M&A戦略応用研究 平成18年度後期 2単位 担当教官 GCA Ⅰ.授業のテーマと目標 グローバル市場における企業成長のためには、今やM&Aは日本企業にとっても欠かすことにできな い重要な企業戦略となった。昨今日本市場におけるM&Aも、単に単純な売り買いのみならず、MB O、株式非公開化、敵対的買収に対する防衛、企業再生に伴うスポンサー出資などその形態は著しく 多様化してきている。本講座では、成功するM&A実務のポイントをM&A先進国である米国での実 務も参考にしながら、企業価値創造に結びつく戦略的な買収、合併、分割、売却について考察する。 講師は日本で唯一の本格的な独立系M&AアドバイザリーファームであるGCA株式会社が担当する。 GCAは常に時代の先駆けとなるM&Aを多数手掛けており、最近の主要な案件をみてみれば、戦後 初の私鉄再編となった阪急ホールディングス株式会社と阪神電気鉄道株式会社の統合や、日本初の 純粋なMBO案件となった株式会社ワールド経営陣による株式非公開化、また、松下興産の再生に 関するアドバイザリーや、外資系製薬大手も交え国内医薬品業界の再編が進む中での三共株式会 社と第一製薬株式会社の経営統合などにおいてアドバイザーを務めた。 講師担当者は、「M&Aのグローバル実務」という著書とKPMGでのアドバイザリー業務を通じて日本 におけるM&A実務の定着に貢献してきた渡辺章博、ライブドア事件での敵対的買収やその他マスコ ミを賑わすM&A案件に関する解説を始め報道ステーションでのコメンテーターとして活躍する佐山展 生、ワールドの非公開化プロジェクトを成功に導いた山本礼二郎、企業価値評価や財務分析実務を 専門とする加藤裕康、リップルウッドでプライベートエクイティ投資および投資先企業のターンアラウン ドを行なってきた益戸宣彦といったM&A業界のドリームチームが講師陣を構成する。 Ⅱ.教科書・参考書 教科書-新版「M&Aのグローバル実務」渡辺章博著(中央経済社)、参考書-「M&Aとガバナン ス」渡辺章博、井上光太郎、佐山展生共著(中央経済社)
III. 授業内容の要旨と授業計画 1.企業価値創造と成長のためのM&A戦略とNPV分析 9 企業が成長戦略としてのM&Aを意思決定するにあたり、そのM&Aが企業価値の向上につな がるものかどうかを分析・検討する必要がある。本講ではそのツールとしてのNPV分析について 解説する。 2.基本合意書の役割と交渉戦略 9 M&Aの実務においては、売り手と買い手が当該M&Aの基本的事項に関して合意に達した後、 その後の最終買収契約へ向けてのマイルスストーンとしてその合意内容を互いに確認するため に基本合意書(LOI = Letter of Intent)を締結するのが一般的である。本講では基本合意書の役 割、記載する内容等について解説する。 3.買収価格算定のための企業価値評価(Valuation)の手法と実務 9 M&Aの交渉における最重要項目の一つが買収価格であり、M&Aの成功・失敗が買収価格に よって後日判断されることになるといっても過言ではない。本講では、買収価格を算定する際の 基本的な企業・株主価値評価手法について解説する。 4.対象会社・事業の事前詳細調査(デュー・ディリジェンス) 9 M&Aの買い手にとってデュー・ディリジェンスは、対象会社に関する情報を確認し、問題点、瑕 疵、交渉材料等の洗い出しをおこなう最も重要な買収プロセスといえる。本講では、デュー・ディ リジェンスの内容、進め方、留意点等について解説する。 5.買収契約書の交渉ポイント 9 デュー・ディリジェンスを行なった後さらなる交渉をへて、基本合意書上の合意事項(買収価格を 含む各種買収条件)に追加・修正を行ないながら、最終買収契約書を作成することになる。本講 では、最終買収契約書に一般的に明記すべき条項について解説する。 6.アドバイザーの役割と協働の仕方 9 M&A案件において買収対象が確定したならば、社内プロジェクトチームに加えて外部の専門家 アドバイザーを起用することになる。本講ではM&AプロセスにおけるFA(ファイナンシャル・アド バイザー)、公認会計士、弁護士の役割及び上手な協働の仕方について解説する。
