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制限超過利息の効力をめぐって--三つの大法廷判決を中心に 利用統計を見る

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(1)

制限超過利息の効力をめぐって--三つの大法廷判決

を中心に

著者

三和 一博

著者別名

K. Miwa

雑誌名

東洋法学

12

2・3

ページ

1-28

発行年

1969-02

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006137/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

︿論  説V

  制限超過利息の効力をめぐつ

        ⋮三つの大法廷判決を中心に!

ラ和

嚇 は じ め に

二 問題の推移

三 超過利息の元本充当をめぐって 四 過払利息の返還請求をめぐって 五 む  す  び 制限超過利息の効力をめぐって 蝋

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東洋法学

二 幽翻

は じ め に

 現行利息制限法︵昭和二九年法一〇〇号︶は.従来その不備を指摘されかつ解釈上も疑義の多かった旧利患制限法 ︵明治一〇年大政嘗布告六六号︶を全面的に改正したものであるが、しかしなお立法上の不備のためその制限の効力に ついて解釈上の疑義を残している、そのため.利息制限法所定の制限を超過した利息︵または撮害愈 の効力をめぐ 心て・昭蓼冗年現行法制定以来.数多くの判決例があらわれ.最高裁判所においヅ、昭和三七年・三九年・四三年と あいついで大法廷判決を下すという.注縫すべき現象を起している.そこで本稿では.この三つの大法廷判決を中心 に.その内容を検討しつつ.そのもつ意味を探ってみようというわけである、

二 問題の推

移  もともと・利息制限法所定の制限を超過した利息の効力については.旧法︵二条︶では. ﹁若シ此限ヲ超過スル分 ハ裁判上無効ノモノトシ各其制限ニマテ引直サシムヘシ﹂と規定していた。そのため旧法時代では.もっぱらこの       マ  ぽ  ゆ  ぽ  ぽ  ぽ  ゆ  ガ  ぽ  ぽ  ゆ  ガ ﹁裁判上無効﹂の解釈をめぐって.制限超過部分の返還請求ができるかどうかということが論争の中心となって.判 例と学説とが対立していた。この点について、判例は一貫して.それを.債権者が裁判によって超過部分の支払を請

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求する場合のみならず、債務者が任意に支払ったときにその既払超過分の返還を請求する場合にも、民法七〇八条の 不法原因給付にあたり、許されないものと解していた。それに対して、学説の多くは判例理論を非難して、﹁裁判上 無効﹂は法律上無効と同じであるという解釈にたって、債務者の超過分支払は、民法九〇条に違反しないかぎり不法 原因給付とはならず、七〇五条により﹁債務ノ存在セサルコト﹂を知って任意に支払われたものでないかぎり、返還        ︵主︶ 請求ができると主張してきた。  現行法はこの点について、単に﹁その超過部分につき無効とする﹂︵一条一項︶と定めるとともに、他方、債務者 がその﹁超過部分を任意に支払ったときは、⋮⋮その返還を請求することができない﹂︵一条二項︶と規定し︵同じ趣冨 の規定を損害金について四条一項二一項においた︶、あたかも旧法についての判例理論を立法化したかに解される規定をお いた。しかも現行法の右の規定があまりにも簡単なために、裁判による助力を拒否する範囲をいかに解すべきかにつ いて疑問を残したのである。すなわち、超過部分の返還請求をめぐる旧法時代の論争については、一応の決着をつけ        ヤ   ヤ   ペ   ヤ   ペ   ペ   ペ たのであるが、それまでこの間題の影にあって十分に論議の対象とならずにいた、その超過部分を残存元本の弁済に ・・・・・⋮、   ︵2︶ 充当できるかどうかの問題が、表面にでてきて論議されるようになり、現行法の下での論争の中心となったのであ る。  昭和二九年現行法制定以来、この間題について下級審において多数の判決例があらわれたのであるが、その判断は          ︵3︶ 肯定・否定の両論に分かれ、ほぼその論点も煮詰ってきていたが、最高裁判所による判例の統一がまたれていた。そ のような事態の下で最高裁判所は、昭和三七年六月二二日、大法廷判決︵民集一六巻七号二一西○頁︶によって元本充    制限超過利息の効力をめぐって       三

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   東洋法学       四 当説を斥けて非充当説の立場をとることを明らかにした。つづいて昭和三七年二月二二β第一小法廷判決︵判例時報 一三八号一七頁︶も同じ立場をとって.いちおう判例理論が統一されたかにみえた。しかし.この大法廷判決において は・九対五という数であって少なからぬ反対意見︵横田︵喜∀池田.奥野・五鬼上・山田の五裁判富︶があり.その後の 第一小法廷判決においても.大法廷判決当時のメとハーでなかった裁判官︵斎藤︵朔︶︶が少数意見を新たに加え.判 例としては必ずしも安定したものではなかった.しかも.右の判決に対しては.学説の多くから充当説の立場にたゆ          ?る ての批判が発表された.  このような状態の下で.最高裁判所の裁判官の構成の変更もあって.蕩編の後わずか二年五ヵ月で逆転し.最高裁判 所は・昭和三九年二月一八縫.大法廷判決︵民集一八巻九号一八六八頁︶によって一〇対四の多数で判決変更をおこ ない.元本充当説を採用するにいたった.しかし.この判決もまた、わずかな期間での判例変更であること.さら に.その変更の動機も、学説からの反対が強かったとはいえ、同じ裁判官の変説改論によるものではなく.定年退宮       ︵5︶ のために比較的多数の裁判官の交替があったからであって.その判決理由としては別に濤新しいところはなく、要す るにその多数意見は前回の昭和三七年大法廷判決における少数意見をまとめたものにすぎないという点で.判例変更          ︵6︶ の妥当性が聞題とされた。  このようにして.制限超過利息の元本充当の肯否については解決をみたのであるが、さらに、元本充当説の立場に たって、制限超過利息が支払われた場合、その超過部分が元本の弁済に充当されたとしても、その結果計算上ある時       ゆ  ぽ  ぽ  ゆ  ゆ  ぽ 点において元本が完済されたことになるにかかわらず.その以後に支払われた金額を.不当利得として返還を請求す

