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パーキンソン病患者に対するダンスの有効性に関する研究

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(1)

パーキンソン病患者に対するダンスの有効性に関す

る研究

著者

橋本 弘子

内容記述

学位記番号:論保第18号, 指導教員:高畑 進一

(2)

大阪府立大学大学院

総合リハビリテーション学研究科

博 士 論 文

パーキンソン病患者に対するダンスの

有効性に関する研究

A study on the effectiveness of dance for

Parkinson's disease patients

2016年3月

(3)

博士学位論文

パーキンソン病患者に対するダンスの

有効性に関する研究

大阪府立大学大学院

総合リハビリテーション学研究科

博 士 論 文

橋 本 弘 子

(4)

目 次 要約・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 緒言・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 第1章 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第1節 研究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・4 第2節 用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・8 第3節 研究目的と意義・・・・・・・・・・・・・・9 第4節 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・10 第2章 ダンスおよびパーキンソン病体操の作成・・・・・・・・15 第3章 パーキンソン病患者に対するダンスの介入効果に関する研究 ・・・・・・・・17 1. 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 2. 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・17 3. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 4. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 5. 小括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 第4章 ダンスの介入効果の出現時期と介入終了後の持続性に関する 研究 ・・・・・・・・ 34 1. 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 2. 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・34 3. 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 4. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 5. 小括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 第5章 総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 第6章 提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56 第7章 研究の限界と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・57 文献・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・58 謝辞・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・65 資料・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・66

(5)

要 約 近年パーキンソン病は単なる運動症状だけではなく認知機能障害,精神 症状などの非運動症状を呈する全身性疾患として捉えられている. 現在パーキンソン病に対する主なリハビリテーションは運動機能の回 復を目的に実施する場合が多い。し かし 日常生活 や生活 の質 の改善に は, 非運動症状へのアプローチは必須であると考える。そこで運動機能のみな らず認知機能や精神症状にも同時にアプローチできる楽しく魅力的なリ ハビリテーションの一つとしてダンスが有効であると考えた。そのため患 者の動作を改善する可能性のある要素を盛り込んだダンスを制作した。こ のダンスが運動機能,認知機能,精神症状,パーキンソン病の全般的症状 および生活の質に対し有効か否かをダンス群,パーキンソン体操群,コン トロール群を設定し比較検証した。 その結果,ダンスは運動機能,認知機能,精神症状,パーキンソン病の 全般的症状に対して効果があることがわかった。これよりダンスは,パー キンソン病患者の低下した機能に対して包括的なリハビリテーションと して有効であるといえる。しかし,ダンスによる介入を終了すると,その 機能は短期間のうちに介入前のレベルに戻ることがわかり,継続の重要性 が示唆された。 Key Word パーキンソン病,ダンス,パーキンソン体操,運動症状,非運動症状 -1-

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緒 言 パーキンソン病の日本における有病率は人口 10 万人に対し 100 人〜 150 人で,特に 65 歳以上では人口 10 万人あたり 200 人とされている 1 発症年齢は 50 歳から 65 歳で,高齢社会の進展に伴って増加の一途をた どっている。近年は病態の解明や治療研究が発展してきているが,治療 法は未だ確立されていない。 パーキンソン病は黒質緻密部および腹側被蓋野のドパミン神経細胞の 変性を主体とする進行性の神経変性疾患である 2。黒質緻密部や腹側被蓋 野のドパミン欠乏に起因する大脳基底核神経回路の機能異常 3や中脳辺 縁系 4の機能低下,さらには Lewy 小体の広がりによる多くの神経伝達系 の機能低下が病像を複雑にしている 5。その症状は 4 大症状といわれる安 静時振戦,筋固縮,無動,姿勢反射障害に代表される運動症状が大きな 特徴である。しかし,最近では早期から認知機能障害,不安,抑うつ, アパシーといった精神症状,自律神経症状,睡眠障害などの非運動症状 の出現が明らかになってきた 6,7,8。これら運動症状,非運動症状はパーキ ンソン病患者の日常生活動作に障害をもたらす。その障害とは無意識に 行う動作,複雑動作,視覚情報がない動作が出来なくなる,あるいは難 しくなるなどの症状や,快−不快感情や精神的緊張が動作に影響するなど の症状であり,生活に様々な困難をもたらす 9。その結果,生活の質の低 下がおこる 6。しかしパーキンソン病の進行に対する治療法は現在のとこ ろ,薬物治療と外科的治療,そしてリハビリテーションの 3 つである。 リハビリテーション分野では,現在国内外を問わず運動機能にアプロー チすることが主流となっている。しかし海外においては 2008 年頃から運 動機能や認知機能にも有効で楽しいリハビリテーションとしてダンス療 法が一部で始まっている。ダンスにおける様々なステップの組み合わせ や上肢や下肢を同時に使う動き,音楽に合わせることなどが運動機能, 認知機能,精神症状などに効果的として研究され始めた。その方法はダ ンサーの指導のもと行うモダンダンスをベースとしたダンス 10やタンゴ ダンス 11などである。しかし運動機能やうつ症状について介入効果の研 -2-

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究はあるが,認知機能に対する介入効果を検証したものや,介入効果の 出現時期や効果の持続まで検証したものは無い。一方,国内においては パーキンソン病に対するダンスを用いた介入および効果の検証は皆無で あった。 そこで筆者は治療的要素を持ち誰もが楽しめるダンスが必要と考え,パ ーキンソン病のためのダンスを作成し効果を検証することとした。 ダンスは適切な動きを実行するために動きをイメージし,脳内で運動を 計画し,音や動きに注意を集中させ,動きを実行し,その動きをコントロ ールしながら記憶にとどめるといった特徴を持っている12。この一連の手 続きはパーキンソン病患者の低下した運動機能,認知機能に直接作用する 可能性がある。また,ダンスの持つ楽しさは精神症状の改善に影響する可 能性もある13。このようにダンスの特徴を生かすことはパーキンソン病の 運動機能,認知機能,精神症状の改善に有効であり,運動症状のみならず 非運動症状にも同時にアプローチできる方法と考えている。 本研究ではパーキンソン病患者の運動症状,非運動症状およびパーキ ンソン病の全般的症状と生活の質に対しダンスが有効か否かを検証し, さらに介入効果の出現時期,介入終了後における効果の持続性について 検証する。そして,リハビリテーションとしてのダンスの有効性と介入 方法を提言する。そのため本論文では第 1 章で研究の背景を詳細に述べ るとともに本研究の目的や意義,そして方法を述べる。第 2 章では介入 方法であるダンスおよびパーキンソン病体操の作成の経緯について,第 3 章ではダンスおよびパーキンソン病体操の介入効果について,第 4 章で はダンスおよびパーキンソン病体操の介入効果の出現時期と介入終了後 の持続性について述べていく。 -3-

(8)