7.M&A会計とコーポレート・ガバナンス 9 M&A会計の役割が、買収コストを正確に算定し、買い手企業のマネジメントが投下資本を確実 に回収しているか否かの情報を提供することにあることを考えれば、コーポレート・ガバナンスと 深いかかわりをもっている。本講では日米のM&Aに関わる会計基準について解説するとともに、 コーポレート・ガバナンスの観点から見たM&A会計のあるべき姿を考察する。 8.買収形態と税務戦略 9 大きく分けて買収形態には資産買収と株式買収があり、どちらを選択するかによって税務ポジシ ョンに大きな違いが生じることが多く存在する。本講では、資産買収と株式買収の税務戦略の観 点から見た相違点について解説するとともに、株式交換、株式移転、吸収合併、吸収分割等、日 本のM&A案件で一般的に使われている買収形態につき解説する。 9.M&A後の事業統合プロセスにおける変革のマネジメント 9 M&A後における事業統合プロセスにおいては、シナジー効果の早期発現のためにスピードをと もなった大規模な統合やその他の企業変革が求められる。本講では変革をマネジメントするに当 たっての留意点について解説する。 10.M&Aと資金調達(MBOによる株式非公開化の実際) 9 近年増加しているM&Aの一形態としてMBO(マネジメント・バイアウト)があるが、本講ではMB Oを行なうにあたっての資金調達の実際をワールドの株式非公開化の事例をもとにして解説す る。 11.投資ファンドによるM&Aとエグジット 9 日本においても投資ファンドの組成数は年々増加しており、実際のM&A案件数も著しく増加し ている。本講では投資ファンドの概要から、M&Aを行なう際の視点、投資判断の手法、投資先 企業の価値向上のためのハンズ・オン手法、エグジットの方法等について解説する。 12.株式公開企業のM&Aと取締役の責任 9 上場会社のM&Aでは、非上場会社と比較しても留意すべき実務上のポイント多い。それは、市 場株価の変動が案件に及ぼす影響であり、公開買付(TOB)ルールなどである。また、取締役の 株主に対する責任がより一層厳しく問われることとなる。本講では、上場企業のM&Aプロセスに おける留意点につき整理するとともに、プロセスにおいて取締役会がいかに判断し、行動すべき か、というルールと実務慣行を解説する。
13.敵対的買収についての考察と防衛策 9 敵対的買収はもはや日本でも珍しくなくなり、上場企業が買収防衛策の導入について検討をおこ なうことは今や一般的となっている。本講では敵対的買収の[実際の事例をもとにした]解説ととも に、企業にとってあるべき買収防衛策について考察する。 14.株式を対価とするM&AとEPS分析 9 日本においても法改正により株式を対価とするM&Aが容易となったが、買い手企業がいたずら に発行済株式を増加させることによるEPS(1株当たり利益)の希薄化という弊害も生じている。 本講では、M&Aの意思決定を下す際のEPS分析の役割とその限界について解説する。 15.会社法及び金融商品取引法の施行により多様化するM&A手法 9 本年より商法から会社法への改正、証券取引法から金融商品取引法へと改正されたが、これに よりM&Aの実務においても、多様な手法を選択することが可能となった。本講ではこれらの法 改正によるM&A実務上の変更点や今後の展望について考察する。 16.企業再生におけるM&A活用 9 時限立法でその役割を終えようとしている産業再生機構をはじめとして、企業再生の手段として のM&Aを行なう事例は後を絶たない。本講では企業再生におけるM&Aの方法、プロセスにつ いて解説する。 17.スクイーズアウト(少数株主の排除)と留意点 9 完全子会社化をめざしたM&Aにおいて、絶対経営権である3分の2以上の議決権を獲得しても 少数株主が残ってしまうことがある。その場合少数株主との間で利益相反が生じる可能性を抱え たまま経営の舵取りをおこなうことを回避するために、スクイーズアウトという少数株主締め出し を実務上行なうことが必要となる。本講では100%支配を必要とする場合のスクイズアウト(少数株 主の追い出し)の方法、留意点について解説する。 Ⅳ.成績評価の方法 成績は出席、講義への貢献度および課題レポートにより評価する。 Ⅴ.学生へのメッセージ 日本においても株主への説明責任の重視から、M&Aのプロセス、企業価値評価方法が非常に注目
されており、実際の事例考察をもとにしたM&A実務の現状を考察することはとても興味深くかつ意義 深いものと考えられる。また、M&Aの実務に基づいた若干のケースなども予定しており、受講者がM &Aの基礎知識を深めるのにとどまらず、今後のビジネス実践の場でも役立つ講義を予定している。