介護予防教室参加者における運動の継続に関連する要因
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(2) 512. 理学療法学 第 42 巻第 6 号. 図 1 Health Action Process Approach(HAPA)モデル SE: Self-Efficacy,Ma-SE: Maintenance Self-Efficacy,Re-SE: Recovery Self-Efficacy. て,行動変容ステージが後期になるほど行動意図があり 9). ている。HAPA によると行動継続には行動意図が直接. 行動の実践水準が高く ,行動変容ステージの段階に応. 結びつくわけではなく,行動継続と行動意図の間に行動. じた介入により身体活動を有意に増加させることが報告. プランの過程を設定している。意図段階において行動プ. されている. 10). 。. ランの有無と行動の継続が関係することより,適切な行. 健康行動に至る心理的過程を示したモデルに Health 11). Action Process Approach( 以 下,HAPA). が あ り,. 欧州では身体活動の予測モデルとしての有用性が示され ている. 12). (図 1) 。HAPA では行動意図を確立し,運動. 動プランの設定は行動の継続に結びつく可能性が高い。 行動プランとは「いつ」,「どこで」 「なにを行うか」と いう具体的なプランを指す。「どこで」という環境的因 子. 14). ,「なにを行うか」という運動の種類 15),この 2. を開始する動機づけ段階(Motivational Phase)と,行. つと運動継続との関連については多くの研究が報告され. 動を継続する意図段階(Volitional Phase)の 2 つの時. ている。しかし, 「いつ」行うのが運動継続に有効かと. 期を仮定している。動機づけ段階においては運動をしな. いう先行研究は見あたらない。. いことによるリスクを認知すること,運動により得られ. 運動を行っている者は意図段階にある者と推定される. る結果への期待,Self-Efficacy(以下,SE)を高めるこ. が,運動を継続できている者と継続できていない者では. とが行動意図と関係する。一方意図段階では,行動意図. 行動プランの有無や内容に違いがあると推測される。行. は直接的に行動に結びつくわけではなく,行動意図と行. 動プランの「いつ」に焦点をあてて,どのような行動プ. 動の間には Planning の存在を想定している。Planning. ランが運動継続に関連しているかを検証することは,運. に は Action Planning( 行 動 プ ラ ン ) と Coping Plan-. 動の継続を支援するための効果的な介入方法を検討する. ning の 2 種類を想定しており,行動プランとはいつ,. ために重要であると考える。. どこで,どんな行動をするかという具体的なプランを示. そこで,本研究の目的は,介護予防教室参加者におい. し,Coping Planning とは想定される様々な場面に対処. て,意図段階にある者の運動継続に関連する要因を明ら. する具体的なプランを示す。さらに,動機づけ段階と意. かにし,運動継続を効果的に支援する方法を示すことで. 図段階で異なる SE があり,意図段階においては行動を. ある。. 持続するために Maintenance Self-Efficacy(以下,MaSE)と何回か休んでも再開できる自信(Recovery SelfEfficacy( 以 下,Re-SE) ) が 関 係 し て い る。 一 方, Burkert ら. 13). はがん患者を対象として運動の継続と. 対象および方法 1.対象 本研究は 2013 年 9 月∼ 12 月に開催された一次予防,. SE の関連を調査し,Ma-SE は運動の継続と関連がな. 二次予防の介護予防運動教室,および二次予防教室終了. かったが,Re-SE は運動の継続と関連していたことを報. 後のフォローアップ調査に参加した茨城県 J 市と Y 町の. 告している。このことから,Re-SE は運動の継続を維持. 地域在住の 65 歳以上の高齢者を対象とした横断研究で. するために重要な役割を担っているといえる。. ある。一次予防教室は一般高齢者を対象として月 1 ∼ 2. つまり,行動の開始を支援する時期と行動の継続を支. 回の頻度で実施され,いつでも自由に参加できるもので. 援する時期では異なる支援方法が必要であることを示し. ある。二次予防教室は基本チェックリストに該当する二.
