はじめに
わが国の公共投資は、第二次世界大戦後から高 度成長期にかけて積極的に実施されてきた。他の 先進国と比べても、戦後から一貫して公共投資の GDPに占める比率は高水準である。ただし、1980 年代になると公共投資の対GDP比率は土光臨調に よるゼロ・シーリングで減少に転じる。しかし、 1980年代後半から再び上昇を示している(図表 1)。公共投資は、税の低減政策と並ぶ、財政政 策の手段として、総需要を拡大する効果を持って いる。*1とくに1991年以降の平成不況に入ってから は数次にわたる景気対策が発動され、公共投資の GDP比率は高くなっている。しかし、長期的な視 点からみると、社会保障や税制などの財政政策手 段とは異なり、公共投資はストックとして蓄積さ れ、社会資本として生産活動や経済厚生の上昇に 寄与すると考えられる。 日本では第二次世界大戦後、他の先進国と比べ て社会資本が不足しているという認識から、1957 年(昭和32年)の新長期経済計画(1958年度を初 年度とする経済計画)や1960年(昭和35年)の所 得倍増計画(1961年度を初年度とする経済計画) により、政府は公共投資の拡大を推進していった (図表2)。こうした経済計画の推進により社会資 本整備が日本の高度経済成長を支えたか否かを実 証的に分析することは、途上国の経済発展に対す * 本稿は、吉野・中島編(1999)および吉野・中田・中東(1999)、吉野・中東(1999)を大幅に加筆修正したものである。本稿 で示される意見・見解は筆者個人に属し、ありうべき誤謬はすべて筆者に帰する。 *1 公共投資の経済効果のうち短・中期の影響については、吉野・中島編(1999)第4章以降および吉野・嘉治・亀田(1998)が 挙げられる。ほかに、金融部門を明示的に含めた影響をみたものとして中田(2000)がある。社会資本の経済効果
―日本の戦後の経験
*―
慶應義塾大学経済学部教授吉野 直行
慶應義塾大学大学院経済学研究科後期博士課程中東 雅樹
要 旨
わが国の公共投資は、景気低迷期に増大するケースが多い。1974年の第一次石油危機以降の極端な 景気低迷期、最近では1991年以降の平成不況で、公共投資は総需要喚起政策として用いられてきた。 しかし、公共投資はフローとしての総需要効果ばかりでなく、フローが蓄積され社会資本ストックと なって、生産能力の拡大や経済厚生の増大に寄与する効果がある。とくに社会資本がいまだ不足して いる開発途上国では、生産要素のひとつとして、将来の経済成長に貢献することが期待されている。 本稿の目的は、日本の第二次世界大戦後のマクロ全体および産業別・分野別・地域別の社会資本の 生産力効果を推計することにより、社会資本と経済成長との関係について実証的に明らかにすること である。実証分析の結果から得られる主な結論は、以下のとおりである。 (1)日本全体の社会資本の生産力効果(社会資本が民間の潜在的な生産能力を上昇させる効果)は、 高度経済成長期には高い水準にあったが、1970年から構造変化がみられ、それ以降は低い水準とな っている。 (2)社会資本の生産力効果を産業別・分野別・地域別に比較すると、産業別では第三次産業向けの 社会資本の生産力効果が高く、分野別では情報通信や環境向けの社会資本の生産力効果が高く、地 域別では大都市圏を含む地域である関東・近畿・東海地方の社会資本の生産力効果が高く、逆に北 海道や南九州などでは社会資本の生産力効果は低い水準にある。 最後に、これらの分析結果の開発途上国への示唆を検討した。る社会資本整備の有用性の検討に役立つ。 本稿では、「社会資本の生産力効果」について、 第二次世界大戦後から現在までのデータを用いて 実証的に分析する。第一に、マクロでみた社会資 本の生産力効果に着目し、その時系列の変化を推 計する。次に、社会資本の生産力効果をより詳細 にみるために、①産業別効果、②地域別効果、③ 社会資本の分野別効果、に分類して、生産力効果 を推計する。これらの分析により社会資本の生産 力効果を数量的にとらえられるとともに、比較も 可能となる。 本稿の構成は以下のとおりである。第Ⅰ章で日 本の第二次世界大戦後の公共投資の変遷について 時系列データを用いて明らかにする。第Ⅱ章では、 社会資本の経済効果に関するこれまでの主要研究 を紹介し、本稿の分析の位置づけを行う。第Ⅲ章 では、マクロでみた社会資本の生産力効果を推計 する。第Ⅳ章および第Ⅴ章では、産業別・分野 別・地域別にデータを分類し、社会資本の生産力 効果を推計する。最後の第Ⅵ章では、本稿の結論 および開発途上国の開発における社会資本の役割 について述べる。
第Ⅰ章 戦後の公共投資の変遷
公共投資は、短期的な効果である総需要効果だ けを考えるのであれば、政府の消費支出とその経 済効果は同一であると考えられる。しかし、長期 的な効果では、公共投資と政府消費支出とは明確 に区分される。すなわち、公共投資は蓄積されて 社会資本ストックとして生産活動に直接の影響を 与えると同時に、間接的に民間部門の投資活動や 雇用の促進という波及効果をもたらすからであ る。さらに、公園や都市開発、国土の森林保全な どには、社会全体の厚生水準を上昇させる効果も ある。本章では、戦後の公共投資がどのように変 遷してきたかを、時系列データによる変動と政府 の経済計画の変遷をもとに考察する。 はじめに、戦後の公共投資の変遷をデータから みたのが図表1である。図表1には、「公的総固 定資本形成の対GDP比」および「実質GDP成長率」 が描かれている。特徴としては、高度経済成長期 の1970年代前半までは、平均的に実質GDPの成長 率と公共投資の対GDP比は同一方向に動いていた が、第一次オイルショック以降は一貫して公共投 資の対GDP比と実質GDPの成長率が逆の動きをし ている。これは、第一次オイルショック以降不況 にともなう景気後退を防ぐため、大規模な公共投 図表1 公共投資の対GDP比および実質GDPの成長率 −2 0 2 4 6 8 10 12 14 (%) 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000(年) 公的総固定資本形成の対GDP比 実質GDP成長率 出典:経済企画庁『国民経済計算年報』より作成した。公共投資の対GDP比はそれぞれ実質系列を使用している。資が実施されていたためと考えられる。また、 1995年以降の両変数の動きは似通っている。