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厳寒の南極海を航行する砕氷艦「 しらせ」の電気推進装置

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Academic year: 2021

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C olumn 64 2009.06

厳寒の南極海を航行する

砕氷艦

「しらせ」の電気推進装置

2009年5月に新型砕氷艦「しらせ(新しらせ)」が就役 した。しらせは,南極観測隊の物資と人員の輸送,および 観測業務支援を目的とし,世界的に見ても高い砕氷能力, 輸送能力を誇るもので,第51次南極地域観測から従事す る予定である。日立グループは,鉄鋼圧延や鉄道といった 豊富な回転機制御技術を基に,しらせの電気推進装置を開 発した。  新型砕氷艦「しらせ(新しらせ)」は,南極観測行動にお ける隊員や物資の輸送観測活動を行うための多目的船であ り,先代しらせに代わり

2009

5

月に就役した。砕氷艦は, その名が示すとおり氷を割りながら航行することを前提と しており,高出力の推進装置を必要とする。特に日本の観 測隊がめざす昭和基地は,南極海で有数の流氷域であるリュ ツォホルム湾を越えた所にあり,しらせは,船を後進させ て助走した後,氷床に船を体当たりさせて氷を割るラミン グ砕氷を繰り返し行いながら航行する。排水量

1

t

以上の しらせがこの砕氷航行を行うには,迅速に加減速できる推 進装置が必要であり,さらに,このときプロペラに接触す る氷塊を砕くために,高いトルク特性をもった推進装置で なければならない。しらせは,これらの仕様を満足するため, 発電機,電気推進装置,プロペラから成る電気推進システ ムを採用しており,日立グループは,システムの中核を担 う電気推進装置の開発を行った。  電気推進装置の全体構成を図1に示 す。プロペラを駆動する推進用電動機, 電動機を制御する電力変換器,変圧器, 水冷却装置,ポンプや送風機といった補 機類,そして各装置を統括する機側制御 盤により構成される。新しらせと先代し らせの比較を表1に示し,以下に各機器 の特徴を述べる。 2.1.統合給電方式  新しらせの電源系統を図2に示す。先 代しらせは,艦内一般負荷と推進負荷に

1.はじめに

2.新しらせの電気推進装置

補機 機側 制御盤 プロペラ 推進用電動機 電気推進装置 (日立製作所 所掌部分) 電力 変換器 変圧器 ディーゼルエンジン発電機 水冷却 装置 図1 新しらせの全体構成 別々の発電機から給電する分離給電方式であったが,新し らせは同じ発電機からすべての負荷に給電する統合給電方 式を採用した。ただし,統合給電方式における発電機が全 停止した場合の一般負荷への影響を回避するために,発電 機停止の要因となる負荷急変や過負荷が起こらないよう, 推進用電動機の出力を制限する制御を行っている。 2.2.プロペラ軸  新しらせは,プロペラ軸が先代しらせの

3

軸から

2

軸に 変更となり,機関区画の減少,重量の低減が図られている。 項目 軸数 電動機 電動機台数 電力変換機 制御方式 給電方式 母線電圧 発電機台数 常備排水量 (基準排水量) 推進方式 (最大出力) 新しらせ 2軸 誘導電動機 5,516 kW×4台 (2軸×2台) ダイオードコンバータ +PWM制御によるIGBTインバータ方式 統合給電方式 6.6 kV

注 : 略語説明 PWM(Pulse Width Modulation), IGBT(Insulted Gate Bipolar Transistor)

7,400 kW×4台 (+補助発電機1,200 kW×2台) 1万8,500 t (1万2,500 t) 電気推進方式 (3万PS) 先代しらせ 3軸 直流電動機 3,680 kW×6台 (3軸×2台) AC-R-DC方式 分離給電方式 715 V 4,050 kW×6台 (+主発電機900 kW×4台) 1万7,230 t (1万1,600 t) 電気推進方式 (3万PS) 表1 新しらせと先代しらせの比較

(2)

