Branch Atheromatous Disease の急性期運動機能予後に関連する要因の検討
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(2) 114. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 図 1 対象者選定のフローチャート 上肢麻痺:FMA 上肢項目≦ 49 点を良好群,> 49 点を不良群とした. 下肢麻痺:FMA 下肢項目≦ 25 点を良好群,> 25 点を不良群とした. FMA:Fugl-Meyer Assessment. 痺側上肢・下肢の運動機能障害の予後に関する報告は皆. 前脈絡叢動脈領域),梗塞面積(水平断および矢状断),. 無である。そこで,今回,我々は BAD タイプの脳梗塞. リハ開始日,上下肢 FMA(リハ開始時,2 週後,退院. 患者を対象に,脳卒中発症後の麻痺側上下肢の急性期か. 時) ,リハ開始時 MMSE,在院日数,OT 総単位,PT. ら亜急性期における運動機能予後を調べることとした。. 総 単 位 と し た。 な お, 梗 塞 面 積 の 抽 出 に つ い て は,. 当院へ搬送された 101 例の BAD において,背景および. Magnetic resonance imaging(MRI,Canon 製 3 テスラ). 急性期経過の特徴から,後方視的に麻痺側上肢・下肢の. を用いた。撮影条件としては,水平断で撮影した拡散強. 機能予後に関連する因子および,一般的な急性期病院に. 調画像,Matrix:160 × 144,FOV:23 mm,b-value:. て撮像された MRI を調査し,これらを用いた運動機能の. 1,000s,スライス厚:5 mm,スライス間隔:1 mm とし,. 予後予測が可能かどうかを検討したため報告する。. 画像解析システム(Canon,Rapideye Core)の Multiplanar Reconstruction(MPR:多断面再構成法)にて. 対象と方法. 画像作成し,水平断の梗塞面積を計測した。次に矢状断. 1.研究デザイン. の梗塞面積については,水平断の画像を矢状断に変換し. 本研究のデザインとしては,ケースコントロール研究. これを推定矢状断面積として抽出した。また,梗塞巣の. とした。. 設定については,拡散強調画像にて高信号領域の境界線 を手動でマーキングして囲み面積を計測し,さらに入院. 2.対象. 撮影時と入院 1 週間以内に撮影した画像を比較し,面積. 2016 年 3 月∼ 2019 年 2 月において,当院へ搬送され. の大きい値を選択した(図 2)。次に,FMA の測定につ. BAD と診断されたのち,急性期リハビリテーション(以. いては,上肢は作業療法士,下肢は理学療法士の担当が. 下,リハ)を実施した連続例 101 例を対象とした。上肢. それぞれ測定した。なお,測定を担当したすべての療法. および下肢が退院時機能良好であった群(以下,良好群). 士は本研究にはかかわりのない者であった。. とそうでなかった群(以下,不良群)に分類した。なお,. 統計学的手法として,上肢 FMA および下肢 FMA の. 運動機能評価としては,FMA の上肢・下肢項目(上肢. 良好群,不良群の 2 群において,連続変数については. 66 点満点,下肢 34 点満点)を用い,上肢麻痺について. Shapiro-Wilk 検定により正規性を確認(年齢は上肢良好. は,Daly らの報告をもとに 49 点以上を良好群とし. 8). ,. 下肢麻痺については,George らの報告をもとに 25 点以 上を良好群とした. 9). 。これらから,上肢項目のデータ欠. 群:p=0.12,上肢不良群:p=0.59,下肢良好群:p=0.40, 下肢不良群 p=0.22,入院時 NIHSS,梗塞面積,上下肢 FMA,MMSE,在院日数,リハ単位数は上下肢の両群. 損 2 例を除いた,上肢良好群 59 例,不良群 40 例,下肢. ともに p < 0.05)したのち,年齢は対応のないt検定を,. 良好群 61 例,不良群 40 例にそれぞれ分類した(図 1) 。. その他の項目は Mann-Whitney の U 検定を,また性別, 2 麻痺側,病変部位には χ 検定を用い,2 群間の差に対. 3.方法. し単変量解析を実施した。有意水準は 5%とした。. 調査項目は,年齢,性別,麻痺側,入院時 NIHSS,. 次に多変量解析として,目的変数は退院時上肢 FMA,. 病変部位(橋傍正中動脈領域,レンズ核線条体動脈領域,. 下肢 FMA とし,説明変数の選択は,良好群,不良群の.