これ は景気後退期に、公共投資の規模が拡大された結 果、わが国経済の公的需要への依存度が高まって いるためと考えられる。*2 次に、政府の長期的な経済政策の方向性をみる ために、経済計画の変遷を追ってみる。図表2は、 第二次世界大戦以降(1955年の経済企画庁発足以 来のものだけを掲載した)の経済計画の一覧を示 している。これによると公共投資の中身の変遷が 図表2 第二次世界大戦後の経済計画一覧 出典:小浜・渡辺(1996)表 5-1(p.135)、経済企画庁調査局「経済要覧」、各計画書 名 称 経済自立5ヵ年計画 新長期経済計画 国民所得倍増計画 中期経済計画 経済社会発展計画-40 年代への挑戦-新経済社会発展計画 経済社会基本計画-活力 ある福祉社会のために-昭和50年代前期経済計画 -安定した社会を目指して-新経済社会7ヵ年計画 1980年代経済社会の 展望と指針 世界とともに生きる日本- 経済運営5ヵ年計画-生活大国5ヵ年計画 構造改革のための経済 社会計画-活力ある経済・ 安心できる暮らし-経済社会のあるべき 姿と経済新生の政策 方針 計画期間 1956-1960 1958-1962 1961-1970 1964-1968 (1966.1 に廃止) 1967-1971 1970-1975 1973-1977 1976-1980 1979-1985 1983-1990 1988-1992 1992-1996 1995-2000 1999-(10 年 間程度) 策定年月 1955.12 1957.12 1960.12 1965.1 1967.3 1970.5 1973.2 1976.5 1979.8 1983.8 1988.5 1992.6 1995.12 1999.7 計画の目的 経済の自立、完全雇用 極大成長、生活水準向上、完全雇用 極大成長、生活水準向上、完全雇用 ひずみの是正 均衡がとれた充実した経済社会への発 展 均衡がとれた経済発展を通した住み良 い日本の建設 国民福祉の充実と国際協調の推進の同 時達成 わが国経済の安定的発展と充実した国 民生活の実現 安定した成長軌道への移行、国民生活の 質的充実、国際経済社会発展への貢献 平和で安定的な国際関係の形成、活力ある経済 社会の形成、安心で豊かな国民生活の形成 大幅な対外不均衡の是正と世界への貢献、 豊かさを実感できる国民生活の実現、 地域経済社会の均衡ある発展 生活大国への変革、地域社会との共存、 発展基盤の整備 自由で活力ある経済社会の創造、豊か で安心できる経済社会の創造、地球社 会への参画 多様な知恵の社会の形成、少子高齢化へ の備え、グローバリゼーション化への対 応、環境との調和 公共投資・社会資本関連 交通通信施設の復興整備、国土保全の開発 と促進、国民生活の安定のための住宅建設 道路の近代化を中軸とする輸送力の増強、 資源開発確保、国土保全、農業生産基 盤の強化、住宅建設 産業基盤の強化のための社会資本整備、 都市における生活環境施設の改善、国 土保全施設の強化 住宅・生活環境施設の充実、農林漁業 基盤の強化、交通通信体系の整備、国 土保全設備の整備、水資源開発 住宅・生活環境施設の総合的整備、農 林漁業基盤の強化、交通通信体系の整備、 国土保全設備の整備、水資源開発 望ましい生活環境の整備(住宅、生活 環境設備の整備) 社会開発(住宅、生活環境の整備、公 害の除去など) 住宅の確保、交通通信体系の形成 生活環境施設の整備、国民生活の安定の ための施設整備(国土保全、水資源開発、 農林漁業)、交通通信施設の整備 安全基盤の整備、活力基盤の整備、快 適基盤の整備 高速交通ネットワークの整備、国民生 活基盤の整備、産業構造調整円滑化の ための基盤整備 環境保全、調和に対応した社会資本整備、 東京一極集中是正のための基盤整備 住宅の確保、社会資本整備 少子高齢社会に対応した社会資本整備、 環境に配慮し、持続的発展を支える社 会資本 *2 とくに平成不況による大規模な経済対策による影響は無視できない。具体的な経済対策については吉野・中島編(1999)や中 田(2000)を参照されたい。
みられる。1960年代までの経済計画では、太平洋ベ ルト地帯への傾斜的な産業基盤投資にみられるよ うに、まず国全体の経済成長を最大にするように 資源配分されていたことがわかる。他方、1960年代 後半に入ってからの経済計画は、それまでの経済 計画の主目的であった経済成長の最大化によって 生じた地域間格差の是正や生活環境の悪化に対応 する公共投資へと向けられていることがわかる。 これらの分析から明らかになることは以下の2 点に集約される。第一に、高度経済成長期におい ては産業基盤整備を中心とした公共投資が推し進 められた結果、非常に高い水準の経済成長が実現 していたことである。第二に1970年代以降の公共 投資は、住宅や環境保全などの生産活動に直接的 に寄与しないと思われる生活関連向けの公共投資 が多くなっていることである。 しかし、これらの推論を実証的に明らかにする ことが必要である。そこで以下では、マクロの社 会資本の生産力効果の推計(第Ⅲ章)および公共 投資の産業別・分野別の生産力効果の推計(第Ⅳ 章および第Ⅴ章)を行うことによって、生産への 影響が公共投資政策とどのように関連づけられる かを明らかする。
第Ⅱ章 社会資本の経済効果に関する
先行研究
公共投資の長期的な影響として、社会資本の水 準は現在の経済成長の格差に大きな影響を与えて いると考えられている。これは多くの国際機関が 開発途上国へのさまざまな援助によって社会資本 整備を積極的に進めていることからも推察でき る。たとえば中国における社会資本整備の不足が 経済成長の妨げとなっている例や、インドの農村 における社会資本の経済的な影響*3のような多く のケーススタディに加えて、クロスセクション・ データによれば、電気・通信・道路整備水準など の社会資本が、経済水準と正の相関関係を示して いるように、社会資本と経済活動との間には密接 な関係がある。以下では、社会資本と経済発展に 関するこれまでの研究を簡単にサーベイする。手 法としては、社会資本が潜在生産力を上昇させる かどうか調べた社会資本の生産力効果の有無を検 証する研究と、経済成長論の枠組みによる社会資 本の経済効果の研究に分けられる。 社会資本の生産力効果については、米国におけ る生産性の低下の要因として社会資本が着目され たことを契機に、Ratner(1983)やAschauer (1989)など数多くの研究が蓄積されており、効 果の有無については推計方法や分析対象によって さまざまな結果が得られている。