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第5学年 家庭科学習指導案
平成27年1月23日(金) 第5学年2組 37名 指導者 松 田 優 子
1. 題材名 「じょうずに使おう 物やお金」
2. 題材について
本題材について学習指導要領では、次のように示されている。 D身近な消費生活と環境 (1) 物や金銭の使い方と買い物について、次の事項を指導する。 ア 物や金銭の大切さに気付き、計画的な使い方を考えること。 イ 身近な物の選び方、買い方を考え、適切に購入できること。 また、(内容の取扱い)には、次のように示されている。 「物や金銭の大切さ」については、 家庭で扱う金銭は家族が働くことによって得られた限りある物で、物や金銭が自分と家族 の生活を支えていることから、それらを有効に使うことの重要性に気付くようにする。 「物や金銭の計画的な使い方を考える」については、 児童が衣食住などの生活で使う身近な物に着目し、日常生活の中で有効に活用できている か、使い方に問題はないか、購入した物は自分の生活にとって必要かどうかなどを考えるよ うにする。 「身近な物の選び方、買い方を考え」については、 児童が使う身近な物について取り上げ、購入する時は、店の人から話を聞いたり、広告な どを活用したりして整理し、選び方についてよく考えるとともに、購入の時期や場所など買 い方を具体的に考えることができるようにする。 「適切に購入できる」については、 食品等に付けられた日付などの簡単な表示やマークなどを自分の目で確かめ、目的に合っ た品質の良い物を無駄なく購入することができるようにする。 これらを受けて、本題材は設定されている。 児童を取り巻く社会は物質があふれ、お金さえ出せば何でも手に入る環境で育っている。児 童が身近な文房具や学用品が必要になった時、購入を迷ったり我慢したりすることなく、保護 者から新しい物を購入してもらうことが予想される。さらに成長するにつれ、自分のお金で欲 しい物を購入する機会も増え、その金額も増えていくことだろう。また、社会の進歩に伴い、 クレジットカードやネット販売など従来の購入方法とは違ったものが次々と出現している。こ れからの時代を生きていく子ども達にとって、健全な金銭感覚を身につけたり物を大切にする ことを学ぶことは、重要なことである。 本題材では、健全な金銭感覚を身に付けるために、まず自分の買い物について見直したり、 家庭生活とお金の関係を考えたりさせる。次に、買い物をするには、計画を立て必要のない物 を買わないことや目的に応じて商品を選ぶことが必要であることに気付かせる。また、商品を 選ぶためには、多様な情報の中から自分に合った物を選ぶ力や正しい情報を見極める力も養っ
2 ていく必要がある。本題材はその練習であるので、比べる商品の情報は、5年生に判断しやす いものを精選し提示するように工夫する。これらの学習内容を通して、商品に付いている品質 表示や価格・鮮度などに関心をもつ消費者へ育ってほしい。さらに、店舗に行かなくても商品 を購入できる通信販売やネット販売・カード払いなどの危険性について考えさせるように、本 題材を設定した。
3. ねらい
生活への 関心・意欲・態度 身近な物の選び方や買い方に関心をもち、物や金銭を大切にし、適切に買い物 しようとする。 生活を工夫する能力 購入しようとする物の品質や価格などの情報を活用し、目的に合った物の選び 方や買い方を工夫する。 生活の技能 購入しようとする物の品質や価格などの情報を集め、整理することができる。 知識・理解 目的や品質を考えた物の選び方や適切な買い方について理解する。4.児童の実態
本学級の児童は、5年生から家庭科の授業が始まり、どの児童も意欲的に取り組んでいる。特に、 調理や製作などの実習を楽しみにしている。授業で初めて経験することも多いので、困った時などは、 互いに協力したり助け合ったりする姿が多く見受けられる。多くの児童はワークシートの記入にも熱 心に取り組み、意見発表も活発に行われている。しかし、個人差も見られる。また、グループでの話 し合いは、積極的に意見が出され活発に行われるのだが、中には自分の考えを重要視するために、相 手の考えを尊重できない児童も少数ではあるがいる。 買い物については、2年生の生活科で地域の店ではたらく人を見学しインタビューを行った。3年 生の社会科では、家庭での「かいものしらべ」を行ったり店ではたらく人の工夫などを考えたりする 学習をしている。5年生になってからは、米や野菜の生産地を調べたり,農家の人の工夫や食料生産 の問題点を考えたりする学習を行い、食の安全性が重要なことも学んでいる。 本学級の児童が物を選ぶとき、何を重視して選ぶのかを知るために以下のようなアンケートを実施 した。