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ネ ゼ ぽ ヤ ヤ ペ ネ マ ることができるか、という問題がつぎに生じた.この問題に対して最高裁判所は、昭和四三年二月二二β、大法廷 判決︵判例時報五三五量二頁︶によって一二対三の多数で肯定するにいたった。しかも、この判決における反対意見 ︵横田︵正︶・入江・城戸の三裁判官︶はいずれも非充当説の立場︵したがって返還請求の問題ははじめから生じない︶からの ものであって、充当説をとる裁判官は返還請求を認めることに意見が一致したことが、注目された。       ︵7︶  すでに現行法制定において疑義をもたれていた一条・四条の各二項について、判例は、右のようにその適用範囲を いっそう狭める解釈をとって、利息制限法の根本精神である債務者保護の理想を一段と押し進めているのである。 ︵i︶ かつての学説は、むしろ七〇八条但書による肯定が支配的であったがー学説や判例については、前田耕造﹁利息の   制限﹂契約法大系皿三九四ー五頁、森泉章・注釈民法㈲四七頁以下参照。 ︵2︶ 旧法の下での判例理論は、任意に支払った以上、制限利率にょる計算のやり直しの主張ができないとするから、元本   への充当は問題とならなかったといえる。これに対して、学説では、返還請求ができるため、当然残存元本への充当請   求は肯認されることになるー石川利夫﹁任意に支払った制限超過利息の残存元本への充当請求をめぐる判例の転回﹂   判例評論七六号九一頁、前田・前掲三九七ー八頁参照。 ︵3︶ 下級審は一般に、高利の場合にかぎって肯定し、比較的低利の場合には否定説をとっていたようであるーー判例につ   いては、前田・前掲三九九⋮四〇〇頁、石規・前掲九二頁、加藤了﹁任意に支払った利息制限法超過利息の元本充当を   めぐって﹂司法研修所創立20周年記念論文集一巻一四五−六頁参照。 ︵4︶ 学説の詳細は、石州・前掲九二頁、加藤・前掲州五五ー六頁参照。 制限超過利息の効力をめぐって       五

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東 ︵5︶ ︵6︶ ︵7︶ 洋法学       六  昭和三七年大法廷判決で非充当説をとった九裁判官のうち七人が退官し、他方.充当説をとった五裁判官のうちでは 一人が退窟したにすぎない。  州井健﹁利息制限法超過利息と元本充当﹂ジ甑リスト基本判例解説シリーズ4罠法の判例一五九頁.同﹁判例変更の 限界﹂北大法学論集一七巻四号五七九頁以下参照.  非充当説をとる学説は.これを立法のミスとし立法上の解決を要求されつつ.解釈論としては充当否定がやむをえな いとされる紛である.礪村信雄﹁利息翻限法批判し畏商法雑誌三九巻麟・五・六畢闘七二頁.岡﹁債務懸が任意に支払 ウた麟憲制限法所定分制限を斗鑑る利懲・損害金は購然鴬本紅充麟され嫌か﹂民商法雑誌五二巻六響九〇三頁蕉と紅九 〇六ー八頁参照.川井・前掲も瞬じ立場である.なお.加藤∴隈掲一五六、頁参照. ㎜ 

糊㎜超過利息の元本充当をめぐって

 そこでまず.任意に支払われた制限超過利息・損害金の超過都分を残存元本に充当すべきかどうかの問題について. その肯否の論点は右の昭和三七年大法廷判決と昭和三九年大法廷判決にほぼ集約的にあらわれているため、両判決を 中心にその論点を検討していこう。 ① 元本充当肯否の論点  この間題は、前述したように、現行法が、旧法の﹁裁判上無効﹂を改め、制限超過利息・損害金を﹁その超過部分 につき無効﹂ ︵一条・四条の各一項︶とする一方、任意に支払った超過部分の ﹁返還を講求することができない﹂ ︵同

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条の各二項︶としたことに起因している。それゆえ、この問題の解決は、 @ 一条・四条の各一項にいう﹁無効﹂ をどう解するか、 ⑥ そしてそれとの関連において同条の各二項にいう返還請求の拒否をどう解するか、にかかっ てくる。この点が論議の中心となることはいうまでもないが、さらに、現行法が利息の天引について制限超過天引を ﹁元本の支払に充てたものとみなす﹂という規定を新設したことも刺激となって充当説が生じたのであるため、 @ この二条の趣旨をどう解するかについても問題となる。その他、④ 元本充当を認めるとすれば、残存元本の存否に よって不均衡が生ずるのではないか、という批判が非充当説から出されている。そして結局、元本充当肯否の対立の 分岐点は、@ その論理構成の上において、利息制限法の性格ないし立法趣旨をどのようにみるか︵債務者保護と金融 梗塞をどうみるか︶の相違に帰結するものといえる。⋮以下、各論点を検討していく。  ② 一条・四条の各一項にいう﹁無効﹂の理解  この問題の中心は、旧法の﹁裁判上無効﹂を現行法が単に﹁無効﹂と改めたことをどう評価するかということであ る。  @ この点について、非充当説は、一条・四条の各二項の返還請求の拒否の点を重視して、これを内容的に変更が あったものとみず、むしろ旧法時代の判例理論を立法化したものと理解している。すなわち、超過利息を裁判上請求 することはできないとしても、超過利息契約そのものが法律上当然に無効となるのではないから、超過利息といえ ども、,債務者が任意に支払った場合は、その充当は有効であるという自然債務的な考え方にたつ。    制限超過利息の効力をめぐって       七