これらの研究は、 データ整備が進んでいる先進国を対象としたもの が多く、開発途上国を対象としたものは数少ない。 しかし、最近はSummers and Heston(1991)や World Development Indicator(World Bank)に よるデータ整備が進んでいることにより、開発途 上国を対象とした研究も蓄積されつつある。たと えば、Canning(1999)は、1960年から1990年の 時系列データに世界82ヵ国(または57ヵ国)のク ロスセクション・データをプールしたパネル・デ ータにより検証し、社会資本が生産に寄与してい ることを明らかにしている。また、Canning and Pedroni(1999)は、Canning(1999)と同様な方 法による分析で、分野ごとの社会資本*4の経済成 長への寄与を推計している。これによると、社会 資本のうち、電話および舗装道路は、平均的にも っとも経済成長を促進する分野であるが、国によ って過剰供給になっていたり過少供給であること もある。他方、電力供給能力については、平均的 に過少供給になっていることが示されている。ま た、Shah(1992)はメキシコについて社会資本 を含めた費用関数を推計し、社会資本の生産力効 果があることを示した。 経済成長理論を基礎にして社会資本と経済発展 の関係を実証分析したものもある。そのなかで、 経済発展に寄与するとする研究には、Easterly and Rebelo(1993)がある。そこでは、クロスセ *3 これらの例はWorld Bank(1994)において示されている。*4 Canning and Pedroni(1999)における社会資本は金額ベースではなく、道路の舗装率や電力供給能力、電話の回線数などの物
クション・データを用いて、税(関税・所得税)、 政府の消費支出、投資支出などのさまざまな政策 変数の水準の変化が経済成長率を永続的に増加さ せたか否かを検証し、情報通信関係の投資が経済 成長率を引き上げることを明らかにしている。逆 に、社会資本が経済発展に寄与していないとする 研究には、Kocherlakota and Yi(1996)がある。 これによると、米国の時系列データを使って、社 会資本を含むさまざまな政策変数を用いて内生的 経済成長理論の実証分析を行った。その結果、経 済成長率を永続的に上昇させる政策変数は存在せ ず、内生的経済成長モデルそのものに懐疑的な結 論を導いている。また、Devarajan, Swaroop and Zou(1996)は、開発途上国の国々について、ど のような政府支出が経済成長を促進するものかを 検証するために、内生的経済成長モデルをベース にした実証分析を行っている。主要な結論は、開 発途上国では経済成長率に対して社会資本は負の 効果を持つというものである。これは開発途上国 で社会資本が経済規模に対して過剰に供給されて いることを示していると解釈されている。 また、最近の研究で新たな視点として、社会資 本整備と貧困解消の関係が挙げられる。World Bank(1994)は、社会資本整備と貧困の解消と の関係について触れており、貧困層を優遇するた め、インフラを使用する費用を限界費用より低く 設定すると逆に富裕層に恩恵を与えてしまうこと を指摘している。また、社会資本整備については 直接言及していないものの、経済政策手段による 所得階層に与える影響を考察したものとして Dollar and Kraay(2000)があり、今後実証的研 究の蓄積が期待される。
第Ⅲ章 マクロの社会資本の生産力効果
本章では、戦後の日本における社会資本のマク ロの生産力効果を推計し、その時系列の変化を明 らかにする。なお、本章以降の分析では、社会資 本が民間の潜在的な生産能力を上昇させることを 社会資本の生産力効果があると定義する。ここで の手法は、生産関数を直接推定する方式を用い、 社会資本を含めた生産関数 を推計することである。ここでYは民間部門の生 産量(付加価値ベース)を表し、これは、Kp (民間資本)、E(労働投入量)、Kg(社会資本) を結合させることで生み出されるという関係を表 している。また、民間部門は常に利潤最大化行動 をとっているものとし、社会資本は民間部門にと って所与とする。つまり、ここでは民間部門は代 表的民間企業の生産者における主体的な行動を想 定していることに注意されたい。また、ここでは 生産関数の型として、一般性を持つトランスログ 型を用いる。ただし、トランスログ型は推定パラ メータの数が多くなってしまうため、釜田ほか (1994)における推定方法を援用し、完全競争下 における分配率関数との同時推計を行う。また社 会資本は民間部門によって所与としていることに 加えて、生産活動としては社会資本への分配はな いと考え、生産活動によって生み出された利潤は 民間資本と民間の労働投入量に配分されると仮定 する。つまり、民間資本と労働投入量に関する1 次同次性を仮定することを意味する。 よって推定モデルは以下のようになる。 (1) (2) (1)式と(2)式をSUR(Seemingly Unrelated Regression)により同時推計し、パラメータを推 定し、その後に、社会資本が1単位増加すると民 間部門の生産量がどの程度上昇するかを推計する。 ここでは、吉野・中東(1999)と吉野・中島編 (1999)第2章の推定結果を用いて、戦後(1951 年以降)の社会資本の生産力効果の推移を明らか にする。これをまとめたものが図表3である。な お、両者の値が異なっているのは次の3点による。 (1)生産量として政府部門を含めたGDPを用い たか(吉野・中東(1999))、民間部門のみの付 ) ) 2 1 2 1 ( ) ) ( ( ) ( ) ( ( ln Kg ln Kg ln Kg ln Kg ln Kp ln Kp ln Kp ln Kp ln E ln E ln E ln E ln E ln Y 6 β 2 β 3 β 0 α +α1 +α3 + + + − 2 1 − − − − = 2 2 2 = pY wE E ln −β3lnKg Kp ln − ) 1 ( −α +1 β2( ) ) , , (Kp E Kg f Y =加価値ベースの生産量を用いたか(吉野・中島 編(1999)第2章)、およびそれにともなう推 定モデルの違い。 (2)国民経済計算体系が異なっていることによ る数値の違い(吉野・中東(1999)は1953年 SNAを基準に作成されたもので、吉野・中島編 (1999)第2章は1968年SNAを基準に作成した もの)。 (3)ストック系列のデータの違い(吉野・中東 (1999)は筆者の推計を用い、吉野・中島編 (1999)第2章では経済企画庁総合計画局編 (1998)『日本の社会資本―21世紀へのストック』 東洋経済新報社、の表3−14を使用)。 図表3によると、社会資本の生産力効果は、吉 野・中東(1999)、吉野・中島編(1999)第2章 ともに1970年を境にして社会資本の生産力効果が 低下していることがわかる。これは、1970年を境 にして、生産構造に変化があったか、あるいは公 共投資政策に変化があった可能性がある。