3 アンケートの結果は、次のようであった。 回答 2組 理 由 1組 3組 ア 0% 6% 10% イ 12% ・地球にやさしいので。 ・環境に良いノートだから ・地球にやさしい上に、値段が高くない。 32% 29% ウ 88% ・一番安いから。 ・たくさん使うので、まとめ買いする。 ・何度も買いに行かなくてすむので、 スーパーのレジ袋が一まいですむ。 ・無地だから学校で使える。 62% 61% ・表紙の絵で選ぶ人はいなかった。 ・他のクラスより安さで選んだ人が多かった。 ・算数で「単位量」の学習をしたばかりなので、一冊あたりの値段が一番安いウが注目された。 ・ノートをたくさん消費することを、経験上知っているので、ウが多く選ばれた。 ・値段が高くても、再生紙を利用した方がいいと考えている人が少数ながらいる。 このように児童は、それぞれが選んだ理由を書くことができた。今回のアンケートでは、購入の目 的を明らかにしなかったので、単価の安いノートを選ぶ傾向にあったと思われる。 実際に買い物をする場合には、品物に関する情報収集の方法や購入判断の視点が重要であると考え た。本題材を学習することによって、目的に合った品物が購入できる能力や実践的な態度を育ててい きたい。
5. 研究主題との関連
研究主題
互いにかかわり合い、できる喜びを味わえる指導法の工夫
研究主題に迫るために、以下のような力を養いたいと考えた。・根拠をもって自分の意見を相手に伝える能力 ・必要な情報を収集・整理し、適切に取捨選択する能力 ・人の意見を聞き、多様な意見があることを知る能力 これらの能力を身につけることで、本題材での「できる喜び」を味わえると考えた。
(1) 学習過程の工夫
・毎回授業の流れを、「つかむ」「考える」「話し合う」「まとめる」の4段階で行う。学習の流れ を固定することで、児童が見通しをもって学習に取り組めるようにした。 ・<第1時>では、今までに経験した買い物の失敗を思い出させたり、アンケートで行ったノー ト選びは自分で使う場合と友達のプレゼントのため購入する場合では選ぶ視点が変わること4 に気付かせたりする。次に、「家庭科で習った野菜いためを、家族のために作る」ことを仮定 し、材料の野菜を買うことを知らせる。4種類のキャベツの情報(値段・数量・新鮮さ・包そ う)からキャベツを全体で判断し、選んでいく。<第2時>では、キャベツ選びの学習をふま えて、3種類の中から1つのベーコンを選ばせる。キャベツ選びと違うところは、自分の家庭 に合ったベーコンを自分で判断し選ぶ点である。選んだ理由をワークシートに記入させた後、 班で選んだベーコンを発表させる。発表はクイズ形式で行い、互いに集中して聞かせる。他の 発表を聞くことで、多様な意見があることを知らせ、買い物選びの視野を広げる。
そして
< 第3時>では、個人商店・コンビニエンスストアなどいろいろな店舗形態の他に、通信販売や インターネット販売・ネットオークションなど自宅でも購入できる方法があることを伝える。 それらは便利な反面危険性もあるので、クレジットカードや商品券などの取り扱い方や支払い の方法について考えさせる。このような活動を通して、児童を取り巻く環境の変化に対応でき るようにする。 <第1時><第2時>で学習して身につけた能力を実際の消費生活に生かし、<第3時>で は、健全な金銭感覚を身に付けることの必要性に気付くように学習過程を組み立てた。(2)学習内容の工夫
・
