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台湾の原住民を知る (ライブラリ・コーナー)

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Academic year: 2021

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台湾の原住民を知る (ライブラリ・コーナー)

著者

狩野 修二

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

249

ページ

43-43

発行年

2016-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00002938

(2)

43

アジ研ワールド・トレンド No.249(2016. 7)

台湾の原住民を知る

狩野

修二

  台湾の原住民(台湾では、先住民 のことを「原住民」と正式に呼称し て お り、 本 稿 で も こ れ を 使 用 す る ) は、台湾の四大エスニック・グルー プのひとつである(その他の三つは 「 外 省 人 」「 閩 南 人 」「 客 家 人 」 で い ずれも中国大陸から渡ってきた人々 で あ る )。 原 住 民 は さ ら に 多 く の グ ループに分類されるが、現在政府に より公認されているのは一六民族で ある。彼らの人口は二〇一五年末現 在で約五四万六〇〇〇人であり、台 湾全人口の約二 ・ 三%に過ぎないが、 台湾社会を語る際に欠かせない集団 である。ここでは、最近刊行された 図書のなかから台湾原住民を扱った 資料を紹介する。   王甫昌著、松葉隼・洪郁如訳『族 群:現代台湾のエスニック・イマジ ネーション』 (東方書店、 二〇一四年) では、現代の台湾社会において、前 述の四大エスニック・グループとい う集団分類が実は比較的最近の発明 で あ り、 「 原 住 民 」 の な か に も そ れ ぞれの言語、文化、風俗習慣を持つ 複数の民族がいることを指摘してい る。そのうえで、これら集団間の関 係性がどのようなものなのかを分析 している。また、もともとは台湾の 「 唯 一 の 主 人 」 で あ っ た 原 住 民 が マ イノリティへと至った歴史的経緯に ついても記されている。   台湾の歴史は、オランダによる統 治が始まった一二六〇年代からの約 四〇〇年間について言及されること が多いが、 周婉窈著、石川豪・中西 美 貴・ 中 村 平 訳『 図 説 台 湾 の 歴 史 増補版』 (平凡社、二〇一三年) は、 統治者の観点ではなく、台湾島をそ の観点とし、さらに先住民を記述の 起点として執筆している。これによ り三万年~五万年前の先史時代から、 民主化が進んだ一九九〇年代までの 台湾の歴史を支配者以外の観点から 知ることができる。   特定の原住民グループに着目した 研究資料としては、 山路勝彦著『台 湾タイヤル族の一〇〇年:漂流する 伝統、蛇行する近代、脱植民地化へ の 道 の り 』( 風 響 社、 二 〇 一 一 年 ) がある。タイヤル族は主に台湾の中 北部の山地に居住しており、その人 口 は、 二 〇 一 五 年 末 現 在 で 約 八 万 七〇〇〇人、原住民のなかでは三番 目に人口が多い。この本では人類学 的視点から過去一〇〇年以上に渡る タイヤル族の生活文化について記述 しており、日本統治以前、日本統治 中、そして日本統治後の彼らの伝統 的生活とその変容、新たな文化創造 について知ることができる。   石垣直著『現代台湾を生きる原住 民:ブヌンの土地と権利回復運動の 人類学』 (風響社、 二〇一一年) では、 主に台湾中央の山脈地帯に居住して いるブヌン族を対象とし、一九八〇 年代半ば以降進められた原住民の権 利回復運動のうち、特に土地返還に 関して人類学的に記述・分析した資 料である。   台湾では現在一六の民族が政府に より認定されていると先に述べたが、 このなかには含まれない平埔族と呼 ばれるグループが存在する。彼らは 明代以降、中国大陸より流入・移住 して来た漢人との通婚や交流により 次第に漢族化していき、その多くが 原住民として認定されていない。 天 理大学附属天理参考館編集『台湾平 埔 族、 生 活 文 化 の 記 憶 』( 天 理 大 学 出版部、二〇一二年) は、天理大学 が所蔵している平埔族に関する古文 書を紹介した資料で、平埔族のなか でも主にパゼッヘ族と呼ばれる人々 の文化と生活を垣間みることができ る。   原住民政策や原住民の選挙行動に ついては、 沼崎一郎 ・ 佐藤幸人編『交 錯 す る 台 湾 社 会 』( 日 本 貿 易 振 興 機 構 ア ジ ア 経 済 研 究 所、 二 〇 一 二 年 ) の第三章に詳しい。歴史的に原住民 が政策のなかでどのような扱いを受 けてきたか、また選挙時の彼らの投 票行動、支持政党などについて分析 している。さらに原住民へのインタ ビュー調査も行っており、そこから 彼らのなかにも社会・政治に対して さまざまな考えがあることをうかが い知ることができる。   複数のエスニック・グループがい ること、また度重なる統治者の変化 などの歴史的理由から台湾で使われ ている言語も一様ではない。 菅野敦 志著 『台湾の言語と文字 :「国語」 ・「方 言 」・ 「 文 字 改 革 」』 ( 勁 草 書 房、 二〇一二年) では、一九四五年以降 の言語・文字政策についてまとめら れている。原住民の言語については、 一元的な国民統合政策から、多様性 を尊重する「多言文化主義」への移 行のなかで見直され、郷土教育の一 環として学校教育に組み込まれてい く過程が記されている。   林怡蕿著『台湾のエスニシティと メディア:統合の受容と拒絶のポリ テ ィ ク ス 』( 立 教 大 学 出 版 会、 有 斐 閣( 発 売 )、 二 〇 一 四 年 ) で は、 四 大エスニック・グループのなかでそ の数・社会的地位双方においてマイ ノリティである原住民と客家に特に 焦点を当て、 「原住民テレビ」や「客 家テレビ」といったエスニック・メ ディアが台湾のメディア政策や制度 のなかでどのように排除され、そし てそれに抵抗してきたのかについて 調査分析を行っている。 ( か の う   し ゅ う じ / ア ジ ア 経 済 研 究所   図書館) 14_ライブラリー.indd 43 16/05/19 10:14

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