(3) 介護予防教室参加者における運動の継続に関連する要因. 513. 次予防事業対象者に対し,週に 1 回,1 回 90 分,全 12. 身体機能として,運動機能検査は握力,5 回立ち上が. 回(約 3 ヵ月間)行うものである。いずれも教室の内容. り,timed“up & go”test(以下,TUG),5 m 歩行速. は運動指導などをおもに行い,心理的な介入は行ってい. 度を測定した。握力はデジタル式握力計を使用し,利き. ない。フォローアップ調査は二次予防教室に参加した者. 手の最大握力を立位にて 2 回計測し,最大値を代表値と. を対象に 1 年後の身体機能の変化を調査するものである。. して採用した。5 回立ち上がりはできるだけ速く 5 回の. 研究への参加は対象者に本研究における目的,自由意志. 立ち座りに要する時間を 2 回計測した. による参加を説明したうえで,質問紙に答えることで同. 座位から 3 m 前方のポールを回って着座するまでの時. 意を得たとみなすことを了解のうえ実施した。対象者の. 間を 2 回計測し速い値を代表値とした. 除外基準として,質問の内容が理解できない者,同意が. 度は 5 m の歩行を楽な速さで歩いたときの時間を計測. 得られなかった者とした。本研究は筑波大学医の倫理委. した。歩行路の両端には 3 m の予備路を設けて計測を. 員会の承認を得て実施した。 (承認番号 第 801 号). 実施した。. 17). 。TUG は椅子. 18). 。5 m 歩行速. 質問紙により,身体機能は以下の 6 項目を調査した。 2.調査方法. 移動能力は「自立:1,手すりまたは補装具使用:0」と. 調査は自記式質問紙を用いて行った。一次予防教室は. し,屋内・屋外のそれぞれの移動能力を調査した。転倒. 通常行われている教室内で調査を行った。二次予防教室. スコアは,鳥羽ら. の参加者においては,全 12 回の教室の第 1 回目(開始時). 危険因子 21 項目に対し,「はい:1,いいえ:0」の 2 件. に調査を行った。フォローアップ調査は教室参加後 1 年. 法で回答し合計点数が 7 点以上で転倒のリスクが高いと. 後に実施した。いずれもその場で回収した。調査内容に. 判断する。手段的 ADL(IADL)は老研式活動能力指. ついて質問や説明を求められた場合,必要に応じて調査. 標. 者がその説明を行った。視力が低下して文字が読めない. の 2 件法で回答し,得点が高いほど活動能力が高いこと. 場合には必要に応じて読み上げて調査した。加えて,二. を示す。虚弱の評価として Frailty Index for Japanese. 次予防教室参加者とフォローアップ調査で同意を得た者. elderly( 以 下,Frailty Index) を 用 い た. (N = 96)に対し,身体機能 4 項目を測定した。. 20). 19). による転倒スコアを用いた。転倒. を用い,13 項目について「はい:1,いいえ:0」. 21). 。Frailty. Index は特に高齢者の「閉じこもり」 「転倒」「低栄養」 に着目した評価で,15 項目について「リスクあり:1, リスクなし:0」の 2 件法で回答し,4 点以上を虚弱と. 3.調査内容 調査の冒頭で,「定期的な運動」とは国民健康・栄養 4). して判断する。痛みの有無は「痛む場所がありますか」. 調査の定義を参考とし ,労働や家事以外の余暇時間で. という質問に対し「ある:1,ない:0」の 2 件法で回答. 健康や体力向上を目的に 1 回 30 分以上,週 2 回以上行. を求めた。. うものとした。. 4)社会参加. 1)運動状況. 社会参加については運動継続に対して関連が報告され. 運動状況は運動習慣の行動変容ステージを用いて調査 した。これは,岡. 16). により信頼性および妥当性が報告. されている運動行動の変容段階尺度である。定期的な運. ている変数を用いた. 22) 23). 。外出頻度は「毎日 1 回以上」,. 「2,3 日に 1 回程度」,「1 週間に 1 回程度」 ,「ほとんど ない」の 4 件法で尋ねた。交流会への参加は「いつも」. 動を 5 つのステージにより回答を求めた。各項目の内容. 「ときどき」「たまに」「まったく参加していない」の 4. は定期的な運動を 6 ヵ月以上継続している「維持期」 ,. 件法で,趣味の有無は「あり:1,なし:0」の 2 件法で. 定期的に運動をしているがはじめてから 6 ヵ月以内であ. 回答を得た。. る「実行期」,運動しているが定期的ではない「準備期」,. 5)心理的要因. 近い将来に運動をはじめようと思っている「関心期」 ,. 以下の 6 項目を調査した。1)行動プランの「いつ」. これから先も運動するつもりはない「無関心期」である。. に関する 2 項目を調査した。1)‒ ①運動の生活パターン. 回答方法は,これら 5 項目の中で現在の自分の考えや行. への組みこみの有無,「運動は毎日の生活の中に組みこ. 動にあてはまるものを一つ選択する方法である。. まれていますか」 ,1)‒ ②運動を行う時間, 「運動を行う. 2)基本属性. 時間は決まっていますか」という質問に対し「はい:1,. 年齢,性,身長,体重の 4 項目とし,BMI は体重(kg) 2. 2. いいえ:0」の 2 件法で回答を求めた。2)運動の促進要 24). (kg/m )以上を肥満あ ÷身長(m) で計算し,BMI25. 因,3)阻害要因は石井ら. りとした。. 促進要因・阻害要因尺度を用いた。促進・阻害要因とも. による簡易版運動習慣の. 3)身体機能. に 10 項目について「まったくそう思わない:1 ∼まっ. 運動機能検査および質問紙を用いて身体機能を測定. たくそう思う:5」の 5 件法で回答を求め,最高得点は. した。. 50 点である。促進要因は得点が高い方が促進要因を強.
