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インドのエネルギー問題をカネに換えた男 -- ゴータム・アダニー (特集 経済・政治・社会の発展における企業家・経営者の役割)

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Academic year: 2021

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(1)

インドのエネルギー問題をカネに換えた男 -- ゴー

タム・アダニー (特集 経済・政治・社会の発展に

おける企業家・経営者の役割)

著者

久保 研介

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

201

ページ

16-17

発行年

2012-06

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003951

(2)

電力需要とともに伸びるイ

ンドの石炭輸入

  インドでは急速な経済成長とと もに電力需要が伸び続けている 。 図 1が示すとおり、電力の必要量 に対して供給が一〇%程度不足す る状態が続いており、発電能力の 向上が需要課題となっている。   図 2はインドの発電能力︵自家 発電分を除く︶ をエネルギー源別 ・ 所有主体別に表したものだが、こ こから発電能力の半分強が石炭で 満たされていることがわかる。二 〇一〇∼一一年度にはインド全体 で六億九三七〇万トンの石炭が消 費されたが、その七割以上は発電 に用いられたと推定される。   インドの推定石炭埋蔵量は褐炭 も含めると三二六七億六〇〇〇万 トン︵二〇一一年四月時点︶であ り、年間使用量の四七一倍に達す る ︵参考文献②︶ 。しかし近年は 石炭輸入が増えており、インドは 中国・日本・韓国に次ぐ世界第四 位の石炭輸入国となっている︵参 考文献⑪︶ 。図 3が示すように一 九九〇年代末までは輸入の大半が 鉄鋼生産に使う原料炭︵コークス 用石炭︶であった。これはインド 産の石炭が水分や灰分を多く含 み、コークス生産に適さないため である。しかし近年は発電所の燃 料に使われる一般炭の輸入も急速 に増えている。この背景には国内 生産の停滞がある。石炭採掘にと もなう環境破壊に対する意識の高 まり等が新規炭鉱開発を阻んでい るのだ。また、石炭生産がインド 石 炭 公 社 ︵ Coal India Limited ︶ をはじめとした公有企業に支配さ れており、それらの経営が非効率 的であることも理由として挙げら れる ︵参考文献③︶ 。生産の停滞 を受けて政府は一九九三年に一般 炭の輸入を自由化し、関税率を段 階的に引き下げてきた。   こうして急速に伸びはじめた石 炭輸入ビジネスにうまく食い込ん だのが、ゴータム・アダニ率いる アダニ ・ グループである。 同グルー プの商社部門であるアダニ・エン タープライズはインドが輸入する 一般炭の約半分を扱っている︵参 考文献④︶ 。同社のデータによる と、二〇〇五年には三九四万トン に過ぎなかった同社の石炭輸入量 は二〇一一年には三一四八万トン に膨らんでいる ︵参考文献①︶ ⑴ 。 港湾インフラ会社であるアダニ ・ ポート・アンド・スペシャルエコ ノミックゾーンおよび電力企業の アダニ・パワーと合わせると、二 〇一一年におけるグループ全体の 売上高は六〇億ドル︵約四八〇〇 億円︶ に上った。アメリカ ・ フ ォー ブス誌の二〇一二年版長者番付に よると、ゴータム・アダニは全世 界で第一八九位、インド人として は第一一位の資産を持つ大富豪で ある。

港湾を巧みに利用した貿易

ビジネス

  ゴータム ・ アダニは一九六二年、 グジャラート州アーメダバード市 の織物商人の家に生まれた。十代 で単身商業都市ムンバイに移りダ イヤモンドビジネスに数年従事し たのち、一九八〇年代初頭にアー メダバードで貿易会社のアダニ ・ エクスポート︵二〇〇六年にアダ ニ ・ エンタープライズに名称変更︶ を立ち上げた。一九八八∼八九年 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 (億キロワット時) 1997/981998/99 1999/20002000/012001/022002/032003/042004/052005/062006/072007/082008/092009/102010/11 ■電力必要量 ■電力供給量 図1 インドの電力需給状況

(出所)Central Electricity Authority, Central

Electricity Authority, 石炭 ガス ディーゼル 原子力 水力 120,000 (メガワット) 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 再生可能 エネルギー (水力以外) ■州政府 ■中央政府 ■民間 図2 エネルギー源・所有主体別の発電能力 (2011年11月30日時点) (出所)Ministry of Power, 済・政 治・社 家・経

久保

インドの

カネに

男 

︱ゴ

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アジ研ワールド・トレンド No.201 (2012. 6)

(3)

