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自閉スペクトラム症を抱える児童に対する応用行動分析の有効性― Tau-Uを用いたメタ分析による検討 ―

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-23 166

-自閉スペクトラム症を抱える児童に対する応用行動分析の有効性

― Tau-Uを用いたメタ分析による検討 ―

○松元 秋穂1)、金山 裕望1,2)、佐藤 寛3) 1 )関西学院大学文学研究科、 2 )日本学術振興会、 3 )関西学院大学文学部 問題

自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder: ASD) を抱える児童 (以下ASD児)は,その障害特徴か ら不適応などの問題が懸念され,支援が求められてい る。ASD児の支援には応用行動分析が有効とされてい る (Smith & Iadarola, 2015)。

応用行動分析に基づく介入の多くがシングルケース デザインを採用している。シングルケースデザインの 介 入 効 果 を 検 証 す る 分 析 手 法 に T a u - U が あ る (Parker, Vannest, Davis, & Sauber, 2011)。Tau- U

ではベースライン期と介入期のデータポイントをもと に算出された各条件の標準値に基づく条件間の有意性 検定が可能である (佐藤・佐藤, 2014)。また,複数 の研究結果を統合し,効果検証をすることもできる。 Tau- U によるメタ分析を行った研究は海外に存在す るが (例えばCamargo et al., 2016),本邦のASD児に 対する応用行動分析の有効性を検証した研究は存在し ない。そこで本研究では,ASD児に対する応用行動分 析に基づく介入の有効性を,Tau- U を用いたメタ分析 により検討することを目的とした。 方法 論文の選出 2011年から2016年の間で,ASD児に対して応用行動 分析に基づく介入を行った論文を対象とした。馬場他 (2013),道城他 (2008) を参考に国立情報学研究所の 論文データベースCiNiiで “自閉症”,“自閉スペクト ラム症”,“広汎性発達障害”,“アスペルガー障害”の いずれかの語を含み,かつ,“応用行動分析”,“強化”, “弱化”,“罰”,“消去”のいずれかの語を含むものを 第 1 著者と第 2 著者で検索した。その結果,70本の論 文が選出された。 さ ら に, 馬 場 他 (2013), 道 城 他 (2008), 若 林 (2009),Camargo et al. (2016) を参考に選出基準を 設けた。基準は,( a ) 独立変数,従属変数が明確に 定義されており,独立変数は先行子または強化子の操 作という観点から捉えられること,( b ) 独立変数で ある環境操作によって,直接的に行動が変化している かを分析しており,認知などの媒介変数を想定してい ないこと,( c ) 日本の論文であること,( d ) 少なく とも一人はASDの小学生児童 (DSM-5に基づき,DSM- IVにおける広汎性発達障害,特定不能の広汎性発達障 害,アスペルガー障害,自閉症を含む) を対象にして いること,( e ) シングルケースデザイン (多層ベー スラインデザインを含む) を用いていること,( f ) 標的行動と介入技法の関係を検討した論文であるこ と,( g ) 客観的な指標を用いて効果測定が行われて いること,( h ) 介入前後に各 3 回以上行動観察が行 われていることであった。選出は第 1 著者と第 2 著者 でタイトルと要旨を読み,判断できなかったものは本 文を読み判断した。各自で選出を行い,最終的に話し 合いによって決定した。また,評定者間一致率を算出 した。選出の結果, 9 本の論文が分析対象とされた。 項目の分類 馬場他 (2013),道城他 (2008),Camargo et al. (2016)を参考に,選出した論文を対象児童,障害種, 実施者,従属変数,介入方法の項目に分類した。また, 実施者,従属変数,介入方法に関して,分類ごとに研 究効果の統合・比較を行った。 分析方法

Vannest, Parker, & Gonen (2011) のTau- U のウェ ブアプリを用いた。データの読み取りは定規を用いて 手作業で行った。また,高橋・山田・小笠原 (2009) を参考に,処遇期が複数ある場合は最後のフェーズを 分析の対象とした。 結果と考察 論文 9 本 (研究10本,対象者10名) が分析対象と なった。評定者間一致率は97.14%であった。まず, ASD児の適応行動の増加,不適応行動の減少および適 応行動に要する時間の減少に対する応用行動分析の効 果を検討した。適応行動の増加を目的とした研究 6 本 において,介入期で適応行動が有意に増加していた (Tau = 0.67, p < .01, 90% CI = 0.46 - 0.88:図 1 )。不適応行動の減少および適応行動に要する時間 の減少を目的とした研究 4 本 ( 1 本は適応行動の増加 を目的とした論文と重複)においても,介入期で不適 応 行 動 が 有 意 に 減 少 し て い た (Tau = - 0.63, p <.01, 90% CI = - 0.89 - - 0.37:図 2 )。全体的な 結果として,応用行動分析に基づく介入はASD児の適 応行動の増加・不適応行動の減少に中程度の効果があ ることが示された。 次にASD児の適応行動の増加,不適応行動の減少お よび適応行動に要する時間の減少に対する応用行動分 析の効果が実施者によって異なるかを検討した。実施 者は適応行動の増加を目的とした研究では研究者と職

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-23 167 -員,不適応行動の減少および適応行動に要する時間の 減少を目的とした研究では職員と両親であった。実施 者ごとの効果を比較したが,有意差は示されなかっ た。実施者の属性よりも,介入の忠実性が効果に影響 するのではないかと考えられる。 次にASD児の適応行動の増加,不適応行動の減少お よび適応行動に要する時間の減少に対する応用行動分 析の効果が従属変数によって異なるかを検討した。従 属変数は,適応行動の増加を目的とした研究では従事 行動と正反応,不適応行動の減少および適応行動に要 する時間の減少を目的とした研究では逸脱行動と他害 行動と従事行動であった。従属変数ごとの効果を比較 したが,有意差は示されなかった。この結果は応用行 動分析の汎用性の高さが改めて示されたものと考えら れる。 さらに,ASD児の適応行動の増加,不適応行動の減 少および適応行動に要する時間の減少に対する応用行 動分析の効果が介入方法によって異なるかを検討し た。介入方法はプロンプトの有無で効果を比較した が,有意差は示されなかった。特定の技法の使用では なく,技法の組み合わせや対象児童と介入方法との相 性により介入効果が変わると考えられる。 本研究においてTau- U を用いて本邦のASD児に対す る応用行動分析の効果を検証したことは有意義である といえる。今後は対象とする研究を増やした上で,メ タ分析や分類ごとの比較が行われることが望まれる。

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