(4) 514. 理学療法学 第 42 巻第 6 号. 図 2 対象者の分類. く認知していることを示し,阻害要因は得点が高い方が. SPSS21.0 for Windows を使用し,有意確率は p = 0.05. 阻害要因を強く認知していることを示すものである。4). とした。. SE は岡. 25). による運動に対する SE(運動 SE)を用いた。. 4 項目について「まったくそう思わない:1 ∼かなりそ. 結 果. う思う:5」の 5 件法で回答を求め,得点が高いほど運. 調査に同意の得られなかった者はおらず,全対象 309. 動 に 対 す る 自 信 が 高 い 状 態 を 示 す。5)Re-SE は. 名のうち,記入漏れ等で質問紙に不備があった者 9 名を. Schwarzer. 12). の運動を再開する自信を参照し, 「何回か. 除 外 し た。 最 終 解 析 対 象 者 は 300 名( 有 効 回 答 率. 休んだとしても,運動を再開する自信がありますか」と. 97.1%)で,男性 49 名(16.3%),女性 251 名(83.7%). いう質問に対し, 「まったくそう思わない:1 ∼かなり. であり,平均年齢は 76.1 ± 6.3 歳であった。一次予防事. そう思う:5」の 5 件法で回答を求めた。. 業 参 加 者 は 167 名(55.7 %), 二 次 予 防 事 業 は 36 名 (12.0%),フォローアップ調査は 97 名(32.3%)であっ. 4.統計学的解析方法. た。すべての対象者は横断調査であり,重複する者はい. 運動状況を把握するため,運動習慣の行動変容ステー. なかった。. 8). に基づき,維持期の者を「継続群」 ,実行期・準備. 外出頻度について「2,3 日に 1 回程度」 ,「1 週間に 1. 期の者を「不安定群」,関心期,無関心期の者を「未実. 回程度」と答えた者が少数だったため,閉じこもりの. 施群」とし,3 群に分類して比較した(図 2)。カテゴリー. カットオフ値とされている. ジ. 2. 23). 「週 1 回以上:1,週 1 回. 変数については χ 検定,正規分布している連続変数は. 未満:0」の二区分変数に変更した。また,交流会への. 一元配置分散分析を行った。一元配置分散分析で有意差. 参加についても「ときどき」,「たまに」と回答したもの. を認めた場合には Tukey の方法を用いて多重比較法を. が少数だったため「いつも」は「参加する:1」, 「とき. 行った. 26). 。正規分布していない変数は Kruskal-Wallis. どき」 「たまに」 「まったく参加していない」を併せて「参. 検定を適用し,有意差を認めた場合には 2 群間の比較を. 加しない:0」の二区分変数に変更した。. Mann-Whitney 検定を用いて行い,Bonferroni の調整に. 対 象 者 の 運 動 状 況 は, 継 続 群 56.7 %, 不 安 定 群. より p < 0.017 を有意差ありとした。. 26.7%,未実施群 16.6%であった。3 群間の比較では,. 次に,意図段階にある「継続群」と「不安定群」を比. 身 体 機 能 を 示 す 屋 外 移 動 能 力, 転 倒 ス コ ア,IADL,. 較して運動継続に関連する要因を検討した。運動継続の. Frailty Index において有意差が見られた。また,社会. 有無を従属変数とし,その他の変数を尤度比による変数. 参加を示す外出頻度は,交流会への参加,趣味の有無に. 減少法を用いて多重ロジスティック回帰分析を行った。. おいて,3 群間で有意な差を認めた。さらに,心理的要. 分析を行うにあたり,多重共線性の問題を考慮し,独立. 因について,生活パターンへの組みこみ,運動する時間,. 変数同士間での相関分析を Spearman の順位相関係数を. 促進要因,阻害要因,運動 SE,Re-SE において,3 群. 用いて解析し,相関係数が 0.9 以上. 27). の高い相関とな. る除外項目の有無を確認した。統計用ソフトウェア. 間で有意差が見られた(表 1)。 次に,意図段階にある者(継続群と不安定群)におい.
