下 地のみ の標 準お よ び加圧 透水 量の変 化、
(シ リー
ズ 1) 噛e go 0530252015 透 水 量 ) 耐 L系 惜 通 品 ) L4 /.
.
・
・
”
L1’
r,
ノ
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且o ノ し3 5tt
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・… 5003252e1510 筆 R(撥 水 品 )/
L4 L2 / 〆二
1
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1
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…
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L5−,
.
.
_
・
一
・
一
・
−−
百 Ol234507012 昌 5567 繧 過E 数 経過日数 図一
8 仕 上 げ材 別の標 準 透 水 量の変 化 (シリー
ズ 1,
L系 ) 140135130 石 20 些0 35 30 透 水 量 20505 L系 〔普 通 品 )厂
ノ L440 籥 30 鮪 初 4035 罰 2520505『
,
! 012345670123 ‘・
567 経 過 日 数 経 過 日 数 図一
9 仕上 げ材 別の加圧透 水量の変化 (シ リー
・
ズ 1,
L系)譱
:
i
飄
il
012345670t 経 過日数 図一
10 仕上げ材別の標準および加 圧 透 水 量の変 化 〔シリー
ズ 2,
普通品F系 ) ?系、
加 圧 透 水 (5倍 } F2冫・
9
,
Fミー
≡
と
葱
一 2 3 4 5 5 7 経 過日数で は, そ の透 湿度が無
摯
理板の 15% 程 度に まで低 下し,
複 層 (E
) 系の透 湿 性に ほ ぼ 匹敵す る値と なっ ている。
一
方 ,D
系は単層塗 材を含めて透湿度は低く,
いずれ も 無 処理板の場 合の 10%以 下の値を示し てい る。 (シリー
ズ2) 複 層 仕 上 塗 材 (F )系で は,
トッ プコー
トに よ る差が 見ら れ, 溶 液 系の トッ プコー
トを もっF3
,F4
,F5
の透湿 性が,
エ マ ルショ ン系の トップコー
トの もつFl
,F2
の透湿性よ り低 く な っ て お り,
溶 液 系の トッ プコー
トの効 果が認め られ る。
透 水性ALC
下地の み の試 験 体の標 準お よび 加 圧 透 水 量の変 化を 図一
7に示す。
標 準透水試験で は, 普通品の 7日間 の累 積 透 水 量が普 通 品の値の約6
倍と な る が,
加 圧 透 水 試 験では,
逆に撥 水品 が普通 品の約4倍の透 水量 と なっ た。ALC
撥 水 品は内 部に水が入 っ て も, 小さな穴の部 分に水が入りに く く,
大きな穴 をつ な ぐ連 続 的な水 路 を 形 成する こと が考え られ,
こ れが加 圧 透 水の透 水 量を大 き く して いる と考え ら れ る。 この よ う な部 分 的な一
種の 水の集 中は,
凍 結 融 解な どで水が試 験 体の中に押 し込ま,
れ たALC
撥 水 品の破 片が 吸水さ れて いない5〕こと か ら も確認で き る。
仕 上げ を行っ た試験体につ いて, 標 準 透水試験お よ び 加 圧 透水試 験の放 置日数 に伴う透水量の 変化の一
例を図一8,
図一9
お よ び図一
10 に示す。 こ こ で は,
ALC 下 地の み の場合と異な り,ALC
普通 品と撥水品の差は ほ と ん ど認め ら れ ない。 透 水量の 変 化は仕上 げの種 類に よっ て異な り,一
定の こ う配の直 線と な ら ない もの も あ る。 この た め,
こ こ では透水の程度を表す指標と して7
日間の透 水量 (標 準透 水量 お よび加圧透 水量)を 用い る こ と と した。
(シリー
ズ1) リシン (L
)系の 7日間の累 積 透 水 量は,