(3) BAD の急性期運動機能予後に関連する要因の検討. 115. 図 2 MRI(拡散強調画像)を用いた水平面梗塞面積と矢状面梗塞面積の算出. 2 群において,上肢,下肢ともに年齢,水平断梗塞面積,. 性を確認し,共線性がなしとされる VIF2 以下を説明変. 推定矢状断梗塞面積,リハ開始時 FMA,リハ総単位(上. 数として選択した. 肢:OT 総単位,下肢:PT 総単位)の 5 項目とした。な. 子が抽出された場合,受信者動作特性(Receiver Oper-. お,説明変数の選択理由について以下に述べる。まず,. ating Characteristic:以下,ROC 曲線)から感度および. はじめに年齢を選択した。年齢は,機能障害に関連する. 特異度が最大となる点をカットオフ値とし,退院時上下. 強い因子とされており,若年であるほど機能回復も期待. 肢 FMA の良好群と不良群を判別する値を上肢,下肢. できると二木らにより報告されている. 10). 。次に梗塞面積. を選択した。梗塞の大きさについて,Chen らは,病巣. 16). 。さらに関連因子から有意となる因. それぞれ算出した。なお,統計解析ソフトには EZR, version 1.37. を使用し,有意水準は 5%とした。. の部位と割合を組み合わせることにより予後が明確化す ると報告されている. 11). 。また,BAD は上下に複数のス 12). 4.対象者に対するアプローチ. ,責任とな. 急性期リハとして理学療法 1 ∼ 2 単位,作業療法 1 ∼. る 3 つの病変血管はいずれも放線冠や内包後脚など皮質. 2 単位,言語聴覚療法 1 ∼ 2 単位を実施した。なお,理. 脊髄路が走行する領域を栄養している。よって,水平断,. 学療法では,バイタルサインや神経症状の変動などリス. 矢状断とも梗塞面積の大きさが運動機能予後にかかわる. ク管理を行いながら医師による安静度指示のもと,早期. 可能性があり選択した。次にリハ開始時 FMA を選択し. 離床とさらに下肢麻痺に対しては早期立位,歩行練習を. た。Duncan らは,脳卒中片麻痺患者を対象とし,発症. 施行した。作業療法は安静度解除とともに,日常生活活. 24 時間,5 日目の FMA から 180 日後の予測確率を検討. 動の向上を目的に ADL 練習と上肢麻痺に対しては電気. し た 結 果, そ れ ぞ れ 42.4%,71.2% で あ っ た と し て い. 刺激療法や課題指向型練習を施行した。. ライスに拡がる特徴をもった脳梗塞であり. る. 13). 。さらに開始時の機能障害が軽度であるほど歩行自. 立度や実用手になる確率も高いとされているため,リハ. 5.倫理的配慮. 開始時 FMA を選択した。最後に OT・PT 総単位を選択. 本研究はヘルシンキ宣言を遵守したうえ,個人情報が. し た。 練 習 量 と 運 動 機 能 予 後 に つ い て, 上 肢 で は. 特定できないよう十分配慮している。また,本研究プロ. Kwakkel らが. 14). ,下肢では Veerbeek らが. 15). ,通常の. 練習に加えて,練習量をさらに増加させることが運動機 能予後に与える影響を調査し,いずれも練習量の多い方 が高い機能改善を認めると報告した。よって,上肢では. トコルに関しては,阪和記念病院倫理審査委員会の承認 (承認番号:2019-1)を受けている。 結 果. OT 総単位を,下肢では PT 総単位を選択した。以上の. 1.単変量解析(表 1). ように,いずれも運動機能予後予測の観点から,先行研. 退院時上肢 FMA の良好群と不良群を比較した結果,. 究の結果を踏まえ,かかわりの深い因子を説明変数とし. 年齢,入院時 NIHSS,水平断梗塞面積,推定矢状断梗. て選択した。そして,退院時上下肢 FMA を目的変数と. 塞面積,リハ開始時上肢 FMA,2 週時上肢 FMA,退. し,年齢,水平断梗塞面積,推定矢状断梗塞面積,リハ. 院時上肢 FMA,リハ開始時 MMSE,在院日数,OT 総. 開始時 FMA,リハ総単位を説明変数としたロジスティッ. 単位に有意差を認めた(p<0.05) 。退院時下肢 FMA に. ク回帰分析を行い,各因子のオッズ比,95% 信頼区間を. ついては,年齢,入院時 NIHSS,水平断梗塞面積,推. 抽出した。この際,説明因子から交絡因子を除外する目. 定矢状断梗塞面積,リハ開始時下肢 FMA,2 週時下肢. 的で,Variance Inflation Factor(以下,VIF)にて共線. FMA,退院時下肢 FMA,リハ開始時 MMSE,在院日.
