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動的タイムステップ制御方式の道路交通シミュレーションへの適用検討

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Academic year: 2021

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動的タイムステップ制御方式の道路交通シミュレーションへの適用検討

尾崎 敦夫

松下 和隆

白石 將

渡部 修介

古市 昌一

三菱電機(株)

三菱電機インフォメーションシステムズ(株)

1.まえがき

計算機クラスタ環境上で移動体(航空機、船舶、車両、 人等)を主対象とした実世界シミュレーション[1]の高速 化を図るための有効な方策が、移動体間の同期に伴なう プロセッサ間の通信を極力減らすことである。動的タイ ムステップ制御方式(DTSS: event aware Dynamic Time Step Synchronization method)[2]は、計算機クラスタ環境を対象 に移動体の単位で負荷分散させた場合の高速化手法であ る。本方式はタイムステップに基づく移動体シミュレー ションを対象に、移動体間で相互作用が発生する可能性 がある場合のみ、同期(通信処理)を行うものであり、 このタイミングを基準にタイムステップ間隔(∆t)を設 定するものである。従って、∆t を大きく設定できる場合 では、同期(通信処理)コストを抑えることができるた め高速化が図れることになる。しかし、移動体数が大規 模になる場合では、1つの計算機上でも複数の移動体を 高速に模擬するための仕組みが求められる。 本稿では、特に移動体が道路網上を移動する道路交通 シミュレーションを対象に、1つのプロセッサ上で複数 の移動体を高速に模擬する実行方式を提案する。本方式 は DTSS の概念に基づいており、細かい固定のδt(≦ ∆t)をタイムステップとする従来方式と同等の模擬精度 を維持しつつ、移動体間の同期コスト及び、個々の移動 体の模擬コストの低減を図り、実行性能向上を図るもの である。

2 .提案方式

2.1 基本概念 DTSS では各移動体は次ぎの模擬時刻を、他の移動体 との相互作用から模擬結果に影響を及ぼし合う可能性の ある時刻に設定するものであり、直線距離上を他の移動 体と互いに最高速度で近づくと仮定して算出する。これ は最悪時を想定して次ぎの∆t 及び模擬時刻を設定するた めであり、かつその計算コストを小さくするためである。 しかし、移動体が道路網上を移動する場合、他の移動体 と直線距離に基づいて次ぎの模擬時刻を算出する方法で は、∆t の設定にかなりの制約をかける場合が多く非効率 である。道路が存在しない地点で会合することを仮定し て∆t を設定する場合も大いにあり得ることになる。この ため、道路網に沿った距離情報に基づいて∆t を算出する ことが好ましい。この距離情報が実際に走行する経路と かけ離れていれば、やはり性能劣化に繋がるが、実際に 近づけようとするとそのための計算コストが増すことと なる。しかし、我々は各移動体が持つ計画路情報を利用 することによって、該計算コストを増やさずに性能向上 を図る道路交通向け動的タイムステップ制御方式(DTSS-RT: DTSS for Road Traffic simulation)を考案した。本方式 では、各移動体は自身の計画路上に他の移動体及び静止 体が存在する、または他の移動体の計画路と重複する地 点(会合可能性地点:図 1 参照)が存在する場合に、そ の地点を基準に次ぎの∆t 及び模擬時刻を算出するもので ある。また、本方式は図 1 の移動体 A にとっての移動体 C のように、会合地点及び会合可能性地点が存在しない 他の移動体を一切考慮せずに∆t を設定できるという特長 がある。 2.2 アルゴリズム DTSS-RT では、まず他の移動体との会合地点及び会合 可能性地点を求める。最寄地点が会合可能性地点である 場合は、対象とする他の移動体に関する該地点までの走 行モデルを作成する。走行モデルは基本的に、他の移動 体の状態から影響を受けない等加速度走行及び等速走行 と、影響を受ける追従走行より構成される。なお、我々 が想定している道路交通シミュレーションのモデルでは、 各移動体は自身の走行車線上の走行方向のみの情報を利 用して走行するものとし、反対車線等の状況は考慮しな いものとしている。従って、その時点で自身の走行に影 響を与えるものは、自身の計画路上の最寄の前方物(移 動体または静止体)または他の移動体との会合可能性地 点であり、該前方物が移動体である時でも、自身の方向 に近づくことはない。このため、上記走行モデルでは該 会合可能性地点の位置で速度が 0 になる走行モデルを作 成する(図 2(a))。そして、追従走行に入るまでの時間 を∆t として次ぎの模擬時刻(現在時刻+∆t)を設定する。 しかし追従走行に入った、または入っている場合は、従 来方式 と同じ細かいδt のタイミングで模擬することとな る。会合可能性地点で速度が 0 になる走行モデルに基い て∆t を設定する理由は、会合する可能性のある他の移動 体が該地点をいつ、どのように移動したとしても、その 動きに矛盾なく対応し模擬できるよう追従走行区間を十 分確保するためである。