仕 上 げ材の 仕 様に よる著し い差が見ら れた。 こ こ で,
L2〜
L4 は 主 材が同一
であり,
この 3つ の仕 様 間で見ら れ る透 水 量 の差は下地処理方法の相違 に 起因して いる。 エ ポキ シ系 シー
ラー
を下 塗り し た場合も含めて,
セメ ン ト系フ ィ ラー
で処 理し た場 合に透水性が大き く,
エ マル ショ ン系 調 整 材を用いた場 合には,
標 準および加 圧 透 水 試 験の場 合とも著し く透水量が小さい結果と なっ て いる。 こ の ほか,
複 層 (E
) 系で は,
塗 装 仕 様による差が大 き く,
弾 性 (D
)系の透 水量 は ほ かの仕 様と比 較して特 に小さ く,
またマ ス チック (M )系も透 水量 は 比較 的 小 さい値で あっ た。
(シリー
ズ2 ) F1,
F 2の ような透 湿,
透 水 性がある仕 上 げ材にお い て セ メ ン ト系フ ィ ラー
の下 塗りとし て シ ラ ン系 プライ マー
を 使 用し たF1
の標 準 透 水 量は,
同一
の仕 上 げ塗 材 で プライマー
を用い て いないF2 より低 く, シ ラン系 プ ライマー
の撥水の効 果が確 認でき る。
しか し,
加 圧 透 水 試 験で は その差は さほど な く,
圧 力による水 分 移 動が生 じる よ う な場 合の撥 水 性は概して減る傾 向 を 示し,
撥 水 パ ネル と同 様な 配慮が 必要と考え ら れ る。 この ほ か,
メー
カー
仕様通 気 性 仕 上 塗材では,
透 湿性 と同様に, 透 水性の機能は必ずし も同一
では な く,
製 品 による差が大きい傾 向と なっ ていた。
凍 結 融 解に よる劣化 片 面 凍 結 融 解 試 験およ び全 面凍結融解試 験では, 仕 上 げの劣 化 が 観 察さ れ,
その程度お よび 発 生の サ イクルは 仕 上 げの種 類に よっ て異なっ ていた。
こ こ では,
実 験 終 了後 (片面凍結 融 解試験の場合は28
サイクル後, 全面 凍結 融解試 験の場 合は70
サイクル後 )に お け る仕 上 げ の劣化 面積の割 合 (劣化 面積 率〉を劣化の指標と し,
透 湿性, 透 水性と合わ せ て表一
3に示す。
(シリー
ズ1) 片 面 凍 結 融 解 試 験に対 し て は透 湿 度の高い リシ ン(L > 系の L2,
「
L4,
複 層 (E
)系のEl,
E2 , E4,
マ スチッ ク (M )系のM2 の仕上 げの抵 抗 性が優れ,
透 湿 度の低い仕 上 げ材の劣化が 目立っ て い る。
全面凍結融解 試 験で は,
片面凍結融解 試験で優れてい たL2 ,
L
4,
E2
は劣る結果と な り, 透 水 性が低く, 透 湿 性も低いL
1,
L3・
,
E
3などが比較 的よい結果を示してい る。
(シ リー
ズ2) 複層仕上塗材 (F
)系,
メー
カー
仕様通気性仕 上塗材 (S
)系と も,
普 通 品の片 面 凍 結 融 解 試 験 結 果が わ り に 良 く,
撥 水 品での 劣 化 が や や 目 立っ て いる。
全 面 凍結融解試験に おい ては,
試験 条件の影響,
特に 試 験体の裏 面 処理 が結果に大き く影 響を 及 ぼ してい る。
仕上げ を 行 っ たALC
で全 面 凍結融 解試験 を行う 場合,
試 験 条 件が重 要で あり,
完 全に ALC を 密 閉 すると防 水 性のあ る仕上げ材が必 ず よい結 果と な る。し か し な が ら,
実 際に は隅 角 部な ど が弱点と なり,
試 験結果が施工時の 欠 陥に依 存す ることにな る。 ま た,
仮に完 全 密 閉で試験 を した場 合,
凍結 融解に よ る試験体 内部の空気の 膨張・
収縮が仕上げ材の は く離に影響して し ま う。
片面 凍結融 解 試験,
全 面 凍 結 融 解 試 験とも,
非 常に厳しい条 件に よ る促 進 試 験であ ること か ら,
試 験 体の ほ んの 少しの欠陥 やピンホー
ル部が劣化を促進さ せ ること が考え ら れ る。4
.
