No.20, 2013.7
首都圏大規模水害時の江東デルタ地帯に必要な避難場所
の収容力に関する分析
―域内避難・広域避難の双方を考慮して―
Study on Necessary Capacity of Evacuation Centers in Koto Delta Area
during Metropolitan Large-scale Flood
-Considering both Inland Evacuation and Wide-area Evacuation-
牧之段
浩平
1,藤生
慎
2,大原
美保
3Kohei MAKINODAN
1, Makoto FUJIU and Miho OHARA
21
元・東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修士課程
Master Course, Department of Civl Engineering, Faculty of Engineering, The University of Tokyo
2
東京大学生産技術研究所
Institute of Industrial Science, The University of Tokyo
1
東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター/東京大学生産技術研究所
Center for Integrated Disaster Information Research(CIDIR), Interfaculty Initiative in Information Studies,
/Institute of Indistrial Science, The University of Tokyo
In recent years, it is reported that the Koto Delta Area in Tokyo including areas whose elevation are lower than sea level has the risk of large-scale flood. In this paper, considering both inland and wide-area evacuation, we estimated the number of people who should evacuate to evacuation centers using GIS data of flood, population distribution and building inventory. And then, we evaluated the capacity in each area and the possible use of existing buildings as additional evacuate centers. Finally, we discussed necessary approaches to prepare appropriate evacuation centers.
Keywords: flood, risk analysis, evacuation, evacuation center, GIS
1.はじめに 江 東デ ル タ地 帯は 東 京都 東部 に 位置 し ,墨 田区 ・ 江 東 区 の 全域 お よび 江戸 川 区の 一部 が 含ま れ る. 全域 で の 昼 間 人 口は 約80万 人, 夜 間人 口は 約70万 人 であ る. こ の 地 域 は ,東 に 荒川 ,西 に 隅田 川, 南 に東 京 湾と 水に 囲 ま れ て おり ,図1 1) に 示した 通り ,海 抜ゼ ロメ ートル 地帯 が広 が っ てい るた め, 大規 模水 害の 危 険性 が指 摘さ れて いる . 内 閣 府中 央 防災 会議 の 「大 規模 水 害対 策 に関 する 専 門 調 査 会 」で は ,荒 川が 氾 濫し たと 仮 定し , 江東 デル タ 地 帯 が 水 害に 見 舞わ れた 場 合の 状況 を シミ ュ レー ショ ン し て い る 2) . 本 シミ ュ レ ーシ ョ ンで は200年 に1度 の確 率 で 発 生 す る降 雨量 を想 定し ,8ケー ス の排 水状 況と3パタ ー ン の事前避難率(0%,40%,80%)を条件として,死者数と 孤 立 者数 を 算出 して い る. これ に よれ ば ,最 大ケ ー ス で の死者約は3,500人,直後の孤立者は約73万人にのぼり、 被 害 は極 め て甚 大で あ る. 排水 施 設が 稼 働す るケ ー ス で は1週 間後 には 孤立 者0人 と なる が ,排 水施 設が 稼働 し な い最悪のケースでは4週間経過後も孤立者数は約70万人と 変 わ らず , 長期 に渡 る 社会 的影 響 が懸 念 され る. 大 規 模 水 害 発生 後 の被 害を 最 小限 に抑 え るた め の具 体的 な 対 策 の計画・実施は緊急の課題である. 大 規模 水 害に よる 被 害軽 減策 と して は ,氾 濫水 到 達 地 域 外 への 広 域避 難が 有 効と 考え ら れ, 「 大規 模水 害 対 策 に 関 す る 専 門 調 査 会 」 に お い て も 検 討 さ れ て い る 2) . ま た , 桑 沢 ・ 片 田 ら 3) は , 東 京 都 江 戸 川 区 に お い て , 自 動 車 や 徒歩 で 区内 の避 難 場所 に避 難 を行 う 際の シミ ュ レ ー シ ョ ンを 行 い, 道路 渋 滞や 避難 施 設の 容 量超 過な ど の 都 市 特 有 の 問 題 を 明 ら か に し た . 一 方 , 宮 川 ・ 加 藤 4) は , 東 京 都葛 飾 区に おい て ,鉄 道を 用 いた 広 域避 難の 所 要 時 間 に 関す る 分析 を行 っ てい る. し かし , 避難 勧告 ・ 指 示 の 発 令の 遅 れや ,交 通 網の 混雑 に より , 地域 外へ の 広 域 避 難 が困 難 な場 合も 想 定さ れる た め, 広 域避 難の 計 画 と と も に, 事 前の 広域 避 難が でき な い場 合 の緊 急的 な 域 内 避 難 の計 画 立案 や避 難 場所 の確 保 につ い ても 十分 に 検 討 しておく必要があると考える. そ こで 本 研究 は, 洪 水氾 濫シ ミ ュレ ー ショ ン・ 人 口 お よ び 建 物 分 布 のGISデ ー タ を 用 い て , 首 都 圏 大 規 模 水 害 時 に 江東 デ ルタ 地帯 に おい て必 要 とさ れ る避 難場 所 の 収 容 力 に関 す る分 析を 行 った .ま ず は, 江 東デ ルタ 地 帯 内 の み での 避 難を 想定 し ,避 難場 所 が不 足 /充 足す る 地 域 を 把 握し た .ま た, 収 容力 を増 や すた め にそ の他 の 公 共 建 物 や民 間 建物 を活 用 した 場合 の 収容 力 増大 効果 の 分 析 も 行 った . 次に ,江 東 デル タ地 帯 外へ の 広域 避難 も 行 う 場 合 も想 定 し, 気象 条 件に 基づ く 交通 機 関の 運行 条 件 や 災 害 時要 援 護者 の歩 行 可能 範囲 を 踏ま え た上 で, い く つ
か の ケー ス にお いて 避 難場 所に お ける 避 難者 の収 容 状 況 に つ いて の 分析 を行 っ た. 最後 に ,避 難 場所 を増 強 す る 際の留意すべき事項の検討も行った. 図1 江東デルタ地帯周辺の海抜高度 1) 2. 避難場所の収容力に関する分析方法 (1) 用いたデータ 本 研 究 では , 江東 デ ルタ 地 帯全 域 を 対象 と し, 洪 水 氾 濫シミュレーション・人口および建物分布のGISデータを 用 い て, 大 規模 水害 時 の避 難場 所 の収 容 力に 関す る 分 析 を 行 う . 洪 水 氾 濫 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン デ ー タ 5) と し て は , 国 土 交通 省 が荒 川水 系 の浸 水想 定 区域 図 作成 の際 に 行 っ た , 荒 川下 流 右岸 10km地 点 が破 堤 し た場 合 の氾 濫 解析 結 果のデータを用いた.これらは,125mメッシュでの最大 浸 水 深さ , 流体 力の デ ータ であ る .浸 水 想定 区域 図 作 成 に 設 定 さ れ た い く つ か の 破 堤 点 の う ち , 荒 川 下 流 右 岸 10km地 点 から の 破堤 は ,江 東デ ル タ 地帯 に 対し て 最も 広 域 に 渡る 浸 水を もた ら すシ ナリ オ であ る ため ,本 研 究 で 対象としている.