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プログラムの制御構造とそのイメージ形成について

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愛知工業大学研究報告 第32号B 平成9年

183

プログラムの制御構造とそのイメージ形成について

On a Relation between Control Structure and Imagening in Programming

小 池 慎 一 人 山 住 富 也 什 , 長 谷 川 聡tt Shin-ichi KOIKE, To田iyaYAMAZUMI, Saloshi HASEGAWA Abs!ract We suggesl a melhod 01皿easuflng progra皿皿ing capabilily. On learning progra阻皿ing,lhe s ludenls make lhe ski 11 01 progra回目ing10 lheir mind as lhe abslraclly image of lhem. Then, we can lake lhe lh日ir capabililY by田easuring a imagening capabi 1 i ly The皿elhod is composed lwo kinds of tes.tThe firsl is To lhe sludenls, showing a frag皿enlof source code, lel lhe田selecl lhe image figure corresponding 10 i 1 (saying l皿age test). The second is Lel them trace a fragment of source code and answer lhe resull of lhe effect of lracing (saying trace tesl). The laller is lhe same of ordinary achieve皿entlest. Here, lhe studenls have jusl finished the st巴pof ele皿entaryconlrol structure We did lhe lests for Ihe diflerenl lwo groups of students. As lhe resull, lhe correlalion belween lhe both lesl was enough strong. This shows lhat lhe i田agelest is effeclive 10 measure Ihe capability of programming. 1 .はじめに プログラミング学習において,その到達度は個人 差がきわめて大きい.学期末になって通常クラスの l割程度のものは,課題をこなしているが,下位の 2, 3割の学生は, 1次元配列内データの総和を求 めるプログラムさえ書けない状態で,ほとんど目標 に達していない. 教師の立場から見れば,後者の学生は一歩一歩理 解しながら先に進む努力をしないなどの学習態度が 出来てないことを指摘したい.しかし,この点は教 え方の問題でもあるので,ここでは言及しない. 百Ijの観点から見ると,プログラミングには,ある 具体的な処理手順を約束された文法に従って,効率 よく書き換えていくと言う側面がある.これは次の ように考えられる.すなわち,車の運転免許を取得 したばかりの人間の運転がぎこちないのに対して, 慣れたドライパは,狭い交差点に右折車がいるよう な複雑な状況においても,的確な判断とハンドル操 作を意識に上らないでやってのける.言い換えれば, T 愛知工業大学計算センター (豊田市) 什名古屋文理短期大学情報処理学科(稲沢市) プログラミングには与えられた処理を無意識的にプ ログラムの言葉に置き換える能力が必要とされると いうことである. 我々は,その能力がイメージを介して把握出来る のではないかと考えた.そこで,プログラミング学 習の初期に学ぶ,分岐や繰り返しなどの制御構造を 持つプログラムを学習者がどの程度自分のものとし ているかを,イメージを介して測定することを提案 する1-4) 調査の対象とする学生は,はじめてプログラミン グを学ぶ受講者とする.そして,およそ制御構造の 学習を終えた時点でテストした.制御構造を表現す るプログラム・ソースコードの断片と,それらのイ メージを示す図とを与え,前者に対応する後者の図 を選択させる方法で,正しい図を選択できた得点を 求めた(イメージテスト) .対照テストとして,制 御構造を持つプログラムの断片をトレースさせ(ト レーステスト) ,実行された場合の結果の変数の値 を答えさせた. その結果,イメージテストとトレーステストとの 聞には, O.52~O. 64の相関が認められた.すなわち, プログラムの制御構造について学習者は何らかのイ

(2)

メージを形成していると考えられる 今後,イメージを強化するような訓練をすれば学 習効果が向上するのか,逆にイメージテストは学習 効果を表わすのかについて検討を要する. 2.調査方法 2・1 イメージテスト はじめに,制御構造のイメージ図を作成した. 制御構造には,分岐と繰り返し,さらには多分岐, 繰り返しには前判定と後判定などいろいろなパター ンがある.それらを図1. 1に示す.さらに,分岐し てから繰り返しがあったり,繰り返しの中の分岐, 入れ子になった繰り返しなど,制御構造にはいろい ろなパターンがある.それらの例を図1.2に示す. 学習者は,制御構造を含むソースリストの断片を 見て,対応するイメージを選択する.