多様な情報の中から、自分が必要とする情報を選んだり整理したりしやすいワークシートを作成 する。 ・家庭の状況や目的によってどの視点を優先するかは異なるので、3種類のベーコンの条件は比べ やすく、わかりやすくした。 ・「熟成ベーコン」「金賞受賞」「お買い得」「いちおし」などの宣伝広告も選ぶ視点としては重要だ が、品質や量などのより実用的な視点に注目させたいので、今回の視点から外した。 ・前時でキャベツを選ぶ練習をした後、本時で自分の家庭に合ったベーコンを自己判断で決定させ る活動を行う。一般的な家庭から自分の家庭に対象が移ることで、自分だけの課題となり意欲が 高まり、イメージしやすくなると考えた。自分の家庭に合ったベーコンを自己決定させ、根拠を もって自分の意見を発表できるようにする。 ・班内の発表はクイズ形式にし、自分と違った視点で自然に考えられるようにした。 ・他の意見を聞くことで、いろいろな意見があることを知り、視野を広げられるようにした。6.学習過程(3時間扱い)
時 学 習 内 容 学 習 活 動 評価規準 1 生活を支えるお金 の 大 切 さ や 計 画 的 な 使 い 方 に つ い て 考える。 ○買い物体験から失敗やその理 由を考えさせる。 ○キャベツの上手な買い物の仕 方について考え、全体で話し合 う。 【関心】自分の生活とのかかわりから、 物や金銭の大切さに気付き、その使い方 に関心をもっている。 【工夫】物の選び方について考えたり、 工夫したりする。 2 本 時 購 入 し よ う と す る 物(ベーコン)の品 質 や 価 格 な ど の 情 報を得て、適切な物 の選び方が分かる。 ○3種類のベーコンの情報を比 べ、自分に合った物を選ぶ。(価 格・内容量・包そう・アレルギー等) ○その品を選んだ理由を話し合 う。 【関心】物の選び方に関心をもち自分に 合ったベーコンを選ぼうとしている。 【技能】ベーコンの品質や価格などの情 報から必要な情報を整理し、選択するこ とができる。5 3 いろいろな購入の 仕 方 や 支 払 い 方 法 があることを知る。 ○注意しなければならないこと を考え、話し合う。 【知識】購入や支払いの方法が多様であ ること、危険性も潜んでいることを理解 している。
7.本時の学習 (2/3)
(1)ねらい
・品質や価格などの情報を活用し、根拠をもってベーコンを選ぶことができる。(2)展 開
学 習 活 動
○・・教師の支援 ☆・・評価(重点)
つ か む 考 え る 話 し 合 う 1.前時のキャベツを選ぶ視点を想起す る。 2.課題を確認する。 野 菜 い た め に 使 う ベ ー コ ン を 選ぼう。 [設定] ①120g×□人家族=□g ②今夜、野菜いためを作って、食べま す。 ③予算は500円以内。 3.多様な情報の中からベーコンを選び、 選んだ理由をワークシートに記入す る。 ・値段・内容量・形・包そう ・アレルギー・賞味期限など 4.「○を選んだ理由は何でしょうクイ ズ」を行う。 [方法] ①選んだベーコンのカードを持つ。 ②「ぼくは、□人家族です。選んだベ ○前時の学習を振り返り、キャベツを選ぶには、決 め手になった視点(価格・数量・新鮮さ・包そう など)があったことを思い出させる。 ○自分の家庭に合ったベーコンを自分で選ぶことを 伝える。 ○設定を確認し、家族の人数によって、量も異なる ことなどに気付づかせる。 ○条件の異なる3種類のベーコンの情報を提示す る。 ○児童が意味の分からない語句があれば、説明する。 ○選んだベーコンには、自分の家庭の状況に合って いるのであれば、人それぞれであることを伝える。 ☆ベーコンの品質や価格などの情報を集め、整理し、 根拠をもって選択することができる。【技能】 ○ワークシートに選んだ理由が書かれているか机間 指導し、確認する。 ○書かれていない場合は、他のベーコンと比較しな がら選んだ理由を一つ一つ一緒に確認し、支援す る。 ○後でクイズをするので、ワークシートを周りの人 に見せないように伝える。 ○クイズのやり方を説明し、周知させる。6 ま と め る ーコンは△です。選んだ理由はなん でしょう。」 ③順番に推理し、答える。 5.選んだベーコンとその理由を、全体 に発表する。 6.ワークシートに分かったこと、これ から生かしたいことを書く。 ○回答は順番制とし、班員全員に答えさせる。 ○ホワイトボードに発表をまとめ、わかりやすくす る。 ○時間があれば、選ぶ視点として、その他に添加物 や生産地などがあることを簡単に伝える。 ○これからの買い物の仕方についても意識させ、記 入させる。 ☆物の選び方に関心をもち、これからの買い物の仕 方に生かそうとしている。【関心】