<研究ノート>社会問題としての監査(一)
著者
石井 薫
著者別名
Ishii Kaoru
雑誌名
経営論集
巻
32
ページ
31-77
発行年
1989-01-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005737/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja社 会 問 題 とし ての監査(一)
石 井 目 次I はじめにn 「監査」関連記事の調査 Ⅲ 社会問題としての監査の問題 領域 Ⅳ 1 2 3 4 結 自治体監査制度(以上本号掲載) 政府・国鉄・特殊法人等の監査 企業監査制度 病院その他の監査 び 薫 31 I. は じ め に 本稿は「社会問題 におけ る監査 と監視一監視の構造同一」 の続編 の1 つ に 相当する1)。 前稿 では監査 から監 視に視線を転移す るこ とに より, 監査の分 野 と隣接分野 との相互浸透を 試みる ことに関心がめった。本稿では,監査分 野に踏みとど まって監査 と社会 との 係わ りを直視し ,監 査社会学的研究に向 け ての1 つのアプ=z −チを 提示し たい。伝来 の会計学からの脱皮を めざす こ の ような試みは 「社会問 題 とし ての会計」 で意図し た会計社会学的研究2)と 相侯って,会計デ ィシプリソと隣接分野との相互浸透をぱかる うえ で不可避 の作業のように 思われ る。 筆者は目下,社会問題 におげ る会計・監査・監視等0 概念の実証 的な研究 を通じて,会計・監査分野 と隣接 分野の相互浸透をめざす一連 の研 究に取 り 組んでい る。本稿はその ような研 究プロセスの1 つの局 面に位置づけられ る ものであ り,その ような広い文脈 で本稿の意図を 理解し ていただ きたい と念 じ ている。n. 「監査」関連記事の調査1. 朝日と日経のデータ・ベースニ 本節では,監査が社会問題 とどの程度係わ ってい るか ,その現状をみるこ とを 意図し ている。1979年1 月1 日以降 の朝 日新 聞,毎 日新 聞,読売新聞, 日本経済新聞 の4 紙を対象に,「監査」 とい う用語が見 出しで 使用された記 事を調 査し た。ただし朝日新聞の1985年1 月1 日か ら1987年12 月31 日迄の3 年間 と日本経済新聞の1983年1 月1 日から1987 年12 月31 日迄 の5 年 間につい ては ,それぞれの新聞のデ ータ・ベ ースに依拠した ので,見 出し記事だけ で な く,記事 全文 で監 査とい う用語が使用された ものもと りあげ ている。 先 ず朝日新 聞の1985年 ∼1987年 の3 年 間について,監査 に関する記事から みてみ よう。 朝 日新 聞のデ ータ・ベ ースに よると,1985 年 には,記事全文 で 監査は91 件 ,その内見出し記事で監査は22 件,1986 年には,記事全文で監査 は104 件,そ の内見出し記事で監 査は12 件,1987 年には,記事全文 で監査は105 件,その内見出し記事で監査は10 件であ った 。1985 年 ∼1987年 の3 年間では,見 出し記事44 件,記事全文300 件であ り, 記事全文 におけ る 見出し 記事の 比率は14.1%, またこの比率 の逆数であ る 「記事 全文対 見出し 記事」 は6.8であ り,これは見 出し記事 の6.8 倍が記事全 文 の中 で使用さ れているこ とを示している (第1 表 参照 )。 そこで見出し記事で「監査」 とい う用語が使用される文 脈をチ ェックした ところ,次の4 つの領域に分類できることが 明らかになった。第1 は,地方 自治体の監査,第2 は政府機関・国鉄の監査,第3 は企業 の監査,第4 はそ の他で,病院・交通事故の監査である。 見出し 記事44 件の内訳は,第1 の領 域が11 件(監査委員制度7 件,住民監査請求4 件),第2 の領域が8 件(政府 表1 「監査関連記事」 (朝日新聞1985 年∼1987年) 1985 1986 1987 計 見出し記事 22 12 10 44件 記 事 全 文 91 104 105 300件 比率(見出し対全文) 14.7% (全文対見出し) 6.8倍
社 会問題 として の監 査( 一)33 表2 「 企 業 監 査 」 関 連 記 事 ( 日 本 経 済 新 聞1983 年 ∼1987 年 ) 1983 1984 1985 1986 1987 計 見 出 し 記 事 13 30 25 2 12 82件 記 事 全 文 18140l 39 7 21 125 件 比 率 ( 見 出 し 対 全 文 ) / 67% 二 ( 全 文 対 見 出 し ) 1.5 倍 機関2 件,国鉄6 件 ),第3 の領 域が11 件(企業監査制 度5 件, システム監査3 件,内部監査2 件,中小会社1 件),第4 の領域が14 件(交 通事故10件, 病 院4 件) であった。 次に日本経済新 聞のデ ータ・ベ ースについてみてみよう。ここ では「監 査」 はなく,「企業監査」,「内部監査」に限定してみてみよ う。「企業 監査」と「内 部監査」 の合計では, 次の ような1983 年以後のデ ータが得られた 。すなわ ち1983年 ,記事全文18 件,内見出し記事13件,1984 年, 記事全文40 件,内見 出し記事30件,1985 年,記事全文39 件,内見出し記事25 件,1986 年 ,記事全 文7 件, 内見出し 記事2 件,1987 年,記事全文21 件,内見出し 記事12件 とな ってい る。5 年 間の合計では,見出し記事82件,記事全文125 件 であ り,記 事全文 におけ る見 出し 記事の比率はcn % またこの比率の逆数であ る「記事 全文対見出し記事」 は1.5倍 であ り,これは見出し記事 の1.5倍 球記事全文 分 中で使用されているこ とを示し てい る(第2 表 参照 )。(なお この うち「内 部 監査」 については,1983 年,1986 年,1987年 の記事衆文 で各1 件 がみられる だけで,5 年間の合計で見出し記事o 件,記事全文3 件 にすぎない 。) そこで見出し記事 で「監 査」 とい う用語が使用される文脈をチ ェックした ところ,経済専門紙 の 日経ては前述の朝 日新 聞に関してみた4 つ の領域の う ちの第3 の領域(企業 の監 査) に集中してい るこ とが明らか になった。すな わち見出し 記事82件 の うち ,第2 の領域の国鉄の監査が6 件あ るだけ で, 他 の76件はす べて第3 の領域 の企業 の監 査に係わるものであった。 ちなみにそ れら「企業監査制度」76 件め内訳ぱ,監査法人23 件,会計監査15件 ,中小会 社の簡易監査n 件, 外部監査4 件,二 重監査4 件,監 査報告(書)4件,監査 手 続,内部監査, 業 務監査各1 件 であった。(なお, 日本経済新聞 におけ る
「 監 査」 の 見 出 し 記 事9 ヶ年 の調 査 結果 につ い て は 後 述 す る 。)2. 主要4 紙の見出し記事調査 犬 朝 日新 聞 と 日本 経 済新 聞 に よる 「監 査 」 関 連 記 事 の デ ータ ・ サ ービ スで は, ( 朝 日新 聞 は1985 年 以 後 , 日本 経 済新 聞 は1983 年 以 後 に ), デ ータの 収 集が 限 ら れ る 。 そ こ で 朝 日新 聞, 日 本経 済新 聞 の 他 に毎 日 新 聞 , 読 売 新 聞 の4 紙を 対 象 に , 毎 日新 聞 と読 売 新 聞 は1979 年 か ら1986 年 の8 年 間 に, 朝 日新 聞 と 日 本 経 済 新 聞 は1979 年 か ら1987 年 の9 年 間 に 拡 大し て , そ れ ぞ れ の縮 刷 版を 利 用し て ,「監 査」 の 見出 し 記事 を 調 査し た 。そ の 結果 ,「監 査」 の見 出し記 事 とし て ピ ッ ク ア ップ さ れた も の は, 朝 日新 聞198 件 , 毎 日新 聞136 件 , 読売 新 聞202 件 , 日本 経 済 新 聞254 件 の 総計790 件 であ った 。 に れ ら の 調 査件 数 は 必 ずし も網 羅 的 では な い が , お お よそ の傾 向 は 把 握 で き る であ ろ う。)4 紙 の 各 年 度 の内 訳 に つ い て は (第3 表 )を 参照 さ れた い 。(朝 日新 聞 の1985 年 ∼1987 年 の 件 数 は, 朝 日新 聞 の デ ータ・ ベ ース に 依 拠 し て い る。 日本 経 済新 聞 の1983 年 ∼1987 年 の件 数 は , 日本 経 済 新 聞 の デ ー タ ・ ベ ー スに よ る前述 の 「 企業 監査 」 に 縮 刷 版を 利 用し て 入手 し た 記 事を 追 加し て い る )。 主 要4 紙 の 「監 査」 見 出し 記 事 の調 査件 数 は790 件 であ る が , そ の うち729 件 を ,(1)自 治 体監 査 制 度に2 )政 府 ,国 鉄, 特 殊 法人 等 の監 査, (3)企業 監 査 制 度, (4)病 院そ の 他 の監 査 の4 つ の 領 域 に分 類 す る こ とが■Vき た 。 内訳 は 朝 日 新 聞188 件 , 毎 日 新 聞124 件 , 読 売 新 聞191 件 , 日本 経 済 新 聞226 件 で,重 要 で な い 記 事 は省 い た た め 分 類件 数 は 調 査 件数 よ り61 件 少 な くな っ てい る 。以 下 主 要4 紙 の こ れ ら の「監 査」の 見 出し 記 事729 件 の 分 類 結果 を 順 次 みて い こ う。 表3 主要4 紙の「監査」見出し記事の調査件数 (1979年∼1987年)