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   東洋法学       八

 非充当説をとる昭和三七年判決は、その第一の理由づけとして次のようにいっている。    ﹁金銭を目的とする消費貸借上の利息又は損害金の契約は、その額が利息制限法一条、四条各一項にそれぞれ   定められた利率によって計算した金額を超えるときは.その超過部分につき無効であるが、債務者がそれを任意   に支払ったときは、その後において.その契約の無効を主張し.既にした給付の返還を請求することができない   ものであることは.右各法条の各二項によって明らかであるばかりでなく.結果において返還を受けたと同一の   経済的利益を生ずるような.残存元本への充当郵許されないものと解するのが相当である.﹂  同判決における河村︵大︶裁判官の補足意見︵下飯坂裁判官はこれに岡調︶の中にも、 ﹁改正法も右︹旧法時代2 判例によりつちかわれた慣行を更に強化し明文化したものと見られる。従って同条の超過部分の任意支払を債務の弁 済と解することはできないにしても、少なくともその超過部分の任意支払を債権者に帰属させ.これが利得の保有を       ︵8︶ 許したものと解せられる﹂ということがみられる。  学説の中にも.立法論としては超過利息の返還を認めるべぎであると主張しつつ.解釈論としてはこの立場をとる     ︵9︶ 少数説がある、  ㈲ それに対して.充当説は、右の改正を積極的に評価して.超過利息は実体法上無効であり.したがってその充 当は有効となることがないという点を強調する。すでに層法時代において学説は.﹁裁判上無効﹂を﹁法律上無効﹂ と解していたのであるが.それが単的に﹁無効﹂と改正されたことによって、より明確になったといえる。  昭和三七年判決における奥野薩五鬼上裁判官の反対意見は、そのことを次のようにいっている。 ﹁殊に﹃裁判上無

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効﹄とした旧利息制限法の規定が﹃裁判外は有効﹄であると解せられる余地があったのに反して、本法は﹃超過部分 につぎ無効﹄と規定し、裁判外であると裁判上であるとを問わず常に無効であることを明白にしたのであるから、仮 令制限超過の利息を裁判外において支払っても常に無効の弁済であり、裁判外の任意の支払であるからといって有効 な弁済と解する余地はなくなったのである﹂。 そして、 ﹁それ故本条二項を創設したからといって、既に一条一項に よって無効とされている制限超過部分が有効な債務又は自然債務となり、これに対する弁済が有効になるものと解し たり、元本債務が残存する場合にもこれに対する法定充当を否定する趣旨と解すべき何らの根拠にもならないのであ る。そして元本の残存する限り制限超過部分の支払がこれに充当されるものと解しても、制限超過部分の返還を認め るのと同一結果になるものでないことは言うを侯たないところである﹂。同じく山田裁判官の反対意見にも、﹁旧利息 制限法が裁判上無効とするとしていたのを現行法が無効とするとしたのは、高利制限の理想を一歩前進したものと解 すべき﹂であるとして、積極的に評価されている。  このような昭和三七年判決における反対意見の基礎にたって、充当説を採用した昭和三九年判決は、その第一の理 由、、つけとして次のようにのべている。    ﹁債務者が利息、損害金の弁済として支払った制限超過部分は、強行法規である本法一条、四条の各一項によ   り無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じない。従   って、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局その部分   に対する指定がないのと同一であるから、元本が残存するときは、民法四九一条の適用によりこれに充当される    制限超過利息の効力をめぐって      九

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  東洋法学

 ものといわなければならない。﹂        ︵艶︶ これを支持する学説は多い。 一〇 ︵8︶ ︵嚢︶ ︵節︶  なお.昭和三九年判決における横磁︵正︶裁判官の反対意見︵入江・城戸裁判官が同調︶や石坂裁判官の反対意蒐も同 じ立場にマぢものである、  西村∴継掲民商法雑誌五二巻六簿九〇三頁.       一九頁・しかし・石 韓教授の属商法雑誌四七巻二号二四四ー五頁の座談会における発欝は.この立場にたちつつ充当を考慮きれている点が 注髄きれ悉・擁藤・前掲畷五一ー二頁および一五五頁の注︵憩︶参照。  加藤∴鑓掲一眼九頁の注︵亙︶.一五四頁の注︵7Y  ③ 一条・四条の各二項の返還請求の拒否に対する理解  非充当説は一条・四条の各二項の返還請求の拒否を重視する立場をとるが.同条の各一項の﹁無効﹂の意味を実体 法上無効と解する充当説の立場からは.そのような無効の趣旨を貫いて.同条の各二項の趣旨をどう理解するかが間    ︵鴛︶ 題となる、  この点に関して、昭和三九年判決は比較的簡単にのべている、    一条・霞条の各二項は. ﹁制限超過の利息、損害金を支払った債務者に対し裁判所でその返還につき積極的に   助力を与えないとした趣旨と解する。﹂

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 この点については、昭和三七年判決における奥野縦五鬼上裁判官の反対意見で主張され、さらに昭和三九年判決に おける奥野裁判官の補足意見でくわしく強調されるところである。すなわち、﹁超過部分の債務は無効であり、不存 在であるから、超過部分の支払は非債弁済であり、本来ならば不当利得として、その返還を請求することができる筋 合であるが、法は萄も制限利率を超過する約定を禁止し、これが超過部分の支払を否定する建前を採っている以上、 債務者がこの禁止に違反して、敢て超過部分の支払をした場合に、これが返還請求を許容することは、法の禁止する 行為を保護する結果となり、法の目的に副わないことになるから、本条一条・四条の各二項において、債務者に対し てその返還の請求を認めないことにしているのである﹂とされ.しかし、さらに﹁法はこれがため、債務者に右超過 部分の支払を受領する正当な権限ありとして、これを保護しているのではない。飽までも、右超過部分は無効であり、 その支払は無効の弁済であることに変りはないのである﹂として、﹁従って、他に元本債務等の存在する限り、石弁 済は民法四九一条の原則に従い、それらに充当されることを禁止するものではないと解すべきである。けだし、債権 者にとっては右超過部分の支払は、もともと法律上の原因のない不当利得であるから、これを他の有効な債務の弁済 に充当されても、法律上何ら不利益を蒙るものではなく、他方右支払は債務者が債務の弁済としてなしたものであり ︵贈与等の趣旨で交付したものでないことは明白であり︶、従って他に弁済すべき元本債務が存在する限り、それら に対する弁済として充当されるべきであることは、前記民法の規定の明定するところであるからである﹂とのべられ   ︵鴛︶ ている。  学説においても、 ﹁無効﹂の趣旨を貫いて一条・四条の各二項の適用範囲を厳格に制限することを重視するものが    制限超過利患の効力をめぐって       一一