ム 口

図1. 1 イメージ図(分岐,繰り返し) 図1.2.イメージ図 (分岐と繰り返しの組合せ,入れ子) 2・2 トレーステスト 制御構造の理解度を測るために,プログラム断片 として与えられた制御構造を含むコードを 1ステッ プずつトレースして,最終状態における変数の値を 答える問題を作成した.解は,選択式でなく,得ら れた値そのものを記入する.分岐と繰り返しを含む テスト文の例を図2に示す [設問]次に示すプログラムの断片について, 実行後の変数の値を答えなさい. ] -[ a

.

=

0

・ b :=0・ c : = 0; for i:=5 to 9 do if (i mod 2)=0 then a := a十I else if (i mod 3)=0 then b := b

+

i else c .

=

c

+

i; 図2. トレーステストの設問 2・3 調査の内容 調査は対象を変えて2回行なった [第 1回目の調査] 対象 名古屋文理短期大学l年次学生 9 0名 言 語 Pascal テスト イメージテスト

2

0

問 トレーステスト 3 0問 時 期 受 講 開 始 後10週目 制御構造の学習まで修了 [第2回目の調査] 対象 愛知工業大学3年次学生 4 1名 言 語 FORTRAN テスト イメージテスト 2 0問 トレーステスト 3 0問 時 期 受 講 開 始 後6週目 制御構造の学習まで修了 なお 2回目のテストの内容は, 1回目のテスト のPascalのソースコードを機械的にFORTRANに翻訳 したものである.

(3)

プログラムの制御構造とそのイメージ形成について 3. 調査結果と解析 1回目と 2回目のテストの結果は,類似した傾向 を示したが, 1回目のテストにおいては特徴的な点 があった. 3・1 第 1回目のテスト結果と解析 ( 1 )第1回目のイメージテストとトレーステス トの得点の散布図を図3. 1示す全体に右肩上がり になっていて,相関がある.相関係数

r

=

O

.5

3

F

=

2

2

.

8

となり統計的に有意である. このデータの内容をさらに検討する. (2 )イメージテストの得点が 5点以下の学生に ついて調べてみると,イメージテストの設問のうち, 特に,一重の制御構造からなる基本的な設問が出来 ていない.そこで,基本的な設問(基本問題)と残 りの設問(組合せ問題)との簡の得点の関係をプロ ッ ト し て み る と 図3.2の 結 果 を 得 る . 相 関 係 数

r

=

0

.

7

7

F

=

9

9

.

0

になる.基本的な設問が出来ていな い学生は,残りの設聞がほとんどできていないこと, 逆にいえば,出来る学生は,基本的な設問にも正し く答えていることが分かる. (3 )トレーステストの平均点は

2

3

.

5点であった. しかし,図3. 1の丸で囲まれた部分には,平均点以 上をとりながら,イメージテストがトレーステスト の得点に比べて低いという学生群がある. このような学生は異質な群を構成すると考え,こ れらの点を除去して散布図を措くと図3.3のよう になる.相関係数

r

=

O

.6

8

F

=

5

6

.

7

となり,イメージ テストとトレーステトスとの相関は高いことが示さ れる. なお,この群の学生については,次章で考察する. (4 )トレーステストについても,構造が一重の 基本的な設問の得点と,複雑に組み合わさった設問 の 得 点 と の 聞 の 関 係 を 図 3.4に 示 す . 相 関 係 数

r

=

0

.

7

6

F

=

9

2

.