地帯内の最大浸水深さは図2の通りであ り , 最 大深 さ は 5.62m で あ る. 人 口 デー タ とし て は, 東 京 都 総 務 局 に よ る 町 丁 目 単 位 の 夜 間 人 口 デ ー タ 6) を 用 い た . 災害 時 要援 護者 に 関し ては , 町丁 目 ごと の人 口 デ ー タ を 入手 す るこ とが で きな かっ た ため , 東京 都内 の 総 人 口 に 対 す る 災 害 時 要 援 護 者 の 人 口 比 7 ・ 8) を 用 い て , 人 数 の算出を行うこととする.用いた人口比は表1に示す通り である.建物のGISデータとしては,東京都建物現況調査 による1棟ごとのデータ 9) を用いた.これは,各建物に 表1 災害時要援護者の人口比 図2 荒川破堤時の江東デルタ地帯内の最大浸水深さ 対 し て構 造 (木 造・ 非 木造 ), 階 数, 用 途( 住居 ・ 公 共 建 物 など ) ,延 床面 積 など の属 性 が入 力 され たポ リ ゴ ン デ ー タ であ る .避 難 経路 と して は , ESRIジ ャ パン 株 式 会 社 に よ る ArcGISデ ー タ コ レクシ ョ ン プ レミ ア ム シリ ー ズ 道路網(東京都版) 10) を用いた. (2) 要避難者の定義 本 研 究 で は ま ず , 建 物 の 全 て の 階 が 浸 水 す る か , 倒 壊 ・ 流出 す る場 合に , 居住 建物 外 への 避 難が 必要 に な る と 考 え る . 佐藤 ら 11) , 河 田 ・中 川 12) に よ れ ば , 氾 濫水 に よ る 建物 被 害は 流体 力 との 相関 が 高い . 佐藤 らの 調 査 結 果 に よ れ ば , 流 体 力 が 1.5m 3 /s 2 未 満 で は 建 物 に 被 害 が 生 じ る可 能性 は低い が, 1.5~2.5m 3 /s 2 の 場合 に木造 家屋に 少 な か ら ず 被 害 が 生 じ う る . ま た , 流 体 力 が 2.5 ~ 20m 3 /s 2 の場 合に は木造 建物に居 住が困 難な 程の被 害が生 じ ,20m 3 /s 2 以上 で木造 建物の流 失の可 能性 がある .よっ て,氾濫シミュレーションと建物のGISデータを重ね合わ せ , 建 物 立 地 点 の 流 体 力 が 1.5m 3 /s 2 の 場 合 , そ の 建 物 を 「要避難」と定義する. ま た , 建物 の 全て の 階が 浸 水せ ず , 氾濫 水 によ る 流 失 や 倒 壊の 恐 れが ない 場 合, 屋外 に ある 自 治体 指定 の 避 難 場 所 等に 避 難す る行 動 は, 移動 中 の危 険 性か ら考 え て 適 切 で はな い .近 年, 自 治体 によ る 洪水 ハ ザー ドマ ッ プ で も , 浸水 深 さに 応じ て 建物 内避 難 を行 う よう に示 唆 さ れ て い る. よ って ,こ れ らの 建物 以 外で , 全て の階 が 浸 水 せ ず ,浸 水 しな い階 が ある 場合 に は, 避 難場 所へ は 避 難 せ ず 建物 内 の上 層階 に 避難 する も のと す る. 浸水 想 定 区 域図作成マニュアル 13) に基づき,浸水深さが4.0mとなる 4階建ての建物の場合には,3階および4階に避難可能であ る た め, こ の建 物の 居 住者 は「 要 避難 者 」と して カ ウ ン トされない.一方で,建物立地点の浸水深さが0.5~2.0m の 場 合, 平 屋建 ては 「 要避 難」 と なる . また ,浸 水 深 さ が 2.0~ 5.0mの 場 合 に 2階建 ては 「 要 避難 」 とな り ,浸 水 深さが5.0~6.0mの場合に3階建ては「要避難」となる. (3) 域内避難/広域避難の前提条件 「 要避 難」 の場 合, 江東 デル タ 地帯 内で の「 域内 避難 」 と 江 東デ ルタ 地帯 外へ の「 広域 避 難」 の双 方が あり うる . 本 章 およ び 次章 にお い ては ,ま ず は「 域 内避 難」 の み を 行 う 場合 を想 定す る. 「域 内避 難 」で の避 難先 とし ては , 人口比率 視覚障害者 簡単な 助けが必要 0.3 聴覚障害者 自力で 歩ける 0 .3 4 言語障害者 自力で 歩ける 0 .0 5 肢体不自由者 車椅子等を用いた助けが必要 1 .8 9 内部障害者 車椅子等を用いた助けが必要 0 .9 2 難病・特定疾患患者 車椅子等を用いた助けが必要 0 .7 4 知的障害者 簡単な 助けが必要 0 .5 3 精神障害者 自力で 歩ける 0 .4 7 一人暮らしの高齢者、高 齢者夫婦のみの高齢者 自力で 歩ける 1 2 .8 8 認知症高齢者 簡単な 助けが必要 2 .1 9 要介護高齢者 車椅子等を用いた助けが必要 3 .3 3 簡単な 助けが必要 4 .0 8 障害者 高齢者 乳幼児 災害時要援護者タイプ 歩行の可否
自 治 体が 指定 する 避難 場所 があ る .江 東デ ルタ 地帯 には , 東 京 都墨 田 区お よび 江 東区 の全 域 、江 戸 川区 の一 部 が 含 ま れ る. 江 東デ ルタ 北 部に 位置 す る墨 田 区で は, 区 内 の 小中学校42校を「水害時避難場所」に指定し,墨田区ハ ザードマップ 14) に記載している.江東デルタ南部に位置 す る 江東 区 や中 部に 位 置す る江 戸 川区 で は, 「水 害 時 避 難 場 所」 と いう 名称 は 用い ず, 「 避難 場 所」 とし て の 指 定を行っている.江東区ハザードマップ 15) によれば,江 東 区 内 の 避 難 場 所 は 小 中 学 校 63校 箇 所 お よ び 公 共 建 物 19箇所である.江戸川区ハザードマップ 16) によれば,江 東デルタ地帯に位置する避難場所は,小中学校10 校であ る.本研究では,これらの 134箇所を「水害時避難場所」 とみなす. (4) 避難場所の収容力の分析方法 分析の流れを図3に示す.まず,氾濫シミュレーション デ ー タ と 建 物 デ ー タ か ら , 前 節 で 述 べ た 定 義 に 従 い , 「 要 避難 」 とな る建 物 の選 別を 行 う. ま た, 町丁 目 単 位 の 人 口を , 各建 物の 延 床面 積を 用 いて 建 物ご とに 按 分 す る こ とで , 「要 避難 」 の建 物内 に いる 要 避難 者数 を 算 出 する. 建物現況調査データには,戸建・集合住宅という 区 別 がな い ため ,集 合 住宅 の場 合 に共 用 部を 差し 引 い て 各 世 帯の 住 居部 分の み に人 口を 按 分す る こと はで き て い な い .し か し, 延床 面 積に 応じ て 建物 内 人口 を算 出 す る こ と によ り ,結 果的 に は, 大規 模 マン シ ョン には 戸 建 住 宅よりも多くの人口が割り当てられることとなる.(1)節 で 述 べた 通 り, 災害 時 要援 護者 数 は町 丁 目単 位の 人 口 に 表1に示す人口比を乗じて算出し,これらを各建物に按分 す る こと で 求め た. こ のた め, 本 分析 で は, 町丁 目 ご と の 要 援護 者 の分 布の 差 異ま では 考 慮は で きて おら ず , 対 象地域内での一様な分布を仮定している. 域 内 避 難に 際 して は ,要 避 難者 は 道 路ネ ッ トワ ー ク 上 で 最 も直 近の 避難 先に 避難 する も のと する .具 体的 には , 道 路 距離 を 基に 各母 点 間の 勢力 圏 を決 定 する ネッ ト ワ ー ク ボ ロノ イ 分割 とい う 手法 を用 い て, 各 水害 時避 難 場 所 を 母 点と す る勢 力圏 を 推定 し, そ の勢 力 圏内 に含 ま れ る 「 要 避難 者 」を それ ぞ れの 水害 時 避難 場 所へ の避 難 者 と し て カウ ン トす る. ネ ット ワー ク ボロ ノ イ図 作成 に あ た っては,東京大学で開発されたソフトウェア「SANET(A