65 Column それぞれの軸には

2

台ずつ電動機が直結されており,

1

台 の電動機が故障した場合でも,もう

1

台の電動機が運転す ることで航行を続けることができる。電動機の切換は,制 御によりスムーズに行うことが可能である。 2.3.推進用電動機  新しらせは推進用電動機に堅牢(ろう)な誘導電動機を 採用したことにより,直流電動機のブラシ・整流子のメン テナンスが不要となり,保守性が向上している。電動機は

1

台当たりの定格出力が

5,516 kW

であり,二つのプロペ ラ軸に

2

台ずつ計

4

台装備し,最大出力は約

3

PS

(仏馬 力)である。通常海域では最大

20

ノットで船を航行させ ることができ,氷海域においても厚さ

1.5

mの氷を砕氷し ながら

3

ノットで航行することが可能である。 2.4.電力変換器  電力変換器は,電動機の加減速制御を行うインバータ, インバータに直流電力を供給するコンバータ,そしてこれ らの制御を行う制御装置によって構成される。インバータ は

PWM

Pulse Width Modulation

)制御

IGBT

Insulated

Gate Bipolar Transistor

)インバータを採用し,ベクトル制 御演算によって電動機の迅速な加減速を可能としている。 また,コンバータには多相ダイオード整流方式を採用し, 電源系統への高調波を

2

%以下(単一成分)に抑制できた。 2.5.機側制御盤  機側制御盤は,艦橋など上位システムからの指令を受信 して各装置を統括するとともに,各装置の現在の状況を上 位 へ 送 信 す る。 ま た, 万 一 の

CPU

Central Processing

Unit

)故障時の冗長性を高めるため,制御装置の二重化や, バッテリ付属の直流電源装置による停電時の電源供給な ど,緊急時にも対応できるように信頼性の高いシステムを 構築している。  しらせは南極での航行を主とするため,ほかの艦船から の補給や援助を受けることがほぼ不可能である。電気推進 装置が停止した場合は航行ができず,氷海に閉じ込められ ることから,砕氷航行における電動機制御の検証を行うこ とは,システムの信頼性の面で非常に重要である。  砕氷航行の検証は国内では困難なため,プロペラ形状や 船体データによって砕氷時に電動機にかかる負荷を計算予 測し,これらのデータを基にさまざまな砕氷パターンにお ける動作シミュレーションを行うことで,砕氷航行時の電 気推進装置の動作を確認した。また,プロペラ負荷を電動 機で模擬した電気推進装置のミニモデル(出力換算で実機 の約

500

分の

1

縮小モデル)を製作し,動作シミュレーショ ンとの健全性を確認した。これらの検証により,氷海航行 時に起こりうるリスクが最小限となるように低減を図った。  今回開発したシステムには砕氷艦特有の仕様が数多く存 在する。培った技術を基に,今後は他の艦船,船舶における 電気推進装置においても開発に取り組んでいく考えである。 西川友啓 2006年日立製作所入社,ディフェンスシステム事業部電機システ ム設計部所属 現在,電気推進装置の設計,開発に従事 執筆者紹介

4.おわりに

右舷プロペラ (最大出力 : 1万5,000 PS) M1 M3 M2 M4 左舷プロペラ (最大出力 : 1万5,000 PS) 電気推進装置 艦内一般負荷 艦内一般負荷 艦内用TR2 TR3 TR2 TR4 電力変換器1 電力変換器3 電力変換器2 電力変換器4 G1 G2 G3 G4 低圧440 V 3φ 注 : 略語説明 DE(ディーゼルエンジン), G(主発電機), M(推進用電動機), TR(変圧器) 高圧 6.6 kV 3φ 高圧 6.6 kV 3φ 低圧440 V 3φ 日立製作所 所掌部分 *1) 艦内用TR1 *1) 補助発電機2 補機類 補機類 補助発電機1 TR1 DE1 DE2 DE3 DE4 図2 新しらせの電源系統概略

3.ミニモデルを用いた砕氷航行の検証

参照

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