㈲9
1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 計 朝 日 新 聞 29 19 22 39 29 16 22 12 10 198 件 毎 日 新 聞 23 21 1リ2719 14 15 5ノ
136 件 読 売 新 聞 46 22 1932 28 30 17 8ノ
202 件 日 経 新 聞 4122 24 17 33 54 38 13 12 254 件 計 139 84 77 115 109 114 92 38 22 790 件社会問題としての監査(一)35 ① 朝日新聞 分類件数188 件の内訳は次の通 りである。第1 の「自治体監査制度」 の領 域に係わるものは,監 査委員制 度等23件,住民監査請求52 件の計75 件(40% ) であった。 第2 の「政府,国鉄,特殊法人等の監査ト の領域 に係わ るものは, 政府機関8 件,国鉄33 件,特殊 法人等10 件 の計51 件 (27%)であった。 第3 の「企業監査制度」の領域 に係わ るものは,会計士監査16 件,監査役・中小 会社・商法改正10 件,内部監査 ・システ ム監査8 件の計34 件 (18%)であっ た。第4 の「病院その他の監 査」 の領域に係わるものは,病 院15件,交 通事 故8 件,原発2 件,国際関 係3 件 の計28 件 (15%)であった。 ② 毎 日新聞 分類件数124 件。の内訳 は次の通 りであ る。第1 の「自治体監査制度」 の領 域に係わるものは,監 査委員 制度等9 件 ,住民監査請求53 件の計62 件(50 % ) であった。第2 の「政府・国鉄・特殊法人等の監査」の領域 に係わ るものは 政府機関4 件,国鉄16 件,特殊 法人等8 件 の計28 件(23%)であった。第3 の「企業監査制 度」 の領域 に係わ るものは,会計士監査7 件,監 査役・中 小 会社・商法改正4 件, システム監査1 件の計12件 (10%)であ った。第3 の 「病 院その 他の監査」 の領域 に係わ るものは,病 院11件,交通事故5 件,原発4 件,国際関係2 件 の計22 件 (i-o%) であった。 ③ 読売新聞 二 分類件数191 件の内訳 は次の通 りである。第1 の「自治体監査制度」 の領 域 に係わるものは,監査委員制 度等25 件,住民監査請求66 件の計91 件(48% ) であった。第2 の「政府・国 鉄・特殊 法人等の監査」の領域に係わ るものは, 政府機関5 件,国鉄17 件,特殊法人等6 件の計28件(15%) であった。第3 の「企業監査制度」 の領域に係わるものは,会計士監査18 件,監査役・中小 会社・商法改正23 件, システ ム監査3 件 の計44 件(23%) であ ったよ第4 の 「病院その他の監 査」の領域 に係わ るものは,病院13件,交通事故5 件, 原発4 件,国際関 係等6 件 の計28 件 (15%) であ った。 ① 日本経済新聞 分類件数226 件の内訳は 次の通 りであ る。第1 の「自治体監査制度」 の領 域 に係わるものは,監査委員制 度4 件,住民 監査請求12 件の計16件 ('To ) であった。第2 の「政府 ・国 鉄・特殊 法人等 の監査」 の領域に係わるものは, 政府機関5 件,国鉄21 件,特殊法 人等6 件の計32件 (14%) であ った。第3
の 「 企 業 監 査 制 度 」 の 領 域 に 係 わ る も の は , 会 計 士 監 査79 件 。 監 査 役 ・ 中 小 会 社 ・ 商 法 改 正72 件 , 内 部 監 査 ・ シ ス テ ム 監 査12 件 の 計163 件 (・inO/) で あ っ た 。 第4 の 「 病 院 そ の 他 の 監 査 」 の 領 域 に 係 わ る も の は , 病 院6 件 , 交 通 事 故2 件 , 原 発2 件 , 国 際 関 係5 件 の 計15 件 (7 % ) で あ っ た 。 こ れ ら4 紙 の 各 領 域 別 合 計 件 数 と 構 成 比 は 次 の 通 り で あ る 。 第1 の 「 自 治 体 監 査 制 度 」 の 領 域 に 係 わ る も の は 監 査 委 員 制 度 等61 件 , 住 民 監 査 請 求183 件 の 計244 件 (33 % ) で あ っ た 。 第2 の 「 政 府 ・ 国 鉄 ・ 特 殊 法 人 等 の 監 査 」 の 領 域 に 係 わ る も の は , 政 府 機 関22 件 , 国 鉄87 件 , 特 殊 法 人 等30 件 の 計139 件 (19 % ) で あ っ た 。 第3 の 「 企 業 監 査 制 度 」 の 領 域 に 係 わ る も の は , 会 計 士 監 査120 件 , 監 査 役 ・ 中 小 会 社 ・ 商 法 改 正109 件 , 内 部 監 査 ・ シ ス テ ム 監 査24 件 の 計253 件 (35 % ) で あ っ た 。 第4 の 「 病 院 そ の 他 の 監 査 」 の 領 域 に 係 わ る も の は , 病 院45 件 , 交 通 事 故20 件 レ 原 発12 件 , 国 際 関 係 等16 件 の 計93 件 (13 %) で あ っ た 。 ・4 。11 第4 表 は , 以 上 の 結 果 を 一 覧 表 に し て 比 較 対 照 し た も の で あ る 。 そ こ で 幾 つ か の 特 徴 が 明 ら か と な る 。 第1 に ,「 監 査 」 見 出 し 記 事 の4 つ0 領 域 の 分 類 比 に 関 し て , 朝 日 , 毎 日 , 読 売 の3 紙 は ぽ ぼ 同 じ 傾 向 と な っ て い る 。 読 売 新 聞 は 件 数 に お い て 最 も 自 治 体 監 査 制 度 の 問 題 を と り あ げ て い る こ と や , 毎 日 新 聞 は , 企 業 監 査 制 度 を そ れ ほ ど と り あ げ て い な い 等 の 違 い は あ る も の の ,3 紙 の 各 領 域 別 合 計 件 数 の 構 成 比 は , そ れ ぞ れ の 構 成 比 と 近 似 し て い る 。 す な わ ち , こ れ ら3 紙 で 「 監 査 」 が 見 出 し 記 事 で 使 用 さ れ る 場 合 , お よ そ(1)自 表4 主 要4 紙 の 「 監 査 」 見 出 し 記 事 の 分 類 比 較 ト ▽ (1979 年 ∼1987 年 ) 朝 日 毎 日 読 売 月 経 計 〔1〕 自 治 体 監 査 制 度 75(40%) 62(50%) 91(48%)(7 % )16 244(33%) 〔2〕 政 府 ・ 国 鉄 ・ 特 殊 法 人 等 の 監 査 51(27%) 28 (23%) 28 (:15%) 32(14%) 139 (19%) 〔3〕 企 業 監 査 制 度 34(18%) 12 (10 %) 44(23%) 163(72%) 253(35%) 〔4〕 病 院 そ の 他 の 監 査 28(15%) 22 (18%) 28 (15%) 15 (7 %) 93(13%) 計 188 124 191 226 729件
社会問題としての監査(一)37 治体監査制度45 % バ2)政府・国鉄・特殊法人等 の監 査'?ri%強,㈲企業監査制 度20%弱,(4)病院その他の監査15%弱に近い比 率になる とい え よう。第2 に 経済専門紙の性格を持つ 日経においては,一般紙 の他の3 紙 と比較し て,極 めて異なる傾向がみられる。すなわち他の3 紙で比重 が最も大きい第1 の自 治体監査制度については7 %とかな り少なく,そ の代 わ り,第3 の企業監査 制度がnnO/ と圧倒的に多いことが特徴的といえ よう。 本稿 では,社会問題 と監査との 係わりについて,表層的なレ ベルでの現状 を,た とえ断片的 にでも提示することに焦点をあ ててい る。そ れ故理論 的分 析は続稿で試みる とし て,以下では上で提示し た4 つ の分類 にもとづい て, 新聞紙上で監 査 とい う用語が使用される文 脈を, できるだけ筆 者が着 色しな いで√列挙する よう試 みたことを付言し てお く。 Ⅲ.社会問 題として の監査の問題領域 1. 自治体監査制度 (1) 監 査 委 員 制 度 ① 制度改 革に係わる問題 このジ ャンルでは,監査委員制 度を 中心に, 自治体監 査制度全般にわたっ てとりあげ られてい る。先ず自治省を 中心とす る自治体監 査制度改革の動き を追ってみ よう。 社会党は「国 会が監査委員を任 命し ,国民 行政監査委員 会を設 置する」 と い う独 白の行 革案を まとめた(Y79-19) 。 自治省は, ヤミ給与, カラ超勤な ど地方自治体の「公費天国」 に対処す るため, 自治体の財務監査を職務とす る監査委員 制度の見直しを検討することにし た。現行の監査委員制度につい て,①資格,選任,職務権 限制度を洗い出す ,②国・地 方を通じた監視機構 の確立など根本的な検討を加え,自治体の自浄機能を 高め ようとい うもので ある(A80-1 )。 第18次地方制 度調査会は,自治体監査 制度を 強化するため, 監査委員制 度の見直しを 答申することにな り (N80-12 ), ヤミ給与問題を きっかけに,地方 自治体の監査制 度の整備につい て,なれあ い監査追放へ元 職員の委員 登用に歯止めをかけ るなど具体的な提言を 行な った(A80-18,M80-21,Y80-21 )。この答申を うけ て, 自治省は,地方 自治体の監査制 度