7

となり,十分に高い相関が得られて いることが分かる.

1

8

5

唱;

2

0

~ 縫

1

5

G

」ー 『 く

1

0

lト ~~

I

5 ス 、「

1

0

2

0

トレーステストの総得点 30 相関係数

r

=

O

.5

3

F

=

2

2

.

8

図3. 1.トレーステストとイメージテストの得点の 散布図 5 卜一一一 一。一ー→トー一一。一一争寸ト→ +一一一 4b

4

ト-+-+~十一一一一~沙一一一一 必 斗 内 d η 4 4 1 M 吐 睦

G

E

M

怜 欄 0 0

5

1

0

組合せ問題の得点

1

5

相関係数

r

=

O

.7

7

F

=

9

9

.

0

図3.2.イメージテストにおける,基本問題と組合 せ問題の得点の散布図 n u n U F O n u z υ n U

ι 1 2 4 1 噸敗縫

G

ム d 門 小 爪 ー ス ヤ @

A V A v a v A V @

1

0

2

0

トレーステストの総得点 30 相関係数

r

=

O

.6

8

F

=

5

6

.

7

図3.3.トレーステストとイメージテストの得点の 散布図

(4)

3・2 第2回目のテスト結果と解析 O (1)イメージテストとトレーステストの得点の散 布図を図4.

1

に示す.相関係数

r

=

O

.6

4

F

=

4

4

.

6

と なり,有意に相関が認められる. ( 2 )イメージテストの基本的な設問と残りの設問 との間の関係を図

4.2

に示す.基本的な設問に対す る得点と残りの設問に対する得点との聞の相関係数

r

=

O

.

5

2

F

=

2

2

.

5

であり,十分に高い相闘が認められ る. ( 3 )トレース問題についての,基本的な設問に対 する得点と残りの設問に対する得点との間の関係を 図

4

.3

に 示 す 相 関 係 数 同 凡 問

9

で,高い

相関係数

r

=

O

凡 叩

9

相闘が認められる.基本的な問題の出来ている学生 図4.3. トレーステストにおける,基本問題と組合 が,その他の設問にもよい得点を上げている事が見 せ問題の得点の散布図

1

4

唱酬,

1

2

理主

1

0

8

i

l

@

6

4

4 リ 2 0 @ ⑫ φ @ ⑫ @ @

o

2 4 6 8 1

0

1

2

1

4

1

6

組合せ問題の得点 柑関係数

r

=

O

.7

6

F

=

9

2

.

7

図3.4. トレーステストにおける,基本問題と組合 せ問題の得点の散布図 られる. 咽:

2

0

雑 緩

1

5

G ..L.

r

<

1

0

1ト : λ ' 1 5 ス ヤ

@ @ ⑫ ⑤ . .

@

: l

1

-

-

-

"

争 ー

'

@

.

~・ ⑤ ⑤ @ ド @

4

+

1

0

2

0

トレーステストの総得点

3

0

相関係数

r

=

O

.6

4

F

=

4

4

.

6

図4. 1.トレーステストとイメージテストの得点の 散布図 5 凋 斗 q d n t 4 l , 叫 蛇

G

E

M

怜 欄

5

1

0

組合せ問題の得点

1

5

相関係数

r

=

0

.

5

2

F

=

2

2

.

5

図4.2.イメージテストにおける,基本問題と組合 せ問題の得点の散布図

1

4

@ 、

1

2

E

1

O

8

8 腿 6

=

国 品

'

*

I2

4

o

2 4 6 8 1

0

1

2

1

4

1

6

組 合 せ 問 題 の 得 点 4園調査結果の考察 上記のデータのついて考察する. 4・1 誠査結果3・1について イメージテストの得点が概めて低いにも関わらず, トレーステストに高得点をあげた学生がいたことに ついては以下のように考える. ・一回目の受講者は,設問作成者の担当クラスで ある.したがって, トレーステストの設問形式 に慣れていたのではないか. ー与えた問題が易しかったので,設問の解き方を 覚えて機械的にトレースすれば出来てしまった と考える.すなわち,制御構造について,受講

