喫煙と
肺がん・COPD
熊本大学大学院生命科学研究部呼吸器内科学分野 熊本大学医学部附属病院呼吸器内科 興梠博次 有識者資料1肺がん(肺の悪性腫瘍)
顕微鏡で観察して,主に,腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌,小細胞癌に分類される。 現時点では,手術による切除が治癒可能な治療法である。
喫煙と関連のある肺がんは,扁平上皮癌,小細胞癌であるが,腺癌も可能性がある。
肺がん 細胞診による診断
扁平上皮癌
腺癌
小細胞癌
タバコ煙
を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで
生じた
肺の炎症性疾患
である。
呼吸機能検査で正常に複すこ
とのない気流閉塞を示す
。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性
病変が様々な割合で複合的に作用することにより起こり、進
行性である。臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢
性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状に乏しいこともあ
る。
日本呼吸器学会による「COPD(慢性閉塞性肺疾患): 診断と治療のためのガイドライン」第4版からCOPD: Chronic Obstructicve Pumonary Disease
(慢性閉塞性肺疾患)の定義
COPDの肺機能検査による診断
0 1 2 3 4 5 6 7 (秒) 0 1 2 3 4 5 1秒量 FEV1 FEV1 FVC 努力肺活量 FVC 健常者 COPD FEV1% < 70% 呼出時間 呼 出 量 (L)努力呼気曲線
1秒率(FEV
1%)
=
×100
1秒量(FEV
1)
努力肺活量(FVC:単位L)
70%未満でCOPDを疑う 診断基準は 気管支拡張薬吸入後の FEV1% < 70% 4COPDの肺機能検査フローボリューム曲線
呼出量 (L) (L/秒) 気 流速度 4 2 -5 0 5 10軽症
中等症
重症
健常者
V・ 50 V・ 25 5流
速
努力肺活量
正常者
COPD患者
肺機能検査(フロー・ボリュームカーブ)
6正常肺CT 肺気腫と肺がん 肺がん 70歳代の男性 【主訴】嗄声、食欲不振、体重減少 【現病歴】嗄声,左反回神経麻痺 【既往歴】COPD(在宅酸素1L) 【喫煙】20本/日×17-78歳(B.I.:1200程度) 【飲酒】0.5-1合/日、10数年前から禁酒 7
縱隔にリンパ節転移 → 左反回神経麻痺 → 嗄声
COPDが何故呼吸(呼気)が遅くなるのか(気流閉塞)
動的気流閉塞
Kurosawa H and Kohzuki M. NEJM 350: 1036, 2004
61歳、男性、COPD(12年間の息切れ、喫煙歴150 pack-year)
1秒量0.72 L (正常者の28.8% の量で重症)
吸気時の気管支(3 mm)
呼気時の気管支
(ほとんど内腔が見えない)
COPD
気管支拡張薬吸入後FEV
1% < 70%
気腫型
(肺気腫病変優位型)
非気腫型
(末梢気道病変優位型)
胸部単純X線および胸部CTで 気腫性陰影が優位に認められる。 DLco減少が著明 予後、併存症(体重減少、骨粗鬆症)と関連する。 肺から血液へ酸素が十分運ばれない。 胸部単純X線および胸部CTで 気腫性陰影がないか微細に留ま る。 DLco減少は軽度 吸気・呼気の抵抗が強くなり常に喉 が締め付けられた状況に類似 COPD (慢性閉塞性肺疾患) 診断と治療のためのガイドライン 第3版喫煙と肺がんの発症:疫学データ
Wakai K et al. Jpn J Clin Oncol 2006;36:309–324 喫煙と肺がん発症リスク:
日本人における疫学的エビデンスのsystematic reviewに基づいた評価
Wakai K et al. Jpn J Clin Oncol 2006;36:309–324
Summary estimates of the association between tobacco smoking and lung cancer risk 日本人における喫煙と肺がん発症リスクの関連の予測のまとめ
Wakai K et al. Jpn J Clin Oncol 2006;36:309–324
相対危険度(Relative risk)
ヒトのがんに関連する予防可能な曝露物質
ヒトのがんに関連する予防可能な曝露物質
十分な証拠のある発がん物質(呼吸器系)
(肺)
2014年の米国Surgeon General Report(The Health Consequences of Smoking – 50 Years of Progress (2014))
Lung Cancerの結論 1. 1960年代以来、紙巻きたばこ喫煙による肺腺癌発生のリスクが増加したと結論 するのに十分な証拠がある。 2. 1950年代以来の紙巻きたばこのデザインや成分の変化の結果、喫煙者での肺 腺癌のリスクが増加したとする十分な証拠がある。 3. たばこのフィルターやたばこに特異的なニトロサミン増加が関与している可能性 もある。 4. 扁平上皮癌の減少は喫煙率低下傾向に従っていることが、証拠により示された 。 18
喫煙と肺がんとの関係及び現行の注意文言の記載ぶりに対する見解 肺がん 現行 喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫 煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなりま す。 (詳細については、厚生労働省のホーム・ページ www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください) 提案 喫煙は、あなたにとって肺がん発症の原因の一つとなります。疫学的な推計によると 、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなり ます。 (詳細については、厚生労働省のホーム・ページ www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.htmlをご参照ください) 19