を 抜本的に整備するための地方自治 法改正案を通常国会に提出す る方 針を 決 めた‰ その後自治省 は, 地方職員 の 監査委員登用を退職後5 年間は禁止す る方 針を固め(M81-3 ),地 方自治法 の大幅改正をめざし, 監査委員 の監査対 象を 広げ,国 の機関委任事務 も含めた一般行政事務につい ても監査 できる よ うにす る等の案を提示し た(A81-5 )。改正案では,財 務会計だけ でな く地方 行政 の7 ∼8 割を占 める国 の機 関委任事務 にまで監査 の対象を 広げ ようとし ているが,各 省庁 は一斉に反発してい る。行政管理庁の場 合,将来オンブ ズ マン(行政監察官)制 導入に よる監査機能の強化を検討してい るこ ともあっ てか,地方独自り 監査 への反発 が強い とい われる(A81-6 ,Y81-3 )。地 方制 度調査会はオンブ ズマ ン制度の導入を否定して, 現行監査委員 制度の強化 が 先 決 とし たが(Y81-19 ),地 方 自治体の監査機能強化などの地 方自治法改正 作業 は,中央 省庁の「 権限争い」 ががらんで難 航する(A81-10 )と予期され た通 り,実を結ぶことな く葬ら れるこ とになる。この間(1985 年 ∼1986年) の経緯につい ては,注(1)の文献(35 ∼36頁)を 参照さ れたい。 次に現行 の自治体監査制度を めぐる種 々の議論を み て みよう。 朝日新聞1979 年9 月7 日付論壇 で監 査委員制 度を 見直し,監査委員の独立性を保障し て責 任体制を整備するこ とが急務 とい う意見がみら)れる(A79-16 )。朝日新 聞の社説で「制度改正の中身は監査対象を財務会計から行政全 般に, それも 国から の機関委任事務にも及ぼす な ど,かな り大 幅な ものにな りそ うだ。な かで も監査委員 と首長制 との“な れあい”を どう防ぐかが ポイントになって い る。監 査制 度を うまく機能させ, 自治体 の行財政を ガラス張 りにし てト く には, 住民が納税者の立場から, たえず見守ってい かねばならない (A81-1 )。」 とか,北九 州市の土地ころがし 疑惑 に関連し, 監査 委員 の制度が うま く機能し てい ない として「監査委員制 度を 生かすも殺す 乱 し ょせんは人 と 運用 次第 といえるだろ う。 監査委員自身 の誇 りと自覚 とと几 に,論功 行賞や 党派的な利害 に よる選考を許 さぬ議会 と住民の監視が肝心だ(A82-10 )」 と 主張 されてい る。読売新聞社説 では「監 査委員制度が実効をあげ るためには, 地域住民示関心を持つこ とが大事である。住民監査の結果 ,不 正,不 当が明 らかにされるこ とは, きわ めて数少 ない のが実状で,そ の最大 の原因 はなれ 合い監査にある とい って よい 。品川区では,元監査委員を 中心に税金のむだ 遺いを監視する市民団 体が結成 された。政治色抜きで手弁 当で監視活動に当 たるとい うが,改革の刺激剤 となるこ とを 期待したい(Y80-22 )」 と指摘さ
社会問題としての監査(一)39 れ てい る。 監 査委 員 は 議員 に とっ て は 名 誉 あ る肩 書 きで , 自 治 体議 員 に とっ て は重 要 な 天下 り ポス ト にな っ て い る (Y81-G ) こ とが 問題 と 思わ れ る 。 新 聞 の読 者 か ら「 現 在 の監 査 委員 制 度 の 問 題 点 とし て ,第1 に監 査 委員 の首 長 に よ る任 命 制 の弊 害 ,第2 に 監 査 当 局 が どの よ うに 明白 な違 法 内 容 の 監 査 結論 を そ の 住民 につ きつけ て も, そ の 結 論 の違 法 性 を直 接 に訴 訟 で 争 う道 は住 民 に開 か れ てい ない 。 第3 に違 法 性を 争 点 とす る 事件 につ い て は ,直 接 住民 訴 訟 に持 ち込 め る よう法改 正 す る こ と が 必 要 で あ る (M81-5 )」 とい う意 見 や,「 地 方 自 治法242 条2 項 は 監 査 請 求 の期 限 を1 年 とし てい る か ,こ れ では 議員 とそ の関 係者 だげ しか 活 用 で き ない 。 住民 の 知る 時 は ほ と ん ど1 年 は 過 ぎ, 実 効 が 少な い 。請 求期 限 は2 年 また は3 年 と改 革 す べ き 懲あ る。 また 現制 度 の弊 害 の根 源 は , 監 査委 員 や 事 務 局 員 の 人 選 であ る。 自治 省 は 交 付 金 や 補 助金 を 削って も委 員 , 事 務 局員 の 人 選 ・給 与 は本 省直 轄 とし て, 監 査 委員 が地 方 行 政 と対 抗 ,監 視 で き る よ うな 地 位 に 置 くべ きであ る 。(A86-4・ )」 とい う 意 見 がみら れ る。 なお 千 葉県 野 田 市 で は 市 監 査委 員 が 収 賄 容 疑 で 逮 捕 さ れ る と い う事件 があ っ た が (M82-1 ), 朝 日新 聞5 月20 日付 「 検証 」 欄 の「監 査 委 員 を 監 査す る」(A82-5 ) とい う記 事 は 興 味 深 い 。監 査 委員 の監 査 は, 理 論 的 に は メタ監 査 の問題 であ り, 監 査 職業 に とっ ては 究 極的 な 課題 であ るこ とを 強 調 し てお きた い 。 ダ ② 監 査委員監査に係わ る問題 自治体監査 の具体的 な事例を次にみてみ よう。 ここ で自 治体監 査とい う場 合に, 自治体に よる監 査と自治体に対する監査の2 つ の意味が含 まれる。す なわち, 自治体各部局 に よる監査 と監査委員による監査の区別 であ るが,前 者の例 として次のよ うなヶ−スがみられる。 都信用組 合課の監査で豊島青果 信用組合板橋支店 の不正経理融資 事件が発覚し,都ぱ同組合に対して,内部 監査制度を整備す るよう警 告し たこ と(Y81-18 ),さらに, 都内の64 信用組 合のうち4 割にあ たる24 組合が,200 億円をサ ラ金に融資していること峠 東 京都労働経済局 の調べでわか り,都 はサ ラ金への融資 の自粛を最重点項 目と し て監査す ることになった こと イM84-7 ),その他,東京都は定昇三ヵ月繰 り上げを 決めていた八王 子市労使に対し「地方自治法上好 ましくない ので是 正するよう」行政指導し たこ と(A83-23 ) 等である。
し か し 自 治 体 監 査 と い う 場 合 に , 一 般 的 に は 自 治 体 に 対 す る 監 査 , 特 に 監 査 委 員 に よ る 監 査 を 意 味 し て い る 。 そ こ で 東 京 都 に 対 す る 都 監 査 委 員 に よ る 監 査 か ら み て み よ う 。 昭 和53 年 の 都 監 査 報 告 と し て , 監 査 委 員 か ら 是 正 ま た ぱ 改 善 す べ き も の と し て 指 摘 さ れ た 件 数 は476 件 で あ り , 都 税 な ど 収 入 の 遅 れ や 不 足 が6,200 万 円 あ る ほ か , 工 事 の 過 大 積 算 な ど 不 経 済 な 都 の 支 出 が2,100 万 円 あ る と い う 監 査 結 果 が 報 告 さ れ た (A79-5,N79-5,M79-3 )。 部 監 査 委 員 は, 事 務 事 業 監 査 報 告 で 清 掃 事 業 を 取 り 上 げ , 燃 え る ゴ ミ の 焼 却 処 分 率 を 高 め る と と も に , リ サ イ ク ル ( 資 源 再 利 用 ) 運 動 を 推 進 す べ き と の 提 言 を 行 っ た (A81-4 )。 都 監 査 委 員 は , 都 の 公 害 , 職 員 住 宅 の 管 理 運 営 に つ い て の 監 査 報 告 書 を ま と め , ず さ ん な 管 理 の 適 正 化 を 強 く 都 に 求 め た (A82-31 )。 都 監 査 委 員 は 昭 和57 年 度 の 監 査 報 告 を 行 い , 計5,917 万 円 も の 無 駄 が あ っ た と 指 摘 し た が (Y83-1 ), 昭 和57 年 暮 れ か ら 昭 和58 年5 月 ま で に 実 施 し た 出 納 監 査, 工 事 監 査 の 結 果 , 新 た に1 千 万 円 の ム ダ 遣 い を 都 議 会 に 報 告 し た 。 そ れ に よ る と , 閉 鎖 さ れ た 水 門 の 電 気 の 基 本 料 金 を5 年 半 も 払 い 続 け て い る 等 , 合 計64 件 も の 改 善 勧 告 が な さ れ て い る (A83-2 ,Y83-6 )。 都 監 査 委 員 会 は, 補 助 金 未 消 化 で 問 題 と な っ た 東 京 都 ト ラ ッ ク 協 会 の 事 業 執 行 の 遅 れ を 厳 し く 指 摘 す る 等,205 件 の ム ダ を 告 発 し た (Y83-19 ,Y83-2L ,M83-12 )。 