(4) 116. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 表 1 単変量解析結果 上肢. 良好群. 不良群. 項目. n=59. n=40. 73.7 ± 10.8. 81.2 ± 10.0. <0.001**. 31/28. 13/27. 0.0779. 年齢(歳) 性別(男 / 女) 麻痺側(右 / 左). p値. 31/28. 20/20. 0.965. 3[2.0 ‒ 4.0]. 5[4.0 ‒ 8.0]. <0.001**. レンズ核線条体動脈. 27. 25. 前脈絡叢動脈. 16. 8. 入院時 NIHSS(点) 病変血管(名). 傍正中動脈. 0.297. 16. 7. 73.8[60.8 ‒ 102.1]. 122.2[70.4 ‒ 172.9]. 0.00106**. 121.2[86.3 ‒ 149.2]. 168.3[100.3 ‒ 280.9]. 0.00569**. 1.9 ± 0.5. 2.0 ± 0.6. 0.285. リハ開始時上肢 FMA(点). 59[48.0 ‒ 65.0]. 6[4.0 ‒ 15.0]. <0.001**. 2 週時上肢 FMA(点). 62[56.3 ‒ 66.0]. 7[4.0 ‒ 12.5]. <0.001**. 退院時上肢 FMA(点). 65[60.5 ‒ 66.0]. 12[4.0 ‒ 25.0]. <0.001**. リハ開始時 MMSE. 27[23.0 ‒ 29.0]. 20[16.0 ‒ 24.0]. <0.001**. 在院日数(日). 24[14.0 ‒ 39.0]. 38[29.3 ‒ 46.5]. 0.00138**. OT 総単位数. 34[17.5 ‒ 54.0]. 48.5[37.5 ‒ 66.8]. 0.0109*. 下肢. 良好群. 不良群. 項目. n=61. n=40. 70.4 ± 10.6. 81.4 ± 10.2. <0.001**. 性別(男 / 女). 31/30. 14/26. 0.174. 麻痺側(右 / 左). 30/31. 21/19. 0.902. 3[3.0 ‒ 4.0]. 5[4.0 ‒ 7.3]. <0.001**. レンズ核線条体動脈. 30. 23. 前脈絡叢動脈. 18. 6. 水平断梗塞面積(mm2) 2. 推定矢状断梗塞面積(mm ) リハ開始日(日). 年齢(歳). 入院時 NIHSS(点). p値. 病変血管(名). 傍正中動脈 水平断梗塞面積(mm2) 2. 推定矢状断梗塞面積(mm ) リハ開始日(日). 0.241. 13. 11. 74.7[62.2 ‒ 108.6]. 120.8[70.7 ‒ 165.7]. 0.0129*. 121.6[87.1 ‒ 149.4]. 147.7[90.7 ‒ 257.3]. 0.0435*. 1.9 ± 0.54. 1.9 ± 0.53. 0.931. リハ開始時下肢 FMA(点). 24[21.0 ‒ 32.0]. 7[4.0 ‒ 18.0]. <0.001**. 2 週時下肢 FMA(点). 29[27.0 ‒ 32.8]. 9[4.0 ‒ 16.5]. <0.001**. 退院時下肢 FMA(点). 32[29.0 ‒ 34.0]. 13[8.8 ‒ 18.5]. <0.001**. 26.5[23.0 ‒ 29.0]. 18[13.0 ‒ 25.0]. <0.001**. 在院日数(日). 26[15.0 ‒ 39.0]. 38.5[26.0 ‒ 46.0]. 0.011*. PT 総単位数. 38[19.0 ‒ 56.0]. 49.5[26.8 ‒ 66.0]. 0.151. リハ開始時 MMSE. 平均値±標準偏差,中央値 [ 四分位範囲 ],*:p<0.05,**:p<0.01 年齢は対応ないt検定,性別,麻痺側,病変血管は χ 2 乗検定,その他は Mann-Whitney の U 検定 を実施 NIHSS:National Institute of Health Stroke Scale,FMA:Fugl-Meyer Assessment, MMSE:Mini-mental State Examination. 数に有意差を認めた(p<0.05)。. 退院時上下肢 FMA を良好群:0,不良群:1 とし,ロ ジスティック回帰分析を行った結果,上肢では,年齢. 2.多変量解析(ロジスティック回帰分析) すべての説明変数において VIF は 2 以下であった。. (オッズ比:1.05,95% 信頼区間 0.97 ‒ 1.14,p=0.20) ,水 平断梗塞面積(オッズ比:1.02,95% 信頼区間 1.00 ‒ 1.04,.