Spatial Analysis on a Networks)」 17) を使用する.図4は, 水 害 時避 難 場所 を母 点 とし たネ ッ トワ ー クボ ロノ イ 図 で あ る .各 水 害時 避難 場 所の 勢力 圏 に含 ま れる 道路 網 は , それぞれ異なる色で着色されている. 以 上 の 手順 に より 算 出し た 各水 害 時 避難 場 所へ の 要 避 難 者 数を , 既存 の水 害 時避 難場 所 の「 収 容可 能人 数 」 と 比 較 する こ とに より , 避難 場所 が 充足 / 不足 する 地 域 を 把 握 する . なお ,災 害 時要 援護 者 が広 域 避難 およ び 域 内 避難する際には,付添の健常者1名も行動をともにすると 仮 定 し, 避 難場 所へ 避 難す る人 数 を算 出 する .各 避 難 場 所 の 収容 可 能人 数は 区 の地 域防 災 計画 に より 記載 さ れ て い る が, こ れは 施設 の 全階 が使 用 可能 な 状況 下で の 収 容 可 能 人数 で ある ため , 水害 時に そ のま ま 適用 でき る 値 で は な い. そ こで ,「 収 容可 能人 数 」は , 浸水 深さ に 応 じ て 水 害時 に 使用 不可 能 とな る階 と 体育 館 分を 除い た 延 べ 床 面 積に 基づ き ,2人/3.3m 2 お よ び1人/1m 2 と い う2パ タ ー ンの収容密度を用いて算出する. さ ら に ,避 難 場所 が 不足 す る地 域 に 対し て は, 非 木 造 かつ 3階建て以上のその他の公共建物や事業所・集合住 宅 な どの 民 間建 物を 活 用し た場 合 の「 収 容可 能人 数 」 も 算 出 し, 収 容力 の増 大 効果 の分 析 も行 う .な お, 民 間 建 物 で は, 外 部者 が避 難 でき る空 間 は事 業 所の 会議 室 や マ ン シ ョン の 共用 部・ 廊 下な どと 限 られ て いる ため , 利 用 可能な面積は浸水しない階の床面積の10%とする 4) . 図 3 研究の流れ :母点=水害時避難場所 図 4 ネットワークボロノイ図の例 3. 域内避難を行う場合の避難場所の収容力の分析 本 章 で は, 域内 避 難の み を行う 場 合 (以 後「CASE1」 と す る) の 避難 場所 の 収容 力の 分 析結 果 を記 す. 対 象 地 域 の 総 人 口 は703,614人 で あ る . 表1に 示 し た 定 義 に よ れ ば , 地 域 内 の 健 常 者 は515,653人 , 災 害 時 要 援 護 者 は 187,961人となった.災害時要援護者のうち自力で歩ける 者 は93,355人 , 簡 単 な 助 け が 必 要 だ が 歩 行 可 能 な 者 は 46,197人,車椅子等を用いた助けが必要な者は48,409人と な っ た.2章(2)に 示し た 「要 避 難」 の定 義に 従い , 域 内避難する要避難者数を算出したところ,123,945人とな り , 総 人 口の17.62% に 相 当 した . 内 訳 は健 常 者71,865人 , 災害時要援護者および付添者52,080人である. (1) 水害時避難場所のみを用いた場合 こ こで , まず は域 内 避難 に際 し て, 要 避難 者の 全 て が 前 述 した 水 害時 避難 場 所に 避難 す る場 合 を想 定す る . 水 害時避難場所 134か所について,2章(4)節で述べた「収 容 可 能人 数 」の 定義 に 従い ,浸 水 しな い 階の 延べ 床 面 積 に基づき,2人/3.3m 2 および1人/1m 2 という2パターンの 収 容 密度 を 用い て収 容 可能 な人 数 を算 出 した .全 て の 水 害時避難場所の合計収容可能人数は,2人/3.3m 2 の場合に
!
(
!
(
!
(
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
!
(
2 0 1 7 3 0 1 4 24 1 2 6 3 3 57 31 29 1 5 4 9 18 2 8 27 19 4 8 1 24 4 7 50 32 1 57 51 50 49 48 47 46 43 33 32 31 30 29 28 27 26 20 19 18 17 14図 5 各水害時避難場所への要避難者数 図 6 その他の公共建物の収容可能 図 8 民間建物の収容可能人数 と収容可能人数(CASE1) 人数 95,748人,1人/1m 2 の場合に157,977人となった.各水害 時 避 難場 所 の平 均収 容 可能 人数 は ,各 パ ター ンで そ れ ぞ 715人,1179人となった. 前 章で 述 べた 方法 に 従い ,水 害 時避 難 場所 を母 点 と し て ネ ット ワ ーク ボロ ノ イ分 割を 行 い, 各 水害 時避 難 場 所 を 母 点と す る勢 力圏 内 に含 まれ る 要避 難 者数 を集 計 し , 各水害時避難場所への避難者とした.図 5 は,この結果 を 図 示し た もの であ り ,各 水害 時 避難 場 所ご との 要 避 難 者 数 と収 容 可能 人数 が 棒グ ラフ で 表さ れ てい る. こ れ よ り , 江東 デル タ地 帯東 部の 荒川 沿 いの 広い 地域 にお いて , 各 水 害時 避 難場 所へ の 要避 難者 が 収容 可 能人 数を 大 幅 に 上 回 るこ とが わか る. 最も 多く の 要避 難者 が集 まる のは , 墨田 区立押上 小学校で あり,要避 難者数は 3,797人であ る.押上小学校は4階中2階まで浸水するため,1人/1m 2 での収容可能人数は 968 人である.収容可能人数に対す る要避難者数の倍率は 3.92倍となり,現実的には避難が 難しい状況が想定される. (2) その他の公共建物も活用した場合 次 に , 水害 時 避難 場 所に 加 えて , 水 害時 避 難場 所 に 指 定 さ れて い ない その 他 の公 共建 物 も避 難 場所 とし て 活 用 し た 場合 の 分析 も行 っ た. なお , これ ら の公 共建 物 は 自 治 体 によ り 指定 され た 避難 場所 で はな い ため ,あ く ま で 仮 定 の上 で の検 討で あ る. 本研 究 で用 い てい る東 京 都 建 物 現 況調 査 デー タの う ち, 官公 庁 施設 , 教育 施設 , 文 化 施 設 を抽 出 し, 既に 水 害時 雛場 所 に指 定 され てい な い 非 木造・3階建以上の全階が浸水しない建物を「その他の公 共 建 物」 と した .例 え ば, 都立 高 等学 校 ,区 民会 館 , 区 役 所 ,図 書 館な どが 含 まれ る. 対 象地 域 内に は, 避 難 先 となりうる237棟のその他の公共建物が存在した. 図6は,各町丁目におけるその他の公共建物の収容可能 人 数 を図 示し たも ので ある .1㎡ あ たり1人を 収容 した 場 合を示しており,5段階での自然分類の結果に基づいて, 各 町 丁目 に 色づ けを 行 った .こ の 図よ り ,そ の他 の 公 共 建物の立地にはばらつきがあり,その他の公共建物が存 図7 その他の公共建物も用いた場合の空間利用率 在 し ない 町 丁目 があ る こと がわ か る. ま た, 図中 で は 赤 色 で 示 し た2つ の 町 丁 目 で 収 容 可 能 人 数 が6,000人 を 超 え ているが,約半数は300人以下であり,収容力を増大させ る効果は一部の地域に限られることもわかる. 水 害時 避 難場 所お よ びそ の他 の 公共 建 物を 母点 と し て 再 度 ネッ ト ワー クボ ロ ノイ 分割 を 行い , これ らを 母 点 と す る 勢力 圏 内に 含ま れ る要 避難 者 数に 基 づい て, こ れ ら の 建 物へ の 避難 者数 を 算出 した . ここ で ,各 地域 内 に 立 地 す る建 物 の浸 水し な い床 面積 に 対し て ,何 倍の 床 面 積 を 活 用す れ ば全 ての 要 避難 者を 収 容す る こと がで き る か を , 「空 間 利用 率」 と して 定義 し た. つ まり ,空 間 利 用 率が 1倍以下の場合,立地する建物の浸水しない床面積 を 活 用す れ ば全 ての 人 を収 容で き るこ と を意 味す る . 図 7は , 水 害 時 避 難 場 所 お よ びそ の 他 の 公 共 建 物 を あ わ せ た 371 建物の空間利用率の割合を示したものである.全 建物132棟の 89.9%で空間利用率が 1倍を上回っており, 10~100 倍が 35.6%と最 も多かっ た.その 他の公共 建物 を 活 用し て も, 多く の 地域 にお い て十 分 な収 容力 を 得 る ことが現実的には難しいことがわかる. (3) 民間の事業所・集合住宅建物も活用した場合 ま た , 水害 時 避難 場 所お よ びそ の 他 の公 共 建物 に 加 え て , 事業 所 ・集 合住 宅 など の民 間 建物 も 避難 場所 と し て
5%
5%