第Ⅳ章 産業別の社会資本の生産力効果
ここでは、1975年以降の社会資本の生産力効果 を社会資本の分野別・産業別・地域別に推計する ことによって、公共投資の配分が生産活動に対し て効率的か否かを検証する。 以下では、産業別・分野別・地域別の社会資本 の生産力効果をみるために、前章と同様に生産関 数を用いて推計を行う。各産業(第一次・第二 次・第三次産業)は、各 i 産業とし、 Yi=f(Kpi, Ei, Kgi) (3) という生産関数を仮定する。つまり、各産業ごと で地域別の民間資本・労働投入量・社会資本デー タを用いて推計する。ただし、社会資本データは、 行政投資(旧行政投資実績)の5区分(農林水産 分野・国土保全分野・産業基盤分野・生活関連分 野・その他)それぞれを推計し、行政投資区分の 社会資本それぞれの各産業に対する貢献度合を推 計し、それらをウエートとして各産業ごとに足し 合わせたものを各産業向けの社会資本ストックと して推計する。*5 なお、地域区分は、図表4に示されている。こ こで、都道府県別でなく地域別にしたのは、ある 都道府県の社会資本が周辺の都道府県の生産活動 にも影響を与える社会資本のスピルオーバー効果 (外部効果)を内部化するためである。 なお、ここでは生産関数の推計結果は掲載しな いが、形式的には前章の生産関数(1)式および 労働分配率関数(2)式の同時推計である。各産 業ごとそれぞれについて以下の推定式をSUR (Seemingly Unrelated Regression)で推定する。推計期間 1951∼55年 1956∼60年 1961∼65年 1966∼70年 1971∼75年 直接効果 0.114 0.170 0.236 0.270 0.246 資本間接効果 0.085 0.123 0.162 0.175 0.156 労働間接効果 0.425 0.611 0.871 1.077 1.115 総計 0.624 0.904 1.268 1.522 1.517 推計期間 1955∼59年 1960∼64年 1965∼69年 1970∼74年 1975∼79年 1980∼84年 1985∼89年 1990∼93年 民間資本 0.756 0.730 0.646 0.413 0.312 0.258 0.228 0.200 社会資本 0.648 0.801 0.816 0.080 0.040 0.059 0.253 0.225 図表3 社会資本の生産力効果の時系列推移 出典:吉野・中東(1999)の図2-5の結果を筆者が加工。 吉野・中島編(1999)の表2-4(32ページ)を転載。 吉野・中東(1999)の推定結果 吉野・中島編(1999)第2章の推定結果 *5 産業ごとのウエートの推計方法については吉野・中島編 (1999)第3章を参照。
(4) (5) 推定期間は1975年から1994年までの20年間を地 域でプーリングしたパネル・データによって行 う。地域ごとの推定パラメータは不変としている。 ここでは地域ごとで生産関数だけでは説明できな い地域の特殊要因が存在すると仮定し、固定効果 モデル(fixed effect model)によって推定する。
また、社会資本の生産力効果をより詳細に検討 するために、吉野・中野(1994)と同様に「直接 効果」と「間接効果」に区分して推計する。直接 効果とは、社会資本が増加することによって生産 要素(民間資本・民間労働)の限界生産力が上昇 することによる生産量の増分をさしている。間接 効果は、直接効果による各生産要素の限界生産力 が上昇し、それを踏まえて利潤最大化している民 間企業が生産要素を追加的に投入することによる 生産量の増加の効果をさしている。 これらを図で表現したものが図表5である。図 表5は、民間資本と生産量との関係を記述してい る。社会資本の増加は生産関数の上方へのシフト として表される。図表5の下図は上図を限界生産 力で描いたものである。 図の点Aは、要素価格が所与で社会資本の水準 がKg0のときに、民間企業が利潤最大化のもとで 最適な生産を行っている点である。このときの最 適民間資本量Kp0に対応した生産量はY Aである。 ここで、社会資本がKg0からKg1の水準に引き上げ られたとする。社会資本の生産力効果が正に働け ば、図表5の上図では生産関数が上方にシフトし、 下図の限界生産力曲線も上方にシフトする。それ が点Bである。このときの生産量YBと生産量YAの 差が直接効果にあたる。また、要素価格比r / p(r は資本コスト、pは生産物の価格)が所与である ことに注意すると、要素価格比よりも限界生産力 が社会資本の増加により、上昇するため、民間企 業はさらに民間資本を投入することによって利潤 を上げることができる。そこで、民間企業は民間 資本をKp0からKp1にすることによって利潤最大化 が達成される。よって、民間企業は民間資本を増 加させ、生産量が増加する(点Bから点C)。この とき生産量はYBからYCに上昇しており、この差が 間接効果である。 以上の説明を数学的に記述する。先ほどの説明 と同様に、(1)式の生産関数を仮定し、要素価 格と社会資本が民間部門の生産者にとって所与と すれば、社会資本の生産力効果は (6) と書くことができる。つまり、社会資本の効果は 3つに区分され、(6)式の右辺の第1項が直接 効果に該当し、右辺の第2項が民間資本について の間接効果、右辺の第3項が労働投入量に関する 間接効果を表している。 ここで、上記の社会資本の生産力効果は限界生 産力で表現されている。しかし、(1)式は対数 表現であるため、直接的に計算される社会資本の 生産力効果は弾性値である。