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お茶の抽出動作解析と成分解析に基づく仕事の設計図の解明

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Academic year: 2021

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長野大学紀要 第36巻第2号 105―106頁(161―162頁)2014 - 105 - 研究実績の概要 現代を代表する茶人の一人である太田達は、茶道 の本質を化学物質の摂取による生理的な化学反応で あるとしている。抹茶から抽出される化学物質を摂 取し、茶会の環境を主人がコントロールすることで 生理的な反応に影響を与えていると考えられる。本 研究では、茶道の本質である抹茶から化学物質を抽 出する薄茶を点てる動作の解析を目指した。特徴的 なのは、光学カメラによって記録された動作の解析 に加えて液クロマトグラフィー等の装置を用いた化 学的な成分分析を組み合わせている点にある。 化学の常識的な理解では、同じ水、お茶、器、茶 筅を利用すれば、茶筅でお茶を点てる動作は大きな 影響を与えるものではなく、成分は分析の上では変 化がないのでないかと予想された。しかし、実験結 果を見ると、熟練者のカテキン類の抽出量は、初心 者のカテキン類の抽出量よりも小さかった。にもか かわらずカフェインの抽出量では、初心者の点てた 薄茶は熟練者よりも少なかった。カテキンはお茶を 飲む人に渋みを感じさせ、酸化するとタンニンとし て苦みを感じさせる成分となる。その一方で、カ フェインは、お茶を飲む人に爽快感を与える成分と して知られている。熟練者の点てた薄茶と初心者の 点てたお茶を飲み比べてみると、同質かつほぼ同量 の水と抹茶から点てられたお茶にも関わらず、熟練 者と初心者の点てた薄茶でカテキン類とカフェイン の成分比率に大きな違いが見られた。実験のサンプ ルが十分であるとは言えないが、カフェインやカテ キン類において検出される総量はばらつきが見られ、 実験条件の検討が必要となるであろう。しかし、カ フェインとカテキン類の抽出量比率は、比較的安定 しており、熟練者と初心者では大きな違いが見られ た。熟練者の点てた薄茶は苦みよりもかすかな甘み を感じられたが、初心者の点てた薄茶は苦みがより 強く感じられた。こうした官能評価の結果は、ガス クロマトグラフィーによる化学的分析の結果と符合 するものであった。 こうした官能評価の違いやカフェインとカテキン 類の抽出量比率の差は、実験に使われた抹茶、水、 茶道具をコントロールしているので、お茶を点てる 動作によって生じた違いだと解釈すべきであろう。 お茶を点てる動作については、高速度カメラによる 撮影の結果、特に指先運動の全体的な傾向に大きな 差異が見られた。グラフは、薄茶を点てる動作開始 5秒後から10秒後の茶筅の前後動を示したものであ る。熟練者の茶筅は、6Hz を中心とした比較的安定 し、大きな前後動であることが見て取れる。一方、 *企業情報学部准教授

(基礎研究)

お茶の抽出動作解析と成分解析に基づく仕事の設計図の解明

河 野 良 治

*

Ryouji KOUNO

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長野大学紀要 第36巻第2号 2014 162 - 106 - 未熟練者の茶筅は8Hz を中心とした不安定な動作で あり、何よりも小さい動きであった。同様の傾向は、 横方向の動きでも見られるのではないかと予測され る。熟練者の茶筅は円運動に近い大きな動きである のに対して、初心者が薄茶を入れる動作は単に手を 早く前後に動かすだけの動きであったことが分かっ た。こうした、薄茶を点てる動作の違いが、化学的 な分析結果に現れるカフェインとカテキン類の抽出 量比率の差や官能評価に現れる味の違いになってい ると考えられる。 初心者が薄茶を点てる動作は小さな前後運動で あったが、熟練者が薄茶を点てる動作は大きな円運 動であると両者の特徴を分析する事ができた。こう した茶筅の動きから見る薄茶を点てる動作の違いが、 薄茶の成分にどのように影響を与えてこうした差が 生じるのかは明らかになっていない。植物の生理学 等の知見を加えて検討を続け、様々な仮説を検討し た。 カテキン類は、酸化してタンニンを生成し、苦み 成分となる。薄茶を点てる動作と水面の泡に注目し た研究もある。第一仮説として、熟練者は均一に泡 を作り出すことで、薄茶水面の泡が酸化を阻害して いると考えられる。また、お茶の液胞内にカテキン が存在していると考えると、液胞を破壊しない攪拌 方法がより好ましいと考えられる。第二の仮説とし て、初心者の早い前後の攪拌は、液胞を破壊してカ テキンが液中に出てきやすくしているが、比較的 ゆっくりとした大きな熟練者の攪拌方法は液胞を破 壊せずカテキン類が液中に出てきにくいと考えられ る。 【共同研究者】 浅井 武(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 綿岡 勲(京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究 科)

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