(5)

プログラムの制御構造とそのイメージ形成について

1

8

7

者なりのイメージ形成が十分なされていなくて 期に見きりをつける.しかし,必修科目では,そう も,この程度の設聞に対して正しく解答できた はいかない.プログラミングは不得手だと自覚する ということである. 学生もテストを受けなくてはならない.したがって, 図3.1に見られるような,特別な群に属する学生が 4・2 調査結巣 3・2について いたと考えられる. イメージテストとトレーステストの問には高い柑 関が認められた. これは,学留者が,制御構造を理解するにつれて 5. 結論と展望 自分のものとして何らかのイメージ形成をしている 以上の調査結果より, 3・1で除いた群の学生を ことを暗示させる. 別にして,多くの学習者は,プログラム内の制御構 造について,何らかのイメージを構成していると考 4・3 一回目とこ回目のテストの比較 える. 顕著な相違は,一回目のデータでは, 4 ・1で述 イメージ形成の進んだ学生は,トレーステストも べたように,図3・1の右下に見られる特別な群が 良い成績を上げているので,イメージテストが学習 ある.それに対して,二回目のデータでは,イメー の効果を測る尺度として利用できる可能性が示され ジテストとトレーステストの得点の聞には有意な相 た. 関があり,トレーステストが出来てもイメージテス さらに,積極的にイメージ形成を強化するような トの得点が低いという学生の群は見出せない. 方式が見つかれば,学習効果が上げられるかについ 二回目のデータは予想通りのものであることから, て検討したい. 一回目のデータにはイメージテストを阻害するかあ ここに言うイメージは,テストに用いた図のこと るいは本質的に異質な学生の群れが存在すると考え のみならず,学習者の頭の中でなされている抽象化 られる. の作用をも意味する.したがって,イメージ図とし ては,図1.

1

,1.

2

に示された処理のフローに近 4. 4 考察 い図形以外に,ソースコードから見ればより抽象化 イメージテストとトレーステストは,テストの中 の高いイメージを用いても測定可能ではないかと考 に同じようなソースコードの断片を含むが,かなり える.今後の課題としたい. 性格の異なるテストである.前者では,ソースコー ドを見て論理的にじっくり考えないで直感的に対応 するイメージ図を選択させる.後者は,ソースコー ドを一行づっ丹念に追跡し,条件分岐などにも注意 して論理的に正しく理解し,計算をさせるものであ る. 従来,学習の到達度は,ここで言うトレーステス トに類するテスト形式が用いられてきたが,イメー ジテストも高い相闘を持って同様な結果を得ること が確かめられた. 4. 5 その他 一回目と二回目の学習者の聞の相違は,前者は, 必修科目であり後者は選択科目であることである. 後者の場合,当初の受講生は60名余りいたが,テ スト時には

3/4

41

名に減じていた. 言い換えれば,選択科目の場合,自分に合わない とか,努力に耐えられないと判断した学生は早い時 参考文献 1 )長谷川聡,山住富也:プログラミング教育にお ける制御構造理解のためのイメージ形成の効果, 情報処理学会第

51

回全国大会講演論文集, 1 -295, (1995) 2 )長谷川聡,山住富也,小池慎一:プログラム教 育における制御構造の理解度とイメージ形成に ついて,電気関係学会東海支部連合大会講演論 文集, 576, p.288, (1996) 3 )長谷川聡,山住富也,小池慎一:プログラム教 育における制御構造の理解度とイメージ形成に ついてーその2,電気情報通信学会1997年総合 大会講演論文集, D-15-26, (1996)

4)

長谷川聡,山住富也:プログラミング教育と学 習者のイメージ形成,名古屋文理短期大学紀要 第22号, pp.9-14, (1997)

参照

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