社会資本の限界生産 力と対数表現の関係は、 地 域 都道府県 北海道 北海道 東 北 青森県・岩手県・秋田県・山形県・宮城県・福島県 北関東 栃木県・群馬県・茨城県・長野県・山梨県 南関東 埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県 北 陸 新潟県・富山県・石川県・福井県 東 海 静岡県・岐阜県・愛知県・三重県 近 畿 滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県 中 国 鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県 四 国 徳島県・香川県・愛媛県・高知県 北九州 福岡県・佐賀県・長崎県・大分県 南九州 熊本県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県 図表4 産業別社会資本の生産力効果の推計に おける地域区分 出典:吉野・中島編(1999)表3-3より転載。 Kg E E Kg E Kp f ∂ ∂ ∂ ∂ + ( , , ) Kg Kp Kp Kg E Kp f Kg Kg E Kp f dKg dY ∂ ∂ ∂ ∂ + ∂ ∂ = ( , , ) ( , , ) 2 6 3 2 3 2 2 3 1 1 0 ) (ln 2 1 ) ln ln 2 1 ( ln ) ln ln ln 2 1 ( ln ln ln ) 1 ( ln ln Kg Kg E E Kg E Kp Kp Kg E Kp Y β β β β β β α α α α + − − + + + − + + − + + = = = pY wE SE E Y ln ln ∂ ∂ Kg E Kp ln ln ln ) 1 ( −α1 +β2 −β2 −β3 =
で表される。よって、社会資本の生産弾性値に社 会資本の平均生産性(Y/Kg)を乗じることで限界 生産力に修正することができる。なお、本稿では 産業間や地域間の特性を代表的な数値を使って比 較するために、社会資本の平均生産性は、1975年 から1994年の平均値を用いる。 産業別の社会資本の生産力効果の推計結果は図 表6に示される。これによると、産業別の生産力 効果は、大きい順に第三次産業・第二次産業・第 一次産業となっている。これは、第三次産業向け に社会資本を配分することが望ましいことを示唆 している。さらに、各産業で社会資本の生産力効 果を地域間で比較すると、南関東・東海・近畿の 大都市地域で大きく、それ以外の地域では小さく なっている。 図表5 直接効果および間接効果の図による説明 出典:吉野・中島編(1999)図3-3を転載。 C A B C A B ) , , ( 1 Kg Kp E F Y= ) , , (EKpKg0 F Y= C Y B Y A Y K F ∂ ∂ Y Kp Kp 0 Kp 1 Kp p r Kp Kg Kp F ∂ ∂ ( , 1) 0 Kp 1 Kp Kp Kg Kp F ∂ ∂ ( , 0)
{
{
間接効果 直接効果 Kg Y Kg d Y d dKg dY ln ln =第Ⅴ章 分野別の社会資本の生産力効果
分野別の社会資本の生産力効果を推計するため に用いる生産関数を (7) と仮定する。ここで、Kg1は農林水産分野の社会 資本ストックを表し、Kg2は物流効率分野、Kg3は 福祉医療分野、Kg4は教育研究分野、Kg5は環境分 野、Kg6は都市再生分野、Kg7は情報通信分野の社 会資本ストックを表す。なお、各社会資本ストッ クの推計方法は、産業ごとの社会資本ストックに おける行政投資(旧行政投資実績)の区分ごとの 推計方法と同一で(吉野・中島編(1999)を参照)、 情報通信分野については、日本電信電話会社有価 証券報告書を用いて推計した。それぞれの分野の 社会資本を推計するために用いたデータは図表7 にまとめてある。推定式は以下のようになる。 第一次産業 第二次産業 地 域 直接効果 間接効果 総効果 直接効果 間接効果 総効果 北海道 0.004 0.019 0.023 0.108 0.079 0.187 東 北 0.007 0.030 0.037 0.091 0.097 0.188 北関東 0.006 0.033 0.039 0.340 0.249 0.589 南関東 0.005 0.028 0.033 0.391 0.366 0.757 北 陸 0.006 0.016 0.022 0.195 0.143 0.338 東 海 0.007 0.020 0.027 0.468 0.344 0.812 近 畿 0.007 0.019 0.026 0.416 0.305 0.721 中 国 0.006 0.022 0.028 0.231 0.170 0.401 四 国 0.007 0.029 0.036 0.164 0.120 0.284 北九州 0.006 0.031 0.037 0.207 0.152 0.359 南九州 0.004 0.033 0.037 0.137 0.101 0.238 平 均 0.006 0.025 0.031 0.250 0.193 0.443 図表6 産業別・地域別の社会資本の生産力効果の推計結果 注:総効果は直接効果と間接効果の和を表している。 出典:吉野・中島編(1999)表3-12∼表3-14より抜粋。 第三次産業 地 域 直接効果 間接効果 総効果 北海道 0.211 0.212 0.423 東 北 0.251 0.253 0.504 北関東 0.217 0.219 0.436 南関東 0.309 0.311 0.620 北 陸 0.241 0.243 0.483 東 海 0.257 0.259 0.515 近 畿 0.249 0.251 0.500 中 国 0.260 0.262 0.523 四 国 0.269 0.271 0.541 北九州 0.282 0.284 0.566 南九州 0.259 0.261 0.519 平 均 0.255 0.257 0.512 ) , , , , , (Kp E Kg1 Kg2 Kg7 f Y = ... 2 2 1 1 2 2 1 7 8 6 7 5 6 4 5 3 4 2 3 1 2 1 0 ) ln (ln ln ) ln (ln ln ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ln ln ln ln ln ln ln ln ln ) ln (ln ln ln E Kp Kg E Kp Kg E Kp E Kp Kg Kg Kg Kg Kg Kg Kg E Kp E Y γ γ β α α α α α α α α α − + − + − − + + + + + + + + − + = −(8) (9) 前章の産業別の生産力効果と異なる点は、生産 量Y、民間資本Kp、労働投入量Eは地域の産業全 体の数値を用いていることである。