(5) 介護予防教室参加者における運動の継続に関連する要因. 515. 表 1 運動状態に基づく 3 群間の比較(N=300). 対象者数. 3 群間 比較. 未実施群. 不安定群. 継続群. 50(16.6% ). 80(26.7% ). 170(56.7% ). 35(70.0% ). 68(85.0% ). 148(87.1% ). N.S.. 76.9 ± 6.8. 76.4 ± 6.3. 75.8 ± 6.1. N.S.. 20(69.0% ). 33(61.1% ). 88(68.8% ). N.S.. 22.7 ± 9.1. 18.7 ± 4.5. 20.1 ± 5.3. N.S.. 多重 d) 比較法. <基本属性> 性別. a). 年齢. b). 女性. 肥満の有無 a). なし. <身体機能> b) 握力 (n=96) b). 5 回立ち上がり (n=96). 10.6 ± 2.4. 11.3 ± 4.7. 10.0 ± 2.7. N.S.. timed“up & go”test b)(n=96). 10.4 ± 4.2. 10.1 ± 2.7. 9.3 ± 1.6. N.S.. 5.4 ± 1.5. 5.2 ± 1.3. 5.1 ± 1.1. N.S.. 46(92.0% ). 69(86.3% ). 162(95.3% ). 2(4.0% ). 7(8.8% ). 5(3.0% ). 独歩. 42(87.5% ). 56(77.8% ). 149(94.3% ). 手すり / 押し車. 6(12.5% ). 16(22.2% ). 9(5.7% ). p<0.01. 8.9 ± 5.1. 7.1 ± 5.5. 7.3 ± 7.5. p<0.01. なし. 33(66.0% ). 51(63.7% ). 116(68.2% ). N.S.. 10.4 ± 3.1. 10.7 ± 4.0. 11.2 ± 3.3. p<0.01. 2.9 ± 2.6. 1.6 ± 1.8. 1.4 ± 1.9. p<0.01. あり. 38(77.6% ). 59(76.6% ). 115(70.6% ). N.S.. 外出頻度 a). 週に1回以上. 31(63.3% ). 57(79.2% ). 147(89.1% ). p<0.01. 交流会への参加 a). 参加する. 16(33.3% ). 39(53.4% ). 102(61.4% ). p<0.01. あり. 28(68.3% ). 53(91.4% ). 140(95.2% ). p<0.01. あり. 3(8.8% ). 42(53.2% ). 153(90.0% ). p<0.01. b) 5 m 歩行速度 (n=96). 屋内移動能力. a). 独歩 手すり / 押し車. 屋外移動能力. 転倒スコア. a). c). 転倒の有無 a) IADL. c). Frailty Index c) 痛みの有無. a). N.S.. *. <社会参加>. 趣味の有無. a). <心理的要因> 生活パターンへの組みこみ 運動する時間. a). a). 決まっている. 促進要因合計得点 c) 阻害要因合計得点 運動 SE 合計得点. c) c). 何回か休んでも再開する自信. c). 3(9.1% ). 26(32.9% ). 118(69.8% ). p<0.01. 33.7 ± 11.0. 36.0 ± 11.4. 36.8 ± 11.7. p<0.01. 21.4 ± 9.3. 20.4 ± 8.9. 18.1 ± 8.0. p<0.01. 9.6 ± 4.4. 12.6 ± 3.4. 15.0 ± 3.5. p<0.01. *, †, §. 3.3 ± 1.2. 3.9 ± 0.8. 4.3 ± 0.7. p<0.01. *, §. 人数(%),数値は平均値± SD を示す. a)χ 2 検定,b)一元配置分散分析,c)Kruskal-Wallis 検定,d)Bonferroni の調整を表す. N.S.:Not significant,*:未実施群 v.s. 継続群(p<0.017),†:不安定群 v.s. 継続群(p<0.017) ,§:不安定群 v.s. 継続群(p<0.017). て,運動継続の有無を従属変数とし,多重ロジスティッ. の運動継続と,運動を生活パターンに組みこむことおよ. ク回帰分析を行った。それぞれの変数について多重共線. び Re-SE が関連することが明らかになった。. 性の確認を行ったところ,相関係数 0.9 以上の高い相関 を示す項目はなかった。その結果,運動の生活パターン. 1.運動状況に基づく 3 群間の比較. への組みこみ(Odds Ratio (OR): 10.04, 95% Confidence. 運動状況による 3 群間の比較では屋外移動能力,転倒. Interval (CI) : 3.36‒30.03) ,Re-SE(OR: 2.36, 95% CI: 1.26‒. スコア,IADL,Frailty Index において有意差がみられ. 4.42) ,屋外移動能力(OR: 3.17, 95% CI: 1.01‒9.96)が運. た(表 1) 。歩行能力低下は転倒のリスク因子であり. 動継続の独立した因子であった(表 2)。 考 察. 虚弱の一要因である. 29). 28). ,. と報告されているように,本研. 究の結果からも運動習慣があることで歩行能力を維持で き,転倒予防や虚弱のリスク低減になる可能性が示され. 本研究は,意図段階にある者の運動継続にかかわる要. た。さらに,高齢者がもっとも多く行っている運動の種. 因を明らかにし,運動継続を効果的に支援する方法を示. 類はウォーキングであり. すことを目的に行った。本研究から,意図段階にある者. より運動ができなくなることが想定される。また,外出. 15). ,歩行能力が低下することに.
