28 (東京女医大誌第26巻第2号頁86 一87昭和31年2月)
数年間にわブこりジフテリア抗元の特異刺戟を繰返
し受けアこ成人女子群の流血中抗毒素価について
緒 東京女子医科大学耳鼻咽喉科教室(主任佐藤イクヨ教授) 言 講 選 訳 イケ香
一=ウ(受付 昭和30年10月20日)
私Dは,成人女子群を対象として,ジフテリア
免疫に関する研究を行V・,成人のSchick反応陽
性者の大部分は流血中抗毒素価が殆んど認められ ないことを知った。然し,その多くは既に何等か の程度の特異刺戟を受けた経験をもつてbるが, その刺戟によって,測定することの出来る程度の 抗毒素を生じなかったか,或は,一度は抗毒素が 生じても検査時には既に消え去っているものであ ろうと推定した。また,これらの人の巾には,抗 毒素価が比較的上昇し難いものが相当に含まれているのではないかと考えられるが,繰返しbキソ
’イド接種か,Schick試験或はMoloney試験等
を行うと,流血中抗毒素価が上昇し,また一度上 昇した抗毒素価が低下し難くなると思われる事実 を知ることが出来た。私は,数年間にわたり,毎年1回叉は2回Sc−
hick試験或は同時に:トキソ■ド接種を受けた成 人女子群の流血中抗毒素価を測定したところ,上 記の推論を裏付けるものと考えられる結果を得た ので報告するe, 実験対象
昭和21年東京女子医科大学に入学した学生72名と22 年度入学5名,23年度入学13名との合計90名で,入学 時にSchick試験とMoloney試験とを行った。当時 のMoloney反応陰性でSchick反応陽性者は21年度 23%,22年度12%,23年度45%であった。Schick反 応陽性者にはジフテリアトキソイドの接種を行った。 その後,21年度入学生には22∼24年の3年間毎年1回 Schick試験を行い, Schick反応陽性者と陰性者の一子
部にジフテリアトキソ■ドを接種した。22年度入学生 は翌23年置chick試験1回,更に23年度入学の13名と 共に同年の9月と12月にSchick試験を繰返し行い, Schick反応陽性者にはトキソイドを反復接種した。 25年には,全員に.Sch玉ck試験と上記の方針によるト キソイド接種を2回(5月と10月)行った。トキソ・f ドの接種量:は0.1∼1.5 mlで, tれは1回乃至3回に 別けて行った。実験方法
上記の群の全員につき,昭和26年1月に流拍旺中抗毒 素価を測定し,同時にSchick試験も行った。 抗毒素価の測定法はJensen 2)3)の家兎皮内法に準 じた。試験毒素はNo。 MO−1(国立予防衛生研究所よ り分与を受けた)を用い,LR/2boOOの水準て測定し た。但し対照試験の反応の程度に基づぎ,測定結果を 補正するaとは省略した。本実験の同的にとって,∼二 れは特別の意昧をもたないからである。実験結.果
表に示したように,1例を除き,すべて0.01単 位/m1以上の流一血中抗毒素価を証明した。同時に行ったSchick試験もそれに一致してすべて反応
は陰性であった。流血中抗毒素価は全体として高 く,殊にトキソ,イド接種:を受けたことのある群め 約50%は2単位/m1以上の抗毒素価を証明した。 また,トキソイドの接種回数と流血中抗毒素価との関係を見ると,トキソイドの接種回数の多い
程,流』住し中抗毒素価の高い傾向がうかがわれる。 試みに相関分析を行って見ると,ユ%の危険率で 有意の相関を認めることが出来る。但し,1例であるが,トキソイド接種を2回受
け,毎年Schick試験が繰返されたにも拘わらす
K6ko lke : On the antitoxin titer in the circulating blood of adult feinales who have been injected repeatedly diphtheria antigen for several years.
2{
流血中抗毒素価(単位/ml)
lo.ooi o.oi o.i o.2 o.s i.o 2.o s.o ie.020.ol
ト 5 キ ソ 4 イ 3 ド 接 2 種 玉:
畏・1
1 2 2 1 4 3 1 1 5 1 1 2 1 2 4 4 5 2 18 4 13
1 2 15 8 1
1 1
2
6 6 11 23 16 28計「・4・23・3277・・31・・
0.001単位/mlの1例を除外して相関分析を行うと r= O.41 x,yに略,直線関係を考えられ.そうであるから Fs :=: 17.6 F,,(O.Ol) 一一 6.94 流血中抗毒素価が0.001/ml単位にすぎない例が あった。結 論
3∼5年間,毎年1回乃至2回Schick試験,
或はSchick試験とジフテリアトキソ・fド接種と
が行われた成人女子群の流血中抗毒素価を測定し たところ,殆んど全員に相当高い抗毒素価を証明 した。 トキソノfド接種回数と流一血中抗毒素価との聞に 有意の相関関係が認められた。 (本論文の要旨は昭和27年,日本耳鼻咽喉科学会53回 総会で口述した) 稿を終るに当り終始御懇篤な御指導,御校閲を賜わ った佐藤イクヨ教授並に予防衛生研究所黒川正身博士 に深甚の謝意を表する。 文 献 1)池香子;成入のジフテリア免疫に関する研 究,凍京女医大誌,25,449,(昭30)2) Jensen, C.:Acta Path, Microbiolog, Scand., Suppl, 14, (1933)
3)国立予防衛生研究所編:ジフテリア菌,毒素及
び抗毒素,(1949)