第1章 序 論 第1節 研究の背景 1. パーキンソン病の病理と障害 パーキンソン病(以下PD)は中脳黒質ドパミン神経細胞が進行性に変性 脱落し,その結果,線条体におけるドパミンが減少し大脳基底核神経回路 の機能異常が生ずる代表的な神経変性疾患である2。最近の研究から,基 底核は精緻運動の制御や学習・認知などの高次機能に重要な役割を持つこ とが明らかになってきた14。基底核は大脳皮質から入力を受け,基底核内 の神経回路で処理された情報は,視床を介して大脳皮質へ,そして辺縁系 や脳幹へと出力される。この大脳皮質—基底核ループは4種ある。運動系ル ープは必要な運動の正確な遂行に関与し,眼球運動ループは眼球運動の制 御に関与する。前頭前野系ループは意思の発動や行動計画,注意,社会行 動などの発現に,辺縁系ループは前頭前野系ループとともに認知情報の評 価,情動や感情の表出,意欲などに関与する15,16。一方,姿勢や歩行など は基底核—脳幹系で制御している14 PDにおけるドパミンの減少は,大脳皮質—基底核ループにおける視床か ら大脳皮質への投射を過剰に抑制し活動性の低下を引き起こす。結果とし て随意運動が起こりにくい状態となり運動減少症状(無動,寡動)を生じ 2,姿勢反射障害や歩行障害もひきおこす。またドパミンの減少は前頭前 野や辺縁系の活動低下も引き起こす。大脳基底核と前頭葉における相互作 用(前頭前野系ループ)の破綻が原因となってあらわれる認知機能障害は, 遂行機能障害,作動記憶,手続き記憶,さらには記憶の有効活用障害とし て顕著にあらわれる17-20。PD患者では遂行機能障害のため自発的に解決を 要求される課題が特に困難となる21。そのため初めての場所や状況が変化 する場所では動きにくいといった症状に現れるが,これは運動計画やプロ グラムが障害され,実行できないためと考えられる。精神症状では辺縁系 (辺縁系ループ)の活動低下によって抑うつやアパシーをはじめとする症 -4-

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状が出現する22,23。このように PDは大脳基底核神経回路の機能異常から運 動機能,認知機能,精神機能の低下がおこり,運動症状と非運動症状があ らわれる神経変性疾患である。 このPDは慢性的経過をたどり24運動症状や非運動症状により日常生活に 様々な困難をもたらす。その結果,生活の質(以下QOL)は低下する6 運動症状では姿勢の不安定,歩行障 害, 動作緩慢 ,ジス キネ ジアなど が, 非運動症状では認知機能障害,抑うつや不安,アパシーといった精神症状, 自律神経障害,睡眠障害などが現れる25。とりわけ非運動症状である認知 機能障害や抑うつはQOLに悪影響を及ぼし,またリハビリテーションの阻 害因子ともなっている26。認知機能障害では,とくに遂行機能障害が生活 の困難さと結びつきQOLの低下を招いている27。また,うつ症状は病初期 から患者に高率に認められQOLにも大きく影響する因子として注目され ている27。うつ症状について,立花は「患者自身が気づいておらず,報告 も無いことから,うつの早期診断と治療はPD患者のQOL向上のためにも 非常に重要な分野である」25と述べている。また,Schragらは28PD患者に とってうつの存在がQOLと最も密接に関連することを述べている。今後は QOL向上のため運動症状のみならず,非運動症状にも対応した治療が早急 に望まれている6,29 2. PDのリハビリテーション PDに対する治療はどのように行われているのだろうか。国内において は2002年に初めてPD治療ガイドラインが出版され,その後2011年に改訂 版が出版された。その内容は運動症状および非運動症状に対して, evidence-based medicine(EBM)の方法論に基づいて推奨される治療法を 提示したものである30。提示されている治療法は薬物治療,外科的治療, リハビリテーションである。薬物治療や外科的治療は,運動症状や非運動 症状に対して適応や効果が示されている。また,リハビリテーションにつ いては運動療法が身体機能,QOL,筋力,バランス,歩行速度の改善,転 倒頻度の減少に効果がある事を述べている。さらに外的刺激を用いた歩行 -5-

(10)

訓練や音楽療法が有効であることが述べられている。しかし非運動症状に 対するリハビリテーションの手段は示されていない。その理由として今ま で運動機能のリハビリテーションに主眼がおかれていたこと,そして非運 動症状のリハビリテーションに対する十分なエビデンスが得られていな いためと考えられる。海外のガイドラインにおいても同様に非運動症状に 対する手段は示されていないのが現状である31,32 従来のリハビリテーションでは国内外ともに,運動機能に主眼をおいて おり,その内容は関節可動域運動・筋力増強運動・ストレッチ運動・バラ ンス運動・歩行練習・PD体操などである。これら介入方法が筋力やバラ ンスなどの身体機能,歩行速度,転倒などに有効であることが示されてい る33-35。また歩行障害に対しては,視覚刺激や音刺激36,37などの代償手段を 用いた介入の有効性や,音楽療法38-40を用いた介入の有効性を示す文献も ある。これらの一部には運動症状の改善がQOLの維持・向上につながると 示唆しているものもあるが,それを明確に検証したものはない。非運動症 状である認知機能障害に関しては薬物治療や外科的治療の効果が示され ているが,リハビリテーションの手法や効果を示しているものはほとんど ない41 PDに対するアプローチについては,QOL向上のため,運動症状のみな らず非運動症状も含む包括的なリハビリテーションが早急に望まれてい る6,29。すなわち PDに求められているリハビリテーションは運動機能,認 知機能に対する効果を併せ持ち,しかも喜びや楽しみと言った快感情を伴 い,PD患者が継続可能なものと考える。しかし運動症状のみならず非運 動症状に対する包括的なリハビリテーションの手法や効果および効果の 持続性を示す文献は見当たらず,い まだ 確立され た方法 はな いと言え る。 3. PDに対するダンスの適応性 これまで筆者は精神科疾患を有す る方 や認知症 を有す る高 齢者に対 し, ダンスを実施してきた。その際に身体の動きの改善や,感情の表出,意欲 が増すなどの効果を実感していた。2009年からPD患者会の依頼でダンス -6-

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を実施する機会を得た。ダンスセッションを重ねるごとに手指の複雑動作 や上肢の並列動作がスムーズに出来る様になる,前後のバランスが良くな る,表情が明るく意欲的な取り組みが見てとれるなどの変化が認められる ようになった。海外では2008年頃よりPD患者に対するタンゴダンスやモ ダンダンスを基盤にしたダンスの有効性が検証され始めていたが,日本で はPDに対してダンスの実践もダンスを作成しその効果を検証する研究も 行われていなかった。そこで筆者は運動症状,非運動症状にも効果的な楽 しく魅力的なダンスの開発が必要と考え,PDに対するダンスの有効性を 検証することとした。何故ならダンスは運動機能11,42-46,認知機能47-50,精 神症状51-53に同時に働きかける特徴を持つと考えているからである。ダン スは体の柔軟性, 動きやステップのスピード,バランスなどに関連する 運動機能を働かせる活動である。認知機能においては,適切な動きを実行 するために運動を計画し,音や動きに注意を集中し(注意),動きをコン トロールして,実行する(遂行機能)活動である。さらに動きや決まった ステップを習得する為に,何度も練習し, 動きを記憶し(記憶),自身 の身体がどのように動いているかを確認することを繰り返し行い,動きの 完成度を高めていく活動12でもある。精神症状においては何度も練習し, 完成度を高めていくことで参加者は達成感や喜びを感じ,十分に動けずと も,音楽に合わせて身体を揺らし,他者と共に動くことで参加者に心地よ さや楽しさをもたらすことができる。このようにダンスの実施は運動を計 画し遂行するため,大脳皮質—基底核ループである前頭前野系ループや運 動系ループ,感情面に作用する辺縁系ループなどが関与していると考えら れる。すなわちダンスは運動機能,認知機能,精神機能に同時に働きかけ る特徴を持っていることになる。 ダンスの特徴である動きをイメージする,イメージしたことを遂行する ために運動を計画する,二重課題のような注意機能を駆使する,動きを何 度も練習しコントロールしながら記 憶に 留めると いった 一連 の手続き は, PD患者の低下した認知機能(遂行機能,記憶など)に直接作用する可能 性がある。また,集団で行うことで他者とのつながりが得られ,ダンスの 持つ楽しさを共有することで低下した精神症状(うつ症状,アパシー)の -7-

(12)