考 察 下地 処 理の効 果 図一
11 は,
シ リー
ズ 1に つ い て透湿度の結果 と とも に,
主材が 同一
の仕様につ い て, 片 面凍結融解 28サイ ク ル後の仕 上 げの劣 化 面 積の割 合 を 下 地 処 理 別に示 した もの である。
透 湿 度の高い リ シン (L )系の L2,
L4,
複 層 (E )系の E1,
E2,
E4 やマ スチッ ク (M )系 のM2
で片 面 凍 結 融 解 試 験に対 する抵抗 性が優れ,
透湿i
(一
一
一
3 実 験 結 果の概 要 リ ズ シ1 2 ALC 普 通 品 水 品 普 通 品 擁 水 品 分 類 仕 上 げ材 の記 号 簸 処 理 リシ ン系 〔L) マ スチツ ク系 (M) 複 層 系 (E) 弾1生系 》 12345 LLLLL12MM12345678 EEEE 巳 EEE12345 DDDDD 無 処 理 リシ ン系 〔L)
マ
スチッ ク系 (M ) 祖層系 (E) 弾 性系 (D ) 12345 」 LLLL12MM 里 2345678 EEEEEEEE 互 2345 DDDDD 無 処 理 複層系 (F} 複 層 系 〔S) 12345 FFF冒
」
F123456789 SSSSSSSSS 無 処 理 誼層 系 (F) }Ane系 (S} 12345 FF謄
rFF123456789 SSSSSSSSS「
透 湿 度 (9!mt・
h) 4.
91o.
923,
410.
793、
400.
B2 毘 田 111.
411200,
闘 L561,
151,
280,
502.
24 認 354142 鵠 000004.
TOe.
913.
510.
TO2.
400.
537305111.
3巳 1.
070.
T8L661.
141.
230,
631.
94o.
3To :訂 o.
440.
360,
274.
751.
502.
521.
511.
11L121.
SgL991.
052.
480.
671.
652.
詑 2.
242.
躑 5.
511.
611.
巳11 」7L29120L792.
351.
102,
370.
741.
942.
n2.
563.
50 T日間の 標 準 透 水 量 (mの ll4.
0519.
0223,
401.
7735.
752.
S5068221署
50器
66酷
02242125 1 84519 L4254 000001s.
1716,
80 工8,
122 』435.
814.
94646911o.
912.
oo3.
423.
281.
3913.
2B2.
235.
3T42 了 6 & 24255 00000172.
108LO93 12898 240001.
073.
926.
303.
502.
523.
3028.
291.
3548.
OB70.
402.
554、
o! O.
631.
050.
661.
073、
5117,
033.
823.
063.
2826.
481,
076.
02 7日 間の加 圧 透 水 跫 (旧e) 6 倍 圧 369.
T 39.
75.
014 ?.
06.
638452796 4459 136.
810085 131221469.
2 132 臼 23°
°
°
225733
.
16 3 166352333 3462 L 21.
033,
9 6騒.
3 25091 12122 5.
155.
252.
402.
501.
80 1.
75 7.
90 5,
03 5.
7S 2.
1046.
65246.
25 8、
58119.
85 5.
506.
901.
651.
882.
252.
454.
853,
385.
302.
15154.
50117,
7512.
5896.
48 3 倍 圧 298.
904.
905.
45 監.
683,
652.
7500GD 甜 3045 % 987040 25530320404 餌 1417.
go03 お お 1578 44121 2,
30 4.
70 5.
30 8.
28 4,
50 4,
8029.
45 4.
95212.
90 片面 凍結 融解試験28サイクル後の f±上 げの劣 化 面續の竇lj含 (% , o 1 8 88 巳刮
{く ( ( ( 88 ( ( ( ( { 鄙 o soffe = =
=san100 88 8qO (
.
.