ま た 都 監 査 委 員 は , 中 古 車 の 購 入 後 も 名 儀 を 変 え ず , 取 得 税 を 逃 れ て い る 実 態 な ど , ズ サ ソ 行 政47 件 を 指 摘 し た (Y84-19,Y84-20 )。 同 様 の 事 例 と し て, 都 監 査 委 員 は 工 費 な ど 過 大 積 算 で400 件 ,4,700 余 万 円 の ム ダ を 指 摘 し た こ と (Y85-3 ), 工 事 費 の7 件 , 計997 万 円 の ム ダ 遣 い を 指 摘 し た こ と (Y85-5 ),169 件 の 行 政 の ム ダ を 指 摘 し た こ と (Y85-10 ), 都 営 住 宅 の 補 修 費7 千 万 円 の 徴 収 漏 れ や 福 祉 施 設 国 庫 補 助 に つ い て2 千 万 円 を 申 請 せ ず と い う 怠 慢 行 政57 件 を 指 摘 し た こ と (Y85-15 ) 等 か お る トI ・ 。 そ の 他 , 保 谷 市 は , 自 己 研 修 名 目 で 仕 事 始 め の 日 を 休 暇 と し て い た こ と に つ い て , 部 監 査 委 員 の 取 り や め 勧 告 に よ り 中 止 し た こ と (Y84-17 ), 葛 飾 区 の 定 期 監 査 で 昭 和54 年 度 も ず さ ん な 帳 簿 が 明 ら か に な っ た こ と (M80-18 ), 世 田 谷 区 長 が カ ラ 出 張 し て い た こ と が 同 区 監 査 委 員 会 の 監 査 で 発 覚 し た こ と (Y81-2 ) 等 か お る 。 東 京 都 以 外 で は, 埼 玉 県 議 会 が 県 住 宅 供 給 公 社 の 経 理 内 容 を , 県 監 査 委 員 会 が 監 査 す る こ と を 決 議 し た こ と (N80-8 ), 石 川 県 七 尾 市 が ベ ア 凍 結 の 見 返 り と 見 ら れ る ヤ ミ 超 勧 手 当 を 先 払 い で 支 給 し て い た た め ,
東 京 都 の 監 査 委 員 報 告 社 会問 題 とし て の 監 査 ( − )41 第1 図 都監査委員の監査分類
⑤ 匯 劃
匡 心 司
声 部 汗 ]
財 政 援 助 団 体 監 査 事務事業監査 住民監査請求による監査 市 監 査 委 員 か ら 「 条 例 施 行 規 則 に 違 反 す る 」 と 指 摘 さ れ , 市 が 給 与 か ら 天 引 き し て 回 収 す る と い う 異 例 の 措 置 を と っ た こ と (Y83-13 ) 等 が み ら れ る 。こ れ ら 自 治 体 の 監 査 を 担 う 監 査 委 員 に 関 す る こ と と し て , 足 立 区 で 「23 区 の ト ッ プ を 切 っ て 監 査 委 員 (1 名 ) を 常 勤 化 す る 条 例 改 正 案 が 提 出 さ れ る 」 こ と が あ る 。17I こ の よ う な 常 勤 監 査 委 員 制 度 ぱ , 都 内 で も 多 摩 地 区 の4 市 に 限 ら れ て い る が , 実 際 に 常 勤 者 が い る の は , 武 蔵 野 , 保 谷 の2 市 だ け と い わ れ る (M80 −11 )。 そ れ と 都 の 監 査 委 員 会 が 次 節 に み る 住 民 監 査 請 求 に 伴 今 陳 述 に つ い て 公 開 の 原 則 を 初 め て 打 ち 出 し た (Y83-23 ) こ と は 注 目 さ れ る 。 以 上 で は , 監 査 委 員 報 告 , 事 務 事 業 監 査 報 告 , 出 納 監 査 報 告 , 工 事 監 査 報 告 等 に 関 す る 記 事 が 混 然 と 断 片 的 に 列 挙 さ れ て い る だ け で , 自 治 体 監 査 の 全 体 像 を 把 え 難 い 。 そ こ で 以 下 で は , 東 京 都 の 監 査 事 例 に 焦 点 を あ て て , 監 査 委 員 の 監 査 の 問 題 を 掘 り 下 げ る こ と に よ り , こ れ ら の 議 論 の 不 備 を 補 い た い 。 ③ 東京都の事例 地方自治体 におけ る監査 の総括的な分類体系 の図式化 が後掲〈資料1 〉 に第2 図 出納監査局別指摘事項件数( 昭和57年第:L回∼昭和62年第1 回)
八
入
57 58 59 60 61 62 計 都 立 大 学 財 務 局 主 税 局 生 活 文 化 局 都 市 計 画 局 環 境 保 全 局 福 祉 局 養 育 院 衛 生 局 労 働 経 済 局 中 央 卸 売 市 場 住 宅 局 南 多 摩 新 都 市 開 発 本 部 建 設 局 港 湾 局 清 掃 局 消 防 庁 交 通 局 水 道 局 下 水 道 局 教 育 庁 1 n 10 6 13(4 )35 (1 )43 (1 )108 (3 )88 (4 )9 (5 )8 (3 )12 1 11 3 1 n 2 13(5 )74 (2 )21109 (3 )3112 (5 )6 (4 )10 (5 )10 15 1 3 8 6 14(5 )107(3 )4137 (2 )76 (1 )5 (2 )8 (5 )8 1 11 4 2 4 6 4 9(3) 6 8∩ )4115 (2 )59 (4 )4 (3 )4 (1 )7 1 13 2 1 1 6 1 11(4 )24 (2 )546 (1 )74 (1 )6 (3 )4 (2 )8 1 7 2 3 2 6 2 1 4 3 1 3 2 4 5 3 2 68 10 3 11 44 21 66(21) 30 28(12) 20 4(1) 52 38(11) 31 1 42(15) 32(17) 38(16) 50 計 119(21) 117(24) 122(18) 104(17) 86(13) 46 594 ㈲ ) 但し( )内は公営企業各会計関係分 みら れる。こ のような枠 組みのなか で東京 都監査委員が実施す る監査の概要 を みてみよう。先ず監査の大鈴は都議会 におけ る監査委員 報告から明らか と なる。ち なみに昭和62年 度と昭和63年 度 の監査委員 報告は,出納監査,工 事 監査,事務事業監査,財政援助団体 監査,決算審 査,そめ 他とし て住民監査 請求の順序で,第1 図 のように,構 成されてい る‰ そこで順次これらの監 査の概 要をみてみ よう。 第1 に出納監査に関し ては,毎年 度都監査委 員に よって作成される第1 回 出納監査報告書 と第2 回 出納監査報告書 (そ の1 一一公営企業各会計関係,社会問題 とし て の監査( 一)43 第3 図 出 納 監 査 事 項 分 類 別 指 摘 事 項 件 数 ( 昭 和57 年 第1 回 ∼ 昭 和62 年 第1 回 )
ペ ノ
57 58 59 60 61 62It 歳 入 歳 出 財 産 工 事 補 助 金 七 の 他 31(3 )40 (6)30 (7)5 (O )013 (5 ) 36(8 )33 (6 )37 (7 )218 (3 ) 35(3 )43 (8 )29 (2 )3 (O )1 (O )11 (5 ) 24(5 )35 (4 )39 (7 )204 (1 ) 34(3 )21 (3 )21 (5 )316 (2 ) 14 17 9 2 0 4 174(22) 189(27) 165(28) 17(0) 3(0) 46(16) 計 119(21) 117(24) 122(18) 104(17) 86(13) 46 593 ㈲ ) 但 し ( ) 内 は 公 営 企業 各 会 計 関 係 分 第4 図 工事監査局別指摘件数表( 昭和59年第2 回∼昭和65年第3 回)/
59 60 61 62 計 福 祉 局 2 1 3 住 宅 局 1 5(1 ) 1 2 9(1 ) 交 通 局 1 1 水 道 局 1 4(1 ) 3(1 ) 3 11(2 ) 教 育 庁 2(1 ) 3 3 1 9(1 ) 建 設 局 1(1 ) 1 4(2 ) 3(2 ) 9(5 ) 港 湾 局 1 1 1 1 4 清 掃 局 3 2 1 1 7 下 水 道 局 2(1 ) 4(2 ) 6(2 ) 4(1 ) 16(6 ) 中 央 卸 売 市 場 1 2 3 財 務 局 1 1 計 14(3 ) 20(4 ) 20(5 ) 19(3 ) 73(15) 但し( ) 内は内書で実地監査後に是正済みの件数第5 図 丿工事監査区分別指摘事項件数表( 昭和59年第2 回∼昭和62年第3 回)
二