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   東洋法学      ご一

︵B︶ 多い。たとえば、我妻教授は、﹁私は・債務者が制限を受けるのは、文字通り返還を請求することだけであって。それ        ︵蝋︶ 以外においては、すべて﹃無効﹄の原期を貫くべきものと思う﹂とされている。  しかし・その処理についてはやや異った立場を示すものがある。昭和三九年判決における斉藤︵朔︶裁判官の補足 意見では・﹁裁判によって事を処理する場合には.間題の金額に関する限りにおいては.債権者・債務者いずれの側 からするも新規の出し入れをなさしめないで.その当時の金銭支払関係の現状をもとにして.高利の禁止という立法       ハ鴬︶ の羅的にかなった解挽をあたえるのが最も公平の理念に禽する措置である﹂とされヅ、いる、

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︵腫︶ (i5 ) 我妻教授も同様の立場といえようー!前掲五二頁.同﹁債務者は任意に支払った制隈超過利息の元本充当を主張しえ 前掲三九八頁参照。  我妻栄・新訂債権総論五二頁。したがって、返還以外の請求すなわち元本充当講求は認められることになる。前縢・ 息または損害金の任意支払と残存元本への充当﹂判例評論五〇号一〇頁等。  石本雅男﹁割限超過の利息支払をめぐる法律閲題﹂判例評論三〇号三頁.柚木馨﹁利息制限法所定の制限をこえた利  この補足意免をめぐつて、さらに閲題が生じてくることは.後述四ωを参照。なお.石川・前掲九五頁参照、  この問題は.ことに後述四における過払利息の返還講求に関連してくる問題である、 ないか﹂ジュジストニ五四号一八頁.同﹁債務灘は任意に支払った制限超過利患の元本充当を主張しうるしジ.瞳ジスト 三一四号一〇頁。 ④ 二条にいう超過天引の元本充当に対する理解

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 充当説を支える今一つの理由として、利息の天引について制限超過天引の元本充当を擬制する二条の趣旨を類推す る。したがって、二条の趣旨の理解が問題となる。  @ そのような主張に対して、昭和三七年判決は、その副次的理由づけとして二条の類推を否定している。    ﹁同法二条は、消費貸借成立時における利息天引の場合を規定したものであって、⋮⋮同法一条、四条の各二   項とは、おのずからその趣旨を異にするから、同法二条がその規定のような擬制を許すからといって、同法一条   ・四条の各二項も同一趣旨に解さなければならないとする理由とすることはできない。﹂  同判決の河村︵大︶裁判官の補足意見でも、 ﹁天引した超過利息を元本へ充当することにしたのは、現金の授受の ない名目的の元本と名目的の支払利息の双方を打消すことにしたものであって、実質的には消費貸借の成立を否定し たのと同一結果になるものである﹂ として、﹁同条は、金銭の授受を伴わない消費貸借の部分について、当事者の合 意と異なる充当を擬制した規定であるが、他方同法一条二項は、現実に金銭の授受が行なわれた場合の規定であっ て、両者は全く類似性をもたない事項である。従って前者に対する法則を後者に類推適用することは、類推解釈の限       ︵16︶ 界を逸脱するもの﹂として批判される。        ︵貿︶  非充当説をとる少数学説もこの点を批判する。  ㈲ 昭和三九年判決では、この点をその第二の理由づけとして挙げている。    ﹁本法二条は、契約成立のさいに債務者が利息として本法の制限を超過する金額を前払しても、これを利息の   支払として認めず、元本の支払に充てたものとみなしているのであるが、この趣旨からすれば、後日に至って債    制過超限利息の効力をめぐって      ニニ

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   東洋法学      葱

  務者が利息として本法の制限を超過する金額を支払った場合にも.それを利息の支払として認めず.元本の支払   に充当されるものと解するを相当とする。﹂  そしてこの点は・昭和三七年判決における奥野H五鬼上裁判官の反対意見の主張に詳しく.﹁この理は仮令利息の 天引もしないで借主が一応元本金額の交付を受け.即座に利息の前払をしたとしても、矢張り制限超過部分の利息の        ︵絡︶ 支払は元本の支払に充てたものとみなされるべきことは同様である。けだし.然らざればこの方法により容易に同条 の免脱を図ることができるか齢である.然難ば.後鑓に至今て制限超過部分の支払を残存元本の支払に充当する鳳と を否定しなければならない理由はない﹂とされ.﹁同条は制限超過の利息の支払が性質上元本に充当し得ること及び 菰れを元本に充当しても、制限超過部分の返還の誇求を認めないことと矛盾.抵触するものではないことを前提とし てこれを擬制しているものと解するのが合理的である﹂とされる。さらに.昭和三九年判決の奥野裁判官の補足意見 でも同じ趣旨をくり返されている.        ︵漁︶  一部の学説により有力に支持されている見解である. ︵欝︶ ︵鐸︶ ︵18︶ ︵B︶ 同じ立場から.昭和三九年判決における横繊︵正︶裁判密の反対意見がある。 西村・前掲民商法雑誌五二巻六号九〇三頁. かかる場合について、昭和三九年四月一五溝京都地判︵判例時報三七八号二七頁︶は二条の適用を認めている。 石本・前掲一頁.柚木・前掲二頁.森泉章﹁超過利息の法的性質について﹂民商法雑誌三四巻六号九一四頁等。