14%
13%
15%
36%
12%
0-0.5倍 0.5-1倍 1-2.5倍 2.5-5倍 5-10倍 10-100倍 100倍以上活 用 した 場 合の 分析 も 行っ た. 東 京都 建 物現 況調 査 デ ー タ の うち , 集合 住宅 ・ 事業 所建 築 物を 抽 出し た. 対 象 地 域内に存在する非木造3階建て以上の事業所は3096棟,集 合 住 宅 は8112棟 で あ る .な お, 東 京 都建 物 現況 調 査デ ー タ 上 では 民 間の 集合 住 宅と 都営 ・ 区営 の 集合 住宅 を 区 別 す る こと が でき ない た め, 都営 の 集合 住 宅は 本節 で 扱 う 建物に含めることとした. 図 8は,各町丁目における民間の事業所・集合住宅建 物 の 収 容 可 能 人 数 を 図 示 し たも の で あ る .1 ㎡ あ た り 1 人 を 収 容 し た 場 合 を 示 し て おり ,5段 階 で の 自 然 分 類 の 結 果 に基 づ いて ,各 町 丁目 に色 づ けを 行 った .本 研 究 で 扱 う 氾濫 シ ミュ レー シ ョン での 破 堤点 で ある 江東 デ ル タ 北 端 部に は これ らの 建 物が 少な い .民 間 の事 業所 ・ 集 合 住 宅 は全 町 丁目 に存 在 する が, 江 東デ ル タ東 南部 お よ び 西南端部に集中していることがわかる. 水 害 時 避難 場 所、 そ の他 の 公共 建 物 、民 間 の事 業 所 ・ 集 合 住宅 と いう 全て の 建物 を母 点 とし て 再度 ネッ ト ワ ー ク ボ ロノ イ 分割 を行 い ,こ れら を 母点 と する 勢力 圏 内 に 含 ま れる 要 避難 者数 に 基づ いて , これ ら の建 物へ の 避 難 者数を算出した.図 9は,これらの全建物の空間利用率 の割合を示したものである.空間利用率が 1倍を下回る 建物が 38.4%となり,最も建物数が大きくなる空間利用 率 は 0-0.5 倍 と な っ た. 民 間建 物 も 活 用す る こ とに よ り , 空 間 利用 率 が著 しく 高 い避 難先 を 減ら す こと がで き た . し か し , 依 然 と し て 空 間 利 用 率 が 10倍 を 超 え る 建 物 が 1000 棟以上(15.1%に相 当)存在 しており ,広域避 難を 行 わ ない 場 合に は全 て の避 難者 を 収容 す るこ とは 現 実 的 に難しいことも明らかとなった. な お, 本研 究で 用い たネ ット ワ ーク ボロ ノイ 分割 では , 地 域 住民 を 最も 近い 避 難先 に避 難 させ る こと を前 提 と し て , 建物 に 対す る要 避 難者 を算 出 した . ここ では , 危 険 性 が 切迫 し ,周 辺の 空 いて いる 避 難先 を 探し て移 動 す る な ど の迂 回行 動を 行う 時間 的余 裕 がな い場 合を 想定 して , 最 も 近い 避 難先 に避 難 する もの と した . 避難 情報 が 早 め に 発 表さ れ ,避 難に 時 間的 余裕 が ある 場 合に は, 最 も 近 い 避 難先 以 外へ の避 難 も行 われ , 避難 者 が分 散す る 可 能 性もありえる. 図 9 民間建物も用いた場合の空間利用率 4. 域外避難も行う場合の避難場所の収容力の分析 (1) 広域避難の前提条件 前 章 で は域 内 避難 に 限定 し てい た が ,本 章 では 江 東 デ ル タ 地帯 の 外に 避難 す る「 広域 避 難」 も 行う 場合 を 想 定 す る .広 域 避難 の手 段 とし ては , 徒歩 , 鉄道 ,自 動 車 な ど が 考え ら れる .大 規 模水 害時 に は, 自 動車 によ る 避 難 は 渋 滞発 生 の観 点か ら 現実 的で な い. 特 に, 江東 デ ル タ 地 帯 では 橋 梁部 での 道 路渋 滞が 懸 念さ れ るた め, 実 際 に 浸 水 前に 自 動車 によ り 避難 でき る 人数 は 限定 的で あ る と 考 え られ る .鉄 道に よ る避 難は , 豪雨 時 の運 行可 能 性 に 課 題 が残 る もの の, 短 時間 にお け る広 域 への 大量 輸 送 が 可 能 であ る .そ こで 本 研究 では , 江東 デ ルタ 地帯 外 へ の 広域避難の手段としては鉄道のみを仮定する. た だし , 鉄道 での 広 域避 難者 は ,気 象 条件 に応 じ て 鉄 道 の 運行 が可 能な 際に 駅ま で到 達 可能 な人 々に 限ら れる . よ っ て, 気 象条 件に よ る鉄 道の 運 行状 況 に基 づい て , 広 域 避 難の 可 否が 異な る 複数 の避 難 シナ リ オを 設定 す る . ま た ,鉄 道 が運 行し て いた とし て も, 駅 が著 しく 遠 い 場 合 や 自力 で の歩 行が 困 難な 災害 時 要援 護 者( 表 1) の 場 合 は ,広 域 避難 が不 可 能で ある . よっ て ,本 研究 で は , 災害時要援護者の定義 18) に基づき,障害者・高齢者等を, 「 自 力で 歩 行可 能な 人 」, 「簡 単 な助 け があ れば 歩 行 可 能 な 人」 ,「 車い す等 を使 用し な けれ ば移 動は 困難 な人 」 という 3種類に分類し,広域避難の可否を判定する.こ れ ら の健 常 者お よび 災 害時 要援 護 者が 駅 に到 達し て 広 域 避 難 でき る かど うか は ,交 通需 要 予測 手 法の 一つ で あ る 駅アクセス交通関選択モデル 19) を用いて判定する. (2) 鉄道の運行状況に基づく避難シナリオ設定 既存の文献 20・21) の整理と事業者へのインタビューによ れば, JR,私鉄(東武鉄道,京成電鉄),地下鉄(都営 地 下 鉄, 東 京メ トロ ) は, 一定 量 以上 の 強風 また は 豪 雨 時 に 運行 停 止す る運 行 規則 を有 す る. こ れら を参 考 に , 鉄道の運行状況の異なる6つのシナリオを設定する.各シ ナ リ オ の詳 細 を表 2に 記 す. CASE1は 前 章で 結 果を 述 べ た 「域内避難のみを行う場合」である.この他,CASE2は全 鉄道が運行し全ての駅が利用可能な場合,CASE3は,強風 に よ り JRと 私鉄 が運 行 停止 する も のの , 地下 鉄の み が 運 行 す る場 合と する .た だし ,橋 梁 部分 は通 行不 可能 とし , それ以外の区間で折り返し運転するものとする.CASE4は, 全 て の鉄 道 が運 行し て いる もの の ,強 風 によ り橋 梁 部 分 は 通 行が で きず ,そ れ 以外 の区 域 で折 り 返し 運転 を し て いるものとする.CASE5は,JRは運行停止するものの地下 鉄と私鉄は運行する場合とし,CASE6は地下鉄のみが利用 可能な場合とする.例えば,CASE5は時間雨量が40mm/hの 場合に相当し,CASE6は時間雨量が60mm/hに相当する.私 鉄 の 京 成電 鉄 は時 間 雨量 60mm以 上 で 運行 停 止す る ため , CASE6では運行停止する.東京メトロには強風時の運行停 止 規 則が あ るが ,降 雨 によ る運 行 停止 規 制が ない た め , CASE6は橋梁部分も含めて地下鉄が運行可能とする. 図10に,表2に示したCASE1~6の際に利用可能な駅の位 置を赤丸で示す. (3) 駅勢圏に基づく広域避難可能エリアの推定 前 述 の 通り , 健常 者 およ び 災害 時 要 援護 者 が駅 に 到 達 し て 広域 避 難で きる か どう かは , 交通 需 要予 測手 法 の 一 つである駅アクセス交通機関選択モデル 19) を用いて判定 す る .駅 ア クセ ス交 通 機関 選択 モ デル と は, 東京 都 市 圏 パ ー ソン ト リッ プ調 査 に基 づい て 駅ま で の交 通機 関 選 択 確 率 を算 出 し, 駅ま で の交 通手 段 を予 測 する モデ ル で あ る . この モ デル によ り ,各 駅を 中 心と し た、 その 駅 の 平 常 時 の利 用 者の 範囲 で ある 「駅 勢 圏」 を 求め るこ と が で きる.一般に,徒歩による選択確率が65%以上となる範囲 が , その 駅 の「 駅勢 圏 」と 定義 さ れる . 本研 究で は , 各 駅 の 駅勢 圏 内に 存在 す る住 民は 鉄 道に よ る広 域避 難 が 可 能 で あり , 駅勢 圏外 に 存在 する 住 民は 域 内避 難の み を 行 い,近隣の避難場所に避難することとする.