(5) BAD の急性期運動機能予後に関連する要因の検討. 117. 表 2 多変量解析(ロジスティック回帰分析)結果 項目 上肢. 下肢. 年齢. 回帰係数. オッズ比. 95% 信頼区間. p値. 0.051. 1.05. 0.97 ‒ 1.14. 0.20 0.03. 水平断梗塞面積. 0.022. 1.02. 1.00 ‒ 1.04. 推定矢状断梗塞面積. 0.001. 1.00. 0.98 ‒ 1.01. 0.77. リハ開始時上肢 FMA. ‒ 0.102. 0.90. 0.86 ‒ 0.94. <0.001. OT 総単位. ‒ 0.007. 0.99. 0.96 ‒ 1.02. 0.64. 年齢. 0.043. 1.04. 0.97 ‒ 1.11. 0.19. 水平断梗塞面積. 0.009. 1.01. 0.99 ‒ 1.02. 0.19. 推定矢状断梗塞面積. ‒ 0.002. 0.99. 0.98 ‒ 1.01. 0.62. リハ開始時下肢 FMA. ‒ 0.204. 0.81. 0.74 ‒ 0.88. <0.001. PT 総単位. ‒ 0.016. 0.98. 0.95 ‒ 1.01. 0.23. 目的変数:退院時上下肢 FMA(良好群:0,不良群:1) 説明変数:年齢,水平断梗塞面積,推定矢状断梗塞面積,リハ開始時上下肢 FMA,OT・PT 総単 位数 FMA:Fugl-Meyer Assessment. p=0.03) ,推定矢状断梗塞面積(オッズ比:1.00,95% 信 頼 区 間 0.98 ‒ 1.01,p=0.77) , リ ハ 開 始 時 上 肢 FMA (オッズ比:0.90,95% 信頼区間 0.86 ‒ 0.94,p < 0.001) , OT 総単位(オッズ比:0.99,95% 信頼区間 0.96 ‒ 1.02, p=0.64)であった。下肢は年齢(オッズ比:1.04,95% 信頼区間 0.97 ‒ 1.11,p=0.19),水平断梗塞面積(オッズ 比:1.01,95% 信頼区間 0.99 ‒ 1.01,p=0.19),推定矢状 断梗塞面積(オッズ比:0.99,95% 信頼区間 0.98 ‒ 1.01, p=0.62),リハ開始時下肢 FMA(オッズ比:0.81,95% 信頼区間 0.74 ‒ 0.88,p < 0.001) ,PT 総単位(オッズ比: 0.98,95% 信 頼 区 間 0.95 ‒ 1.01,p=0.23) で あ り, 上 肢 では水平断梗塞面積とリハ開始時 FMA が,下肢はリハ 開始時 FMA に有意差があり関連する因子として抽出さ れた(表 2) 。次に,退院時 FMA が良好もしくは不良 に対し,上下肢とも関連する因子として抽出されたリハ. 図 3 退院時上肢 FMA の良不良を判別する開始時 上肢 FMA の ROC 曲線 Fugl-Meyer Assessment:FMA Receiver Operating Characteristic:ROC 曲線. 開始時 FMA の ROC 曲線を算出した結果,上肢 FMA のカットオフ値が 18 点(曲線下面積 0.94,感度 0.80, 特異度 0.93),下肢 FMA は 19 点(曲線下面積 0.88,感 度 0.80,特異度 0.82)であった(図 3,図 4) 。 3.対象群におけるリハ開始時と 2 週時の上下肢 FMA の差について なお,今回の対象例において,リハ開始時と 2 週時の FMA の差を比較したところ,上下肢とも FMA が改善 していた症例は 101 例中 31 例(30.6%),内訳として良 好群 61 例中 25 例(41.0%),不良群 40 例中 6 例(15.0%) と良好群で多かった。また,上下肢とも FMA が低下を 認めた症例は 101 例中 20 例(19.8%),内訳として良好 群 6 例(9.8%),不良群 14 例(35.0%)と良好群で少な かった。. 図 4 退院時下肢 FMA の良不良を判別する開始時 下肢 FMA の ROC 曲線 Fugl-Meyer Assessment:FMA Receiver Operating Characteristic:ROC 曲線.