一
,
⊂陰
【−
it_
_
1 ε団
3B 的 脚下
〔 浮 〔一 22 一
性の低い 仕 上 げの仕 様で劣 化が目立っ て い る
。
仕上塗 材 自身の透 湿 性が高い場 合,
塗 材 層の透 湿 性は下 地 処 理に よっ て 支 配さ れて お り,
図一
11に示す よ うに シ ラン系 プラ イマー
やエ ポ キシ シー
ラー
を 下塗りし た場合を含め てセメ ン ト系フ ィ ラー
を用い た仕 様で片 面 凍 結 融 解 試 験 によ る劣化が少な くなっ て い る。
し か し,
弾 性 (D) 系 では 塗 材層の 透 湿性が き わ めて低い にもか か わ らず, D 1,D3
な ど は片 面 凍結融 解 試 験に よ る劣 化が少な く なっ て いる。
図一12
は,
シ リー
ズ 1につ い て加 圧 透 水 量と全 面 凍 結融解70
サ イク ル後の仕 上 げ劣 化 面 積の割 合 を示し た もの で ある。
全 面 凍 結 融 解 試 験で は, 片面凍結 融解試験 で優れて いたL2,
L
4,E
2は逆に劣る結 果と な り,
透 水 性が低く,
透 湿 性も低い,L3 ,
E
3
な どの結果が よ り優れ た結 果と な っ た。
こ の ため片 面 凍結融 解 試 験の 場 合 とは逆に,
下 地 処 理と し て,
セメン ト系フィラー
を 用い た仕 様で劣 化が 目立ち,
エ マ ル ショ ン系下地調整 材 を用いた仕 様が一
般 的に健 全であっ た。
ま た, シ ラン系 プライマー
を用いたM2,
E1 の結 果 も良く,
D系の塗 装 仕様は,
透湿性,
透水性が低い に もか か わ らず,
特に 撥 水品の劣化 が 認 め られ た。
透湿性と透水性の関係 各 仕 上 げの透湿度と7日間の標 準透水量 ユロ ロ s 劣謹
髷
、
婁
顰
s°,
5
(%)、甲 2 ど o o し3 ピコ ほ し4 E4 o] しヱ E2 Dl H2 Ei ロ ロ ua しら E4 じヨ しヱ ヒヱ Ol H2 Et
工 磁 靜 嘩 奨 セ 彡擘 窺 箏
一
穐 鰯 ・聖 婆 ・ 粥 鱈 蓴ギ季一
透湿 度 丶 劣化面 租 寧\
、 (a ) 普通品 (b ) 掏 水 品 図一
11 下 地 処 理 別の透 湿 度 と片 面 凍 結 融 解28サイクル後の仕 上げの劣化 面積の割 合 遣 湿 度 Ioo ■50 7 1《。 日 劣 間黛
iil
量 o o (川Du m b] L4 E4 Ol ロ
ロ
ほ
HZ ET u m Dl L4 E4 D3 IJ ロ ma H2 Elセ 碧 鋒 工 鶉 郵磁 弖瀞妾;ギ季
.
e ;:S ・
工
糞 婆工 雫編 薊杉 ;葎儕
王
丶 (E /・
h } (e」) 管 通 品 〔b〕 撥 水 品 図一
12 下地 処 理別の 7日 間の加 圧 透水 量 と 全 面 凍 結 融 解70サ イク ル後の仕 上 げの劣化 面積の割 合 7 日 1胡 の 標 坦 遡 水 量 (m の 図一
13 各 仕上 げ材の透 湿 度と7日間の標準 透 水量 の関 係 の関 係を 図一13
に 示 す。
こ こで,
透 湿性 と透水性の相対 的な関係か ら仕上げ材を仮 に次の よ うに 4つ のタイ プに分類す ること ができ る。
・
タイ プ1 透湿 性が大き く,
透水 性の 大きい仕上 げ ・ タ イプ2 透 湿 性 が 小 さ く,
透 水 性の 大きい 仕 上 げ・
タイ ブ3 透 湿 性 が 大き く,
透 水 性の 小さ い仕 上 げ・
タイプ 4 透 湿 性が小さ く,
透 水 性の 小さい仕上 げ な お,
この分 類は今 回の実 験結果に基づ い たもの であ る が,
分 類の境 界,
分 類 方 法 は便 宜的な もの であ る。ALC
の外壁仕上 げの選定には,
外壁の部 位,
環境条 件を考 慮して決 定 する必 要がある。 少な く とも,
外 壁は風 雨に さ ら さ れ る た め,
透 水性が あ る程 度 小さ な仕上 げ が 必要で あり,
タ イプ 3お よ び タイ プ4の よ う な仕一
ヒげ が望ま し い と考え られ る。
さ ら に, 海岸など劣化物 質の浸 透の可 能 性が考え られ る場 合に はさ らに小さ な透 水 性が必 要とな り,
タイプ4 の 中で も特に透 水性の小 さい弾 性 系 (D ) の仕上 げの使 用 も考え ら れ る。 こ のD
系は タ イプ4の 中で も特に透 湿 性,