27%
12%
19%
15%
12%
14%
1%
0-0.5倍 0.5-1倍 1-2.5倍 2.5-5倍 5-10倍 10-100倍 100倍以上表 2 天候と鉄道運行状況の関係 (ⅰ) CASE1 (ⅱ) CASE2 (ⅲ) CASE3 (ⅳ) CASE4 (ⅲ) CASE5 (ⅳ) CASE6 図 10 各 CASE で利用可能な駅の位置 以 下 に ,駅 勢 圏に 基 づく 広 域避 難 可 能エ リ アの 推 定 方 法を述べる.式[1]は, 駅アクセス交通関選択モデル 19) に よる駅までの交通機関選択確率の算出式である.式[1]の う ち , 各 交 通 機 関 を 利 用 し た 場 合 の 時 間 i
T
お よ び 費 用 iC
は,それぞれ式[2]~[9]までの式で求める.各種のパ ラ メ ータ と して は, 文 献 19に記 載 され た 値を 用い る . こ れ に よ り , 二 輪 車 の 速 度 に は 都 内 の 平 均 平 均 旅 行 速 度 9.6km/h,乗用車およびバスの速度には都内の平均平均旅 行 速 度 18.8km/h, 交 通 時 間 価値 に は 42.3円 /minを 用 い る . 式[9]に示したバス利用時の費用には,都バスの23区内均 一運賃200円を用いた.歩行速度は健常者および災害時要 援護者に応じて様々である.よって,式[2]中の歩行速度Velw
は , 津 波 避 難 計 画 立 案 時 の 歩 行 速 度 22) を 参 考 に , 健 常 者 で は80m/s, 表 1に 示 した 自 力 で 歩 け る 災 害 時要 援 護 者 で は66m/s, 助 け が 必 要 な 災 害 時 要 援 護 者 で は48m/s と す る. ま た, 車椅 子 等が 必要 な 災害 時 要援 護者 は 広 域 避難が難しいことから,歩行速度0m/sとする.式[1]にお け る 各 説 明 変 数 に か か る パ ラ メ ー タα
と し て は , 表 3に 掲 載 し た 値 19) を 用 い る . 文 献 19で は , 通 勤 ・ 通 学 ・ 私 事 な ど の行 動 別パ ラメ ー ター 値が 推 奨さ れ てい るが , こ こ では表3に示す通勤時のパラメータを用いることとする. 以 上 の 式お よ びパ ラ メー タ ーを 用 い て, 徒 歩の 選 択 確 率 wP
=0.65となる直線距離D
を算出した.このD
がそ な わ ち , 駅 勢 圏 の 半 径 と な る . 計 算 に は ソ フ ト ウ ェ ア mathmatica 23) を 用 い た . こ の 結 果 , 駅 勢 圏 の 半 径 は , 健 常 者 で 1,091m , 表 1 に 示 し た 自 力 で 災 害 時 要 援 護 者 で 798m,助けが必要な災害時要援護者で502m となった.な お,車椅子等が必要な災害時要援護者は 0m である. 図 11に,表 2に示す CASE2での各避難者の駅勢圏を 示 す .図 中で ,駅 を中 心と して 着 色し た領 域( バッ ファ ) が 駅 勢圏 に 相当 する . 駅勢 圏に 存 在す る 住民 は, 鉄 道 を 利 用 した 広 域避 難が 可 能で ある が ,駅 勢 圏に 含ま れ な い 無 着 色領 域 の住 民は 広 域避 難が で きな い .特 に, 助 け が 必 要 な災 害 時要 援護 者 の場 合, 広 域避 難 でき ずに 域 内 避 難をせざるを得ない地域が広く存在することがわかる. …[1] ただし, 徒歩: 乗用車: 二輪車: バス: 駅からの直線距離 , 徒歩の場合の歩行速度 : : D Velw 住吉 菊 川 大 島 押 上 森下 辰巳 木場 亀戸 両国 八広 曳舟 青海 東 雲 有明 潮見 豊洲 平井 西大 島 東陽 町 南砂 町 越 中島 東 大島 小村 井 錦糸 町 業平 橋 東向 島 鐘ヶ淵 新木 場 新豊 洲 市 場前 清澄 白河 清澄 白河 門前 仲町 亀戸 水神 東 あずま 京成 曳舟 本所 吾妻 橋 船 の科 学館 東 京テレ ポート 国 際展 示 場正 門 テレコムセン ター 住吉 菊川 大島 押上 森下 木場 両国 西大島 東陽 町 錦糸町 清澄白河 清澄白河 門前仲町 本所 吾妻橋 住吉 菊川 大島 押上 森下 辰巳 木場 両国 八広 曳舟 青海 東 雲 有明 潮見 豊洲 西大 島 東陽町 越中 島 小村井 錦 糸町 業平 橋 東向 島 鐘ヶ 淵 新 木場 新豊洲 市場前 清澄 白河 清澄白河 門前 仲町 亀戸水神 東あずま 京成曳舟 本所吾妻 橋 東京テ レポ ート 国際展示場 正門 テレコ ムセン ター 住吉 菊川 大島 押上 森下 辰巳 木場 両国 八広 西大島 東陽町 南砂町 東大島 錦糸町 新木場 清澄白河 清澄白河 門前仲町 京成曳舟 本所吾妻橋 住吉 菊川 大島 押上 森下 辰巳 木場 両国 西大島 東陽町 南砂町 東大島 錦糸町 新木場 清澄白河 清澄白河 門前仲町 本所吾妻橋 ) exp( ) exp( ) exp( ) exp( ) exp( ) exp( B K p C W i i V V V V V V P + + + + = 二輪, 徒歩, 各交通機関を示す(i=W… i=C… i : 乗用車運転, … =P i i=K…乗用車送迎,i=B…バス) )にか かる パラメータ 説明変数( 効用を計算する際に各 α ) 費用( ) 合の時間( 交通機関を利用した場 合の効用 交通機関を利用した場 自然対数 交通機関の選択確率 … , , : , : , : : exp : i i i i i i i i C T C T i C T i V i P min] / [ / ] [m Velwm D Tw= min] / [ 3 . 42 円 × =Tw Cw ] / [ 8 . 18 / ] [m km h D Tp=min]
/
[
3
.
42
円
×
=
Tp
Cp
]
/
[
6
.
9
/
]
[
m
km
h
D
Tc
=
min]
/
[
3
.
42
円
×
=
Tc
Cc
] / [ 8 . 18 / ] [m km h D Tb=min]
/
[
3
.
