7 平成3 年のバブル経済の崩壊後、長期的な経済不況が続くなかでの社会経済 の停滞や公共の財政状況の逼迫という状況を踏まえ、経済の刺激対策並びに公 共事業のあり方の見直しという考え方の下、我が国における社会資本整備の推 進と国民に対する良質な公共サービスの提供の充実という観点から、イギリス でのPFI 導入を契機に、民間事業者の事業費負担による公共部門の財政負担の 軽減、官民の適切な役割分担による効率的かつ効果的な公共事業の推進、民間 のノウハウや技術力を活用することによる公共事業への参入機会の拡大等を図 るべく、平成10 年 4 月に政府の総合経済対策に初めて PFI 推進体制が盛り込 まれることとなりました。 【法律・ガイドライン等の制定・公表】 ・平成10 年 5 月 第142 回国会において「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の 促進に関する法律(PFI 法)案」が衆議院に提出される。 ・平成10 年 5 月 建設省から「日本版PFI のガイドライン」が公表される。 ・平成10 年 6 月 通産省から「日本版PFI 実現のために」が公表される。 ・平成11 年 6 月 PFI 法律案の修正後、第 145 回国会に提出され可決成立。 ・平成11 年 7 月 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI
第
1 章 基礎編 ∼PFI とは何か∼
1 日本における PFI の導入8 法)」(平成11 年法律第 117 号)が公布される。 ・平成11 年 9 月 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI 法)」が施行される。 ・平成12 年 3 月 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関 する基本方針(平成12 年 3 月 13 日総理府告示第 11 号)」が制定される。 ・平成13 年 1 月 「PFI 事業実施プロセスに関するガイドライン」、「PFI 事業におけるリ スク分担等に関するガイドライン」が公表される。 ・平成13 年 7 月
「VFM(Value For Money)に関するガイドライン」が公表される。 ・平成13 年 11 月 「民間資金等活用事業調査費補助金交付要綱」が制定(平成 14 年 4 月改 正)される。 ・平成13 年 12 月 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一 部を改正する法律(平成13 年法律第 151 号)」が可決成立される。 ・平成13 年 12 月 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一 部を改正する法律(平成13 年法律第 151 号)」が公布・施行される。 ・平成15 年 6 月 「契約に関するガイドライン−PFI 事業契約における留意事項について」、 「モニタリングに関するガイドライン」が公表される。
9 PFI は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して公共施設等の整備 等を行い、それにより、効率的かつ効果的に社会資本を整備し、ひいては国民 経済の健全な発展に寄与することを目的としています。(PFI 法第 1 条) PFI の目的については、次のように示されています。 1 民間の資金・経営能力・技術的能力を活用した公共施設等の整備等である。 プロジェクト・ファイナンス、適正なリスク分担等による財政負担の軽減、 長期的かつ円滑な事業運営、創意と工夫を凝らした事業内容が期待される 2 鉄道、道路、公園、下水道等の「公共施設」、庁舎等の「公用施設」、教育 文化施設、社会福祉施設等の「公益的施設」が整備等の対象となる公共施設 等である 3 施設整備(設計、建設)のみならず維持管理・運営を含むものである 4 低廉で良好な市民サービスで、住民ニーズに適応した事業効果が期待でき ること 5 PFI 手法によるインフラ整備の進展と経済情勢の回復発展を期待するもの である また、PFI の基本理念として、PFI 法第 3 条には次のように示されています。 1 民間事業者に行わせることが適切なものについては、できる限りその実施 を民間事業者に委ねるものとすること 2 特定事業は、官民の責任分担の明確化を図りつつ、収益性を確保するとと もに低廉かつ良好なサービスが国民に対して提供されること (1) 納税者のための公共事業 2 PFI の目的 3 基本理念