(6) 118. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 肢は関連因子として抽出されなかったが,これは梗塞巣. 考 察. の中心が側脳室近傍ではより前方に,脳幹部ではより正. 1.背景因子の比較. 中に上肢領域の中心に位置していた可能性も考えられ. 背景因子の比較では,上下肢とも年齢,入院時 NIHSS. た。また,今回,推定矢状断梗塞面積は上下肢とも関連. の他,リハ開始時 MMSE,在院日数,OT・PT 総単位. する因子として抽出されなかった。急性期より矢状断か. 17). ,脳梗塞を対. ら撮影した画像を用いた運動機能予後予測に関する先行. 象とした運動機能予後を調査した結果,年齢と入院時. 研究は見あたらないが,今回の矢状断における梗塞面積. 数に有意差を認めていた。Kwah らは. 18). ,急性期脳. の抽出は,水平断で撮影した画像を矢状断に変換し計測. 卒中患者において認知障害が小さいほど退院時 ADL は. しており,撮影条件や計測方法において正確なデータと. 高かったとし,背景因子の比較の結果,先行研究と同様. して示せていない可能性があり,これらが抽出されな. であった。なお,在院日数と単位数に関しては,症状が. かった要因とも考えられた。すなわち,水平断用に撮像. 重度であったため,練習量や期間を要したと考えられ,. した画像から三次元画像を構成し,その画像から矢状面. さらに不良群の多くは回復期や施設などに転院する例も. での病巣面積を算出する方法では正確な病巣面積を計測. 多く,これらの調節に在院日数が関与した可能性が考え. できないことを示唆していると考えられる。. られた。. その他,大きく関与すると予想していた年齢や練習量. NIHSS が予測に有用との報告や,鄭らは. も運動機能予後にかかわる因子として挙がらなかった。 2.BAD と運動機能予後. 若年で練習量が多いと運動機能予後が良好という先行報. これまでの脳卒中機能予後予測において,機能や ADL を前向き調査した Copenhagen Stroke Study. 19). Early Prediction of Outcome after Stroke Study. 告はあるものの,Coupar らによるシステマティックレ 25). や The. ビューでは. 20). や,American Heart Association/American Stroke. ,さ. らに,発症 72 時間以内の FMA を用いて 6 ヵ月後の運 21). ,年齢は運動機能予後に関与しないこと. Association によるガイドラインでも. 26). ,急性期から練. ,脳出血と脳梗. 習時間をどの程度にすれば,運動機能の改善にもっとも. 塞が混在していたり,脳梗塞でも病型分類はされていな. 有用なのかまでは示されていない。このことから,年齢. い。しかも,対象者の選定方法について,入院時麻痺が. と発症後のリハにおける練習量の間には交絡としての関. なかったり歩行が可能であった場合,調査対象として除. 係がある可能性があり,それらの相乗効果が年齢の予後. 外されている。つまり,これは BAD のような入院時の. に対する影響を不明瞭にしているのかもしれない。した. 症状が軽症もしくは症状が数日で進行するような特徴を. がって,今後は,練習量を単位数など概要ではなく,反. もつ病型は,プロトコル上除外基準に該当していた可能. 復回数などの厳密さをもたせたうえで,それらの相乗効. 性もある。これらから,個々の病型に応じた予後予測の. 果を厳密に分析する必要性が考えられた。. 必要性が考えられた。また,脳卒中予後予測にかかわる. 最後に,今回の BAD の運動機能予後に関与する因子. 動機能予後を示した報告などあるが. 22). ,国内外を含めた 11 論文から. として抽出されたのは上下肢ともにリハ開始時 FMA で. 文献的検討を行ったところ,年齢や合併症の有無,発症. あった。リハ開始時 FMA のオッズ比は上肢 0.91,下肢. 初期の意識レベルなど予後予測としての因子を抽出し,. 0.82 であり,FMA が低値であると,退院時の機能が不. それぞれの因果関係を統計学的手法にて補正し推論して. 良となる確率が高く,そのカットオフ値が上肢 FMA19. いくことが必要と述べている。そのような中,今回,多. 点,下肢 FMA18 点という結果となった。過去の多くの. 変量解析の結果,推定矢状断梗塞面積,年齢,OT・PT. 研究においても. 総単位数を補正しても,リハ開始時上下肢 FMA が,. 予測をするうえで大きな因子となっている。代表的な論. BAD における急性期からの運動機能予後予測の因子と. 文について紹介すると,上肢については Nakayama ら. なった。以下にそれぞれの結果に対する考察を述べる。. が. 水平断の画像を用いた梗塞面積の研究について,前田. 動障害の重症度により上肢の実用性や歩行の可否が左右. 