42
]
[
200
円
+
×
円
=
Tb
Cb
…
+
+
+
=
T
iC
iVi
α
0α
1α
2 ……[2] ……[3] ……[4] ……[5] ……[6] ……[7] ……[8] ……[9](ⅰ)健常者 (ⅱ)自力で歩ける者 (ⅲ)簡単な助けが必要な者 図 11 CASE2 での駅勢圏 図 12 CASE2 での水害時避難場所 図 13 CASE2 の要避難者内訳 への要避難者数と収容可能人数 表 4 各CASE における域内避難する要避難者数 (4) 各 CASE での水害時避難場所への要避難者の算出 各 CASE において前節で述べた駅勢圏内に存在する住 民 は 鉄道 を 利用 した 広 域避 難を 行 い, 駅 勢圏 外に 存 在 す る 住 民が 域 内避 難の み を行 うも の とし て ,水 害時 避 難 場 所 へ の要 避 難者 数の 算 出を 行っ た .対 象 地域 の総 人 口 は 703,614人である.このうち,各CASEにおいて域内避難 する要避難者数は表 4の通りとなった.CASE2は全ての 鉄 道 が運 行 し, 鉄道 に よる 広域 避 難が 可 能な 場合 で あ る た め ,域 内避 難す る要 避難 者数 は 最も 少な い. この 場合 , 駅 が 遠い 地 域の 人々 や ,要 介護 者 高齢 者 など の車 椅 子 等 を 用 いた 助 けが 必要 な 人々 が広 域 避難 が でき ない た め , 域 内避 難を 行っ てお り, 総人口 に対 する 割合は 4.54%に 相当する. ま ず, 広 域避 難で き ずに 域内 避 難を 行 う住 民は 全 て 水 害 時 避難 場 所に 避難 す るも のと し て, 各 水害 時避 難 場 所 へ の 避 難 者 数 を 算 出し た .3章 で 述 べ た 「 域 内 避難 の み 」 の 手 法と 同 様に ,水 害 時避 難場 所 を母 点 とし てネ ッ ト ワ ー ク ボロ ノ イ分 割を 行 い, 各水 害 時避 難 場所 を母 点 と す る 勢 力圏 内 に含 まれ る 要避 難者 数 を集 計 し, 各水 害 時 避 難場所への避難者とした.図12は CASE2の結果を図示 し た もの で あり ,各 水 害時 避難 場 所ご と の要 避難 者 数 と 収容可能人数が棒グラフで表されている.CASE2 では, 全 て の鉄 道 によ る広 域 避難 が可 能 であ る ため ,要 避 難 者 が 収 容可 能 人数 を上 回 る水 害時 避 難場 所 は少 ない . た だ し , 図中 で 赤丸 で示 し た江 東区 立 砂町 小 学校 ,砂 町 文 化 セ ン ター , 第二 砂町 小 学校 周辺 で は, 駅 がな いた め 広 域 避 難 がで き ず, 域内 避 難す るし か ない 要 避難 者が 水 害 時 避 難 場所 に集 中し ,収 容可 能人 数 を大 幅に 上回 って いる . これらの 3ヵ所の水害時避難場所への要避難者数はそれ ぞれ 2,049人,1,881人,1,759人である.これに対し, これらの建物は 2階まで浸水し,1人/1m 2 として 3階以 上に収容可能な人数はそれぞれ579人,810人,484人と 値 徒歩 - 0 .19 1 二輪車 - 0 .17 7 乗用車( 送迎) - 0 .23 9 バス - 0 .12 1 - 0 .0 0 18 1 徒歩 4 .9 7 二輪車 2 .2 2 乗用車( 送迎) - 2 .3 3 項目 時間( 分) にかか るパラメータ 費用( 円) にかかるパラメータ 定数 表 3 式[1]のパラメータαに用いた値 図 14 公共建物も活用した場合の空間利用率の比較 図 15 民間建物も活用した場合の空間利用率の比較 ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( !( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( !( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( ! ( !( ! ( !( ! ( !( 凡 例 凡 例 凡 例 凡 例 ! ( 水害時避難場所 駅勢圏_手助けが必要 凡例 凡例凡例 凡例 利用可能な駅 自力で歩行可能な 要援護者の駅勢圏 凡例 凡例 凡例 凡例 利用可能な駅 手助けが必要な 要援護者の駅勢圏 凡例 凡例凡例 凡例 利用可能な駅 健常者の駅勢圏
な り ,現 実 的に は全 て の要 避難 者 の収 容 が難 しい 状 況 と なる.これらの地域は,図11に示した駅勢圏の図のうち, 各 駅 を中 心 とす る駅 勢 圏に 含ま れ ない 地 域に 相当 す る . こ の ため , 健常 者で も 駅に 到達 す るの が 難し く, 要 援 護 者の場合はさらに困難となる.図13は,水害時避難場所 へ の 要避 難 者の 内訳 を 示し たも の であ り ,青 い棒 グ ラ フ は 健 常者 を 示す .こ れ らの 地域 で は, 多 数の 健常 者 が 広 域 避 難で き ずに 水害 時 避難 場所 に 避難 を 余儀 なく さ れ て い る こと が わか る. 一 方で ,こ れ らの 地 域以 外で は , 浸 水 に よっ て 要避 難と な る地 域で も ,駅 に 到達 でき る 人 々 は 広 域避 難 する ため , 結果 的に 水 害時 避 難場 所に は 災 害 時要援護者とその付添のみが集まることがわかる. (5) その他の公共建物も活用した場合 続いて ,水害時 避難場所 に加 えて,そ の他の公 共建物 237 棟 も 避 難 先 と し た . 水 害 時 避 難 場 所 お よ び そ の 他 の 公 共 建物 を 母点 とし て 再度 ネッ ト ワー ク ボロ ノイ 分 割 を 行 い ,こ れ らを 母点 と する 勢力 圏 内に 含 まれ る要 避 難 者 数 に 基づ い て, これ ら の建 物へ の 避難 者 数を 算出 し た . 図14は,各CASEにおけるこれらの建物の空間利用率を 比較したものである.広域避難を行う CASE2~6では, 域内避難のみの CASE1と比較して,空間利用率が10倍 を超える建物が減り,空間利用率が 1倍未満の建物が増 えた.しかし,CASE2~6では,空間利用率が 10倍未満 の建物の割合は3割前後に留まっている. (6) 民間の事業所・集合住宅建物も活用した場合 最 後 に ,水 害 時避 難 場所 お よび そ の 他の 公 共建 物 に 加 え て ,事 業所 ・集 合住 宅な どの 民 間建 物も 避難 先と した . 水 害 時避 難 場所 、そ の 他の 公共 建 物、 民 間の 事業 所 ・ 集 合 住 宅と い う全 ての 建 物を 母点 と して 再 度ネ ット ワ ー ク ボ ロ ノイ 分 割を 行い , これ らを 母 点と す る勢 力圏 内 に 含 ま れ る要 避 難者 数に 基 づい て, こ れら の 建物 への 避 難 者 数を算出した.図15 は,各CASEにおけるこれらの全建 物 の 空間 利 用率 を比 較 した もの で ある . 民間 の事 業 所 ・ 集 合 住宅 を活 用す る こと で,広 域 避難 を行 う CASE2~6 では,空間利用率が 1倍未満の建物が約 7割前後と増え, 2.5倍未満の建物であれば約8割となった.前節で述べた そ の 他の 公 共建 物も 活 用し た場 合 に比 べ て, 避難 者 の 収 容 力 が大 幅 に向 上し て おり ,民 間 の事 業 所・ 集合 住 宅 建 物を活用する意義が示された. 5.鉄道による避難者輸送力の検討 前 章で は 鉄道 によ る 広域 避難 を 検討 し たが ,現 実 的 に み て ,大 量 の避 難者 が 迅速 に広 域 避難 を 行え るか に つ い て は 考察 の 余地 があ る .本 章で は ,広 域 避難 者の 輸 送 に か か る所 要 時間 の分 析 を行 い, 前 章で の 広域 避難 シ ナ リ オ が 現実 的に はど のよ うな 状況 に 相当 する かを 考察 する . 広 域 避 難時 の 鉄道 の 運行 状 況及 び 混 雑状 況 につ い て , 表 5に示す 4つのパターンを想定した.都内の鉄道のラ ッ シ ュ 時 の 混 雑 率 は 多 い 路 線 で 200%を 超 え る が , 多 く の 避 難者 は 大荷 物を 持 った まま 避 難を 行 うこ とが 想 定 さ れ る た め, 混 雑 率 200% と いっ た 状 況に は なり 得 ない と 考 え る . 本 研 究 で は , 最 大 混 雑 率 を 150%と 仮 定 す る . 運 行 状況 は ,ラ ッシ ュ 時並 みの 運 行本 数 の場 合と , 終 日 平均の運行本数の場合の 2通りを想定する.また事前に 乗客が乗っているか否かで場合分けを行い,計 4通りの ケースで計算を行う.表 6 は,最大数の広域避難者が発 生するCASE1について,駅勢圏から広域避難者を駅ごと に 算 出し ,各 路線 の担 うべ き避 難 者数 を算 出し た結 果と , 1時 間 当 た り の 輸 送 力 を 表 して い る . 