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⑤ 残存元本の存否による不均衡をどうみるか       ︵20︶ @ 昭和三七年判決は、その第二の副次的理由づけとして、次のような充当説の欠陥を挙げている。    ﹁利息制限法が、高利金融に対して経済的弱者である債務者を保護しようとの意図をもって制定されたもので   あるとしても、原判示の如く、その充当を、元本債権の残存する場合にのみ認めるにおいては、特定の債務者が  それによる利益を受け得るとしても、充当されるべき元本債権を残存しない債務老は、これを受け得ないことに   なり、彼此債務者の間に著しい不均衡の生ずることを免れ得ない。﹂ ㈲ これに対して、昭和三九年判決は、その第三の理由づけにおいて反論している。    ﹁債務者が任意に支払った制限超過部分は残存元本に充当されるものと解することは、経済的弱者の地位にあ   る債務者の保護を主たる目的とする本法の立法趣旨に合致するものである。右の解釈のもとでは、元本債権の残   存する債務者とその残存しない債務者の問に不均衡を生ずることを免れないとしても、それを理由として元本債   権の残存する債務者の保護を放擁するような解釈をすることは、本法の立法精神に反するものといわなければな   らない。﹂ 同判決の奥野裁判官の補足意見も、 ﹁かかる理由を以て右充当弁済を否定して、債務者の不利益に帰せしめること        ︵盟︶ は本末顛倒の論である﹂と反論されている。  この点については、さらに、前述③のとおりに、一条・四条の各一項の﹁無効﹂の趣旨を貫いて同条の各二項の適        ︵22︶ 用範囲を厳格に制限することにより、不均衡の生ずる場合は少なくなるであろう。

   制限超過利息の効力をめぐつて       一五

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( 20 東 ) ︵瓢︶ ( 鍛 ) 後述四と関連するところであるが.判例の方向はますます不均衡の生ずる場合を少なくしている。 されている。 例を挙げ.購様㊤結果に欺るこ菰を指摘され撫、そして﹁脚噺れは衡平の原購上建に正当﹂であ肇て.非難は当賂ないと とな鯵・矛盾であるとの反対論にも賛成できないし として.斑法五〇八条︵時効消滅した債権にょる相殺︶の暢合の おいて残存元本債務等に対する弁済としてその充当を認める紳︶とは.その返還の講求を認めるのと経済的に阿一の結果  奥野裁判官は.さらにつづけて、 ﹁超過部分の支払につぎ、一方において艶㌧れが返還の請求を否定しながら、他方に る﹂とされている。 義し民商法雑誌四七巻照号六六四頁は、 ﹁債権者の要求に属せず支払を拒否しえた強い債務者だけが得をする結果とな  昭和三九年判決の石坂裁判官の反対意見もこれに同調される。なお.西村信雄﹁利息制限法第一条第二項の友払の意

洋法学      一六

 ⑥ 利息制限法の性格・立法趣旨︵債務者保護と金融梗塞︶に対する理解  結局・右の見解の対立は.現行法の文理においていずれも必ずしも矛盾するものではなく、そのいずれをとるか は・本法の性格ないし立法趣旨を穐その解釈においてどのように考慮するかにかかっているといえる。       ︵23︶  @ 非充当説の立場からは、昭和三七年判決の河村︵大︶裁判官の補足意見において.﹁利息制限法が.債務者保 護を基調とし.兼ねて社会の経済秩序を維持するという目的の下に制定されたものであることに異論はない.しか し、借手が常に経済的弱者であると断定することはわが国庶民金融の実体に照らし到底承服できないところである﹂ とされ、 ﹁現在の金融取引の圧倒的多数を占める﹂生産資金の借入れの場合は﹁借手が必ずしも経済的弱者であると はいえない.すなわち借入金を生産資金に回して企業の利潤から利息を払うことができるからである。﹂﹁唯消費資金

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の貸付はその需要が概ね困窮に陥った者の借入れであって、その高利は苛酷な性質を帯びる場合が多いのであるか ら、本来は別に公の金融施策が望ましいことであるが、その実現の容易でない今貝においては、異種の性格をもつ消 費貸借を一律に規制するのは止むを得ないところであろう。﹂﹁立法者もにわかに強い統制を加えることは、決して金 融秩序を維持する所以でないとの結論に到達したものと思料される。然るに若しも今日の金融取引において、利息、 損害金の制限超過部分の任意支払を以って、元本へ充当したものとみなすにおいては、貸金業界に恐慌を来たし、金 融の梗塞を招来するおそれなしと何人が断言できるであろう﹂と主張される。        ︵蟄︶  同じ立場から、昭和三九年判決においても、横田︵正︶裁判官の反対意見は、 ﹁ことに、借主保護の理想に急な余 り、経済界の実情に余りにもかけ離れ、金融機構の整備、充実をまたないで、余りに厳格な規制を強行するときは、 金融梗塞という借主のためにならない結果又は闇金利の横行というような法律軽視の風を招来するおそれのあること も反省されなければならない﹂とされる。  そして、一条・四条の各一項と各二項との関係を、 ﹁同法は、利息等の最高基準を法定しながら、これを絶対的に 強行するという態度をとらず、旧利息制限法下においてすでに判例として確定されていた原則を法規に定着させるこ とにより、右制限に対する緩和策を併せ規定しており、しかもその緩和策の核心を債務者の任意の支払という点に置 いている。﹂したがって、﹁右制限法は、同法に規定する保護を受けるかどうかを債務者自身の意思にかからせ、債務 者が法による制限を敢て主張しないで、制限超過の利息等を任意に支払ったときは、裁判所としても、その意向にし たがうこととし、後日に至って債務者が法による保護を主張しても裁判所はこれに応じた是正措置を講じないこと︵蒸    制限超過利息の効力をめぐって       一七