Design of Dynamic Time Step Synchronization Method for Road Traffic Simulation

Atsuo Ozaki†, Kazutaka Matsushita‡, Masashi Shiraishi†, Shusuke Watanabe†, Masakazu Furuichi†

Mitsubishi Electric Corporation

Mitsubishi Electric Information Systems Corporation

図1.DTSS における計画路情報の活用 R-8 D-1 D-2 R-2 R-3 R-4 R-5 R-6 R-10 R-9 N-1 N-2 N-3 N-4 N-5 N-6 移動体A[R-8, N-6, R-6, N-2, R-3, N-3, D-1] 移動体B[R-10, N-7, R-9, N-5, R-5, N-1, R-2,     N-2, R-3, N-3, R-4, N-4, D-2] 移動体C[R-11, N-8, D-3] ⇒N-2(会合可能性地点)が次ぎのΔt設定の対象 N-7 R-1 N-8 R-11 D-3 R:Road(リンク:道路) N:Node(ノード:交差点) D:Destination(目的地) 移動体A 移動体B 移動体C

1-9

1A-5

情報処理学会第69回全国大会

(2)

なお図 1 の例において、移動体 A の次の模擬時刻決定 のための∆t を上記手順に基いて算出する場合は、まず会 合可能性地点 N-2 を共有する移動体 B に関して、上記走 行モデルを作成する。次に該走行モデルにおいて追従走 行になるまでの時間(∆tB(N-2))を算出する。そして、移 動体 A の走行モデルを作成し、この走行モデルに基いて ∆tB(N-2)の時間だけ移動体 A を移動する。この例の場合、 移動体 A の走行モデルは、目的地 D-1 で速度が 0 になり、 かつ移動体 B は追従走行開始時点で模擬を止めているの で、移動体 B との会合を一切考慮しない走行モデルとし て良い。目的地 D-1 までの移動時間(∆tA)が∆tB(N-2)より も小さければ、移動体 A は一動作で目的地まで移動でき ることになる(図 2(b))。これにより高速化が図れるこ ととなる。また、該前方物が静止体である場合は、対象 が動かないため、追従走行も含めた時間を∆t に設定でき る。

3.性能評価

DTSS-RT の性能評価は、ロボカップレスキューシミュ レーション[3]での道路交通シミュレータを利用して実施 した。本評価での設定条件は以下の通りとした。 ・ シナリオ:大地震後の救助活動 ・ 対象領域:500m 四方 ・ レスキューエージェント(移動体)数:15 ・ 模擬時間:110 分間(=110×60 秒間(steps)) 図 3 は、DTSS-RT とδt=1 秒とした従来方式の実行性能 及び、従来方式に対する DTSS-RT の高速化倍率を示した ものである。初期状態では瓦礫の撤去作業が主となり、 会合対象が静止体であることから、追従走行区間までも 含めて∆t を設定できるので高速化倍率が約 3 倍となる。 そして瓦礫が取り除かれるにつれ、会合対象が移動体へ と変わるので実行性能は劣化するが、巡行状態に移行す るにつれ約 2 倍程度の高速化が達成できる。しかしその 後、移動体がセンターに帰るため、渋滞が生じ性能が 徐々に劣化していくことが確認できた。