10 PFI 事業の視点は、事業が生み出す国民に対する Value にある。どんな に立派な施設を建てても国民にとって利用価値が低く使い勝手が悪いもの では意味がない。少ない税金を投入して利用者に対してより質の高いサー ビスを提供することである。 (2) 公共サービスの購入者 PFI における公共事業の対象となるのが、施設整備だけではなく施設を 利用して提供されるサービスにも及ぶことである。国民に必要な公共サー ビスの内容や水準が提供されなくてはならない。 (3) 官民のパートナーシップ 官と民との位置づけは対等な関係であって、それぞれの専門分野におけ るパートナーシップによって円滑なPFI 事業が創造されるのである。 また、PFI 法第 4 条では、特定事業の実施に際して基本方針を定めることと しています。 1 特定事業の選定については、公共性を確保しつつ事業に要する費用の縮減 等資金の効率的使用を図るとともに、民間事業者の自主性を尊重すること 2 民間事業者の選定については、公開の競争により選定を行う等その過程の 透明化を図るとともに、民間事業者の創意工夫を尊重すること 3 財政上の支援については、現行の制度に基づく方策を基本とし、又はこれ に準ずるものとすること 1 性能発注に基づくライフサイクルの一括管理 PFI では事業のライフサイクルを一括して民間に委託し、公共が要求す 4 基本方針 5 VFM の要素
11 るサービスの内容や水準を指標として明示して、その達成手段は民間の自 由提案によることとする「性能発注」によることとされています。 2 リスクの最適配分 リスクとは不確実性を意味するもので、その顕在化によって何らかの影響 が生ずるものを事前に官民で適正な配分をしておかなくてはなりません。 事業期間中に発生する可能性のある事故、需要の変動、天災、物価の上昇、 許認可取得の遅れ、人件費の上昇、諸制度の変更、自然災害、工期の遅延等 様々な要因が考えられます。ただし、公共の管理コストよりも民間の管理コ ストの方が低いリスクのみ移転することが原則で、民間に管理能力のないリ スクを過度に移転すれば、結果的にVFM は低減することになります。 3 業績連動払い PFI では性能発注によって最良の提案を行った事業者が選定されることに なり、長期間にわたる施設の維持管理・運営等を円滑に行うことがサービス リスクの 定量化 イコールフィッティング 税金の非課税や 補助金等の適切 な調整 VFM 公共負担リスク 民間へ移転する リスク 従来型公共事業 調達コスト 公共負担リスク 民間へ移転する リスク 従来型公共事業 調達コスト 建設費 維持管理費 資金調達費等 公共負担リスク 政府優位相当分 PFI 事業 公共サービス 調達ライフサイ クル・コスト 公共から移転さ れるリスク PSC(1) PSC(2) PFI 【VFM の概念】
12 提供の基本となりますから、サービスの質を保持するためには、公共の定期 的なモニタリングを行う必要があり、サービスの質の低下があった場合には サービス料の減額措置、事業者の入れ替え等の一定のペナルティを課すこと になります。 4 競争原理 PFI における民間事業者の選出においては、公平性の原則、透明性の原則 が基本方針で謳われており、民間事業者の募集及び選定においては価格だけ でなく、サービスの質や技術力などが総合的に評価されなくてはなりません。 PFI は、官民の役割、責任、リスク分担を明確化し、それらを契約書に規定 し、契約に基づいて事業が実施されます。 1 民間委託・アウトソーシング・民営化 従来の公共事業の場合は、公共と民間の単年度の委託契約が基本となって おり、仕様発注による単純な価格競争によって委託業者が決定されることか ら、民間業者からの必要以上の創意工夫は期待できません。 アウトソーシングは、従来公共で行われていた一部の業務を外部の専門家 に任せる手法です。また、民営化は、従来公共が行っていた事業を、すべて 民間に任せることから、サービス提供から管理機能までも民間によることに なります。 2 第3 セクター方式 第3 セクター方式は、官民の共同出資によって設立される法人で、公共性 の認められる事業を行うことを目的とするものです。この方式では、事業収 入は見込めるものの採算性が低い事業であることから、公共による財政支援 が必要とされる分野に適用され、官民の責任分担が明確にされていません。 6 従来方式との違い
13 【事業方式別のリスク分担】 PFI 方式 従来の 公共事業方式 サービス 購 入 型 独立採算型 ジョイント ベンチャー型 第三セクター 方式(日本) 財 政 面 資金調達 公 共 民 間 民 間 公共と民間 (公共が財政 面での支援) 公共と民間 設計・建設上 のリスク 公 共 民 間 (契約により 明確な分担) 民 間 民 間 公共と民間 (半官半民の 事業会社) 維持管理・運 営 上 の リ ス ク 公 共 民 間 (契約により 明確な分担) 民 間 民 間 公共と民間 (半官半民の 事業会社) 法制度・許認 可 取 得 の リ スク 公 共 公共と民間 (対象となる 法令による) 公共と民間 (対象となる 法令による) 公共と民間 (対象となる 法令による) 公共と民間 (対象となる 法令による) 業務の効率化 需 要 リ ス ク の負担 公 共 原則:民間 例外:公共 民 間 原則:民間 例外:公共 公共と民間 (境界が曖昧) サービス料の支払 モニタリング PFI 事業契約 サービスの提供 コンソーシアム 直接協定 DA(ダイレクト・アグ リーメント) 建設会社 設計・建設・維持管理・運営 を一体として行う 出 資 行政サービス の提供 融資契約 金融機関 市 民 【PFI の公共事業】※BTO 方式サービス購入型の場合 国・地方自治体 SPC(特別目的会社) 管理運営会社 設計会社 組成の一例 協賛企業 協力企業 公共施設等の建設等