(6) 516. 理学療法学 第 42 巻第 6 号. 表 2 運動継続に関連する要因 多重ロジスティック回帰分析(N=250) 独立変数. OR(95% CI). 生活パターンへの組みこみあり(vs なし) Re-SE 屋外移動自立(vs 補装具使用). 10.04 (3.36‒30.03). **. 2.36 (1.26‒4.42). **. 3.17 (1.01‒9.96). *. 2. Hosmer-Lemeshow 検定:χ = 5.485(自由度 3),P = 0.140 Nagelkerke R2 乗:0.379 OR: Odds Ratio,95% CI: 95% Confidence Intervals <従属変数> 運動継続の有無(継続群:1,不安定群:0) <独立変数> 性別(女性:1,男性:0),年齢,肥満の有無(BMI25 以上:1, BMI24 以下:0), 屋外・屋外移動能力(自立:1,手すり / 押し車:0),転倒スコア合計得 点,IADL 合計得点,Frailty Index 合計得点,外出頻度(週 1 回以上:1, 週 1 回未満:0),交流会への参加(参加する:1,参加しない:0),趣味 の有無(あり:1,なし:0),生活パターンへの組みこみ(あり:1,なし: 0),運動する時間(決まっている:1,決まっていない:0),促進要因合 計得点,阻害要因合計得点,運動 SE 合計得点,Re-SE(まったくそう思 わない:1 ∼まったくそう思う:5) * P < 0.05;** P < 0.01. 機会が減ることで身体機能の低下を引き起こすことが報 告されていることからも. 23). ,歩行能力を維持することは. で運動が継続する可能性があることを示している。高齢 者は時間判断力が低下していくことが報告されてい 31). 。自由時間が多く 32),時間的な余裕のある高齢者. 高齢者の介護予防に重要な役割を示すと考えられる。. る. 社会参加を示す外出頻度,交流会への参加,趣味の有. においては,きちんと定刻を決めた時間的なプランを与. 無は 3 群間で有意差を認めた(表 1) 。高齢者は仲間と. えるよりも,毎日行う食事や入浴などの日常生活活動に. 一緒に運動を行うことで運動を継続できることが報告さ. 付随して行うような「運動を生活パターンに組みこむ」. れている. 30). 。さらに,新開ら 23) は社会参加が減るこ. ことで運動を認識し運動継続に効果的であることが推察. と(いわゆる「閉じこもり」)によって身体機能の低下. される。. を引き起こすことを報告している。本研究において,社. SE は 行 動 の 遂 行 に 重 要 で あ る と 考 え ら れ て い る。. 会参加と運動継続が関連していたことから,地域のコ. HAPA では運動 SE は動機づけ段階において運動意図を. ミュニティーに行きかう場所を提供し,活動や参加も含. 確立することと関連するが,意図段階では「何回か休ん. めた地域づくりをめざすような社会参加を取り入れた支. でも再開する自信」を示す Re-SE が重要であることが. 援が必要であると考えられる。. 提案されている. 33). 。Luszczynska ら 34) は一般成人を. 対象として行動プランを与える介入を行い,Re-SE が高 2.運動継続に関連する要因. い者は運動を継続できていたと報告している。加えて,. 運動継続には運動の生活パターンへの組みこみ(OR:. Luszczynska ら. 10.04) ,Re-SE(OR: 2.36)と有意な関連が示された(表. を受けた患者を対象として,運動意図のある者では. 2)。この結果は HAPA を支持し,意図段階にある者に. Re-SE を高めることが運動を中断または中止することの. おいては,運動を生活パターンに組みこむような行動プ. リスクを減らすことができると報告している。このこと. ランを示すことによって,運動の継続を支援することが. は,運動意図のある者に対して介入する場合,Re-SE を. 可能であることが明らかとなった。. 高めることが重要であることを示している。したがっ. 本研究では「いつ」 ,「どこで」,「どんな」運動を行う. て,本研究結果と考え併せても,意図段階にある者の運. かという行動プランの中の「いつ」について,「生活パ. 