改善に影響する可能性もある。以上よりダンスは,PDの運動症状のみな らず非運動症状に効果がある新たなリハビリテーションの一つになると 考える。 第 3 節 用語の定義(図 1) 本研究では PD における症状を運動症状と非運動症状にわけて捉える。 運動症状とは振戦・筋固縮・無動・姿勢反射障害など運動機能の障害 を指す 5。運動機能の障害は歩行や動作緩慢,バランスの不安定さに現れ る。 非運動症状とは 認知機能障害,精神症状,自律神経障害,睡眠障害など である。認知機能とは内的,外的事象を認識し知識として蓄え,必要に応 じて使うことであり,PDにおける認知機能障害とは遂行機能障害,手続 き記憶の障害を意味する。精神症状とは抑うつ,アパシーといった症状で ある。 全般的症状とは運動症状および非運動症状とこれらの症状から起こる 日常生活活動における困難な症状である。 生活の質の低下とは PD 患者の日常生活における移動,基本的日常生活 動作,コミュニケーションにおける困難さや精神的幸福感,社会的支援 の減少,集中や記憶力の低下,スティグマ(偏見),身体的不快感等の 頻度が増すことである。 図 1 PD の症状 -8-

(13)

第 3 節 研究目的と意義 本研究の目的は,PD 患者のリハビリテーションとしてダンスが運動症 状,非運動症状に対し有効か否かを検討することである。そして日常生 活動作の障害を含めたPD の全般的症状が改善し, QOL も向上するのか について検証する。そのためダンスを実施する群,PD 体操を実施する群, ダンスも PD 体操も実施しない群で介入効果に差があるかを比較し,ダン スの有効性を検証する。さらにダンスおよび PD 体操の介入の効果が出現 する時期を明らかにする。またダンスおよび PD 体操終了後の介入効果の 持続性を検証し,リハビリテーションとしてのダンスの介入方法を提言 する。 現在 PD に対し,運動症状と非運動症状に同時にアプローチできる確立 されたリハビリテーションの方法は未だ無い。その方法のひとつとして ダンスを取り上げ,運動症状である運動機能,非運動症状である認知機 能,精神症状,そして日常生活動作を含む PD の全般的症状,QOL の維 持・改善に対する有効性を検証する。この研究によって PD 患者にとって 楽しく取り組みやすい有効なリハビリテーションを提供することになる と考える。 -9-

(14)

第 4 節 研究方法 ここでは研究に関わる対象者と第 3 章と第 4 章の研究概要について述 べる。 1. 対象者 1) 対象者の基準 <包含基準> ・ PDと診断された方。 ・ 在宅で通院治療をおこなっている方。 ・ 1時間のダンスまたはPD体操の実施が可能な歩行自立の方。 ・ 約7ヶ月間の調査研究協力に書面で同意を得た方。 <除外基準> ・ 医師に運動を制限されている方 ・ 調査研究期間中に入院予定があるなど治療変更予定がある方 ・ 調査研究期間中に服薬変更予定がある方 ・ 2) 対象者のサイズ サンプルサイズはGpowerを用いて,有意水準α=0.05 ,power=0.8として Hackney ME44,46らの研究と,Cohen54の効果量を参考に各グループを14名と 見積もった。 3) 対象者の選出方法 各地域にある複数のPD患者会に研究依頼を行うため説明会を行った。 説明会では「研究目的はPDに有効なリハビリテーションの方法を調べる こと」と説明した。その結果6つの患者会が研究の参加を承諾した。 -10-

(15)

2. 研究手続き(図 2) 承諾を得た患者会を研究の目的を知らない調査協力者が,コインを用 いてラン ダムに ,ダ ンス群,PD 体操群,コントロール群と割り付けた。 ベースライン評価(以下評価①)は各群とも介入開始 1 週間前に行った。 ダンス群,PD 体操群は週 1 回 60 分のセッションを 12 回実施した。ダン ス,PD 体操とも研究者が実施した。 各群とも介入期間および非介入期間,評価時期は図 2 に示す。介入期 間においては,介入前と介入効果を比較しダンスの有効性を検証するた めにダンス群,PD 体操群,コントロール群において介入開始から 3 ヶ月 半後に評価③を実施した。さらに介入効果の出現時期を検証するために ダンス群,PD 体操群で介入開始から 1 ヶ月後に評価②を実施した。非介 入期間においては,ダンスおよび PD 体操の介入終了後の効果の持続性を 検証するため,ダンス群,PD 体操群において介入終了 1 ヶ月後に評価④, 介入終了後 3 ヶ月半後に評価⑤を実施した。またダンス,PD 体操で評価 ①から介入期間を経て,介入終了 3 ヶ月半後に効果は残存しているのか を検証するためにダンス群,PD 体操群で評価⑤を実施した。 なお参加者には倫理的配慮として研究終了後に希望すればダンスまた は PD 体操のセッションを受講することが可能であると伝えた。 本研究は大阪府立大学総合リハビリテーション学部研究倫理委員会の 承認を受けて実施した。(20120T02)。 研究期間は 2012 年 8 月より 2014 年 6 月である。 -11-

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図 2 研究手続き

3. 評価項目および方法

1) 評価項目および評価時期(表 1)

基本情報として性別,年齢,罹患期間,Hoehn-Yahr(H&Y)の重症度分 類を調査し,Mini-Mental State Examination (MMSE)55も実施した。さら に服薬の変化が評価に与える影響を考慮してPDに対する服薬内容も調査 した。

PDの運動症状,非運動症状の評価に必要な運動機能と認知機能,精神 症状,およびPDの全般的症状,QOLの評価指標を選択した。

(17)

運動機能は歩行とバランス機能を評価するためTimed Up-and-Go Test TUG)56,Berg Balance Scale (BBS)57を実施した。TUGは時間と歩数 を測定した。

認知機能は遂行機能を含めた前頭葉機能を評価するためにFrontal Assessment Battery at bedside (FAB)58を用いた。また運動を計画する能

力を評価するため,今回は運動イメージ能力評価として用いられる手の Mental Rotation Task (MR)を使用した。MR(図3)は視覚的に提示され る回転した図形や身体の一部の写真 から 正立像や 左右を 判断 するもの で, 運動イメージ能力の評価として使用されている59。特に手のMR課題は,身 体運動の計画を行う運動前野が活動することが知られている60-62。課題は 48枚の(左右24枚ずつ),手掌,手背,母指側からの3種類,45度ずつ360 度回転したものを使用した63。写真が表示されてから回答するまでの反応 時間(秒数)と正解数(48点満点)を計測した。MRは,運動イメージか ら判断に至る時間が客観的に測定でき,正解・不正解が評価できる。 図3 MRT(手の写真/一部抜粋) 精神症状の評価には生活の質に強い影響を及ぼすといわれている抑う つとアパシーに焦点を当て,抑うつスケールであるSelf-rating Depression Scale (SDS)64 やる気スケールであるApathy Scale (AS)65,66を用い

た。

PDの全般的症状の評価はUnified Parkinson's Disease Rating(UPDRS/Part Ⅰ~Ⅳ)67を用いた。

PartⅠは精神機能,行動,および気分,PartⅡは日常 生活動作,PartⅢは運動能力,PartⅣは治療の合併症および睡眠障害と自 律神経障害の評価をしている。

(18)

生活の質の評価はThe Parkinson's Disease Questionnaire (PDQ-39)68 用いた。 運動強度はダンス,PD 体操のメインエクササイズ終了時に心拍数を測 定し,Karvonen Formula69によって算出した。 表 1 評価項目および評価時期 2) 評価方法 すべての評価は,研究協力者である 5 名の作業療法士が行った。彼ら は対象患者がどの群に属するかという情報を与えられずに評価を実施し た。評価者は各種評価スケールを用いて PD の症状を評価した。精神症状, 生活の質は参加者自身が評価表にチェックしたものを,採点した。 心拍数はデジタル自動血圧測定器で測定した。 -14-