14 1 適用分野・・・PFI 法における「公共施設等」 (1) 道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の 公共施設 (2) 庁舎、宿舎等の公用施設 (3) 公営住宅および教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施 設、更生保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設 (4) 情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設(廃棄 物処理施設を除く。)、観光施設および研究施設 (5) 前各号に掲げる施設に準ずる施設として政令で定めるもの 1 基本事項 (1) 競争原理が働く 透明性や公平性の原則の下、競争原理によって民間事業者が選定される ので、従来手法と比較してコスト削減やサービスの向上が期待できます。 (2) 民間に業務を遂行できる能力がある 民間事業者は、設計・建設から維持管理・運営までを一括して遂行しな くてはならないことから、各業務の履行能力に加えて、全体のプロジェク トを効率的に管理するマネジメント能力が求められます。 (3) 創意工夫の余地がある VFM の期待と同時に、設計・建設や維持管理・運営においてコストの 削減や公共サービスの質の向上を実現する余地があれば VFM が高くなる 可能性があります。 7 PFI が可能な事業 8 PFI の成立要件
15 (4) 民間にリスク管理の能力がある 民間の方がリスク管理能力に優れていると思われるものについては、民 間にリスク移転することによってVFM が実現できます。 (5) 一定の事業規模がある PFI 事業においては、施設整備等および維持管理等の主要業務以外に、 ファイナンス、技術、法務などの複雑かつ専門的知識が求められることか ら各分野でのアドバイザーが必要となります。また、民間事業者の選定の 際には競争原理が働くことから質の高い提案を行うために費用がかさんだ り、SPC 組成のための経費も少なくありません。そして、これらの経費は 事業規模に関わらず一定の金額が見込まれることから、事業全体の規模が 小さい案件では利益が見出せなくなる可能性もあります。 PFI 法の施行後 5 年が経過する現在では、事業期間を通して顕在化する リスクに応じた相応のメリットが見込めないと判断された事業に対しては、 参加表明を見合わせるといったケースも見受けられています。特定事業の 選定にあたっては、地域住民や公共にとってのメリットだけでなく、民間 事業者や金融機関にとってメリットのあることが期待されるところです。 一般的に、施設整備等で 10 億円以上、維持管理等で 1 億円以上が求め られると言われていますが、最近の実施例等を勘案すると施設整備等で30 億円以上の事業規模が求められているところです。 2 公共 PFI 事業の事業主体はあくまでも公共であって、公共の責任の下に公共事 業として実施されるものです。事業の実施方法や遂行については民間に委ね られますが、公共サービスとしての質の確保や住民に対しての責任は依然と して公共が担わなくてはなりません。
16 (1) 財政支出の軽減 性能発注・一括発注によるライフサイクル・コストの削減や、リスクの 最適配分、業績連動支払い、競争原理などによる財政支出の削減が期待で きます。 (2) 財政の平準化 従来方式の場合、建設代金は建設期間にすべて支払うことから大きな財 政負担が発生します。また、維持管理・運営については毎年度に予算化し、 大規模修繕が発生した場合には特段の財政支出が見込まなくてはなりませ ん。一方、PFI 事業の場合は、設計・建設、維持管理・運営等が一体とな ったサービス料を事業期間において支払うことになるため、公共の支出は 事業期間にわたって平準化されることになります。 (3) 公共サービスの質の向上 民間の創意工夫、技術力、マーケティング能力等によってサービス提供 が行われるPFI 事業では、質の低下などによってサービス料の減額などの ペナルティが課せられることになることから、質の維持や向上が期待でき ます。 (4) リスク管理コストの削減 従来の公共事業では、必ずしもリスク管理が適切に行われていたとは言 えませんが、PFI 事業の場合は、適切なリスク分担が行われることが大き な事業要素となっていますから、民間に任せることによってリスク管理コ ストが低減できると判断された場合には民間にリスクが移転され、トータ ルでのリスク管理コストも低減されることになります。 (5) 行政運営の改善 行政経営においては安定した適正な運営が求められることから、官民の パートナーシップを基に計画性のある住民主体の公共事業が長期間にわた