透 水性が 小 さ く,
タイ プ4の ほ かの仕 上げ と は区別し』
て取り扱う 必要が あ る か も しれ ない。 内 部 結露 な ど に よ りALC
内部に 水 分 が 蓄 積す る可 能 性の あ る場 合,
タイ プ3
の よ うに透湿性の大き な仕 上げ を 用いる 必要が あ る。 こ の場 合,
仕上 げにど れ だ けの透湿 性が必 要であ る か は不 明で あ る が,
透 湿 性 の小さい仕 上げ を 用いる と,
カ ビ,
凍害,
仕 上 げの膨 れ な どの被 害 を起こ すこと が報 告され て い る。
ま た, 外壁の室 内側に防 湿層を設ける など, 設 計 上の工夫も必 要で ある
。
透 湿 性, 透 水 性と凍 結 融 解に対す る抵 抗 性ALC
外 壁の凍 害の 多くは,
壁 体 内部に水分が蓄 積す る ことによっ て生じ て い る。 外壁 仕上 げの凍 害に対する 保 護 機 能 を考え る場 合には,
外 部か らの水に対 する抵 抗 性と壁体内 部へ の水の蓄 積しに く さを考慮し な くて は な ら ない。
この外 部,
内 部の水の問題 は仕上 げの透 水性と 透湿性に大き く関 連す る と考え ら れ, ここ では凍結融 解 試 験の結果 とこれ らの 関 係 を比 較す る。
図一
14は, 各 仕 様の試 験 体の透湿度と 7日間の透 水 量の関 係に, 凍 結 融解試 験に よ る仕 上 げの劣 化の程度 を 合わ せ て表 現した もの で あり, (a >は全 面 凍 結 融 解 試 験の場 合であり,
(b
)は片 面 凍 結 融 解 試 験の場 合である。
遡 湿 度 {s / 扁・
h, 選 湿 度 c6/・
h , 7 日 間 の 標 焔 遣 水 配 (m2 ) fa)全面庫結融 解試験 図一
14 7日
固1の
棚 箪 遡 水 燈 (mA ) 〔b) 片 面 凍 結 融 解 試.
験 各仕上 げ材の透 湿 度お よ び透 水 量と凍 結 融解 試 験にお ける仕 上 げの劣 化の程 度の関係 こ こ で行わ れ た凍 結 融 解 試 験は試 験が難 し く,
小さ な条 件の変化が結果を大き く変え るもの であ る が,
全 体 的に み る と次の よ う な傾 向が認め ら れる。 (a >全 面 凍結 融 解試験 タイプ1 (透湿性,
透水性と もに大き な仕上 げ)で は,
ほ と ん どの試 験体につ い て大き な 劣 化 が 認 め ら れ る。
こ こ で, 健 全な試験体は 2 体認め られ.
る が, こ れ らの仕上 げ と同じ仕 様の試 験 体は大き な劣 化 を示して お り, 劣 化 が起こ る か ど うか の条 件が微 妙な もの であること が分か る。 タイ プ3
(透 湿 性が大き く,
透 水 性の小さな仕 上 げ ) で は,
劣化と健 全の試験 体が混在し,
明確な傾 向は認め ら れ ない。 しか し な がら,
透 湿 度が ある程 度 大き な部 分 で透 水 量の特に小 さい部 分 (図一
ユ4
(a ) の点 線より左 側の部 分 )で は,
劣 化の割 合 が特に小さ く な っ て い る。
こ れ は全面凍結 融 解 試 験に おける劣 化の 限 界 透 水 量が3
ml /7日程度で ある こと が考え られ る。
タ イプ2 ,
タ イプ4 〔透湿 性の小さい仕 上 げ)で は, 劣化と健 全の試 験 体が 入 り組 み,
明確な傾 向は認め ら れ ない。
こ こで,
一
般に全 面 凍 結 融 解 試 験に強い と考え ら れ て い る透 湿 性,
透 水 性の特に小さ なD
系に つ い ても 明 確な傾 向は認め ら れ ない。
これ は,
仕上 げ材の性 質とい う よ り は試験 条 件,
試験 体の裏 面 処 理 また は ピンホー
ル などの 欠 陥の影 響と考え られ, 透 湿 性の小さ な仕上 げは特に こ れ らの影 響が大きい もの と考 え ら れる
。
(b
) 片 面 凍 結 融解試験タイ プ4 (透湿性, 透 水 性と もに小 さい 仕上げ )は
,
片 面 凍 結 融 解 試 験に弱い と考 え ら れ, 実 際に劣 化の割 合が大 きいが,一
部の試 験体は まっ た く健全 な もの も認めら れ る。
これ らの健 全な試 験 体は,
試 験 条 件 の ほ か に下 地 処理 に よっ て仕上げ材 裏 面に 水が溜 まりに くい状 態に なっ て いる か,