動継続を支援するためには,「生活パターンに組みこむ」. ターンへの組みこみ」と「時間が決まっているか」の 2. というような行動プランを示すことと Re-SE に働きか. つの要因について検討したところ,「生活パターンへの. けることが重要であることが明らかとなった。. 35). は心筋梗塞後のリハビリテーション. 組みこみ」のみが運動継続の関連因子として抽出され た。また, 「継続群」のうち 90.0%が運動を生活パター. 3.本研究の限界と今後の展望. ンの中に組みこんでいた。このことは,高齢者は決めら. 本研究の限界として,第一に本研究は茨城県の 2 市町. れた時間に運動を行うよりも,「朝食後に」や「入浴の. に限った調査であり,女性の割合が 83.4%と多かった。. 前に」などの日常生活の活動の中に運動を組みこむこと. 平成 23 年度全国の介護予防事業参加者の男女比は男性.
(7) 介護予防教室参加者における運動の継続に関連する要因. 24.8%,女性 75.2%であった 36)。さらに茨城県を含む農 村部では男性の割合が少ない傾向が報告されており. 36). ,. 本研究でも同様の傾向であった。また,継続群・不安定 群を併せた意図段階にある者が 8 割おり,動機づけ段階 にある者が少ない集団であった。本研究の対象者は介護 予防教室に参加している高齢者であり,介護予防や健康 に関心のある者が多く,運動習慣のある者が多かったと 考えられる。今後は,男性の対象者を増やし,より広範 な高齢者における運動継続の特徴を把握することが求め られる。第二に本研究では地域在住高齢者を対象として いるものの,一次予防,二次予防,フォローアップ調査 と異なる高齢者を対象としている。すべての対象者には 一貫して心理的な介入は行っておらず,二次予防とフォ ローアップ調査の対象者を比較すると継続群,不安定 群,未実施群の割合に有意な差はみられなかったため, 統合して分析を行った。今後は対象者数を増やし,それ ぞれの対象者間で異なる特徴があるか調査する必要があ る。第三に生活パターンに組みこむことについて本研究 では「日常生活活動に付随して運動を行うこと」と定義 し,「はい」,「いいえ」の 2 件法で調査した。今後はタ イムテーブルなどを使用して生活パターンを把握するな ど,より詳細な「いつ」の要因についての調査が必要で あると考えられる。 結 語 本研究は,意図段階にある者の運動継続に関連する要 因を明らかにし,運動継続を効果的に支援する方法を示 すことを目的とした。本研究の結果から,運動を継続す るためには,第一に歩行能力を維持し,社会参加を含め た支援を行うことが重要である。第二に生活パターンに 組みこむような行動プランの提示と,Re-SE を高めるこ とで,意図段階にある者の運動を継続できる可能性が示 された。 謝辞:本研究は平成 25 年度文部科学省科学研究費補助 金(課題番号:24590783)の一環として行ったものであ る。本研究は筑波大学大学院人間総合科学研究科に提出 した修士論文の一部である。本研究を行うにあたりご協 力くださいました参加者の皆様,保健師の皆様に感謝い たします。 文 献 1)内 閣 府 ホ ー ム ペ ー ジ 平 成 25 年 版 高 齢 社 会 白 書. http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2013/ gaiyou/25pdf_indexg.html(2014 年 8 月 5 日引用) 2)厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドラ イン案.http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000Roukenkyoku-Soumuka/0000052668.pdf.(2015 年 3 月 5 日 引用) 3)Kesaniemi YK, Danforth E, et al.: Dose-response issues. 517. concerning physical activity and health: an evidence-based symposium. Med Sci Sports Exerc. 2001; 33: 351‒358. 4)厚生労働省 平成 23 年国民健康・栄養調査報告.http:// www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h23-houkoku.html (2014 年 8 月 5 日引用) 5)みずほ情報総研株式会社 介護予防を推進する地域づくり の効果的手法に関する調査研究事業報告書.http://www. mizuho-ir.co.jp/case/research/pdf/mhlw_kaigo2014_02. pdf(2015 年 3 月 5 日引用) 6)竹中晃二:行動変容─健康行動の開始・継続を促すしかけ づくり.健康・体力づくり事業財団,2008. 