17 って安定運営されることは、行政運営面から見ても効果的かつ効率的な手 法となります。 3 民間事業者 (1) 長期にわたる安定した収入 民間事業者にとってPFI 事業は長期間にわたる需要により安定的な供給 がなされること、また適正な事業提案に基づいて事業が遂行できれば相応 の収益を見込むことができます。 (2) 事業参画の機会の増大 PFI 手法は、公共事業について、民間ができるものについては民間に委 ねるという考えの下に行われる事業であることから、民間事業者の創意工 夫と積極性によって公共事業への参画が期待できます。 4 金融機関 PFI 事業は、プロジェクト・ファイナンスが基本であることから、民間事 業者がPFI 事業へ参画するためには金融機関との間で PFI プロジェクトをベ ースにした融資締結されることになります。融資額は大きくなりますが、公 共からのサービス料あるいは民間事業者の収益によって返済されるといった 安定的な仕組みであることから、金融機関としてはリスクに見合った収益が 期待できる事業と考えられます。 5 保険会社 従来の公共事業では一定の保険以外は付保されていませんでしたが、民間 事業者に事業が委ねられ、適正なリスクの分担がなされることから、履行保 障保険、天災不可抗力保険、操業開始遅延保険、火災保険、機械保険、第三 者賠償責任保険等、多くの保険が付保されることになります。
18 【PFI 事業の実施に伴う保険の内容】 段階 保険内容 計画段階 施工前事業関連賠償責任保険(測量、調査、設計) 等 建設段階 建設工事保険、開業遅延保険、違約金保険(工事施工業者、機器納入業 者)、請負業者賠償責任保険、第三者賠償責任保険 等 運営段階 火災保険、機械保険、施設賠償保険、利益保険 等 共通 地震保険等天災不可抗力関連の保険、履行保障保険 等 6 アドバイザー PFI 事業を検討・実施するためには、VFM の算定、ファイナンスの適正、 性能発注書の作成、リスク分析、支払いスキームの検討、PFI 契約書の作成 等の作業が必要になり、そのためには専門的な知識を有するコンサルタント とアドバイザリー契約を締結する必要が生じます。これは公共のみならず民 間事業者においても多事業を一括して長期間にわたり円滑に行う必要がある こと、プロジェクト・ファイナンスによる安定した運営がされなくてはなら ないことから、各分野における専門的知識を有するアドバイザーとの契約は 不可欠となります。 公共側が各分野において専門的な知識を有していない場合、事業契約を初 めとした様々な段階において、民間事業者側のコンサルタントや弁護士等と の詳細にわたる折衝を円滑に進めるためにはアドバイザーの役割は重要であ ると考えられています。なお、アドバイザーの選定にあたっても、民間事業 者の選定と同様に公平性や透明性が求められ、アドバイザーが特定のコンソ ーシアムの構成に関与することは認められていない。
19 (1) 公共性原則 公共性のある事業を、 (2) 民間経営資源活用原則 民間の資金、経営能力及び技術能力を活用して、 (3) 効率性原則 民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果 的に実施するものであり、 (4) 公平性原則 特定事業の選定及び民間事業者の選定においては公平性が担保され、 (5) 透明性原則 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されねばな らない。 (6) 客観主義 PFI 事業の実施にあたっては、各段階での評価決定についての客観性が 求められ、 (7) 契約主義 公共事業等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、 当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすることが必須であり、 (8) 独立主義 事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立 性が確保されなければならない。 9 PFI の 5 原則 3 主義
20 1 事業スキーム PFI における事業スキームの基本は、公共と民間事業者の間で締結される 契約に基づく民間事業者によるサービス提供にあります。 (1) サービス購入型 資金回収が公共の支払うサービスの購入対価によって行われる。 (2) 独立採算型 資金回収が、PFI 事業の利用者が支払う料金によって全額賄われる。 (3) ジョイントベンチャー型 基本は利用料金による回収であるが、料金収入の不足を補うために公共 が財政等の支援を行う。 10 PFI 事業の仕組み 利用料金 融 資 サービスの提供 サービス料金の支払 返 済 サービスの提供 利 用 者 公共団体 民間(SPC) 金融機関 サービスの監視 返 済 サービスの提供 融 資 事業権の付与 利用料金 利 用 者 民間(SPC) 公共団体 金融機関 サービスの提供 融資 サービスの監視 返済 利 用 者 民間(SPC) 公共団体 金融機関 財政支援等 利用料金