ピ ン ホー
ル等によっ て水が逃げ や すい 状 態と なっ て いることが 考え ら れ る。
タ イプ
3
(透 湿 性が大き く,
透水性が小 さい仕上 げ}は, 仕上げ材裏面の水 分の蓄 積 を押さ え, 片面凍結融 解 試験にお け る劣 化は少な く な る と考え ら れ る。 こ こ で,
こ の タイ プの 中に劣 化の程 度の 大き なもの が 数 多 く認め ら れ るが, タイ プ4
に 比べ る と 劣 化の程 度は小さ く なっ てい る。
こ こで の 劣 化は,
試 験 条 件の影 響が考え ら れ, 融 解 過 程におい て試 験 体 上 面に水が溜 まり,
こ一
24
一
れ が水分の放 出を妨げている こ と も考え ら れ る
。
タイ プ1 (透 湿 性,透 水 性 と もに大 きな仕 上 げ )では,
健 全の試 験 体が多い。
こ こ で も,
大きな劣 化 を示すもの が認めら れ る が, そ の割 合は タイプ 3と比べ て も少な く なっ て い る。
タイプ 2 (透 湿性が小さ く,
透 水 性の大きな仕 上 げ ) では, 劣化の割 合が特に多く, 同じ仕様の試 験 体 2 体の う ち,
必ず1 体は50
%以 上の大き な劣 化 を起こ し てい る。
以 上の よ うに, ALC 外 壁 仕 上 げの耐 凍 害 性は, 片 面 凍結融解試 験 と 全 面凍結融 解 試 験で その評 価 が 大 き く異 な り, 使用 する環 境 を考 慮 した仕 上 げの選 定が重 要で あ る こ と が理 解で き る。
5.
ま とめ こ こ で の成 果 を 要 約すると以 下の ようになる。 (1) ALC 外壁仕上 げ を 想 定し,
仕上 げの耐凍害 性 評 価 試 験 方 法と して屋 外 側か ら水が供給さ れ る条件を モ デ ル化し た全面 凍結融解試験お よび室内側か ら水 が供給さ れ る条 件をモデル 化し た 片面 凍 結融解試 験 を 提案 し た。
ま た,
仕上 げ を行っ たALC
外壁を全体と し て評 価す る 透 湿試 験お よび標準透水試験,
さ らには凍結時に水が押 し込ま れ るこ と を考 慮し た加圧 透水試験を 提案し た。
(2) 仕 上 げの ないALC
の みの透 水 試 験に おいて,
標 準 透 水 試 験の場 合,
普通 品の方が撥水品よりも透 水の程 度が 大 きいが,
加 圧 透 水 試 験の場合,
逆に撥水品の方が 透 水の程度が大き く なっ た。 (3
) 仕 上 げを行っ たALC
の透 湿 性お よび透 水の程 度 は, 仕 上げの種 類およ び 下地 処理方 法によっ て大き く影 響さ れ る。
(4> 片 面 凍 結 融 解 試 験また は全 面 凍 結 融 解 試 験にお け る仕上 げの劣 化は,
仕上 げの種 類に よっ て大きく異な る 傾 向 となっ た。 また,
これらの試 験 方 法は,
試 験 条 件,
試 験 体の補 強 方 法,
ピンホー
ルな ど の影 響が大き く,
試 験 体 間,
シ リー
ズで の結 果の ば らつ き が大きい。
(5) 下 地 処 理は,
透 湿 性,
透 水 性だけでな く仕 上 げの 耐 凍 害 性に大き く影 響し,
こ の影 響は透 湿 性,
透水 性の 大き な仕上 げほ ど著しい。
(6)ALC
の仕上げは,
透 湿 性と透 水 性の 大 小 関 係か ら4つ の タイ プに分 類 する こと がで き,
全体 的傾向とし て, 片 面 凍 結 融 解 試 験の場 合につ い て は 透湿 性の大き な 仕 上 げの劣 化が少 なく,
全 面 凍 結 融 解 試 験の場 合に つ い て は透 水 性の小さい仕上げの劣 化が少な い傾 向となっ た。
あ とがき 本 研 究は,
ALC 建 築の寒 冷地で の仕上 塗 工事の適正 化を目的とし て北 海 道 建 築 指 導セ ンター
内に設け ら れ たALC
下地 吹付工法 委員会の活 動の中で行わ れ た も の で あ り,
関係諸 氏に感 謝し ま す。
参考 文 献 1> 鎌田英 治,
大 楽 隆男,
干 歩 修,
田 畑 雅 幸,
三森 敏司,
村山 豊 :ALC
下 地 仕 上 塗 材 施 工 法の適 正 化に関する研 究 (そ の1〜
そ の 3),
日本建築学会学 術講 演 梗 概 集 (北 海 道), A分 冊, pp.