7)Kinmonth A-L, Wareham NJ, et al.: Efficacy of a theorybased behavioural intervention to increase physical activity in an at-risk group in primary care (ProActive UK): a randomised trial. Lancet. 2008; 371: 41‒48. 8)Prochaska JO, Velicer WF: The transtheoretical model of health behavior change. Am J Health Promot. 1997; 12: 38‒48. 9)Oka K, Takenaka K, et al.: Asssesing the stages of change for excrcise behavior among young adults: the relationship with self-reported physical activity and exercise behavior. Japanese Heal Psychol. 2000; 8: 17‒23. 10)Marcus BH, Bock BC, et al.: Efficacy of an individualized, motivationally-tailored physical activity intervention. Ann Behav Med. 1998; 20: 174‒180. 11)Schwarzer R: Modeling Health Behavior Change: How to Predict and Modify the Adoption and Maintenance of Health Behaviors. Appl Psychol. 2008; 57: 1‒29. 12)Schwarzer R, Luszczynska A, et al.: Social-cognitive predictors of physical exercise adherence: three longitudinal studies in rehabilitation. Health Psychol. 2008; 27: 54‒63. 13)Burkert S, Knoll N, et al.: Self-regulation following prostatectomy: phase-specific self-efficacy beliefs for pelvicfloor exercise. Br J Health Psychol. 2012; 17: 273‒293. 14)Humpel N: Environmental factors associated with adults’ participation in physical activity A review. Am J Prev Med. 2002; 22: 188‒199. 15)健康・体力づくり事業財団 高齢者の運動実践者と非実 践者の生活意識と生活行動の相違に関する研究.http:// www.health-net.or.jp/tyousa/houkoku/pdf/h15_rouken_ isiki_koudo.pdf(2015 年 3 月 5 日引用) 16)岡浩一郎:運動行動の変容段階尺度の信頼性および妥当性 ─中年者を対象にした検討─.健康支援.2003; 5: 15‒22. 17)Csuka M, McCarty DJ: Simple method for measurement of lower extremity muscle strength. Am J Med. 1985; 78: 77‒81. 18)Podsiadlo D, Richardson S: The timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991; 39: 142‒148. 19)鳥羽研二,大河内二郎,他:転倒リスク予測のための「転 倒スコア」の開発と妥当性の検討.日本老年医学会雑誌. 2005; 42: 346‒352. 20)小谷野亘,橋本 生,他:老研式活動能力指標による測定 値の分布.日本公衆衛生雑誌.1993; 40: 468‒474. 21)吉田裕人,西真理子,他:FI-J(Frailty Index for Japanese elderly)を用いた「虚弱」の予知因子に関する研究.日本 老年医学学会誌.2012; 49: 442‒448. 22)吉 田 祐 子, 熊 谷 修, 他: 地 域 在 住 高 齢 者 に お け る 運 動習慣の定着に関連する要因.老年社会科学.2006; 28: 348‒358. 23)新開省二,藤田幸司,他:地域高齢者におけるタイプ別閉 じこもりの予後.日本公衆衛生雑誌.2005; 53: 627‒638. 24)石井香織,井上 茂,他:簡易版運動習慣の促進要因・阻 害要因尺度の開発.体力科学.2009; 58: 507‒516..