21 2 事業方式 (1) BOT 方式 民間事業者が自らの資金調達をもって施設を建設(Build)し、所有した上 で維持管理及び運営(Operate)を行い、事業期間終了時に公共に施設の所有 権を移転(Transfer)する方式。 (2) BTO 方式 民間事業者が自ら資金調達を行って施設を建設(Build)したあとに、施設 の所有権を公共に移転(Transfer)し、施設の維持管理・運営(Operate)を民 間事業者が事業期間終了時まで実施する方式。 (3) BOO 方式 BOT 方式の変形で、施設を建設(Build)し、当該期間中、自らが保有(Own)、 事業を維持管理・運営(Operate)する方式で、資金を回収後(事業期間終了 後)も施設は公共に移転(Transfer)しない方式 (4) ROT 方式 既存の施設を補修(Rehabilitate)し、一定期間、維持管理・運営(Operate) をしたのち、公共に移転(Transfer)する方式 1 基本的な契約スキーム 基本となる契約は、公共とSPC の間で締結される PFI 事業契約で、事業 契約には SPC が提供すべきサービス内容や、官民それぞれの責任とリスク 分担、サービス料の支払い方法、中途解約時の取り扱いなどが規定されます。 他には、基本協定、SPC と金融機関における融資契約、SPC と業務実施 企業との請負契約・委託契約、あるいは公共と金融機関の間で締結される DA(直接協定)、SPC に出資する企業間における株主間契約、事業関連契約(業 11 契約関係
22 務委託契約、業務請負契約)、債権者間契約(融資金融団における相互契約) 等があります。 2 PFI における契約の特徴 (1) 長期にわたる契約 PFI が対象とする公共事業においては、提供されるサービスのニーズは 長期的に安定しており、信用力の高い公共からの支払いを基本としている ことが契約の長期化を可能にしています。ただし、公共の多くは民間事業 者と金融機関が締結する融資契約の期間、大規模修繕の発生の可能性が顕 在化する15 年から 20 年程度の事業契約が締結される傾向にあります。 (2) 多数の関係者の関与 PFI 事業は、公共と SPC、金融機関との間の契約関係のみならず、設計 会社、建設会社、維持管理会社、運営会社、出資者、アドバイザー、コン サルタント、保険会社その他多くの関係者が関与しながら公共事業の円滑 な運営が図られることになります。そこにはお互いの利益やリスクが関与 していますから、PFI 事業自体の趣旨に対する理解のみならず、権利関係 等についての関係者相互の共通理解が求められます。 3 契約の内容 PFI における契約事務は、公共と SPC が締結する PFI 事業契約、SPC と 金融機関が締結するファイナンス契約(融資契約)、そして、これら 2 つの契 約を基に公共と金融機関が締結するダイレクト・アグリーメント(DA、直接 協定)から成り立っています。 (1) PFI 事業契約 PFI 事業契約においては、民間事業者が提供する公共サービス等 PFI 事 業の具体的な内容に関すること、リスクに対する責任の所在及び対応の方 法、モニタリングの方法やペナルティの内容、サービス対価の支払い金額
23 並びに支払い方法等の詳細にわたる内容を規定します。 具体的な契約内容については、「契約に関するガイドライン‐PFI 事業契 約における留意事項について‐」において示されています。 (2) 基本協定 公共と落札者であるコンソーシアムの間で締結される協定で、落札者で あるコンソーシアムの構成企業が選定事業者となる株式会社(SPC)を設立 すべきことや選定事業の準備行為に関する取り扱いについて規定します。 (3) ファイナンス契約 PFI 事業においてはプロジェクト・ファイナンスによることが特徴とな っています。つまり、通常の融資契約のように債権保全の目的で資産に担 保権を設定することなく、公共と SPC の円滑な事業運営が担保とされる ことから、公共事業という安定性とともに SPC の事業に関するキャッシ ュフローが重視されます。 (4) ダイレクト・アグリーメント(DA、直接協定) PFI 事業契約に基づいて SPC に対しては長期間にわたる適正かつ安定 的な事業運営が委ねられ、その事業運営を担保にファイナンス契約が成り 立つことになります。そして、その安定した事業運営から生み出される SPC の利潤が融資金融機関にとっての唯一の債権回収の手段となります。 しかし、こうした仕組みにおいては、SPC の安定的な事業運営が危ぶま れる場合、あるいは経営破綻に陥ることも想定されますから、直接協定に おいては、そうした事態に備えた債権保全のための手続並びに権利関係に ついて規定することになります。 具体的には、選定事業者による選定事業の実施が困難となった場合など に、公共によるPFI 事業契約の解除権行使を融資金融機関等が一定期間留 保することを求め、資金供給している融資金融機関等による選定事業に対
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する一定の介入(Step-in-right)を可能とするための必要事項を規定した協 定です。内容的には、要求水準の未達や期限の利益の喪失等の一定の事項
が生じた場合の相互の通知義務や、選定事業者の発行する株式や資産への