375・
−
376, 昭和−
61年8月 2)三森 敏 司,
大 楽 隆 男, 鎌 田 英 治, 田 畑 雅 幸:ALC 下 地 仕 上 塗材施 工 法 の 適 正化に関す る研 究 (その6.
下 地処 理 方 法と含 水 率の影響),
日本建築 学 会 学 術 講 演梗 概 集 (近 畿 ),
A分 冊,
pp.
209〜
210,
昭和62年10月 3>鎌 田 英 治,
田畑雅 幸 ;寒 冷 地の外 装 吹 付工事に関 する調 査 その2 欠陥につ いて,
日本建築学会大 会学術講演 梗 概 集 (東 北 ),
(構 造 系 ),
pp.
465〜
466,
昭 和57年10 月 4> 千 歩 修,
鎌 田 英 治,
洪 悦 郎,
田 畑 雅 幸 ;多 孔 質 無 機 材料の凍結 融解を伴わ ない 凍害 劣化と そ の評 価 法 (ALC を 中 心 とした凍 害メ カニ ズム の検 討),
日本 建 築 学 会構 造 系 論 文 報 告 集,
第367号,
pp.
23−
29,
昭和 61年9月・
5〕 千 歩 修,
鎌 田 英治,
洪 悦 郎,
田 畑 雅 幸 :多孔 質 無機 材 料の耐 凍 害 性 評 価にお け る既 往の試 験 法の適 用,
日本 建築 学会構 造系論文報告 集,
第 357号,
昭和 60年11月SYNOPSHS
UDC:691.32:666.973.6
EVALUATION
METHOD
OF
FROST
DAMAGE
FOR
EXTERNAL
SURFACE
FINISEZ]YGS
0F
Auc
BUILDiNGS
byOSAMU SENBU, ResearcheTef BuildingResearch
tute, Ministry of ConstTuction, Dr. EesIKAMADA, Prof. of HokkaidoUniy.,TAKAO TAMRAKU, AssoslateProf,
of Kushiro Cellege of Technology and TeSHM MIMORI
Instructorof KushiroCollegeof Technology,Members of
A,LJ.
ALC hashigh water
penetration
and high moisture penetration.In the case of usingALC
as a externai wall, surfacefinishings
areindispensable
toprotectALC.
In
cold regiori, some types of surface coatings aredamaged
by
freezing
and thawing.It
is
necessary toselect suitable surface coatingsfit
for
use condition.However,
this mechanism of deteriorationisvery compricated,because
water supply isnet onlyfrom
outside{thawed
water of snow or rain)but
alsofrom
inside(condensation).
In
this paper,following
two testmethods areproposed,
con-sidering external wall ofALC
buildings.
(1)
One sidefreezing
and thawing test;ALC specimens with surface coatings arefreezed
and thawedErom
ex-ternalside, and water issupplied
from
opposite side.(
2)
Allsidefreezing
and thawing test;one side ofALC
specimenhas
a surface coating and the ot]trersides are sealed.Specimens
are fTeezedinair and thawed inwater.Inorder to realize
basic
propertiesofALC
walls with surface coating,fellowing
threetestmethods areprop-osed.(
1
)
Moisture
permeabilitytest(
2
)
Waterpermeability
test(
3)
High-pressure
wateT permeabilitytestThese testmethods are adopted many types of surface coating, and
following
conclusion canbe
presented.(1)
Surface coatings withhigh
moisture permeabilityhave
smalldamage
for
one sidefreezing
and thawingtest,and surface coatings with