つまり、この 分析は、地域の民間部門の生産に対する各分野の 社会資本の生産力効果を推計することになる。こ の実証分析では、わが国の10地域(北海道、東北、 関東、信越、北陸、東海、近畿、中国、四国、九 州)のデータを1985年度から1994年度までプール したパネル・データによる分析を行う。それぞれ の地域に含まれる県は、図表8に示されている。 10地域に分けた理由は、産業別の社会資本の生産 力効果の推計での場合と同様、社会資本にはスピ ルオーバー効果(外部効果)が働くため、県別の データでは、県外への社会資本の効果を捕捉でき ないと考えられるためである。ただし、産業別の 社会資本の生産力効果における地域区分と同一で ないのは、使用した1次統計の制約をもとに地域 区分をする必要があったことによる。 推定結果を図表9に掲示する。これを産業別の 社会資本の生産力効果の推計で用いた方法を適用 し、社会資本の分野別生産力効果の推定結果を示 したものが図表10である。なお、これは産業別の 社会資本の生産力効果(図表6)と異なり、分野 別社会資本の地域全体の生産量への影響であるこ とに留意されたい。分野別では、平均的に情報通 信や環境向けの社会資本の生産力効果が大きいこ とがわかる。また各分野について地域別で比較す ると、産業別での結果と同様に、大都市圏を含む 関東・近畿・東海地方で高く、北海道や九州地方 で低いという結果が得られる。
第Ⅵ章 まとめ:日本の経験(戦後)
と途上国開発
本稿は、第二次世界大戦後の日本における公共 投資の効果のうち、長期的な効果としての社会資 本の生産力効果について、マクロの効果および産 業別・分野別・地域別効果を推計し社会資本と経 済発展の関係を明らかにした。マクロの社会資本 の生産力効果を時系列でみると、1970年を境にし てマクロ的な効果は減少に転じていることが明ら 2 7 7 2 6 6 2 5 5 2 4 4 2 3 3 2 2 2 2 1 1 7 7 6 6 5 5 4 4 3 3 ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ) (ln 2 1 ) ln (ln ln ) ln (ln ln ) ln (ln ln ) ln (ln ln ) ln (ln ln Kg Kg Kg Kg Kg Kg Kg E Kp Kg E Kp Kg E Kp Kg E Kp Kg E Kp Kg δ δ δ δ δ δ δ γ γ γ γ γ + + + + + + + − + − + − + − + − + 7 7 6 6 5 5 4 4 3 3 2 2 1 1 1 1 ln ln ln ln ln ln ln ) ln (ln ) 1 ( Kg Kg Kg Kg Kg Kg Kg E Kp pY wE γ γ γ γ γ γ γ β α + + + + + + + − + − = 地 域 都道府県 北海道 北海道 東 北 青森県・岩手県・秋田県・山形県・宮城県・福島県 関 東 栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・ 神奈川県・山梨県 信 越 長野県・新潟県 北 陸 富山県・石川県・福井県 東 海 静岡県・岐阜県・愛知県・三重県 近 畿 滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県 中 国 鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県 四 国 徳島県・香川県・愛媛県・高知県 九 州 福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・熊本県・宮崎県・ 鹿児島県・沖縄県 図表8 分野別社会資本の生産力効果の推計に おける地域区分 出典:吉野・中田・中東(1999)表2より転載。 出典:吉野・中田・中東(1999)表1より転載。 分 野 農林水産 物流効率 福祉医療 教育研究 環境 都市再生 情報通信 使用 1 次統計 行政投資実績中分類「農林水産」「治山治水」「海 岸保全」 行政投資実績小分類「国県道」中分類「港湾」「空 港」 行政投資実績中分類「厚生施設」 行政投資実績中分類「文教施設」総務庁統計局「科 学技術研究調査」 行政投資実績中分類「環境衛生」 行政投資実績中分類「都市計画」「街路」「住宅」「水 道」「工業用水道」小分類「市町村道」 日本電信電話会社有価証券報告書 図表7 分野別社会資本の推計のための 1次統計一覧図表9 (8)式および(9)式の体系の推定結果 Parameter 変 数 推定値 t値 α1 ln Kp−ln E 0.512 1.940* α2 ln Kg1 0.107 1.045 α3 ln Kg2 0.153 1.448 α4 ln Kg3 ― ― α5 ln Kg4 0.073 1.120 α6 ln Kg5 0.332 1.568 α7 ln Kg6 ― ― α8 ln Kg7 ― ― β1 (※) ― ― γ1 ln Kg1(ln Kp−ln E) ― ― γ2 ln Kg2(ln Kp−ln E) ― ― γ3 ln Kg3(ln Kp−ln E) −0.110 −3.524*** γ3dd(+) −0.109 −3.334*** γ4 ln Kg4(ln Kp−ln E) 0.014 1.301 γ5 ln Kg5(ln Kp−ln E) 0.022 0.535 γ6 ln Kg6(ln Kp−ln E) 0.065 1.530 γ7 ln Kg7(ln Kp−ln E) −0.020 −2.190** δ3 1/2(ln Kg3)2 −0.081 −3.939*** 注:1)「t値」欄にある記号について *** パラメータが1%水準で有意である ** パラメータが5%水準で有意である * パラメータが10%水準で有意である 2)(※) ln Kp ln E − (ln Kp)2− (ln E)2 3)推定値の「−」は推定式には含まれないことを表している。また、 δ3を除く分野ごとの社会 資本の対数の累乗の係数パラメータは最終的な推定式には含まれていない。 