度には年 商二二〇 〇 万 ル ピー︵当 時の為替 レートで 約 二 億 円︶に過 ぎなかっ た 同 社 は、二〇 〇三∼〇 四年度に は年商一四億ルピー ︵約三四億円︶ に達している︵参考文献⑨︶ 。   アダニ ・ エクスポートは、 グジャ ラート州の辺鄙な地方港湾を通じ てプラスチック原料等を輸入する ことで業績を伸ばした︵参考文献 ⑧︶ 。一九九〇年代半ばのインド ではプラスチック原料の輸入関税 が高く設定されていたが、税関の 監視が甘い地方港湾を使えば輸入 貨物の価額を容易に過少申告する ことができたのである ⑵ 。一九九 九年にはゴータムの弟であるラ ジェシュ・アダニが石炭輸入に絡 む関税逃れの疑いで逮捕されてい る︵参考文献⑤︶ ⑶ 。   貿易活動で稼いだゴータム・ア ダニは、一九九〇年代後半に港湾 ビジネスに参入した。インド亜大 陸西端のカッチ湾に面するムンド ラという漁村に大規模な港と経済 特区︵SEZ︶用の施設を建設し たのである。同港を運営するムン ドラ・ポート・アンド・スペシャ ルエコノミックゾーン︵二〇一二 年にアダニ・ポート・アンド・ス ペシャルエコノミックゾーンに名 称変更︶は、二〇〇八年にスズキ 自動車の大規模輸出ターミナルを 誘致して話題を呼んだ。二〇一〇 年には世界最大級の石炭専用ター ミナルを稼働させている。   アダニ・グループはインド国内 の他の港でも石炭専用ターミナル を建設し、二〇一一年にはオース トラリア北東部の石炭ターミナル を買収した。更に二〇〇八年から 二〇一一年にかけてインドネシア とオーストラリアで炭鉱を獲得し ている。これらの投資が実り、ア ダニ・グループはインドの一般炭 輸入マーケットで大きなシェアを 握るに至った。

●次の狙いは発電事業

  ゴータム・アダニが次に狙うの は発電事業である。グループ企業 のアダニ・パワーはムンドラに四 六二〇メガワットの石炭火力発電 所を建設中であり、その一部は二 〇〇九年に稼働を始めている。マ ハーラーシュトラ州南部のティロ ダにも三三〇〇メガワットの発電 所を建設中である。   民間発電ビジネスではタタ・パ ワーをはじめとした大企業が先行 しているが、それらの多くは政府 から国産石炭を安く割り当てられ る代わりに、電力を低い単価で州 政府の配電公社に供給する義務を 負っている。先述したように石炭 の国内生産は現在停滞しているた め、これらの発電所の一部は稼働 率を下げざるを得ない状況に陥っ ている。   アダニ・パワーのムンドラ発電 所は主に輸入石炭を使っているた め発電コストは比較的高いが、電 力の供給条件について政府の束縛 を受けることはない。その発電量 の多くはインドエネルギー取引所 ︵ Indian Energ y Exchange ︶ な ど のスポット市場で売られているた め、単位あたりの収入は高い︵参 考文献⑩︶ 。   インド国内の石炭生産が停滞を 続ければ、アダニ・グループは石 炭輸入で儲かるばかりでなく、発 電市場でもシェアを伸ばすことに なると考えられる。エネルギー問 題はインドの経済成長を制約する 最大の要因のひとつだが、ゴータ ム・アダニにはむしろチャンスを 提供しているようである。 ︵くぼ   けんすけ/アジア経済研究 所  在デリー海外研究員︶ ︽注︾ ⑴政府統計によるとインドの 二 〇 一 〇∼ 一 一 年度における 一 般 炭輸入量 は四九四三万トンであ っ た ︵ 図 3︶ しかし民間調査会社の エムジャン クシ ョ ン によると七五五〇万トン が輸入されて いる ︵参考文献⑦︶ 。 ⑵アダ ニ ・ エ ク ス ポートは輸出貨物 の価額を過大申告することで 、 輸 出企業向け の 輸入関税減免制度を 悪用したとも報じられて い る ︵ 参 考文献⑧︶ 。 ⑶ ラ ジェシュ・ア ダニは 二 〇一 〇 年 に も関税逃れ の疑 い で 逮捕されて い る ︵ 参考文献⑥︶ 。 ︽参考文献︾ ① Adani Group [2012] Adani Group Corporate Brochure, (http://www . adani.com/pdfs/adani_corporate_ brochure_lr .pdf). ② Central Statistics Office [2012] Energ y Statistics 2012. ③ Comptroller and A uditor General of India [2012] Draft P erformance A udit: Allocation of Coal Blocks and A ugmentation of Coal Production by

Coal India Limited.

④ The Hindu [2012] “Adani Inks Coal

Supply Deal with NTPC

” March 5. ⑤ Indian Express [1999] “ Adani Exports Chief Gets Bail in Customs

Duty Evasion Case

” F ebruary 24. ⑥ Indian Express [2010] “Rajesh Adani Held for Fraud, Gets Bail ” F ebruary 28. ⑦ Mjunction [2012] India Coal Market W atch, V ol. 4, No. 5. ⑧ Modi, K etan [1998] “How Adani Group Used P orts to Its Advantage ”

Financial Express, April 28.

⑨ Ray , Joydeep [2004] “Adani: From P orts to Supermarkets ” Rediff Business, June 26. ⑩ Sree Ram, R. [2011] “High Spot Prices a Reprieve for Merchant P ower Producers ” Mint, December 4. ⑪ W orld Coal Association [2011] Coal Statistics, (http://www .worldcoal.org/ resources/coal-statistics/). 1995/961996/971997/981998/99 1999/20002000/012001/022002/032003/042004/052005/062006/072007/082008/092009/102010/11 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (100万トン) ■一般炭 ■原料炭 図3 インドの石炭輸入量

(出所)Ministry of Coal, , various issues.

インドのエネルギー問題をカネに換えた男―ゴータム・アダニ―

参照

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出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .

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