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   東洋法学      一八

し返しをしないこと︶を明らかにしているものと理解されるのである﹂とされる。  ⑥ それに対して充当説をとる立場からは.昭和三七年判決の横田︵喜︶裁判官の反対意見では、﹁利息制限法は. いわゆる社会立法に属するもので.その根本の立法趣旨はなにょりもまず.経済的弱者の地位にある債務者を保護す ることにある﹂とその基本的立場を明らかにし、﹁他方で.金融の円滑を期することも必要ではあるが.経済的弱者 の保護という鷹的にくらべれば、第二次的のものといわなければならない﹂とされる.そして.﹁そうしてみれば. 利息制限を超過する部分については.経済的強者である債権者の利益のために、これを制限超過の利息に充当するよ りも.経済的弱者である債務者の利益のために.残存する元本の支払に充当する菰と菰そ、利息制限法の根本の立法 趣旨に合するといわなければならない﹂ということになる.そして.昭和三九年判決の補足意見でもくり返し強調され ている。この点を強調されるものとしては.昭和三七年判決の池田裁判官の反対意見も同様であり.同じく奥野舞五 鬼上裁判宮の反対意見にも.﹁積極説をとると高利貸が金融をしなくなり、経済的弱者の金融梗塞を来し.却って弱 者に不利となるというが.経済的弱者の金融については別途庶民金融等の社会政策的見地に基づく施策によって解決 すべきであって.本法の解釈によってこれを解決せんとするが如きは筋違いというべぎである﹂といっておられる。 これらの点は・昭和三九年判決の多数意見の第三の理由づけをなし︵⑤㈲参照図さらに斉藤︵朔︶裁判窟の補足意見で も指摘されているところでもある。いずれにせよ、充当説をとる立場の基本的な考え方であるといえる。  なお、昭和三七年判決での横田︵喜︶裁判官の反対意見では、立法の際の国会での審議において﹁政府委員は、く りかえして.元本が残存する場合には.利息制限を超過した部分は元本の支払に充当されるべきことを明言した。﹂

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︵第一九回国会衆議院法務委員会議録第二八号︵昭和二九年三月二六欝︶五頁、九頁参照︶        ︵25︶ 反対または異議も議員から述べられなかった﹂ということを指摘されている。 そして﹁これに対して、いかなる ︵23︶ 下飯坂裁判官もこれに同調される。 ︵忽︶ 入江・城戸裁判官も同調される。 ︵25︶ 石本雅男﹁利息制限法所定の制限をこえた利息又は損害金の任意支払と残存元本への充当﹂法律時報三四巻一〇号九   三頁、柚木・前掲一↓頁も、これに同調されている。

 ⑦総    括

 以上のように、両論の分岐は、結局、その理論構成というよりも、その論理解釈のために本法の性格ないし立法趣 旨をどの程度考慮に入れるかにかかっている、ということになる。  その点からいえば、本法がなんといっても経済的弱者の保護を目的とするものであり、金融梗塞のおそれについて        ︵26︶ も、広中教授の指摘されているように、現行法制定当時において、すでに各種の金融措置や社会保険制度も整備され つつあり、 ﹁結論的にいって、現行利息制限法は、高利貸資本の機能に対する肯定的評価を拒否するような施策ない し法制の整備の中におかれたものなのである﹂ といえる。したがって、現行法と旧法とでは.その背景や機能を異 にしているといえよう。その意味で、旧法時代の単なる判例理論の踏襲という形での解釈では、利息制限法の機能は もはや果しえなくなっていたといえる。

   制限超過利息の効力をめぐつて      一九

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   東洋法学      二〇

 そして.現行法制定後、ますます﹁そのような施策ないし法制の整備は.昭和三六、七年にはすでに確固たるもの となったといってよいよう﹂になっており. ﹁高利貸資本の機能に対する否定的評価を利息制限法の解釈の基礎にす        ︵蟹︶ えることを可能にする客観的条件が成立して﹂いたのである。  そのようにみてくれば.昭和三九年判決は妥当な帰結であり.むしろ昭和三七年判決が妥当性の判断において誤っ        ︵鰺︶ たがために.わずかな期簡における判例変更という感心できない結果が生じたと評価すべきであろう、 ︵窯 尋︶ (/へ

28欝

))

 広申・前掲参照、  広中・前掲ジ講リスト四一五号八七頁。 七、頁.同﹁利息制限法はどのような挫格のものか﹂驚法の墓礎知識二五頁以下とくにご一〇頁以下参照.  広中俊雄﹁潮隈超過利患のうち元本充当計算にょる元本完済後の分は返還を請求しうる﹂ジ講り熟ト四一覧号八六ー 四

過払利息の返還請求をめぐって

① 昭和三九年判決の残した問題 超過利息・損害金の元本充当肯否をめぐっては.以上のように、昭和三九年判決によって充当説をとることが明ら になったのであるが、しかし.この判決における補足意見︵奥野裁判官︶や反対意見︵横田︵正︶裁判官︶に触発され て.さらに検討されるべき間題として. ﹁@ 充当の対象となる債務は当該利息の元本にかぎらないのか. ㈲

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弁済期前のものはどうか、 @ 充当されるべき元本︵その他の債務︶が存在しない場合どうなるのか、など﹂が残   ︵29︶ ってくる。これらの問題は、一条・四条の各二項の理解にかかっており、債務者保護の目的にそう解釈として、どこ まで﹁無効﹂の趣旨を貫いて同条の適用範囲を厳格に制限できるかという問題であり、さらに﹁残存元本の存否によ って生ずる不均衡﹂という問題解決にも連らなるものである。  @にっいて、奥野裁判官の補足意見によれば、 ﹁数個の債務のある場合はまず債務者の指定した利息についての元 本に充当し、なお残余があれば他の債務に同法︹民法︺四八九条、四九一条により充当すべきものである﹂として認 められている。これに対して、横照︵正︶裁判官の反対意見では、﹁これらの債権のない場合との権衡を失するばか        ︵30︶ りでなく、計算関係を当事者の予想に反したきわめて複雑なものとする﹂として批判されており、石川教授も、﹁この    ヤ  ヤ  う  ヤ  ヤ      ヤ  ヤ  ヤ        ヤ  ヤ     マ  ヤ     ヤ  ヤ 点は、元利完済後は、一条二項の適用により返還請求できないという法理との関係上、当該利息の元本にかぎり充当 ヤ  ヤ  ペ しうるという理論が、連けいのとれた理解だとおもうが、なお検討すべき問題である﹂とされている。加藤弁護士 ︵綴︶ は、 ﹁計算関係の複雑化は別として同種の債務については肯定してよいのではないかと考える﹂とされる。したがっ て、別口の売買代金債務などには充当しえないことになる。  ㈲についても、奥野裁判官は、 ﹁弁済期前の元本債権に充当する場合には、弁済期までの制限内の利息を附して充 当すべきものと解する︵同法︹民法︺一三六条二項︶﹂として肯定されている。しかしこれに対しても、横田裁判官は、 ﹁これを認めるとすれば、法一条二項の規定はほとんど適用の余地のない無意味なものとなる﹂として反対される。 奥野裁判官も、 ﹁弁済期前の元本に充当するとすれば、超過部分の利息の返還の問題を生ずる場合は比較的すくない    制限超過利息の効力をめぐって       二一