喫煙とCOPD
Kohansal R et al. Am J Respir Crit Care Med 2009;180: 3–10
30歳前に禁煙 喫煙を継続 正常非喫煙者 30-40歳で禁煙 40歳以降に禁煙 30歳前に禁煙 正常非喫煙者 30-40歳で禁煙 40歳以降に禁煙 25歳時の1秒量を100%として各年齢の1秒量 喫煙を継続 男性 女性
Kohansal R et al. Am J Respir Crit Care Med 2009;180: 3–10
喫煙は、COPDを引き起こす
1. 喫煙は、肺機能を障害する。
Fletcher C and Peto R. Br Med J 1977;1:1645 Kerstjens HA et al. Thorax 1997;52:820
2. 思春期の喫煙は成長期の肺機能の成熟を障害し、
その後のFEV
1低下の要因となる。
Gold DR et al. N Engl J Med 1996;335:931
3. 喫煙はFEV
1が低下し始める年齢を早める。
Sherrill DI et al. Am Rev Respir Dis1991;141:17
4. 喫煙は成人期におけるFEV
1の経年的低下を加速さ
せる。
Kerstjens HA et al. Thorax 1997;52:820 Anthonisen NR et al. Ann Intern Med 2005;142:233 Anthonisen NR et al. Am J Crit Care Med 2002;166:675 Osaka D et al. Intern Med 2010;49:1489
2014年の米国Surgeon General Report(The Health Consequences of Smoking – 50 Years of Progress (2014)) COPDの結論 国内(および国外)の科学的証拠に基づいて評価すると 1.喫煙とCOPD罹患との因果関係を推定するのに十分な証拠がある。 2.喫煙量とCOPD罹患率との因果関係を推定するのに十分な証拠がある。 3.喫煙と呼吸機能低下(1秒量低下)との因果関係を推定するのに十分な証拠がある。 4. 禁煙と呼吸機能(1秒量)の急速低下を抑制する因果関係を推定するのに十分な証拠がある。 5. 禁煙と軽度気流閉塞を有する者における死亡率の減少を推定するのに十分な証拠がある。 24
喫煙とCOPDとの関係及び現行の注意文言の記載ぶりに対する見解 肺気腫 現行 喫煙は、あなたにとって肺気腫を悪化させる危険性を高めます。 (詳細については、厚生労働省のホーム・ページ www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.html をご参照ください。) ? 提案 喫煙は、あなたにとってCOPD(慢性閉塞性肺疾患:気管支炎と肺気腫)を発症させ る原因となります。重症化すると呼吸が苦しくなり、運動が大幅に制限され、酸素の 持続吸入が必要になります。 (詳細については、厚生労働省のホーム・ページ www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.html をご参照ください。) ? 25
喫煙とCPFE
喫煙・COPD・肺線維症・肺がん
付記
CPFE
気腫合併肺線維症
1. 上葉の
気腫性変化
と下葉の
線維化を伴った病態
2.
喫煙歴のある男性
に多く,平均年齢は65歳
3. 肺機能検査では,VCが正常ないし正常下限
4. DLco低下および
運動時の低酸素
が著明
5. HRCTで,上葉に小葉中心性
気腫病変
,下葉に
線維化病変
6. 約半数で肺高血圧を伴う
7.
肺がんの合併が40%以上
Cottin, et al. Combined pulmonary fibrosis and emphysema. ERJ 2005; 26: 586-93.
主訴:労作時呼吸困難
現病歴:近医で肺癌と診断され
当科紹介受診。
喫煙歴:既喫煙者
60本/日×40年間
66歳・男性
2866歳・男性
[肺機能検査]
VC
2.99 L
%VC
(%肺活量)89.5%
FEV
12.34 L
FEV
1%
(1秒率)74.3%
%FEV
193.6%
%DLco
33.1%
(酸素の移行)[動脈血ガス分析]
pH
7.397
PaCO
240.7 Torr
PaO
268.6 Torr
A-aDO
230.3 Torr
6分間歩行テスト]
歩行距離
250m
SpO
295%
→ 78%
(90%以下は異常) 2966歳・男性
気腫合併肺線維症(CPFE )は、ほとんどの症例が重喫煙者である。
間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患の両者には肺癌の合併率が各々およそ10〜30%,
6~14%と高いことは以前より知られており、気腫合併肺線維症(CPFE )において
は肺癌の合併率が42~51%と高率である。
CPFEと肺癌合併で手術を受けた症例
喫煙指数= 本数/日x年数
Asthma
COPD
Fibrosis
Asthma and COPD Overlap Syndrome 喘息とCOPDのオーバーラップ症候群
Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema 気腫合併肺線維症