59 60 61 62 計 設 計 13(3 ) 19(4 ) 17(5 ) 19(3 ) 68(15) 施 工 1 2 3 そ の 他 1 1 2 計 14(3 ) 20(4 ) 20(5 ) 19(3 ) 73(15) そ の2 但し( )内は内書で実地監査後に是正済みの件数 出納長所属各会計 関係) から明らか となる。昭和57年 度第1 回出 納監査か ら昭和62年 度第1 回出納監査 に至る期間の局別指摘 事項件数を ま と めてみると,主 税局(68 件:), 衛生局(66 件),建設局(52件 ),教育庁(50 件),福祉局 (44件),交 通局 (42 件),港湾局(38件),下水道局(38 件),水 道局 (32件),清掃局(31 件),労 働経済局 (30件),中央 卸売市場 (28 件), 養育院(21件 ),住宅局 (20件)等 となった(第2 図参照 )。 これらの出納監 査の指 摘件数を 歳入,歳出,財産,工事,補助金,そ の他の事項分類 別に集 計し てみる と,歳入(174件), 歳出 (189件),財産(165 件), 工 事(17 件), 補助 金(3 件),そ の他 (46件) とな り歳入・歳 出・ 財産 に係わるものが圧 倒的 に多いことがわか る (第3 図参照 )。前述した 都議会におけ る 監査委員 報告においても収入関 係で,固 定資産税に係わる不 適正な事務処理が例年 数 多ぐみられること平税の徴収事務 に適切さを欠く事例があ るこ と,支出関係 で不経 済な支出が行われてい る事例や契 約手続についても不 適正な事例がみ られること,また財 産関係で,台帳 への登載が正し く行われてい ない など不 十分 な財産管理が指摘 されてい た6)。 第2 に工事監査に関し ては,毎年 度3 回,都監査委員に よって作成 され る 工事監査報告書から 明らか となる。 昭和59年 度第2 回∼昭和62年 度第3 回の 工 事監査報告書の指摘件数を まとめてみると,下 水道局 (16件),水道局(11 件 ),建設局(9 件), 住宅 局(9 件 ),教育庁二9 件),清 掃局 (7 件),港湾 局(4 件),福祉局(3 件),中央卸 売市場(3 件),交通局(1 件 ),財務局 (1 件) となった(第4 図参照 )。指 摘事項を設計・施工,その他の区分で集 計し てみると,設計68 件,施工3 件,そ の他2 件とな り,ほぼ設 計段階での社 会問 題 とし て の監 査( 一 )45 第6 図 局 別 指 摘 件 数 と 款 別 歳 出 予 算 と の 関 連 ( 一 部 ) 出 納 監 査 工 事 監 査 款 別 歳 出 予 算 総 務 局L 都 立 大 学 財 務 局 主 税 局 生 活 文 化 局 都 市 計 画 局 環 境 保 全 局 知 福 祉 局 貴L 養 育 院 「 局 衛 生 局 労 働 経 済 局 し 中 央 体 売 市 場 住 宅 局 知 ¬-IUL 南 多 摩 新 都 市 事l 事 建 設 局 開 発 本 部Il 港 湾 局1 清 掃 局l 消 防 庁i 言 交 通 局l 忿 [ 水 道 局l 票 下 水 道 局I 業I 教 育 委 員 会l 万万「 ベ ニヤ 委 : 員 : 会 ’ 3 2 68 10 3 n 44 21 66 30 28 20 4 52 38 31 1 42 32 38 50 1 3 3 9 4 7 1 11 16 9 -→・生 活 文 化 費 一 都 市 計 画 費 一 環 境 保 全 費 卜 福 祉 費 一 衛 生 費 一 労 働 経 済 費 一 住 宅 費 一 土 木 費 港 湾 費 一 清 掃 事 業 費 一 消 防 費 一( 交 通 事 業) 一 休 道 事 業) −( 下 水 道 事 業] 一 教 育 費
問題である ことがわかる(第5 図参照)≒ ここで出納監査及び工事監査の局別指 摘件数 と歳出予 算款別区分 との関連 に触れておこ う8)。 第6 図は,都機構図におけ る関連局 と指摘件数 と款別区 分 とを対比し て,問題発生の多い部局や款別予 算項 目を 探る手掛 りとして, 参考迄 に表示 した ものである。 第3 に事務 事業 監査に関しては,毎年度都監 査委員に よって 作成される事 務事業監査報 告書から明らか となる。昭和58年 度から昭和62 年 度の5 年間に おけ る事務事業監査指摘件数 と項目は次の通 りであ る。 昭和58 年度一一庁有 車の管理・運 用について (財務局ほか)38 件, 都営住宅 建設 事業 について (住宅 局ほか)33 件,水産業の振興について(労 働経済局 ほか)25 件,児童 の 養護事業につい て(福祉局)40 件, 事業施設 の設 備管理につい て(衛生局 ・ 中央卸 売市場 ・清掃局)24 件,計160 件。昭和59 年 度一 間接 三税の課税・ 徴収につい て(主税局)38 件,中央卸売市場 の管 理運営について(中央卸売 市場 ほか)52 件,ごみ処理について(清掃局)58 件, 自動 車運送事業 につい て(交 通局ほ か)62 件,計210 件。昭和60 年度一 土地の管理運用 について (財 務局 ほか)24 件, 盲学校ろ う学校及び養護学 校の運営 につい て(教育庁ほ か)29 件,水道 施設の管理運営について(水道局)49 件,東京湾における港 湾施設 の管 理運営等について(港湾局ほか)35件,計137件 。昭 和61年 度-庁舎 の管理 につい て(財務局ほか)24 件,都立病 院の管理運営 につい て(衛 生局)50 件,中小企業に対する指 導・助成につい て (労働経済局)40 件,河 川の整 備及び管理について(建設局ほか)45 件,計159 件。昭和62 年度-都税 の滞納整 理につい て(主 税局)53 件,看護婦等医療 従事者の養成 事業に ついて (衛生局, 養育院)32 件,消費生活対策 につい て(生活文 化局)30 件, 老人福祉事業 について (福祉局・養育院ほか)37 件, 計152 件。 これらから 毎年4 ∼5 項 目の重点課題の下で,財務局,主 税局 ,衛生局,福祉局,労働 経済局,清掃局 ,中央卸売市場,養育院等の部局を, なし くずし 的に監査し てい ることがわかる9)。 第4 に財政援 助団体監査に関しては,毎年 度3 ∼5 回, 都監査委員 によっ て作成 吝れる財政援助団体等監査報告書から 明らか となる。 昭和59年度(そ の3 )から昭和63 年度(その1 )迄の財政援助団 体等監査 報告書の指 摘件数 は,昭和59年 (36件),60 年(33件),61 年(34 件 ),62年 ・(19件),63 年(5 件) となってい る。 これらを 財政援助団体別 にまとめてみる と,主 要なもの
社会問題としての監査(一)47 として私立学校法人65 団体(15件),住宅供給公社 (9 件 ),新都市建設公社 (9 件),環 境整 備公 社(7 件),国民年 金福祉協会(5 件),都営住宅 サ ービ ス公社(5 件),文化振興会(4 件),公園協会(3 件) 等が みられ る1‰ 最後に決算審 査に関し ては,毎年度,出納長所属各会 計決算を対象として 実施され,都監 査委員 に よって作成される決算審査意見 書から明らかとなる。 ここには各年 度の出納監査,事務事業監査,工事監査,財政 援助団体等監査 による指摘件数総括表 がみられるほか,主な事例につ い ては局別 事項に記載 されてい る。 また住民監査請求と監査結果の詳細につ い ては,東京 都監査事 務局による「東京 都監査結果公表集録」から 明らか となる11)。 以下では監 査委員 の業 務の他の面であ る住民監査請 求の実態につい て具体 的なヶ,_ スを つ ぶさにみることにより, 自治体監査制度 の抱 える問題点を 浮 彫 りにし たい。 (2) 住民監査請求制 度 住民 による監 査請 求には,いわゆる住民監 査請求 と事 務監査請求があ る。 前者0 住民監査請求 が出さ れた場合,監査委員 は60 日以 内に監査を 行い,場 合によっ ては必要な措 置を講ずるよう勧告す ることになってい る。住民監査 請求0 事務の フpi ー・チ ャートが後掲〈資 料2 〉 にみら れる。後者の事務監 査請求の例 は,極め て稀であ り,次 の福岡県 と東京都等 でみられ るにす ぎな い。すなわち福岡県 では5 億9 千万円の知事公舎 の疑惑 に対する監査請求を 求める署名が,全有 権者(約321 万人)の5 人 に1 人 にのばった。有権者 の50 分O1 以上 の署名 が必要な地方自治法75条に基くこの運動が,都道府県単 位で行われ,法定数 に達す るのは過去2 回目とのことであ る(A82-25,M82-6,N82-4 )。 この監査請求に対して福岡県監査委員 は ,「違 法 の事実は認め られない」 とい う監 査結果を公表した (A82-39 )。 また東 京都で は全小中学 校での40人学級 の即時 実現を求め,都留重人元一 橋大学 長等が,都 に対して 監査請求を 出す ことになった (A87-7 )こ とがあ る1‰ 一般的には,いわゆ る住民監査請求に係わる罵力 がほ とんどで,たとえば 自治省に よる と,1976 年4 月から1978年3 月 までの2 年 間 に全国 で353 件の 監査請求があ り, この うち76 件が住民訴訟にまで進展し た力卜 そ の大部分は 監査結果 を不服 とす る訴訟 とい うこ とである。なお監査請 求の うち給与,報 酬の支払い が不当だ とす るものは22件 で,その うち監査委員が“不当” と認