4)γ3d(+)は関東地方の係数ダミーの推定パラメータを表している。 決定係数 生産関数 R2=0.978 労働分配率関数 R2=0.132 推定パラメータ 1 2 1 2 図表10 社会資本の分野別・地域別生産力効果 農林水産 物流効率 福祉医療 教育研究 環境 都市再生 情報通信 北海道 0.15 0.22 0.97 0.22 4.71 0.07 4.69 東北 0.23 0.32 0.94 0.32 6.30 0.07 5.57 関東 1.30 1.85 −2.10 0.82 8.18 0.07 8.26 信越 0.23 0.33 0.84 0.18 3.98 0.07 6.89 北陸 0.25 0.36 3.33 0.20 7.12 0.07 7.26 東海 0.56 0.80 0.92 0.51 6.97 0.07 9.82 近畿 0.87 1.25 −0.49 0.55 8.08 0.07 7.23 中国 0.33 0.48 1.33 0.32 5.72 0.07 6.52 四国 0.22 0.32 1.50 0.23 3.87 0.07 5.84 九州 0.32 0.46 0.12 0.40 7.10 0.07 6.14 全国平均 0.45 0.64 0.73 0.37 6.20 0.07 6.82 直接効果
出典:吉野・中田・中東(1999)表3より転載。 農林水産 物流効率 福祉医療 教育研究 環境 都市再生 情報通信 北海道 0.19 0.19 −2.51 0.27 5.06 0.29 2.51 東北 0.55 0.37 −4.08 0.49 8.70 0.43 4.26 関東 15.27 1.81 −9.26 1.10 9.74 0.43 5.15 信越 0.50 0.33 −2.21 0.25 4.90 0.29 4.51 北陸 0.66 0.40 −2.04 0.30 9.57 0.47 5.36 東海 3.17 0.87 −6.80 0.76 9.23 0.51 7.09 近畿 7.33 1.29 −6.35 0.78 10.12 0.39 4.83 中国 1.13 0.52 −4.02 0.48 7.56 0.45 4.69 四国 0.55 0.38 −2.26 0.36 5.46 0.50 4.58 九州 1.04 0.50 −4.79 0.58 9.34 0.45 4.38 全国平均 3.04 0.67 −4.43 0.54 7.97 0.42 4.74 間接効果(資本) 農林水産 物流効率 福祉医療 教育研究 環境 都市再生 情報通信 北海道 0.18 0.25 4.96 0.17 4.31 −0.19 7.18 東北 0.20 0.28 5.31 0.17 4.21 −0.25 6.71 関東 1.33 1.90 5.22 0.53 6.59 −0.30 11.45 信越 0.23 0.32 3.85 0.11 3.07 −0.15 9.24 北陸 0.23 0.32 8.14 0.11 4.92 −0.30 8.96 東海 0.51 0.73 7.97 0.29 4.92 −0.34 12.31 近畿 0.85 1.21 5.19 0.33 6.11 −0.25 9.55 中国 0.30 0.43 6.21 0.18 4.04 −0.29 8.19 四国 0.19 0.27 4.71 0.12 2.52 −0.30 6.91 九州 0.29 0.42 4.62 0.22 5.04 −0.29 7.75 全国平均 0.43 0.61 5.62 0.22 4.57 −0.26 8.83 間接効果(労働) 農林水産 物流効率 福祉医療 教育研究 環境 都市再生 情報通信 北海道 0.52 0.66 3.42 0.65 14.08 0.16 14.38 東北 0.97 0.98 2.17 0.98 19.20 0.24 16.53 関東 17.90 5.56 −6.14 2.45 24.52 0.19 24.86 信越 0.95 0.98 2.48 0.54 11.95 0.20 20.64 北陸 1.13 1.08 9.42 0.61 21.60 0.24 21.57 東海 4.23 2.40 2.08 1.55 21.12 0.24 29.22 近畿 9.05 3.75 −1.65 1.66 24.31 0.21 21.61 中国 1.76 1.43 3.52 0.98 17.32 0.23 19.40 四国 0.97 0.97 3.95 0.70 11.85 0.26 17.33 九州 1.65 1.37 −0.06 1.20 21.48 0.23 18.27 全国平均 3.91 1.92 1.92 1.13 18.74 0.22 20.38 直接効果+間接効果
かとなった。次に、公共投資が生産効率的に配分 されていない可能性に鑑み、産業別・分野別・地 域別の社会資本の生産力効果を推計した。その結 果、①産業別においては第三次産業の社会資本の 生産力効果は大きいこと、②分野別では情報通信 分野や環境向けの社会資本の生産力効果が高いこ と、③地域別でみると南関東・近畿・東海など大 都市圏を含む地域においてその効果が高いこと、 が示された。 最後に、この分析の結果を途上国の開発という 観点から眺めるために、社会資本と経済成長の関 連性を統計データから検討する。 図表11 戦前日本における公的投資の対GNP比 出典:大川ほか(1971)『国民所得』第18表および第21表より筆者が作成。 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 1885 1890 1895 1900 1905 1910 1915 1920 1925 1930 1935 1940(年) 公的投資/GNP 非軍事部門公的投資/GNP 図表12 日本における社会資本に対するGNPの比率(1905∼60年) 出典:社会資本は、大川ほか(1971)『資本ストック』の参考表3に掲載されている経済企画庁総合計画局計量班「長 期マクロモデル基礎統計資料作業表」(昭和39年12月謄写)を基礎とし、若干の調整を加えた政府資本ストック を使い、GNPは1905∼39年までは大川ほか(1971)の数値を用い、1950∼60年は大蔵省財政史室編『昭 和財政史−終戦から講和まで−』第19巻の8(イ)表を用いた。なお、両者は基準価格が異なるため、両者の重 複している部分でデフレータを調整して基準価格をそろえた。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 1905 1910 1915 1920 1925 1930 1935 1954 1959 (年)