(19)

第 2 章 ダンスおよびパーキンソン病体操の作成(表 2) 今回作成したダンスおよび PD 体操のセッション時間は 60 分である。1 セッションをウォーミングアップ 20 分,メインエクササイズ 35 分,ク ーリングダウン 5 分と構成している。ダンスおよび PD 体操ともに椅座位 や立位での動作時間,動かす身体部位は差がないように作成した。運動 強度も 3.5METs〜4.5METs の動きを組み合わせ,同じ強度で作成した。 ダンスにはPD患者の困難な動作に対処するときに用いる戦略12(動作を 意識して行う,単純な動作に分解して行う,視覚や聴覚の情報を適切に用 いる)から必要な要素を抽出し盛り込んでいる。その要素9とは1.動きを イメージする,2.身体の部位や動きに注意を向ける,3.手掛かりを用いる (視覚,聴覚,感覚刺激),4.組み合わせた動きを繰り返す,である。そ のためにセラピストは 1.動きがイメージできるように「〜のように動い て」といった言葉を頻繁に使用する。例えば上肢を伸展させ肩関節を回転 させるような動きでは「花びらを持って空高く撒きましょう」と動きを促 す。2. 身体の部位や動きに注意を向けさせるためには,具体的に筋肉の 名前や身体部分を挙げどのように動かし,身体の重心はどこに置くのかな どを説明しゆっくりと動きを確認する。3. 視覚,聴覚,感覚刺激の手掛 かりを用いて動きやすくさせるためには,視線の方向を指示する,カウン トしやすい音楽を使用し,自身や他者の身体をタッピングさせる。4. 組 み合わせた動きを繰り返すために,4種以上の動きで構成された踊りのス ピードを段階的に変化させ繰り返し実施した。 以上の要素を盛り込んだダンスを構成するために,モダンダンスの柔軟 性を高めるための動き,エアロビクスダンス・ジャズダンス・タンゴダン スのステップや動きのコンビネーション,クラッシックバレエの身体に意 識を向け重心を確認する動き,即興,パントマイムの動きを用いた。 PD体操は,臨床のリハビリテーションで実施されている療法70や書籍7,71 で紹介されているPD体操(上半身・下半身の関節可動域を広げる,バラ ンスの保持,重心の移動,その場足踏み,椅子からの立ち上がりと腰掛け, 歩行)をもとに組み合わせ作成した。セラピストはイメージを促す言葉は -15-

(20)

使用せず,同じ動きを繰り返すこととした。

表 2 ダンスとパーキンソン体操の構成内容

(21)

第3章 PD 患者に対するダンスの介入効果に関する研究 1. 目的 本研究の目的は,ダンスが PD 患者の運動症状,非運動症状に対し有効 か否かを検討することである。そして日常生活動作の障害を含めた PD の 全般的症状が改善し,さらには QOL も向上するのかを検証する。 2. 対象と方法 1) 対象者 対象者は59名である。6つの患者会をダンス群,PD体操群,コントロ ール群と割り付けた。介入前の各群の対象者数はダンス群19名,PD体操群 21名,コントロール群19名である。介入後,セッションの出席が12回未満 であった者,評価を欠席した者,服薬変更があった者は分析から除外した。 対象者の基準,選出方法は第1章(p11)で示した研究手続きの通りである。 2) 方法 (1) 評価方法および評価時期 評価方法は第 1 章(p14)で示した通りである。 ダンス群,PD体操群,コントロール群で評価①を介入開始1週間前に行 った。ダンス群,PD体操群は週1回60分のセッションを12回実施した。ダ ンス,PD体操とも研究者が実施した。コントロール群の参加者は現状の 生活を続けた。ダンス群,PD体操群は介入終了後1週間以内に評価③を実 施した。コントロール群は評価①から3ヶ月半後に評価③を実施した。 -17-

(22)

(2) 分析方法

各群における参加者の基本属性と 評価 ①の評価 結果を 比較 した。性 別, H&Yの重症度分類はχ2検定 を行っ た。年 齢,罹患 期間,MMSE, TUG,

BBS, FAB, MR, SDS, AS ,UPDRS,PDQ-39はOne-way ANOVAで 検定した。運動強度の比較は対応のあるt検定を行った。 各群の介入前後の効果の検討は対応のあるt検定を行った。3群間の介入 効果の比較はTwo-way ANOVA(3つのグループ×評価①, 評価③)で交 互作用の検定を行った。さらに交互作用または主効果が有意な項目に対し, 各群の介入効果の有効性を検証するため評価①と評価③の変化量を One-wayANOVA(3つのグループ×変化量(評価③−評価①))で検証し多 重比較を実施した。 補正はベースライン評価で3群に差があった男女比を共変量として各評 価項目を検定した。有意水準はp<0.05とした。t検定の効果量72はr=0.1(効 果量小) r=0.3(効果量中),r=0.5(効果量大)とした。Two-wayANOVA の交互作用の効果量72はη2=0.01(効果量小),η2=0.06(効果量中), η2=0.14(効果量大)とした。データ分析はSPSS Version21を使用した。 -18-

(23)

3. 結果 同意を得られた 6 患者会を無作為に割り付けた結果, ダンス群は 19 名,PD 体操群は 21 名,コントロール群は 19 名となっ た。 介入期間にダンス群は欠席 2 名,骨折 1 名,服薬変更 1 名を除き分析対 象者は 15 名となった。PD 体操群は欠席 2 名,継続したくない 2 名を除き 分析対象者は 17 名となった。コントロール群は服薬変更 2 名,入院 1 名, 欠席 2 名を除き分析対象者は 14 名となった。 以上より分析対象者は46名(図4)である。 図4 研究手続きおよび対象者数 1) 基本属性とベースライン評価における3群の比較(表3) 基本属性の年齢,罹患期間,MMSE,H&Y の重症度分類は群間で有意 な差はなかった。しかし男女比には有意な差があり(χ2=6.249 df=2 p=0.044),コントロール群で女性が少なく男性が多かった。TUG(時間, 歩数),BBS,FAB,MR(反応時間,正解数), AS, SDS, UPDRS (Total,PartⅠ〜Ⅳ),PDQ-39は3群間で有意な差はなかった。

(24)

表3 基本属性とベースライン評価における3群の比較

値は平均値±SD。性別,Hoehn and Yahrの重症度分類はχ2検定の結果。年齢,発 症年数,MMSE, TUG,BBS,FAB,MR,AS.SDS,UPDRS,UPDRS(PartⅠ〜 Ⅳ)のp値はOne-wayANOVAの結果。 2) 運動強度の比較(図5) ダンス群とPD 体操群の運動強度は群間で有意な差がなかった(ダンス 群:56.7±5.3, PD体操群:55.8±4.4 p=0.08:値は12セッションの運動 強度の平均値)。2群の運動強度は50%〜60%であり,やや楽な有酸素運動 の範囲であった。 -20-

(25)