第7 図 住民監査請求の分類比較 件 数 構 成 比 〔1 〕 給 与 ・ 勤 務 状 況 等 に 係 わ る 問 題 〔2 〕 請 負契 約 ・払 下 げ ・ 補 助 金 等 に 係 わ る問 題 〔3 ] 学 校 そ の 他 違 法 性 に 係 わ る問 題 38 27 25 42% 30% 28% 計 90 件 100 % めて当局側 に改善を 勧告し たの はわず か6 件だけ といわれる(A80-1 )。住民 監査請求が 出された場合, 監査委 員は60 日以内に監査を行い,場合に よって は必要な措 置を講ずるよ う勧告す るこ とになっている。また,参 考迄に1982 年5 月迄の過去3 年間 におげ る各 都道 府県 の住民監査請求件数 と,その主な 内 容について注記してお こう1几 なお1985年 ∼1986年の経緯 については(注1 ) の文献 (33∼35頁)を 参照 されたい。 以下 で とりあげる住民監査請求 は,第7 図 のように分類整理される。 第1 は,給与・勤 務状況等に 係わる問題 (38 件,42 %)であ る。 この領域ではカ ラ超 勤(8 件 ),ヤ ミ手当, ヤ ミ給 与・不 労給与べ5 件), ヤミ遅刻,早退 ・ ヤミ出勤 (5 件 ),( ヤミ) 休暇(4 件),違 法夏休 み(4 件),(高額 )退職金 (4 件) が問 題とされてい る。第2 は請負契約・払下げ ・補助金等に係わる問 題(27件,30 %)であ る。 この領域では不適切な行政事務等に よる公 金の不 当支出 (10件), ヤ ミ契 約 ・工事契約 ・談 合・建設問題(8 件 )・払下げ ・補 助 金・補償問題(6 件) ,海 外視察・観光旅行(3 件) が問題 とされてい る。 第3 は学校その他違 法性 に係わる問 題二25 件oQ %)であ る。 この領域では 学校に係わる もの(8 件,y %) とし て,違 法経費 の流用て2 件 ),短縮授業 (1 件),1 日校長制度に よる退職 金(1 件 ),小中学校の生徒数水増し(1 件 ) 都立高の ヤミ休暇(1 件),公立高校の塾 アルバイト(1 件)が問題 とされ てい る。 また, その他違 法性 に係わる もの(17件,19%) として,公選法違 反 ・公 選法改正 (6 件), 戦犯記念 碑・戦没 者慰霊祭・忠 霊塔 (4 件 ),\玉 ぐし料(3 件 ),都議会定数是正 (2 件),電算シ ステ ム導 入に よるプ ライバ シ ー保護 (2 件)が問 題 とされてい る○ ’ それでは次にこの3 つ の分類 に もとづいて順次みて みよう。 ① 給与・勤務状況等 に係わる問題1979 年 から1980年 の間で,東 京都監 査委員 に関しては,「都職員の違 法夏
社会問題としてQ 監査(一)49 休みに関す る監査請求を都監査委員が却下した」(A80-9 )こ とがと りあげ られてい るにすぎない。1981 年 から1982年 の間では,1982年か ら東京都の住民 監査請求が急増し て いるこ とが 特 徴といえ る。 納税者監視協 会は「都職員 の 短縮時 間賃金は 不 当」 とし て監査請求を行っ たが,それに対して東京都監査委員は,都職員 の 勤務時間かl 日15分不足し てい たことを認め,知事 に対し勤務時間 の運用管 理や制 度の是正を勧告した (Y82-1,A82-4,M82-5 )。「不公平 をただす都 民 の会」は,地方 事務官に都が支払ってい る臨時在勤手 当は違 法なヤ ミ手 当 として監査請求を 提出し た (A82-6 ,Y82-6 )。東京都監査委員は,地方 事務 官に対する差 額支給に関し て「手 当は都 として違 法な支 出とはいえ ない」 と の判断を下し,根拠な く不公正 とし て是正を求めるも,返還・停止請求は棄 却した(A82-15,Y82-17,M82-16 )。都監査委員は,住民監査請求に もと づいて監査し た結果 ,退庁時間 まで勤務せず,早 目に帰ってし ま うル ーズな 職員にぱ 早退”分の給与返還を求める よう知事 に勧告した(A82-7 ,N82-2,M82-7 )。 また,都庁 の局長 級職員 に高額の退職金が支払わ れた ことに ついて,都内に住む 税理士 らが,「違法な超過支給であ り,超 過分を 都に返還 させるべきだ」 として住民監 査請求を 提出したが (A82-27 ),都監 査委員 は 「退職金は条件,規則 に基 き支給された もので違法性はない」との判断を示し た(A82-37 )。先 の「不公平をたたず都民 の会」 は都立高 の“ ヤミ休暇 ” に 対して監査請求を 提出したが (Y82-15 ),都監査委は,実態はすでに是正 さ れてい るとし て給与 の返還は求めない とい う監査結果を 発表し た(M82-18 )。 再び都立高の事務 職員 のヤ ミ休問題で監査請求が出されたが(Y82-25 ), 都 監査委員は「ヤ ミ休の事 実は確認できなか ったが,校長 の管理 の不十分 さが 認められる」 として都 教委 に改善を勧告した (A82-33,M82-25,Y82-27 )。 その他議員報酬上げ に都民 が監 査請求を 出したこ と(Y82-2 )等が みられ る。1983 年から1984年 の間におい て 乱 東京都では住民監査請求が活発に行わ れている。東京都水道局等 の職員 に支給 されてい る特殊勤務手当 の一種であ る「業務手当」 につ いて,住民団 体の「不公平を ただす都民 の会」(石 圧1千 秋代表)は,「不当な手当 であ り,廃止す るとともに過去1 年 分を 返還する よ う勧告してほしい」 と監査請求した (A83-4,Y83-8 )。 また昭和58 年度 の 都 の部局長退職金が最 高6 千万 円,平均5,100 余万円 亀支給 され ることにつ いて,国や他府県 に比 べて高す ぎる として停止を求める住民監査請求が出さ
れてい たが,都監査委員 は,「監査委員 は審 査権がなく」, また│ 請求人の主 張 は理由がない」 として棄却し た べY83-5 ,A83-6,M83-6,Y83 11 )。23 区で は1979年 から1980年 の間で,杉並区 と渋谷区で, カラ超勤をめ ぐっ て住民側から監査請求が出された(A79-23,Y79-27 ,Y79-29 ,M79-20,M79-21 )。 両区には, 監査請求に市民から激励 の手紙 が 山と寄せ ら れた が (Y79-30,Y79-33 ), 杉並区の監査委員は, カラ 超勤の心証を 得たが 事実 との確認はで きない とし て,区民の請求を棄却し た(Y80 べ1,M80-1 )。渋谷 区で もカラ超勤 に関する監査請求は追けられた が,不 信を 招く余地がある と し て, 課長以上の大量処分に発展した (M80-2 )。 これら一連 のヤミ手当・カ ラ超勤問題で, 昭和54 年から15件監査請 求が出されている が,いずれも却下 されているため住民の不満 が強まってい るとい われる(M80-3 )。渋谷区で はそ れ以外に も住民がヤ ミ休暇の日給を返せ と監 査請求し(Y79-31 ),区監 査委員 は, ヤ ミ休暇 の存在を認める監査結果を 出し(Y80-3 ),選挙休暇は 違法 とし て不 当利 得を区に返すこ とを 勧告し たこ ともあ った(M80 4 )。杉並 区では, カ ラ超勤問 題で,再度住民監査請求が出 されたこ と(M80 9 ),職員 休暇問題で も監査請求が出されたこ と等がある。杉並区 のカラ超勤問題 は, 「監査側 の時 間 と職員不足 も制約となった。4 人 の監査委 員 と6 人 の監査事 務局員 で,2 ヵ月間に区役所 の全部課 と出先 機関も調べた。(この点でも,監 査対 象を総 務,企画調整部 と教育委員会だけ に限定した品川区 と比 べて,杉 並の積極性が うかがわれるが),個々の職員の勤務状況 まで踏み込 んで監査 することは,現状では とても無理だった」(Y80-2 ) とい われるように,現在 の監査委員制 度に よる監査の限界を示す好例 とみられる。 港区で も,「職員 のカラ超勤」を問題 とし て,主婦 らが監 査請求を 行った(A79-27 )。同区 監査委員は「不正支給の確信 も心証 も得られなか うた」 とい う 監査報 告書を まとめたが(Y80-4,M80-6 ),区民 に疑 念を 与えたとして,区 長 は特別職 の報酬カ ット等の処分を発表し た(M80-7 )。荒川区では,「15分 間 まで区議員 の遅刻を認めてい るのに,そ の分の給与を差し引いてい ない」 ど ヤ ミ遅刻 ”の実態を指摘する住民監査請 求が提出された(A79-22,Y79-28,M79-19 )。 また大 田区では区役所職員 が9 種類もの ヤミ手当を支給さ れていた とし て,主婦 ら114 人が「ヤ ミ給与 分の返還を要求する」 との監査 請求を 提出し た が(Y79-40 ),同区監査委員 は,初の違法“判 決”を下し た ものの返 還請求 は退け てい る(Y80-8 )。他に も葛飾区 で「 ヤミ手当」に関す
社会問題としての監査(一)51 る住民監査請求に,同区監査委員は 「事実なし」 との結論を下し たこと(M80-10 )等がみられる。 その他, 特別区 で人 事厚生 事務組合のカラ超勤に関 して,住民が監査請求を提出した こと(Y80-7 )等があ る。品川 区で,カ ラ 超 勤に関する監査請求に対し,同区監査委員 は「不正支給 の事実なし」 との 監 査結果を まとめたが, この結果 に対し批判 の声が あ かってい る といわれ (Y79-4) ,品川区 では増加傾向にあ る区民 の監査請 求に対応す るため,監査 委員事務局の強化を行 うとのことであ る(A80-4 )。なお,上述した ように 「渋谷区役所の一職員から カラ超 勤を “告発”す る一 通 の投書が10月けじ め 読 売新聞社に届いた のがきっかけ に,23 区の不当な給与や休暇の実態がほぼ 明らかになった」 とさ れ,担当記者の座談会の中 で「9 種類のヤ ミ手当を廃 止した大田や,関係者を処分した杉並 の姿勢 は一応評 価できる。 これに対し, 一時的な超勤予算削減で済ませ ようとし てい る よう にみえる渋谷,品川,港 区や,何の反応 も見せない葛飾,北 などの区 の対応 の仕方 は問題だ」 とい う 意見もみられ る(Y79-43 )。