因子として,原田らは. 23). 27‒29). ,発症時の運動障害の程度が予後. 30). ,下肢については Jorgensen らが 31),発症時の運. ,BAD の梗塞部位となるであろう内包後脚や放. されると報告している。発症時の運動障害の程度が,運. 線冠は小さな病巣でも予後不良であると述べ,Celebi ら. 動機能予後予測の因子となる理由としては,機能回復に. らは は. 24). ,BAD の病変血管のひとつである前脈絡叢動脈領. は神経線維束の残存率が影響するとされており. 32). ,発. 域の梗塞において,浅部および深部の両方に梗塞が及ん. 症時の皮質脊髄路の障害が反映されている可能性があ. だ場合,機能障害が重度であったと報告し,梗塞面積が. る. 大きいほど運動機能予後が不良と報告している。今回,. 時の FMA の差を比較すると,良好群は不良群と比べ. 水平断の梗塞面積は上肢のみ退院時 FMA に関連する因. FMA が改善している割合が多かった。これは BAD と. 子として抽出され,先行研究と同様の結果となった。下. いう病態であったとしても,発症初期における皮質脊髄. 23). 。また今回の対象例において,リハ開始時と 2 週.
(7) BAD の急性期運動機能予後に関連する要因の検討. 路の障害の程度が,その後の運動機能の回復に反映され ている可能性が考えられた。ただし,近年,皮質脊髄路 の客観的な評価として Diffusion tensor imaging(以下, DTI)が試行され,精度の高い予後予測指標として報告 されている. 33). 。発症直後の急性期については課題もあ. るとされているが. 34). DTI など有用な評価を実施し,よ. り明確に皮質脊髄路の関与を調べる必要もある。 さらに,今回の研究では,発症時から 2 週間後にかけ て上下肢とも FMA が低下を認めた症例は 101 例中 20 例(19.8%) ,内訳として良好群 6 例(9.8%),不良群 14 例(35.0%)であった。しかしながら,2 週間後の上 下肢 FMA の値よりも,発症時の上下肢 FMA の値の方 が運動機能の予後予測指標として有用であることが示さ れた。ただし,各症例においてもっとも上下肢 FMA が 低下した瞬間の値を本研究では測定できていない。今後 は,もっとも重度な上下肢 FMA の値と,発症時の上下 肢 FMA の値を比較し,より精度の高い運動機能予後予 測を検討する必要がある。なお,BAD における進行性 運動麻痺は 21 ∼ 29%とされているが. 4). ,今回の対象例. は,2 週時に FMA が低下を認めた割合が 19.8%と少な い結果であった。これが BAD の進行性運動麻痺かどう か不明な点もあるが,上下肢 FMA の低下が少なかった 理由のひとつとして,BAD に対する急性期治療が関与 していた可能性もあり,今後は急性期治療内容も運動機 能予後に関連する因子として調査する必要がある。 本研究における限界についてであるが,今回の調査で は,発症後治療に取り掛かるまでの時間,急性期治療内 容や入院前 ADL,さらに梗塞面積の抽出に関しては, 手動で梗塞範囲を決定したことや特に矢状断の梗塞面積 については精度が低く,運動機能の予後予測に関連し得 る因子の調査が不十分であったことが挙げられる。この 点に関しては方法を再検討し,さらに対象数を増やし因 果関係を明らかにしていく必要がある。また,今回の対 象例はすべて急性期であり,発症後約 1 ヵ月後の上下肢 運動機能における良好もしくは不良を示したに過ぎな い。よって,回復期病院や施設などとも協力し,中・長 期予後について検討していく必要がある。 結 論 BAD における急性期からの運動機能予後予測には初 期 FMA がもっとも関連しており,短期的に運動機能予 後が良好となる初期 FMA の目安として上肢 18 点,下 肢 19 点が必要となる可能性が示唆された。 利益相反 本研究に関して開示すべき利益相反はない。. 119. 文 献 1)Takashima N, Arrima H, et al.: Incidence, Management and Short-Term Outcome of Stroke in a General Population of 1.4 Million Japanese. Cric J. 2017 June3. Dio: 10.1253/cricj.CJ-17-0177. 2)高松和弘,福嶋朋子,他:脳卒中の病型別にみた初発神経 症状の頻度.脳卒中データバンク 2015.小林祥泰(編) , 中山書店,東京,2015,pp. 26‒27. 3)厚生労働省ホームページ 平成 28 年国民生活基礎調査の 概況.http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/ k-tyosa16/dl/05.pdf(2019 年 3 月 1 日引用) 4)山本康正:その他の脳梗塞─ branch atheromatous disease ─.