5 ダンス群とPD体操群の運動強度の比較 3) 各群の介入前後の比較(表4) ダンス群は運 動機 能:TUG:時間(t(14)=3.23 p<0.05),歩数(t(14) =3.29 p<0.05))とBBS(t(14)=-4.27 p<0.05),認知機能:FAB(t(14) =-4.47 p<0.05), MR:反応時間(t(14)=4.74 p<0.05)),精神症状:AS (t(14)=4.68 p<0.05), SDS(t(14)=3.25 p<0.05),PDの全般的機能 UPDRS (t(14)=6.92 p<0.05),UPDRS:PartⅠ(t(14)=4.00 p<0.05), UPDRS:PartⅡ(t(14)=4.99 p<0.05),UPDRS:PartⅢ(t(14)=6.42 p<0.05), UPDRS:PartⅣ(t(14)=2.74 p<0.05)で有意な差があった。 PD体操群は運動機能:TUG:時間(t(16)=2.27 p<0.05),TUG:歩数(t (16)=2.82 p<0.05)),認知機能:FAB(t(16)=-2.75 p<0.05),MR:反 応時間(t(16)=3.64 p<0.05)で有意な差があった。MRT:正解数,精神症 状:SDS,AS,全般的症状:UPDRS:Total,UPDRS(PartⅠ〜Ⅳ)は有意な 差はなかった。 コントロール群はTUG:時間(t(13)=2.38 p<0.05)に有意な差があり, その他に有意な差はなかった。UPDRS:Total(t(13)=-2.17 p<0.05)は有 意に低下していた。 -21-

(26)

表4 ダンス群,PD体操群,コントロール群の 介入前と介入3ヶ月半後の比較

評価①,③の値は平均値±SD。群内比較:p値は対応のあるt検定の結果。効果量 はr値。群間比較:p値はTwo-wayANOVAの結果。効果量はη2値。

(27)

4) 3群間の介入効果の比較(表5,図6A-E) 交互作用があったのはTUG:歩数 (F(2,42) =3.5 p<0.05)),BBS (F(2,42)=7.0 p<0.05), FAB(F(2,42)=4.3 p<0.05), MR:反応 時間(F(2,42)=11.4 p<0.05)), AS(F(2,42)=8.0 p<0.05) ,UPDRS (F(2,42)=28.7 p<0.05) UPDRS:PartⅠ(F(2,42)=9.4 p<0.05), UPDRS:PartⅡ(F(2,42)=11.1 p<0.05),UPDRS:PartⅢ(F(2,42)=17.8 p<0.05),UPDRS:PartⅣ(F(2,42)=4.3 p<0.05)である。さらに評価① と評価③の変化量を3群で比較した。BBS(F(2,43)=5.7 p<0.05),FAB (F(2,43)=4.4 p<0.05),MR:反応時間(F(2,43)=11.6 p<0.05), AS(F(2,43)=8.6 p<0.05),UPDRS:Total(F(2,43)=28.4 p<0.05), PartⅠ(F(2,43)=10.5 p<0.05),Ⅱ(F(2,43)=11.4 p<0.05)Ⅲ(F (2,43)=17.6 p<0.05),Ⅳ(F(2,43)=3.39 p<0.05))が有意であっ た。次にTukeyのHSD検定方法で多重比較を行った。ダンス群はPD体操群 と比較してBBS,FAB,MR:反応時間,AS,UPDRS,UPDRS:PartⅠ〜Ⅳに 有意な差があった。 交互作用がなかったのは TUG:時間,MR:正解数, SDS, PDQ-39 であ る。 -23-

(28)

表 5 ダンス群,PD 体操群,コントロール群の介入効果の比較

介入期評価①③のp 値は Two-wayANOVA の結果。効果量は η2値。変化量(評 価③−評価①)の p 値は One-wayANOVA の結果。ダンス vs PD 体操,ダンス vs コントロール,PD 体操 vs コントロールの p 値は多重比較の結果。

(29)

ダンス群 PD 体操群 コントロール群 【運動症状】 運動機能 図 6A-1 図 6A-2 図 6A-3 図 6A ダンス群,PD 体操群,コントロール群の運動症状における 介入効果の比較 -25-

(30)

【非運動症状】 認知機能 図 6B-1 図 6B-2 図 6B-3 図 6B ダンス群,PD 体操群,コントロール群の非運動症状(認知機能) における介入効果の比較 -26-

(31)

【非運動症状】 精神症状 図 6C-1 図 6C-2 図 6C ダンス群,PD 体操群,コントロール群の非運動症状(精神機能) における介入効果の比較 -27-

(32)

【PD 全般的症状】 図 6D-1 図 6D-2 図 6D-3 図 6D-4 図 6D-5 図 6D ダンス群,PD 体操群,コントロール群の全般的症状における 介入効果の比較 -28-

(33)

【QOL】 図 6E 図 6E ダンス群,PD 体操群,コントロール群の QOL における介入効果の比較 4. 考察 本研究の目的は,ダンスがPD患者の運動症状,非運動症状に対し有効 か否かを検討することであった。そして日常生活動作の障害を含めたPD の全般的症状が改善し,さらにはQOLも向上するのかを検証することであ った。 【運動症状】 運動機能 ダンス群は介入前後の比較でTUG:時間, 歩数, BBSのすべてが有意に 改善した。PD体操群ではTUG:時間,歩数は改善したが,BBSは改善しな かった。 3群間の介入効果を比較するとTUG:歩数(図6A-2),BBS(図 6A-3)はダンスによる介入効果が明らかであった。TUG:歩数ではダンス 群はコントロール群と比較して有意な改善があった。しかしPD体操群と は差がなかった。BBSはPD体操群,コントロール群と比較しても有意な改 善があった。この結果はダンス群がバランス機能においてPD体操よりも 改善したことを示している。Hackney ME11 Marchart D45 Stegemoller EL73

らの研究 でも, すで にダンス によるTUGやBBSの改善は述べられている。

(34)

そして,Hackney ME44はタンゴダンスを用いた複雑なステップがバランス 機能に影響を与えたと述べている。今回実施したダンスもタンゴダンスを 参考にした前後左右に動くステップの組み合わせと繰り返しの練習があ る。これがPD体操群にはない。この違いがバランス機能の改善に差をも たらしたと考える。 TUG:時間はコントロール群でも有意な改善を示し,3群間にも差がなか った。その理由として,ダンス群,PD体操群に介入による効果があらわ れたことと,コントロール群では対象者が検査を一度経験したことによる 影響が表れたことが考えられる。しかしコントロール群では歩数に変化が ないことから歩き方に良い変化が起こったとは考えにくい。 以上からダンスはPD患者に特徴的な小刻み歩行やバランスの悪さに対 して有効であることが示唆された。 【非運動症状】 認知機能 ダンス群,PD体操群は介入前後の比較でFAB, MR:反応時間が有意に 改善した。一方,MR:正解数は介入前後および群間でも差がなかった。こ のことからダンスおよびPD体操の実施で前頭葉機能の改善と運動を計画 する時間が短縮していることがわかる。FAB,MR:反応時間の効果はPD体 操群よりもダンス群で大きかった(図6B-1,2)。 ダンスの練習内容は次なる動きをイメージしながら,音楽や合図に注意 を分配し,簡単な動きから複雑な動きを習得していくことが含まれている。 このようなダンスに含まれる要素は大脳基底核ループである運動系ルー プや前頭前野系ループの活性に関連していると考えられる。Earhart GM51 は,ダンスの練習は通常PDに低活性を示す脳領域の活性化を促進し,Keus SH70はダンスが認知機能の改善に有効と述べている。またHelmich RC59 MR課題時には運動前野領域が活性したと述べている。今回の結果はダン スの練習が前頭葉の運動関連領域と大脳基底核ループを賦活させ,運動の 計画や遂行によい影響を与えたことを示している。一方,PD体操の練習 内容は同じ動きの繰り返しによって 構成 されてい る。合 図も 一定であ り, -30-

(35)