複 数 駅 勢 圏 内 に 存 在 す る住 民 は, 最近 隣 の駅 に向 か うと 仮 定し ,各 路 線 の 担 う べ き 避 難 者 数 を 算 出 し た.1 時 間 当 た り の 輸 送 力 に は,平成 22 年度版都市交通年報 24) の最混雑時の通過人 数と終日平均の通過人数を混雑率 150%の値に換算して用 い た .ま た, 鉄道 は上 下線 とも 運 行す ると 仮定 して いる . 最 終 的に , 事前 に乗 客 がい る場 合 ,終 日 平均 の乗 車 人 数 を差し引き,各路線の1時間当たりの輸送力とした. 図 16は,最大数の広域避難者が発生する CASE2につ い て ,4 つ の パ タ ー ン で の 避難 者 輸 送 の 所 要 時 間 を 表 し て い る. ラ ッシ ュ時 並 みの 運行 を 行っ た 場合 ,事 前 に 乗 客 が 乗っ て いた とし て も, 新宿 線 以外 の すべ ての 路 線 で 2時 間 以 内 に す べ て の 避 難者を 輸 送 可 能 と な っ た. 一 方 , 終 日 平均 の 運行 本数 の 場合 ,い く つか の 路線 では 避 難 完 了までに約 3時間かかり,新宿線では 5時間近くを要す る 結 果と な った .よ っ て, 前章 ま でで 設 定し た避 難 シ ナ リ オ に沿 っ て, 実際 に 広域 避難 を 行う に は, これ ら の 時 間 的 猶予 を 伴っ た上 で の避 難情 報 の提 示 が必 要と な る . な お ,本 分 析で は, 駅 まで の移 動 に要 す る時 間や 駅 ま で の 道 路の 混 雑は 考慮 し てお らず , これ ら によ る更 な る 所 要 時 間の 増 大は 考え ら れる .な お ,迅 速 な広 域避 難 の 実 現 の ため に は, ラッ シ ュ時 並み の 増発 や 事前 の乗 客 の 規 制 と いっ た 鉄道 に関 す る対 策と , すい て いる 路線 へ の 避 難 者 の誘 導 や駅 まで の 渋滞 等を 考 慮し た 上で の避 難 者 の 誘導といった対策を行う必要があると考える. 表 5 シミュレーションの条件設定 表 6 各路線の担うべき避難者数と輸送力 図 16 避難者輸送の所要時間 パターン 最大混雑率 運行状況 事前の乗客の有無 1 150% ラッシュ時並み なし 2 150% ラッシュ時並み あり 3 150% 終日平均 なし 4 150% 終日平均 あり 0 50 100 150 200 250 300 350 避 避避 避 難 難難 難 完 完完 完 了 了了 了 時 時時 時 間 間間 間(((( 分 分分 分)))) 避難完了時間の比較 避難完了時間の比較 避難完了時間の比較 避難完了時間の比較 パターン1 パターン2 パターン3 パターン4
6.避難場所の計画立案における留意事項 本 章で は ,前 章ま で の分 析を 踏 まえ て ,水 害時 の 避 難 場 所 の計 画 を立 案す る 際に 留意 す べき 事 項に つい て の 考 察を行う.第 3章および第 4章では,荒川破堤時の江東 デ ル タ地 帯 にお いて は ,自 治体 が 指定 す る現 行の 水 害 時 避 難 場所 で は収 容力 が 足り ない 点 ,そ の 他の 公共 建 物 や 民 間 の事 業 所や 集合 住 宅を 活用 す るこ と で収 容力 を 増 大 できうる点を明らかにした. 江東区は,2012年5月時点で,表8のように6 つの民 間事業所,3つの UR住宅と,水害時における一時 避難 施設としての使用に関する協定を結んでいる 25) .しかし, 前 章 での 分 析結 果に よ れば ,こ れ らの 事 業所 が位 置 す る 豊洲3丁目,新砂1丁目,東洋2丁目,大島2丁目・3丁 目・4丁目・6丁目・北砂5丁目は,既存のその他の公共 建 物 のみ で 全て の避 難 者を 収容 で きる 地 域と なっ た . こ れ ら の地 域 の他 にも , 公共 建物 が 少な く ,民 間建 物 を 活 用 し ない と 十分 な収 容 力を 提供 で きな い 地域 は多 数 存 在 し て いる . 民間 建物 と の協 定を 結 ぶ際 に は, 地域 ご と の 要 避 難者 数 と避 難場 所 の収 容力 を 分析 し ,地 域ご と の 優 先 度 を考 慮 した 上で , 民間 建物 の 活用 を 行う 必要 が あ る と考える. し かし , 民間 建物 の 立地 には 地 域に 応 じた 差異 が あ る た め ,こ れ らの 地域 特 性を 踏ま え た計 画 の立 案が 重 要 で あ る .民 間 建物 を避 難 先と して 活 用す る 必要 性の 地 域 傾 向を把握するため、ここで 2つの地域を例に挙げて、傾 向 を 述べ る .ま ずは , 江戸 川区 立 平井 小 学校 周辺 に 着 目 す る .水 害 時避 難場 所 のみ を避 難 先と し た場 合の 江 戸 川 区 立 平井 小 学校 を母 点 とし た勢 力 圏内 に 焦点 を当 て , こ の 勢 力圏 内 に立 地す る 民間 の事 業 所お よ び集 合住 宅 の 各 CASEにおける空間利用率を集計して,図 17のようなレ ー ダ ーチ ャ ート で表 現 した .平 井 小学 校 の収 容可 能 人 数 は 279 人である.この勢力圏内には公共建物は無く,民 間の事業所16棟,集合住宅128棟が位置する.この勢力 圏内での要避難者は最大で5328人であるのに対し,水害 時避難場所および公共建物の収容力は 279人である.全 ての事業所と集合住宅を活用すると収容力は5285人にな る.この地域では,図17の通り,多くのCASEにおいて 民 間 建物 の 床面 積を ほ ぼ全 て使 用 しな け れば 十分 な 収 容 力 を 得ら れ ない .こ の 様な 地域 に おい て は, 民間 建 物 の 活 用 も重 要 では ある が ,民 間建 物 の利 用 だけ では 限 界 が あ る .よ っ て, 新た な 避難 場所 の 建設 や 隣接 地域 へ の 避 難誘導,鉄道を利用した広域避難が必要である. 図18は,江戸川区立小松川第一中学校を母点とした勢 力圏について,図17と同様に作成したものである.小松 川第一中学校の収容人数は 322人であり,この勢力圏内 には公共建物2棟,民間の事業所14棟,集合住宅133棟 が位置する.この勢力圏内での要避難者は最大で1798人 で あ るの に 対し ,水 害 時避 難場 所 およ び 公共 建物 の 収 容 力は 732 人である.全ての事業所と集合住宅を活用する と収容力は 11455人になる.この地域では,平井小学校 エ リ アと 比 較し て要 避 難人 数が 少 なく , いず れの 鉄 道 運 行 状 況に お いて も空 間 利用 率は 低 い. こ のよ うな 特 徴 を 持 つ 地域 で は民 間建 物 を活 用す る 効果 が 高い ため , 他 地 域 よ りも 優 先し て民 間 建物 の避 難 場所 と して の活 用 を 進 め る こと が 効果 的で あ る. 以上 の よう に ,地 域の 特 性 を 踏 ま えた う えで ,戦 略 的に 避難 計 画を 拡 充し てい く こ と が重要である. な お , 民間 建 物を 活 用す る 際に は , これ ら の民 間 建 物 に 避 難者 を 収容 でき る 会議 室な ど の空 間 があ るこ と が 前 提 で ある . また ,停 電 時に もオ ー トロ ッ ク扉 が開 錠 出 来 る 事 ,で き れば 外階 段 があ るこ と が重 要 であ る. 前 章 ま で の 分析 で は, これ ら の条 件は 考 慮せ ず に, 存在 す る 建 物 数 のみ で 議論 して い るた め, 実 際に 活 用す る建 物 を 決 める場合は,これらの条件を考慮する必要はある. 表 7 水害時における一時避難施設(江東区) 25) 図 17 各ケースの空間利用率(平井小学校周辺) 図 18 各ケースの空間利用率(小松川第一中学校周辺) 6.結論 本 研 究 では , 洪水 氾 濫シ ミ ュレ ー シ ョン ・ 人口 お よ び 建物分布の GISデータを用いて,首都圏大規模水害時に 江 東 デル タ 地帯 にお い て必 要と さ れる 避 難場 所の 収 容 力 に 関 する 分 析を 行っ た .こ の際 、 気象 条 件に 基づ く 交 通 機 関 の運 行 条件 や災 害 時要 援護 者 の歩 行 可能 範囲 を 踏 ま え た 上で , 江東 デル タ 地帯 内で の 避難 と 江東 デル タ 地 帯 外 へ の広 域 避難 の双 方 を考 慮し た 検討 を 行っ た. こ の 結 果,以下に記す知見が得られた. ・ 域 内避 難 者お よび 広 域避 難者 の 人数 は ,気 象条 件 お よ び鉄道の運行状況により,大きく変動する. ・ 本 研究 で 用い た手 法 によ れば , 江東 デ ルタ 地帯 内 に は 多 数 の 駅 が 存 在 す る も の の , 一 部 の 地 域 で は 著 し く 駅 が 遠 い . こ れ ら の 地 域 で は , 自 力 で の 歩 行 が 可 能 な 災 害 時 要 援 護 者 だ け で な く , 健 常 者 も 駅 に 到 達 す る こ と が 困 難 に な る た め , 鉄 道 が 運 行 し た と し て も 広 域 避 難 が難しく,域内避難をせざるを得ない.