脳卒中診療 Update 脳血管障害(改訂第 2 版) .田中 耕太郎(編),最新医学社,大阪,2010,pp. 53‒62. 5)星野春彦,高木 誠,他:Branch atheromatous disease における進行性脳梗塞の頻度と急性期転帰.脳卒中.2011; 33: 37‒44. 6)梅村敏隆,松井克至,他:Branch atheromatous disease (BAD)の進行と予後に関連する因子の臨床的検討.脳卒 中.2008; 30: 462‒470. 7)守屋理織,足立智英,他:テント上 Branch atheromatous disease(BAD)の画像所見と予後.脳卒中.2006; 28: 504‒ 509. 8)Daly JJ, Hogan N, et al.: Response to upper-limb robotics and functional neuromuscular stimulation following stroke. J Rehabil Research Development. 2005; 42: 723‒736. 9)George D, Ying He, et al.: Predicting Home and Community Walking Activity Poststroke. Stroke. 2017; 48: 406‒411. 10)二木 立:脳卒中患者の障害の構造の研究.総合リハ. 1983; 11: 465‒476. 11)Chen CL, Tang FT, et al.: Brain lesion size and location: effects on motor recovery and functional outcome in stroke patients. Arch Phys Med Rehabil. 2000; 81: 447‒ 452. 12)山本康正:Branch atheromatous disease の概念・病態・ 治療.臨床神経.2014; 54: 289‒297. 13)Duncan PW, Goldstein LB, et al.: Measurement of motor recovery after stroke: outcome measure and sample size requirement. Stroke. 1992; 23: 1084‒1089. 14)Kwakkle G, Wagenaar RC, et al.: Intensity of leg and arm training after primary middle-cere-bral-artery stroke: a randomize trial. Lanset. 1999; 354: 191‒196. 15)Veerbeek JM, Koolstra M, et al.: Effects of augmented exercise therapy on outcome of gait and gait-related activities in the first 6 months after stroke: a metaanalysis. Stroke. 2011; 42: 3311‒3315. 16)新谷 歩:みんなの医療統計 多変量解析編 10 日間で 基礎理論と EZR を完全マスター! 講談社,東京,2017, pp. 207‒227. 17)Kwah LK, Harvey LA, et al.: Models containing age and NIHSS predict recovery of ambulation and upper limb function six months after stroke: an observational study. J Physiother. 2013; 59: 189‒197. 18)鄭 丞媛,井上祐介,他:急性期と回復期における脳卒中 患者の退院時 FIM の予測式.J Compr Rehabil Sci. 2014; 5: 19‒25. 19)Jogensen HS, Nakayama H, el al.: Outcome and time course of recovery. the Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil. 1995; 76: 406‒412. 20)Veerbeek JM, Van Wegen EE, et al.: EPOS Investigators. Is accurate prediction of gait in nonambulatory stroke patinets possible within 72 hours poststroke?; The EPOS study. Neurorehabil Neural Repair. 2011; 25: 268‒274..