変化するステップに合わせて動きを コン トロール してい く必 要が少な い。 この違いが認知機能の働きに影響を与え,ダンス群とPD体操群の効果の 差として表れたのではないかと考える。 MR :正解数はどの群も差がなかった。Nakanishi H63PD患者の正答率が 健常人と比較して差がないことから,想起される運動イメージは正確であ ると述べている。今回の結果も介入方法や介入前後で正答数に差がないこ とから,運動イメージが正確であることを裏付けている。今回ダンス群で MR:正解数に差がなく,MR:反応時間が短縮したことは,ダンスによって パーキンソン患者の運動前野が活性化したことを示している。このことは, PD患者の日常生活において「予期しないことに対して咄嗟に動けない」 「環境の変化に即応して動きにくい」などの状況の変化にあわせて運動計 画が早急にできないといった問題点に対して,ダンスの有効性を示唆する ものであると考える。 精神症状 ダンス群は介入前後の比較でAS,SDSが有意に改善した。しかしPD体 操,非介入ともにAS,SDSの改善はなかった。この結果からダンスはアパ シー,うつ症状の改善に有効といえる。とくにAS(図6C-1)はダンス群 で大きな介入効果がある。 ダンスは音楽を使うことで快感情 を生 起しやす い。人 数構 成はひと り, ペア,あるいは小集団というように動きに合わせて変化し,そこでもたら される交流は患者同士の一体感を強くする。一方PD体操は,各動きを個 人で実施しておりセッション内での参加者同士の交流は少ない。また,ダ ンスは一連の動きができた時に達成感や喜びをもたらす。ダンスのもたら す快感情は辺縁系ループに影響を与え,次回への意欲にも影響する。 Hackney ME46Earhart GM51らもダンスは楽しさや継続したいという気持 ちに有効に働くと述べている。このような音楽に合わせて一連の動きを集 団で練習するといったダンスの特徴が一体感や達成感,喜びや意欲となり, PD患者が陥りやすいアパシーや抑うつなどの精神症状の改善に効果をも たらした要因であると考える。 -31-

(36)

PDの全般的症状】 UPDRS(Total)およびUPDRSのPartⅠ〜Ⅳはダンス群で介入後に有意な 改善が見られ,群間比較(図6D)でもPD体操群,コントロール群と比較 して有意な改善を示している。 この差はダンスの運動機能,認知機能,精神症状に包括的に働きかける アプローチがPD患者の運動症状,非運動症状である歩行やバランスの不 安定さ,前頭葉機能,運動イメージ,アパシーの改善をもたらしたためで あると考える。これらの改善がUPDRSの精神機能,日常生活動作,運動機 能(PartⅠ〜PartⅣ)の評価に影響しPDの全般的症状が改善したのではな いかと考える。 一方,PD体操群ではUPDRSは改善しなかった。コントロール群と比較 しても差がなかった。これはダンス群と比較して運動機能,認知機能の改 善効果が低いことと精神症状の改善がなかったことが影響していると考 えられる。 【QOL】 PDQ-39(図6E)は3群間の介入効果の比較で有意な差をみとめず,各群 の介入前後の比較でも有意な差はなかった。Volpe D らは74アイリッシュ ダンスの6ヶ月の介入でPDQ-39が有意に改善したと述べている。Hackney MEらも53 3ヶ月20回のセッションで有意な改善を示し, Heiberger L らは 438ヶ月25レッスンの介入でアンケートによる生活の質の調査で有意な改 善があったと述べている。その背景には歩行やバランスなどの運動機能の 向上が関係していると述べている。今回,ダンス群で運動機能,認知機能, 抑うつ・アパシーの改善とPDの全般的症状の改善があったにも関わらず, PDQ-39に有意な変化が認められなかった。これは介入期間が影響してい るのではないかと考えている。12回のレッスンでは機能的な効果は現れて も,生活の質を改善するには至らなかったと言える。しかし,介入前後の 比較でダンス群の効果量(ES=0.44)は小さくない。改善の傾向はあった と判断できる。このことはQOLの改善を目的としてダンスを実施する場合, 今回,実施した以上のレッスン回数や期間設定の必要性を示唆するものと -32-

(37)

考える。 5. 小括 ダンスは,PD患者の運動症状,非運動症状に対する効果は顕著であっ た。この結果はUPDRSのPartⅡ,PartⅢの改善にも見てとれる。さらに全 般的症状の改善をもたらしたのはダンスだけであった。PD体操において も群内比較では運動機能,認知機能に効果が現れ,PD患者のリハビリテ ーションにおいて有効性を示している。しかし,精神症状では効果が現れ なかった。そして全般的症状,生活 の質 について も効果 が現 れなかっ た。 群間比較ではダンス群はPD体操群とコントロール群に対し,運動機能, 認知機能,精神症状について有意な差があったが,PD体操群はコントロ ール群と比較しても有意な差はなかった。これらの結果はダンス群の有効 性を示すものである。 今回の結果はダンスが運動機能,認知機能,精神症状に同時にアプロー チできるリハビリテーションであることを示した。さらに今回の介入頻度 は,1週間に一度という比較的参加しやすい頻度で行った。その結果ダン スの有効性が示されたことは,リハビリテーションにダンスを用いる際の 頻度の目安となる。コントロール群については運動症状,非運動症状につ いて大きな低下が示されたわけでは ない 。しかし 全般的 症状 は低下し た。 この結果は現状生活の継続が3ヶ月程度の期間であっても,症状が変化す ることを示している。 以上から,12回におけるダンスセッションの介入は,PD患者の運動症 状と非運動症状およびPDの全般的症状に効果的であり,PD体操と比較し ても有効であることがわかった。このことはPDに対するダンスの有効性 を示していると考える。しかし, QOLの向上については,介入期間の延 長が必要であることが示唆された。 -33-

(38)

第 4 章 ダンスの介入効果の出現時期と介入終了後の持続性に関する 研究 1. 目的 本研究の目的はダンスおよびPD体操の介入効果の出現時期と,介入終 了後にはその効果がどの程度継続するかを検証し,リハビリテーションと してのダンスの介入方法を提言する事である。 2. 対象と方法 1) 対象者 対象者は介入終了時に分析対象となったダンス群15名とPD体操群17名 である。 2) 方法 (1) 評価方法および評価時期 評価方法は第1章(p14)で示した通りである。 ダンス群およびPD体操群に対し介入期は介入開始前に評価①,介入開 始から1ヶ月後に評価②,介入終了後1週間以内に評価③を行った。さら に介入終了後1ヶ月後に評価④と3ヶ月半後に評価⑤を行った。 (2) 分析方法 ダンス群およびPD体操群の介入効果の出現時期と持続性を検討するた めに各評価項目の評価①〜⑤の結果を分析した。 TUG(時間,歩数), BBS, FAB, MR(反応時間,正解数),SDS, -34-

(39)

AS, UPDRS(Total,PartⅠ〜Ⅳ),PDQ-39の評価①〜⑤について,One-Way ANOVAと多重比較をBonferroni検定で行った。有意水準はp<0.05とした。 データ分析はSPSS Version21を使用した。 3. 結果 分析対象者はダンス群15名とPD体操群17名(図7)であった。 図7 ダンス群,PD体操群の分析対象者数 1) ダンス群の介入効果および効果の持続性(表6,7) 評価時期の主効果で有意な差があったのはTUG:時間(F(4.56)=5.4 p<0.05)TUG:歩数(F(4.56)=6.3 p<0.05),BBS(F(4.56)=9.5 p<0.05), FAB(F(4.56)=7.4 p<0.05),MR:反応時間(F(4.56)=6.5 p<0.05), AS(F(4.56)=4.9 p<0.05),SDS(F(4.56)=4.2 p<0.05),UPDRS:Total (F(4.56)=18.4 p<0.05),UPDRS:PartⅠ(F(4.56)=3.0 p<0.05),YPDRS:Part Ⅱ(F(4.56)=6.8 p<0.05),UPDRS:PartⅢ(F(4.56)=12.1 p<0.05), UPDRS:Part Ⅳ(F(4.56)=2.9 p<0.05),PDQ-39(F(4.56)=2.7 p<0.05)にである。 -35-

