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震災後の復興と大学の役割

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Academic year: 2021

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!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 平成23年3月11日東北太平洋沖に M9の大地震が発生し,30分後には大津波が東北地方の沿岸部を襲 い,日常性が断ち切れられた.その直後福島第一原発が全電源を喪失し,政府は初の原子力緊急事態宣言を 発令した.大震災の被害の大きさ,悲惨さは想像を超え,長期にわたる対策が課せられることになった.そ の中で,被災を受けた東北地方の人々は集団で規律ある行動をみせ,世界の人々に感動を与えた.そして, 世界の豊かでない国々からも様々な援助と励ましが届いた.国内でもボランティア・医療支援の申し込みが 殺到し,義援金も刻々と増えた.福島原発では,被曝という危険を覚悟して今も多くの人が格闘している. 被災地だけでなく,極めて広い範囲の様々な人々が共通体験をもち,この同時代を生きる日本人に強い助け 合いの思いが高まった.しかし,指令系統の秩序の乱れは,原発の収束に向けての対策・情報発信が不十分 となり,多くの人に不安を与え,現地での組織的な支援活動にも支障を来した.また,一部とはいえ食糧, 水に続き医薬品・医療材料にも買い占めが起こり,外国からの輸入が急増し,輸入超過が1兆円を超えるよ うになったのは残念である. 今回の震災の実質的および風評被害による負の影響は大きいが,改めて地震国日本で,備えを点検・改善 し,我々日本人そして地球上に生きている人間の生き方や考え方を修正する機会を与えられたとも受け止め ることもできる.震災により東北・関東の大学・研究所では,建物だけでなく,大型の研究装置が破壊さ れ,停電により貴重な研究資材も失われた.建築は免震構造をさらに進化させ,高層階での揺れを最小限に 抑え,耐久性と水回りや電気系統を修復しやすい構造をもつ建物へと変革する必要がある.また,停電,上 下水道の停止に対する備えは大学・研究所のみならず家庭でも考えていかなければならない.病院や放送局 では電源供給が絶たれたときに備えて自家発電装置をもっているが,せいぜい数日分である.病院を含めた 大学全体で必要な発電の3割ぐらいを賄える自家発電設備をもっている大学もあるが,それは稀であり,都 心部の大学では大型の自家発電設備をもつことは難しいであろう.蓄電技術がどこまで進むかにもよるが, 大学においても家庭でも自ら必要な電力・エネルギーを確保する時代になってきた.水は常に無制限に供給 されるという感覚は,日本でも次第に薄れてきたが,大学や家庭は飲料水を備蓄する,蒸留装置を用意す る,また下水のために雨水を貯める工夫などが必要となる.エネルギー,電力,水は自前でという考えを進 める一方,節電・節水は自らのためだけでなく,地球環境保全という視点から無駄を省く生活を常とせねば ならない. 震災後も震災前の日本の社会的状況,教育研究状況は変わってはいない.少子高齢化社会に伴う年金問 題,医療福祉費の増加等は依然として日本の大きな課題であり,教育立国,科学技術立国を目指す日本の方 向性も変わってはいない.高等教育費への公財政支出(対 GDP 比)が OECD 加盟28カ国中27位であり, 医療費は21番目という現実もある.今後,財政はより厳しくなるのは避けられない. 世界各国からの支援に応えるためにも,これからは日本全体が鬱状態から脱却して心を一つにして,復興 に向けて胆力を示さなければならない.研究者・教員も研究費が少ない,研究装置・設備が不足している, 大学院生が入ってこない,若手研究者の意欲が足りない,余りにも成果主義になりすぎているといって他に 矛先を向けず,研究者・教員それぞれが,またその組織が英知をしぼり,今何ができるか,自らの役割を意 識し,国難のときこそ,活力ある日本社会の再構築に向けて大学が様々な連携を強めて大きな役割を果たす べきであろう.夢のある研究を育て,意欲のあるリーダーを養成する一方,研究開発成果を世界へ発信・輸 出するという強い意志を示さなければならない.

震災後の復興と大学の役割

木 南 英 紀

* 〔生化学 第83巻 第5号,p.361,2011〕

アトモスフィア

順天堂大学学長,本会評議員

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