1981 年か ら1982年の間で23区では,葛飾区の監 査委員 は,職員 の実際の勤 務時間が規定 より短かい として是正を求めた住民 監査請求に対し て,その後 改善された として請求を認めなかったこ と(A82-13,M82-13 ),港区では, 区職員 の出勤15 分遅 れに関する監 査請 求に対して,区監 査委員は,休憩時間 で調整しているので「根拠なし」 とし て請求を却下した こと(A82-14,M82-14 ),また品川区では納 税監視協会は「不労給与返還」を求めて監査請求を 提 出し(Y82-7 ),そ れに対し て監査委員 は「勤務体制を見直 せ」 と区に勧 告 したこと(Y82-16 ),等がみられる。1983 年から1984年 の間では豊島区役所 の宿直職員 が交 代で勤務をさぼ りな がら,帳簿上 は出勤していた ように見 せかけ ていた こ とで,住民 グル ープが 損害分の返還を求め る監査請求を提 出した こと(Y84-7 ,Y84-8 ),葛飾区で は「区が職員 に7 日間の有給の夏休みを与えている のは公 金の不当 支出」 と し て,夏休みの停止を 求める住民監査請求が申し立てら れたこ と(A83-3 ), また杉並区で も区職員 の規定外の夏休みに関し て住民 監 査請求が出 されたが, 区監査委員 はそれを棄却したこ と(Y83-7 ,Y83-20 )等 がみられる。 東京都区外では,1979 年 に千 葉県 市川 市で,住民 グル ープ「市川主権者り 会」から出されていた,市 職員 の“ カラ勤務” に支払わ れた 給与の返還を市 長 に求め る住民監査請求を,伺 市監査委員 が棄却してい る。そ の理由は「条
例を変更せず,市長決裁で勤務時間を短縮,支給した給 料は形式上,違法 な 公 金支 出に当た り,市川 市へ返還すべき筋合い のものだ」 が,この時間短縮 で「住民への奉 仕がおろ そかになったとか,住民や市に損害を与えた事実 は まったく ないから」 とされている(A79-24 )。地方自治体 のヤ ミ給与問題 の 火つけ役 となった千葉県 銚子市で,市監査委員 が住民監査請求に対し, ヤ ミ 給与は「生活補給金 とし てやむを得なかった」 と認めた う史,「条 例 に定め なかったのは違 法であ る」 との判断を示 したが,住民らは この結果を不満 と し て行政訴訟に もちこむ構え といわれる(A79-15 )。また大阪府 で,教員 の 特別昇給一 斉適用に関す る住民監査請求に対し て,監査委 員 は違 法の疑い が あ るとして是正を 勧告する監査報告書を まとめた(N79-9 )。1982 年に保谷 市では「有給の結婚, 夏期休暇は違 法」 とし て給料返還の住民監査請 求が 出 された(M82-15 )。 犬1983 年 に東京 都区外では,武蔵野市の高額退職金間題で,市民 グル ープか ら監査請求が出され, 市職労は総決起集会を 開き支援し たが,市監査委員 は そ の監査請求を 棄却し たこ と(M83-2,Y83-4,M83-3,N83-7 ),八王子市 で,勧奨退職 者の駆け込 みが続出し ているこ とから,住民 団体は「駆け込 み 退職者のためにむ の予 算を 流用するのは問題」 として,市長 に約3 億1 千万 円の返還を 求める監査請求を 提出し たこと(A83-9,Y83-27 ), また 八王子 市と全く同じ職員 の繰 り上げ 昇給問 題が富士見市で も明 るみに出て,市民有 志が,\市長に昇 給分の人件費の返還を求める監査請求を 行 う こ とになった (A83-24,N83-25 )こ とがあ る。その他,兵庫県 で「平 日に開い た明石市 教組の定期大会 の参 加 者を県 教委が賃金 カットしなかった のは違 法」 とす る 住民監査請求に対し,県 監査委員 は,「賃金カットし なかったのは違 法」とし ながらも賃金 カ ットは求 めず,労使慣行 の見直し等を勧告す ることを 決めた こと(N83-20 )や,大阪 府堺市で,職員給与4'.58%のベ ース・ア ラブ実施に 対して,市民団体 が監 査請求を提出した こと(N83-23 )等 がみられる。 ② 請負契 約・払下げ ・補助金等に係わる問題 先ず,東京 都の事例から みてみ よう。地下鉄が都道 の地下を 通るのに,営 団 は都道の占用 許可を受け ない まま工事を始めてお り, 都もこれを 放置し て い るのは違 法 とし て監査請求 が出されたが(A82-9,Y82-10,M82-10 ),都 監査委員は「住民監査請求 の対 象は,財務会計上の行為に限られてお り,こ
社会 問題 とし ての監査(一)53 の ような道路行政 の管理 に関することやそれを前提 とす る事項は対 象になら ない」 とし て却下した (A82-11,Y82-12 )。西新宿 の再開発事業計画 に反 対する地元住民が,都監査委員に「都が開発事業に都 有地を 提供し た り,補 助金を支出し てい るのは違 法かつ不当だ」 として監 査請 求を 提出し たが(A82-23,Y82-24,M82-22 ),都監査委員 は,新宿再 開発 の監 査請求を却下し た(A82-26 )。 また立川 の社会教育会館改修に関す る住民請求 も「老 朽化の ため必要であ る」 として却下された (M82-27 )。それから都議 の海 外視察に 対して杉並 区内の業 者ら2 人が中止を 求める監査請 求を都監 査委員 に提 出し たこと(A82-32 ),都議 の海外視察 に関する頂 題 で,不当 な支出 とし て住民 監査請求が出されていたが(M83-16 ),都監査委員 は,そ の請求を棄却した (A83-28,M83-19 )。 その他,公務員 のヤミ給与などを追及してい る「税金 を監視す る会」(世話人, 宮川独協 大教授) は, 田中 角栄元首相 の申告所得 額の真偽を調 査す べきだ とし て監査請求したが(A83-21,N83-24,Y83 −25 ),都監 査委員 は,そ れを却下したこ と(M83-18 )や ,都監査委員は,殺 人警官 の公費賠 償に関する住民監査請求を棄却した こ と(Y84-14 )等がみら れる。 ノ 。23 区 では,1979 年から1981 年の間に,杉並区で,「住民 記録に電 算機を 導 入することに反対す る グル ープが,電算機のレ ンタル料が不当 に割引 されて いるのはヤ ミ契 約の疑い があ るとし て,同区監査委員 会に住民監査請求を行 ったこと(Y79-2 ),港区で「私的な電話料の負担は,公 金の不当 支出であ る」とす る監 査請求が 出されたが(Y79-44 ),区長が認 めた 自宅 公費電話に 関して,監査委員は シja と判定したこと(Y80-6 ) の他,監査請求に元職員 が「コピ ーはや れない」 とい やがらせをしたこともあ った (Y79-38 )。また 葛飾区で箱根で開 く町会長 連絡会に血税 のムダ遣い とし て監査請求が出され ていたカレ(M81-8,A81-15,Y81-14 ),区監査委員 会は「社会通念上,不当 とぱいえ ないト との監査 結果を発表した。その理由 とし て①連絡会は自治・ 町会の会長 と区側か対話,今後の区政の参考にし よう と開かれた,②開催場 所 も区借 り上げ 保養施設 の見学も兼ねている,③経費 も1 人平均1 万2 千 円 余である な どをあげている(A81-2L ,M81-11 )。 1982 年 に, 葛飾区 の談合疑惑に関し て, 監査請求の動 きがみられるこ と(A82-28) ,杉並区で は中央図書館の建築 費が他と比 べて倍 にな るとして,納 税者監視協会 は監 査請求を 提出したこ と(Y82-11), 品川 区 で「西大弗 駅」
舎の建設問題 で区 の出資 金な どの返 還を 求める監査請求が出されたこと(A82-38,Y82-32 ),世田谷区 では区 が公有財産 として購入した マンション の 会議室の取 得,管理に問題があ るとして,監 査請求が出されたこ と(A82 ―29 )等 がみられる。1983 年から1984 年の間では品川区 で「西大井駅」舎の建設問 題に関して, 区の出資金な どの返還を求める監査請求が 出されていることは前述したが, それに対し て監査委員は,区 の出資を合法 とす る監査報告書を まとめたこと (N83-3 ,Y83-3 ), また品川 の都市再開発で,品川区の住民697 人が,「区有 地を 安く売却し た」 として監査 請求を 出し たが (M84-9 ),区 監査委員は,モ れを 棄却し た(Y84-12 )。そ れから都内23 区 と武蔵野市な ど4 市の選管委員 の観光 旅行に対して,「税金を 監視する会」 は,住民監査請求をおこす構えを みせてい ること(Y84-28,M84-14 ) 等がみられる。 次 に東京都区外では,青森県 で,むつ小川原 補償の疑惑に関し て住民監査 請求の動 きがあ り(M79-16 ),地元住民で もあ る前代議士 が,むつ小川原湾 建設にからむ漁業 補償妥結額 の うち百億円 は県費 の不当支出だとし て,県監 査委員に住民監査請求を提出し たこ と(N79-25 ),小金井 市の監査委員 は, 市長の女性同伴公費出張に関す る住民 監査請求 にもとづいて監査した結果, 「出張中の一 部は公費 とし て認められ ない」 とし て, 日当 などの返還を市長 に勧告し たこと(A81-3,M81-1 )があ る。 また千 葉県では,水道局発注の 給水工事 について,住民団体が県 監査委員 に「工 事の契約は違 法,不当であ り,契 約解除を勧告せよ」 と監査請求し, また同県 印幡郡富里 村の公民館建 設を めぐって 乱 村民が「談合の疑 いがある」 と監査請求を 提出した。大型 公共 事業の談 合で市民団体が監査請求した のは初 めてといわれる(M82-4 )。 それか ら日野 市で自然を守 る会は,高校用地をめ ぐる問題 で,市監査委員事 務局 に監査請 求を行なったこと(M83-17 ),大阪府水道部の接待費支出が架 空 で違 法だ として市民 グル ープか ら出されていた監査請求について,府監査 委員 は架空接待 の事実を認定,「事務処 理として はきわめて適正を欠 く」との 判断結果を公表したこと(A83-5 ), さらに 滋賀県 で「軽油会社の 脱 税見逃 し事件に関す る監査請求申し立てを,県監 査委員 が受理したこ と(Y83-12 ), 鹿児島県 監査委員 に,志布志 湾漁業補 償問題 に関し て,監査請求が提出され たこと(Y83-16 )や,調布市で,つつじ ケ丘北 口共 同開発 ビルに 関し て, 「市が大 京観光 に有償提供し よう とする同土地 の価格 は,時価に比 べ格安で不