(40)

次に主効果が認められた評価項目ごとに,どの時期に差があるかを明らか にするた め多重 比較 を行った 。評価 ①vs②で有意な差があったのはSDS, UPDRS:Total ,UPDRS:PartⅢである。評価②vs③で有意な差があったのは TUG:歩数,FAB,AS,UPDRS:Totalである。評価①vs③で有意な差があっ たのはBBS,FAB,MR:反応時間,AS, UPDRS:Total,UPDRS:PartⅠ〜Ⅲ である。評価③vs④で有意な差があったのはTUG:歩数,BBS,FAB,MR: 反応時間,AS,UPDRS:Total,UPDRS:PartⅣである。評価④vs⑤には有意 な差がある評価項目はなかった。評価③vs⑤で有意な差があったのは TUG:歩数,BBS,UPDRS:Total,UPDRS:PartⅡである。評価①vs⑤で有意 な差があったのはTUG:時間,UPDRS:Total,UPDRS:Ⅲである。 表6 ダンス群の評価①〜評価⑤の結果 評価①,②,③,④,⑤の値は平均値±SD。評価①②③④⑤のp値はOne-way ANOVAの結果。 -36-

(41)

表7 ダンス群の各評価時期の比較

評価①vs②,②vs③,①vs③,③vs④,④vs⑤,③vs⑤,①vs⑤のp値は多重比較 の結果。

(42)

【運動症状】 運動機能 図8A−1 TUG(時間) 図8A−2 TUG(歩数) 図8A−3 BBS 図8A ダンス群の介入効果および効果の持続性( <0.05) -38-

(43)

【非運動症状】 認知機能 図8B−1 FAB 図8B−2 MR(反応時間/秒) 図8B−3 MR(正答数) 図8B ダンス群の介入効果および効果の持続性 ( <0.05) -39-

(44)

精神症状

図8C−1 AS

図8C−2 SDS

図8C ダンス群の介入効果および効果の持続性 ( <0.05)

(45)

PD全般的機能】

図8D−1 UPDRS(Total)

図8D−2 UPDRS(PartⅠ)

図8D−3 UPDRS(PartⅡ)

(46)

図8D−4 UPDRS(PartⅢ) 図8D−5 UPDRS(PartⅣ) 図8D ダンス群の介入効果および効果の持続性( <0.05) 【QOL】 図8E-1 PDQ-39 図8E ダンス群の介入効果および効果の持続性 ( <0.05) -42-

(47)

1) PD体操群の介入終了後の持続効果(表8,9) 評価時期の主効果に差があったのはTUG:歩数(F(4.64)=4.0 p<0.05), MR:反応時間(F(4.64)=3.4 p<0.05),UPDRS:Total(F(4.64)=3.8 p<0.05), UPDRS:PartⅠ(F(4.64)=3.0 p<0.05),UPDRS:PartⅢ(F(4.64)=3.4 p<0.05) である。次に主効果が認められた評価項目ごとに,どの時期に差があるか を明らかにするため多重比較を行った。評価①vs②で有意な差があったのTUG:歩数である。評価①vs③で有意な差があったのはMR:反応時間であ る。主効果の認められたUPDRS:Total ,PartⅢについては,評価②vs④で有 意な差(図9D-1:Total p=0.01 , 図9D-4:PartⅢ p=0.03)があった。UPDRS:Part Ⅰについは評価①vs②,②vs③,①vs③,③vs④,④vs⑤,③vs⑤,①vs ⑤のいずれにも有意な差はなかった。

(48)

表8 PD体操群の評価①〜評価⑤の結果

評価①,②,③,④,⑤の値は平均値±SD。評価①②③④⑤のp値はOne-wayANOVA の結果。

(49)

表9 PD体操群の各評価時期の比較

評価①vs②,②vs③,①vs③,③vs④,④vs⑤,③vs⑤,①vs⑤のp値は多重比較 の結果。

(50)

【運動症状】 運動機能 図9A−1 TUG(時間) 図9A−2 TUG(歩数) 図9A−3 BBS 図9A PD体操群の介入効果および効果の持続性 ( <0.05) -46-

(51)

【非運動症状】 認知機能 図9B−1 FAB 図9B−2 MR(反応時間/秒) 図9B−3 MR(正解数) 図9B PD体操群の介入効果および効果の持続性( <0.05) -47-

(52)

精神症状

図9C−1 AS

図9C−2 SDS

図9C PD体操群の介入効果および効果の持続性

(53)

PD全般的機能】

図9D−1 UPDRS(Total)

図9D−2 UPDRS(PartⅠ)

図9D−3 UPDRS(PartⅡ)

(54)

図9D−4 UPDRS(PartⅢ) 図9D−5 UPDRS(PartⅣ) 図9D PD体操群の介入効果および効果の持続性( <0.05) 【QOL】 図9E−1 PDQ-39 図9E PD体操群の介入効果および効果の持続性( <0.05) -50-

(55)

4. 考察 本研究の目的はダンスおよびPD体操を実施し得られた運動症状,非運 動症状,全般的症状に対する効果がどのように出現するか,終了後にはそ の効果がどの程度継続するかを検証し,パーキンソン病に対するダンスの 有効性を検証することであった。 第4章ではダンス群,PD体操群の各群に対し介入効果の出現時期と効果 の持続性を検証し,その特徴を明らかにすることとした。PD体操群では 第3章で介入効果がなかったことが検証されているが,今回は介入から介 入終了3ヶ月半後までの一連の経過も追うため,PD体操群に対しても同様 に検証した。 1) ダンスの介入効果および効果の持続性の検討 介入開始から1ヶ月間で有意な改善をしたのは精神症状のSDS(図 8C-2),UPDRS:Total(図8D-1)とPartⅢ(運動機能:図8D-4)である。早 期の段階から精神症状と全般的症状およびUPDRS:PartⅢ(運動機能)に対 して効果が出現したことがわかる。そして介入開始から3ヶ月半で有意な 改善をしたのは,運動機能のBBS(図8A-3), 認知機能のFAB(図8B-1), MR:反応時間(図8B-2),精神症状のAS(図8C-1), SDS(図8C-2), 全 般的症状のUPDRS:Total(図8D-1)とPartⅠ(精神機能,行動,および気:図8D-2)とPartⅡ(日常生活動作:図8D-3), PartⅢ(運動機能:図8D-4) である。 この結果はダンスが早期から抑うつと運動機能に対して効果を発揮す ることと,3ヶ月半の介入で運動症状,非運動症状,全般的症状に対して 有効であることを示している。しかしその効果の持続を見ると,介入が終 了した最初の1ヶ月で運動機能のTUG:歩数(図8A-2),BBS(図8A-3), 認知機能のFAB(図8B-1), MR:反応時間(図8B-2),精神症状のAS(図 8C-1),全般的症状のUPDRS:Total(図8D-1)とPartⅣ(治療の合併症:図 8D-5) が有意な低下を示している。これは3ヶ月半かけて改善した機能が -51-

(56)