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   東洋法学      一ご一

のであるが﹂とされつつ、 ﹁この点につぎ⋮⋮同二項の超過部分の返還請求の問題を生ずるのは、元利金を支払った 後に起る問題であることは.本法立案当局も始めから予定していたというべく.従って、右の如き関係にあるからと いって.同法一条二項の規定が無意味になるものとして超過利息の元本充当を否定する理由とはならないしとされて        ︵鋸︶ いる.石川教授もこの点に賛成される、  と樵ろで.@についてであるが.この問題がまさに.昭和四三年判決において閥題とな嚇た点であり.しかも大法 廷は.これを肯定し.過払となウた利息の返運請求を認めたのである。したがウて擁これによ嚇て@㈲の間題も同時 に解消する菰菰になるといえよ勢、 ︵鍛︶ ︵30︶ ︵瓢︶ ︵認︶ 石川・前掲九五頁.なお. 石川・前掲九五頁。 加藤・前掲一六〇頁。 石川・前掲九五頁. 撫藤・前掲一五九頁以下参照。  ② 昭和四三年大法廷判決  昭和四三年判決で間題となったのは悔債務者が超過利息・損害金の任意の支払を継続した場合に、超過部分が元本 に充当され.計算上元本が完済となったとき.その時点以後に支払った金額を不当利得として返還請求ができるか、 ということである。

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 @ この点に関しては、昭和三九年判決にも触れていないだけでなく、むしろ、元本債権の存在しないところに支       ︵33︶ 払われた利息・損害金の返還請求を認めないとする前提にたっていたものと解される。このことは、前述の﹁一条・ 四条の各二項の理解﹂ ︵三③参照︶からも、 ﹁残存元本の存否によって生ずる不均衡﹂が論議となったところ︵三⑤参       ︵3 4︶ 照︶からも、うかがわれる。ことに、昭和三九年判決における斉藤︵朔︶裁判官の補足意見や、同判決に対する我妻教       ︵35︶ 授の論評においては、明らかに否定的である。我妻教授は、﹁債務者が利息として支払った額が、利息制限法の最高 限に引き直しf超過部分は元本に充てたものとしてー計算しても元本が残れば、それだけは請求しうることにつ        ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  も  ヤ  ヤ  ヤ     ヤ  ヤ     ヤ        ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ  ヤ    いては、異論はない。また、その計算の結果が債務者の過払となっても、返還請求はできないことについても疑問は ヤ  ヤ ない﹂と明言されている。  さらに、前述①においてみたように、一条・四条の各二項の適用範囲をきわめて厳格に狭めようとされている奥野 裁判官ですら、この点に関してのみは否定的である。しかし、全く逆の立場から、奥野裁判官に反対される横田︵正︶ 裁判官が、奥野裁判官の論をすすめて、﹁元本の残存するかぎり超過部分は当然に元本に法定充当されるとすれば、 元利金を完済した後に起る問題は、超過部分についての不当利得の問題ではなく、元本の過払い、すなわち元本につ いての不当利得の問題に過ぎないのであるから、結局、法一条二項及び四条二項の規定は無意昧な規定というほかな いのである。そして、元本についての不当利得の返還請求の制限については、利息制限法には別段の規定がないので あるから、民法七〇五条の規定が適用されることとなるであろう﹂ と、まさに昭和四三年判決と同趣旨のことを指摘 されておられることは、興味深いことである。    制限過超利息の効力をめぐって       二三

(25)

   東洋法学      一西

       ︵36︶  ㈲ 昭和四三年大法廷判決は、その点を次のように表現している。    ﹁思うに、利息制限法一条・四条の各二項は、債務者が同法所定の利率をこえて利息・損害金を任意に支払った   とぎは、その超過部分の返還を請求することができない旨規定するが隔この規定は.金銭を目的とする消費貸借   について元本債権の存在することを当然の前提とするものである。けだし.元本債権の存在しないところに利息・   損害金の発生の余地がなく、したがウて.利息・損害金の超過支払とい養こともあ輪得ないからである.この故   に.消費貸借上の元本債権が既に弁済によって消滅した場合にはもはや利息・損害金の超過支払ということはあ   りえない。    したがって.債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し帳その制限超過部分   を元本に充当すると.計算上元本が完済となったとき、その後に支払われた金額は、債務が存在しないのにその   弁済として支払われたものに外ならないから.この場合には陶右利息制限法の法条の適用はなく.民法の規定す   るところにより.不当利得の返還を講求することができるものと解するのが相当である。﹂  このようにして.一条・四条の各二項の適用範闘をさらに狭める解釈によって.昭和三九年判決の充当説のもって いた残存元本存否による不均衡論を克服し.債務者保護の立場から. ﹁無効﹂の趣旨をいっそう押しすすめることに なった。  しかも、前述したように.この判決の反対意見はいずれも非充当説の立場からのものであって、充当説にたつ裁判 官が一致して返還講求を認めたことが。注目される。