社会問題としての監査(一)55 明朗」 と の監 査請 求 が 出 さ れ , そ れ に 対 し て 同 市 監 査 委員 は ,「土地 提 供 価 格 は安 す ぎ る」 と是 正 を 勧 告 す る 監 査 結果 を 公 表し た こ と (M85-11 ) 等 が み られ る 。 ③学校その他違法性 に係わる問題 先ず学校の問題からみてみ よう。東京都では,都監査委員が「私立高の違 法経費 流用」の監査請求を却下 した こと(M82-2 )や ,都教委 が勧奨退職す る教頭 の一部につい て退職時 に1 日だけ 校長 とし,校長 とし ての退職金を 支 払ってい る「1 日校長制度」 につい て,市民団体の税 金を監視する会は,制 度の廃止などの勧告を 求める監査請求を 出し ていたが, 都監査委員は,「違 法ではない」 とし て請 求を 棄却した こと(M83-9,A83-22 ,Y83-26 ) があ る。 また,都監査委員は, 都内の小・中学校が児童・生徒数を 水増し報告し 余分の教員の配置を受け ていた ことに関する住民監査 請求を棄却した。その 理由は「教員配置の基礎 となる学 級認 可の効力は,そ の年 度限 りの ものであ り,年 度が替わった現在 では認可の取 り消しや変更を する実益 に乏し く,そ の後の学級編成,教員配 置のなかで是正されるべきもの」 とされてい る(A84-16,Y84-30 )。それか ら都立向丘高校の ヤミ休暇の 給 料返還を求める監 査請求 に対して,都監 査委 員は,都教委 に対し,厳重 な指導を求める異例の 要望を 行な うと共に,監査請求 にもとづ く監査の結果 ,「厳正な対処」を求 め たこと(M84-4,M84-5,Y84-6,M84-6 ,M84-8 )や,公立学校教師の塾 アルバ 子卜に関し て,給 与 カットを求 める監査請求が都監査委員 に提出さ れ たこと(Y84-3 )等 があ る。 / その他,杉並区監査委員 は, 高井戸 二小の違 法な短縮授業の是正を求 める 住民監査請 求に対し ,それを却下し たが,40 分授業は来春から45 分に是正 さ れることになった こと(Y82-29 ),京都市教委が,昭和61 年春,市内の小・ 中学校に「君 が代」 のテ ープを 配布し ,卒業式で^・斉唱し た り演奏させ ようと したことをめぐ り, 哲学 者 の鶴見 俊輔 氏等が 「憲 法な どに反 する公 金 の 支 出」とし て市の監査委員 に監 査請求を行ったこ と(A87-2 ) 等がみられる。 次にそ の他違法性に係わる問題を みてみ よう。東京都では都議会定数是正 で「税 金を監視す る会」 は,選挙費用 の支出禁止を 求める住 民監査請求を 起 こし(A84-15,N84-44,Y84-26 ), 都議選を 前に“1 票の重 み”の格差 が 是 正されてい ない とし て,都が同選 挙に公 金を 支出し ない よう求めていた が,
都監査委員 は,「議員定数条例の適否の 審査は 監査委員 の権限外」 として, それを却下し た (M85-7) 。23 区 では,荒川区長が区広報紙に“当選御礼”を含む就任あい さつをし た のは,公選 法178 条(選挙期日後のあい さつ 行為 の制限) に違反す るとして 住民監査請求が出 されたのに対し,区監査委員会 は「請求人 の主張には合理 的な理由が認められず,請求には理由がない」 とし て棄却した (Y79-17 )。 同じ く荒川区 で電 算システム導入を めぐって,反対 派の住 民が,プ ライバシ ーを 侵す恐 れがあ るとして 監査請求を 提出し た(M83-1 ,Y83-2 )。目黒区 で 乱 一連の電 算化導入計画は住民 のプ ライバシ ーを 侵害す る恐 れかお り, 地方自治法な どに違反す る疑いがある とし て, 住民 監査請 求が 出された(Y83-18,M83-11 )。 また豊島区 で 「戦争裁判 の遺 跡」の建 設に反 対七 てい る 「戦犯記念碑建設に反対す る連絡会」が, 建設 中止 の監査 請求を 行 うことを 決めた ことがあ るが(A80-5 ),その後 毛豊島 区では, 戦犯碑訴訟の連絡会が 新たな住民監査 請求を起こす ことを検討している (A84-! )。 そ れから 昭和58 年衆議院選挙費用で東京都内の8 区 と1 市が支出し た選 挙費用 の超過負担 分4,360 余万 円 は 違 法である として, 都監査委員 に監査請 求が提 出されるこ と(M85-6 )等 がみられる。 \ 東京都区外 では,岩手県 で,靖国神社 への玉 ぐし 料の県 費支出は不当とし て県民が監査請 求を提出し たが,同県監査委員 は,県費 支出が違 憲でない と して請求を却下し た(A82-8,M82-9 )。愛媛県 でも「神社玉 ぐし 料公費支出 は違 憲」 とす る住民監査請求が提出され,真宗大谷派が支援す る動 きがみら れる(M82-11 )。埼玉県 では,公職選挙法改正に伴 う拘東名 儀式比例代表制 導入 による参 院全国区選挙をめく紡 ,埼玉県 内の革新無所 属市会議員5 人 が, 市の監査委員 に「違 法行為に基く選挙に公共 の施設を貸 さない よう勧告を求 める」 との監査請 求を行なった(A82-20 )。同様 の件で葛 飾区で も監査請求 が出されてい たが,門前払い の格好 となうた (Y82-26 )。 改正公選法をめぐ っては「来夏の参院選に学 校などを貸さない ように」 とい う勧告を 求めて, 議員, 住民ら の監査請求が祖 次ぎ,東京(江戸川 区 タ∴杉並区, 葛飾区,東村 山市,武 蔵村 山市),千葉(千葉 市,習志野市,市川 市,富 里村),埼玉(志 木市,川越市,上 福岡市,新座市),栃木(宇都宮 市,真岡 市,鹿沼市)で提 出されている とい ケ(M82-19 )。 それから,保谷 市が民間の戦没者慰霊祭を協賛し, 市長 や議長が出席した
社会問題としての監査(う57 ことに対し ,市民から「憲法違反」との監 査請求が出 されていた問題で,市 監査委員 は請求を認 め,市交際費から出した生花 代等を 市に返還するよう市 長らに勧告した こと(A83-12 )や,愛媛県伊予 市で,忠 霊塔に市が助成 金を 支出するのは,「憲法の政 教分離原則 に違反す る」 とし て監査請求が提出さ れたこと(A83-8 ),同じく愛媛県 で,玉 ぐし 料県 費支 出に関する監査請求 に対し て,同県 監査委員は,「支出は宗 教的 な目的 による ものではなく,特定 の宗教を援 助,助長する効果 もない」 として請求を却下し たこと(A83-27 ) 等 がみられる。 以上,地 方 自治体監査制度に関して,新聞記事におけ る事 例を みてきた。 個々の事 例を 網羅的に取 り上げたため,余 りに断片的 との印 象は否めない。 し かし, 本稿 は,監査が社会問題 とどのように係わっでし るか とい う問題を 定立し ,新聞記事に よる調査の結果,地 方自治体監査制 度が中 心テ ーマであ ることを“ 発見”し たことで,その 目的を果 たし た とい え よう。本稿は監査 委員や住民監 査請求そのものより 乱 監査 と社会問題 の関係に焦点をあわせ ているからである。監査委員及び監査請求に関し て,冗長 とも思えるほ どの 事例の列挙 は, 今後 この領域での議論を 展開す る上 で,共 通の現状認識を確 保するために不可欠 と思われたからである。ただ,それ らの記事が余 りに表 層的であ るために,平板 な叙述に終始し た印象は拭えず,皮 相的す ぎるとの きらし を禁じえ なト 。そこで地方 自治体監 査制 度の分析 レベ ルに立ち入るこ とは,当初 の意図を超え るものであ るが,次に上述の事 例を 分類・整理す る と共に,筆 者のこ九 迄の研究を踏まえて, アメリカの 自治体監査と比較す る ことに より, わが国自治体が抱える問題の所 在を 明らかにす ることで,一歩 踏み込 んでお きたい。 (3) 問題 の所 在 と若干 の提言 ① 問題状況 ‥ 先ずわが国の地 方自治体の監査担当 者である監 査委員を め ぐる問題からみ てみよう6 監査委員 に関しては,地方自治法の第195 条(監査委員 の設置及 び定数),第196 条(選任兼職の禁止),第199条 (職務) に規定 されている。 し かし ながら,監査委員制 度が現在十分に機 能し てい ない ところから,前述 した ように, 現行の監査体制をめ:ぐって種 々批判 的 に議論 されてい るのが実 状 と思われる。監査委員制度に関する主 要な論点 は,次 の ように分類・整理