4 .むすび

本稿では、DTSS を道路交通シミュレーションへ適用す る た め の 道 路 交 通 向 け 動 的 タ イ ム ス テ ッ プ 制 御 方 式 (DTSS-RT)を提案した。本方式の特長は以下の2点で ある。 ・ 移動体間の同期コストを低減するだけでなく、移動 体自身の模擬コストも低減することが可能。 ・ 各移動体の計画路情報に基いた移動体間の会合可能 性地点や会合地点を利用することにより、次の模擬 時刻を効率的に設定可能。 但し、本方式では、計画路情報に変更が生じた場合は 一連のプロセスを再計算し直すこととなる。しかし、そ の頻度は一般的に低く、ロボカップレスキューの場合は 高々60 回(秒)に 1 回であり、この場合でも殆んど性能 に影響は無かった。DTSS-RT をロボカップレスキューの 道路交通シミュレータへ適用した結果は、瓦礫撤去作業 時で約 3 倍、巡行走行時で約 2 倍の性能向上が確認でき た。しかし、渋滞時では∆t が大きく取れず、∆t の計算コ ストがオーバーヘッドとなり実行性能が劣化するため、 このような状態での性能改善が今後の課題となる。 なお、防災分野では救助計画、防衛分野では作戦計画 等に基づき各移動体は行動するものである。日常生活で も目的地へ向かうまでの基本計画を立てて行動するもの であり、計画路情報を活用する本方式は多くのアプリケ ーションへ適用できるものと考える。

参考文献

[1] A.Ozaki, et al, "Design and Implementation of Parallel and Distributed Wargame Simulation System and Its Evaluation," IEICE Trans. Vol.E84-D No.10, pp.1376-1384, 2001.

[2] A.Ozaki, et al, “Event-Aware Dynamic Time Step Synchronization Method for Distributed Moving Object Simulation," IEICE Trans. Vol. E89-A No.11 pp.3175-3184, 2006.

[3] RoboCup-Rescue Official Web Page http://www.rescuesystem.org/robocuprescue/ 図 2.DTSS-RT の基本概念 図3.DTSS-RT の性能評価結果 制限速度 Vmax 制限速度 Vmax R-8 D-1 D-2 R-2 R-3 R-4 R-5 R-6 R-10 R-9 N-1 N-2 N-3 N-4 N-5 N-6 N-7 R-1 N-8 R-11 D-3 L0:追従可能性区間 移動体A 移動体B 移動体C ∆tB(N-2) L0 ∆tA(≦∆tB(N-2))

(a)

車の走行モデル 等速走行 追従 走行 速度(V) 等加速 走行 δt 移動体B N-2地点 ∆tB(N-2) 時間(T)

(b)

0 500 1000 1500 2000 2500 1 10 19 28 37 46 55 64 73 82 91 100 109 シミュレーション時間(min) 実行時 間( m s ) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 高 速化倍 率 瓦礫撤去 巡行状態 渋滞状態

1-10

情報処理学会第69回全国大会

参照

関連したドキュメント

火災発生からの経過時間t [min].. 2) Bailey, C.: Case Studies: Historical Fires: Mount Blanc Tun nel Fire, Italy/France, http://www.mace.manchester.ac.

水道水又は飲用に適する水の使用、飲用に適する水を使

本手順書は、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(以下、当社)の DIACERT-PLUS(ダイヤ サート

注) povoはオンライン専用プランです *1) 一部対象外の通話有り *2) 5分超過分は別途通話料が必要 *3)

方式で 45 ~ 55 %、積上げ方式で 35 ~ 45% 又は純費用方式で 35 ~ 45 %)の選択制 (※一部例外を除く)

・患者毎のリネン交換の検討 検討済み(基準を設けて、リネンを交換している) 改善 [微生物検査]. 未実施

アクセス道路の多重化・道路の補強 工事中 通信設備の増強(衛星電話の設置等) 完了 環境モニタリング設備等の増強・モニタリングカーの増設 完了 高台への緊急時用資機材倉庫の設置※

電子式の検知機を用い て、配管等から漏れるフ ロンを検知する方法。検 知機の精度によるが、他