(8) 120. 理学療法学 第 47 巻第 2 号. 21)Winters C, van Wegen EE, et al.: Generalizability of the Proportional Recovery Model for the Upper Extremity After an Ischemic Stroke. Nurorehabil Neural Repair. 2015; 29: 614‒622. 22)原田和宏,斎藤圭介:脳卒中の長期予後についての文献 的検討:研究成績とその方法論.理学療法学.2002; 29: 200‒208. 23)前田真治:我々が用いている脳卒中の予後予測Ⅳ.臨床リ ハ.2001; 10: 320‒325. 24)Celebi LG, Gokigit M, et al.: Anerior choroidal atery occlusions: clinical and laboratory features. Turk Noroloji Dergisi. 2014; 20: 105‒111. 25)Couper F, Pollock A, et al.: Predictors of upper limb recovery after stroke: a systematic stroke: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2012; 26: 291‒313. 26)William J, Alejandro A, et al.: 2018 Guidelines for the Early Management of Patients with Acute Ischemic Stroke A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart. Stroke. 2018; 49: eXXX‒eXXX. DOI: 10.1161/STR.0000000000000158. 27)竹川英宏,西平崇人,他:病型別にみた入院時重症度と 退院時予後の関係.脳卒中データバンク 2015.小林祥泰 (編),中山書店,東京,2015,pp. 28‒29.. 28)Hosomi N, Nara T, et al.: Predictors of intracerebral hemorrhage severity and its outcome in Japanese stroke patients. Cerebrovasc Dis. 2009; 27: 67‒74. 29)Baird AE, Dambrosia J, et al.: A three-item scale for the early prediction of stroke recovery. Lanset. 2001; 357: 2095‒2099. 30)Nakayama H, Jorgensen HS, et al.: Recovery of upper extremity function in stroke patients: The Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil. 1994; 75: 394‒398. 31)Jorgensen HS, Nakayma H, et al.: Recovery of walking function in stroke patients: The Copenhagen Stroke Study. Arch Phys Med Rehabil. 1995; 76: 27‒32. 32)服部憲明,宮井一郎:脳卒中の病巣解析による予後予測の 動向.総合リハ.2018; 46: 601‒607. 33)Yin D, Yan X, et al.: Secondary degeneration detected by combining voxel-based morphometry and tract-based spatial statistics in subcortical strokes with different outcomes in hand function. Am J Neuroradiol. 2013; 34: 1341‒1347. 34)van Baarsen K, Kleinnijienhuis M, et al.: Tractography demonstrates dentate-rubro-thalamic tract disrurtion in an adult with cerebellar mytism. Cerebellum. 2013; 12: 617‒622..
(9) BAD の急性期運動機能予後に関連する要因の検討. 〈Abstract〉. Examination of the Factor Related to the Acute Phase Motor Functional Prognosis of Branch Atheromatous Disease. Kazuhiro TOKUDA, PT, Kazuya KAISE, PT Department of Rehabilitation, Hanwa Memorial Hospital Takashi TAKEBAYASHI, OT, PhD Department of Occupational Therapy, School of Comprehensive Rehabilitation, Osaka Prefecture University Takashi KOYAMA, MD, Toshiaki FUJITA, MD Department of Cranial Nerve Surgery, Hanwa Memorial Hospital. Purpose: The acute motor functional prognosis was evaluated in patients with branch atheromatous disease (BAD). Method: Overall, 101 patients with BAD were enrolled from March 2016 to February 2019. Patients with paralysis in their upper limbs and lower limbs were classified into good and bad groups based on their paralysis status at discharge. The patients’ age, gender, paralyzed side, National Institute of Health Stroke Scale (NIHSS) at admission, lesion area, infarct area, rehabilitation start date, Fugl-Meyer Assessments (FMA) of the upper and lower limbs, starting Mini-mental State Examination (MMSE) score, hospitalization days, OT session, and PT session were analyzed. Thereafter, univariate and logistic regression analyses were performed. Results: The univariate analysis revealed significant differences in age, NIHSS at admission, infarct area, FMA, MMSE at initiation, and hospital days in both patients with paralysis in their upper and lower limbs. The logistic regression analysis revealed that FMA was an independent factor in both patients with paralysis in their upper and lower limbs. The cut-off values were 18 for the upper limb (area under the curve, 0.94; sensitivity, 0.80; and specificity, 0.93) and 19 for the lower limb (area under the curve, 0.88; sensitivity, 0.80; and specificity, 0.82). Conclusion: The initial FMA in patients with BAD was most relevant to motor functional prognosis from the acute phase in the upper and lower limbs. Key Words: Stroke, Acute phase, Prognosis prediction, Motor paralysis. 121.
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