(26)

︵3 3︶ ︵34︶ ︵3 5︶ ︵36︶  昭和三九年判決以後に出た、昭和四一年一月二七日東京地判︵判例時報四四九号六一頁︶は、﹁同法所定の制限内の 金額は、同法第一条二項第四条二項の法意に照し、やはり借主において返還を請求しえないと溜3るを相当とする﹂ として、元本充当後に支払われた制限内の利息の不当利得返還請求を否定する。1ー右二項は﹁超過部分﹂の返還請求 ができないとするのであるから、誹隣嚇の部分は右の規定の対象にならないとする考え方も考えられる。野田宏﹁過払 利息の返還請求﹂ジュリスト四一五号九〇頁参照。  前述三③参照。なお、宮田信夫﹁利息制限法の制限をこえる利息・損害金は当然に残存元本に充当されるか﹂ジュリ ス上三四号一七頁参照。  我妻・前掲ジュリスト三↓四号一〇頁。  同旨のものとして、瀬戸正ニコ兀本完済後支払った利息・損害金﹂判例タイムズ一九〇号九一頁、昭和四三年八月二 九顕横浜地裁川崎麦部判︵金融法務事情五二三号三〇頁︶がある。なお、同じく谷口知平﹁制限超過利息が、元本に充 当されたため元利金が完済されたことになる時点以後に支払われた金員と不当利得の成否﹂法律時報三八巻↓二号九〇 頁も返還請求を肯定されるが、ただ民法七〇五条の非債弁済ではなく七〇八条の不法原因給付の問題として解決すべき ものとされている。  ③ 一条・四条の各二項の適用範囲  ところで、右のような解釈にたてば、一条・四条の各二項の適用される場合としては、どのような場合があるのか         ︵3 7︶ が問題となってくる。  @ まず形式的に考えれば、計算上債務者の何回かの支払の途中のある回の支払額の一部の充当でもって完済とな った場合に、その回の支払の残余額が問題となる。これは、次回以降の支払分と異なり、支払の前までは元本がとに     制限超過利息の効力をめぐって       二五

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   東洋法学      二六

かくも残存していたのである。しかし、支払われた超過部分は元本が残存するかぎり本来はこれに充当されるべきで あるところ、超過部分の一部の充当によって元本を消滅させてしまった後には.残余の部分は.その充当計算をする とぎに・すでに充当されるべき対象がなくなって.宙に浮いてしまうのであって、その関係では、元本のまったくな いところに支払われた場合となんら異ならないことになる。したがって.この場合の過払額も元本完済後の支払とい ってよいであろ蔭。実質的にいっても.この場合について債務巻の保護を異にする理由はないといえる.  ㊨ またそのよ携に考えれば穐元本および利息・損害金をそれぞれその旨を指定して一括して支払った場合であゆ ても・その制限超過部分について同様に解されることになるであろう。  @    一条・四条の各二項の薩接の適用が考えられるのは、さきに元本を弁済しヅ、利息・損害金債権だけが残 存しているという稀有の場合だけになる.したがって.この規定の趣旨は.主として.元本債権が残存する間は、債 務者が・その支払った超過部分を元本に充当することを主張しないで.現実の返還を講求したり.その返還請求権が あると主張して他の債務と相殺したりすることを許さない、という程度の消極的なものでしかすぎないことになるで あろう。 ︵欝︶ 以下の考察は. もつ.裏ら嘱 野懸・前掲九一頁に依る。

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五 む す び  本来、一条・四条の各二項は、制定の経緯においてすでに疑義をもたれていたものであり、高利制限立法としては       ︵38︶ いわば完成への途上︵過渡期︶にある規定ということができる。そのために、利息制限法の根本精神である債務者保護の 必要性ないしはそのようにできる基礎的条件がましてくるにつれて、右の規定が解釈によって事実上ほとんど骨抜き にされてきたものというべぎであろう。その点では、これは立法的手段による解決︵右の規定の削除︶によるべきであ       ︵3 9︶ ろうが、それはすでに昭和三七年判決後においても主張されているにもかかわらず、立法措置はなされていないので        ︵切︶ ある。立法措置がそれほど簡単なものでない以上は、このような解釈による解決もやむをえないものであろう。  さらに、昭和四三年判決にいたる過程には、利息債権に関係の深い代物弁済予約法の分野での、昭和四二年一一月 一六貝の第一小法廷判決︵民墓二巻九号一西三〇頁︶における清算型の導入を宣言する判決があり、このような金融 取引の領域において経済的弱者である債務者保護の理想に徹しようとする、裁判所の基本的な志向は、︵今後さらに 進められていくであろう︶大いに注目されるべきである。  しかし他面、金融取引の領域における弱者の保護のためには、なにょりもまず、社会法的な庶民金融や中小商工金 融・農林漁業金融の制度ないし社会保障制度全般のいっそうの充実が進められることが必要であることは、いうまで  ︵戯︶ もない。    制限超過利息の効力をめぐつて       二七

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(  (

3938東

)  ) ︵鱒︶ ハ藏︶ 洋法学       二八  広中・前掲民法の基礎知識一二三頁参照。  西村・前掲民商法雑誌三九巻四・五・六号四七〇頁.長利正己﹁任意に支払われた法定の綱限超過の利息・損害金は 残存元本に充当されるか﹂法曹時報一四巻八号ご∋二頁、川井・前掲ジ訊リスト罠法の判例一五九頁、同・前掲北大 法学論集一七巻四号五七九頁以下参照。  西村信雄随筆罵解釈賑で困った話﹂法学セ、・・ナー↓〇二号九七頁の中に﹁法律をつくるものは形式的には立法機関で ある。しかし・実質的には法の解釈は法を創造する作用を含んでいる﹂とある。  広巾・繭掲ジ黒婆スト縢一五号八八頁.罰・前掲属法の墓礎知識ご一三頁参照.        ︵本学助教授︶

参照

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