はじめに、日本の公共投資比率を戦後の水準と 比較する。図表11は、日本の明治時代から第二次 世界大戦前の1940年までの「公的投資の対GNP比」 を表したものである。*6非軍事部門(図表11の実線) での「公的投資の対GNP比」の推移をみると、戦 後のそれと比べて平均的に低い水準である。次に、 社会資本の生産への寄与をみるために、社会資本 1単位あたりの生産量を時系列で追ったものが図 表12である。これによると、第二次世界大戦前は、 漸次的に低下傾向にあり、戦後も1960年(昭和35 年)以降は、戦前の水準に戻るものの、それ以前 は非常に低い水準である。さらに第二次世界大戦 図表13 日本における社会資本の伸び率と実質GNPの伸び率 出典:図表12で使用した数値を筆者が加工。 −0.1 −0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 1905 1910 1915 1920 1925 1930 1935 1954 1959 (年) 社会資本伸び率 実質GNP成長率 *6 軍事支出は、軍艦などの設備を投資支出とみなすこともあるが、現在の国民経済計算体系ではすべて中間消費として扱われて いる。 図表14 タイにおける公的投資の対GDP比と実質GDP成長率
出典:GDPはNESDB(National Economic and Social Development Board)より提供されている生産系列での GDPを用いている。また、公的投資として用いる公的資本形成については1960年まで遡及されていないため、 筆者が加工した。 0.03 0.05 0.07 0.09 0.11 0.13 0.15 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 (年) 公的投資の対GDP比 実質GDP成長率
における損害はさほど大きくないことが知られて いることを考えれば、戦後のGNPが極端に低い水 準になったことが考えられる。*7また、図表13は 1905年から1960年までの社会資本の伸び率と実質 GNPの伸び率を描いたものである。社会資本の伸 び率は戦前戦後で大きく変化しないが、実質GNP は平均的に戦後高い水準にあることがわかる。よ って第二次世界大戦後の社会資本の生産力効果が 高いのは、高水準の社会資本が存在したためであ るという解釈も可能である。これを社会資本整備 が進んでいない途上国において同一の枠組みで議 論するのは難しいように思われる。このため、日 本の場合は経済発展と社会資本との関係について 言及するには第二次世界大戦前までのデータによ 図表16 タイにおける社会資本の平均生産性の推移 出典:図表15において使用したデータを筆者が加工。 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 (年) 図表15 タイにおける社会資本の伸び率と実質GDPの成長率 出典:実質GDPは生産系列での実質GDPを用い、社会資本はNESDBのホームページ(http://www.nesdb.go.th)よ り取得した。 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 1971 1976 1981 1986 1991 1996(年) 社会資本伸び率 実質GDP成長率 *7 第二次世界大戦による損害額については、大蔵省財政史室編『昭和財政史−終戦から講和まで』を参照されたい。
る分析が必要だと考えられる。 次に、最近急激な成長をみせているタイについ て社会資本と経済成長との関係を上述と同様の方 法で比較してみる。図表14は、1960年から1996年 までの公的総固定資本形成の対GDP比を表したも のである。これによると、途中2度急激な低下を みせるところがあるものの、平均して7%以上の 高い水準で推移していることがわかる。これは日 本における第二次世界大戦後の水準と類似してい る。また、図表14に参考系列として実質GDP成長 率を併記したが、1980年を境に変動のパターンに 相関がみられなくなっている。また、社会資本の 伸び率と実質GDPの伸び率を併記したものが図表 15である。両者の間に強い相関はみられない。し かし、平均的な動向をみるために社会資本の平均 生産性をグラフにしたもの(図表16)をみると、 社会資本が平均的に蓄積されてきていることがわ かる。これは日本の第二次世界大戦前のパターン に類似しているようにも思われる。 以上を踏まえ、現在、日本の第二次世界大戦前 について社会資本の生産力効果について本稿と同 様の分析を進めている。今後は、この結果とアジ ア諸国における分析と接合して社会資本と途上国 開発との関係を明らかにしたいと考えている。 参考文献 [和文文献] 釜田公良・河村真・竹内信仁・水野晶夫(1994) 「公共投資と財政収支―高雇用余剰の実証分 析」『経済研究』45、31∼40ページ 小浜裕久・渡辺真知子(1996)『戦後日本経済の 50年―途上国から先進国へ』日本評論社 中田真佐男(2000)「AS-ADマクロ計量モデルに よる中期的な財政シミュレーション」、小川 是・麻生良文・畑農鋭矢・中田真佐男『日本 経済社会の再生と財政再建の道筋』 経済政 策研究所報告書 第4章99∼186ページ 吉野直行・嘉治佐保子・亀田啓悟(1998)「金融 政策手段とケインズ乗数」『フィナンシャル レビュー』45号 吉野直行・中島隆信編(1999)『公共投資の経済 効果』日本評論社 吉野直行・中田真佐男・中東雅樹(1999)「社会 資本の分野別生産力効果と公共投資シミュレ ーション」小野善康・吉川洋編『経済政策の 正しい考え方』東洋経済新報社 第5章 吉野直行・中野英夫(1994)「首都圏への公共投 資配分」 八田達夫編『東京一極集中の経済 分析』 日本経済新聞社 168∼170ページ 吉野直行・中東雅樹(1999)「高度成長期から今 日に至る社会資本の生産力効果に関する実証 分析」日本経済研究センター社会資本整備研 究会 実証小委員会報告書『社会資本の効果 を問う』17∼28ページ [英文文献]
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