・ 自 治体 が 指定 する 水 害時 避難 場 所の み を避 難先 と し た 場 合 , 域 内 避 難 の み を 行 う 場 合 は , 特 に 荒 川 沿 い で , 水 害 時 避 難 場 所 の 収 容 可 能 人 数 を 大 幅 に 超 え た 要 避 難 者が集まり,現実的には収容が難しい. ・ 広 域避 難 が可 能な 場 合で も, 上 述し た 駅に 遠い 地 域 で は , 多 数 の 人 々 が 避 難 場 所 へ の 域 内 避 難 を 余 儀 な く さ れ る . 広 域 避 難 の 効 果 は 地 域 に よ っ て 異 な る こ と が 明 らかとなった. ・ 広 域避 難 が可 能な 地 域で も, 移 動が 困 難な 災害 時 要 援 護 者 と 付 添 は 域 内 避 難 を せ ざ る を 得 な い た め , 取 り 残 さ れ る . 排 水 が 困 難 と な り , 長 期 の 避 難 生 活 が 続 く 場 合,これらの人々への対応も深刻な問題となりえる. ・ 避 難 先 と し て そ の 他 の 公 共 建 物 を 活 用 や 民 間 の 事 業 所 ・ 集 合 住 宅 を 活 用 す る こ と で , 要 避 難 者 の 収 容 力 を 大幅に増大することが可能である. ・ た だし ,民 間建 物の 立地 には 地 域に 応じ た差 異が ある . 建 物 の 「 空 間 利 用 率 」 の 観 点 か ら 見 れ ば , い ず れ の 状 況 に お い て も ほ ぼ 全 て の 民 間 建 物 を 活 用 し な け れ ば 要 避 難 者 を 収 容 で き な い 地 域 で は , 民 間 建 物 の 利 用 だ け で は 限 界 が あ り , 避 難 先 の 新 設 や い ち 早 い 広 域 避 難 が 必 要 と 言 え る . こ の よ う な 地 域 特 性 を 踏 ま え た 上 で の 計画の立案が必要と考えられる. な お, 本 研究 での 分 析は ,デ ー タの 制 約か ら夜 間 人 口 に 基 づい た 分析 であ り ,今 後は , 時間 帯 を考 慮し た 避 難 行 動 の検 討 も必 要で あ る. また , 鉄道 以 外の 自動 車 な ど の 道 路交 通 機関 を使 用 した 広域 避 難の 検 討も ,よ り 詳 細 な避難場所計画を検討する必要があると考える. 謝辞 本 研究 は ,国 土技 術 政策 総合 研 究所 委 託研 究: 水 害 時 の 状 況に 応 じた 避難 及 び避 難情 報 提供 に 関す る調 査 研 究 (平成 21-23 年度)の一環として実施した.水害データ に 関 して は 国土 交通 省 関東 地方 整 備局 荒 川下 流河 川 事 務 所 の ご協 力 を得 た. 建 物デ ータ に 関し て は東 京都 都 市 整 備 局 のご 協 力を 得た . お世 話に な った ご 担当 者の 方 々 に 厚 く 御礼 を 申し 上げ る .こ こに 記 して , 全て の関 係 各 位 に感謝の意を表する. 参考文献 1) 国土交通省ゼロメートル地帯の高潮対策検討会:我 が国におけるゼロメートル地帯の高潮対策の現状, 2005. 2) 中央防災会議大規模水害対策に関する専門調査会: 荒川洪水氾濫時の人的被害想定結果(概要),2008. 3) 桑沢敬行,片田敏孝:大都市大規模水害を対象とし た避難対策に関するシミュレーション分析,日本災 害 情 報 学 会 第 13 回 研 究 発 表 会 予 稿 集 , pp.37-42. 2011. 4) 加藤孝明,宮川勇二:荒川下流域の海抜ゼロメート ル地帯における鉄道による広域避難の可能性の検討, 生産研究Vol.63,pp495-499,2011. 5) 国土交通省荒川下流河川事務所:浸水想定区域図作 成検討の解析結果,2001. 6) 東 京 都 総 務 局 : 町 丁 ・ 字 等 別 夜 間 人 口 ( 推 計 ) , 2005. 7) 東京都福祉保健局:福祉行政・衛生行政統計月報, 2011.6. 8) 東京都:認知症高齢者自立度分布調査,2008. 9) 東 京 都 都 市 整 備 局 : 東 京 都 建 物 現 況 調 査 デ ー タ , 2001. 10) ESRI ジャパン株式会社:ArcGIS データコレクショ ンプレミアムシリーズ道路網(東京都版),2010. 11) 佐藤智・今村文彦・首藤伸夫:洪水氾濫の数値計算 お よ び 家 屋 被 害 に つ い て ―8610号 台 風 に よ る 吉 田 川の場合―,水理講演会論文集,pp.331-336, 1982. 12) 河田恵昭・中川一:三隅川の洪水災害―洪水氾濫と 家屋の被害―,京都大学防災研究所年報第 27号 B-2, pp.179-196, 1984. 13)国土交通省:浸水想定区域図作成マニュアル,2005. 14) 墨田区都市整備部土木管理課:墨田区洪水ハザード マップ‐荒川が氾濫した場合‐2008. 15) 江 東 区 土 木 部 水 辺 と 緑 の 課 : 江 東 区 洪 水 ハ ザ ー ド マップ~荒川が氾濫した場合に備えて~,2010. 16) 江戸川区危機管理室防災危機管理課:江戸川区洪水 ハザードマップ 利根川・江戸川・荒川が氾濫した 場合,2009. 17) 岡部篤行、奥貫恵一と SANET チーム:SANET(A
Spatial Analysis on Networks (Ver.4.0))
18) 日本赤十字社,災害時要援護者対策ガイドライン, 2006. 19) 国土交通省:東京圏における高速鉄道を中心とする 交通網の整備に関する基本計画について-運輸政策 審議会答申第18号-フォローアップ調査,2008. 20) 小 林 範 俊 , 島 村 誠 : 強 風 警 報 シ ス テ ム の 研 究 ,JR
EAST Technical Review No.03 - Spring 2003,
pp.41-44,2003. 21) 東日本旅客鉄道株式会社:降雨災害との関連性がよ い雨量指標「実行雨量」の導入について,2008. 22) 総務省消防庁:津波対策推進マニュアル検討報告書, 2002. 23) ウルフラム・リサーチ社:Mathmatica ver.8. 24) 財団法人運輸政策研究機構:平成 22 年度版都市交 通年報,2010. 25) 江東区危機管理室(総務部) 防災課 防災計画係: http://www.city.koto.lg.jp/topics/2114/index.html,2012. (原稿受付 2013.1.13) (登載決定 2013.7.11)