1ヶ月の休息によって,持続することなく明らかに低下することを示して いる。その後の2ヶ月半は有意な低下はないものの,徐々に低下あるいは 現状維持を示し介入終了後3ヶ月半後には運動機能,認知機能,精神症状 で介入前とほぼ同じ機能レベルに戻っていることがわかった。しかし,全 般的症状であるUPDRS:Total(図8D-1)とUPDRS:PartⅢ(運動機能:図8D-4) で介入効果が持続し介入前と比較して有意に改善している。運動機能,認 知機能,精神症状の効果が持続しない中で何故,UPDRS:TotalとUPDRS:Part Ⅲ(運動機能)の効果が持続したのであろうか。UPDRS:PartⅢ(運動機能) の内容を見るとTUGやBBSの運動機能評価では評価できないPDの症状で ある言語の表出,顔の表情,振戦や固縮,手の動作などに対する評価項目 がある。今回の研究では詳細に分析できていないが,このようなPDの症 状に対して効果が持続しており,結果として介入前と比較して改善が見ら れたのではないかと推察する。そしてUPDRS:Totalの結果はUPDRS:PartⅢ (運動機能)の結果が影響し全般的症状の改善として現れたのではないか と考えている。 2) PD体操の介入効果および効果の持続性の検討 介入期間中に有意な改善があったのは,TUG:歩数,MR:反応時間であっ た。TUG:歩数(図9A-2)は介入開始から1ヶ月で有意な改善があった。 MR: 反応時間(図9B-2)は介入開始から3ヶ月半後に有意な改善が認めら れた。TUG:歩数,MR:反応時間ともに,その後効果は徐々に低下し,介入 終了3ヶ月半後には介入前と差がない状態に戻っている。 UPDRS:Total,PartⅢにおいて,介入開始から7ヶ月後の終了までに実施 した評価の比較で主効果は認められた。しかし介入期間と介入終了後3ヶ 月半の期間における評価を比較した結果に有意な差はなく,介入効果と効 果の持続はないことがわかった。またUPDRS:PartⅠにおいても主効果は認 められたものの,どの評価時期と比較しても有意な差はなかった。今回の 結果から,PD体操はTUG:歩数,MR:反応時間に有意な改善はもたらした が,その他の評価項目には有意な改善が見られず,介入終了後から3ヶ月 -52-

(57)

半後には介入前と同じ機能レベルに戻ることがわかった。PD体操による 介入効果の変化は大きなものではなく徐々に改善傾向を示し,介入終了後 は徐々に低下をしていることがわかった。 5. 小括 PD患者に対するダンスの実施は1ヶ月程度の早期から精神症状や全 般的症状に効果を発揮し,3ヶ月半の継続は運動症状,非運動症状,全般 的症状に効果的であることがわかった。しかし,ダンスをやめると最初の 1ヶ月で急速にその効果は失われ,実施と同じ期間の3ヶ月半後には,ほ ぼ開始前と同様の状態にまで機能や症状が戻ることがわかった。PD体操 はグラフを見ると有意ではないが改善傾向にあることは認められた。しか し介入終了後に効果は持続しなかった。 今回の研究ではダンス,PD体操の介入効果はほとんど持続しなかった。 現在PDに対するリハビリテーションの研究は介入前後でその効果を検証 したものがほとんどである30PDに対するダンスの研究においても,介入 終了後の持続効果を検証したものは未だない。今回の研究において介入に よって得られた効果が終了後に早期に低下する結果は,リハビリテーショ ンの継続の重要性と介入中断の期間が1ヶ月を超えてはいけないことを 示している。 以上よりダンスの介入効果は早期からあらわれ,3ヶ月半後には運動症 状,非運動症状,全般的症状に出現するが,介入終了後には効果が持続し ないことがわかった。 -53-

(58)

第5章 総 括 本研究の目的はPD患者の運動症状,非運動症状,PDの全般的症状とQOL に対するダンスの実施について介入効果の出現時期,さらに介入終了後の 効果の持続性を検証し,リハビリテーションとしてのダンスの有効性を検 討することであった。 第3章においてダンス群の効果をPD体操群,コントロール群と比較し検 証した。その結果,PD患者に対するダンスの効果はPD体操群,コントロ ール群と比較しても運動機能,認知機能,精神症状,全般的症状に対して 有効であることがわかった。これより運動機能,認知機能,精神症状に包 括的に働きかけるダンスの特徴はPD患者に有効であると考える。 第4章においてダンス群,PD体操群の各評価時期における介入効果を群 内比較し,効果の出現時期と介入効果の持続性について検証した。その結 果,効果の出現時期について,ダンスは介入1ヶ月程度の早期から精神症 状,全般的症状に効果が出現することがわかった。しかしダンス実施によ って得られた運動機能,認知機能,精神症状,全般的症状における効果は, 介入終了後に急速に低下し持続しないことが明らかになった。特に介入効 果が有意に高いTUG:歩数,BBS,FAB,MR:反応時間,AS,全般的症状 については,介入終了後の1ヶ月で急速な低下が認められた。介入前と介 入後3ヶ月半経過した時点での評価を比較すると運動機能,認知機能,精 神症状は介入前と同じレベルにまで戻っている。しかし,全般的症状と UPDRSの運動機能に関しては効果の持続が認められた。 PD体操について介入効果および効果の持続性はあきらかではなかった。 しかし運動症状,非 運動症状 ,全般 的症 状の緩や かな改 善傾 向を見る と, 介入期間を延長し継続し続けることで介入効果が得られる可能性はある かもしれない。 これよりダンスはパーキンソン病患者の低下した機能に対して包括的 なリハビリテーションとして有効であることがわかった。またダンスを1 週間に1回の頻度で12回継続し実施することは運動症状,非運動症状,PD の全般的症状に有効であることがわかった。しかし介入を終了すると効果 -54-

(59)

は短期間で消失することがわかった。

(60)

第6章 提 言 パーキンソン病患者に対するリハ ビリ テーショ ンは様 々な ものがあ る。 何よりも各人にあったリハビリテー ショ ンを選択 するこ とが 重要であ る。 今回の研究は,PDのリハビリテーションの一つとしてダンスの有用性を 示す事ができた。そしてダンスの実施にともなう頻度,継続期間,休息期 間,継続の重要性を提言できる。 本研究では,週に1回,60分のダンスセッションを12回実施し,運動症 状,非運動症状,全般的症状に介入効果を得た。しかし,ダンスをやめる と得られた効果は1ヶ月程度で低下することが明らかとなった。以上から, ダンスを実施し効果を得るためには,週に1回,60分のセッションをでき るだけ継続し,休息期間は1ヶ月以上あけないことが重要である。 ダンスは患者会等の集団の場で実施しやすく,仲間で楽しく実施するこ とで意欲が高まり,継続する力となりやすい。PD患者同士が週に1度集い ながらダンスを楽しく実施する機会や,デイケアや外来の場でダンスを実 施する機会がさらに増えていくことで運動機能, 認知機能, 精神症状を 賦活させる機会が得られPD患者のリハビリテーションとして有効である と考える。 -56-

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第7章 研究の限界と今後の課題 本研究の限界として,各群の性別比を均等に操作できなかったことが挙 げられる。特に男性の対象者を得る こと が難しか った。 その 理由とし て, グループ活動やダンスと名がつく活 動に 消極的な 日本の 男性 像が伺え る。 今後の研究においては男性も取り組みやすいダンスの作成,参加者を増や すことや性別比をそろえた調査が必要と考える。 また,ダンス及びPD体操の実施を本研究者がおこなったことが挙げら れる。今後は,本研究者が開発したダンスを他者が実施して効果を測定す ることや,DVD映像を使った効果の検討が必要と考えている。 さらに,今回は生活の質について改善を得ることはできなかった。実施 回数,継続期間,セッションの内容について検討すべく研究の継続が必要 と考えている。 -57-

図 2  研究手続き
表 2   ダンスとパーキンソン体操の構成内容
表 3  基本属性とベースライン評価における3群の比較
表 4  ダンス群, PD体操群,コントロール群の 介入前と介入3ヶ月半後の比較
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参照

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