(8) 518. 理学療法学 第 42 巻第 6 号. 25)岡浩一郎:中年者における運動行動の変容段階と運動セ ルフ・エフィカシーの関係.日本公衆衛生雑誌.2003; 50: 208‒215. 26)対馬栄輝:SPSS で学ぶ医療系データ解析.東京図書,東 京,2007,pp. 147‒158. 27)対馬栄輝:SPSS で学ぶ医療系多変量データ解析.東京図 書,東京,2008,pp. 97‒135. 28)鳥羽研二:寝たきりプロセスの解明と主たる因子に対する 介入効果に関する研究.総括研究報告書.2003. 29)福間美紀,塩飽邦憲:高齢者の死亡に影響する生活習慣と 虚弱に関する前向き研究.日本農村医学会雑誌.2012; 61: 69‒76. 30)重松良祐,中西 礼,他:スクエアステップを取り入れた 運動教室に参加した高齢者がその後も自主的に運動を継続 している理由.日本公衆衛生雑誌.2011; 58: 22‒29. 31)Block RA, Zakay D, et al.: Human aging and duration judgments: a meta-analytic review. Psychol Aging. 1998; 13: 584‒596.. 32)総務省ホームページ 平成 23 年社会生活基本調査.http:// www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index2.htm#kekka. (2015 年 3 月 5 日引用) 33)Schwarzer R: Social-cognitive factors in changing healthrelated behavior. Curr Dir Psychol Sci. 2001; 10: 47‒51. 34)Luszczynska A, Schwarzer R, et al.: Self-efficacy as a moderator of the planning-behaviour relationship in interventions designed to promote physical activity. Psychol Health. 2011; 26: 151‒166. 35)Luszczynska A: An implementation intentions intervention, the use of a planning strategy, and physical activity after myocardial infarction. Soc Sci Med. 2006; 62: 900‒908. 36)厚生労働省ホームページ 平成 23 年度 介護予防事業(地 域 支 援 事 業 ) の 実 施 状 況 に 関 す る 調 査.http://www. mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_ koureisha/yobou/tyousa/h23.html(2012 年 8 月 5 日引用). 〈Abstract〉. Factors Associated with Maintenance of Physical Activity among Older Adults Who Participated in the Class in a Care Prevention Program. Satoko NAKANO, PT, MS Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba Junko OKUNO, PhD, Takako FUKASAKU, PhD, Hisako YANAGI, MD, PhD Faculty of Medicine, University of Tsukuba Kazushi HOTTA, OT, PhD Ibaraki Prefectural University of Health Sciences Noriko YABUSHITA, PhD, Miyuki NEMOTO, PhD, Kiyoji TANAKA, PhD Faculty of Health and Sport Sciences, University of Tsukuba Purpose: The present study was conducted to identify the determinants of maintenance of physical activity among older adults who participated in a care prevention program. Methods: The subjects were 309 older adults who participated in a care prevention program. The subjects were divided into three groups, namely the exercise continuation group, unstable exercise continuation group, and non-exercise group, by using an action transformation stage about the exercise. We investigated the baseline characteristics, social participation, body function, and psychological factors of the subjects by administering a self-reported questionnaire and conducting physical performance tests. Results: Social participation and functional factors were related to exercise activity. Multiple logistic regression analysis revealed that a lifestyle with exercise and recovery self-efficacy were associated with maintenance of physical activity. Conclusions: In this study, we demonstrated that incorporating exercise into one’s lifestyle and enhancement of recovery self-efficacy are important factors that promote physical activity among older adults who participate in a care prevention program. Key Words: Care prevention, Maintenance of physical activity, Action planning, Recovery Self-Efficacy.
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